説明

ノイズフィルタ

【課題】引き出し線の持つインダクタンスの影響を減少させることができるノイズフィルタを提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネスの幹線から2本の電線2、3を引き出し束ねて、これらの電線2、3の先端の被覆を剥いて一括圧着して圧着された部分をユニット本体25内のコンデンサ29の一方の端子に電気的に接続する場合に、ワイヤーハーネス束から引き出した2本の電線2、3の間に発泡樹脂製の緩衝部材4を挟んでテープ5で固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が取り付けられて、当該電線内の電気的なノイズを除去するノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等に装備されるラジオ受信機等は、ワイパモータのような高周波成分を持った雑音源からの電動ノイズや、リアウンドウデフォッガのスイッチオンまたはオフ時のノイズや、誘導ノイズ等が電線を伝わってラジオアンテナから入力されることがあり、ラジオのスピーカから耳障りな雑音を発してしまうという問題が生じていた。
【0003】
そのため、自動車等に搭載されるワイヤーハーネス等においては、そのノイズ対策として、当該ワイヤーハーネスに含まれるアース用電線を、コンデンサを介して適当な接地部分(例えば自動車のボディパネル等)に接続するためのノイズフィルタ(例えば、特許文献1、2を参照)が用いられることがある。
【0004】
このワイヤーハーネスからコンデンサ(ノイズフィルタ)への電線を引き出す際は、図9に示したように、当該電線101の中間皮剥きをして引き出し電線102を圧着部材103でジョイント圧着し、圧着部分に絶縁テープで被覆処理を行っていた。
【0005】
このような、電線の中間皮剥きをしてジョイント圧着を行い、圧着部分に絶縁テープで被覆処理を行う場合は、作業が煩雑になり、また、ワイヤーハーネスを束ねた際に接続点(圧着点)が膨らんでしまい配索しにくくなるという問題があった。
【0006】
そこで、図10に示したように、ワイヤーハーネス束から2本の電線111、112を引き出し束ねて、これらの電線111、112の先端の被覆を剥いて一括圧着して圧着された部分113をコンデンサ114の一方の端子に電気的に接続する方法が行われている。この方法では、ワイヤーハーネスを束ねた際に接続点(引き出し点)の膨らみもなく、配索が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−146570号公報
【特許文献2】特開2009−17685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したコンデンサを用いたノイズフィルタは、コンデンサが持っている容量と残留インダクタンス(この残留インダクタンスにはコンデンサ本体だけでなくコンデンサ端子リード等が持つインダクタンス成分も含む)を利用して自己共振点を作りノイズのフィルタリング動作を行う。
【0009】
しかしながら、上述したように、電線の中間皮剥きをしてジョイント圧着を行ってコンデンサへの引き出し線を引き出したり、2本の電線を束ねてその先端の被覆を剥いて一括圧着を行ってコンデンサへの引き出し線を引き出したりする方法では、引き出し線の持つインダクタンスとコンデンサの持つ残留インダクタンスとが合計加算されるので、引き出し線の長さを変更すると、フィルタの減衰極周波数の移動が起こってしまう。
【0010】
この減衰極周波数の移動が起こるということは、減衰させたい周波数の帯域幅が移動することになるために、意図するフィルタ特性が得られず、減衰特性が悪化するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、引き出し線の持つインダクタンスの影響を減少させることができるノイズフィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、ハウジング内に設けられて一方の端子が接地されたコンデンサと、互いの先端部分の導体を圧着して前記コンデンサの他方の端子に電気的に接続されるとともに前記ハウジングから同じ方向に向かって併走している2本の電線と、を備えたノイズフィルタにおいて、前記2本の電線が併走している部分では、前記2本の電線が非導電性材料で形成された緩衝部材を挟んで固定されていることを特徴とするノイズフィルタである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、ハウジング内に設けられて一方の端子が接地されたコンデンサと、前記ハウジングの一方側から他方側へ貫通し、前記ハウジング内で前記コンデンサの他方の端子に電気的に接続される電線と、を備えたノイズフィルタにおいて、前記ハウジングの他方側へ抜けた前記電線が前記ハウジングの一方側へ折り返され、前記ハウジングの一方側へ向かう前記電線と前記折り返された前記電線とが併走している部分では、併走している電線の間に非導電性材料で形成された緩衝部材が挟まれて固定されていることを特徴とするノイズフィルタである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記緩衝部材が、発泡樹脂材料で形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、ワイヤーハーネスの電線束から2本の電線を引き出して、これらの電線の先端の被覆を剥いて一括圧着して圧着された部分をコンデンサの一方の端子に接続する場合に、2本の電線の併走している部分が、非導電性部材で形成された緩衝部材を挟んで束ねられているので、引き出し線部分が緩衝部材を挟んで束ねられることになり、電線同士が密に重なることを防止して、引き出し線のインダクタンスを減少させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、ワイヤーハーネスの電線束から1本の電線を引き出して、その電線をコンデンサが設けられたハウジングを貫通してハウジング内で当該電線とコンデンサの他方の端子を接続するような構成で、ハウジングの他方側へ抜けて一方側へ折り返すように配索される場合に、ハウジングに向かう電線と折り返した電線とが併走する区間において、非導電性部材で形成された緩衝部材を挟んで束ねられているので、引き出し線部分が緩衝部材を挟んで束ねられることになり、電線同士が密に重なることを防止して、引き出し線のインダクタンスを減少させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、緩衝部材が樹脂材料で形成されているので、電線がずれにくく互いの電線の位置関係が容易に崩れにくくなり、また固定が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかるノイズフィルタの概略構成図である。
【図2】図1に示されたノイズフィルタの緩衝部材を示す斜視図である。
【図3】図1に示されたノイズフィルタのノイズフィルタ本体を示す斜視図である。
【図4】図1に示されたノイズフィルタのノイズフィルタ本体を示す分解斜視図である。
【図5】図1に示されたノイズフィルタの相互インダクタンスMと結合係数kが緩衝部材の幅(Gap)によりどのように変化するか示したグラフである。
【図6】図1に示されたノイズフィルタの複数の緩衝部材の幅の周波数と減衰量との関係を示したグラフである。
【図7】3端子接続のノイズフィルタの概略構成図である。
【図8】本発明の他の実施形態にかかるノイズフィルタの概略構成図である。
【図9】従来のノイズフィルタの概略構成図である。
【図10】従来のノイズフィルタの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の一実施形態を図1ないし図7を参照して説明する。本発明の一実施形態にかかるノイズフィルタ1は、図1に示すように、電線2、3と、緩衝部材4と、ノイズフィルタ本体22と、を備えている。
【0020】
電線2、3は、図示しないワイヤーハーネスを構成する電線束(幹線)から引き出される引き出し線であり、導体と、その導体を被覆する絶縁性の被覆部と、を備えて構成されている。電線2は図1の左側(ワイヤーハーネスの幹線の一方側)から引き出され、電線3は右側(ワイヤーハーネスの幹線の他方側)から引き出され後述するノイズフィルタ本体22に向かう。
【0021】
緩衝部材4は、図2に示すように発泡樹脂等の非導電体で細長い直方体に形成されて、電線2、3に挟まれて、電線2、3を所定間隔空けるように機能する。この電線2、3間の間隔を空けるため方向を緩衝部材4の幅Xとし、幅Xと直交し電線2、3と平行な方向を緩衝部材4の長さYとする。なお、長さYは、電線2、3がワイヤーハーネスの幹線から引き出されて併走している長さ(ワイヤーハーネスの幹線から引き出されてから後述するノイズフィルタ本体22に入力されるまでの電線2、3が併走している長さ)と略同じ長さとする。
【0022】
ノイズフィルタ本体22は、図3および図4に示すように、予め電線2、3の先端部に取り付けてなるカバー組付電線24と、このカバー組付電線24の嵌合により電気的な接続がなされるユニット本体25とを備えて構成されている。
【0023】
カバー組付電線24は、電線2、3の他に電線側端子26とカバー部材27とを有している。また、このカバー組付電線24が嵌合するユニット本体25は、ケース28と、コンデンサ29と、中継端子30と、アース端子31と、クランプ32とを備えて構成されている。
【0024】
電線側端子26は、導電性を有する金属からなり、電線2、3の導体に直接接続される電線接続部33と、この電線接続部33の前側に連続する電気接触部34とを有している。電線接続部33は、並べるように配置した電線2、3の一方の端部を皮剥ぎして露出させた導体を加締める一対の導体加締め片36と、電線2、3の被覆部を加締める一対の被覆加締め部37とを有している。
【0025】
電気接触部34は、基部38と、この基部38の一方の側部に連成される接続タブ39(端子接触部)と、基部38の他方の側部に連成される係止部40と、この係止部40に連成されるリブ当接部41とを有している。電気接触部34は、折り曲げ加工によって形成されている。基部38と接続タブ39と係止部40は、折り曲げ加工によりコ字状の形状に形成されている。
【0026】
リブ当接部41は、折り曲げ加工により係止部40に連成されている。リブ当接部41は、基部38に対して平行になるように形成されている。リブ当接部41は、この部分を作業者が指で押しても指が痛くならないような幅を有するように形成されている。尚、接続タブ39の先端にリブ当接部41を連成しても良いものとする。
【0027】
基部38には、カバー部材27に対する位置決め用の貫通孔42が形成されている。貫通孔42は、基部38の中央に形成されている。
【0028】
係止部40には、係止用の係止穴44が貫通形成されている。係止穴44は、係止部40が基部38に連続する位置に合わせて形成されている。係止穴44は、電線側端子26がカバー部材27から抜け落ちないようにするための部分として形成されている。
【0029】
接続タブ39は、タブ状であって、ユニット本体25の中継端子30に差し込まれて電気的な接続を行う部分として形成されている。
【0030】
電線側端子26は、電線2、3の一方の端部との接続をした状態で、この底部分35側からカバー部材27の内部に挿入されるようになっている。そして、カバー部材27に対して係止されると脱落が生じないようになっている。電線側端子26は、リブ当接部41を作業者が指で押すことで容易にカバー部材27の内部に挿入することができるようになっている。
【0031】
カバー部材27は、絶縁性を有する合成樹脂製の部材であって、電線側端子26を係止するとともに、ユニット本体25のケース28に対して嵌合するような形状に形成されている。カバー部材27は、天井壁46と、この天井壁46に連続する側壁とを有している。側壁に関しては、この側壁の内側が電線収納部47となるように形成されている。また、側壁に関しこの外側は(側壁自体は)、ケース28に差し込まれる際にガイドとして機能するケース挿入ガイド部48となるように形成されている。
【0032】
また、側壁には、可撓性を有するアーム状の係止突起49が形成されている。また、側壁には、略突起状のカバー側嵌合部50が複数形成されている。係止突起49は、カバー部材27の内部に挿入された電線側端子26を係止する部分として形成されている。カバー側嵌合部50は、ケース28に嵌合するように形成されている。
【0033】
カバー部材27の内部には、電線側端子26のガタ付きを防止する部分として図示しない第一の位置決めリブと、壁差込溝と、第二の位置決めリブとが形成されている。
【0034】
ハウジングとしてのユニット本体25のケース28は、絶縁性を有する合成樹脂製の部材であって、電子部品収納凹部56と、この電子部品収納凹部56の隣となる嵌合接続凹部57とを有している。電子部品収納凹部56及び嵌合接続凹部57は、底壁58と、この底壁58の縁部に形成される側壁59と、隔壁60とにより囲まれて形成されている。電子部品収納凹部56は、電子部品29を収納するための凹状の部分として形成されている。嵌合接続凹部57は、カバー組付電線24が嵌合し、電気的な接続が行われる凹状の部分として形成されている。電子部品収納凹部56及び嵌合接続凹部57は、隔壁60によって隔てられている。
【0035】
側壁59には、係止突起61や突起係止部62が形成されている。また、側壁59には、一対の電線支持部63が形成されている。突起係止部62は、カバー組付電線24を嵌合させるための部分として形成されている。一対の電線支持部63は、嵌合接続凹部57の部分にU字状に切り欠かれて形成されている。一対の電線支持部63は、カバー組付電線24の嵌合の際に電線21が差し込まれてこれを支持することができるように形成されている。尚、図4の突起係止部62は、図3と構造が異なっているが、いずれの構造を採用しても良いものとする。
【0036】
隔壁60には、突起係止部64と、リード支持部65、66と、膨出部67とが形成されている。突起係止部64は、カバー組付電線24を嵌合させるための部分として形成されている。リード支持部65、66は、電子部品収納凹部56に収納されるコンデンサ29の、嵌合接続凹部57にまでのびるリード68、69を支持するために形成されている。リード支持部65、66は、スリット状に形成されている。
【0037】
また、嵌合接続凹部57の底(底壁58)には、中継端子30の位置決めと固定とをするための図示しない固定部分および中継端子30の位置決めをする中継端子30の長手方向に沿ってのびる位置決めリブが形成されている。
【0038】
図4において、中継端子30は、導電性を有する金属からなり、バスバー状の固定基板部72と、この固定基板部72の一側部に連成されて電線側端子26の接続タブ39が差し込まれるタブ接続部73とを有している。固定基板部72は、嵌合接続凹部57の底(底壁58)に載置固定されるように形成されている。
【0039】
固定基板部72には、嵌合接続凹部57の底に引っ掛かって中継端子30の脱落を防止する固定爪74が複数形成されている。また、固定基板部72には、コンデンサ29のリード69に接触して組み付け時に溶接される凸形状の溶接部75が形成されている。また、中継端子30は、嵌合接続凹部57の固定部分に差し込んで位置決めをするための貫通孔76が設けられている。
【0040】
タブ接続部73は、箱状に形成されている。タブ接続部73の内部には、電線側端子26の接続タブ39に弾性的に接触する弾性接触片(図示省略)が形成されている。
【0041】
中継端子30は、嵌合接続凹部57の固定部分に差し込まれて位置決め固定され、また、嵌合接続凹部57の位置決めリブによっても位置決めされ、さらに、自身の固定爪74が嵌合接続凹部57の底に引っ掛かることから、ガタ付きなく嵌合接続凹部57に取り付けられるようになっている。
【0042】
アース端子31は、導電性を有する金属からなり、ネジ止め用の貫通孔77を有するアース部78と、このアース部78に連続するとともに、電子部品収納凹部56の開口部を覆うようなカバーとしての形状に形成される基部79と、基部79に連続する接続脚部80とを有している。
【0043】
基部79は、前記の如くカバーの機能を有しており、ケース28の係止突起61に引っ掛かるような嵌合部81、82が形成されている。また、基部79には、車両ボディの上記座面に差し込まれて係止されるクランプ32を取り付けるためのクランプ着脱部83が形成されている。基部79は、電子部品収納凹部56に収納された後のコンデンサ29を押さえつけることができるような形状に形成されている。
【0044】
嵌合部81、82は、略枠状であって、それぞれ基部79の側部から垂れ下がるように形成されている。嵌合部81、82は、ケース28の係止突起61を乗り越えるために必要十分な可撓性を有している。クランプ着脱部83は、基部79を切り欠くようなスリット状に形成されている。クランプ着脱部83は、クランプ32を差し込んだ後、このクランプ32をスライドさせて固定することができるように形成されている。クランプ着脱部83は、クランプ32を差し込む部分が嵌合部82に連成されている。
【0045】
接続脚部80は、嵌合接続凹部57に差し込まれる部分であって、帯片をL字状に折り曲げるようにして形成されている。接続脚部80のL字状に折り曲がる部分には、コンデンサ29のリード68を逃がすようなスリット84が形成されている。また、嵌合接続凹部57の底に対応する部分には、リード68に接触して溶接がなされる凸形状の溶接部85が形成されている。
【0046】
クランプ32は、合成樹脂製の部材であって、アース端子31に対して着脱自在となる構造であるとともに、車両ボディの上記座面に差し込まれてこの部分に係止される構造になっている。クランプ32は、係止部としての機能を有している。クランプ32は、アース端子31の基部79に平行な基板86と、この基板86の表面に設けられる支柱87と、可撓性を有し支柱87に連成される一対の係止羽根88とを有している。クランプ32は、車両ボディの上記座面に形成されたクランプ穴に一対の係止羽根88を差し込んでこの係止羽根88の各端部を上記クランプ穴の開口縁に引っ掛けることができるようになっている。
【0047】
コンデンサ29は、本体89と、一対のリード68、69とを有している。
【0048】
上述したように構成されたノイズフィルタ1は、図1に示したように、電線2と電線3が緩衝部材4を挟んでテープ5で巻かれて固定される。電線2と電線3は、電線側端子26で導体が加締められて(一括圧着されて)ユニット本体25に取り付けられてコンデンサ29と電気的に接続される。そして、アース端子31が車両ボディにネジ止めされてアース(接地)される。
【0049】
次に、本発明の発明者らは、上述した構成のノイズフィルタ1の効果を確認した。結果を図5および図6に示す。図5および図6に示したノイズフィルタ1は、緩衝部材長さYを130mm、一括圧着区間Ytを15mm、コンデンサ29の静電容量を2.2μFとした。このときのコンデンサ29の残留インダクタンスLoは23nH、電線2、3の緩衝部材長さ部分のインダクタンスがそれぞれ90nH、一括圧着区間Ytのインダクタンスが12nHとなる。
【0050】
図5は、相互インダクタンスMと結合係数kが緩衝部材4の幅X(Gap)によりどのように変化するか示したグラフである。相互インダクタンスMと結合係数kと引き出し線(電線2、3)のインダクタンスは、電線2のインダクタンスL1、電線3のインダクタンスL2とすると、次の式で表される。
【0051】
【数1】

【0052】
図5によれば、結合係数kが、緩衝部材4の幅Xが増えるに従って小さくなっていき、緩衝部材4の幅Xが20mm以上では0となることが明らかになった。また、結合係数kが小さくなるということは前記式より相互インダクタンスMも緩衝部材4の幅Xが増えるに従って小さくなるため、緩衝部材4の幅Xが20mm以上では0となることが明らかになった。
【0053】
図6は、複数の緩衝部材4の幅Xの周波数と減衰量との関係を示したグラフであり、実線が3端子接続(後述)、点線が緩衝部材4の幅Xが20mm、一点差線が緩衝部材4の幅Xが10mm、二点差線が緩衝部材4を設けない場合(0mm)、をそれぞれ示している。
【0054】
図6の3端子接続とは、図7に示しように引き出し線を引き出さずにワイヤーハーネスを構成する1本の電線6がノイズフィルタ本体22を貫通して、貫通した電線6がノイズフィルタ本体22内のコンデンサ29に接続されている接続方法であり、引き出し線を引き出さないために、引き出し線分のインダクタンスの影響を極めて小さくすることができるが、直接ワイヤーハーネス幹線に取り付けるために、ワイヤーハーネスの構成によってはノイズフィルタ本体22を取り付けることが困難になる場合もあるため、引き出し線を引き出す方法と用途に応じて選択される。
【0055】
図6によれば、引き出し線分のインダクタンスの影響が極めて小さい3端子接続を基準とすると、緩衝部材4の幅Xが20mmの場合が最も極共振周波数が基準に近いことが明らかとなった。すなわち、緩衝部材4の幅Xが0から10mm、20mmと増えるにしたがって極共振周波数(グラフ中一番多く減衰する値)が3端子接続に近づくことが明らかとなった。したがって、緩衝部材4の幅Xが0から10mm、20mmと増えるにしたがって3端子接続に近い特性を得られることが明らかとなった。なお、本実施例の場合、緩衝部材4の幅Xが20mmの場合と3端子接続では極共振周波数がずれているが、これは緩衝部材4が挟まれない一括圧着区間Ytの相互インダクタンスの影響である。また、図5より緩衝部材4の幅Xが20mm以上では相互インダクタンスMが0であるので、緩衝部材4の幅Xを20mmより多くしても極共振周波数が3端子接続に近づくことは無い。
【0056】
本実施形態によれば、ワイヤーハーネスの幹線から2本の電線2、3を引き出し束ねて、これらの電線2、3の先端の被覆を剥いて一括圧着して圧着された部分をユニット本体25内のコンデンサ29の一方の端子に電気的に接続する場合に、幹線から引き出した2本の電線2、3の間に緩衝部材4を挟んでテープ5で固定しているので、2本の電線2、3が圧着部分以外で密に重なることを防止して、引き出し線のインダクタンスを減少させることができる。
【0057】
また、緩衝部材4が発泡樹脂部材で形成されているので、電線が緩衝部材4からずれにくく、電線2、3の位置関係が変化しにくい。
【0058】
なお、上述した実施形態では、2本の電線2、3を引き出して、一括圧着してコンデンサ29の接続する形態で、電線2、3の併走部分に緩衝部材4を挟んでいたが、図8に示すように3端子接続でも、ノイズフィルタ本体22の一方側から他方側へ抜けた後に、他方側から折り返して、電線6のノイズフィルタ本体22に向かう部分と折り返した部分とが併走する場合がある。このような場合においても、併走区間において緩衝部材4を挟みテープ5で固定することで、電線6のインダクタンスによる影響を減少させることができる。
【0059】
また、上述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ノイズフィルタ
2、3 電線(2本の電線)
4 緩衝部材
5 テープ
6 電線
28 ケース(ハウジング)
29 コンデンサ
68 リード(一方の端子)
69 リード(他方の端子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に設けられて一方の端子が接地されたコンデンサと、互いの先端部分の導体を圧着して前記コンデンサの他方の端子に電気的に接続されるとともに前記ハウジングから同じ方向に向かって併走している2本の電線と、を備えたノイズフィルタにおいて、
前記2本の電線が併走している部分では、前記2本の電線が非導電性材料で形成された緩衝部材を挟んで固定されていることを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項2】
ハウジング内に設けられて一方の端子が接地されたコンデンサと、前記ハウジングの一方側から他方側へ貫通し、前記ハウジング内で前記コンデンサの他方の端子に電気的に接続される電線と、を備えたノイズフィルタにおいて、
前記ハウジングの他方側へ抜けた前記電線が前記ハウジングの一方側へ折り返され、
前記ハウジングの一方側へ向かう前記電線と前記折り返された前記電線とが併走している部分では、併走している電線の間に非導電性材料で形成された緩衝部材が挟まれて固定されていることを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項3】
前記緩衝部材が、発泡樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1または2のうちいずれか一項に記載のノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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