説明

ノズルクリーニング装置およびインクジェットプリンタ

【課題】小型化が可能であって、吸収力を向上させるとともに洗浄液の使用量を軽減し、作業効率を向上させる。
【解決手段】液滴吐出ヘッド10のノズル面11に設けられたノズルを清掃するノズルクリーニング装置20において、洗浄液を給液する給液部23と、ノズル面11と非接触状態で配置されており、端部に開口部を有する中空形状で形成され、給液部23から給液された洗浄液を開口部から吸引する吸引部21と、を備え、給液部23は、開口部のノズル面11側の先端部とノズル面11との間に洗浄液を給液して洗浄液の液だまりを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタの液滴吐出ヘッドのノズルを清掃するノズルクリーニング装置、および該ノズルクリーニング装置を搭載したインクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンタの液滴吐出ヘッドのノズルを清掃するために、様々なクリーニング技術が知られている。例えば、ノズル端面に非接触で対向して設けられたクリーニング手段の開口部に表面張力によりメニスカス(液だまり)を形成し、該メニスカスをノズル端面と接触させることにより、ノズル端面に付着した微小インク滴とメニスカスとを一体化させてノズル端面より除去するメンテナンス装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ウェットワイパーノズル(流体アプリケータ)が印字ヘッドの全面に清掃流体を付与し、ウェットワイパーノズルに隣接する減圧ノズルが印字ヘッドに付与された清掃流体を含む汚染物を減圧によって除去する液体インクプリンタが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、吸引口の周囲に設けられた洗浄液吐出口から吐出された洗浄液がノズル孔やその周辺を洗浄し、吸引口に接続された負圧発生源の吸引により洗浄液を吸引口から回収することで、ヘッドの清掃を行うインクジェットプリンタ用ヘッド清掃装置が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−42678号公報
【特許文献2】特開平9−174863号公報
【特許文献3】特開2005−131969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のメンテナンス装置では、メニスカスを形成するインクとインク端面に付着した微小インク滴とを一体化させた場合のインクの吸引力のみを利用しているため、ノズル穴内の増粘したインクの吸収が困難であるという問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2の液体インクプリンタでは、清掃流体の付与する複数の流体アプリケータと、清掃流体を含む汚染物する複数の減圧ノズルとが独立しているため、装置を小型化することが困難であるという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献3のインクジェットプリンタ用ヘッド清掃装置では、吸引口外周に洗浄液吐出口を設けているため、装置を小型化することが困難であり、洗浄液の使用量も多くなることが想定できる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型化が可能であって、吸収力を向上させるとともに洗浄液の使用量を軽減し、作業効率を向上させることができるノズルクリーニング装置およびインクジェットプリンタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、液滴吐出ヘッドのノズル面に設けられたノズルを清掃するノズルクリーニング装置において、洗浄液を給液する給液部と、前記ノズル面と非接触状態で配置されており、端部に開口部を有する中空形状で形成され、前記給液部から給液された前記洗浄液を前記開口部から吸引する吸引部と、を備え、前記給液部は、前記開口部の前記ノズル面側の先端部と前記ノズル面との間に前記洗浄液を給液して前記洗浄液の液だまりを形成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、請求項1〜7に記載のクリーニング装置を搭載したインクジェットプリンタである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型化が可能であって、吸収力を向上させるとともに洗浄液の使用量を軽減し、作業効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態1にかかるノズルクリーニング装置の全体構成図である。
【図2】図2は、給液部と吸引部の詳細な説明図である。
【図3】図3は、給液部と吸引部を図2における矢印Aから見た説明図である。
【図4】図4は、給液部と吸引部の動作説明図である。
【図5】図5は、給液部と吸引部の動作説明図である。
【図6】図6は、給液部と吸引部の動作説明図である。
【図7】図7は、給液部と吸引部の動作説明図である。
【図8】図8は、ノズルクリーニング装置によるノズルクリーニング方法の流れを示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施の形態2にかかるノズルクリーニング装置の全体構成図である。
【図10】図10は、吸引部の詳細な説明図である。
【図11】図11は、吸引部を図10における矢印Aから見た説明図である。
【図12】図12は、ノズルと吸引部の動作説明図である。
【図13】図13は、ノズルと吸引部の動作説明図である。
【図14】図14は、ノズルと吸引部の動作説明図である。
【図15】図15は、ノズルと吸引部の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるノズルクリーニング装置、および該ノズルクリーニング装置を搭載したインクジェットプリンタの最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかるノズルクリーニング装置の全体構成図である。ノズルクリーニング装置20は、インクジェットプリンタ等の液滴吐出ヘッド10に設けられたノズルのうち、液滴を正常に吐出不能な不良ノズルを洗浄液によって清掃する装置である。ノズルクリーニング装置20は、図1に示すように、給液部23、給液流路25、外気導入弁26、および給液弁27と、給液タンク28と、正圧管29と、排気弁30と、ポンプPと、廃液タンク33と、吸引部21、吸引管31、および吸引弁32と、負圧管34と、外気導入弁35と、検知部(不図示)と、駆動部(不図示)とを主に備えている。図2は、給液部と吸引部の詳細な説明図である。図3は、給液部と吸引部を図2における矢印Aから見た説明図である。
【0016】
液滴吐出ヘッド10は、ノズル面11に、印写に使用される液滴を吐出する複数のノズルが設けられている。
【0017】
検知部は、液滴吐出ヘッド10のノズル毎に液滴の吐出状態を検知して、液滴の正常な吐出が不能な不良ノズルを検知するものである。この検知部による不良ノズルの検知は、公知の手法を用いる。また、駆動部は、検知部により不良ノズルが検知された場合、不良ノズルと対向する位置にノズルクリーニング装置20を移動するものである。このような駆動部による移動の一例としては、以下のようになる。不良ノズルのあるヘッドのノズル列をキャリッジ移動により吸引部21(給液部23)の中心と合わせ、不良ノズル位置との合わせは、直接スライドステージ等で移動する。この時、不良ノズルの位置情報により適正な位置に移動する。直接スライドステージへのノズルクリーニング装置の固定は、小型化を考慮し、吸引部21(給液部23)のみとすることが好ましい。なお、駆動部による移動の手法はこれに限定されるものではない。
【0018】
給液部23は、洗浄液が通過可能な中空形状で形成されており、吸引部21の開口部22のノズル面11側の先端部22a近傍に差し込まれている。この給液部23は、給液タンク28に収容されている洗浄液を不良ノズル近傍である、吸引部21の開口部22のノズル面11側の先端部22aとノズル面11との間に洗浄液を給液して洗浄液の液だまりを形成するものであり、給液口23aが設けられている。
【0019】
給液口23aは、吸引部21の中空部分に位置する端面がパイプを斜めにカットした形状で形成され、カット面がノズル側に対抗しているため、洗浄液の液だまりが液滴吐出ヘッド10側に形成されやすくなっている。また、給液部23は、給液口23aが吸引部21の開口部22の先端部22aより内部側、すなわち先端部22aの端面より下部であって、開口部22におけるノズル面11と略平行な開口面の中央近傍に位置するように、ノズル面11に略平行に接続されて配置されている。
【0020】
給液流路25は、給液する洗浄液を通過させる流路であり、一端が給液部23の給液口23aと反対側の端部に接続され、他端が給液タンク28に接続されている。
【0021】
給液弁27は、給液流路25に設けられている弁であり、開閉することで給液流路25を通過する洗浄液の給液量を制御する弁である。本実施の形態では、給液弁27が給液弁27を開閉して、給液口23aから給液される洗浄液の給液量を制御することで、給液部23は、少なくとも1つのノズルに接触するように洗浄液の液だまりを形成することが可能になる。
【0022】
外気導入弁26は、給液流路25における給液部23と給液弁27との間の流路から分岐した管路中に設けられ、給液流路25への外気の導入または遮断を調整する弁であり、開状態の場合に給液流路25に外気を導入し、閉状態の場合に給液流路25に外気を遮断する。
【0023】
給液タンク28は、密閉容器であり、内部にノズルを洗浄する洗浄液を収容するものである。
【0024】
ポンプPは、圧力の作用で洗浄液を送る機械であり、本実施の形態では、加圧することで正圧Ppを発生させ、正圧管29を介して洗浄液を給液している。ポンプPは、モータ駆動電圧の可変によって洗浄液の給液量を制御することができる。また、正圧管29に設けられた排気弁30を開閉することにより洗浄液の給液量を制御してもよい。
【0025】
吸引部21は、端部に開口部22を有する中空形状で形成され、給液部23から給液された洗浄液を開口部22から吸引する。また、吸引部21は、ノズル面11と非接触状態で配置され、開口部22のノズル面11側の先端部22a近傍の給液部23の下方にリブ24が設けられており、リブ24と開口部22とによって安定した液だまりが形成される。
【0026】
吸引管31は、吸引した洗浄液を通過させる管であり、一端が吸引部21の開口部22の先端部22aと反対側の端部と接続され、他端が廃液タンク33に接続されている。
【0027】
吸引弁32は、吸引管31に設けられている弁であり、閉状態にすることで吸引管31内の負圧を停止し、開状態にすることで吸引管31内を負圧にする。
【0028】
廃液タンク33は、密閉容器であり、ノズルを洗浄した後の廃棄する洗浄液を収容するものである。
【0029】
ポンプPは、減圧することで負圧Pvを発生させ、負圧管34および吸引管31を介して吸引部21から洗浄液を吸引している。
【0030】
外気導入弁35は、負圧管34に接続され、負圧管34への外気の導入または遮断を調整する弁であり、開状態の場合に負圧管34に外気を導入し、閉状態の場合に負圧管34に外気を遮断する。
【0031】
次に、給液部23から洗浄液を給液して液だまりを形成し、吸引部21により液だまりの洗浄液を吸引するまでのノズルクリーニング装置20の動作について、図4〜7を用いて説明する。図4〜7は、給液部と吸引部の動作説明図である。
【0032】
液滴吐出ヘッド10の不良ノズル11aを清掃する場合、図4に示すように、ノズルクリーニング装置20を不良ノズル11aに対向する位置に移動する。
【0033】
次に、ノズルクリーニング装置20は、吸引管31の吸引弁32を閉状態にし、外気導入弁35を開状態にし、さらに外気導入弁26を閉状態にして、給液部23によって洗浄液を給液する。具体的には、ポンプPを駆動して正圧Ppを発生させ、排気弁30を制御し給液タンク28の内圧を調整して、洗浄液を給液流路25に送り出す。そして、給液弁27で洗浄液の給液量を制御し、給液部23の先端部の給液口23aから洗浄液を給液して、図5に示すように、吸引部21の開口部22の先端部22aとノズル面11との間に洗浄液の液だまりMを形成する。
【0034】
このとき、少なくとも1つの不良ノズル(ここでは、不良ノズル11a)を覆う接触面を持った液だまりを形成した状態で、給液弁27を閉状態にして液だまりを保持する。そして、排気弁30を全開状態にして、次動作である吸引部21による吸引動作における真空度性能を十分発揮させるようにする。
【0035】
そして、ノズルクリーニング装置20は、吸引能力を十分発揮させるために、外気導入弁35を閉状態にし、廃液タンク33内部の真空度を適正値まで上昇させ吸引弁32を一気に開状態にして負圧を発生させることにより、不良ノズル11aのインク増粘による固着や紙粉や不良ノズル11aの内部の気泡などの不具合要因物質を除去することができ、図6に示すようになる。
【0036】
次に、クリーニングを必要とする不良ノズルが他にもある場合は、その不良ノズルに対向する位置にノズルクリーニング装置20を移動して、上記の動作を繰り返す。一方、全ての不良ノズルのクリーニングが終了した場合は、外気導入弁26を開状態にし、給液部23内の洗浄液を吸引し、図7に示す状態とする。このような動作を最後に行うことで、次回の不良ノズルのクリーニング動作において新たな洗浄液を供給することができる。そして、一連のクリーニング動作を終了する。
【0037】
次に、以上のように構成されたノズルクリーニング装置20によるノズルクリーニング方法について説明する。図8は、ノズルクリーニング装置によるノズルクリーニング方法の流れを示すフローチャートである。このノズルクリーニング方法は、インクジェットプリンタの電源投入時や、インクジェットプリンタにより指定枚数の印写を行った時点、または印写不良が発見され強制的に不良ノズルの検知と維持回復を行う設定がされている場合などに実施される。
【0038】
まず、検知部は、液滴吐出ヘッド10のノズル毎に吐出状態を検知し(ステップS1)、液滴の正常な吐出が不能な不良ノズルがあるか否かを判断する(ステップS2)。不良ノズルがなかった場合(ステップS2:No)、全て正常なノズルであり、ノズルの清掃は不要であるため、処理を終了する。
【0039】
一方、不良ノズルがあった場合(ステップS2:Yes)、ノズルクリーニング装置20は、不良ノズルを記憶部(不図示)に記憶する(ステップS3)。次に、ノズルクリーニング装置20は、不良ノズルが予め定めた所定の数以上か否かを判断することにより、ノズルの洗浄方式を選定する(ステップS4)。なお、回復の時間と洗浄液の使用量の比較によって不良ノズルの多少を判断するように構成してもよい。
【0040】
不良ノズルが所定の数以上である場合(ステップS4:Yes)、インクジェットプリンタは、全てのノズルを同時に洗浄する(ステップS5)。具体的には、全てのノズルに対して吸引したりワイピングを行ったりする一般的なメンテナンス方式を行い、ステップS12へ進む。
【0041】
一方、不良ノズルが所定の数以下である場合(ステップS4:No)、ノズルクリーニング装置20は、記憶した不良ノズルを読み込む(ステップS6)。駆動部は、ノズルクリーニング装置20を検知した不良ノズルの位置に移動する(ステップS7)。そして、ノズルクリーニング装置20は、給液部23により、吸引部21の先端部22aと液滴吐出ヘッド10のノズル面11との間に洗浄液を給液し(ステップS8)、洗浄液の液だまりを形成する。次に、ノズルクリーニング装置20は、吸引部21により洗浄液を吸引して(ステップS9)、不良ノズルを洗浄する。
【0042】
そして、ノズルクリーニング装置20は、記憶した不良ノズルを全て洗浄できたか否かを判断する(ステップS10)。不良ノズルを全て洗浄できていない場合(ステップS10:No)、駆動部は、ノズルクリーニング装置20を次の不良ノズルの位置に移動する(ステップS11)。
【0043】
一方、不良ノズルを全て洗浄できた場合(ステップS10:Yes)、検知部は、液滴吐出ヘッド10のノズル毎に吐出状態を再検知し(ステップS12)、不良ノズルがあるか否かを判断する(ステップS13)。不良ノズルがなかった場合(ステップS13:No)、インクジェットプリンタは、印写を行う(ステップS14)。
【0044】
一方、不良ノズルがあった場合(ステップS13:Yes)、インクジェットプリンタは、不良ノズルの回復が可能か否かを判断する(ステップS15)。不良ノズルの回復が可能である場合(ステップS15:Yes)、ステップS3に戻って処理を繰り返す。一方、不良ノズルの回復が可能でない場合(ステップS15:No)、インクジェットプリンタは、利用者に向けてその旨の警告を行い(ステップS16)、印写を停止する。なお、不良ノズルの回復が不能と判断する場合としては、例えば、不良ノズルを所定の回数、回復を試みても回復しない場合、または操作者が中断/停止を実行した場合等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
このように、本実施の形態のノズルクリーニング装置20は、不良ノズルが所定の数以下である場合に、その不良ノズルに対して給液部23から洗浄液を給液して、吸引部21の開口部22の先端部22aと液滴吐出ヘッド10のノズル面11との間に洗浄液の液だまりを形成することで、不良ノズルを回復するための必要最適量の洗浄液のみを給液して洗浄することができ、洗浄液の使用量を軽減し、作業効率を向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態における給液部23は、吸引部21の開口部22の中央近傍で、開口部22の先端部22aより下部に位置にしているので、給液部23と吸引部21とが一体となっているため小型化が可能であって、吸引部21の開口部22の先端部22aのみに洗浄液の液だまりを形成しやすく、必要最適量の洗浄液を安定して給液できる。また、洗浄液の液だまりを形成する際に、吸引弁32を閉状態にすることで吸引部21の負圧を停止しているため、開口部22の先端部22aに安定して洗浄液の液だまりを形成できる。また、廃液タンク33内部の真空度を適正値まで上昇させてから吸引弁32を一気に開状態にして負圧を発生させることにより、洗浄液の液だまりの吸収力を向上させることができる。
【0047】
また、その液だまりは少なくとも1つの不良ノズルに接触するように洗浄液の給液量を制御するための給液弁27を給液流路25に設けているため、必要最適量の洗浄液を給液し、洗浄液の使用量の軽減と性能維持を確実に行うことができる。不良ノズルを検知して、該不良ノズルに対向する位置にノズルクリーニング装置20を移動して不良ノズルの洗浄を行うことで、不良ノズルのみの回復を選択的に行うことができるため、不良ノズルの回復時間を短縮するとともに洗浄液の使用量を軽減できる。
【0048】
(実施の形態2)
実施の形態1では、給液部23により洗浄液を給液する構成となっていたが、本実施の形態では、液滴吐出ヘッドのノズルから液滴として洗浄液を給液する構成となっている。
【0049】
図9は、実施の形態2にかかるノズルクリーニング装置の全体構成図である。ノズルクリーニング装置60は、液滴吐出ヘッド50に設けられたノズルのうち、液滴を正常に吐出不能な不良ノズルを洗浄液によって清掃する装置であって、吸引部61、吸引管31、および吸引弁32と、ポンプPと、廃液タンク33と、負圧管74と、検知部(不図示)と、駆動部(不図示)とを主に備えている。図10は、吸引部の詳細な説明図である。図11は、吸引部を図10における矢印Aから見た説明図である。ここで、廃液タンク33と、吸引管31と、吸引弁32の構成および機能は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0050】
液滴吐出ヘッド50は、ノズル面51に、印写に使用される液滴を吐出する複数のノズルが設けられている。また、本実施の形態では、このノズルが洗浄液としての液滴を給液する給液部としての役割も果たす。すなわち、液滴吐出ヘッド50に設けられた複数のノズルのうち、不良ノズルの両サイドのノズルが液滴を吐出し、吸引部61の開口部62の先端部62aとノズル面51との間に液滴を給液して液滴の液だまり(洗浄液の液だまり)を形成する。また、液滴吐出ヘッド50のノズルは、吸引弁32が閉状態の場合に、液滴の給液量を制御して、少なくとも1つのノズルに接触するように液滴の液だまりを形成する。
【0051】
検知部は、液滴吐出ヘッド50のノズル毎に液滴の吐出状態を検知して、液滴の正常な吐出が不能な不良ノズルを検知するものである。この検知部による不良ノズルの検知は、公知の手法を用いる。また、駆動部は、検知部により不良ノズルが検知された場合、不良ノズルと対向する位置であって、不良ノズルの両サイドのノズルから吸引部61に洗浄液を給液できる位置にノズルクリーニング装置60を移動するものである。
【0052】
吸引部61は、端部に開口部62を有する中空形状で形成され、ノズルから給液された液滴を開口部62から吸引する。また、吸引部61は、ノズル面51と非接触状態で配置され、開口部62のノズル面51側の先端部62a近傍であって、ノズルに対向する位置にリブ84が設けられている。ノズルは、このリブ84とノズル面51との間に液滴を給液して液滴の液だまりを形成することで、安定した液だまりを形成できる。
【0053】
ポンプPは、圧力の作用で洗浄液を送る機械であり、本実施の形態では、減圧することで負圧Pvを発生させ、負圧管34および吸引管31を介して吸引部61から洗浄液を吸引している。
【0054】
次に、液滴吐出ヘッド50のノズルから液滴を給液して液だまりを形成し、吸引部61により形成された液だまりの液滴を吸引するまでのノズルクリーニング装置60の動作について、図12〜15を用いて説明する。図12〜15は、ノズルと吸引部の動作説明図である。
【0055】
液滴吐出ヘッド50の不良ノズル51aを清掃する場合、図12に示すように、ノズルクリーニング装置60を不良ノズル51aに対向する位置に移動する。
【0056】
次に、ノズルクリーニング装置60は、吸引管31の吸引弁32を閉状態にして、図13に示すように、不良ノズルの両サイドのノズル51b、51cによって液滴を給液する。この時、ノズル51b、51cは給液する液滴の給液量を制御し、図14に示すように、吸引部61の開口部62の先端部62aとノズル面51との間に液滴の液だまりを形成する。このとき、少なくとも1つの不良ノズル(ここでは、不良ノズル51a)を覆う接触面を持った液だまりMを形成する。
【0057】
そして、ノズルクリーニング装置60は、吸引能力を十分発揮させるために、吸引管31の吸引弁32を閉状態にし、ポンプPを駆動して廃液タンク33内部の真空度を適正値まで上昇させ吸引弁32を一気に開状態にして負圧を発生させることにより、実施の形態1と同様に、不良ノズル51aのインク増粘による固着や紙粉や不良ノズル51aの内部の気泡などの不具合要因物質を除去することができ、図15に示すようになる。
【0058】
次に、クリーニングを必要とする不良ノズルが他にもある場合は、その不良ノズルに対向する位置にノズルクリーニング装置60を移動して、上記の動作を繰り返す。一方、全ての不良ノズルのクリーニングが終了した場合は、一連のクリーニング動作を終了する。なお、液滴(洗浄液)の給液方法としては、不良ノズルの両サイドのノズルだけでなく、他の位置の正常ノズルから給液し、その後に不良ノズルに対向する位置にノズルクリーニング装置60を移動してクリーニングの作業効率を向上させてもよい。
【0059】
以上のように構成されたノズルクリーニング装置60によるノズルクリーニング方法は、実施の形態1と同様である(図8参照)。本実施の形態のノズルクリーニング装置60では、図8のステップS8において、液滴吐出ヘッド50のノズルにより、吸引部61の先端部62aと液滴吐出ヘッド50のノズル面51との間に洗浄液を給液する。
【0060】
このように、本実施の形態のノズルクリーニング装置60は、不良ノズルが所定の数以下である場合に、その不良ノズルに対して液滴吐出ヘッド50の正常ノズルから洗浄液としての液滴を給液して、吸引部61の開口部62の先端部62aと液滴吐出ヘッド50のノズル面51との間に液滴の液だまりを形成することで、不良ノズルを回復するための必要最適量の洗浄液のみを給液して洗浄することができ、洗浄液の使用量を軽減し、作業効率を向上させることができる。
【0061】
また、本実施の形態では、液滴吐出ヘッド50のノズルから洗浄液としての液滴を吐出するので、別個に洗浄液を給液する構成を設けることなく、小型化が可能である。また、液滴の液だまりを形成する際に、吸引弁32を閉状態にすることで吸引部61の負圧を停止しているため、開口部62の先端部62aに安定して洗浄液の液だまりを形成できる。また、廃液タンク33内部の真空度を適正値まで上昇させてから吸引弁32を一気に開状態にして負圧を発生させることにより、洗浄液の液だまりの吸収力を向上させることができる。
【0062】
また、その液だまりは少なくとも1つの不良ノズルに接触するように液滴の給液量を制御しているため、必要最適量の液滴を給液し、液滴の使用量の軽減と性能維持を確実に行うことができる。不良ノズルを検知して、該不良ノズルに対向する位置にノズルクリーニング装置60を移動して不良ノズルの洗浄を行うことで、不良ノズルのみの回復を選択的に行うことができるため、不良ノズルの回復時間を短縮するとともに洗浄液の使用量を軽減できる。
【0063】
実施の形態1、2では、ポンプPを1台用いて洗浄液の液だまりを形成する動作を説明したが、これに限定されることなく、吸引機能と給液機能を別々のポンプで行うよう構成してもよい。また、実施の形態1および実施の形態2を合わせた構成とし、ノズルの状況に応じてクリーニング方法を選択する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10、50 液滴吐出ヘッド
11、51 ノズル面
11a、51a 不良ノズル
20、60 ノズルクリーニング装置
21、61 吸引部
22、62 開口部
22a、62a 先端部
23 給液部
23a 給液口
24、84 リブ
25 給液流路
26 外気導入弁
27 給液弁
28 給液タンク
29 正圧管
30 排気弁
31 吸引管
32 吸引弁
33 廃液タンク
34、74 負圧管
35 外気導入弁
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ヘッドのノズル面に設けられたノズルを清掃するノズルクリーニング装置において、
洗浄液を給液する給液部と、
前記ノズル面と非接触状態で配置されており、端部に開口部を有する中空形状で形成され、前記給液部から給液された前記洗浄液を前記開口部から吸引する吸引部と、を備え、
前記給液部は、前記開口部の前記ノズル面側の先端部と前記ノズル面との間に前記洗浄液を給液して前記洗浄液の液だまりを形成することを特徴とするノズルクリーニング装置。
【請求項2】
前記給液部は、前記洗浄液を給液する給液口が設けられ、前記給液口が前記開口部の前記先端部より内部側であって、前記開口部の中央近傍に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のノズルクリーニング装置。
【請求項3】
前記給液部により給液する前記洗浄液を通過させる給液流路と、
前記給液流路に設けられ、開閉することで前記洗浄液の給液量を制御する給液弁と、
前記吸引部により吸引した前記洗浄液を通過させる吸引管と、
前記吸引管内を負圧にする圧力機構と、
前記吸引管に設けられ、閉状態にすることで前記吸引管内の負圧を停止する吸引弁と、をさらに備え、
前記給液部は、前記吸引弁が閉状態の場合に、前記給液弁により前記洗浄液の給液量が制御され、少なくとも1つのノズルに接触するように前記洗浄液の液だまりを形成することを特徴とする請求項2に記載のノズルクリーニング装置。
【請求項4】
前記給液部は、前記液滴吐出ヘッドの前記ノズルであり、
前記洗浄液は、前記ノズルから吐出される液滴であることを特徴とする請求項1に記載のノズルクリーニング装置。
【請求項5】
前記吸引部により吸引した前記液滴を通過させる吸引管と、
前記吸引管内を負圧にする圧力機構と、
前記吸引管に設けられ、閉状態にすることで前記吸引管内の負圧を停止する吸引弁と、をさらに備え、
前記ノズルは、前記吸引弁が閉状態の場合に、前記液滴の給液量を制御して、少なくとも1つのノズルに接触するように前記液滴の液だまりを形成することを特徴とする請求項4に記載のノズルクリーニング装置。
【請求項6】
前記吸引部の前記開口部の前記先端部近傍であって、前記ノズルと対向する位置にリブをさらに備え、
前記ノズルは、前記リブと前記ノズル面との間に前記液滴を給液して前記液滴の液だまりを形成することを特徴とする請求項1、4、5に記載のノズルクリーニング装置。
【請求項7】
前記液滴の正常な吐出が不能な不良ノズルを検知する検知手段と、
前記不良ノズルが検知された場合、前記不良ノズルと対向する位置に前記ノズルクリーニング装置を移動する駆動手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のノズルクリーニング装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のクリーニング装置を搭載したインクジェットプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−189647(P2011−189647A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58350(P2010−58350)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】