説明

ノズルプレートの検査装置およびノズルプレートの検査方法

【課題】短時間でCCDカメラのフォーカシングを行うことができるノズルプレートの検査装置およびノズルプレートの検査方法を提供することである。
【解決手段】マザープレート1がセットされるセットステージ12と、セットステージ12を介してマザープレート1を移動させる移動テーブル13と、各ノズル孔3のメニスカス形成部8にフォーカシングし、画像認識するCCDカメラ14と、各ノズル孔3内部を照明する透過照明17と、CCDカメラ14とマザープレート1の表面との距離を計測するレーザ変位計15と、これら装置を制御する制御装置18と、を備え、制御装置18は、各ノズル孔3の近傍における距離およびマザープレート1の移動量から、各ノズル孔3の位置情報および各ノズル孔3に対するフォーカシングの距離情報を取得し、取得情報に基づいて、各ノズル孔3の内部を連続的に画像認識して、異物43の有無を検査するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドに組み込まれるノズルプレートの複数のノズル孔を、そのノズル列方向に連続的に検査するノズルプレートの検査装置およびノズルプレートの検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサプライプレート(プレート)の外観検査装置(検査装置)として、連通口(ノズル孔)の撮像結果に基づいて、連通口内部のカエリ(異物)の有無を検査するものが知られている(特許文献1参照)。
この外観検査装置は、セットされたサプライプレートをX、YおよびZ軸方向に移動する走査駆動部と、サプライプレートに形成された連通口をサプライプレートの上方から画像認識するカメラと、サプライプレートの下方から連通口内部を照明する透過照明部と、を備えている。
この外観検査装置では、カメラにより、検査対象となる連通口にフォーカシングして画像認識し、カエリのない連通口の画像と比較することで、連通口に形成されたカエリの有無を、サプライプレートに形成された全連通口について順次検査する。
【特許文献1】特開2008−111695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような外観検査装置では、画像認識する連通口毎にカメラのフォーカシングを行っており、特に、検査対象となるサプライプレート自体が大きく歪んでいた場合には、カメラに対する各連通口の距離がそれぞれ大きく異なるため、フォーカシングに時間がかかり、サプライプレートの全連通口を検査するには検査時間が長くなるという問題があった。
【0004】
本発明は、短時間で画像認識手段のフォーカシングを行うことができるノズルプレートの検査装置およびノズルプレートの検査方法を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のノズルプレートの検査装置は、インクジェットヘッドに組み込まれるノズルプレートの複数のノズル孔を、そのノズル列方向に連続的に検査するノズルプレートの検査装置であって、ノズルプレートがセットされるセットステージと、セットステージを介して、ノズルプレートをノズル列方向に移動させる移動テーブルと、各ノズル孔に対し、ノズルプレートの表面から所定の深さ位置にフォーカシングして、各ノズル孔の内部を画像認識する画像認識手段と、ノズルプレートの裏面から各ノズル孔の内部を照明する透過照明と、画像認識手段とノズルプレートの表面との距離を計測するレーザ変位計と、移動テーブル、画像認識手段、透過照明およびレーザ変位計を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、ノズル列方向に移動するノズルプレートの各ノズル孔の近傍における距離を計測し、この計測結果とノズルプレートの移動量とに基づいて、各ノズル孔の位置情報および各ノズル孔に対するフォーカシングの距離情報とを取得し、位置情報および距離情報に基づいて、ノズル列方向に移動するノズルプレートにおける各ノズル孔の内部を連続的に画像認識して、異物の有無をそれぞれ検査することを特徴とする。
【0006】
本発明のノズルプレートの検査方法は、インクジェットヘッドに組み込まれるノズルプレートの複数のノズル孔の内部を、画像認識手段により、そのノズル列方向に連続的に画像認識して検査するノズルプレートの検査方法であって、ノズルプレートをノズル列方向に移動させながら、各ノズル孔の近傍における画像認識手段とノズルプレートの表面との距離を計測する計測工程と、この計測結果とノズルプレートの移動量とに基づいて、各ノズル孔の位置情報および各ノズル孔の内部に対する画像認識手段のフォーカシング位置の距離情報を取得するフォーカシング座標取得工程と、位置情報および距離情報に基づいて、ノズル列方向に移動するノズルプレートにおける各ノズル孔の内部の所定の深さ位置を連続的に画像認識する画像認識工程と、画像認識の認識結果から、各ノズル孔における異物の有無をそれぞれ検査する検査工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
これらの構成によれば、ノズル列方向に移動するノズルプレートの各ノズル孔の近傍における画像認識手段とノズルプレートの表面との距離とノズルプレートの移動量とに基づいて、各ノズル孔の位置情報および各ノズル孔に対するフォーカシングの距離情報とを取得し、取得した位置情報および距離情報に基づいて、各ノズル孔の内部の所定の深さ位置を連続的に画像認識するため、画像認識手段がフォーカシング位置にフォーカシングする時間を短縮することができる。また、結果的にノズルプレートに形成された全ノズル孔内部の異物の有無の検査時間を短縮することができる。なお、計測と画像認識とをノズル孔毎に行ってもよいが、ノズル列分の計測を行った後、ノズル列分の画像認識を行ってもよい。また、検査対象となるノズルプレートは、1のインクジェットヘッドに対応する単品であってもよいし、この単品を複数枚取りするためのマザープレートであってもよい。
【0008】
上記したノズルプレートの検査装置において、セットステージに対し、画像認識手段を上下動させるZテーブルを、更に備え、制御手段は、画像認識による各ノズル孔の認識結果と、予め記憶しているノズル孔のテンプレートとが合致しない場合に、Zテーブルを制御して認識結果とテンプレートとを合致させた後、再度の画像認識と異物の有無の検査とを実行することが、好ましい。
【0009】
上記したノズルプレートの検査方法において、画像認識工程において、画像認識による各ノズル孔の認識結果と、予め記憶しているノズル孔のテンプレートとが合致しない場合に、画像認識手段を上下させて認識結果とテンプレートとを合致させた後、再度の画像認識工程を実施することが、好ましい。
【0010】
これらの構成によれば、計測位置とノズル孔の間でノズルプレートが大きく歪んでいて、認識結果とテンプレートとが合致しない場合であっても、画像認識手段の上下方向のズレを調整することで、認識結果とテンプレートを合致させることができるため、画像認識手段によるフォーカシング時間を短縮することができる。
【0011】
この場合、レーザ変位計が、ノズル列と平行に配設されたラインタイプのもので構成されていることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、画像認識手段と複数のノズル孔の近傍における距離を一度に計測することができるため、フォーカシング位置情報の取得時間を短縮することができ、検査時間を短縮することができる。
【0013】
この場合、所定の深さ位置が、各ノズル孔のメニスカス形成部に相当する位置であることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、ノズルプレートをインクジェットヘッドに搭載したときに、飛行曲がり等の原因となるメニスカス形成部の異物の有無を、確実に検査することができる。
【0015】
この場合、レーザ変位計が、Zテーブルに取り付けられていることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、画像認識手段およびレーザ変位計がZテーブルに固定されているため、上記の移動テーブルを利用して、画像認識手段とノズル孔の近傍における距離を、連続的に且つ正確に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、ノズルプレートの検査装置およびこれを用いたノズルプレートの検査方法について説明する。この検査装置は、インクジェットヘッドの吐出面側に貼着されるノズルプレートが複数枚取りされる大判のマザープレート(ノズルプレート)を検査対象とし、ノズル孔の加工時等に残った或いは付着した異物(主に金属片)の有無を検査するものである。そこで、まず検査対象となるマザープレートおよびマザープレートから複数枚取りされるノズルプレートについて簡単に説明する。
【0018】
図1に示すように、マザープレート1は、ノズルプレート2が複数枚取りできる大判の板状に形成されており、機能液(インク)を吐出するインクジェットヘッドの吐出ノズルとなる多数のノズル孔3を有する複数のノズルプレート形成部4を整列配置して構成されている(図1(a)参照)。このマザープレート1は、後述する検査を経た後、プレス打抜きされてノズルプレート2の複数枚取りが行われる。
【0019】
各ノズルプレート形成部4には、2列のノズル列5が平行に3組形成されており、各ノズル列5は、等ピッチで並べた90個のノズル孔3で構成されている(図1(b)参照)。検査に際しマザープレート1は、吐出側が裏面(下面)6となるようにセットされるが、ノズル孔3の裏面6側開口端は、裏面6に対し直角に孔開けされ、表面(上面)7側開口端は、テーパ状に孔開けされている。なお、後述する検査方法では、ノズルプレート2の表面7から約70μm入り込んだメニスカス形成部8における異物43の有無を検査している(図1(c)参照)。これにより、ノズルプレート2をインクジェットヘッドに搭載したときに、飛行曲がり等の原因となるメニスカス形成部8の異物43の有無を、確実に検査することができる。
【0020】
次に、図2を参照して、検査装置11について説明する。検査装置11は、マザープレート1がセットされるセットステージ12と、セットステージ12を介して、マザープレート1をノズル列5方向およびこれに直交する方向に移動させる移動テーブル13と、各ノズル孔3に対し、マザープレート1の表面7から所定の深さ位置にフォーカシングして、各ノズル孔3の内部を画像認識するCCDカメラ(画像認識手段)14と、CCDカメラ14とマザープレート1の表面7との距離を計測するレーザ変位計15と、セットステージ12に対し、CCDカメラ14およびレーザ変位計15を上下動させるZテーブル16と、マザープレート1の裏面6から各ノズル孔3の内部を照明する透過照明17と、これら装置を支持する図示しないフレームと、全体を収容する図示しない収容ケースと、から構成されている。また、検査装置11は、制御装置18を備えており、制御装置18は、移動テーブル13、Zテーブル16、CCDカメラ14およびレーザ変位計15を、統括的に制御する。
【0021】
この検査装置11では、移動テーブル13上にセット治具19を有するセットステージ12が配設され、これに上方からZテーブル16に取り付けられたCCDカメラ14、落射照明20およびレーザ変位計15が臨むようになっている。また、移動テーブル13にはX軸透過開口23およびY軸透過開口24が形成され、セットステージ12にはステージ開口25がそれぞれ形成されており、この開口部の下方から透過照明17が臨んでいる。マザープレート1は、セット治具19によりセットステージ12上に位置決めセットされ、移動テーブル13により主としてノズル列5方向に移動する。そして、移動するマザープレート1に上方からCCDカメラ14、落射照明20およびレーザ変位計15が臨む一方、下方から透過照明17が臨んで検査が行われる。
【0022】
移動テーブル13は、セットステージ12に載置されたマザープレート1をノズル列5方向であるX軸方向に移動させるX軸テーブル21と、セットステージ12に載置されたマザープレート1をY軸方向に移動させるY軸テーブル22と、から構成されており、それぞれ制御装置18に接続されている。X軸テーブル21の中央部には、セットステージ12より僅かに小さく形成されたX軸透過開口23が形成され、またY軸テーブル22の中央部には、X軸透過開口23より大きく形成されたY軸透過開口24が形成されている。X軸透過開口23およびY軸透過開口24は、透過照明17の直上に位置しており、X軸透過開口23およびY軸透過開口24を介して、各ノズル孔3内部が照明されるようになっている。
【0023】
透過照明17は、移動テーブル13を挟んでCCDカメラ14と対峙する位置に、すなわち、CCDカメラ14の直下に配設されており、検査するノズル孔3に対して下方から光を照射する。すなわち、ノズル孔3を画像認識する際には、X軸透過開口23およびY軸透過開口24を介して、透過照明17によりノズル孔3の内部が照明される。このため、CCDカメラ14によりノズル孔3を画像認識すると、透過照明17の光が透過するノズル孔3内が明るい円として撮像される(図6(a)参照)。
【0024】
セット治具19は特に図示しないが、マザープレート1におけるノズルプレート形成部4以外の部分に対応するように、格子状に形成されており、マザープレート1をセットステージ12に対して位置決め状態で押圧固定する。これにより、マザープレート1の歪みを極力矯正することができるため、CCDカメラ14によるフォーカシング時間を短縮することができると共に、検査精度を向上させることができる。
【0025】
Zテーブル16は、フレームによってホーム位置にある移動テーブル13の中央部直上に配設されており、落射照明20付のCCDカメラ14およびレーザ変位計15を上下動自在に支持している。また、Zテーブル16は、後述する計測工程およびフォーカシング座標取得工程の取得結果に基づき、CCDカメラ14、落射照明20およびレーザ変位計15をZ軸方向に上下動させる。これにより、上記の移動テーブル13を利用して、CCDカメラ14とノズル孔3の近傍における距離を、連続的に且つ正確に計測することができる。
【0026】
レーザ変位計15は、いわゆる2次元レーザ変位計(いわゆるラインタイプ)が採用されており、上記したCCDカメラ14のY軸方向の近傍に配設されている。レーザ変位計15における距離計測の基準位置は、CCDカメラ14におけるフォーカシングの基準位置と合致するようにセッティングされており、レーザ変位計15で測定した距離に基づいて、CCDカメラ14の目標高さが求められるようになっている。この場合、検査するノズル孔3を含むノズル列5から、ノズル列5と平行に少しズレした位置において、落射照明20を照射した状態で、レーザ変位計15(CCDカメラ14)によるマザープレート1の表面7までの距離が計測される。また、この計測では、ラインタイプのレーザ変位計15が用いられるため、複数のノズル孔3に対応する位置の距離が、バッチ処理的に計測される。
【0027】
図3に示すように、制御装置18は、各種ドライバを有する駆動部31と、各部に接続され、検査装置11全体の制御を行う制御部32と、を備えている。駆動部31には、移動テーブル13を制御する移動ドライバ33と、Zテーブル16を制御するZドライバ34と、が備えられている。
【0028】
制御部32には、各手段を接続するためのインタフェース35と、一時的に記憶可能な記憶領域を有し、制御処理のための作業領域として使用されるRAM36と、各種記憶領域を有し、制御プログラム、後述する検査工程におけるノズル孔3の基準形状が記録されているテンプレート42、各ノズル孔3の位置情報および各ノズル孔3に対するCCDカメラ14によるフォーカシングの距離情報などを記憶するROM37と、各種データを処理するためのプログラム等を記憶するHDD38と、ROM37やHDD38に記憶されたプログラム等に従い、各種データを演算処理するCPU39と、これらを互いに接続するバス40と、が備えられている。
【0029】
そして、制御部32は、各部からの各種データを、インタフェース35を介して入力すると共に、HDD38に記憶された(または、CD−ROMドライブ等により順次読み出される)プログラムに従ってCPU39に演算処理させ、その処理結果を、駆動部31を介して各部に出力する。これにより、検査装置11全体が制御され、各種処理が行われる。
【0030】
次に、図4ないし図7を参照して、マザープレート1の検査方法について説明する。この検査方法は、マザープレート1に形成されている全ノズル孔3のメニスカス形成部8となる部分の異物43の有無を順次調べるものであり、マザープレート1をノズル列5方向およびこれに直交する方向に移動させながら、各ノズル孔3の近傍におけるCCDカメラ14とマザープレート1の表面7との距離を計測する計測工程と、この計測結果とマザープレート1の移動量とに基づいて、各ノズル孔3の位置情報および各ノズル孔3の内部に対するCCDカメラ14のフォーカシング位置の距離情報を取得するフォーカシング座標取得工程と、位置情報および距離情報に基づいて、ノズル列5方向に移動するマザープレート1における各ノズル孔3の内部の所定の深さ位置を連続的に画像認識する画像認識工程と、画像認識の認識結果41から、各ノズル孔3における異物43の有無をそれぞれ検査する検査工程と、から成っている。
【0031】
上記したように、マザープレート1は、ノズルプレート2を複数枚取りできるように構成されているため、まず、ノズルプレート2において、2次元レーザ変位計を使用した場合における測定方法について説明する。図5(a)に示すように、計測工程では、図示上側の各ノズル孔3の近傍におけるCCDカメラ14とノズルプレート2の表面7との距離をノズル列5毎に計測する。そして、図示下側に1列分移動し同様に計測する。これを3回繰り返すことで、ノズルプレート2におけるCCDカメラ14とノズル孔3の近傍における距離を計測する。また、図5(b)に示すように、マザープレート1においては、図示右上に位置したノズルプレート2から図示右下に下へ移動しながら計測する。図示右下まで移動しきった後、図示中央に移動し、図示中央上側に上へ移動しながら同様に計測する。図示中央上側まで移動しきった後、図示左側に移動して、図示左下へ移動しながら同様に計測する。これにより、マザープレート1に形成された全ノズル孔3の近傍における距離を計測する(S1)。なお、2次元レーザ変位計を用いない場合には、マザープレート1をノズル列5方向に移動させながら、各ノズル孔3の近傍におけるCCDカメラ14とマザープレート1の表面7との距離を連続的に計測する(図示省略)。
【0032】
フォーカシング座標取得工程では、上記した計測結果およびマザープレート1の移動量から各ノズル孔3の位置情報、および各ノズル孔3の内部に対するCCDカメラ14のフォーカシング位置の距離情報を取得する(S2)。具体的には、位置情報は、移動テーブル13によるマザープレート1の移動速度と時間とから算出される。また、距離情報は、各ノズル孔3の位置(近傍位置)におけるレーザ変位計15の測定結果に、ノズルプレート2の表面7からメニスカス形成部8までの距離(本実施形態においては、ノズルプレート2の表面7から約70μm入り込んだ位置)を加算することで算出される。
【0033】
画像認識工程では、取得した位置情報および距離情報に基づいて、CCDカメラ14を適宜上下させながら、各ノズル孔3の内部のメニスカス形成部8の位置を連続的に画像認識する(S3)。具体的には、取得した位置情報に基づいて、移動テーブル13によりセットステージ12を移動させることで、CCDカメラ14の直下に検査するノズル孔3を移動させる。これと同時に、距離情報に基づいて、CCDカメラ14のZ軸方向の高さを調整する。
【0034】
そして、CCDカメラ14により、ノズル孔3のメニスカス形成部8を画像認識する(S4)。画像認識した認識結果41と、予め記憶しているノズル孔3のテンプレート42と比較し、その径が略合致した場合(所定の範囲内に納まっている場合)には、CCDカメラ14が、認識結果41とテンプレート42が合致するようにフォーカシングして、ノズル孔3のメニスカス形成部8を画像認識する(S6)。一方、認識結果41とテンプレート42の径が略合致しない場合(所定の範囲内に納まっていない場合)には、Zテーブル16によりCCDカメラ14を上下動させて(S5)、認識結果41およびテンプレート42を合致させた状態で、ノズル孔3内部のメニスカス形成部8を画像認識する(S6)。
【0035】
すなわち後者は、認識結果41がテンプレート42より著しく大きい場合や小さい場合にのみ行われる。なお、Zテーブル16でCCDカメラ14を上下させる際に、所定の範囲内に納まるようにZテーブル16でCCDカメラ14を移動させた後、CCDカメラ14によりフォーカシング(オートフォーカス)することで、認識結果41とテンプレート42を合致させて画像認識するようにしてもよい。
【0036】
検査工程では、画像認識の認識結果41から、各ノズル孔3における異物43の有無をそれぞれ検査する(S7)。具体的には、認識結果41とテンプレート42を合致させて画像認識(図6(a)参照)した認識結果41を2値化することで、撮像したノズル孔3のメニスカス形成部8の輪郭を明確化する(図6(b)参照)。そして、2値化した処理画像および予め記憶しているノズル孔3のテンプレート42と重ね合わせることで、認識結果41とテンプレート42との差異を異物43と認定し、異物43の位置および面積を求める(図6(c)および(d)参照)。ここで、異物43の面積が予め定められている規定値以上であればノズル孔3のメニスカス形成部8には「異物43あり(不良)」と判定され、規定値以内であればノズル孔3のメニスカス形成部8には「異物43なし(良好)」と判断される。なお、実際の認識画像では、CCDカメラ14の被写界深度の関係で、メニスカス形成部8の外側に薄く上端開口部の輪郭が映し出される。このため、深さ方向における異物43の位置も推察することができる。
【0037】
そして、ノズルプレート2に形成された全ノズル孔3を順次検査する場合には(S8)、図7に示すように図示左上のノズル孔3から図示右上のノズル孔3まで検査し、検査が終わったら、図示下側に1列移動して、図示右上のノズル孔3から図示左上のノズル孔3まで検査する。そして、図示下側に1列分移動し同様に検査する。これを3回繰り返すことで、ノズルプレート2における全ノズル孔3を検査する。また、次のノズル孔3に移動する際には、検査したノズル孔3の位置情報および距離情報と、次のノズル孔3の位置情報および距離情報と、を比較して、両画像認識位置の差分だけ移動テーブル13によりセットステージ12を移動させると共に、Zテーブル16により上下動させる。これにより、マザープレート1の移動後、CCDカメラ14をフォーカシングするだけで、次のノズル孔3のメニスカス形成部8を画像認識することができる。
【0038】
以上の構成によれば、取得した各ノズル孔3の位置情報および各ノズル孔3に対するフォーカシングの距離情報に基づいて、各ノズル孔3のメニスカス形成部8を連続的に画像認識するため、CCDカメラ14がフォーカシング位置にフォーカシングする時間を短縮することができる。また、結果的にマザープレート1に形成された全ノズル孔3内部の異物43の有無の検査時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)はマザープレートの平面図であり、(b)はノズルプレートの平面図であり、(c)はノズル孔の断面図である。
【図2】検査装置の模式図である。
【図3】検査装置の主制御系のブロック図である。
【図4】検査方法のフローチャートである。
【図5】計測における(a)は測定するノズル列の順番を示した図であり、(b)は、測定するノズルプレートの順番を示した図である。
【図6】検査工程を説明するための説明図である。
【図7】検査工程を行うノズル孔の順番を示した図である。
【符号の説明】
【0040】
1…マザープレート 2…ノズルプレート 3…ノズル孔 5…ノズル列 6…裏面 7…表面 8…メニスカス形成部 11…検査装置 12…セットステージ 13…移動テーブル 14…CCDカメラ 15…レーザ変位計 16…Zテーブル 17…透過照明 18…制御装置 21…X軸テーブル 22…Y軸テーブル 41…認識結果 42…テンプレート 43…異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドに組み込まれるノズルプレートの複数のノズル孔を、そのノズル列方向に連続的に検査するノズルプレートの検査装置であって、
前記ノズルプレートがセットされるセットステージと、
前記セットステージを介して、前記ノズルプレートを前記ノズル列方向に移動させる移動テーブルと、
前記各ノズル孔に対し、前記ノズルプレートの表面から所定の深さ位置にフォーカシングして、前記各ノズル孔の内部を画像認識する画像認識手段と、
前記ノズルプレートの裏面から前記各ノズル孔の内部を照明する透過照明と、
前記画像認識手段と前記ノズルプレートの表面との距離を計測するレーザ変位計と、
前記移動テーブル、前記画像認識手段、前記透過照明および前記レーザ変位計を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ノズル列方向に移動する前記ノズルプレートの各ノズル孔の近傍における前記距離を計測し、この計測結果と前記ノズルプレートの移動量とに基づいて、前記各ノズル孔の位置情報および前記各ノズル孔に対する前記フォーカシングの距離情報とを取得し、前記位置情報および前記距離情報に基づいて、前記ノズル列方向に移動する前記ノズルプレートにおける前記各ノズル孔の内部を連続的に画像認識して、異物の有無をそれぞれ検査することを特徴とするノズルプレートの検査装置。
【請求項2】
前記セットステージに対し、前記画像認識手段を上下動させるZテーブルを、更に備え、
前記制御手段は、前記画像認識による各ノズル孔の認識結果と、予め記憶しているノズル孔のテンプレートとが合致しない場合に、前記Zテーブルを制御して前記認識結果と前記テンプレートとを合致させた後、再度の画像認識と前記異物の有無の検査とを実行することを特徴とする請求項1に記載のノズルプレートの検査装置。
【請求項3】
前記レーザ変位計が、前記ノズル列と平行に配設されたラインタイプのもので構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のノズルプレートの検査装置。
【請求項4】
前記所定の深さ位置が、前記各ノズル孔のメニスカス形成部に相当する位置であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のノズルプレートの検査装置。
【請求項5】
前記レーザ変位計が、前記Zテーブルに取り付けられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のノズルプレートの検査装置。
【請求項6】
インクジェットヘッドに組み込まれるノズルプレートの複数のノズル孔の内部を、画像認識手段により、そのノズル列方向に連続的に画像認識して検査するノズルプレートの検査方法であって、
前記ノズルプレートを前記ノズル列方向に移動させながら、前記各ノズル孔の近傍における前記画像認識手段と前記ノズルプレートの表面との距離を計測する計測工程と、
この計測結果と前記ノズルプレートの移動量とに基づいて、前記各ノズル孔の位置情報および前記各ノズル孔の内部に対する前記画像認識手段のフォーカシング位置の距離情報を取得するフォーカシング座標取得工程と、
前記位置情報および前記距離情報に基づいて、前記ノズル列方向に移動する前記ノズルプレートにおける各ノズル孔の内部の所定の深さ位置を連続的に画像認識する画像認識工程と、
前記画像認識の認識結果から、前記各ノズル孔における異物の有無をそれぞれ検査する検査工程と、を備えたことを特徴とするノズルプレートの検査方法。
【請求項7】
前記画像認識工程において、前記画像認識による各ノズル孔の認識結果と、予め記憶しているノズル孔のテンプレートとが合致しない場合に、前記画像認識手段を上下させて前記認識結果と前記テンプレートとを合致させた後、再度の画像認識工程を実施することを特徴とする請求項6に記載のノズルプレートの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−139357(P2010−139357A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315414(P2008−315414)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】