説明

ハイスループットプロテオミクス

活性の評価のためのアレイにおいて使用するための、タンパク質の迅速な生成を可能にする望ましいヌクレオチド配列を用いて形質転換された細胞から培養された細胞の混合物を利用することにより、ハイスループットプロトコルで発現系およびタンパク質を得る方法。1つの実施形態において、アレイにおけるタンパク質(またはペプチド)を感染病原体についてのこれらの免疫学的活性を分析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、米国特許仮出願第60/585351号(2004年7月1日出願)および第60/638624号(2004年12月23日出願)の利益を主張する。これら出願のそれぞれの内容を参照によりここに取り込む。
(連邦政府の支援によりなされた発明への発明の権利に関する供述)
本研究は国立衛生研究所/国立アレルギー・感染症研究所により一部支援された。米国政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、コードするオープンリーディングフレーム(ORF)からのタンパク質またはペプチドの作製方法および免疫学的活性タンパク質の同定方法に関する。本発明はコードしているORFの多様性によるタンパク質/ペプチドアレイの作製方法および免疫学的活性タンパク質決定のためのこのようなアレイの使用法にも関する。さらにこれらの免疫学的活性ペプチドおよびそれらの使用方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
E.コリ(E.coli)および酵母などの微生物が、リガーゼなどの外来酵素の供給なしに相同的組み換えを生じるリコンビナーゼ系を含むことは古くから周知であった。例えば、Oliner,J.D., et al., Nucleic Acids Res.(1993)21:5192−5197は線状化ベクターの2つの末端配列と同一の末端配列をPCR産物に提供することでそれらをクローンする方法を述べている。これら産物およびベクターDNAは大腸菌JC8679株中へ共形質転換され、このベクターおよびこれらPCR産物はインビボで組み換えられた。組み換えプラスミドを含んだコロニーは診断用DNAとのハイブリド形成によって同定された。上の著者はこの方法を用いたE.コリ中でのゲノムPCR産物クローニングのための最適化プロトコルを提唱している。
【0004】
より最近、Zang, Y., et al., Nature Genetics(1998) 20:123−128はこの方法でクローン化されるDNAの大きさの向上を提示した同様の研究を記載した。
【0005】
米国公開出願第2003/0044820号はプロモーター、ターミネーター、選択マーカーなどの機能要素を含みうるアダプター配列を利用することによるPCRを用いて核酸フラグメントをベクター中にクローンする方法について記載している。線状化ベクターは従来のようなクローニングおよびその後の分解による線状化ベクターの調製よりむしろPCRにより増幅された。これはPCR増幅核酸の付加部分に適合できる線状化ベクターに追加配列を提供する付加的利点を有する。組み換えプラスミドによりコロニーを選択する唯一の方法もまた記載されている。
【0006】
さらに最近、Parrish, J., et al., J. Proteome Res.(2004) 3:582−586はE.コリにおける一般的組み換え技術を利用したクローニング効率に影響するパラメータについて記載している。本研究において、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)において同定されたリーディングフレームが増幅され、E.コリ中の線状化ベクターの中に挿入された。個々のコロニーは単離され、クローンが配列決定された。この生物に関してすでに決定されているゲノム配列を予測した1685遺伝子のORF全長を増幅するためのプライマー対が使用された。1346個のPCR産物がゲル上で観察可能で、これらの75%がインサートを備えるベクターを有するコロニーを提供した。
【0007】
E.コリ以外の細胞もリコンビナーゼ機能を示すことが周知である。例えば、Ma, H., Kunes, S., Schatz, P.J. and Botstein, D., Gene(1987) 58:201−216はサッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)がこの組み換えを実施できることを示している。
【0008】
前述の方法のそれぞれが、ハイスループット処理の適用が難しい段階であるそれぞれの標的タンパク質作製のための単一クローンの単離を必要とし、無傷のタンパク質よりむしろ変異型の単離をもたらす可能性がある。したがって、前述の研究は1つとして病原体の全ゲノムの大部分またはすべてを表す大量のタンパク質、例えば生物のすべてのプロテオームを容易に提供することはできなかった。様々な相互作用および特性に対して分析され得るプロテオームアレイを調製するハイスループットプロトコルを可能にする方法の必要性がある。
【0009】
このようなアレイの利用の1つは、感染性生物に対するワクチンの開発へ向かう段階として、免疫活性がある感染性生物により産生されたそれらのタンパク質を同定することである。感染病原体中のこれらの抗原性タンパク質を同定する取り組みは多くの形式を取っている。タンパク質は、曝露が意図されしたがって免疫系に利用できる領域を確定するために、例えば親水性プロットで分析されてきた。あるいは、(米国特許第6620412号および第6451309号に記載のように)400のモノクロナール抗体がウィルス中和能力およびチャレンジからマウスを保護する能力について検査された。このように同定された抗体はそれらが免疫反応を起こすタンパク質と関連した。多くのこのようなタンパク質が同定された。
【0010】
米国出願第2003/00882579号は、生物または生物の一部により誘発された免疫血清中に存在する少なくとも1つの抗体を用いて感染性生物由来のタンパク質アレイをスクリーニングすることによる抗原の同定方法を記載している。コードしているDNAのPCR増幅、それに続く転写調節を導入するためのPCRの第2ラウンドによりアレイ中のタンパク質が得られ;第2ラウンド産物はそれからインビトロでタンパク質に翻訳される。しかしながら、記載されたタンパク質アレイを得る方法はハイスループット様式を計画する場合にはタンパク質産出量が明らかに不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このようにこれらの方法は、ワクチンおよび診断法開発に有益な抗原タンパク質は、免疫応答を誘発するそれらのタンパク質またはタンパク質の一部を同定するために感染病原体のタンパク質をスクリーニングすることにより、見い出し得ることを示している。しかしながら、これらの方法はそれぞれのタンパク質に関して単一クローンを単離する必要があるので、可能性のある抗原タンパク質またはペプチド部分の全範囲の表現型である感染病原体に特有の抗原を同定するためのハイスループット研究を提供しない。新しい感染病原体、例えば、作り出された生物兵器などに対するワクチンまたは診断テストの開発にすばやく対処するために、このような迅速な方法が必要である。本質的に完全なプロテオームを表すタンパク質/ペプチドアレイ合成の可能性および実践的に自動化受け入れ可能な実施方法の提供により、本発明は診断テスト、ワクチンおよびT細胞免疫刺激物に関する大部分の有望な候補を素早く同定する機会を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様において、本発明は、ウィルス、原生動物、寄生体または細菌などの感染病原体ゲノム由来のタンパク質またはペプチドの実質的部分の調査にまたは実質的に完全な発現範囲に基づくことのできる免疫原性活性を有するタンパク質またはペプチドの同定方法を対象とする。本方法は、このような病原体のゲノム中の基本的にすべてのオープンリーディングフレームに対して48を表すタンパク質および/またはペプチドを提示すること、およびこのような病原体に曝露されたことのある個体由来の免疫血清または血漿を用いてアレイ中の各タンパク質および/またはペプチドを検査することを可能にする。したがって、最終的に本方法は本質的にすべての病原体のゲノムによりコードされた免疫活性ペプチドの同定を可能にする。
【0013】
全般的に、本発明は感染病原体由来の免疫活性ペプチドまたはタンパク質の同定に有益なペプチド/タンパク質アレイの調製および一般のタンパク質/ペプチドアレイの調製の双方に関する多くの態様を有する。これらの方法は感染病原体ゲノムの有意な部分を表すペプチドおよびタンパク質を含むアレイの調製を可能にする。これらのアレイは細胞および/または液性応答を誘発できる免疫活性物質の同定に利用できる。本発明はまたそのように同定された特異的抗原およびそれらに免疫反応性のモノクロナール抗体にも関する。抗原、それらの核酸および抗体はすべて感染体に関する診断的、予防的および治療的処置に有益な免疫学的組成物の調製に使用できる。したがって、1つの態様において、本発明は個々のコロニーの選択を利用せず、収集され培養された細胞の混合液から使用者がこれらの発現系を得ることを可能にする、所望のヌクレオチド配列の発現系を得る方法に関する。核酸の細胞に対する抽出されるべき形質転換細胞を得るために使用された比率もまた本発明の態様である。
【0014】
もう1つの態様は、本発明の方法により調製されるペプチド/タンパク質アレイまたは感染性生物のゲノムの有意な部分を表すペプチド/タンパク質のどちらかのアレイを対象とする。本発明はまた上記のように同定された抗原およびこれらを使用する方法、それらの対応するモノクロナール抗体、およびそれらをコードする核酸分子を対象とする。感染した血清中の抗体に反応する抗原は感染症の患者を診断する血清検査に直接使用できる。
【0015】
1つの態様において、本発明は所望のヌクレオチド配列の発現系を得る方法を対象とする。この方法は、所望のヌクレオチド配列のための発現系により形質転換された宿主細胞、またはこのような細胞によって発現系に組み合わされ得る成分により形質転換されたリコンビナーゼ−形質転換受容性宿主細胞を利用できる。発現系は通常プラスミドである。宿主細胞は化学的形質転換受容性細菌、酵母、またはエレクトロポレーション−形質転換受容性細胞でよく、いくつかの実施形態において、宿主細胞はサッカロミセス・セレビシェなどの酵母または大腸菌などの細菌であり、およびJC8679、TB1、DH5アルファ、DH5、HB101、JM101、JM109およびLE392からなる群より選択された大腸菌株の少なくとも1つを含むことができる。
【0016】
発現系の成分は線状化プラスミド、関与する生物由来の少なくとも1つのオープンリーディングフレーム、またはこのようなORFの一部、および新しいプラスミドを作製するためにORFを線状化プラスミドの中に確実に挿入できるよう設計された1つまたは複数のアダプターを含むことができる。したがって、このような各アダプターは線状化プラスミドの1つの末端に相補的な第一のヌクレオチド配列およびゲノムORFの1つの末端に相補的な第2のヌクレオチド配列を含む。このような適切に設計された2つのアダプターは、ORFを線状化プラスミドの中へ挿入することに使用でき、そのプラスミドを用いて適切なリーディングフレーム中に挿入されたORFのヌクレオチド配列を有する新しいプラスミドを作製する。
【0017】
アダプターは多くの場合さらに、フレーム中のエピトープタグなどの1つまたは複数の付加された特徴をコードするヌクレオチド配列をORFに含むことができ、そのため発現タンパク質はエピトープタグと連結したORFによりコードされたペプチドを含む融合タンパク質になる。このようなエピトープタグは、発現ペプチドまたはタンパク質の検出、精製または位置決めに有益であろう。この目的に関するエピトープタグは限定されるものではないが、以下の1つまたは複数を含むことができる:3〜12の連続したヒスチジン残基、一般に6〜10のこのような残基、をコードするポリヒスチジンタグ;血球凝集素(HA)タグ;c−Mycタグ;ビオチン−リガーゼ認識部位;グルタチオン−S−アデノシルトランスフェラーゼ(GST)タグ;例えば、GFPなどの蛍光タンパク質;FLAGタグ;およびリンカー。このような2つのアダプターが一般的に使用されるので、これらの要素はこのような2つのアダプターのうち1つまたは両方の上に含まれる可能性がある。例えば、一方の上にポリヒスチジンタグおよび他方の上にHAタグを含むことで単一発現タンパク質のための2つの異なる検出または位置決め方法を可能にする。本発明のいくつかの実施形態において、1つまたは複数の他の機能要素もまたアダプターまたは線状化プラスミドのどちらかの上に含まれる。このような要素の配置および選択は当技術分野では周知である。このような要素はプロモーター、終了配列、オペロン、融合タグ、シグナルペプチドまたは他の機能ペプチド、アンチセンス配列およびリボザイムを含むことができる。
【0018】
発現ヌクレオチド配列は生物のゲノム由来の配列を含むことができ、いくつかの実施形態において対象となる生物の遺伝子由来の1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含むことが選択される。いくつかの実施形態では生物は微生物であり、いくつかの実施形態ではそれは感染病原体である。ヌクレオチド配列が感染病原体などの生物のゲノムの一部を含む実施形態において、本明細書中の方法で利用するアダプターは1つまたは複数のエピトープタグを含む。このような標識の代表的な例は、HA、c−Mycおよび少なくとも6つの連続したヒスチジン残基を有するポリヒスチジンを含む。
【0019】
本発明の1つの態様において、対象となる標的ゲノムヌクレオチド配列および線状化プラスミドの両方を使用前にPCRにより増幅し、百万細胞当たり1〜10ngの標的ヌクレオチド配列および線状化プラスミドを使用する。他の態様においては標的ヌクレオチド配列および線状化プラスミドの量はより大量である可能性がある。いくつかの実施形態においてはヌクレオチド配列のプラスミドに対するモル比は約1:1でよく、他の実施形態においては1:10と10:1の間、さらに別の実施形態においては100:1と1:100の間である。
【0020】
細胞を、これらの成分の存在下でその後培養し、収集し、形質転換細胞の混合体から発現系を抽出する。本発明のもう1つの態様において、発現系の単離に先立つ単一クローンの単離は必要ない。むしろ、培養細胞を混合体として収集し、通常はプラスミドである発現系を収集細胞から直接単離する。したがって本方法はこのような発現系の作製のためのハイスループット・自動化手段に関して有利であり、所望のタンパク質またはペプチドをコードしているプラスミドの回収によりよい結果を残す。後者の有利性は、突然変異を起こしているかまたは求めていたものよりむしろ望ましくないプラスミドを含んでいるコロニーの不適切な選択による、望ましい発現系の損失を防ぐ本発明の方法の能力を反映する。
【0021】
このように作製された発現系は、コードされたペプチドを作製するために発現系を翻訳できる細胞由来系中の1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質を作製するために使用できる。細胞由来系は無傷細胞の内部でよく、または必須な酵素および構成要素の無細胞混合体でもよい。いくつかの実施形態において、細胞由来系はエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)(E.コリ(E.coli))などの細菌;または酵母;または原核細胞である。他の実施形態においては、網状赤血球などの哺乳動物細胞でもよく昆虫細胞でもよい真核細胞である。ある実施形態では、発現系は樹脂状細胞、B細胞またはマクロファージなどの抗原提示細胞(APC)の中へ導入される。他の実施形態においては、使用する翻訳/転写系は大腸菌などの微生物由来、または網状赤血球などの真核細胞由来、または小麦麦芽などの植物細胞由来でよい無細胞系である。
【0022】
1つの実施形態において、タンパク質またはペプチドは1つまたは複数の宿主ゲノムの遺伝子を表している。したがって、本発明の方法は、前記ゲノムの遺伝子の任意のサブセットをコードするプラスミドを作製するために使用でき、このようなゲノムの遺伝子の大部分または実質的にすべてをコードするプラスミドのセットまたはアレイを作成するために使用できる。ある実施形態では、該ゲノムは感染病原体のものである。
【0023】
本発明の方法により得られて発現した発現系は、感染病原体または他の生物のゲノムを表すタンパク質またはペプチドのアレイの作製に使用できる。これらのアレイは本発明のさらなる態様において使用でき、このさらなる態様は液性および/または細胞性免疫応答を起こすであろう抗原の同定方法に関する。この方法は本明細書中の方法により作製された少なくとも1つのタンパク質またはペプチドを曝露すること、または病原体のゲノム中のオープンリーディングフレームによりコードされているタンパク質/ペプチドの実質的にすべてを表すタンパク質および/またはペプチドのアレイを、感染病原体に曝露されたことのある対象からの免疫血清または血漿またはそれらの成分に曝露することを含み、この対象を「免疫された対象」と言い得る。例えば、曝露は感染病原体または感染病原体の一部の弱毒化型を使用したワクチン接種または前記感染病原体による感染経験によるものでよい。前記血清、血漿または成分による免疫反応を示すアレイに含まれるタンパク質/ペプチドはワクチン製造の有望な候補として同定される。アレイがタンパク質の全長を含む場合、ペプチドが抗原性ペプチドのセグメントを表し、タンパク質上の抗原エピトープのより的確な位置決めを可能にする、前述の方法で同定される抗原由来の追加のペプチドアレイを提供する段階をさらに含むことができる。あるいは、最大免疫活性を示すであろう領域を同定するために、親水性プロットなどの当技術分野で周知の方法を使用し、完全長タンパク質またはより長いペプチドを分析できる。免疫反応性でありワクチン処方に潜在的有用性があると同定された同一のタンパク質またはペプチドが、感染患者の疾病原因病原体の同定のための血清学的診断テストに直接有益であり得る。所与の感染病原体によりコードされたタンパク質に対する血清抗体を有さない患者は、該病原体により感染していない。病原体由来のタンパク質に対する抗体を有する患者は、最近感染したかまたは過去のいつかにおいて感染したことがあるかのどちらかである。
【0024】
免疫活性ペプチドまたはタンパク質の同定に使用されたペプチド/タンパク質アレイは感染病原体のゲノムのかなりの部分−例えば、50%−を表すことができ、またはそれらはコードされたアミノ酸配列の大部分(>50%)または実質的にすべて(少なくとも98%)を表すことができる。いくつかの実施形態において、タンパク質アレイは本発明の方法により調製される。いくつかの実施形態では、本発明の方法により調製されたタンパク質またはペプチドまたはアレイは複数の免疫された対象の免疫成分に曝露され、少なくとも大部分の免疫された対象からの免疫応答を誘発するそれらのタンパク質またはペプチドは免疫優勢抗原として同定され、ワクチン含有物の適切な候補である。いくつかの実施形態では、これらアレイまたはタンパク質はまた免疫されていない対象由来の血清に曝露され、免疫された対象内で応答を誘発し免疫されていない対象内では誘発しないタンパク質が、ワクチンの使用に適切であるとして選択される。
【0025】
液性応答が、いくつかの本発明の実施形態において、タンパク質またはペプチドに対する免疫された対象由来の少なくとも1つの抗体の結合を検出することにより検出される。抗体へのタンパク質の結合の検出は当技術分野で周知の方法により観察でき、この方法は、例えば蛍光標識、放射性標識または酵素で標識した第2の抗体の使用を必要とする方法を含む。
【0026】
いくつかの本発明の実施形態において、細胞性免疫応答が検出できる。関連免疫成分は免疫された対象由来のT細胞である。このような実施形態において、T細胞が1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質に接触しているとき、免疫応答は前記T細胞によるすくなくとも1つのサイトカインの形成を観察することにより検出される。このような実施形態に関して、ペプチドまたはタンパク質は抗原提示細胞(APC)により提示され得、いくつかの実施形態においてAPCを本発明の方法により得られたプラスミド由来のペプチドまたはタンパク質の発現に使用する。他の実施形態において、タンパク質またはペプチドは少なくとも1つのエピトープタグを含む融合タンパク質として発現され、前記エピトープタグはタンパク質またはペプチドを表面上に固定するために使用する。いくつかの実施形態において表面は、APCより小さく、したがってAPCにより取り込むことができる、マクロファージなどの粒子またはビーズである。このような1つの実施形態において、粒子はニッケルビーズまたはニッケルもしくはニッケルの塩または錯体で被覆されたビーズで、ペプチドまたはタンパク質は少なくとも6個の連続したヒスチジン残基を有するポリヒスチジンエピトープタグを含む。ペプチドはその結果、ニッケルへのポリヒスチジン標識の親和力によりニッケル含有先端上に固定できる。
【0027】
他の態様において、本発明は、対象から得られた免疫成分の、検査材料への免疫応答を検出する方法を提供する。この検査材料は、試料中に、この対象が免疫応答を示し得る他の抗原材料と共に含まれている。これらの状況は、例えば、検査されるタンパク質(このタンパク質にこの対象は暴露されたことがあり得て、したがってこのタンパク質に対してこの対象は免疫応答を示す。)が細胞由来の系で発現されたとき起こり得る。この方法において、対象から得られた免疫成分は追加の非関連抗原材料によりまず処理され、その結果、前記検査材料による免疫成分の処理の前に、非関連抗原材料に対する何れの免疫反応も遮断される。例えば、検査されるタンパク質またはペプチドがE.コリ由来の系の中に生産されるとき、ヒト対象由来の免疫成分試料はE.コリ抽出物により処理され得、ヒトが様々なE.コリ抗原に対して示すと思われるバックグラウンド免疫応答を遮断され得る。したがって、E.コリの溶解物または抽出物が対象由来試料の処理に予備的に使用されるであろう。
【0028】
要約すると、本発明は、オープンリーディングフレーム(ORF)またはその一部によりコードされた、個々のタンパク質またはペプチドを提供する方法を対象とし、該オープンリーディングフレーム(ORF)またはそれらの一部は発現系(たとえばプラスミド)において前記タンパク質またはペプチドをコードしているインサートの効果的な発現を含み、該発現系は前記インサートおよび線状化プラスミドを含むように修飾されたリコンビナーゼ・形質転換受容性細胞の混合体(クローンでない)より抽出され、ここで前記線状化プラスミドおよび前記インサートはインビボ相同的組み換えにより前記細胞内で連結されており、前期インサートは前記ORFまたはそれらの一部から増幅される。1つの特有の実施形態において、線状化プラスミドは自分自身で増幅する。増幅はPCRにより可能である。タンパク質作製のための発現は例えば、無細胞系において、または所望の翻訳後修飾を備える細胞において可能である。本方法は同時作製するタンパク質またはペプチドの多様性を可能にする。いくつかの実施形態において、10、50、100、200、400、600、800、1000、1500、2000または2000以上の異なるタンパク質またはペプチドが同時に作製できる。
【0029】
本発明は感染病原体または生物のゲノムによりコードされているタンパク質またはペプチドの大部分または実質的にすべての試料を作製する方法を提供する。このように得られたタンパク質もしくはペプチドは別々に含まれ得、またはこれらはニトロセルロースなどの基材上にもしくは検査表面上のタンパク質またはペプチドのアレイを作製するためのプレートまたはチップ上に配置され得る。いくつかの実施形態において、これらのタンパク質またはペプチドの各々は1つまたは複数のエピトープタグと融合でき、これにより翻訳後にタンパク質の検出、位置決め、精製が可能になる。エピトープタグは、支持表面または例えば発現タンパク質のポリヒスチジンタグに硬く結合できるニッケル表面などの相補的結合材料からなる表面に、タンパク質またはペプチドを固定するために使用できる。したがって、いくつかの実施形態において、対象となるペプチドはエピトープタグに融合発現され、前記エピトープタグはペプチドをビーズまたは分析プレートのウェルなどの表面に固定するために使用される。1つの実施形態において、エピトープタグは少なくとも6つの連続したヒスチジン残基を含むポリヒスチジン配列であり、1つまたは複数の前記タンパク質が固定された表面はニッケルを含む。
【0030】
さらにもう1つの実施形態において、本発明はORFまたはそれらの一部であるヌクレオチド配列からなるインサートを含むプラスミドを得る方法を対象とし、この方法は線状化ベクターおよび前記ORFまたはその一部を含む増幅された核酸を含むように修飾され、相同的組み換えを介して前記インサートおよび前記線状化プラスミドが組み替えられたリコンビナーゼ・形質転換受容性微生物の混合体(クローンでない)から前記プラスミドを抽出することを含む。
【0031】
さらにもう1つの態様では、本発明は感染病原体に対して液性応答を生じるであろう抗原の同定方法を対象とし、この方法は本発明の方法で得られたタンパク質および/またはペプチドのアレイと、それぞれが感染病原体、場合によって弱毒化型またはそれらの一部に曝露された対象より得られた免疫血清または血漿またはそれらの中に含まれる免疫グロブリンとを免疫応答の誘発が予測される方法で接触させること、および血漿、血清または分離された免疫グロブリンに免疫反応するそれらのタンパク質またはペプチドを適切な抗原として同定することを含む。いくつかの実施形態において、ペプチド/タンパク質は前記感染病原体のゲノムの大部分または実質的にすべてを表し、免疫反応は感染病原体に応答して対象により産生される少なくとも1つの抗体との結合を含む。これらタンパク質またはペプチドは、上記の方法に従いインビボ組み換えを使用してプラスミドを得て誘導し得る。このプラスミドは、次に、無傷の細胞の内部でもよく無細胞系でもよい細胞由来系において発現に付される。いくつかの事例では、血清または血漿を、背景の免疫反応を最小にするために、タンパク質の発現に使用される細胞由来系を提供する生物の溶解物で処理することが望ましいであろう。いくつかの実施形態において、細胞由来系はE.コリより得られ、E.コリの抽出物または溶解物が細胞由来系の成分に対するバックグランド免疫応答を遮断するために使用される。タンパク質またはペプチドの抗体との結合は、いくつかの実施形態において、検出を容易にするために蛍光性、放射性または酵素性標識基により標識された第2の抗体の使用により検出できる。
【0032】
他の態様において、本発明は感染病原体に対する細胞応答を生じる抗原を同定する方法を対象とする。この方法は上述したものと似ていようが、対象の樹状細胞または他の免疫系細胞成分を免疫活性の診断用薬として利用し得る。ある実施形態において、上述の方法により提供されたタンパク質またはペプチドはビーズなどの基材上に固定され、例としては、発現タンパク質上にポリヒスチジンエピトープタグを組み込むことによりニッケル被覆ビーズ上にそのタンパク質を固定化し、その後固定されたタンパク質またはペプチドはAPCに曝露される。有利なことに、基材はAPCより小さいビーズ構造であり、したがってこのようなAPCにより内在化させられる。次いで前記APCは上述の方法で病原体に対して免疫化された対象由来のT細胞のような応答細胞の少なくとも1つの型に曝露される。前記応答者細胞またはT細胞による1つまたは複数のサイトカインの産生がこのタンパク質に対する免疫応答の存在を示している。したがって、この実施形態においては、T細胞がペプチドまたはタンパク質に曝露されたことのあるAPCに曝露されたとき、免疫応答は1つまたは複数のサイトカイン形成を検出することにより検出できる。あるいは、免疫応答は前記応答者細胞またはT細胞の細胞毒性活性の増殖を観察することにより検出できる。
【0033】
ひとたび抗原タンパク質が同定されると、本発明の方法はまた、免疫原性のタンパク質上の領域をより精密に同定するために、タンパク質のスキャンにも使用できる。これはタンパク質セグメントを発現させるように設計されたプライマーを提供することにより実施できる。タンパク質セグメントは例えば、10から20、または20から30、または20から50、または20から100のアミノ酸長でよく、必要に応じてこれより短いものまたは長いものも使用できる。これらのより短いペプチドはその後発現され、本発明の方法により分析され、したがって抗原効果を生じるそれらのペプチドは同定される。場合によって、これらのセグメントは、抗原が二つのセグメント間で分断されるために見逃される可能性を最小限にするために重複した設計にしてもよい。
【0034】
他の態様において本発明は、本発明により得られたタンパク質またはペプチドのアレイ、前記アレイにより同定された抗原、本発明の方法により同定された免疫優勢抗原および少なくとも1つのこのような抗原とそのような抗原の少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列とを含むDNAワクチン組成物を含むワクチン組成物および上記の方法により同定された少なくとも1つの抗原を含む血清学的診断テストを対象とする。他の態様においては、抗体、とりわけ前記抗原の少なくとも1つに特異的なモノクロナール抗体およびこのような抗体を含む組成物を対象とする。その上更なる態様は抗原、抗体、ワクチンおよびDNAワクチンを含めた、本発明の組成物による対象を免疫化する方法、ならびに、これらの方法により治療的または診断的に同定された核酸および/または抗原を使用する方法、例えばある人がすでに特定の生物に感染しているかまたはしていたかどうかをはっきりと決定することを対象とする。
【0035】
本発明のある実施形態において、発現系の作製に関する本明細書中の方法は、生物のゲノムより選択されたそれぞれの遺伝子セットを、それ自身のプラスミド(場合によって、エピトープタグを含む)の中に組み込むことに適用され、この生物のタンパク質の大部分または実質的にすべて(すべてのプロテオーム)を表すようなタンパク質のアレイが作製される。この生物は、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)(炭疽菌)、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)、バリオラ・メジャー(Variola major)(天然痘)および他のポックスウィルス、フランシセラ・ツラレンシス(野兎病)、またはアレナウィルス(Arenaviruses)(例えば、LCM、フニンウィルス、マチュポウィルス、グアニトウィルス、ラッサ熱)、ブニヤウィルス(Bunyaviruses)(例えば、ハンタウィルス属(Hantaviruses)、リフトバレー熱)、フラビウィルス(Flaviruses)(例えば、デング)またはフィロウィルス(例えば、エボラ、マールブルグ)を含むウィルス性出血熱などの感染病原体であり得る。この生物はまたバークホリテリア・シェードマレイ、コクシエラ・バーネティー(Coxiella burnetii(Q熱))、ブルセラ(Brucella)種(ブルセラ症)、バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)(鼻疽))、リシン毒素(リシナス・コンムニス(Ricinus commnis)由来)、クロストリジウム・パーフリンゲン(Clostridium perfringens)のイプシロン毒素、スタフィロコッカス・エンテロトキシンB(Staphylococcus enterotoxin B)、発疹チフス(リケッチア・プロワゼキ(Rickettsia prowazekii))などの感染病原体、または細菌(例えば、下痢原性E.コリ、病原性ビブリオ、シゲラ(Shigella)種、サルモネラ(Salmonella)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocoliticd))、ウィルス(カルシウィルス、A型肝炎)または原生生物(例えば、クロストリジウム・パルビス(Cryptosporidium parvum)、シクロスポラ・カヤタネンシス(Cyclospora cayatanensis)、ジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)、エンタモエバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、ミクロスポリディア(Microsporidia)を含む食物および水中病原体であり得る。この生物はまた、西ナイルウィルス、ラ・クロス、カリフォルニア脳炎、VEE、EEE、WEE、日本脳炎ウィルスまたはキャサヌールフォレストウィルス(Kyasanur Forest Virus)を含むウィルス性脳炎群などの感染病原体でもあり得る。さらにこの生物は、ニパウィルス、ハンタウィルス、ダニ媒介出血熱ウィルス(例えば、クリミア・コンゴ出血熱ウィルス)、ダニ媒介脳炎ウィルス、黄熱病、多剤耐性TB、インフルエンザ、リケッチア、狂犬病または重症急性呼吸器症候群関連コロナウィルス(SARS−CoV))などの感染病原体でもあり得る。いくつかの実施形態では、それはフランシセラ・ツラレンシス、ヒトパピローマウィルス、西ナイルウィルス、バークホリデリア・シュードマレイ、またはプラスモジウム・ファルシパルム、マイコバクテリウム・ツベルクロシスまたはワクチニアである。このように作製されたタンパク質はチップなどの検査表面の上に、作製された各々のタンパク質またはペプチドを配置することによって、アレイ中にフォーマットできる。ニトロセルロースなどの検査表面へのタンパク質の非特異的結合により、またはタンパク質もしくはペプチド上にエピトープタグが存在する場合にエピトープタグと結合する表面特徴との特異的結合により、タンパク質はこのようなアレイ中に局在化できる。例えば、タンパク質またはペプチドがポリヒスチジンタグを含む場合、ニッケル含有表面を使用できる。
【0036】
このアレイはこのような生物のタンパク質の選択された1組を含むことができ、または少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%またはより多く、例えば感染病原体の実質的にすべてのゲノム、を表すタンパク質および/またはペプチドを含むことができる。このようなタンパク質および/またはペプチドの数は少なくとも100、200、300、400、500、1000、1500、2000または2000より多くの異なる配列であり得る。このような実施形態において、アレイは生物のプロテオームのこのような一部分を集合的に表すいくつかの別々のアレイを調製することによって得ることができる。したがっていくつかの実施形態において、本発明はタンパク質のアレイを検査表面上に作製する方法を提供し、このアレイは感染病原体のプロテオームの選択された一部(最大すべてのプロテオームを本質的に含む)を表す。このようなプロテオームアレイは対象が感染している病原性生物の株の決定と免疫優勢抗原タンパク質の同定およびタンパク質が保有する他の任意の活性または特性の決定に使用できる。さらに他の態様において本発明は、同定された抗原に免疫反応性のモノクロナール抗体およびこのような抗体を使用し受動的免疫を与える方法を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の1つの実施形態は、これらアレイの液性および/または細胞性免疫応答を生じる能力を検査できるように、感染病原体のゲノムにコードされたものを表すタンパク質および/またはペプチドのアレイを得るためのハイスループットな方法を提供する。このアレイ中のタンパク質の調製に関する方法はどのような供給源由来でも一般的なタンパク質の調製に適用可能である。特に、本ハイスループット法特有の有利性は感染病原体由来のタンパク質およびペプチドのレパートリーの提供に適用可能である。本方法はさらに、個々の増幅された部分またはインサートはリコンビナーゼ含有微生物中で複製可能なプラスミドに提供可能なので、配列が周知である任意の核酸にコードされた多数のタンパク質および/またはペプチドの提供にも使用できる。このようなタンパク質の調製に関する本発明の方法は、すでに採用されている方法とは異なり、単離した個々のクローンよりむしろ形質転換混合物の成分を培養することにより得た微生物の混合物より抽出したDNAを用いる。クローンの単離は、多くの場合所望の天然型タンパク質よりむしろ変異型の獲得をもたらすのでこれは有利である。さらに本発明の方法は、スクリーニング段階において、これらの混合物より得たベクターによりコードされ発現された未精製のタンパク質を利用できる。結果として、本方法は全体的方法の自動化およびハイスループット処理の導入をすばらしく簡略化する。
【0038】
本発明の方法を使用して、効能のあるワクチンになるであろうワクチニア由来の特定のタンパク質の同定が可能になっている。弱毒化ウィルスの使用は時として好ましくない副作用を伴うため、このことは重要と考えられる。弱毒型感染病原体複合体よりむしろ単一タンパク質または明確なタンパク質混合物の利用の法が好ましいであろう。例えば、現在B型肝炎表面抗原の使用が行われている。
【0039】
上記のように本発明の方法は、関連ヌクレオチド配列が周知である場合、一般に多くのタンパク質およびペプチドをコードする核酸に適用可能であり、そのため所望のインサートの増幅のために適切なプライマーを利用できる。例えば、どちらもここに参照により組み込まれる米国第2003/0082579号および米国第2003/0044820号に記載のように、設計されたプライマーは線状化ベクターによる所望の相同的組み換えを提供するアダプター配列を含む。伸長されたプライマー自身および/または線状化ベクターは、適切な固体表面への強固な結合または、もし必要であれば、発現タンパク質の精製を可能にするために、その後発現を起こすプロモーターおよびターミネーターなどの適切な制御配列と共にヒスチジンタグ、FLAGタグなどの「タグ」、などを提供できる。通例、線状化ベクターはまた、インサートを含まないベクターを生じ得るより伝統的な分解方法を用いるよりむしろ、PCRにより増幅され得る。
【0040】
本発明の方法全般において、多様なタンパク質またはペプチドをコードし、そのヌクレオチド配列が周知である感染病原体ゲノムなどの核酸分子を基材として使用する。対象となるタンパク質またはペプチドをコードしている個々のセグメントは個別に(例えば、個々の反応混合物)PCRまたはコードしている配列の末端部分に相補的な配列および発現を制御しているタグおよび/または配列をコードできるアダプター、しかしいずれにしても線状化ベクター上に提供される配列に相同であるどちらをも含むプライマーを用いた他の増幅技術を使用して増幅される。個別に増幅されたセグメントおよび線状化プラスミドはその後インビボでの組み換えを可能にするために、リコンビナーゼ含有微生物中に共形質転換される。リコンビナーゼ含有生物は、例えば、酵母または化学的形質転換受容性E.コリでよい(またはそれほどではないが、エレクトロポーション・形質転換受容性E.コリが望ましい)。適切な化学的形質転換受容性E.コリはJC8679、TB1、DH5α、HB101、JM101、JM109およびLE392株を含む。サッカロミセス属(Saccharomyces)はリコンビナーゼ含有酵母として特に有効である。
【0041】
形質移入反応におけるDNAの細胞に対する比は100ng/100万細胞程度の高さでよい。しかし1〜10ng、5〜10ng、1〜5ngまたは1〜3ng/100万細胞程度の低い比率のものも使用できる。多くの場合線状化プラスミドおよび所望のヌクレオチド配列が約1:1のモル比で提供されることが望ましく、しかしながら、5:1から10:1〜100:1の比のものを用い、1:5から1:10〜1:100の比のものもまた用いることができる。
【0042】
増幅インサートおよび増幅線状化ベクターにより処理された細胞は適切な培地で、多くの場合一晩培養する。得られるのは細胞混合物であり、その大部分は正しい方向に挿入された所望のヌクレオチド配列の増幅セグメントを有する所望の組み換えベクターを含む。(方向性は線状化プラスミドの相同部分に適合するようなプライマーの設計により確実になる。)例えば突然変異のために、所望のインサートを喪失する危険を冒す個々のコロニーの単離よりむしろ、細胞は、プラスミドDNAを得るために、培養物から回収し直接抽出する。したがって、得られたプラスミド混合物はその後DNAの適切な宿主細胞への形質移入またはハイスループット目的のために通例インビトロの翻訳系のどちらかにより転写/翻訳される。このようなインビトロ翻訳系は市販されており、その使用法については当分野の技術者には周知である。得られたタンパク質またはペプチドは、それから直接個体支持体にスポットできる。この支持体は、マイクロタイタープレートのウェルまたは分割されたニトロセルロースなどの、任意の適切な表面に調製されたタンパク質およびペプチドのアレイの一部であり得る。必要であれば、タンパク質は当分野で周知の方法によりまたはプライマーまたはプラスミドからタンパク質中にコードされたタグの使用により精製されてよく、あるいは、さらなるタンパク質の精製を行うことなく転写/翻訳混合物を直接使用して、タンパク質またはペプチドを個体支持体に提供できる。本発明の方法により作製された、精製されたまたは実質的に精製されたタンパク質は本発明の1つの態様である。これらのタンパク質またはペプチドは自然発生ペプチドまたは本明細書にさらに記載のエピトープタグなどの1つまたは複数の付加からなる修飾型でよい。タンパク質が支持体に付着された場合、固体支持体は、それ自身、片方のリガンドをタンパク質またはペプチド上のタグに対する対の一方となるリガンドが供給され得る。
【0043】
タンパク質のアレイを得るために、前述の段階の配列決定が希望のORFまたはそれらの部分の多くに関して実施される。アレイ上でいずれにしてもスクリーニングを行うための有望な候補がすでに周知である場合、タンパク質/ペプチドのアレイのメンバーとして比較的少数のタンパク質またはペプチドのみを得ることが有利である。しかしながら、50、100、500、1000ほど多くまたはより多く、多数のヌクレオチド配列がタンパク質またはペプチドに変化させ得る。例えば、感染病原体のゲノムまたは、任意の原核生物のゲノムを使用した場合、アレイは発現タンパク質またはペプチドの少なくとも10%、20%、50%、75%、90%、95%または100%を含む。得られたアレイは生物の実質的にすべて、すなわち少なくとも98%のプロテオームまたはそれらの一部のみのプロテオームを表わすことができ、またはプロテオーム中のタンパク質の個々のペプチド部分、または完全長のタンパク質および部分配列の組み合わせを表すことができる。
【0044】
ペプチドまたはタンパク質のアレイの調製を容易にするために、特定の官能基に結合する通常6から20アミノ酸長の短鎖ペプチドタグを用いた、対象となるペプチドまたはタンパク質の融合が有利であろう。このような結合タグは次いでタンパク質の精製またはタンパク質の検査表面への固定またはタンパク質の存在の検出に使用できる。短鎖配列アミノ酸からなるこのような結合タグは周知であり、一般的にエピトープタグを指す。例えば、赤血球凝集素(HA)タグ、エピトープタグ(ヒトインフルエンザ赤血球凝集素タンパク質、YPYDVPDYAなど)またはc−Mycエピトープタグ(ヒトプロトオンコジーンmycの10アミノ酸セグメント、EQKLISEEDL)は、ゲノムヌクレオチドを発現プラスミドに挿入するために使用されるアダプターに適切なヌクレオチド配列を組み入れることにより発現すべきタンパク質またはペプチドと融合できる。c−Myc、HAまたは他のエピトープタグに対する抗体が次いで発現ペプチドを検出または位置決めすることに使用できる。
【0045】
同様に、ポリヒスチジンタグはエピトープタグの役割を果たすことができ、タンパク質の発現に使用するベクターへのゲノム核酸挿入に使用するアダプターの特有の設計により発現タンパク質の中に組み込むことができる。ポリヒスチジンエピトープタグは3から12の連続したヒスチジン残基を含むことができ、一般的には6から10の連続したヒスチジン残基である。このようなポリヒスチジンタグはニッケル表面に特異的に強固に結合する。したがって、このようなタグを含む発現ペプチドまたはタンパク質はニッケルビーズ、ニッケル被覆表面またはニッケルもしくはニッケル塩または例えばニッケルニトリロ3酢酸3ナトリウム(Ni‐NTA)などのニッケルの錯体からなる親和性カラムに強固に結合できる。したがって、ポリヒスチジンタグ含有タンパク質またはペプチドのアレイは、ニッケルまたはニッケルの塩または錯体でそれぞれのウェルを被覆し、その後それぞれのタンパク質またはペプチド溶液をこのようなニッケル被覆ウェルに注入して、タンパク質がこの表面に固定されるようにすることにより、96ウェルフォーマットとして調製することができる。同様に、このようなタンパク質は、ビーズをニッケルで作製することによりまたは他の素材のビーズをニッケルまたはニッケルの塩もしくはニッケル錯体でメッキすることにより、簡易な表示としてビーズに付着させうる。1つの実施形態において、ゲノムタンパク質は少なくとも6つの連続したヒスチジン残基からなるポリヒスチジンタグでタグ付けし、1umニッケルビーズに付着させられる。これらのビーズはその後実施例9(下記)に記載のようにT細胞による免疫応答の分析に使用される。
【0046】
必要に応じて、2つの異なるタグを付けることも可能である。すなわち、第1のタグをコードするヌクレオチド配列は、プラスミド内に挿入された核酸の5’末端の近くに含ませて、発現タンパク質のN末端にタグを付けることができ、第2のタグをコードするヌクレオチド配列は、プラスミド内に挿入された核酸の3’末端の近くに含ませて、発現タンパク質のC末端の近くにタグを付けることができる。これらの1つの末端が埋められてアクセス不能な場合、これらのタグは認識を確実にするために同一ということも有り得る。または、これらのタグは、使用される2つの異なる捕捉または検出方法を可能にするために、異なり得る。検出、位置決めまたは精製に有益な他のタグがまた必要に応じてゲノムタンパク質に付加されることができる。このようなタグはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ビオチン標識シグナル、緑色蛍光タンパク質(GFP)などを含み、それぞれは当分野で周知の方法により組み入れ得る。
【0047】
いったん所望のペプチド/タンパク質またはペプチド/タンパク質のアレイが得られたならば、どのような所望の特性または反応性についてもスクリーニング可能である。このような使用の1つの例は免疫活性ペプチドおよびタンパク質についてのスクリーニングである。免疫活性は液性または細胞性の系についてであり得る。いずれの場合も、感染病原体またはそれらのいくつかの部分に曝露されたことのある対象から得られたスクリーニング体が必要である。場合により、タンパク質またはペプチドのアレイは、それぞれが感染病原体またはそのいくつかの部分(そのエンベロープタンパク質もしくは溶解細胞またはそのタンパク質の1つまたはそれ以上)に曝露されたことのある複数の対象から得た、1つまたはそれ以上の免疫成分(血清、唾液、血漿、T細胞など)に対してスクリーニングされ得る。このことは、多数の対象で免疫応答を誘発する抗原の決定を可能にする。最も一般に認識されるそのような抗原は免疫優勢抗原と呼ぶ。抗原のファミリーは、血清学的診断テストまたはこれら免疫優勢抗原のいくつかを含むワクチンに使用し得る。
【0048】
本発明の方法は様々なゲノムに適用でき、多くの場合ウィルス、真菌、細菌、原生動物のほかに扁形動物、吸虫、線虫などの多細胞寄生体をも含む感染病原体のゲノムに有効に適用される。このような病原体のプロテオームの大部分を表すタンパク質アレイの迅速な作製方法を提供することにより、本発明はそれらの遺伝子および特定の感染病原体に対するワクチンまたは診断テスト開発にもっとも有益なタンパク質の迅速な同定を可能にする。
【0049】
したがって、本明細書中で用いたように、「免疫活性の」という用語は、免疫応答が液性であれ細胞性であれその両方であれ、その免疫応答を誘発するタンパク質またはペプチドの能力を指す。液性の免疫応答は抗体を産生することを特徴とする適応性防御機構であり、一方細胞性の免疫応答は活性化ナチュラルキラー(NK)細胞および細胞障害性Tリンパ球(T細胞またはCTL)などの細胞の産生および/または活性化を特徴とする。同様に「抗原」は、誘発された免疫応答の性質にかかわらず、このような免疫活性タンパク質またはペプチドを指す。「免疫優勢抗原」は抗原に曝露された大部分またはすべての対象において免疫応答を誘発する抗原を指す。このような免疫優勢抗原は受動的免疫化法に使用するための効果的なワクチン成分または抗体産生のエリシターを提供する高い可能性があり、したがって、しばしば免疫組成物の成分として特に有効であり、血清学的診断テストにも有効である。
【0050】
T細胞は他の細胞の表面上のペプチド/MHC複合体を認識する。このような細胞はしばしば抗原提示細胞(APC)と呼ばれる。エフェクター細胞は実質的にどのような細胞型上のこのような複合体も認識することで自身の機能を仲介できるが、ナイーブ細胞は1組の特殊APC、樹状細胞(DC)、により最も効果的に活性化される。
【0051】
本明細書中で使用される「アレイ」は少なくとも1つの検査表面上に組織的に位置づけられた物質の集まりを指し、前記表面上に形成されたウェルまたは凹部中に収容された物質を含み、この物質の配列場所はこの物質の同一性と相互に関連付けられる。アレイは、一般的に上記のように位置づけられた、少なくとも約10の物質を含み、多くの場合少なくとも100または200または500を含みまたは1000またはそれより多くの物質を含むことができる。アレイは、該物質がそれらの置かれた位置に留まっている限り、それらが物理的または化学的どちらの力により留まっていようとも、例えばチップ、プレートまたはニトロセルロース基板上に配置された物質および96−ウェルおよび384−ウェルおよび同様のプレートのウェル中に収容された物質を含む。アレイは多数のプレート、チップまたは他の表面を備え得る。例えば、マイクロアレイは試薬量を最小限にするよう設計された、小型化されたアレイである。ここに記載のアレイはしばしば抗原ペプチドのアレイであるが、一方本発明はまたこのような抗原ペプチドに選択的な抗体のアレイをも含む。
【0052】
本発明の方法により同定された抗原はペプチドまたはタンパク質であり得、対象を感染病原体による感染から保護する免疫学的組成物の調製または受動的免疫の提供または抗原の精製もしくは検出に有効なモノクロナール抗体の産生に使用される。このような免疫学的組成物は対象を抗体産生などの免疫応答を生じるように誘導するワクチンになり得、またはそれら自身が抗体にまたは受動的免疫を提供する能動免疫物質になり得る。抗イディオタイプ抗体またはそれらを産生する核酸は抗原自体の代わりに使用できる。これらはまた1つまたは複数の抗原エピトープを生じる核酸ワクチンでもあり得、この核酸は患者自身の細胞により取り込まれ得る。これら核酸はコードされた抗原的タンパク質またはペプチドの産生をもたらすプロモーターなどの機能的要素を伴うことができ、または裸のDNAであり得る。
【0053】
本発明は、また、本発明の方法により同定されたペプチドおよび抗原に実質的に相同なペプチドおよび抗原を含み、ならびにこのような相同な抗原に由来する免疫学的組成物をも含む。したがって、本発明は、ここに述べられている方法により同定されたペプチドまたはタンパク質に実質的に相同なペプチドまたはタンパク質を含む診断テストまたはワクチンを含む。本発明はここに述べられている方法により同定された抗原に実質的に相同な抗原に特異的な抗体を含み、および本発明は実質的に相同なペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する核酸を含む。
【0054】
本明細書中でタンパク質またはペプチドに関して使用するとき、「実質的に相同」という用語は、比較タンパク質またはペプチドに相当するタンパク質またはペプチドを意味する。例えばアミノ酸配列が変化しただけで機能に影響がない場合、タンパク質またはペプチドは比較と実質的に同一の構造および機能を有する。したがって、本出願において、実質的に相同なペプチドおよびタンパク質は免疫活性であり比較と類似の構造を有する。構造に関して、実質的に相同なものと比較タンパク質またはペプチドとの間の同一性の割合は、少なくとも65%または少なくとも75%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%または少なくとも99%である。
【0055】
同一性の比較のためのタンパク質配列のアライメントは当分野で周知の方法により実施できる。タンパク質配列の比較のための有効な方法はSmith&Waterman, Adv. Appl.Math.2:482(1981)の局所ホモロジーアルゴリズム;Needleman&Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443(1970)のホモロジーアライメントアルゴリズム;Pearson&Lipman, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444(1988)の類似法のサーチ;これらのアルゴリズムのコンピュータ化装置(GAP, BESTFIT, FASTA, およびTFASTA、the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.);および目視検査(通常下記のAusubel et. al.を参照)を含む。
【0056】
配列同一性および配列類似性の割合の決定に適したアルゴリズムの例はAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403−410(1990)に記載のBLASTアルゴリズムである。BLAST分析を実施するソフトウェアはウェブサイトwww.ncbi.nlm.nih.govにあるアメリカ国立バイオテクノロジー情報センターを通して入手可能である。このアルゴリズムは問い合わせ配列で長さWの短い文字列を同定することにより、データベース中の配列の同じ長さの文字列と整列させたとき、ある正値評価の閾値Tと一致しまたは満たす高スコア配列対を先ず同定する。Tは近隣文字列の閾値を指す(Altschul et al., 1990)。これらの最初の近隣文字列のヒットは、それらを含むより長いHSPを見つけるための初期検索の種としての役割を果たす。文字列ヒットはその後累積アライメントスコアが増加し得る限りそれぞれの配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアはヌクレオチド配列は、パラメーターM(一致残基対に関するrewardスコア;常に>0)およびN(不一致残基に関するペナルティスコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列に関して、スコア行列が累積スコアの計算に使用される。累積アライメントスコアが最大達成値からX量まで低下したとき、累積スコアは1つまたは複数の負のスコアの残基アライメントの集積のために0またはそれより低くなったとき、またはどちらかの配列が末端に達したときに、文字列ヒットの両方向への伸長は停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXはアライメントの検出感度および速さを決定する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは文字列長(W)3、期待値(E)10およびBLOSUM62スコア行列をデフォルトとして使用する(Henikoff&Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1989)89:10915を参照)。
【0057】
配列アライメントはまたLASERGENEバイオインフォマティクスコンピュータソフト(DNASTAR、ウィスコンシン州マディソン)のMegalignプログラムを使用して実施できる。配列の多重アライメントはアライメントのClustal法(HigginsおよびSharp(1989)CABIOS. 5:151−153)を使用してデフォルトパラメーター(GAP PENALTY=10,GAP LENGTH PENALTY=10)を用いて実施できる。Clustal法を使用したペアワイズアライメントに関するデフォルトパラメーターは、例えばKTUPLE 1, GAP PENALTY=3, WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5でよい。
【0058】
あるいは、タンパク質またはペプチドは、免疫交差反応性であるとき、これらはまたここで実質的に相同とみなされる。様々な免疫測定フォーマットが特定のタンパク質またはペプチドに特異的に免疫反応するモノクロナール抗体を選択するために使用することができる。例えば、固相ELISA免疫学的検定、ウェスタンブロットまたは免疫組織化学が、タンパク質に特異的に免疫反応するモノクロナール抗体を選択するために日常的に使用されている。特異的免疫反応を決定するための免疫学的検定フォーマットおよび状態の説明に関するHarlow and Lane(1988)Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York “Harlow and Lane”)を参照。通常特異的または選択的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの、少なくとも2倍であり、およびより典型的にはバックグラウンドの10から100倍である。
【0059】
当業者は、配列中の単一のアミノ酸をまたはわずかな比率(例えば約5%より少いまたは例えば約1%より少い)のアミノ酸を変更し、付加しまたは削除する、個々の置換、削除または付加は、この変更がアミノ酸の化学的に類似なアミノ酸による置換をもたらす場合、「保存的な修飾変化」であると認識する。機能的に類似のアミノ酸を規定する保存的置換表は当分野では周知である。次の5つの群はそれぞれお互いに保存的置換であるアミノ酸を含む。脂肪族:グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I);芳香族:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);硫黄含有:メチオニン(M)、システイン(C);塩基性:アルギニン(R)、リシン(K)、ヒスチジン(H);酸性:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)。さらにCreighton(1984)proteins, W.H. Freeman and Companyを参照。記載の核酸ヌクレオチド配列またはポリペプチドアミノ酸配列の保存的な修飾変異は、それぞれの記載の配列において、言外に含まれている。
【0060】
本発明の1つの態様は、本明細書中で同定されたタンパク質またはそれらの実質的部分をコードするアミノ酸配列のすべてまたは実質的部分をコードするヌクレオチド配列に関する。(このようなタンパク質の一例は、H3Lウェスタンリバース株の、H3Lコペンハーゲン株のおよびH3L大痘瘡バングラディシュ株のタンパク質である)。タンパク質の「実質的部分」は、当業者による配列のマニュアル評価か、またはコンピュータ自動配列比較およびBLAST(Basic Local Alignment Search Tool;Altschul, S. F., et al.,(1993) J. Mol. Biol. 215:403−410)などのアルゴリズムを使用した同定のどちらかにより、推定上の同定を可能にする十分なアミノ酸配列を含む。一般に、9個またはそれより多くの隣接したアミノ酸配列が、タンパク質を既知のタンパク質に相同として推定的に同定するために必要である。実質的に相同なタンパク質フラグメントは本明細書中に開示されたタンパク質と比較したフラグメントのアミノ酸配列の同一性割合により同定できる。
【0061】
以下にさらに詳述するように、免疫原性ペプチドは、化学的合成によりまたは組み換えDNA技術により合成的に調製でき、または完全なウィルスもしくは他の感染病原体などの天然の源から単離できる。このペプチドは、多くの場合宿主細胞の天然に存在するタンパク質およびそのフラグメントを実質的に含まない。いくつかの実施形態において、このペプチドは天然のフラグメントとまたは粒子と合成的に複合させられる。
【0062】
所望の活性を有するペプチドは、所望の属性、例えば改良された薬理学的特徴を提供するために、一方で修飾されていないペプチドの抗原的活性を実質的に増加させつつまたは少なくとも維持しつつ、必要ならば修飾することができる。例えば、このペプチドは、種々の変更を、例えば置換(保存的置換であろうと非保存的置換であろうと)を、このような変化がそれらの使用(例えば改良されたMHC結合など)において特定の有利性を提供するであろう場合、与えることができる。アミノ酸置換の範囲はD−アミノ酸の使用を含む。このような修飾は、例えば、それぞれが参照によりここに取り込まれる、Merrifield, Science 232:341−347(1986), BaronyおよびMerrifield, The Peptides, GrossおよびMeienhofer, eds.(N.Y., Academic Press), pp. 1−284(1979);StewartおよびYoung, Solid Phase Peptide Synthesis, (Rockford, I11., Pierce), 2d Ed.(1984)に記載の周知のペプチド合成手順の使用により可能である。
【0063】
治療処置のためのこの医薬組成物は、非経口投与、局所性投与、経口投与または局所投与のためであることを意図している。ある実施形態において、本発明の医薬組成物中にCTLを刺激する少なくとも1つの成分を含むことが望ましい。脂質はウィルス性抗原に対してインビボでCTLを刺激することができる薬剤として同定されている。例えば、パルミチン酸残基はLys残基のアルファおよびイプシロンアミノ基に付加され、次いで、例えば1つまたは複数のGly、Gly−Gly−、Ser、Ser−Serなどの連結残基を介して免疫原性ペプチドに連結され得る。脂質が付加されたペプチドは、次いで、ミセル型に直接注入され、リポソームに組み込まれ、またはアジュバント例えばフロインド不完全アジュバント中に乳化される。1つの実施形態において、特に効果的な免疫原は、Lysのアルファおよびイプシロンアミノ基に付加されたパルミチン酸を含み、このパルミチン酸は連結鎖、例えばSer−Serを介して免疫原性ペプチドのアミノ末端に付加される。
【0064】
本発明のペプチドは多種多様の方法で調製できる。これらペプチドの比較的短いサイズのために、このようなペプチド(個別のエピトープまたはポリエピトープペプチド)のあるものは、従来の技術に従って溶液中にまたは個体支持体上で合成できる。様々な自動合成器が市販されており、周知のプロトコルにしたがって使用できる。例えば、ここに参照により組み込まれるStewart and Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2d. ed., Pierce Chemical Co.(1984)を参照。
【0065】
本発明のペプチドならびにこれらの医薬およびワクチン組成物は、治療的処置および/または感染予防のための哺乳動物、特にヒトへの投与のために有効である。医薬組成物に関して、本発明の免疫原性ペプチドは対象となる感染病原体にすでに感染した個体に多くの場合投与される。感染の潜伏期間または急性期の個体は、免疫原性ペプチドを用いて、他の処置とは別にまたは必要に応じて併用して処置できる。治療用途において組成物は感染病原体の抗原に対する効果的なCTL応答を誘発し、回復または少なくとも症状および/または合併症を部分的に抑止する有効量で患者に投与される。これを達成するのに適切な量を「治療的有効量」または「単位用量」と定義する。この使用に効果的な量は、例えばペプチド組成物、投与方法、処置された疾病の段階および重篤性、患者の体重、健康の一般的状況および医師の処方判断に依存する。ヒトについて一般に、初回免疫(これは治療のためのまたは予防のための投与である。)のための用量範囲は、70kgの患者について約1.0μgから約20,000μgペプチド、通常約50μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、400μg、500μg、1000μg、2000μg、5,000μg、10,000μg、15,000μgまたは20,000μgである。時に、同じまたは用量範囲の追加投薬が、必ずしも同じ実際投与量である必要はないが、数週間から数ヶ月にわたる患者の血液中の特異的CTL活性を測定することによる患者の応答および状態にしたがって、続く。
【0066】
このようなワクチン組成物を用いた処置のための患者の特定およびこのようなワクチン組成物の予防的投与のための集団区分の特定は、当業者の技術の十分に範囲内である。治療のための使用について、投与は、感染の最初の兆候において、または急性感染症の場合診断後直ちに、開始されるべきである。次いで、この後の期間、症状が少なくとも実質的に和らぐまで追加免疫投与を行う。慢性的感染症においては、追加免疫投与の後に負荷投与量が必要であろう。
【0067】
このペプチド組成物は、また、保因者中の例えばウイルス感染細胞を除去する免疫系を刺激して、慢性感染症の治療のために使用できる。多くの場合、免疫を強化するペプチドの調合物中の量をおよび細胞障害性T細胞の応答を効果的に刺激するのに十分な投与形態を提供することが重要である。このように、慢性的感染の処置のためには、免疫投薬に続いて、追加投薬が、確立された間隔で、例えば1から4週間の間隔で、効果的に個体を免疫化するために、おそらく延長された期間、必要であろう。
【0068】
ワクチンが幅広い受容者に効果的であることを確実にするために、少なくとも2種または少なくとも3種または5種またはそれより多くの、感染病原体由来の抗原を含むカクテルの調製がしばしば望ましい。ペプチドのこの主となる抗原活性に加えて、免疫されていない対象がこのペプチドに免疫反応を示すかどうか判定することが時として有益である。ワクチンとして使用される免疫原性ペプチドのカクテルは、免疫化された対象由来の血清に反応し免疫化されていない対象由来の血清に反応しない、少なくとも2種またはすくなくとも3種のタンパク質を含むよう、ある場合選択される。
【0069】
本発明の組成物の送達は、当業者によく知られている、経口法、吸入法、局所投与法および注入法を含むどのような方法によっても可能である。しばしば、この医薬組成物は非経口的に、例えば静脈内に、皮下に、経皮的にまたは筋肉内に、投与される。したがって、本発明は、非経口投与のための許容されるキャリア好ましくは水性のキャリアに溶解または懸濁された免疫原性ペプチドの溶液を含む組成物を提供する。様々な水性キャリアが、例えば水、緩衝用水、0.8%食塩水、0.3%グリシンヒアルロン酸などが、使用できる。これらの組成物は、通常のよく知られている滅菌技術により滅菌でき、または濾過滅菌できる。得られた水性溶液は、使用のために、そのまま容器に入れることができ、または凍結乾燥される。この凍結乾燥調製品は投与に先立って殺菌溶液と組み合わされる。この組成物は、生理学的状態に近づけるための必要に応じて、医薬的に許容される補助物質を、例えばpH調製緩衝剤、等張化剤、湿潤剤などを、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレートなどを、含むことができる。
【0070】
本発明の組成物はリポソームを介して投与してもよい。リポソームはエマルジョン、気泡、ミセル、不溶性単層膜、液晶、リン脂質分散体、ラメラ層などを含む。これらの調製において、送達されるべきペプチドは、リポソームの一部として、単独で組み入れられ、または、例えばリンパ系細胞の間で一般的な受容体(例えばCD45抗原に結合するモノクロナール抗体)との組み合わせでもしくは他の治療用または免疫原性組成物との組み合わせで、組み入れられる。したがって、本発明の所望ペプチドにより満たされたまたは装飾されたリポソームは、このリポソームがその後この選択された治療用/免疫原性ペプチド組成物を送達する場所であるリンパ系様細胞の部位に誘導され得る。本発明で使用するリポソームは一般に中性のおよび負に荷電したリン脂質およびコレステロールなどのステロールを含む標準的な小胞形成脂質より形成される。脂質の選択は、例えばリポソームサイズ、血流中でのリポソームの酸耐性および安定性などを考察して処理される。リポソームの調製は、例えばSzoka, et al, Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467(1980),、米国特許第4235871号、第4501728号、第4837028号および第5019369号に記載のような、様々な方法が利用可能である。SAF−1、PROVAXおよびトマチンなどの、他の型の補助剤または乳化剤もまた使用できる。さらにミョウバンもまた調合されたタンパク質またはペプチド抗原に対する免疫応答への刺激を助けるために使用できる。
【0071】
固体組成物に関して、例えば医薬グレードのマニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、ブドウ糖、蔗糖、炭酸マグネシウムなどを含む通常の非毒性固体キャリアが使用できる。経口投与に関して、医薬的に許容される非毒性組成物は、通常用いられる、すでに記載のキャリアなどの賦形剤のいずれか、ならびに活性成分のすなわち1つまたは複数の本発明のペプチドの、一般に0.01〜95%およびより好ましくは0.1〜75%または0.2〜50%または1%〜20%の濃度を、組み込むことにより形成される。
【0072】
エアロゾール投与に関して、この免疫原性ペプチドは、一般に界面活性剤および噴霧剤とともに微細に分割された形で供給される。通常ペプチドの割合は0.01〜20重量%または1〜10重量%である。界面活性剤はもちろん非毒性でなければならず、一般的に噴霧剤に可溶性である。このような薬剤の代表としては、カプロン酸、オクタン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン酸(olesteric acid)、オレイン酸などの6から22個の炭素原子を含む脂肪酸と脂肪族多価アルコールまたはその環状無水物とのエステルまたは部分的エステルである。混合されたグリセリドまたは天然のグリセリドなどの混合エステルを用いることができる。界面活性剤は組成物の重さの0.1%〜20%を構成することができ、一般に0.25〜5%である。この組成物の残りは通常噴霧剤である。必要であれば、キャリア、例えば鼻腔内送達のためのレシチンもともに含むことができる。
【0073】
本発明のペプチドは、ワクチニアまたは鶏痘などの、弱毒化されたウィルス宿主により発現させることもできる。このアプローチは、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現のためのベクターとしての、ワクチニアウィルスの使用を含む。ワクチニアベクターおよび免疫化プロトコルに有益な方法が、例えば米国特許第4722848号に記載されている。他のベクターはBCG(カルメットゲラン菌/Bacille Calmette Guerin)である。BCGベクターは、ここに参照により組み込まれる、例えばStover, et al.(Nature 351:456−460(1991))に記載されている。本発明のペプチドの治療のための投与または免疫化に有用な、他の広範なベクターが、例えばサルモネラ・ティフィ(Salmonella typhi)ベクターなどが、ここの説明より当業者に明らかである。
【0074】
治療のためのまたは免疫化のための目的で、本発明のペプチドは、本発明のペプチドの1つまたは複数をコードする核酸の形で投与できる。この核酸は、本発明のペプチドを、場合によって1つまたは複数の追加の分子をコードできる。多くの方法が患者に核酸を送達するために好都合に使用されている。例えば、核酸は「裸のDNA」として直接送達できる。この研究はそれぞれがここに参照により組み込まれるWolff, et al., Science 247:1465−1468(1990)ならびに米国特許第5580859号および第5589466号とに記載されている。核酸はまた、例えば米国特許第5204253号に記載されているように弾道送達を使用して投与される。DNAの単独のみを含む粒子が投与できる。あるいはDNAは、粒子に、例えば金の粒子に、付着され得る。ペプチドの送達と同様に、DNAワクチンが幅広い受容者に効果的であることを確実にするために、少なくとも2種または少なくとも3種または5種またはそれより多くの、感染種由来の抗原性ペプチドをコードする核酸を含むカクテルの調製がしばしば望ましい。
【0075】
核酸はまた送達でき、陽イオン脂質などの陽イオン化合物に複合化されて送達できる。脂質介在遺伝子送達方法は、例えばそれぞれ参照によりここに取り込まれるWO96/18372;WO93/24640;Mannino&Gould−Fogerite, BioTechniques 6(7):682−691(1988);Rose U.S. Pat No. 5,279,833;WO91/06309;およびFeigner, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413−7414(1987)に記載されている。
【0076】
精製されたプラスミドDNAはさまざまな調合物を使用して注射用に調製できる。これらのうち最も簡素なものは、凍結乾燥DNAの殺菌リン酸緩衝食塩水(PBS)中での再構成である。様々な方法が記載されてきており、また新しい技術が利用できるようになろう。前記のように、核酸は陽イオン性脂質と好都合に調合される。加えて、糖脂質、融合性リポソーム、ペプチドおよび防御的、相互作用的、非凝縮的(PINC)とまとめて指す化合物が、また精製プラスミドDNAと複合され得て、安定性、筋肉内分散または特定の臓器または細胞型への輸送などの評価項目に影響を与え得よう。
【0077】
この免疫学的組成物は、適切な賦形剤と共に、本発明の特定された抗原の1つまたは複数の有効量を含む。注射用のワクチンは、安定性を与えるために、通常賦形剤および追加の成分を含む。この組成物の性質は、例えば静脈内、筋肉内、皮下もしくは腹腔内であり得るまたは経粘膜的、経皮的または経口的であり得る投与の経路に依存している。ワクチンのための組成物の設計は十分確立されており、例えばそれぞれがここに参照により取り込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、最新版、Mack Publishing Co., Easton, PA, and in PlotkinおよびOrensteinの書籍、表題 Vaccines, 4th Ed., Saunders, Philadelphia, PA(2004)に記載されている。
【0078】
個別のタンパク質による免疫化は、不活性ウィルス粒子による場合と対照的に、強い免疫応答を誘発するためのアジュバントを必要とし得る。鉱物油で十分であり得る一方、免疫応答の誘発をより優れたものにするために、プルロニックポリオールと呼ばれる線状両親媒性ポリマーにより安定化されたスクワランエマルジョンの使用が報告されている。ここに参照により取り込まれるHunter, et al., Vaccine, 20 Suppl. 3, S7−12(2002)を参照。さらにリポソームの調合物がタンパク質に対する免疫学的応答を増加させるために有利に使用できる。それぞれのすべてがここに参照により取り込まれるLidgate, et al., Pharm. Research, 5, pg. 759−764(1988);Hjorth, et al., Vaccine 15,541−46(1997)を参照。ワクチンの投与のための一般的方法およびプロトコルはまたPlotkinおよびOrenstein, Vaccines, 4th edに記載されている。
【0079】
本発明により提供された抗原は、また、免疫を誘導する投与のためだけでなく、診断目的のためにも有益である。前記の方法で特定された、1種もしくはそれ以上または2種もしくはそれ以上または好ましくは3種もしくはそれ以上の特異的抗原に対する特異的反応が感染病原体に対する抗体の検出または定量化に使用でき、感染した対象中の病原体および病原体の特定の株の迅速な同定が可能になる。感染病原体の特定の株を非常に正確に識別するために、抗原のアレイを使用できる。これにより、症状が現れる前であってさえも曝露された患者における感染病原体の検出が可能になる。これにより、ある対象が感染病原体に対する免疫を有しているかどうかを決定することが可能になり、必要のない免疫化を避けることができる。これにより、また、さらに抗生物質耐性菌感染または抗ウィルス剤耐性ウィルス感染の同定を可能にし、かくして例えば医師は効果のない薬剤の投与を避けることができ、適した薬剤または治療をすばやく選択することができる。さらに、これにより、使用者が特定の疾病状況を特定することが可能になる。慢性結核患者の血清プロフィールは、新規のまたは活動性感染を有する患者のものとは異なり、したがって疾病状況が本発明により提供された抗原を使用してより精密に診断的に特徴付けられる。
【0080】
本発明は、また、本発明のタンパク質に対する抗体およびこのような抗体のアレイも網羅している。抗体はいずれかの適した方法により、例えばウサギ、マウスまたは家畜犬などの実験動物中に作製できる。本発明のタンパク質を含む抗体は、不完全Freundアジュバント、ミョウバンアジュバントとまたはアジュバントなし(PBSのみ)で混合され得、1回または複数回実験動物に注射される。どのような形態の抗原も、所与の抗原に関して特異的な抗体を産生するのに十分な抗体の生成に使用できる。この誘発抗原は単一エピトープ、多エピトープまたは単独でのもしくは当分野で周知の免疫原性強化薬剤と組み合わせての全タンパク質であってよい。この誘発抗原は、単離された完全長タンパク質、細胞表面タンパク質(例えば、抗原の少なくとも一部を用いて形質移入された細胞を用いて免疫化する)または可溶性タンパク質(例えば、タンパク質の細胞外ドメイン部分のみを用いて免疫化する)であり得る。
【0081】
ここで使用されるように、「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリンおよびこの抗体の免疫学的に反応性のフラグメント[例えばFab、Fab’、F(ab’)、フラグメント、組み換え的に作製された1本鎖可変領域(例えばsFv型)およびエピトープを特異的に認識できるいずれかの他のフラグメント]の双方を指す。
【0082】
ある例において、モノクロナール抗体が好ましい。モノクロナール抗体の産生方法は当分野において知られていて、ここに参照により組み込まれるJaneway, et al., Immunobiology, 5th ed., Garland Publishing, New York, NY(2001)に総合的に記載されている。アレイの作製のための抗体を固定化する方法は、ニトロセルロースなどの保持表面への適用など、当分野において知られている。
【0083】
抗体は、抗原性タンパク質の正常型または表現型変異体への結合について選別される。ここに参照により組み込まれるAntibody Engineering:A Practical Approach(Oxford University Press, 1996)を参照。これらのモノクロナール抗体は、通常少なくとも約1μMの、より通常少なくとも300nMの、典型的に少なくとも約30nMの、多くの場合少なくとも10nMのしばしば少なくとも約3nMのまたはよりよいKにより結合し、通常ELISAにより測定される。モノクローナル抗体の定義にはキメラ型(すなわち異なる種からの重鎖および軽鎖部分を含む)を含み、またはモノクローナル抗体は標準的なヒト化技術もしくは対象への適合技術によってヒト化されたまたはさもなくば特定の対象に適合されたものである。
【0084】
ここに提供される抗体は、受動的免疫を与えるために有益であるのに加えて、診断的用途にも有益である。これら抗体は、当分野でよく知られている方法を使用して調製され少なくとも部分的に精製された、単離された抗体を含む。これらの抗体は抗原が得られた感染病原体の検出または定量に使用できる。抗体は新しい株に対して非常に迅速に生産できるため、例えば対象中のまたは可能性ある汚染物質中の生物兵器感染病原体の検出に使用できる。これら抗体は、また、治療または疫学目的のための感染病原体の株間の識別のために、または特定の薬剤に感受性または非感受性である株などの特定の同定のために使用できる。これら抗体のアレイは感染病原体の特定の株を同定するために有益である。これら抗体はまた抗原精製のための有効な試薬である。
【0085】
以下の実施例は例示のために提供するものであり、発明を限定するものではない。これらの実施例において、使用したワクチニア株はWR株であった。この株のゲノムのオープンリーディングフレームの配列はGenBankに番号が続くVACWR名称をもって寄託された。オープンリーディングフレームの遺伝子座の一覧はこれらの実施例に続く表8に示した。コペンハーゲン株に存在するWR株について表8に一覧表示したオープンリーディングフレームのオルソログは、GenBankにおけるそれらの配列によっても特徴づけられ、これらは表8の2番目のカラム示したGenBankにおける名称を有している。
【0086】
WR株の遺伝子座の1つVACWR148は、コペンハーゲン株中に一致するオルソログを有さないことが理解される。この遺伝子座はバリオラ・マジョール(Variola major)中の名称A29Lを有する抗原に一部一致し、先ずそのように同定された。より詳しく見てみると、WR148は強い主要抗原応答を示すが、関連する種において単一遺伝子に位置しないい。むしろWR146、WR147、WR148およびWR149の遺伝子がA型含有タンパク質群またはATI遺伝子座タンパク質に一致する。ATI遺伝子座タンパク質は牛痘中のA26LおよびA27Lならびに痘瘡中のA26L、A27L、A28L、A29LおよびA30Lに一致する。
【0087】
実施例および特許請求の範囲において、コペンハーゲンオルソログに相当する名称を他の遺伝子および遺伝子産物ならびにVACWR148抗原についてのATI遺伝子座またはATI遺伝子座タンパク質に関して使用する。実施例中で使用したWR株との対応は表8に示されている。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
ベクターおよびインサートの調製
N末端ヒスチジンタグおよびC末端HAタグをコードする線状T7ベクターを広範な制限分解により、その後のPCRにより作製した。この処理は、相補的インサートを用いずに化学的形質転換受容性E.コリ(E.coli)を形質転換したとき、残留環状ベクターおよびバックグラウンドコロニーをほぼ0にまで減少させた。
【0089】
線状組み換えベクターpXT7を作製するために使用したプラスミドを図1に表す。このベクターはT7プロモーターを含み、次にATG開始コドン、10×ヒスチジン配列、クローン化されるオープンリーディングフレームの第1のコドンの前にスペーサー配列、BamH1部位およびT7ターミネーターが続く。不完全に分解されたベクターはインサートを欠くバックグラウンドコロニーを作り出すので、残余の環状ベクターを除去するためにベクターをBamH1部位で2回分解した。この線状ベクターをPCRで増幅して線状組み換えベクターのインベントリーを作製した。線状ベクターの各バッチを用いて形質転換受容性E.コリで形質転換し、それがバックグラウンドコロニーを作らないことを確認した。
【0090】
さらに詳細には、プラスミドpXT7(10μg;3.2kb、KanR)を、BamH1を用いて線状化した(0.1μg/μl DNA、0.1mg/ml BSA、0.2U/μl BamH1、37℃、4時間;追加のBamH1を0.4U/μlまで加えた。37℃、一晩)。分解物を精製し(Qiagen PCR精製キット)、蛍光定量法により定量化し、アガロースゲル電気泳動(1μg)により検証した。50μlPCR(それぞれ0.5μMのプライマー:5’CTACCCATACGATGTTCCGGATTAC,5’CTCGAGCATATGCTTGTCGTCGTCG;0.02U/μl Taq DNAポリメラーゼ[Fidsher Scientific、バッファーA];0.1mg/mlゼラチン[Porcine, Bloom 300;Sigma、G−1890];それぞれ0.2mMのdNTP;初期変性:95℃、5分;30周期:95℃、0.5分/50℃、0.5分/72℃、3.5分;最終伸長:72℃、10分)において、この物質の1ナノグラムを線状受容体ベクターを作製するために使用した。PCR産物はアガロースゲル電気泳動(3μl)により可視化し、精製し(Qiagen、PCR精製キット)、ピコグリーン(Molecular Probes)を使用し、製造会社の取り扱い説明書に従って、蛍光定量法により定量した。線状受容体ベクターの各バッチはバックグラウンドKanR形質転換細胞を調べた(40ng当たりKanR組み換え体は存在しない。)。
【0091】
ワクチニアウィルスおよびF.ツラレンシス由来のORFを、線状T7ベクターの末端に相補的な33ヌクレオチドの伸長を含む遺伝子特異的プライマーを使用して増幅した。
【0092】
1から10ナノグラムのゲノムDNAを50μl−PCRにおいて鋳型として使用した:プライマー、それぞれ0.5μM(5’CATATCGACGACGACGACAAGCATATGCTCGAG[5’−末端の20−mer ORFに特異的];5’ATCTTAAGCGTAATCCGGAACATCGTATGGGTA[3’末端の20−mer ORFに特異的]);Taq DNA ポリメラーゼ0.02U/μl[Fisher Scientific、バッファーA];ゼラチン0.1mg/ml[Porcine, Bloom 300;Sigma, G−1890];dNTP それぞれ0.2mM;初期変性95℃,5min;30周期:20秒 95℃、0.5分50℃、72℃で1kb当り1分、ORFサイズに基づき平均1から3分;最終伸長:72℃10分)。産生がより難しいPCR産物は、50℃ではなく45および40℃で0.5分アニーリングすることにより再増幅した。PCR産物を精製し(Qiagen、PCR精製キット)、ピコグリーン(Molecular Probes、Eugene OR)を使用して蛍光定量法により定量し、アガロースゲル電気泳動によりサイズおよび純度を検証するために可視化した。
【0093】
各オープンリーディングフレームは遺伝子特異的プライマーを使用したゲノム鋳型から増幅した。この5’オリゴヌクレオチドは53ヌクレオチドを含んだ。これらの33ヌクレオチドは5’ユニバーサル末端配列を含み、他の20ヌクレオチドは遺伝子特有配列から成っている。第1の開始コドンATGは線状ベクター上のポリヒスチジンタグの上流であり、それぞれのオープンリーディングフレームもまたATGで始まる。3’カスタムオリゴヌクレオチドもまた53ヌクレオチドを含み、これらの33は3’ユニバーサル末端配列からなり、他の20のヌクレオチドは目的の遺伝子に特有である。終止コドン配列TTAを、発現遺伝子の翻訳停止を達成するために、遺伝子配列の末端に加えた。
【0094】
プライマーを図1に表し、ワクチニアおよびF.ツラレンシスから増幅され浄化されたPCR産物のセットを表すゲルを図2に表す。1000bpより短い遺伝子に関しては予想PCR産物を得る成功率は99%より大である。これらの短鎖遺伝子に関して、失敗は新しいプライマーを整えることで回復できた。1000から2000bpの32の遺伝子のうち28(81%)は方法の項で説明する手順を使用して増幅できた。2000bpより長い8遺伝子のうち3のみがこれらの方法により増幅できた。これらのより長い遺伝子は重複フラグメントとして増幅でき、またはより長い産物の増幅に有利に働く異なるPCR条件が適用できる。
【0095】
(実施例1A):213遺伝子に関するプライマーの調製を必要とするワクチニアウィルスにこれらの方法を適用し、211PCR産物を単離した(>99%)。これらの211すべてをクローン化し、および産物のうち181を配列決定のために提供し;93%(181のうち169)が予測配列を提供した。
【0096】
(実施例1B):同様に、これらの方法を720遺伝子に関するプライマーの調製を必要とするP.ファルシパルムに適用した。これらより462のPCR産物(64%)を得、266クローンを作製した(58%)。これらのセット(63)を配列決定のために提供し、97%が予測配列を与えた。
【0097】
(実施例1C):上記の方法をマイコバクテリウム・ツベルクロシスに適用し108遺伝子に関するプライマーを調製した。これらより、87PCR産物が得られ(80%)、80クローンを作製し(92%)、これらのそれぞれは一方の末端に抗Hisタグおよび他方の末端に抗HAタグを有した。検査された79のうち70(88%)が予測配列を含むことを配列決定により確認した。生産されたタンパク質の大部分においてHisおよびHAタグの双方が結合に利用可能であるが、多くの事例で一方のタグのみが結合した。一般的に一方のみが利用可能である場合、結合に利用可能なままであるのはHisタグであり、HAエピトープタグは利用不可能であった。
【0098】
この方法は、マイコバクテリウム・ツベルクロシスH37Rvからの約4000の遺伝子ゲノムの内の312の発現に拡大された
【0099】
(実施例1D):1933遺伝子のプライマーを調製したF.ツラレンシスに上記の方法を適用した。これらから1842PCR産物を得(95%)、1720のクローンを作製した(93%)。これらの内の684の配列決定が643(94%)が予測配列を含むことを示した。
【0100】
(実施例2)
インビボの組み換えおよびコロニーの選択
PCRで増幅された実施例1のORFおよび線状T7ベクターの混合物を混合し、化学的形質転換受容性E.コリ内へ導入し、インサートを含むプラスミドを有する形質転換コロニーが生じた。この高効率の形質転換クローニング法はORFのフレーム方向性挿入をもたらした。
【0101】
形質転換受容性細胞を、我々の実験室において18℃でSOB培地(トリプトン2%、酵母エキス0.5%、NaCl10mM、KCl2.5mM、およびMgSO20mM)の500ml中にてDH5α細胞を光学濃度0.5〜0.7O.D.まで増殖させて調製した。細胞を浄化し10mlのあらかじめ冷やした氷上PCKMSバッファー(PIPES10mM、CaCl15mM、KCl50mM、MnCl55mMおよび蔗糖5%、pH6.7)に懸濁し、常に回転させながら735μlDMSOを滴下しつつ加えた。100μlアリコートのコンピテント細胞をドライアイスエタノール上で凍結させ、−80℃で保存した。
【0102】
それぞれの形質転換は、10μlのコンピテントDH5α(上記のように我々の実験室で、スーパーコイル状プラスミドDNA 10cfu/μgという効率で調整した。)および10μlDNA混合物(40ngのPCR作製線状ベクター、10ngのPCR作製ORFフラグメント;ベクター:1kbORFフラグメントのモル比1:1)からなった。この混合物を氷上で45分間インキュベートした。ヒートショック(42℃、1分)を与え、氷上で1分間冷やし、SOC培地(2%トリプトン、0.55%酵母エキス、10mMNaCl、10mMKCl、10mMMgCl、10mMMgSO、20mMブドウ糖)の250μlと混合し、37℃で1時間インキュベートし、50μgカナマイシン/ml(LB Kan 50)を加えた3mlのLB(Luria Bertani培地)に希釈し、振とうしながら一晩インキュベートした。LB Kan 50寒天上に画線接種し、一晩培養した物より単一コロニーを得た。それぞれの形質転換より2〜3コロニーを更なる分析のために選択した。Qiagenミニプレップより得たプラスミドDNAを、インサートを含むクローンの選択のためにゲル電気泳動により可視化した。
【0103】
DH5α形質転換受容性細胞の形質転換を、モル比1:1のPCRフラグメントおよび線状ベクターの混合物を用い、形質転換に用いられた総DNA50ngを用いて行った。形質転換受容性細胞を形質転換し、一晩成長させ、細菌の成長により生じる濁度を観察し、プレート培養し、コロニーを選択した。これらの条件下でクローニング効率は90%以上であったが、細胞を形質転換を行った日にプレートに塗布した場合、観察されたクローニング成功率はより低くなった。形質転換に使用する総DNAが25ngおよび10ngに減少されたとき、形質転換の成功率は次第に低下した(示さず。)。
【0104】
図3は、図2に示したPCRフラグメントを使用した一晩培養からの「クラックングゲル」(総核酸を表すフェノール−クロロフォルムで溶解された細菌)を示す。これらのゲルの最上バンドはゲノムDNAであり、底部の2本のバンドは重および軽リボソームRNAであり、中間バンドは線状ベクターおよびPCRフラグメントを用いた組み換えにより形成されたプラスミドである。空のベクターが参考のためにこのゲルに含まれている。この図に示された87のプラスミドの内3つのみが適切なサイズのインサートを欠いている。
【0105】
図3に示した一晩培養物を寒天プレートに画線接種し、2つのコロニーを選択し、成長させミニプレップ法によりプラスミドを得た。一晩培養由来の単一コロニーのミニプレッププラスミドを図4に示す。精製されたプラスミドを組み換え産物の忠実度を検証するために配列決定した。インサートの大部分はゲノム配列データベースによれば正確な配列であった。74%は変異なし、20%は単一の点変異がありおよび6%は複数点に変異があった。41%の変異はAがGになっていた。残りの変異は他の可能な11の点変異型の中にランダムに分布していた。
【0106】
(実施例3)
インビトロ転写およびタンパク質の翻訳検出
図4に示すプラスミド上にコードされたタンパク質は、T7RNAポリメラーゼが補充されたE.コリベースの無細胞インビトロ転写/翻訳系で発現させた。それぞれのミニプレップのプラスミド鋳型0.5μgをQiagenのミニプレップキットを使用し、RNAse活性を枯渇させるためのタンパク質変性剤を含む「任意の」段階を含ませて、調製した。この段階が含まれなかった場合、インビトロ転写/翻訳反応での発現レベルは低くなり不整合なものになる。25μlの反応量を用いるインビトロ転写/翻訳反応(Roche RTS 100 E.コリ HY キット)を、0.2mlPCR 12−ウェルストリップチューブ中に設定し、製造会社の取り扱い説明書に従って30℃で5時間インキュベートした。マウス抗ヒスチジン抗体およびアルカリフォスファターゼと結合したヤギ抗マウス抗体を使用してウェスタンブロット法を実施した。
【0107】
図5に示した結果に関して、50の異なるF.ツラレンシスおよびワクチニアのプラスミドをインビトロの転写/翻訳反応において4時間インキュベートし、産物をSDSポリアクリルアミドゲルにかけ、ゲルをブロットし、抗ポリヒスチジン抗体によりプローブした。図5のウェスタンブロットは予測分子量のヒスチジンタグ産物の発現を示し、50のプラスミドのうち3つのみが陰性であった。
【0108】
無細胞反応からの非変性タンパク質もまたドットブロット法で検出可能であった。(図6)それぞれのインビトロの転写/翻訳反応物の1マイクロリットルをニトロセルロース上に直接スポットし、SDS変性はせず、抗ヒスチジン抗体または抗HA抗体のどちらかを用いてドットブロットをプローブした。50のワクチニアウィルスクローンからのおよび45のF.ツラレンシスクローンからの反応産物を示す(図6)。抗ヒスチジン抗体を用いてドットブロットをプローブした場合、ワクチニア反応物の1つおよびF.ツラレンス反応物の3つがバックグラウンドを超えなかった。抗HA抗体を用いてドットブロットをプローブした場合、陰性反応の数は増加した。たぶん、電気泳動分析およびウェスタンブロット分析が翻訳中での早期終了の結果十分な未成熟タンパク質産物を示さなかったので、このエピトープはかなりの頻度で非変性タンパク質の3次元的構造の中に隠されてしまうことを示唆している。(ドットブロットの調製の更なる詳細は実施例4に提示する。)
【0109】
(実施例4)
マイクロアレイおよび血清学的スクリーニング
Cangene(Winnipeg、Canada)より市販されているワクチニア免疫グロブリン(VIG)を使用した。VIGは多数のドナーよりプールされた過免疫血清の免疫グロブリン分画である。これは全身性ウィルス血症およびワクチニア予防接種に対する他の副作用に陥っている人々のための緊急治療に使用される。
【0110】
免疫ドットブロットのために、全RTS反応物の0.3μl量を手作業でニトロセルロース膜上にスポットし、風乾させ、TBS−Tween中の5%脱脂粉乳中でブロッキングした。ブロットは10%E.コリ溶解物を含有するまたは含有しないブロッキングバッファー中の1/1000に希釈したVIGを用いてプローブした。3つの異なるバッチのVIGを使用した、すなわち、ロット♯1730204(56mg/ml)、ロット♯1730208(53mg/ml)およびロット♯1730302(56mg/ml)。結合したヒト抗体をアルカリフォスファターゼと結合させたヤギ抗ヒトIgA+IgG+IgM(H+L)2次抗体(Jackson Immuno Research)中でインキュベートすることにより検出し、ニトロ−BT発色液を用いて可視化した。通常どおり、ドットブロットはまた、モノクロナール抗ポリヒスチジン(クローン His−1;Sigma H−1029)およびモノクロナールラット抗血球凝集素(clone 3F10;Roche 1 867 423)の両方を用いて染色され、続いて、組み換えタンパク質の存在を確認するために、それぞれAPが結合したヤギ抗マウスIgG(H+L)(BioRad)またはAPが結合したヤギ抗ラットIgG(H+L)2次抗体(Jackson Immuno Research)を用いて染色した。
【0111】
インビトロの転写/翻訳反応は25μl規模で設定され、鋳型として非組み換え発現プラスミドを使用した対照反応もまた大腸菌抗原の存在を使用したものと対照するために設定された。5時間の合成反応の後直ちに、タンパク質はニトロセルロース基板上にそれ以上の精製を行わずに、スポットまたはアレイのどちらかを行い、または転写12時間前までは4℃に維持した。RTS反応物のスポットティングは非変性条件下であり、これ以上の精製は行わなかった(図7)。どのような抗原特異的応答も隠す高いバックグランド染色が原因で遮断された場合を除いて、E.コリに対する抗体をヒト血清およびVIG中に高い力価で発見した。この遮断はニトロセルロース膜に固定されたE.コリタンパク質を使用した抗E.コリ反応性の除去による、あるいは血清またはVIG中に10%E.コリ溶解物の包含による抗体の遮断のどちらかにより克服できる。免疫ブロット法に対する吸着の効果に、実際、我々は、溶解物の追加による遮断と比較して、差を認めなかった(データは示さず)。従って後者の技術は、ハイスループットスクリーニングにおける適合性からおよびヒト血清の経済的利用(マイクロアレイあたり通常2〜3μl)を可能にすることから、E.コリバックグラウンド染色の遮断の日常的な方法として採用した。溶解物が含まれている時、対照反応中のスポットの強度は劇的に減少し、抗原性ワクチニアタンパク質に対するノイズ比へのシグナルが強くなる。VIGのA11Lに対する反応性が構造依存性であることも留意する必要がある。この特有な抗原はすでにウェスタンブロットで認識されているが、ドットブロットの非変性フォーマットでは認識されていない。
【0112】
(実施例5)
マイクロアレイ
図8は図7に表した免疫ドットブロットのために使用した同じRTS反応物を使用するパイロットマイクロアレイを示す。マイクロアレイのために、まず15μl量を384ウェルプレートに移し、1600xgで遠心分離してすべての沈殿をペレット化し、上清はこれ以上精製は行わずにニトロセルロース被覆FAST(商標)スライドグラス(Schleicher&Schuell Bioscience)上にOmni Grid 100マイクロアレイプリンター(Gene Machines)を使用して転写した。すべての染色のために、スライドはまずタンパク質アレイブロッキングバッファー(Schleicher&Schuell)中で1時間遮断し、ドットブロットのために同一の1次および2次抗体で染色し(JacksonによるCy3結合2次抗体)、共焦点レーザースキャナーでスキャンした。蛍光強度はQuantArrayソフトウェア(GSI Lumonics, Inc)を使用して定量した。ドットブロットおよびアレイで全のRTS反応物を使用するとき、VIGはどのような抗原特異的応答をも隠す抗E.コリ抗体の高い力価を有する。これはE.コリ溶解物の免疫ブロットに対するVIGの吸着により、またはVIGへの大腸菌溶解物の添加により克服された。前者の方法において、大腸菌はSDS PAGEサンプルバッファーに可溶化され、溶解物はOptitranニトロセルロース膜(Schleicher&Schuell)に移す前に調製ゲル上で分離された。ブロットは次に小片(5x5mm)に切り分け、5%脱脂粉乳中で1時間遮断した。この小片は次いで洗浄し、あらかじめブロッキングバッファーで1/1000に希釈したVIG内に置き、一定の撹拌を行いながら1時間インキュベートした。E.コリ溶解物は1リットルのE.コリ(DH5)の静止期培養物から作製し、25mlのTBS‐Tweenに再懸濁し、直径2cmのプローブにより超音波で分解する。1mlのアリコートを−80℃で保存した。
【0113】
インビトロの転写/翻訳反応物を精製を行わずにニトロセルロ−ス被覆スライドグラス上に転写し、10%E.コリ溶解物を含有するおよび含有しないVIGを用いてプローブした。対照スポットはベクターのような非組み換え型発現プラスミドを用いたRTS反応で構成する。それより上の染色は陽性とする自由裁量による「カットオフ値」は、対照スポットの蛍光強度の平均および標準偏差を計算することにより得た。VIG中に溶解物が存在するときに見られるように、免疫ドットブロットで検出されたものと同一のタンパク質がマイクロアレイによっても検出される。蛍光に結合された2次抗体は免疫ドットブロットに見られるより広い範囲のシグナル強度を提供する。さらに、アレイ中に検出されたタンパク質がドットブロット中の検出閾値より低いいくつかの例を我々は観察したので、マイクロアレイが免疫ドットブロットよりも強い感受性を与えることが明らかになった(示さず。)。
【0114】
図9はPCR Express(商標)のプラットフォーム中で発現した、96のワクチニアおよびF.ツラレンシスタンパク質、および1つの対照反応のより大きなマイクロアレイを示す。このアレイは7種のタンパク質がVIGにより強く認識され、そのうち6種はワクチニアタンパク質であることを示す。これらのうち4種(H3L、D8L、A56RおよびF13L)は、無傷のウィルス粒子表面上の抗体にアクセス可能なウィルスエンベロープ抗原である。したがって、この系の中でのタンパク質の検出は高度の抗原特異性および生物学的関連性を示す。非変性フォーマットは、これらタンパク質がそれらの構造依存性エピトープを維持しているであろうという追加の有利性を有する。
【0115】
(実施例6)
形質転換混合物からのプラスミドの調製
実施例2から5における更なる評価のために単一コロニーを選択するよりも、実施例2に記載したように得られた形質転換混合物を、所望のインサートを含むプラスミドの源として使用した。上記のように、それぞれの形質転換は:10μlの形質転換受容性DH5αおよび10μlのDNA混合物(40ngのPCR作製線状ベクター、10ngのワクチニア由来PCR作製ORFフラグメント;ベクター:1kbORFフラグメントのモル比1:1)で構成した。この混合物を氷上で45分インキュベートし、ヒートショック(42℃、1分)を与え、氷上で1分冷やし、250μlのSOC培地(トリプトン2%、酵母エキス0.55%、NaCl10mM、KCl10mM、MgCl10mM、MgSO10mM、20mMブドウ糖)と混合し、37℃で1時間インキュベートし、LB(Luria Bertani Medium)3mlに、1ml当り50μgのカナマイシン(LB Kan 50)を補って希釈し、振とうしながら一晩インキュベートした。プラスミドをこの培養物からコロニーの選択はせずに単離し、精製した。得られたプラスミド鋳型を上述の実施例で述べたように実質的に翻訳し、以下のように免疫ドットブロットに移した。
【0116】
インビトロの転写/翻訳に使用したプラスミド鋳型はQiagenミニプレップキットを使用し、RNase活性を枯渇させるタンパク質の変性を含む任意の段階を含めて調製した。この段階を含めない場合、インビトロの転写/翻訳反応の発現レベルは低く不整合なものになった。図10はワクチニア由来PCRフラグメントを使用した一晩培養物からの「クラックゲル」(総核酸を表すフェノール−クロロフォルムで溶解された細菌)を示す。これらのゲル上の最上バンド(右方向の)はゲノムDNAであり、底部の2本のバンドは23Sおよび16SリボソームRNAであり、中央のバンドは線状ベクターおよびPCRフラグメントを用いた組み換えにより形成したプラスミドである。このゲル上には参考のために空のベクターが含まれている。この図に示された42のプラスミドのうち1つのみが(E9L)適切なサイズのインサートを欠いている。総合的な系の効率を測定するためにフランシセラ・ツラレンシス由来遺伝子の検査セットを増幅させ、クローン化し、発現させた。試験した1933の遺伝子のうち96%が順調に増幅され、それらの93%が順調にクローン化された。
【0117】
25μlの反応量でのインビトロの転写/翻訳反応物(RTS100大腸菌HYキット、Roche)を0.2mlPCR12ウェルストリップチューブ中に設定し、製造業者の取扱説明書に従って、30℃で5時間インキュベートした。8種のワクチニアおよび40種のF.ツラレンシスタンパク質のセットを表すT7プラスミド上にコードされたタンパク質が、T7RNAポリメラーゼを補ったE.コリベースの無細胞インビトロ転写/翻訳系において発現された。25μlのインビトロ転写/翻訳反応物を37℃4時間インキュベートし、未精製の粗製反応物をSDSポリアクリルアミドゲルで分離し、抗ヒスチジン抗体を用いてプローブした(図11)。ウェスタンブロットは予測分子量のヒスチジンタグを付加した産物の発現を示した。48の反応物のうち3種が弱すぎて陽性と判断できなかった。
【0118】
免疫ドットブロットのために、すべてのRTS反応物の0.3μl量を手作業でニトロセルロース膜上にスポットし、風乾させ、0.05%Tween20含有TBS中の5%脱脂粉乳中でブロッキングした。ブロットは10%E.コリ溶解物を含有するまたは含有しないブロッキングバッファーで1/1000に希釈したCangene Corporation(Winnipeg, Manitoba, Canada)のワクチニア免疫グロブリン(VIG)を用いてプローブした。3つの異なるバッチのVIGを使用した:ロット番号1730204(56mg/ml),すなわち、ロット番号1730208(53mg/ml)およびロット番号1730302(56mg/ml)。結合したヒト抗体は、アルカリフォスファターゼに結合されたヤギ抗ヒトIgA+IgG+IgM(H+L)2次抗体(Jackson Immuno Research)中でインキュベートすることにより検出し、ニトロ‐BT発色液を用いて可視化した。通常のドットブロットはまたモノクロナール抗ポリヒスチジン(クローン His−1;Sigma H−1029)およびモノクロナールラット抗血球凝集素(clone 3F10;Roche 1 867 423)の両方を用いて染色し、続いて、組み換えタンパク質の存在を確認するために、それぞれAPに結合されたヤギ抗‐マウスIgG(H+L)(BioRad)またはAPに結合されたヤギ抗ラットIgG(H+L)2次抗体(Jackson Immuno Research)を用いて染色した。マイクロアレイのために、10μlの0.125%Tween20を15μlのRTS反応物と(最終的な濃度が0.05%Tweenになるように)混合し、15μl量を384ウェルプレートに移した。これらプレートを1600xgで遠心分離し、すべての沈殿とペレット化し、上清はこれ以上精製は行わずにニトロセルロース被覆FAST(商標)スライドグラス(Schleicher&Schuell Bioscience)上にOmni Grid 100マイクロアレイプリンター(Gene Machines)を使用して転写した。すべての染色について、スライドはまずタンパク質アレイブロッキングバッファー(Schleicher&Schuell)中で30分間遮断し、ドットブロットのための同一の1次のおよび2次抗体で染色し(Cy3結合2次抗体、Jackson)、共焦点レーザースキャナーでスキャンした。蛍光強度はQuantArrayソフトウェア(GSI Lumonics, Inc)を使用して定量した。ドットブロットおよびアレイ上の全RTS反応物を使用したとき、VIGはどのような抗原特異的応答をも隠す抗E.コリ抗体の高い力価を有する。これはE.コリ溶解物の免疫ブロットに対するVIGの吸着により、またはVIGへのE.コリ溶解物の添加により克服された。前者の方法において、E.コリはSDS PAGEサンプルバッファーに可溶化され溶解物はOptitranニトロセルロース膜(Schleicher&Schuell)に転写する前に調製ゲル上で分離された。ブロットは次いで小片(5x5mm)に切り分け5%脱脂粉乳中で1時間ブロックされた。小片を次に洗浄しあらかじめブロッキングバッファーで1/1000に希釈したVIG内に置き、一定の撹拌を行いながら1時間インキュベートした。E.コリ溶解物は1リットルのE.コリ(DH5α)の静止期培養物から作製し、25mlのTBS‐Tweenに再懸濁し直径2cmのプローブを用いて超音波で分解した。1ミリリットルのアリコートを−80℃で保存した。内在性抗E.コリ反応性を欠損したマウスの血清はバックグラウンドを低減するための大腸菌溶解物を用いた前処理を必要としない。
【0119】
無細胞反応物からの未変性タンパク質もまた免疫ドットプロット(図12)上で検出でき得た。112の異なるワクチニアタンパク質をコードする128のプラスミドをインビトロで発現させ、未精製反応物のそれぞれ1マイクロリットルをニトロセルロース上に二点ずつスポットした。それぞれの遺伝子のオープンリーディングフレームをN末端10xヒスチジン(HIS)タグおよびC末端血球凝集素タグ(配列YPYDVPDYA)を含むように設計する。プラスミド鋳型を欠損した対照反応(‘c’)もまた設定した。空のベクターを使用した場合、小さい10xヒスチジン陽性フラグメントが作製されるため陽性シグナルが観察される(データは示さず)。膜を抗HISタグ抗体(図12A)、抗HAタグ抗体(図12B)、ワクチニア免疫グロブリン(VIG)(図12C)、またはVIG+10%E.コリ溶解物(図12C)のいずれかを用いてプローブした。インビトロ反応において、抗HISおよびHAタグ抗体は他のタンパク質との交差反応性は示さず、したがって大量の反応物の発現を観察するためにそれらを日常的に使用した。発現した異なるタンパク質112のうち3種のみがHIS(パネル12A)およびHA(パネル12B)タグのどちらに関しても陰性であった。全体的な発現効率の評価のために、クローン化されたF.ツラレンシス菌遺伝子390を発現させ、反応物をニトロセルロース上にスポットし、抗ヒスチジンまたは抗HA抗体のどちらかを用いてプローブした。反応物の82%がHAに陽性であり、84%が10xヒスチジンに陽性であり、73%がヒスチジンおよびHAの両方に陽性であり、7%はHAおよびヒスチジンに陰性であった。
【0120】
パネル12CのブロットよりVIGが抗E.コリ抗体の高い力価を有することが明らかであり、ワクチニアタンパク質のどのような反応性も隠してしまう。しかしVIGへE.コリ溶解物を追加すると(パネル12D)このバックグラウンドはワクチニアタンパク質の検出が可能なレベルにまで減少する。このブロット上の陽性タンパク質は、説明文で赤く強調されているA10L、A27L、D8L、D13L、F13L、H3LおよびH5Rである。
【0121】
血清のE.コリ溶解物処理はマイクロアレイにおいてもE.コリバックグラウンド反応性の減少に効果的であった。E.コリ溶解物を含有しまたは含有しないVIGを用いてプローブした、23のワクチニアおよび22のF.ツラレンシスタンパク質から構成された試験的マイクロアレイを図13に示す。図12Cのドットブロットに見られるように抗E.コリ抗体の高い力価の効果はマイクロアレイについても明らかである(図13上端のアレイ)。この対照調製物にも存在する高いバックグラウンドはワクチニアタンパク質に対する特異的反応性を隠してしまう。マイクロアレイのプローブ前に、10%のE.コリ溶解物をVIGへ添加することで大腸菌バックグラウンドを減少させ、特異的反応性が明らかになる(図13下図)。このアレイは、5種のワクチニアタンパク質がVIG(ボックス化)、D13L、D8L、F13L、H3LおよびH5Lにより強く認識されたことを示している。
【0122】
図14は完全なワクチニアウィルスプロテオームの>95%を表すと予測される194のタンパク質からなるアレイの結果を示す。このアレイはヒトワクチニア免疫グロブリン(VIG)ならびにワクチニアウィルスのワクチン接種前後のマウスおよびマカク由来の血清を用いてスクリーニングされた。図14Aは、未処置の非免疫化マウスはアレイ上のすべてのタンパク質に対する反応性を完全に欠落しているが、ワクチニアウィルス免疫化マウスからの血清はアレイ上の抗原のサブセットに反応することを示している。未処置マウスと違い、非免疫化のヒトはアレイ上の抗原のサブセットに反応するが、ワクチニアウィルスによる免疫化の後では反応性抗原のもう1つのサブセットが発達する。データの定量化は図14Bの上のパネルに図式化した。VIGは26の異なるタンパク質を認識し、そのうちの13はワクチン未処置の個体からの血清に見ることができ、したがって、他の環境的抗原に対する抗体による非特異的交差反応を表すと考えられる。残りの13はワクチニア免疫化の間に産生された抗体により特異的に認識される抗原である。
同様のプロフィールはマカクおよびマウス由来の血清にも見られる(図14B)。種特有の応答(例えば、A3LまたはA4Lはマウスのみ)がある一方で、ヒトおよび動物モデルのどちらかに共通に認識されるものも多くあり、10のタンパク質が3種すべてに認識された(表1)。これら特定の抗原がヒトにおける使用に関するワクチンの前臨床検査のための優先候補であろう。全般的に、ウィルスの構造タンパク質に対する応答は、エンベロープタンパク質であるこれらの半数以上による応答に優勢である(表1)。血清反応陽性であるこれらタンパク質は、膜貫通ドメインを含有しおよび含有しない、シグナルペプチドを含有しおよび含有しない、およびPI範囲が4〜10のタンパク質を含んでいた。さらに、これらのタンパク質のいくつかは、動物およびヒトにおいて液性応答を生じる一方、他は有さないことがすでに報告されている。
【0123】
表1の抗原は、すべてウェスタンリザーブ(WR)株由来のタンパク質であるが、しかしこのタンパク質の機能はワクチニアウィルスのコペンハーゲン株においてよりよく特徴付けられているので、コペンハーゲン株のもっとも近いオルソログの名前によりここでは同定された。それにもかかわらず、WR株由来のそれぞれのORFおよびコードされたタンパク質に関する配列はGenBankのデータベースにて利用可能であり、GenBankのデータベースはウェブアドレスwww.ncbi.nlm.nih.gov/gquery/gquery.fcgiでオンラインで利用可能である。表1に述べられた解説はデータベース中の解説と一致する。WR株に関するタンパク質および遺伝子配列はワクチニアWRゲノム中にあり、表1の遺伝子名を使用してGenBankで特定可能である。これらに実質的に類似のタンパク質およびそれらの一致する遺伝子配列はGenBankを通じて利用可能なblastユーティリティを使用して容易に同定できる。
【0124】
【表1】




【0125】
VIGによる非常に強い血清陽性反応を誘発するタンパク質は、A14L、A27L、H5R、D8R、D13L、D8L、H3LおよびF13Lを含む。中程度の免疫反応性を有するタンパク質をA10L、A11R、L1R、B5R、A17L、I15L、F5L、A34L、A36R、A56RおよびA13Lと同定した。VIGに非常に強い血清陽性応答を生じる追加タンパク質もまた同定した。それをVACWR148とし、コペンハーゲン株には近いオルソログがなく、しかし大痘瘡のA29Lというタンパク質に相同である。このタンパク質は今までに抗原性として同定されたことはなく、本明細書中ではATI遺伝子座タンパク質と呼ぶ。
【0126】
例として挙げるのみであり本発明により包含されるタンパク質またはDNA配列の範囲を限定するものではないが、本方法により同定された免疫活性タンパク質のいくつかに最も近いオルソログのいくつかは以下を含む。
【0127】
VACWR101(VACV−COP H3L)追加オルソログ:
VACV−MVA:MVA093L
RPXV−UTR:RPXV−UTR_090
VACV−AMVA:AMVA095
CPXV−GRI:J3L
VACV−TAN:Tan−TH3L
VARV−GAR:J3L
VARV−BSH:I3L
VARV−IND:I3L
CMLV−CMS:98L
【0128】
VACWR118(VACV−COP D13L)追加オルソログ:
VACV−MVA:MVA110L
VACV−TAN:an−TD15L
VACV−AMVA:AMVA112
CPXV−GRI:E13L
RPXV−UTR:RPXV−UTR_107
VARV−BSH:N3L
VARV−IND:N3L
CMLV−CMS:115L
CMLV−M96:CMLV116
【0129】
VACWR113(VACV−COP D8L)追加オルソログ:
RPXV−UTR:RPXV−UTR_102
VACV−MVA:MVA105L
VACV−AMVA:AMVA107
VACV−TAN:Tan−TD8L
VARV−IND:F8L
VARV−BSH:F8L
VARV−GAR:F8L
ECTV−NAV:EV−N−114
ECTV−MOS:EVM097
【0130】
VACWR052(VACV−COP F13L)追加オルソログ:
VACV−TAN:an−TF13L
ECTV−NAV:EV−N−53
ECTV−MOS:EVM036
CPXV−GRI:G13L
RPXV−UTR:RPXV−UTR_041
VACV−AMVA:AMVA045
VACV−MVA:MVA043L
CPXV−BR:V061
VARV−GAR:E13L
【0131】
VACWR103(VACV−COP H5R)追加オルソログ:
RPXV−UTR:RPXV−UTR_092
VACV−TAN:Tan−TH6R
VACV−AMVA:AMVA097
VACV−MVA:MVA095R
CPXV−GRL:J5R
MPXV−ZRE:H5R
VARV−BSH:I5R
CPXV−BR:V114
VARV−GAR;J5R
【0132】
VACWR187(VACV−COP B5R)追加オルソログ:
RPXV−UTR:RPXV−UTR_167
VACV−TAN:Tan−TB5R
VACV−MVA:MVA173R
VACV−AMVA:AMVA173
CPXV−GRI:B4R
MPXV−ZRE:B6R
ECTV−MOS:EVM155
ECTV−NAV:EV−N−182
VARV−GAR:H7R
【0133】
VACWR149+VACWR146(VACV−COP A26L)追加オルソログ:
RPXV−UTR:RPXV−UTR_134
VACV−MVA:MVA137L
VACV−AMVA:AMVA139
CPXV−GRI:A27L
VACV−TAN:an−TA35L
MPXV−ZRE:A28L
CMLV−M96:CMLV145
CMLV−CMS:143L
CPXV−BR:V161
【0134】
VACWR129(VACV−COP A10L)追加オルソログ:
VACV−MVA:MVA121L
VACV−AMVA:AMVA123
RPXV−UTR:RPXV−UTR_118
CPXV−GRI:A11L
VACV−TAN:an−TA11L
CMLV−M96:CMLV127
CMLV−CMS:126L
VARV−GAR:A11L
VARV−BSH:A11L
【0135】
VACWR130(VACV−COP A11R)追加オルソログ:
VACV−AMVA:AMVA124
VACV−MVA:MVA122R
CPXV−BR:V143
CPXV−GRI:A12R
MPXV−ZRE:A12R
RPXV−UTR:RPXV−UTR_119
VACV−TAN:an−TA12R
ECTV−NAV:EV−N−131
ECTV−MOS:EVM114
【0136】
VACWR181(VACV−COP A56R)追加オルソログ:
VACV−AMVA:AMVA167
VACV−MVA:MVA165R
VACV−TAN:an−TA66R
CPXV−GRI:A58R
MPXV−ZRE:B2R
CMLV−CMS:173R
VARV−GAR:K9R
CMLV−M96:CMLV176
VARV−BSH:J7R
【0137】
VACWR091(VACV−COP L4R)追加オルソログ:
VACV−MVA:MVA083R
RPXV−UTR:RPXV−UTR_080
VACV−AMVA:AMVA085
CPXV−BR:V102
CPXV−GRI:N4R
VACV−TAN:Tan−TL4R
VARV−IND:M4R
CMLV−M96:CMLV089
VARV−BSH:M4R
CMLV−CMS:88R
【0138】
VACWR156(VACV−COP A33R)追加オルソログ:
RPXV−UTR:RPXV−UTR_141
CPXV−GRI:A34R
VACV−TAN:R(TA43R)
VACV−MVA:MVA144R
VACV−AMVA:AMVA146
CMLV−M96:CMLV152
CMLV−CMS:150R
CPXV−BR:V168
MPXV−ZRE:A35R
【0139】
これらのオルソログを表すために使用した略語:
VACV−Cop=ワクチニアウィルス・コペンハーゲン株
VACV MVA=ワクチニアウィルス・ウィルス改変アンカラ株
VACV−AMVA=ワクチニアウィルス・アカンビス(Acambis)3000MVA株
VACVWR=ワクチニアウィルス・ウェスタンリザーブ(Western Reserve)株
VACV−TAN=ワクチニアウィルス・天壇(Tian Tan)株
CPXV−GRI=牛痘GRI−90株
RPV−UTR=家兎痘ウィルス・ユトレヒト株
VARV−GAR=大痘瘡ウィルス・ガルシア(Garcia)株
VARV−BSH=大痘瘡ウィルス・バングラデシュ株
VARV−IND=大痘瘡ウィルス・インド株
CMLV−CMS=ラクダ痘ウィルス・CMS株
CMLV−M96=ラクダ痘ウィルス・M96株
ECTV−NAV=欠肢症ウィルス・ナバル(Naval)株(未発表)
ECTV−MOS=欠肢症ウィルス・モスクワ株
CPXV−BR=牛痘ウィルス・ブライトンレッド(Brighton Red)株
MPXV−ZRE=サル痘ウィルス・ザイール‐96‐I‐16株
【0140】
上記に基づき、適切な免疫学的組成物は本明細書中に抗原として同定されたワクチニアタンパク質の群より選択された少なくとも3種のタンパク質を含むであろう。これらのタンパク質の群は、ATI遺伝子タンパク質、A10L、A11R、A13L、A33R、A56R、B5R、D8L、D13L、F13L、H3L、H5R、A26L、A27L、E3L、L4R、H7R、A17L、A3L、A4L、D11L、H6R、K2L、N1L、A41L、A47L、B2R、D10R、E1L、F2L、F9L、G5R、G7L、H7R、I1L、L5RおよびO2Lを含む。本発明に関する第2の免疫学的組成物は、検査された免疫された哺乳動物種の少なくとも1種において活性のあるタンパク質から選択された少なくとも3種のタンパク質を含む、これらのタンパク質はATI遺伝子座タンパク質、A10L、A11R、A13L、A33R、A56R、B5R、D8L、D13L、F13L、H3L、H5R、A26L、A27L、E3L、L4R、H7R、A17L、A3L、A4L、D11L、H6R、K2LおよびN1Lを含む。本発明内の第3の組成物は、免疫されたヒトにおいて活性のある群より選択された少なくとも3種のタンパク質を含む。これらのタンパク質群はATI遺伝子座タンパク質、A10L、A11R、A13L、A33R、A56R、B5R、D8L、D13L、F13L、H3L、H5R、A26L、A27L、E3LおよびL4Rを含む。
【0141】
本発明内の他の免疫学的組成物は、本発明の方法により、免疫されたヒト、マウスおよびマカク(3種すべて)において活性のあるとされたタンパク質を少なくとも3種含む組成物である。これらのタンパク質の群はA10L、A11R、A13L、A33R、A56R、B5R、D8L、D13L、F13L、H3LおよびH5Rを含む。本発明のもう1つの組成物は、さまざまな免疫された個体により最も一貫して認識される抗原の群より選択された少なくとも1種のタンパク質を含む。これらのタンパク質の群はATI遺伝子座タンパク質、A10L、A13L、H3L、D13L、A11RおよびA17Rを含む。応答の強度および一貫性、タンパク質の型および同様の考察の全体的印象に基づき、本発明内のもう1つの好ましい免疫学的組成物は以下のワクチニアタンパク質の少なくとも2種またはさらに好ましくは少なくとも3種を含む。ATI遺伝子座タンパク質、A10L、A13L、A26L、A56R、D8L、D13L、F13L、H5RおよびH3L。
【0142】
本発明内の好ましい組成物はATI遺伝子座タンパク質、A10L、D13LおよびH3Lからなる群より選択された少なくとも2種のタンパク質を含む組成物を含む。他の好ましい免疫学的組成物は追加のワクチニア抗原と組み合わせた、A10L、D13L、H3LおよびATI遺伝子座タンパク質からなる群より選択された一貫して免疫活性のあるタンパク質またはペプチドまたはそれらに実質的に相同な型または免疫活性のあるフラグメントのうちの1つを含む。したがって、例えば、特定の好ましい組み合わせはH3L(またはその実質的に相同なまたは免疫活性のあるフラグメント)と追加の免疫原性ワクチニアタンパク質との組み合わせを含むであろう。もう1つのこのような組み合わせはATI遺伝子座またはその実質的に相同なまたは免疫活性のあるフラグメントによりコードされているタンパク質と追加の免疫原性タンパク質とを含むであろう。さらにもう1つの実施形態においては、A11R、A23L、A56RおよびH5Rからなる新規な抗原の群より選択された少なくとも1種のタンパク質を含む、または少なくとも1種の他の抗原性ワクチニアタンパク質とを組み合わせたこれらの抗原の1つを含む。
【0143】
上記のワクチン組成物のそれぞれに関して、本発明はまた対応するDNAワクチンを含む。したがって、本明細書中に記述する各タンパク質群に関して、特定のタンパク質に対応する遺伝子の群からなるワクチン組成物もまた本発明の範囲内であり、ワクチニア抗原性タンパク質遺伝子に対応する遺伝子の一致する組み合わせも同様である。
【0144】
したがって、この方法論は新規免疫学的に反応性の抗原を同定し、これらのすべては従来の予測的研究では同定されないであろう。これらアレイから得られたデータはすでに報告(ここに参照によるその全体を取り込むCrotty, S., et al,J. Immunol(2003)171:4969−4973)したように免疫ブロットと一致している。我々は、免疫されたヒトにおいて明白に、初回免疫後の数年の追加免疫の後、優勢抗原のサブセットに対する、とりわけH3L、D13LおよびA10Lタンパク質に対する、強い既往反応を見出す。
【0145】
(実施例7)
単一コロニー/クローンよりまたは形質転換培養物の混合物より単離したプラスミドを使用するタンパク質発現の比較
上記のように、F.ツラレンシス由来のサイズ300bpから2000bpまでの範囲の28の標的遺伝子を選択し、20bpの遺伝子特異的配列および線状pIX発現ベクター(T7プロモーターおよびN末端ポリヒスチジン融合を与える)の対応する末端に相同な30bpのアダプター配列を含むプライマーを使用してPCRにより増幅した。
【0146】
25ngのPCR産物を同量の線状pIXプレップと予め混合した。このDNA混合物を50μlにより化学的形質転換受容性E.コリDH5α細胞を形質転換し、これら細胞を氷上に30分放置し、45℃で45秒間ヒートショックを与え、500μlのSOC培地に混合し、その後37℃でインキュベートした。1時間後、カナマイシン(50μg/ml)を加えた500μlのLB培地を加え、37℃で14〜24時間以上振とうしながら継続してインキュベートした。
【0147】
単一コロニー方法に関して、50μlの培養物をカナマイシン選択(25μg/ml)LB寒天プレート上に次いで平板接種し、37℃で12〜14時間再インキュベートした。次いで単一コロニーを拾い同じ培地を使用して一晩再培養し、その後Qiagenのミニプレップキットを使用してDNAの単離を行った。
【0148】
あるいは、プラスミドDNAを上記の第1段階の一晩形質転換混合物から直接単離した。
【0149】
第2、第3段階からのプラスミドDNA(5μl)をRocheのRTS100無細胞転写/翻訳ミックス20μlに加え、30℃で4時間インキュベートした。0.5μlの発現混合物をニトロセルロース膜上にスポットし、その後抗ポリヒスチジンタグ・モノクロナール抗体を使用した発現タンパク質の標準ウェスタンブロットによる検出を行った。
【0150】
【表2】

【0151】
単一クローン:28試料のうち18が標的遺伝子の発現を示した。10の試料はどのような検出可能レベルのタンパク質の発現も生じなかった。
【0152】
形質転換混合物:28試料の内の23が発現を示した。単一クローンプロトコルからの10の陰性試料の内のの5つが発現を示し、単一コロニー由来のプラスミドはコードされたタンパク質の発現を阻止する変異を含む可能性を示唆した。
【0153】
(実施例8)
ワクチニアエンベロープタンパク質H3Lを、図15に示すように、50個のアミノ酸の、10個の重複セグメントに分割した。各セグメントについて、表3に示すように、長さ53bpのフォワードおよびリバースプライマーを設計した。これらのプライマー配列は、BamH1部位で線状化されたときのpXiベクター(ソース)の末端に相補的なDNAの33bpおよび特異的セグメントの末端に相補的なDNAの20bpを含む。
【0154】
各セグメントをPCR増幅するために、ワクチニアゲノムDNAは、特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマー10μM、水およびEppendorf HotMaster Mixと最終容量50μlになるように混合された。30サイクルの間、94℃で30秒間変性し、続いて50℃で30秒間アニーリングし、68℃で30秒間伸長した。PCRの後、産物は増幅の結果を評価するために1%アガロースゲルにかけた。1つのゲルはセグメント1、2および6の十分な産物を示し、スキャンしたゲルは3、4、8および10が十分であることを示し、第3のゲルは9が十分であることを示した。セグメント5および7の増幅はどのPCR反応でも成功しなかった。したがって、これらの2つの150bpのセグメントを増幅する代わりに、それぞれフォワードおよびリバースプライマー4および6を5の増幅に使用し、フォワードおよびリバースプライマー6および8を7の増幅に使用した。これらの450bp配列の増幅に成功した。
【0155】
PCR増幅の後PCR産物をQiagen PCR精製キットを用いて浄化し、これらセグメントを組み換えクローン化法を使用してクローン化した。40ngの線状化pXiベクターを10ngの浄化済みPCR産物と混合し、この混合物に10ulのDH5アルファE.コリ形質転換受容性細胞を加えた。この混合物は次に氷上で45分置き、42℃で1分間ヒートショックを与えその後もう1分氷にもどした。この混合物を取り上げ、SOC培地200ulを各チューブに加え、37℃のウォーターバスで1時間インキュベートした。形質転換混合物は3mlのLB+カナマイシンと混合し、37℃で一晩インキュベートした。
【0156】
プラスミドDNAをミニプレップを使用して形質転換混合物から単離した。プラスミドがインサートを有するかどうかを決定するためにゲルにかけた。対照として、環状pXiベクターをかけた。結果は、セグメント1、2、3、6、8、9および10を含むように設計したプラスミドがインサートを有することを示した。
【0157】
【表3】




【0158】
(実施例9)
ビーズに固定したタンパク質を使用したT細胞活性化の検出
上記の方法を使用して、問題としている生物(例えば、ワクチニア)の実質的にすべてのプロテオームをT7ベクター(pTX7)使用してクローン化し、タンパク質をインビトロ無細胞系を使用して発現させた。各タンパク質をベクターに挿入するために使用したアダプターはポリHis‐タグを含むので、発現タンパク質はあらかじめローディングバッファー(300mMNaCl、50mMリン酸ナトリウム、10mMイミダゾール、pH8.0)で平衡化してあるニッケル被覆ビーズ上に捕捉される。ニッケル被覆ビーズはさまざまなサイズでよいが、通常直径約10〜20ミクロンであるAPC細胞より小さいほうが有利である。1〜3ミクロンのニッケル被覆ビーズが入手可能であり、この目的に効果的である。タンパク質被覆ビーズは次いで洗浄バッファー(イミダゾールが20mMである以外は上記の通り)で5回洗浄し、2回の組織培養培地で洗浄し、原体積12.5μlの無血清培地に再懸濁した。96ウェル測定フォーマット中でT細胞と組み合わせる前に、これらのビーズを抗原提示細胞とともにインキュベートした。
【0159】
応答T細胞を、病原菌(例えば腹腔内に投与した2x10pfuワクチニア)を用いて、または腹腔内または尾底部皮下に投与したアジュバント中の個々の組み換え型タンパク質を用いて免疫化したマウスから、あるいは感染した/免疫されたヒトドナーの末梢血から得た。マウスの場合、免疫化の7〜10日後、脾臓または脱水リンパ節を取り上げた。抗原で被覆されたビーズ(ウェル当り通常1〜5μl)を、次いで、事前に被覆され(Pharmingenによる)、10%ウシ胎仔血清(FCS)(ハツカネズミ測定用)または5%ヒトAB血清(ヒト測定用)含有組織培養培地で1時間遮断したマルチスクリーン96ウェルプレート(Millipore MAHAS45)中のハツカネズミの脾細胞またはヒト末梢血単核細胞(PBMC;5×10細胞/ウェル)に加えた。抗マウスまたは抗ヒトIFN−γをニトロセルロース基板上のウェルに固定できる。例えば、この場合、血清による処理はニトロセルロース上のどのような空いている部位も遮断する役割を果たし、さもなければニトロセルロースは捕捉抗体を結合してしまいインターフェロンの検出や他のサイトカイン形成に使用されるELISPOT分析を妨害することになる。IFN‐γ抗体はT細胞(脾細胞またはPBMC)が認識された抗原により刺激されたときに産生されるどのようなIFN‐γをも捕捉する。したがって結合していない物質を洗い流した後、形成されたいずれのIFN‐γもIFN‐γ捕捉抗体に結合したままであり、結合したIFN‐γに結合することができる第2の抗体を加えることにより検出できる。この第2の抗体は容易に可視化できるように標識されている。
【0160】
使用する培地は、いずれの汚染LPSをも阻害するためには、ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを有しおよび10〜50μg/mlのポリミキシンBを補足したIscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)でよい。ハツカネズミT細胞測定に関して、この培地はまた2‐メルカプトエタノールの最終濃度5x10−5Mを補う。ヒトの測定のための陽性対照抗原は、1/160で使用されるミョウバン(Colorado Serum Co)上に吸着された、TB‐ワクチン接種ドナーにおける、精製されたタンパク質誘導体(Tubersol、Aventis Pasteurによる)である破傷風トキソイドを含み得る。分析および細胞の生存の確認に使用できるマイトジェンは、マウス細胞のためにコンカナバリンAをおよびヒト細胞のためにフィトヘマグルチニンを含有し、どちらも1μg/mlで使用した。ELISPOTによるIFN‐γの検出のための抗体はPharmingenの一致する対である。
【0161】
共培養の18から20時間後、捕捉したインターフェロンをビオチン化抗IFN‐γ検出抗体(Pharmingen)を用いて検出し、ストレプトアビジン−アルカリフォスファターゼを用いて、続けてニトロ‐BT発色液により可視化した。ヒトおよびマウスの培養物の上清を6時間、12時間、24時間および48時間で採取し、Th1(IFN−γ、TNF−α、およびIL−12)Th2(IL−4、IL−6、IL−10およびIL−13)ならびに炎症性サイトカイン(IL−1β、IL−2およびGM−CSF)のための多重サイトカイン測定(Linco Research Incの注文10‐プレックス・キットを使用)を行い、Luminex 100測定器を使用して同時分析が可能である。1つまたは複数のこれらサイトカインの存在は、検査したタンパク質が細胞性免疫応答を誘発し、および免疫の誘発に有益なそれらのタンパク質またはペプチドの同定を可能にするものであることを実証する。
【0162】
(実施例10)
APCにおけるタンパク質の発現を使用したT細胞活性化の検出
問題としている生物(例えば、ワクチニア)の実質的にすべてのプロテオームをCMV(gWIZ)ベクターにクローン化する。プラスミドは、脂質送達を使用して(InvitrogenのLipofectin(商標)、Bio−Radのトランスフェクション試薬・Cytofectene(商標)またはRoche Applied Scienceのトランスフェクション試薬・FuGENE6(商標)などの専用の脂質試薬を使用した「リポフェクション(Lipofection)」による。ここにこの全体を参照により組み込むFelgner, et al, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA.. Nov. 1987 84(21), 7413−7,を参照)、抗原提示細胞(APC)に導入し1日後、タンパク質が96ウェル測定フォーマットにおいてT細胞と組み合わせる前に発現可能にした。病原菌(例えば、腹腔内に投与した2x10pfuワクチニア)によりあるいは腹腔内または尾底部皮下に投与したアジュバントの個々の組み換えタンパク質により免疫されたマウスから、または感染した/免疫されたヒトドナーの末梢血から応答T細胞を得た。マウスの場合、免疫化の7〜10日後、脾臓または脱水リンパ節を取り上げた。次に、形質移入された抗原提示細胞を、抗マウスまたは抗ヒトIFN‐γ(Pharmingenによる)を用いて事前に被覆されおよび10%(FCS)(ハツカネズミ測定用)または5%ヒトAB血清(ヒト測定用)含有組織培養培地で1時間遮断されたマルチスクリーン96ウェルプレート(Millipore MAHAS45)内のハツカネズミ脾細胞またはヒトPBMC(5x10細胞/ウェル)に加えた。
【0163】
使用する培地は、いずれの汚染LPSをも阻害するためには、ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを有しおよび10〜50μg/mlのポリミキシンBを補足したIscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)でよい。ハツカネズミT細胞測定に関して、この培地はまた2‐メルカプトエタノールの最終濃度5x10−5Mを補う。ヒトの測定のための陽性対照抗原は、1/160で使用されるミョウバン(Colorado Serum Co)上に吸着された、TB‐ワクチン接種ドナーにおける、精製されたタンパク質誘導体(Tubersol、Aventis Pasteurによる)である破傷風トキソイドを含み得る。分析および細胞の生存の確認に使用できるマイトジェンは、マウス細胞のためにコンカナバリンAをおよびヒト細胞のためにフィトヘマグルチニンを含有し、どちらも1μg/mlで使用した。ELISPOTによるIFN‐γの検出のための抗体はPharmingenの一致する対である。
【0164】
共培養の18から20時間後、捕捉したインターフェロンをビオチン化抗IFN‐γ検出抗体(Pharmingen)を用いて検出し、ストレプトアビジン−アルカリフォスファターゼを用いて、続けてニトロ‐BT発色液で可視化した。ヒトおよびハツカネズミの培養物の上清を6時間、12時間、24時間および48時間で採取し、Th1(IFN−γ、TNF−αおよびIL−12)Th2(IL−4、IL−6、IL−10およびIL−13)ならびに炎症性サイトカイン(IL−1β、IL−2およびGM−CSF)のための多重サイトカイン測定(Linco Researchの注文10‐プレックス・キットを使用)を行い、Luminex 100測定器を使用して同時分析が可能である。1つまたは複数のこれらサイトカインの存在は、検査したタンパク質が細胞性免疫応答を誘発し、および免疫の誘発に有益なそれらのタンパク質またはペプチドの同定を可能にするものであることを実証する。
【0165】
(実施例11)
マラリア(P.ファルシパルム)を使用した抗原同定方法の検証
218のP.ファルシパルム(Pf)遺伝子のセットをクローニング、発現およびタンパク質マイクロアレイチップ転写のために選択した。これら遺伝子は細胞内局在性(例えば、分泌タンパク質および細胞培養上清におい見られる他のタンパク質)、P.ファルシパルムのヒトおよび動物モデルにおける周知の免疫原性およびP.ファルシパルムの成長状態に対する遺伝子発現パターンに基づいて選択した。それぞれは9の分類のうちの1つに当てはまる:i)バイオインフォマティクス基準のみにより同定されている(n=25);ii)P.ヨエリ(P.yoelii)肝臓期のレーザーキュプチャー顕微解剖により同定され、MudPIT(n=16)によりスポロゾイトプロテオームにおいて同定されている;iii)Py肝臓期のレーザーキュプチャー顕微解剖により同定されているタンパク質のPfオルソログ、しかしスポロゾイトのプロテオーム(肝臓期特異的;n=52)中には発見されていない;iv)MudPITによるスポロゾイトのプロテオーム中で高度に発現される(n=10);v)MudPITによるスポロゾイトのプロテオーム中で同定され、放射線照射したスポロゾイト(irr−spz)免疫されたボランティア由来のPBMCによる免疫認識について測定された(n=27);vi)臨床開発における知られていてよく特性決定されているPf抗原(n=21);vii)Affymetrix遺伝子チップによるスポロゾイトの遺伝子転写プロファイルにより示されたスポロゾイト期に高度に発現されるもの(n=53);viii)MudPITにより栄養型および繁殖体期プロテオームにおいて同定されているもの(n=11);およびix)インビトロで保護的であると指摘されているP.ヨエリのP.ファルシパルムオルソログ(n=2)。これらの分類のどれにも当てはまらない、対象となる1つの追加の遺伝子、PFB0645cも含まれた。
【0166】
P.ファルシパルムゲノムDNA鋳型を使用してPCR増幅を行った。多くのP.ファルシパルム遺伝子はイントロンを含んでいるので、プライマーはそれぞれのエクソンにわたるように設計してある。3000塩基対より長い大きな遺伝子(およびエクソン)は、それぞれ150ヌクレオチド(すなわち50アミノ酸)重複しているセグメントとして増幅された。P.ファルシパルムゲノムの全体に及ぶプライマー設計がthe Institute of GenomicsのArlo RandallおよびBioinformatics at UC Irvineおよびウェブインターフェイス経由でアクセス可能なプライマーデータベースにより成されている。このデータベースは14、446エンティティを含んでいる。したがって、それぞれの独立したエクソンを増幅するためおよび3000bpより短いセグメントの中の大きい遺伝子を増幅するために14、446プライマー対が必要であろう。しかし、ORFの約40%が50アミノ酸より短いペプチドをコードし、したがって150ヌクレオチドより大きい各々のORFを増幅するために約8000プライマー対が必要であろう。このオンラインのデータベースはこれからの研究のためのプライマー配列の元として使用した。
【0167】
218遺伝子目標セット由来の全部で266のORFを、先に述べた発現系を使用して、増幅し、クローン化し、発現させた。完了までに3日かかる方法を使用して、P.ファルシパルムゲノムDNAから266のORFをPCR増幅し、フラグメントをT7発現ベクター内にクローン化し、無細胞インビトロ転写/翻訳系で発現させ、発現タンパク質をマイクロアレイチップ上にスポットした。これらチップは放射線照射したスポロゾイトにより免疫されたヒトボランティア由来の、大腸菌溶解物で処理した血清を用いてプローブし、スライドはCy3標識抗ヒト抗体を用いて発色させ共焦点レーザーマイクロアレイチップリーダーにより読み取った。未処置の個体は反応しないのに対して、マラリア免疫個体はP.ファルシパルムタンパク質のサブセットに対して反応した。これらタンパク質はマイクロアレイチップ上に転写され、これらチップはケニアの発症頻度の高い地域で自然にマラリアに曝露された、または放射線照射スポロゾイトにより免疫された11人のドナーからの血清を用いてプローブした。未処置のドナーはチップ上に転写された発現タンパク質の完全セットに対する活性を欠いていたが(図6)、免疫された個体由来の血清はチップ上のタンパク質のサブセットに対して反応した。これらの結果の要約を表4に示した。表4の「遺伝子座」コードはウェブアドレスwww.ncbi.nlm.nih.gov/gquery/gquery.fcgiでオンラインで利用可能なGenBankデータベースで利用されている「遺伝子座タグ」に対応する。したがって、これらコードはこの表中のそれぞれのタンパク質に関するDNA配列およびペプチド配列の双方を得るために容易に使用できる。
【0168】
この分析で同定された9個の強い反応性タンパク質があった。9個のうち7個の高反応性タンパク質は知られているよく特性付けされたPf血液期抗原であり、これらの多くは臨床開発および評価中である(LSA3、MSP4、EBA175、RESA)。興味深いことに、PF10_0356、肝臓期抗原1、は肝臓期特異的抗原であり、スポロゾイト内または生物の血液期では発現せず、肝臓期においてのみである。11の内6の血清がこの抗原を認識した事実はプロテオームアレイが血液期抗原だけより多くの同定能力を有することを示している。さらにPFD0310wは、ワクチン抗原候補として臨床開発中の有性期抗原SHEBA/Pfs16である。最も強い反応性抗原の1つであるPFE1590wは今までに潜在的ワクチン抗原候補として認められたことはない。
【0169】
【表4】

【0170】
例として挙げるのみであり本発明の包含するタンパク質およびDNA配列の範囲を限定するものではないが、免疫活性タンパク質のいくつかに関する最も近いオルソログのいくつかが本方法により同定され、表4に載っていないそのいくつかは以下を含む。
【0171】
PFB0310c:
P.ヨエリ:PY05967(MSP4/5関連)
P.ヨエリ:PY07543(MSP4/5)
PFE1590w:
P.ヨエリ:PY02667(内在性膜タンパク質)
PFB07_0128:
P.ファルシパルム:Chr.13、MAL13P1.60(赤血球結合抗原140)
P.ファルシパルム:Chr.1、PFA0125c(Ebl−1様タンパク質、推定)
P.ファルシパルム:Chr.1,PFA0065w(仮想タンパク質)
P.ファルシパルム:Chr.4,PFD1155w(赤血球結合抗原、推定)
P.ヨエリ:PY04764 ダフィー受容体、ベータ型前駆体)
PF10_0343:
P.ヨエリ:PY04926(仮想タンパク質)
【0172】
【表5】

【0173】
PF11_0509:
PF13_0197:
P.ファルシパルム:CHR13/MAL13P1.173/MSP7様タンパク質
P.ファルシパルム:CHR13/MAL13P1.174/MSP7様タンパク質
P.ファルシパルム:CHR13/PF13_0193/MSP7様タンパク質
P.ファルシパルム:CHR13/PF13_0196/MSP7様タンパク質
P.ファルシパルム:CHR13/PF13_0197/メロゾイト表面タンパク質7前駆体、MSP7
P.ヨエリ:PY02147/サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)COL−l−関連
PF14_0486:
P.ヨエリ PY05356 (伸長因子2)
PF08_0054:
P.ヨエリ PY06158 (ヒートショックタンパク質70)
PF11_0344:
P.ヨエリ PY01581 (頂端膜抗原1)
【0174】
これらの別の用途において、P.ファルシパルム由来の300の遺伝子が本明細書中に記載の方法を使用して発現されマイクロアレイにおいて表示された。アレイは若年期にマラリアに罹り、したがってそれに対して免疫されている12人の対象からの血清によりプローブされた。12の血清試料のうち少なくとも6つについて以下の各遺伝子産物に関して陽性応答を観察した。
【0175】
【表6】


【0176】
(実施例12)
マラリアワクチンおよび診断テスト
実施例11において得たデータセットを基に、タンパク質のまたはこのタンパク質をコードする核酸のカクテルをワクチン組成物のために選択した。これらの結果に基づいたマラリアワクチンカクテルは、以下の遺伝子または対応するペプチドを少なくとも3種および4種もしくはそれ以上または5種もしくはそれ以上を含み、またはこれらのすべてを含むことができる:PFB0300c、PFE1590w、FB0915w、PFB0310c、PFB0310w、PF11_0509およびPF10_0343。このワクチンは、提供された患者の免疫系が弱められることがなければ、賦形剤、マラリアの危機にあるヒト対象を免疫するここに記載の組成物および方法を使用して投与される。
【0177】
あるいは、ワクチンは、抗原性タンパク質を発現するものとして表4bにおいて同定された遺伝子に対応する、少なくとも3種の核酸または少なくとも3種のタンパク質を含むであろう。好ましい実施形態において、このワクチンはこれらのタンパク質または核酸を3種もしくはそれ以上または4種もしくはそれ以上または少なくとも6種含むであろう。通常、このワクチンは、その遺伝子産物が検査した血清のうち少なくとも6種において、または検査した血清のうち少なくとも8種において、または検査した血清のうち少なくとも9種において、または検査した血清のうち少なくとも10種において、または検査した血清のうち少なくとも11種において、陽性応答を示す遺伝子に対応する核酸またはタンパク質の少なくとも3種を含むであろう。ある実施形態において、このワクチンは、検査された血清の10種またはそれ以上において陽性応答を誘発した遺伝子のうちの1つに対応する少なくとも1種の成分を含むであろう。他の実施形態において、このワクチンは検査された12の血清のうち10またはそれ以上において陽性応答を誘発した遺伝子に対応するタンパク質もしくは核酸成分の少なくとも2種またはタンパク質もしくは核酸成分の少なくとも3種を含むであろう。他の実施形態において、免疫優勢抗原は、人がP.ファルシパルムに曝露されたことがあるかをまたは感染したことがあるかを明確に診断するためのELISAなどの血清学的診断テストに使用されるであろう。
【0178】
(実施例13)
フランシセラ・ツラレンシスにおいて同定された抗原性タンパク質
F.ツラレンシス由来の実施例1Dのタンパク質を使用した上記の方法に続いて、野兎病菌の非感染性株に曝露されたマウス由来のまたは毒性のSchu S4変異株に曝露されたマウス由来の血清と反応性である多くの抗原性タンパク質が同定された。これらのタンパク質のデータは下記の表5および6である。タンパク質に関する配列はウェブアドレスwww.ncbi.nlm.nih.gov/gquery/gquery.fcgiでオンラインで利用可能なGenBamkのデータベースにおいて利用可能である。表中の遺伝子コードは同定された遺伝子およびタンパク質に関する遺伝子座タグに対応する。
【0179】
【表7】

【0180】
【表8】

【0181】
この表は、毒性生物によりチャレンジされたマウスは、非感染性株のみによりチャレンジされたものより多くの抗体を産生したことを示し、およびある種の抗体は、いずれの株がこれらマウスの免疫化に使用されたかを問わず、高度に一貫して産生されたことを示す。
【0182】
例として挙げるのみであり、本発明により包含されるタンパク質またはDNA配列の範囲を限定するものではなく、本方法により同定されたいくつかの免疫活性タンパク質について最も近い変異型およびオルソログのいくつかは以下を含む。
【0183】
FTT1269(DnaK):
シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)PAO1
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440
レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)
コクシエラ・バーネッティ(Coxiella burnetii)RSA 493株
レジオネラ・ニューモフィラ ランス(Lens)株
レジオネラ・ニューモフィラ パリ(Paris)株
コクシエラ・バーネッティdnaK
レジオネラ・ニューモフィラgrpE、dnaK、dnaJ
サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)
サルモネラ・エンテリカ 血液型亜型チフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi (Salmonella typhi))CT18株
【0184】
FTT1696 (Hsp60):
アシネトバクター種(Acinetobacter sp.)ADP1
キセノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)GroEL様タンパク質遺伝子
エルトール型O1ビブリオコレラ菌 N16961株 染色体 I
シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeroginosa)PAOl
GroESタンパク質相同体、GroELタンパク質相同体のクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)遺伝子
GroESタンパク質相同体、GroELタンパク質相同体のエンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)遺伝子
GroESタンパク質相同体、GroELタンパク質相同体のエンテロバクター・アズブリエ(Enterobacter asburiae)遺伝子
シュードモナス・エルギノサGroEL(mopA)遺伝子
GroESタンパク質相同体、GroELタンパク質相同体のシュードモナス・エルギノサ遺伝子
GroES、GroELについてのシュードアルテロモナス種(Pseudoalteromonas sp.)PS1M3遺伝子
【0185】
FTT0901(17kdタンパク質):
デルマセンタ・アルビピクス(Dermacentor albipictus)クローンTIGの野兔病菌内共生体17kDaリポタンパク質遺伝子
デルマセンタ・バリアビリス(Dermacentor variabilis)クローン01−109の野兔病菌内共生体17kDaリポタンパク質遺伝子
デルマセンタ・オクシデンタリス(Dermacentor occidentalis)クローン02−241の野兔病菌内共生体17kDaリポタンパク質遺伝子
デルマセンタ・ハンテリ(Dermacentor hunteri)クローン01−113の野兔病菌内共生体17kDaリポタンパク質遺伝子
デルマセンタ・アンデルソニ(Dermacentor andersoni)クローン01−151−1の野兔病菌内共生体17kDaリポタンパク質遺伝子
デルマセンタ・アンデルソニ(Dermacentor andersoni)クローン01−171の野兔病菌内共生体17kDaリポタンパク質遺伝子
デルマセンタ・ニテンス(Dermacentor nitens)クローンDnT2−lの野兔病菌内共生体17kDaリポタンパク質遺伝子
デルマセンタ・ハンテリ(Dermacentor hunteri)クローン02−249の野兔病菌内共生体17kDaリポタンパク質遺伝子
デルマセンタ・ハンテリ(Dermacentor hunteri)クローン01−112の野兔病菌内共生体17kDaリポタンパク質遺伝子
デルマセンタ・アンデルソニ(Dermacentor andersoni)クローン02−31の野兔病菌内共生体17kDaリポタンパク質遺伝子
【0186】
FTT1477c:
シュードモナス・プチダ KT2440
シュードモナス・シリンゲ・パソバール・トマト(Pseudomonas syringae pv. tomato)DC3000株
シュードモナス・エルギノサPAO1
キサントモナス・アクソノポディス・パソバール・シトリ(Xanthomonas axonopodis pv. citri)306株
キサントモナス・カンペストリス・パソバール・カンペリトリス(Xanthomonas campestris pv. campestris)ATCC 33913株
フォトバクテリウム・プロフォンダム(Photobacterium profondum) SS9
メチロコックス・カプスラタス(Methylococcus capsulatus)バス(Bath)株
レジオネラ・ニューモフィラ パリ株
レジオネラ・ニューモフィラ ランス株
ブラデリゾビウム・ジャポニカム(Bradyrhizobium japonicum)USDA 110 DNA
【0187】
FTT0472(ビオチンカルボキシルキャリア):
シュードモナス・エルギノサPAO1
シュードモナス・エルギノサビオチンカルボキシルキャリアタンパク質およびビオチンカルボキシラーゼ(accBおよびaccC)遺伝子
レジオネラ・ニューモフィラ亜種ニューモフィラ フィラデルフィア1株
レジオネラ・ニューモフィラ パリ株
パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)亜種ムルトシダ Pm70株
レジオネラ・ニューモフィラ ランス株
メチロコックス・カプスラタス バス(Bath)株
シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)2a株
サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium) LT2
シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)2a 2457T株
【0188】
(実施例14)
マイコバクテリウム・ツベルクロシス由来の抗原性タンパク質
マイコバクテリウム・ツベルクロシスH37Rv由来の実施例1Cのタンパク質を使用した上記の方法にしたがい、以下の抗原性タンパク質が同定された(選択された知られているの変異体およびオルソログもまた限定しない例として記載。)
【0189】
Rv3333c不確定なプロリンを富むタンパク質)
変異体/オルソログ:Mb2765c(M.ボビス(M.bovis))
ML0981(M.レプラエ(M.leprae)
【0190】
Rv0440(60kDaシャペロニン)
変異体/オルソログ:Mb0448(M.ボビス)
ML0317(M.レプラエ)
【0191】
Rvl860(アラニンおよびプロリンを富むチ分泌タンパク質APA)
変異体/オルソログ:Mb1891(M.ボビス)
【0192】
Rv3763(19kDaリポタンパク質抗原前駆体LPQH)
変異体/オルソログ:Mb3789 (M.ボビス)
ML1966(M.レプラエ)
【0193】
Rv3874(10kDa濾過物抗原ESXB)
変異体/オルソログ:Mb2765c(M.ボビス)
【0194】
Rv3875(6kDa早期分泌抗原標的ESXA)
変異体/オルソログ:Mb3905(M.ボビス)
【0195】
(実施例15)
マイコバクテリウム・ツベルクロシス由来の抗原性タンパク質
マイコバクテリウム・ツベルクロシスH37Rvの312の発現遺伝子由来のタンパク質をウサギ、マウスおよびサルからの血清により、上記の方法および実施例1Cで得た遺伝子によるタンパク質を使用して試験した。以下の表はそれぞれの種からの血清を使用して検出した抗原を記載する。各タンパク質は公的に利用可能なGenBankデータベースで使用されている遺伝子に対応する遺伝子座タグにより同定した。非感染動物からの血清は記載の抗原すべてに反応し、TB‐感染動物からの血清のみにより検出された抗原は太字で強調表示して記載されている。
【0196】
【表9】



【0197】
(実施例16)
結核ワクチンおよび診断テスト
実施例15にて得たデータのセットよりタンパク質またはタンパク質をコードする核酸のカクテルをワクチン組成物のために選択した。これらの結果に基づく結核診断テストまたはワクチンカクテルは以下の遺伝子または対応するペプチドを少なくとも3種含み、または4種もしくはそれ以上または5種もしくはそれ以上またはこれらのすべてを含むことができる。Rv0440、Rv0467、Rv0475、RV0538、Rv0674、Rv0685、Rv0798c、Rv0916c、Rv0934、Rvl801、Rvl860、Rvl926c、Rvl980c、Rvl984c、Rv2007c、Rv2031c、Rv2190c、Rv2220、Rv2376c、Rv2389c、Rv2446c、Rv2744c、Rv2873、Rv2875、Rv2875、Rv3270、Rv3330、Rv3333c、Rv3418c、Rv3763、Rv3803c、Rv3828c、Rv3846、Rv3874、Rv3875、Rv3881cおよびRv3914。特に適切な抗原は多種の感染動物からの血清に特異的に反応するものを含み、これら抗原はRv0440、Rvl801、Rv2031c、Rv2376c、Rv2875、およびRv3875を含む。さらに特に重要なものは感染したサル由来の血清により特異的に認識される抗原であり、これらはRv0440、Rv0475、Rvl801、Rvl980c、Rv2220、Rv2873、Rv2875、Rv3270、Rv3763およびRv3875を含む。ワクチンまたは診断テストはしたがって、これらの抗原のいずれかから選択された2種もしくはそれ以上または3種もしくはそれ以上または4種より多くのタンパク質または核酸を含む。
【0198】
このワクチンは、提供された対象の免疫系が損なわれないなら、結核の危機にあるヒト対象を免疫化するために、賦形剤、本明細書中に記載の組成物または方法を使用して投与される。
【0199】
【表10】





【0200】
前述の実施例は単に本発明のある実施形態を例示するものみであり、限定と解釈されるべきではない。当業者には明らかであろうこれらの変形もまた本発明の範囲に含まれる。当業者は、ここに述べた発明の多くの態様および実施形態を組み合わせ得ることをならびにこの発明は記載された様々な態様および実施形態のこのような組み合わせを明白に含み得ることを、認識している。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】宿主ベクターをおよびBamHI部位を囲むヌクレオチド配列を表す図である。示されているように、ゲノム由来のPCR増幅フラグメントのインフレーム挿入がグルタミン酸コドンGAGの後の塩基番号206にある。5’相同クローニング領域が塩基番号206に始まり33塩基上流まで伸長しており、10xヒスチジンタグとのインフレーム融合をもたらしている。3’相同クローニング領域は塩基番号212に始まり33塩基下流に伸長しており、HAタグをもたらし、TAA終止コドンにより終了する。
【図2】ワクチニアおよびフランシセラ・ツラレンシス由来のPCR産物のセットを表すゲルを示す。
【図3】E.コリの作用による組み換えの一晩培養物由来の全核酸を与えるフェノール‐クロロフォルム溶解細胞のゲルを示す。
【図4】図3に使用した一晩培養物由来の選択されたコロニーのミニプレップ由来のプラスミドを示す。
【図5】図4のミニプレッププラスミドの翻訳産物について行われたSDS PAGEゲルを示す。前記ゲルは抗ポリヒスチジン抗体によりプローブされた。
【図6】抗ヒスチジン抗体または抗HA抗体によりプローブされた図4のプラスミドのドットプロットを示す。
【図7】抗ヒスチジンタグ(図7A)、抗HAタグ(図7B)、大腸菌溶解物なしのVIG(図7C)、溶解物存在下のワクチニア免疫グロブリン(VIG)(図7D)によりプローブされたドットプロット上に同定された免疫活性タンパク質のSDS PAGEの例示的結果を示す。
【図8】E.コリ溶解物を有するVIGで処理したおよび処理していない個々のワクチニアタンパク質のドットブロットの定量的結果を示す。
【図9】VIGと免疫反応性としてD8L、F13L、H13L、H5R、A56Rおよび644を同定する、ワクチニアタンパク質のマイクロアレイを示す。
【図10】上記のワクチニア由来のインサートを含む形質転換混合物より得られた全核酸を示す。
【図11】抗ポリヒスチジンを用いてプローブした、細胞混合物より得たプラスミドについて行なった翻訳反応のSDS PAGEの結果を示す。
【図12】ワクチニアタンパク質のアレイを提供するための、精製することなくニトロセルロースへ適用された図11のタンパク質についてのドットブロットを示す。図12A−Dは、ドットブロットを抗ヒスチジン、抗HA、溶解物を含有しないVIGおよび溶解物を含有するVIGを用いて解析されたときのそれぞれの結果を示す。
【図13】E.コリ溶解物有りおよび無しでの、より小さいタンパク質アレイを示す。
【図14A】未処理のおよびワクチニアで免疫されたマウスおよびヒトの血清についてのワクチニアドットブロットの結果を示す。
【図14B】未処理のおよびワクチニアで免疫されたマウスおよびヒトの血清についてのワクチニアドットブロットの結果を示す。
【図15】実施例8に記載のように、タンパク質配列が10の区分に分割され、隣接基または複数の隣接基とのそれぞれの重複が20アミノ酸ずつである、ワクチニアのH3Lエンベロープタンパク質のスキャンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のヌクレオチド配列のための発現系を得る方法であって、
形質転換された細胞の混合物より前記発現系を抽出することを含み、
前記混合物は、個別のクローンを単離することなく培養物より前記細胞を収集することにより得られたものであり、前記培養物は、前記ヌクレオチド配列のための発現系を用いてまたは前記発現系の成分を用いて、宿主細胞を形質転換することにより得られたものである
前記方法。
【請求項2】
前記発現系がプラスミド上に含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラスミドが、前記ヌクレオチド配列および線状プラスミドを含む核酸の前記細胞中の相同的組み換えにより得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのアダプターを含み、前記アダプターは、前記線状プラスミドの少なくとも1つの末端に相補的でありおよび前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つの末端に相補的であるポリヌクレオチドであり、それによって前記ヌクレオチド配列の前記線状プラスミドへの連結の方向性を制御する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
2つのアダプターが使用され、前記アダプターは、前記線状プラスミドの第1末端におよび前記ヌクレオチド配列の第1末端に相補的な第1アダプターでありならびに前記線状プラスミドの第2末端におよび前記ヌクレオチド配列の第2末端に相補的な第2アダプターである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヌクレオチド配列が、プロモーター、終止配列または融合タグもしくはシグナルペプチドをコードする配列に機能可能に連結されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記融合タクがポリヒスチジンタグ、血球凝集素タグ、ビオチン−リガーゼ認識部位、GSTタグ、蛍光タンパク質タグ、FLAGタグまたはリンカー配列である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
所望のヌクレオチド配列のための発現系を含むプラスミドを調製する方法であって、
前記ヌクレオチド配列および線状プラスミドを含む核酸により宿主細胞を形質転換することを含み、前記核酸および線状プラスミドの量は100万細胞当り核酸1ngから10ngであり、
前記核酸および線状プラスミドはPCRにより増幅されて、前記線状プラスミドと前記核酸の組み換えを達成する形質転換細胞が得られ、前記発現系を含む前記プラスミドがもたらされる、前記方法。
【請求項9】
前記細胞の少なくとも1千万が使用される、請求項8の方法。
【請求項10】
前記細胞が、化学的に形質転換受容性でありおよび/またはE.コリ(E.coli)もしくは酵母を含む、請求項8の方法。
【請求項11】
前記E.コリがJC8679、TB1、DH5アルファ、DH5、HB101、JM101、JM109およびLE392からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記形質転換細胞由来の前記発現系を含む前記プラスミドを抽出することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ヌクレオチド配列を発現させて、細胞由来系においてコードされたタンパク質またはペプチドを得ることをさらに含む、請求項1または8に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞由来系が無細胞系である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記無細胞系が微生物、真核細胞または小麦胚芽由来の転写/翻訳系である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞由来系が細胞に内在的である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が抗原提示細胞(APC)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記APCがマクロファージ、樹状細胞およびB細胞からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記発現が多様なヌクレオチド配列の発現であり、多様なタンパク質またはペプチドが得られる請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記多様なタンパク質またはペプチドが感染病原体のゲノムによりコードされている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記多様なタンパク質またはペプチドが、タンパク質/ペプチドのアレイになるように、検査表面上にて用いられる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記多様性が、前記感染病原体の全ゲノムの少なくとも50%を表すタンパク質/ペプチドのアレイをもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記多様性が、前記病原体の全ゲノムの少なくとも98%を表すペプチドおよび/またはタンパク質のアレイをもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記感染病原体がワクチニア、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、ヒトパピローマウィルス、西ナイルウィルス、バークホリデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)またはプラスモジウム・ファシパルム(Plasmodium faciparum)である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
請求項21の方法により調製されたペプチド/タンパク質のアレイ。
【請求項26】
タンパク質/ペプチドアレイであって、前記アレイは感染病原体ゲノムの少なくとも50%を表すタンパク質およびペプチドを含み、前記アレイは少なくとも100の異なるタンパク質またはペプチドを含む、前記アレイ。
【請求項27】
前記感染病原体の全ゲノムの少なくとも98%を表す、請求項25に記載のタンパク質/ペプチドアレイ。
【請求項28】
前記感染病原体がワクチニア、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、ヒトパピローマウィルス、西ナイルウィルス、バークホリデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)、プラスモジウム・ファシパルム(Plasmodium faciparum)またはマイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、請求項26に記載のタンパク質/ペプチドのアレイ。
【請求項29】
免疫活性を有するタンパク質またはペプチドを同定する方法であって、
請求項26のアレイまたは請求項13の方法により得られたタンパク質もしくはペプチドまたは請求項20の多様なタンパク質もしくはペプチドを、対象の免疫成分の少なくとも1つを含む試料と接触させることを含み、
前記対象は前記感染病原体に暴露されたことがあり、
前記アレイのタンパク質またはペプチドと免疫成分との相互作用により、前記タンパク質またはペプチドが免疫活性を有すると同定される、前記方法。
【請求項30】
前記感染病原体が弱毒化型である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記免疫活性が液性活性であり、前記試料が前記対象の血清または血漿を含み、前記相互作用が抗体との相互作用である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記血清または血漿が、抗体とは免疫反応性であるが感染病原体とは反応性でない組成物により前処理される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
かくして同定されたペプチドまたはタンパク質を、前記対象由来のT細胞の少なくとも1つの型を含む試料と接触させることをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記免疫活性が細胞性活性であり、前記試料が前記対象由来のT細胞の少なくとも1つの型を含む請求項29の方法。
【請求項35】
前記免疫活性が少なくとも1種のサイトカインの形成により検出されるおよび/または前記タンパク質がAPC内で発現される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
(a)形質転換された細胞の混合物由来の発現系を抽出することにより得られた発現系由来のヌクレオチド配列を発現させることを含む方法により調製された(前記混合物は、個別のクローンの単離を行わずに培養物より前記細胞を収穫することにより得られたものであり、前記培養物は、前記ヌクレオチド配列のための発現系を用いてまたは前記発現系の成分を用いて、宿主細胞を形質転換することにより得られたものである。)、または
(b)前記ヌクレオチド配列および線状プラスミドを含む核酸を用いて宿主細胞を形質転換することを含む方法により得られた発現系由来のヌクレオチド配列を発現させることを含む方法により調製された(前記核酸および線状プラスミドの量はそれぞれ百万細胞当り核酸1ngから10ngである。)、
請求項26に記載のアレイ。
【請求項37】
ワクチニアタンパク質ATI遺伝子座タンパク質、A10L、A11R、A13L、A33R、A56R、B5R、D8L、D13L、F13L、H3L、H5R、A26L、A27L、E3L、L4R、H7R、A17L、A3L、A4L、D11L、H6R、K2L、N1L、A41L、A47L、B2R、D10R、E1L、F2L、F9L、G5R、G7L、H7R、I1L、L5RおよびO2Lならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される3種またはそれ以上の免疫反応性タンパク質またはペプチドを含んでいる免疫学的組成物。
【請求項38】
前記免疫反応性タンパク質またはペプチドが、ATI遺伝子座タンパク質、A10L、A11R、A13L、A33R、A56R、B5R、D8L、D13L、F13L、H3L、H5R、A26L、A27L、E3L、L4R、H7R、A17L、A3L、A4L、D11L、H6R、K2L、N1L、A41L、A47L、B2R、D10R、E1L、F2L、F9L、G5R、G7L、H7R、I1L、L5RおよびO2Lならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される、請求項37に記載の免疫学的組成物。
【請求項39】
前記免疫反応性タンパク質またはペプチドが、ATI遺伝子座タンパク質、A10L、A11R、A13L、A33R、A56R、B5R、D8L、D13L、F13L、H3L、H5R、A26L、A27L、E3L、L4R、H7R、A17L、A3L、A4L、D11L、H6R、K2LおよびN1Lならびにこれらにほぼ相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される、請求項38に記載の免疫学的組成物。
【請求項40】
前記免疫反応性タンパク質またはペプチドが、ATI遺伝子座タンパク質、A10L、A11R、A13L、A33R、A56R、B5R、D8L、D13L、F13L、H3L、H5R、A26L、A27L、E3LおよびL4Rならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される、請求項39に記載の免疫学的組成物。
【請求項41】
前記免疫反応性タンパク質またはペプチドが、A10L、A11R、A13L、A33R、A56R、B5R、D8L、D13L、F13L、H3LおよびH5Rならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される、請求項39に記載の免疫学的組成物。
【請求項42】
ATI遺伝子座タンパク質、A10L、A13L、H3L、D13L、A11RおよびA17Rならびにこれらに実質的に相同なタンパク質および免疫学的に活性な断片からなる群より選択される少なくとも1種の免疫反応性ワクチニアタンパク質を含み、前記ワクチニアタンパク質は1種またはそれ以上の追加の免疫反応性ワクチニアタンパク質との混合物中に場合によりあってよい、免疫学的組成物。
【請求項43】
ATI遺伝子座タンパク質、A10L、A13L、A26L、A56R、D8L、D13L、F13L、H5RおよびH3Lならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択され、前記ワクチニアタンパク質は1種またはそれ以上の追加の免疫反応性ワクチニアタンパク質との混合物中に場合によりあってよい、少なくとも1種の免疫反応性ワクチニアタンパク質を含んでいる免疫学的組成物。
【請求項44】
ワクチニアタンパク質がATI遺伝子座タンパク質、A10L、D13LおよびH3Lならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される、請求項43に記載の免疫学的組成物。
【請求項45】
ワクチニアタンパク質H3L、ならびに
ワクチニアタンパク質A10L、D13L、A11R、A13R、A33R、A56R、D13L、H5R、D8R、F13L、H5R、A17R、ATI遺伝子座タンパク質およびA26Lならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される2種またはそれ以上の免疫反応性タンパク質またはペプチド
を含んでいる免疫学的組成物。
【請求項46】
ワクチニアタンパク質ATI遺伝子座タンパク質またはこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片を含んでいる免疫学的組成物。
【請求項47】
ワクチニアタンパク質A10L、D13LおよびH3Lまたはこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片を含んでいる免疫学的組成物。
【請求項48】
ワクチニアタンパク質A10L、D13L、H3L、A11R、A13L、H5R、A17Rならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される2種またはそれ以上の免疫反応性タンパク質またはペプチドを含んでいる免疫学的組成物。
【請求項49】
遺伝子座PFB0300c、PFE1590w、PFB0915w、PFB0310c、PFD0310w、PF7_0128、PF11_0509、PF10_0356およびPF10_0343に伴われているマラリアタンパク質ならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される1種またはそれ以上の免疫反応性たんぱく質またはペプチドを含んでいる免疫学的組成物。
【請求項50】
FTT1269、FTT1747、FTT1696、FTT0975、FTT0901、FTT1477、FTT0472およびFTT0264によりコードされたフランシセラ・ツラレンシス(Flancisella tularensia)タンパク質およびフランシセラタンパク質DnaK、TMタンパク質、HSP60および17kdタンパク質ならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される1種またはそれ以上の免疫反応性タンパク質またはペプチドを含んでいる免疫学的組成物。
【請求項51】
ワクチニアタンパク質A10L、D13L、H3L、A11R、A13R、A33R、A56R、D13L、H5R、D8R、F13L、H5R、A17R、ATI遺伝子座タンパク質、A26Lならびにこれらに実質的に相同なタンパク質およびこれらの免疫学的に活性な断片からなる群より選択される1種またはそれ以上の免疫反応性タンパク質またはペプチドを含んでいる組成物。
【請求項52】
結核菌遺伝子Rv0440、Rv0467、Rv0475、Rv0538、Rv0674、Rv0685、Rv0798c、Rv0916c、Rv0934、Rvl801、Rvl860、Rvl926c、Rvl980c、Rvl984c、Rv2007c、Rv2031c、Rv2190c、Rv2220、Rv2376c、Rv2389c、Rv2446c、Rv2744c、Rv2873、Rv2875、Rv2875、Rv3270、Rv3330、Rv3333c、Rv3418c、Rv3763、Rv3803c、Rv3828c、Rv3846、Rv3874、Rv3875およびRv3881cによりコードされたタンパク質またはペプチドからなる群より選択される3種またはそれ以上の免疫反応性のタンパク質またはペプチドを含んでいる免疫学的組成物。
【請求項53】
前記ペプチドまたはタンパク質が、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)遺伝子Rv0440、Rvl801、Rv2031c、Rv2376c、Rv2875およびRv3875によりコードされたペプチドからなる群より選択される、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記ペプチドまたはタンパク質が、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)遺伝子Rv0440、Rv0475、Rvl801、Rvl980c、Rv2220、Rv2873、Rv2875、Rv3270、Rv3763およびRv3875によりコードされたペプチドからなる群より選択される、請求項52に記載の組成物。
【請求項55】
P.ファルシパルム(P.falciparum)遺伝子PFB0915w、PFB0310c、PFB0300c、PFB0305c、PFL2410w、PFC0210c、PFD0310w、PFD0310w、PF13_0197、PF10_0138、PFI1520w、PFI1520w、PF11_0344、PF13_0012、PFD0310w、PF11_0358、PF07_0029、PFL1605w、PFE1590w、MAL6P1.201、PFD0235c、PF13_0201、PF13_0267、PF07_0128、PF10_0343、PF10_0343、PFI1520w、PFI0580c、PF07_0020、PFE0520c、MAL7P1.29およびPF10_0260によりコードされたタンパク質またはペプチドからなる群より選択される3種またはそれ以上の免疫反応性タンパク質またはペプチドを含んでいる免疫学的組成物。
【請求項56】
P.ファルシパルム(P.falciparum)遺伝子PFB0915w、PFB0310c、PFB0300c、PFB0305c、PFL2410w、PFC0210c、PFD0310w、PFD0310w、PF13_0197、PF10_0138、PFI1520w、PFI1520w、PF11_0344、PF13_0012、PFD0310w、PFll_0358、PF07_0029、PFL1605w、PFE1590wおよびMAL6P1.201によりコードされるタンパク質またはペプチドからなる群より選択される3種またはそれ以上のペプチドまたはタンパク質を含んでいる、請求項55に記載の免疫学的組成物。
【請求項57】
請求項37から56のいずれか1項のタンパク質またはペプチドの1種またはそれ以上をコードするヌクレオチド配列を含む1種またはそれ以上の単離された核酸分子を含んでいる免疫学的組成物。
【請求項58】
請求項37から56のいずれか1項の組成物の有効量を対象に投与することを含んでいる、前記患者を感染から保護する方法。
【請求項59】
請求項57の組成物の有効量を対象に投与することを含んでいる、前記対象を感染から保護する方法。
【請求項60】
請求項37から56のいずれか1項のタンパク質またはペプチドの少なくとも1つに特異的に結合するモノクロナール抗体。
【請求項61】
請求項60のモノクロナール抗体を含んでいる免疫学的組成物。
【請求項62】
請求項61の免疫学的組成物の有効量を対象に投与することを含んでいる、対象を受動的に免疫する方法。
【請求項63】
患者の免疫成分と検査材料との相互作用を検出する方法であって、
前記免疫材料は免疫成分を含む患者に関する追加材料を含む第1の試料中に含まれていて、
前記患者より得られる第2の試料を前記追加材料により処理し、それにより、前記第2の試料を第1の試料により処理する前に、前記追加材料に対する相互作用を遮断することを含んでいる、前記検出方法。
【請求項64】
前記追加材料が細胞の成分を含み、前記検査材料が前記細胞の細胞由来系を使用して生産されたものである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記検査材料が感染病原体由来のタンパク質またはペプチドであり、前記対象が前記感染病原体に暴露されたことがある、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
対象における感染病原体または病状の同定方法であって、前記対象が特徴的なタンパク質またはペプチドに対する抗体を有するかどうかを決定するために、感染病原体または病状に特徴的な免疫活性を有する少なくとも2種のタンパク質またはペプチドを使用することを含んでいる、前記同定方法。
【請求項67】
前記免疫活性を有する特徴的なタンパク質またはペプチドが請求項29の方法により同定されたものである、請求項66に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−505106(P2008−505106A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519450(P2007−519450)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/023352
【国際公開番号】WO2006/088492
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(303022617)ザ・リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・カリフオルニア (4)
【Fターム(参考)】