説明

ノルボルネン系樹脂成形体の製造方法

【課題】 剛性や強度特性の向上のために充填材を含有させた場合においても、得られる成形体中における充填材の含有むら(充填材の偏り)の発生を抑制し、成形体密度の低下及びバラツキが少なく、外観上の欠陥や、含有むらに起因する特性劣化が有効に防止されたノルボルネン系樹脂成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】2以上の反応原液をミキシングヘッド内に別々に送り、2以上の前記反応原液を前記ミキシングヘッド内で混合して、ノルボルネン系モノマー、メタセシス触媒および充填材を含有する反応液を得る工程と、前記反応液を、型内に注入し、前記型内で塊状重合させる工程と、を有し、前記反応液を構成することとなる全ての反応原液のミキシングヘッドへの送液圧力の合計を100%とした場合に、充填材を含む前記反応原液(F液)のミキシングヘッドへの送液圧力を、20〜40%の範囲とすることを特徴とするノルボルネン系樹脂成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルボルネン系モノマーを型内で塊状重合させることにより得られるノルボルネン系樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から反応射出成形法(RIM)により、ノルボルネン系モノマーおよびメタセシス触媒を含む反応液を金型内に注入し、塊状開環重合させることによりノルボルネン系樹脂からなる成形体を製造することが実用化されている。反応液は、通常、2以上の反応原液を衝突混合装置などで瞬間的に混合して得られる。このような反応原液は、1液のみでは塊状重合しないが、全ての液を混合すると、各成分を所定の割合で含む反応液となり、その結果、ノルボルネン系モノマーが塊状重合するものである。
【0003】
RIM法で得られる成形体に剛性や寸法安定性(成形体の熱による膨張・収縮が少ないこと)を付与する目的で、反応液に各種の充填材を添加して成形することが知られている。しかし、従来の方法では、剛性を十分に高められない場合や、剛性が高まる一方で強度特性が著しく低下する場合があった。また、充填材は反応原液に添加して用いられるが、このように反応原液に充填材を含有させると、反応原液の保存安定性が低くなる場合があった。
【0004】
たとえば、特許文献1では、寸法安定性を維持しながら、得られる成形体の剛性を向上させるために、RIM法で得られるノルボルネン系樹脂成形体に、平均粒径が1〜50μmである充填材(たとえば、炭酸カルシウムなど)を用いることが提案されている。しかしながら、この文献では、反応原液を混合する際に混合不良が発生してしまい、得られる成形体中において充填材の含有むら(充填材の偏り)が発生し、外観上に欠陥(表面の色むら等)を生じることがあった。また、充填材の投入量から計算される密度(計算密度)よりも、実際に得られる成形体の平均密度が低下したり、成形体の部位によって密度が異なる(密度のバラツキが大きい)場合があった。さらに、充填材の含有むらに起因して、充填材の添加効果が不十分となり、剛性や強度特性に劣ることもあった。
【0005】
【特許文献1】特開2003-321597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、ノルボルネン系樹脂成形体を製造する方法において、剛性や寸法安定性の向上のために充填材を含有させた場合においても、得られる成形体中における充填材の含有むら(充填材の偏り)の発生が抑制され、外観上の欠陥や、成形体密度の低下およびバラツキ、さらには、含有むらに起因する特性劣化が、有効に防止されたノルボルネン系樹脂成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、2以上の反応原液をミキシングヘッドへ送る際に、充填材を含有する反応原液(F液)の送液圧力を特定の範囲に制御することにより、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係るノルボルネン系樹脂成形体の製造方法は、
2以上の反応原液をミキシングヘッド内に別々に送り、2以上の前記反応原液を前記ミキシングヘッド内で混合して、ノルボルネン系モノマー、メタセシス触媒および充填材を含有する反応液を得る工程と、
前記反応液を、型内に注入し、前記型内で塊状重合させる工程と、を有するノルボルネン系樹脂成形体の製造方法であって、
前記反応原液は、少なくとも充填材を含有する反応原液(F液)と、1または2以上のその他の反応原液と、からなり、
前記各反応原液を、前記ミキシングヘッド内に送るための送液圧力に関し、
充填材を含む前記反応原液(F液)の送液圧力をP[MPa]とし、
前記反応液を構成することとなる全ての反応原液の各送液圧力の合計をP[MPa]とした場合に、
前記全ての反応原液の合計送液圧力P100%に対し、前記反応原液(F液)の送液圧力Pを20〜40%の範囲とすることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記充填材が、アスペクト比5〜100である繊維状充填材、およびアスペクト比1〜2である粒子状充填材を含有するものである。
好ましくは、前記充填材が、前記繊維状充填材と、前記粒子状充填材と、を乾式にて高速撹拌することにより得られるハイブリッドフィラーである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ノルボルネン系樹脂成形体を製造する方法において、剛性や寸法安定性の向上のために充填材を含有させた場合においても、得られる成形体中における充填材の含有むら(充填材の偏り)の発生が抑制され、外観上の欠陥が無く、成形体密度の低下およびバラツキが少なく、充填材の添加効果(たとえば、剛性および寸法安定性など)が十分に向上されたノルボルネン系樹脂成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、本発明のノルボルネン系樹脂成形体(以下、単に「成形体」ということがある)の製造方法について説明する前に、本発明の製造方法に用いられる反応液について説明する。
【0012】
反応液
本発明の製造方法に用いられる反応液は、ノルボルネン系モノマー、メタセシス触媒、充填材および任意成分を、通常、2以上の液に分けて調製した反応原液を混合して得られる。そして、この反応原液は、1液のみでは塊状重合しないが、全ての液を混合すると、各成分を所定の割合で含む反応液となり、ノルボルネン系モノマーが塊状重合するものである。
なお、任意成分としては、活性剤、活性調節剤、エラストマー、および酸化防止剤などが挙げられる。
以下、反応液に含有させる各成分について、説明する。
【0013】
ノルボルネン系モノマー
ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環構造を有する化合物であり、そのような化合物であればいずれでもよい。なかでも、耐熱性に優れた成形体が得られることから、三環体以上の多環ノルボルネン系モノマーを用いることが好ましい。
【0014】
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエン二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;シクロペンタジエン四量体等の七環体;これらのメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル、ビニル等のアルケニル、エチリデン等のアルキリデン、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール等の置換体;さらにこれらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン原子などの極性基を有する置換体などが挙げられる。これらのモノマーは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、入手が容易であり、反応性に優れ、得られる成形体の耐熱性に優れる点から、三環体、四環体、または五環体のモノマーが好ましく、ジシクロペンタジエンが特に好ましい。
【0015】
また、生成する開環重合体が熱硬化型となることが好ましく、そのためには、上記ノルボルネン系モノマーの中でも、対称性のシクロペンタジエン三量体等の、反応性の二重結合を二個以上有する架橋性モノマーを少なくとも用いることが好ましい。全ノルボルネン系モノマー中における、このような架橋性モノマー(ただし、ジシクロペンタジエンは除く)の割合は、2〜30重量%が好ましい。
【0016】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なシクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロオクテン、シクロドデセン等の単環シクロオレフィン等を、コモノマーとして用いてもよい。
【0017】
充填材
充填材としては、ノルボルネン系モノマーに不溶な固体の材料であれば良く、特に限定されないが、繊維状充填材と粒子材充填材とを用いることが好ましい。このような繊維状および粒子状の2種類の充填材を用いることにより、得られる成形体の剛性や寸法安定性を向上させることができる。
【0018】
上記繊維状充填材は、アスペクト比が5〜100のものが好ましく、より好ましくは10〜50、特に好ましくは15〜35である。アスペクト比が小さすぎると、得られる成形体の剛性や寸法安定性が不十分となる場合がある。一方、大きすぎると、反応液を型内に注入する際に注入ノズルが詰まるおそれがある。
【0019】
なお、本発明において充填材のアスペクト比とは、充填材の平均長軸径と50%体積累積径との比である。ここで、平均長軸径は光学顕微鏡写真で無作為に選んだ100個の充填材の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均長軸径である。また、50%体積累積径は、X線透過法で粒度分布を測定することにより求められる値である。
【0020】
繊維状充填材の50%体積累積径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜30μmである。50%体積累積径が小さすぎると、成形体の剛性や寸法安定性が不十分となる場合がある。一方、大きすぎると、反応液を型内に注入する際にタンクや配管内で沈降したり、注入ノズルが詰まったりする場合がある。
【0021】
繊維状充填材の具体例としては、ガラス繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノライト、塩基性硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、テトラポット型酸化亜鉛、石膏繊維、ホスフェート繊維、アルミナ繊維、針状炭酸カルシウム、針状ベーマイトなどを挙げることができる。なかでも、少ない使用量で得られる成形体の強度を高めることができ、かつ塊状重合反応を阻害しないため、ウォラストナイトが好ましい。
【0022】
上記粒子状充填材は、アスペクト比が1〜2のものが好ましく、1〜1.5であることが特に好ましい。また、粒子状充填材の50%体積累積径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜30μmである。50%体積累積径が小さすぎると、得られる成形体の剛性や寸法安定性が不十分となる場合がある。一方、大きすぎると、反応液を型内に注入する際に、タンクや配管内で沈降したり、注入ノズルが詰まったりする場合がある。
【0023】
粒子状充填材の具体例としては、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、酸化アンチモン、赤燐、各種金属粉、クレー、各種フェライト、ハイドロタルサイトなどを挙げることができる。これらの粒子状充填材は、中空体としたものであってもよい。なかでも、塊状重合反応を阻害しないという点より、炭酸カルシウムが好ましい。
【0024】
繊維状充填材と粒子状充填材とを使用する場合における、これらの比率は、重量比で、繊維状充填材:粒子状充填材=95:5〜5:95の範囲が好ましく、95:5〜50:50の範囲がより好ましく、80:20〜60:40の範囲が特に好ましい。繊維状充填材と粒子状充填材との比率を、上記範囲とすることにより、得られる成形体の剛性や寸法安定性の均一化を図ることができ、成形体の異方性を小さくすることができる。
【0025】
充填材として含有させる繊維状充填材と粒子状充填材とは、乾式にて高速撹拌することにより、ハイブリッドフィラーとして用いることが好ましい。
ハイブリッドフィラーは、繊維状充填材と粒子状充填材とを、乾式にて高速撹拌することにより得られるものであれば良く、高速撹拌する際の撹拌条件は特に限定されないが、たとえば、ヘンシェルミキサー等を用いて、回転翼の周速(翼先端速度)が、通常10〜60m/s、好ましくは15〜55m/sとなるように、撹拌することにより得ることができる。これら繊維状充填材と粒子状充填材とを高速撹拌し、ハイブリッドフィラー化することにより、上記したノルボルネン系モノマー中への分散性を高めることができる。
【0026】
特に、上記のような繊維状充填材と粒子状充填材とを乾式にて高速撹拌し、ハイブリッドフィラーとして用いることにより、繊維状充填材および粒子状充填材の凝集塊を解砕することができ、しかもこれらの充填材を均一に分散させることができるため、反応原液中に含有させた場合における、分散性を向上させることができる。そのため、得られる成形体中へも良好に分散させることができ、これらの充填材の添加効果をさらに高めることができる。
【0027】
なお、繊維状充填材と粒子状充填材とを乾式にて高速撹拌し、ハイブリッドフィラー化する際には、表面を疎水化処理することが好ましい。疎水化処理することにより、反応原液中への分散性のさらなる向上を図ることができ、その結果、得られる成形体の剛性および寸法安定性のさらなる向上を図ることができる。疎水化処理に用いられる処理剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、脂肪酸、油脂、界面活性剤、ワックス、その他の高分子などが挙げられるが、特に、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤が好ましい。なお、これらは、併用しても良い。
【0028】
疎水化処理する方法としては、特に限定されず、たとえば、(1)ハイブリッドフィラーを構成する各充填材および処理剤を合わせて仕込み、乾式にて高速撹拌する方法、(2)各充填材を合わせて仕込み、乾式にて高速撹拌した後に処理剤を添加し、さらに乾式にて高速撹拌する方法、(3)各充填材に別々に処理剤を添加し、乾式にて高速撹拌した後に混合し、更に乾式にて高速撹拌する方法、などが挙げられる。これらのなかでも、上記(2)の方法が好ましく、特にこの場合においては、処理剤を添加する際には、噴霧などにより除々に添加していくことが好ましい。
【0029】
反応液中の充填材量は、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。充填材量が多すぎると、反応液を型内に注入する際にタンクや配管内で沈降したり、注入ノズルが詰まったりする場合がある。一方、少なすぎると、得られる成形体の剛性や寸法安定性が不十分な場合がある。
【0030】
メタセシス触媒
メタセシス触媒は、反応射出成形法(RIM法)において、ノルボルネン系モノマーを開環重合できるものであれば特に限定されず、公知のもので良い。
このようなメタセシス触媒としては、周期表第5族または第6族の遷移金属の化合物や、周期表第8族の金属原子を中心金属とする金属カルベン錯体などが挙げられる。
【0031】
周期表第5族または第6族の遷移金属の化合物としては、たとえば、これらの遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、酸化物、有機アンモニウム塩、酸素酸塩およびヘテロポリ酸塩などが挙げられる。これらのなかでも、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物および有機アンモニウム塩が好ましく、有機アンモニウム塩がより好ましい。また、遷移金属としては、モリブデン、タングステンおよびタンタルが好ましく、モリブデンおよびタングステンがより好ましい。
メタセシス触媒の特に好ましい具体例としては、トリドデシルアンモニウムのモリブデン酸塩およびタングステン酸塩、メチルトリカプリルアンモニウムのモリブデン酸塩およびタングステン酸塩、トリ(トリデシル)アンモニウムのモリブデン酸塩およびタングステン酸塩、ならびにトリオクチルアンモニウムのモリブデン酸塩およびタングステン酸塩などが挙げられる。
【0032】
これら周期表第5族または第6族の遷移金属の化合物をメタセシス触媒として用いる場合の使用量は、反応液中のノルボルネン系モノマー1モルに対し、通常、0.01〜50ミリモル、好ましくは0.1〜20ミリモルである。
【0033】
周期表第8族の金属原子を中心金属とする金属カルベン錯体は、周期表第8族の金属原子からなる中心金属原子にカルベン化合物が結合し、金属原子(M)とカルベン炭素(>C:)が直接に結合した構造(M=C)を錯体中に有するものである。カルベン化合物とは、カルベン炭素すなわちメチレン遊離基を有する化合物の総称である。
周期表第8族の金属原子としては、ルテニウムおよびオスミウムが好ましく、ルテニウムが特に好ましい。
金属カルベン錯体の好ましい具体例としては、ベンジリデン(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-4,5-ジブロモイミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、およびビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0034】
これらの金属カルベン錯体をメタセシス触媒として用いる場合の使用量は、反応液中のモノマー1モルに対し、通常、0.001〜1ミリモル、好ましくは0.002〜0.1ミリモルである。
【0035】
メタセシス触媒の使用量が少なすぎると、重合活性が低すぎて反応に時間がかかり、生産効率が低下する傾向にある。一方、使用量が多すぎると、反応が激しくなりすぎてしまい、反応液が型内に十分に充填される前に塊状重合が進行したり、触媒が析出し易くなり均質に保存することが困難になる傾向にある。
【0036】
メタセシス触媒は少量の不活性溶剤に溶解または分散させて用いてもよい。このような不活性溶剤としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素溶剤;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、トリシクロデカン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。また、触媒としての活性を低下させないようなものであれば、液状の老化防止剤、可塑剤やエラストマーを溶剤として用いても良い。これらの溶剤の中では、工業的に汎用されている芳香族炭化水素溶剤、脂肪族炭化水素溶剤および脂環式炭化水素溶剤が好ましい。
【0037】
任意成分
活性剤は、上記メタセシス触媒として、単独では重合反応活性を有しないものを使用する場合に、メタセシス触媒に重合反応活性を発現させるために用いられる。
活性剤としては、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリドなどのアルキルアルミニウムハライド;これらのアルキルアルミニウムハライドの、アルキル基の一部をアルコキシ基で置換したアルコキシアルキルアルミニウムハライド;有機スズ化合物;などが用いられる。活性剤を使用する場合における、その使用量は、特に限定されないが、通常、反応液全体で使用するメタセシス触媒1モルに対して、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。
【0038】
活性調節剤は、反応速度や、反応液の混合から反応開始までの時間、反応活性などを変化させる効果を有する。
メタセシス触媒として周期表第5族または第6族の遷移金属の化合物を用いる場合においては、活性調節剤としては、メタセシス触媒を還元する作用を持つ化合物などが挙げられ、アルコール類、ハロアルコール類、エステル類、エーテル類、ニトリル類などを用いることができる。なかでも、アルコール類およびハロアルコール類が好ましく、ハロアルコール類が特に好ましい。アルコール類の具体例としては、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。ハロアルコール類の具体例としては、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2−クロロエタノール、1−クロロブタノールなどが挙げられる。
メタセシス触媒として金属カルベン錯体を用いる場合においては、活性調節剤としては、ルイス塩基化合物が挙げられる。ルイス塩基化合物としては、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、n-ブチルホスフィンなどのリン原子を含むルイス塩基化合物;n-ブチルアミン、ピリジン、4-ビニルピリジン、アセトニトリル、エチレンジアミン、N-ベンジリデンメチルアミン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾールなどの窒素原子を含むルイス塩基化合物;が挙げられる。また、ビニルノルボルネン、プロペニルノルボルネンおよびイソプロペニルノルボルネンなどの、アルケニル基で置換されたノルボルネンは、前記のノルボルネン系モノマーであると同時に、活性調節剤としても働く。
これらの活性調節剤の使用量は、用いる化合物によって変わり、一様ではない。
【0039】
エラストマーとしては、たとえば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などが挙げられる。エラストマーを反応液に溶解させて用いることにより、反応液の粘度を調節することができる。また、エラストマーを添加することで、得られる成形体の耐衝撃性を改良できる。エラストマーを使用する場合における、その使用量は、反応液中のノルボルネン系モノマー100重量部に対し、通常0.5〜20重量部、好ましくは2〜10重量部である。
【0040】
酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、アミン系など各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤が挙げられる。
【0041】
ノルボルネン系樹脂成形体の製造方法
次いで、上記した反応液を使用する本発明のノルボルネン系樹脂成形体の製造方法について説明する。
まず、反応原液を調製する。反応原液は、上記した反応液に含有される各成分を2以上の液に分けて調製されるものである。
【0042】
このような2以上の反応原液の組み合わせとしては、特に限定されず、種々の組み合わせを選択することができるが、本実施形態では、以下の3種類の反応原液を調製することが好ましい。
すなわち、ノルボルネン系モノマーおよび触媒活性成分(活性剤、活性調節剤)を含有する反応原液(A液)と、ノルボルネン系モノマーおよびメタセシス触媒を含有する反応原液(B液)と、ノルボルネン系モノマーおよび充填材を含有する反応原液(F液)と、の3種類の反応原液を調製することが好ましい。
以下、反応原液として、上記A液、B液、F液の3種類の反応原液を使用する場合を例示して、本発明のノルボルネン系樹脂成形体の製造方法について、詳細に説明する。
【0043】
上記各反応原液(A液、B液、F液)中における、各成分の含有量は特に限定されず、各反応原液を混合した際に得られる反応液の組成が上記した範囲内となるように調製すればよい。本実施形態では、反応原液(F液)中における、充填材量は、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは35〜65重量%とする。反応原液(F液)の充填材量が、多すぎると保存時に充填材がタンク内や配管内で沈降するおそれがある。また、少なすぎると得られる成形体中の充填材の量が少なくなり、剛性や寸法安定性の改善効果が不十分となる場合がある。
【0044】
そして、上記にて調製した各反応原液を使用して、図1に示すような反応射出成形装置を用いた反応射出成形法により、ノルボルネン系樹脂成形体を製造する。
なお、図1は本発明の一実施形態に係る反応射出成形装置の要部概略図である。
【0045】
まず、反応射出成形の前準備として、上記にて調製した各反応原液(A液、B液、F液)を、図1に示すタンク10,20,30にそれぞれ貯留する。各反応原液を、各タンク内に貯留することにより、ミキシングヘッド40内へと送れるような状態とすることができる。
具体的には、タンク10内に貯留された反応原液(A液)は、定量ポンプ12により、配管14を通ってミキシングヘッド40内へと送れるような構成となっており、同様に、タンク20,30内に貯留された各反応原液(B液、F液)も、それぞれ定量ポンプ22,32により、配管24,34を通ってミキシングヘッド40内へと送れるような構成となっている。
【0046】
なお、各反応原液(A液、B液、F液)をミキシングヘッド40に送るための各定量ポンプ12,22,32は、その送液圧力をそれぞれ独立に制御できるようになっている。すなわち、各反応原液(A液、B液、F液)をミキシングヘッド40内へ送る際には、それぞれ異なる圧力で送れるようになっている。なお、各送液圧力は、各定量ポンプ12,22,32の出口に設置された圧力計16,26,36により測定することができる。
【0047】
次いで、各定量ポンプ12,22,32を作動させ、タンク10,20,30内に貯留させた各反応原液(A液、B液、F液)を、ミキシングヘッド40内に連続的に送り、ミキシングヘッド40内で各反応原液を、互いに衝突混合させることにより反応液を得る。そして、各反応原液がミキシングヘッド40内に連続的に供給されていくことにより、ミキシングヘッド40内の圧力が所定の圧力に到達した時に、ピン50を開き、衝突混合により得られた反応液を、ミキシングヘッド40内から、配管52を介して、配管52に接続された型(図示省略)内に注入し、型内でノルボルネン系モノマーを重合させる。なお、各定量ポンプ12,22,32を作動させて、ミキシングヘッド40内に各反応原液を送り始めてから、ピン50を開くまでの時間は、通常0.5〜3.5秒である。
【0048】
本実施形態では、タンク10,20,30内に貯留させた各反応原液(A液、B液、F液)をミキシングヘッド40内に送る際における、反応原液の送液圧力を次のような関係とする。
すなわち、各反応原液(A液、B液、F液)の送液圧力を、A液:P[MPa]、B液:P[MPa]、F液:P[MPa]とし、各反応原液の送液圧力の合計をP(=P+P+P)[MPa]とした場合に、合計の送液圧力P100%に対し、F液の送液圧力Pを20〜40%の範囲、好ましくは25〜33%の範囲とする。
【0049】
F液の送液圧力Pを、上記範囲とすることにより、得られる成形体中における充填材の含有むら(充填材の偏り)の発生を防止することができ、外観上の欠陥や、成形体密度の低下およびバラツキ、さらには充填材の含有むらに起因する特性劣化(たとえば、剛性および寸法安定性などの低下)を、有効に防止することができる。なお、上記成形体密度の低下(成形体の平均密度の低下)は、反応液中の充填材の含有量から計算される密度(計算密度)は同じであっても、該充填材が、最終的に製品(成形体)から除去されるバリやランナー部に偏在することにより引き起こされる。
また、各反応原液の送液圧力P、P、Pは、各圧力計16,26,36により測定することができる。送液圧力P、P、Pは、好ましくは3〜7MPaの範囲である。
【0050】
充填材を含有する反応原液(F液)の送液圧力Pが低すぎても高すぎても、得られる成形体中に充填材の含有むらが発生するおそれがある。
【0051】
なお、反応射出成形に用いる型(図示省略)は、必ずしも剛性の高い高価な金型である必要はなく、金属製の型に限らず、樹脂製の型、または単なる型枠を用いることができる。反応射出成形は、比較的低温低圧で成形できるためである。また、反応液を注入する前に、型内を窒素ガスなどの不活性ガスで置換することが好ましい。
【0052】
型温度は、好ましくは10〜150℃、より好ましくは30〜120℃、さらに好ましくは40〜100℃である。型締め圧力は通常0.01〜10MPaの範囲である。塊状重合の時間は適宜選択すればよいが、各反応原液(A液、B液、F液)の注入終了後(すなわち、定量ポンプ12,22,32を止めた後)、通常20秒〜20分、好ましくは20秒〜5分である。
【0053】
本実施形態では、型内に複合化部材を設置し、本発明の製造方法により得られるノルボルネン系樹脂成形体を、複合化部材と一体的に形成されてなる複合成形体としても良い。ここで、「一体的に形成されてなる」とは、ノルボルネン系樹脂と複合化部材とが容易に剥離しないように密着されていることを言い、樹脂の融着により密着されていてもよいし、あるいは接着剤層を介して密着されていてもよい。
【0054】
複合化部材としては、型内に設置可能であり、塊状重合時の型温度において流動性を有しない材料である。複合化部材の材質としては、金属、ガラス、セラミックス、木材などの無機材料;樹脂やゴムなどの有機材料;が挙げられる。無機材料としては、金属またはガラスが好ましい。有機材料としては、樹脂が好ましい。樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ノルボルネン系樹脂などが挙げられる。なかでも、優れた意匠性を付与できることから、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0055】
複合化部材の形状も特に限定されず、シート、板、棒、織布または不織布、各種三次元形状物などのいずれでもよい。
【0056】
複合化部材とノルボルネン系樹脂とを、接着剤層を介して密着させる場合には、複合化部材の、反応液と接触する表面の少なくとも一部に、接着剤層を形成しておけばよい。接着剤層の形成に用いられる材料は塊状重合反応を阻害しないものであれば特に限定されず、用いる複合化部材により異なるが、スチレンと共役ジエンとのブロック共重合体またはその水素化物を含有していることが好ましい。このようなブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SBIS)などが挙げられる。複合化部材とノルボルネン系樹脂とが、接着剤層を介して密着していると、両者の密着性が高いので好ましい。
【0057】
ノルボルネン系樹脂成形体
以上のようにして、ノルボルネン系樹脂成形体を得ることができる。このようにして得られるノルボルネン系樹脂成形体は、充填材を、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%の範囲で含有し、しかも、成形体中における充填材の含有むら(充填材の偏り)が無く、外観上の欠陥や、成形体密度の低下およびバラツキが少なく、充填材の添加効果(剛性および寸法安定性など)が十分に向上されている。
【0058】
また、充填材として、好ましくは繊維状充填材と粒子状充填材とを用い、これらの比率を、好ましくは繊維状充填材:粒子状充填材=95:5〜55:45、より好ましくは80:20〜60:40とすることにより、成形体の剛性や寸法安定性が均一で、異方性を小さくすることができる。さらに、充填材としての繊維状充填材と粒子状充填材とをハイブリッドフィラーとすることにより、これら繊維状および粒子状の充填材の添加効果をさらに高めることができる。
【0059】
なお、ノルボルネン系樹脂成形体を複合成形体とした場合には、上記充填材の含有量は、複合化部材を除くノルボルネン系樹脂部分における充填材の量比を表す。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0061】
たとえば、上述した実施形態では、反応原液として、上記した所定の各成分を含有するA液、B液およびF液を使用する場合を例示したが、反応原液としては、上記したA液、B液およびF液とは異なる構成を有する反応原液を使用しても良い。具体的には、上記した例では、A液中に、触媒活性成分(活性剤、活性調節剤)を含有させる場合を例示したが、触媒活性成分は、充填材とともにF液中に含有させても良い。さらにこの場合には、A液を用いずに、反応原液としてB液およびF液の2液のみを使用するような態様としても良い。
【0062】
また、上記した例では、触媒活性成分を使用する場合を例示したが、触媒活性成分が無くても単独で重合反応活性を有するメタセシス触媒を用いる場合には、たとえば、ノルボルネン系モノマーを含む反応原液と、メタセシス触媒を含む反応原液と、ノルボルネン系モノマーおよび充填材を含む反応原液と、を使用するような態様を採用しても良い。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0064】
実施例1
ハイブリッドフィラー(充填材)の製造
500Lのヘンシェルミキサーに、繊維状充填材としてのウォラストナイト(キンセイマテック社製 SH-400 50%体積累積径:20μm、アスペクト比:18):75部と、粒子状充填材としての炭酸カルシウム(三共精粉社製 エスカロン#2000 50%体積累積径:1.8μm、アスペクト比:1):25部とを投入し、槽内温度30℃、回転速度360rpm(周速20m/s)で撹拌した。次いで、ミキサー内に、シランカップリング剤(信越化学工業社製 KBM−1003):0.5部を噴霧することにより添加し、噴霧終了後、回転速度720rpm(周速40m/s)で7分間撹拌した。その後、槽内温度を110℃に昇温し、回転速度360rpm(周速20m/s)で10分間撹拌することにより、フィラーを乾燥した。次いで、ミキサー内に、チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ社製 プレンアクトKR−TTS):0.75部を噴霧することにより添加した。噴霧終了後、回転速度360rpm(周速20m/s)で5分間撹拌することにより、ハイブリッドフィラーを得た。
【0065】
反応原液(F液)の調製
ジシクロペンタジエン:90部およびトリシクロペンタジエン:10部からなる混合モノマーに、上記にて製造したハイブリッドフィラー:130部を添加し、ホモジナイザーを用いて、回転数13500rpm、10分間の条件でせん断分散することにより、ノルボルネン系モノマーと、ハイブリッドフィラーと、を含有する反応原液(F液)を調製した。
【0066】
反応原液(A液、B液)の準備
上記とは別に、反応原液(A液、B液)(ともに、RIMTEC社製 PENTAM#4000)を準備した。なお、反応原液(A液)は、混合モノマーに加えて、活性剤、活性調節剤およびエラストマーを含有する反応原液であり、反応原液(B液)は、混合モノマーに加えて、メタセシス触媒、エラストマーおよび酸化防止剤を含有する反応原液である。
【0067】
ノルボルネン系樹脂成形体の製造
内部に縦1650mm×横750mm×高さ200mm×厚さ6mmの箱形状の空間(キャビティ)を有し、箱形状の底面および側面にリブ形状を有する一対の反応射出成形用金型を準備し、一方の金型を温度85度に、もう一方の金型を50度に加温した。なお、この反応射出成形用金型は、側面の中央部分に、反応液注入孔を有する構成となっている。
【0068】
そして、図1に示す構成を有する反応射出成形装置を用意し、各タンク10,20,30内に、上記にて調製した反応原液(A液、B液、F液)をそれぞれ貯留し、さらに、上記にて準備した金型の反応液注入孔と、図1に示す反応射出成形装置の配管52とを接続することにより、反応射出成形の準備を行った。なお、図1に示す定量ポンプ12,22としては、アキシャルプランジャーポンプ(ツバコー社製)を、定量ポンプ32としては、ランスシリンダーポンプ(ツバコー社製)を、それぞれ使用した。
【0069】
次いで、ピン50を閉じた状態にて、定量ポンプ12,22,32を作動させ、反応原液(A液、B液)を速度900g/s、反応原液(F液)を速度1200g/sにて、それぞれ送液を開始し、各反応原液(A液、B液、F液)をミキシングヘッド40内で衝突混合させ、反応液とした。そして、送液開始3秒後に、ピン50を開き、得られた反応液を金型内に注入した。なお、ピン50を開く直前の各反応原液の送液圧力(すなわち、図1に示す圧力計16,26,36により測定した圧力)は、それぞれ、P(A液の送液圧力):5.0MPa、P(B液の送液圧力):5.0MPa、P(F液の送液圧力):5.0MPaであった。
【0070】
また、各反応原液(A液、B液、F液)は、A液:B液:F液=1.0:1.0:1.33(重量比)となるように送液した。
【0071】
そして、各反応原液(A液、B液、F液)の送液を終了した後に、硬化時間90秒の条件で硬化反応させ、次いで、金型を開き、得られたノルボルネン系樹脂成形体を取り出した。そして得られた成形体について、次の基準により充填材の含有むらを評価した。
【0072】
充填材の含有むら及び色むらの評価
得られた成形体を分割し、成形体断面について、目視により観察を行うことにより、充填材の含有むらの有無を確認し、以下の基準により、充填材の含有むらを評価した。結果を表1に示す。
○:充填材の含有むらが全く観察されなかった。
△:成形体の一部に充填材の含有むらが観察された。
×:成形体のほぼ全体にわたり、充填材の含有むらが観察された。
××:充填材を含有している部分と、含有していない部分が分離している。 また、色むらは、成形体表面を目視観察することにより判断した。
【0073】
成形体の平均密度及び密度の標準偏差
成形体の色むらの有るところと、無いところとから、20mmφの大きさのサンプルを18箇所サンプリングした。そして、得られたサンプルを用い、JIS K 7112に準じて、平均密度及び密度の標準偏差を求めた。
【0074】
実施例2,3
ピン50を開く直前の反応原液(F液)の送液圧力が、表1に示す圧力となるように、図1に示す定量ポンプ32の圧力調整弁を調整した以外は、実施例1と同様にしてノルボルネン系樹脂成形体を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0075】
比較例1〜3
ピン50を開く直前の反応原液(F液)の送液圧力が、表1に示す圧力となるように、図1に示す定量ポンプ32の圧力調整弁を調整するとともに、ピン50を開くタイミングを送液開始2秒後に変更した以外は、実施例1と同様にしてノルボルネン系樹脂成形体を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0076】
比較例4
ピン50を開く直前の反応原液(F液)の送液圧力が、表1に示す圧力となるように、図1に示す定量ポンプ32の圧力調整弁を調整した以外は、実施例1と同様にしてノルボルネン系樹脂成形体を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

表1中、反応原液(F液)の送液圧力比率(単位は、%)は、P/P×100である(ただし、Pは、F液の送液圧力であり、Pは、A液の送液圧力PとB液の送液圧力PとF液の送液圧力Pとの合計圧力)。
【0078】
表1より、次のことが確認できる。
すなわち、反応原液(F液)の送液圧力比率を、本発明所定の範囲内とした実施例1〜3においては、成形体中における充填材の含有むら(充填材の偏り)の発生を防止することができ、投入した充填材がランナー部やバリに偏在することも無かったため、成形体の平均密度の低下が起こらず、また密度のバラツキも少なかった。そして、外観上の欠陥(色むら)が無く、しかも、充填材の添加効果(剛性および寸法安定性)が十分に向上された成形体を得ることができた。なお、反応原液(F液)の送液圧力比率は、送液開始から送液終了まで、略同じとなっていた。
一方、反応原液(F液)の送液圧力比率が低すぎたり、高すぎると、成形体中に充填材の含有むらが発生し、平均密度の低下が起こり、密度のバラツキも大きかった。また、成形体表面に色むらが観察された(比較例1〜4)。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る反応射出成形装置の要部概略図である。
【符号の説明】
【0080】
10,20,30… タンク
12,22,32… 定量ポンプ
14,24,34,52… 配管
16,26,36… 圧力計
40… ミキシングヘッド
50… ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の反応原液をミキシングヘッド内に別々に送り、2以上の前記反応原液を前記ミキシングヘッド内で混合して、ノルボルネン系モノマー、メタセシス触媒および充填材を含有する反応液を得る工程と、
前記反応液を、型内に注入し、前記型内で塊状重合させる工程と、を有するノルボルネン系樹脂成形体の製造方法であって、
前記反応原液は、少なくとも充填材を含有する反応原液(F液)と、1または2以上のその他の反応原液と、からなり、
前記各反応原液を、前記ミキシングヘッド内に送るための送液圧力に関し、
充填材を含む前記反応原液(F液)の送液圧力をP[MPa]とし、
前記反応液を構成することとなる全ての反応原液の各送液圧力の合計をP[MPa]とした場合に、
前記全ての反応原液の合計送液圧力P100%に対し、前記反応原液(F液)の送液圧力Pを20〜40%の範囲とすることを特徴とするノルボルネン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記充填材が、アスペクト比5〜100である繊維状充填材、およびアスペクト比1〜2である粒子状充填材を含有するものである請求項1に記載のノルボルネン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記充填材が、前記繊維状充填材と、前記粒子状充填材と、を乾式にて高速撹拌することにより得られるハイブリッドフィラーである請求項2に記載のノルボルネン系樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−224123(P2007−224123A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45799(P2006−45799)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(503423096)RIMTEC株式会社 (23)
【Fターム(参考)】