説明

ハイブリッド多孔性物質及びその製造方法

【課題】混合ガスの分離、ガスの保存、メンブレイン、化学反応触媒の担体及び悪臭除去などに使われるハイブリッド多孔性物質及びその製造方法を提供する。
【解決手段】メソポーラスシリカ、ゼオライト、金属酸化物、多孔質粘土(porous clay)及び活性炭などと、新たな多孔性物質である金属元素及び有機リガンドを含むMOF(metal−organic framework)を互いに化学的に結合して、物質種の互いに異なる少なくとも2種の多孔性物質部11,12を含むハイブリッド多孔性物質10を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド多孔性物質及びその製造方法に関する。さらに詳細には、互いに化学的に結合され、物質種の互いに異なる少なくとも2種の多孔性物質部を含むハイブリッド多孔性物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性物質は、混合ガスの分離、ガスの保存、メンブレイン、化学反応触媒の担体及び悪臭除去などに使われ、それ以外にも色素担持型有機太陽電池、薬物伝達体及び低誘電(low−k)物質などに適用できる。
【0003】
これまでに知られている多孔性物質には、メソポーラスシリカ、ゼオライト、金属酸化物、多孔質粘土(porous clay)及び活性炭などがある。しかし、かかる多孔性物質は、下記のような複数の問題点を持っている。(1)低い吸着容量により多孔性物質の寿命が数ヶ月以内に制限され、(2)アンモニア/アミンのような塩基性ガスに対する吸着能が低く、(3)吸着選択性の向上のために表面改質などを試みる場合、吸着容量が減少するだけでなく表面改質された面積の比率が数%以内に制限されるなど実効性が大きくない。
【0004】
前記のような問題点を解決するために、新たな多孔性物質であるMOF(metal−organic framework)が開発された。MOFは7,000m/gに至る大きい表面積とこれによる高い吸着容量、そして自由な表面改質による吸着特性の最適化などの新たな長所を持つ。しかし、MOFの構成要素である金属と有機物との結合が水分により容易に分解されるという短所が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一具現例は、互いに化学的に結合され、物質種の互いに異なる少なくとも2種の多孔性物質部を含むハイブリッド多孔性物質を提供する。
【0006】
本発明の他の具現例は、少なくとも2種の多孔性物質部を化学的に結合させる段階を含むハイブリッド多孔性物質の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、互いに化学的に結合され、物質種の互いに異なる少なくとも2種の多孔性物質部を含むハイブリッド多孔性物質を提供する。
【0008】
前記各多孔性物質部は、多孔性シリカ、多孔性アルミナ、多孔性カーボン、ゼオライト、活性炭、多孔性金属酸化物、多孔質粘土、エアロゲル、MOF(metal−organic framework)、ZIF(zeolitic imidazolate framework)及びこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の多孔性物質を含む。
【0009】
前記MOF、ZIF及びこれらの誘導体は、それぞれ周期律表上の元素のうち、少なくとも1種の中心金属元素及び有機リガンドを含む。
【0010】
前記金属元素は、Zn、Co、Cd、Ni、Mn、Cr、Cu、La、Fe、Pt、Pd、Ag、Au、Rh、Ir、Ru、Pb、Sn、Al、Ti、Mo、W、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ga、Ge、In、Bi、Se及びSbからなる群から選択される。
【0011】
前記有機リガンドは、少なくとも2つ以上の金属イオンと結合できる作用基を有する。
【0012】
本発明のさらに他の側面は、互いに化学的に結合されたMOF及びメソポーラスシリカを含むハイブリッド多孔性物質を提供する。
【0013】
本発明のさらに他の側面は、物質種の互いに異なる少なくとも2種の多孔性物質部を化学的に結合させる段階を含むハイブリッド多孔性物質の製造方法を提供する。
【0014】
前記ハイブリッド多孔性物質の製造方法は、第1多孔性物質形成用金属前駆体または有機リガンド前駆体を、前記第1多孔性物質と物質種の異なる第2多孔性物質に含浸させる段階と、前記金属前駆体またはリガンド前駆体が含浸された前記第2多孔性物質を、前記第1多孔性物質形成用リガンド前駆体または金属前駆体と反応させる段階と、を含む。
【0015】
前記第1多孔性物質は、MOF、ZIF及びこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の物質を含む。
【0016】
前記第2多孔性物質は、多孔性シリカ、多孔性アルミナ、多孔性カーボン、ゼオライト、活性炭、多孔性金属酸化物、多孔質粘土及びエアロゲルからなる群から選択された少なくとも1種の物質を含む。
【0017】
前記金属前駆体は、周期律表上の元素のうち少なくとも1種の金属元素を含む。
【0018】
前記金属前駆体は、金属硝酸塩、金属塩化物、金属ブロマイド、金属ヨウ化物、金属アセテート、金属炭酸塩、金属蟻酸塩、金属モリブデン酸塩、金属硫酸塩、金属硫化物、金属酸化物、金属フッ化物、金属リン酸塩、金属過塩素酸塩、金属ホウ酸塩及び金属水酸化物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0019】
前記有機リガンド前駆体は、2つ以上の金属イオンと結合できる作用基を有する有機化合物である。
【0020】
前記有機リガンド前駆体は、テレフタル酸、置換テレフタル酸、トリベンゼン酸、イミダゾール、置換イミダゾール、ピリジン、置換ピリジン、ピラゾール、置換ピラゾール、テトラゾール及び置換テトラゾールからなる群から選択された少なくとも1種の有機化合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一具現例によるハイブリッド多孔性物質を概略的に示した図面である。
【図2】実施例1で製造したハイブリッド多孔性物質のSEMイメージである。
【図3】実施例1で製造したハイブリッド多孔性物質のEDXスペクトルである。
【図4】実施例1で製造したハイブリッド多孔性物質、比較例2で製造した多孔性物質及び標準MOFのXRDスペクトルである。
【図5】比較例2で製造した多孔性物質のSEMイメージである。
【図6】実施例1で製造したハイブリッド多孔性物質、比較例2で製造した多孔性物質及びメソポーラスシリカの吸脱着曲線である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付した図面を参照して本発明の一具現例によるハイブリッド多孔性物質について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一具現例によるハイブリッド多孔性物質を概略的に図示した断面図である。
【0024】
図1を参照すれば、本発明の一具現例によるハイブリッド多孔性物質10は、第1多孔性物質部11及び第2多孔性物質部12を含む。
【0025】
前記第1多孔性物質部11及び第2多孔性物質部12は、互いに化学的に結合されており、物質種が互いに異なる。本明細書で、‘少なくとも2種の物質部の物質種が互いに異なる’というのは、前記少なくとも2種の物質部が相異なる化学組成及び/または化学構造を持つということを意味する。
【0026】
前記第1多孔性物質部11及び前記第2多孔性物質部12は、それぞれ互いに独立して多孔性シリカ、多孔性アルミナ、多孔性カーボン、ゼオライト、活性炭、多孔性金属酸化物、多孔質粘土、エアロゲル、MOF(metal−organic framework)、ZIF(zeolitic imidazolate framework)及びこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の多孔性物質を含むことができる。例えば、前記第1多孔性物質部11は、MOF及び/またはその誘導体を含むことができ、第2多孔性物質部12は、メソポーラスシリカ及び/またはその誘導体を含むことができる。
【0027】
本明細書で、用語‘メソポーラスシリカ’とは、中間の気孔サイズを有する多孔性シリカ、例えば、気孔サイズが約2nmないし約50nmの多孔性シリカを意味する。
【0028】
本明細書で、用語‘MOF’とは、有機分子に配位された金属イオンまたは金属クラスターからなり、多孔性の1次元、2次元または3次元構造を形成する結晶性化合物を意味する。また本明細書で、用語‘ZIF’とは、イミダゾレートリガンドにより連結された(linked)MN(Mは金属)の四面体クラスターからなるナノ多孔性化合物を意味する。このようなZIFは二酸化炭素を捕獲でき、二酸化炭素の大気放出の防止に使われうる。
【0029】
前記MOF、ZIF及びこれらの誘導体は、それぞれ周期律表上の元素のうち少なくとも1種の中心金属元素及び有機リガンドを含むことができる。
【0030】
前記金属元素は、Zn、Co、Cd、Ni、Mn、Cr、Cu、La、Fe、Pt、Pd、Ag、Au、Rh、Ir、Ru、Pb、Sn、Al、Ti、Mo、W、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ga、Ge、In、Bi、Se及びSbからなる群から選択されうる。
【0031】
前記有機リガンドは、少なくとも2つ以上の金属イオンと結合できる作用基を有していてもよい。
【0032】
また、前記ハイブリッド多孔性物質は単結晶構造を有することができる。例えば、前記ハイブリッド多孔性物質は、MOF構造内にメソポーラスシリカが含まれた六面体形態の単結晶構造を有することができる。
【0033】
本発明の一具現例によるハイブリッド多孔性物質は、図1に図示された結晶構造に限定されるものではなく、他の多様な結晶構造を有することができる。
【0034】
前記のような構成を有するハイブリッド多孔性物質10は、揮発性有機物質(VOC:Volatile organic compound)または二酸化炭素のような相異なるガスを吸着、保存及び/または分解できる。
【0035】
以下、前記ハイブリッド多孔性物質の製造方法について詳細に説明する。
【0036】
本発明の一具現例によるハイブリッド多孔性物質の製造方法は、少なくとも2種の多孔性物質部を化学的に結合させる段階を含む。ここで、‘少なくとも2種の多孔性物質部を化学的に結合させる’というのは、少なくとも1種の多孔性物質(タイプI)を先ず用意した後、前記用意された多孔性物質(タイプI)を前記多孔性物質(タイプI)と物質種の異なる少なくとも1種の他の多孔性物質(タイプII)の原料のうち一部を含浸させた後、前記原料のうち一部が含浸された多孔性物質(タイプI)と前記物質(タイプII)の残りの原料とを反応させることを意味する。
【0037】
前記ハイブリッド多孔性物質の製造方法は、第1多孔性物質形成用金属前駆体または有機リガンド前駆体を、前記第1多孔性物質と物質種の異なる第2多孔性物質に含浸させる段階;及び前記金属前駆体またはリガンド前駆体が含浸された前記第2多孔性物質を、前記第1多孔性物質形成用リガンド前駆体または金属前駆体と反応させる段階を含むことができる。
【0038】
前記第1多孔性物質は、MOF、ZIF及びこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の物質を含むことができる。
【0039】
前記第2多孔性物質は、多孔性シリカ(例えば、メソポーラスシリカ)、多孔性アルミナ、多孔性カーボン、ゼオライト、活性炭、多孔性金属酸化物、多孔質粘度及びエアロゲルからなる群から選択された少なくとも1種の物質を含むことができる。
【0040】
前記金属前駆体は、周期律表上の元素のうち少なくとも1種の金属元素を含むことができる。前記金属元素は、例えば、Zn、Co、Cd、Ni、Mn、Cr、Cu、La、Fe、Pt、Pd、Ag、Au、Rh、Ir、Ru、Pb、Sn、Al、Ti、Mo、W、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ga、Ge、In、Bi、Se及びSbからなる群から選択されうる。
【0041】
前記金属前駆体は、例えば、金属硝酸塩、金属塩化物、金属ブロマイド、金属ヨウ化物、金属アセテート、金属炭酸塩、金属蟻酸塩、金属モリブデン酸塩、金属硫酸塩、金属硫化物、金属酸化物、金属フッ化物、金属リン酸塩、金属過塩素酸塩、金属ホウ酸塩及び金属水酸化物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むことができる。
【0042】
前記有機リガンド前駆体は、2つ以上の金属イオンと結合できる有機化合物でありうる。前記有機リガンド前駆体は、例えば、テレフタル酸、置換テレフタル酸、トリベンゼン酸、イミダゾール、置換イミダゾール、ピリジン、置換ピリジン、ピラゾール、置換ピラゾール、テトラゾール及び置換テトラゾールからなる群から選択された少なくとも1種の有機化合物を含むことができる。本明細書で“置換”とは、水素がハロゲン基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アミン基またはこれらが組み合わせられた置換基に置換されたことを意味する。
【0043】
以下、前記ハイブリッド多孔性物質の製造方法の一例を詳細に説明する。
【0044】
まず、第1多孔性物質形成用金属前駆体を第1溶媒に溶かして金属前駆体溶液を製造する。これとは別途に、前記第1多孔性物質と物質種の異なる第2多孔性物質を用意する。
【0045】
次いで、前記金属前駆体溶液を前記第2多孔性物質に十分に含浸させた後、乾燥させる。
【0046】
次いで、前記第1多孔性物質形成用リガンド前駆体を第1溶媒に溶かしてリガンド前駆体溶液を製造する。
【0047】
次いで、前記乾燥された金属含有第2多孔性物質を前記第1多孔性物質形成用リガンド前駆体溶液に投入した後、加熱して反応を進める。前記反応の結果として、ハイブリッド多孔性物質が合成される。
【0048】
最後に、前記合成されたハイブリッド多孔性物質を第1溶媒で数回洗浄した後、前記第1溶媒より沸騰点が低くて前記第1溶媒と混和できる第2溶媒で前記第1溶媒を数日間溶媒置換した後、乾燥して溶媒が除去されたハイブリッド多孔性物質を得る。
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これは例示的なものに過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例]
[実施例1:ハイブリッド多孔性物質の合成]
DEF(diethylformamide)3.2mLにZn(NO・4HO 0.56gを溶解させて金属前駆体溶液を製造した。次いで、前記金属前駆体溶液にメソポーラスシリカ(Claytec,Inc.,MSU−H)0.8gを投入して、前記金属前駆体溶液を前記メソポーラスシリカに含浸させた。次いで、前記結果物を80℃で乾燥させた。次いで、DEF 12mLにテレフタル酸0.12gを溶解させて有機リガンド前駆体溶液を製造した。次いで、前記乾燥された亜鉛含有メソポーラスシリカを、100℃に加熱された有機リガンド前駆体溶液に投入した後、100℃の温度をそのまま維持しつつ一日反応させた。次いで、前記反応により形成された固体生成物をDEFで3回洗浄した後、クロロホルムに3日間浸漬して前記DEFをクロロホルムに置換した。この時、十分な溶媒置換のために使われるクロロホルムを12時間毎に新たなクロロホルムで入れ替えた。次いで、前記固体生成物をクロロホルムから取り出して80℃で乾燥させて、溶媒が除去された多孔性物質を得た。
【0051】
[比較例1:多孔性物質の合成]
DEF 12mLに、テレフタル酸0.12g及びZn(NO・4HO 0.56gを溶解させて金属前駆体及びリガンド前駆体の混合溶液を製造した後、前記混合溶液にメソポーラスシリカ(Claytec,Inc.,MSU−H)0.8gを投入した後、100℃に加熱して100℃の温度をそのまま維持しつつ反応を進めたことを除いては(すなわち、メソポーラスシリカに金属前駆体溶液を含浸させない)、前記実施例1と同じ方法で溶媒が除去された多孔性物質を製造した。
【0052】
[比較例2:MOFの合成]
DEF 12mLに、テレフタル酸0.12g及びZn(NO・4HO 0.56gを溶解させて金属前駆体及びリガンド前駆体の混合溶液を製造した。次いで、前記混合溶液を100℃で24時間加熱した後、反応容器の壁面に生じた六面体形態の固体生成物を回収してDEFで3回洗浄した後、クロロホルムに3日間浸漬してDEFをクロロホルムに置換した。この時、十分な溶媒置換のために使われたクロロホルムを12時間毎に新たなクロロホルムで入れ替えた。次いで、前記固体生成物をクロロホルムから取り出して80℃で乾燥させて、溶媒が除去された多孔性物質を得た。
【0053】
[比較例3:メソポーラスシリカの用意]
前記実施例1で合成したハイブリッド多孔性物質との物性比較のために、メソポーラスシリカ(Claytec,Inc.,MSU−H)を用意した。
【0054】
[分析例]
実施例1で製造した多孔性物質を分析して得たSEMイメージ、EDXスペクトル、PXRD(powder x−ray diffraction)スペクトル、吸脱着曲線及び比表面積/気孔サイズを、図2〜4、図6及び下記の表1にそれぞれ示した。
【0055】
また、比較例1で製造した多孔性物質を分析して得たSEMイメージを図5に示した。
【0056】
また、比較例2で製造した多孔性物質を分析して得たPXRDスペクトル、吸脱着曲線及び比表面積/気孔サイズを、図4、図6及び下記の表1にそれぞれ示した。
【0057】
また、比較例3のメソポーラスシリカを分析して得た吸脱着曲線及び比表面積/気孔サイズを、図6及び下記の表1にそれぞれ示した。
【0058】
前記SEMイメージ、EDXスペクトル、PXRDスペクトル、吸脱着曲線及び比表面積/気孔サイズは、それぞれ下記の方法で得た。
【0059】
(SEMイメージの分析方法)
日立社のS−4700 FE−SEMを使用し、分析試料に白金を薄膜コーティングして分析に使用した。写真の倍率は60倍であり、20KVの電圧を利用してSEMイメージを得た。
【0060】
(EDXスペクトルの分析方法)
日立社のS−4700に取り付けられているEDX装置を使用して、EDXスペクトルを分析した。
【0061】
(PXRDスペクトルの分析方法)
フィリップス社のMP−XRD Xpert Pro装備を使用してPXRDスペクトルを分析し、測定角度は5°〜30°であった。前記各多孔性物質を粉末状態に粉砕したものを分析試料として使用し、溶媒で濡れている状態で分析した。
【0062】
(吸脱着曲線の分析方法)
吸脱着曲線は、Micrometrics社のTristarを使用して、77Kの温度で窒素の吸脱着曲線を分析した。各分析試料を分析する前に110℃に加熱しつつ真空下で24時間乾燥させた。
【0063】
(比表面積の分析方法)
Micrometrics社のTristar3000 ver 6.05ソフトウェアを使用して、前記吸脱着曲線から比表面積を計算した。
【0064】
(気孔サイズの分析方法)
Micrometrics社のTristar3000 ver 6.05ソフトウェアを使用して、吸脱着曲線から気孔サイズを計算した。
【0065】
【表1】

【0066】
図2及び図3は、それぞれ実施例1で製造したハイブリッド多孔性物質のSEMイメージ及びEDXスペクトルであり、図4は、実施例1で製造したハイブリッド多孔性物質、比較例2で製造した多孔性物質及び標準MOFのXRDスペクトルであり、図5は、比較例1で製造した多孔性物質のSEMイメージであり、図6は、実施例1で製造したハイブリッド多孔性物質、比較例2で製造した多孔性物質及び比較例3のメソポーラスシリカの吸脱着曲線である。
【0067】
図4で、標準MOFのPXRDスペクトルを下記のような方法で計算した。すなわち、Crystal Impact GbR社のDiamond ver3.2cを使用して、Cambridge Crystal Structure Databaseで提供されるMOF−5の結晶分析結果ファイルから、PXRDパターンを得た。この時、Crystal Impact GbR社のDiamond ver3.2cの運転パラメータとして、X−rayの波長を1.5406Åに指定し、測定範囲を5°〜30°に設定した。
【0068】
図2〜4及び図6を参照すれば、実施例1で製造した多孔性物質は六面体形状の結晶構造を持ち(図2)、シリコン及び亜鉛をいずれも含み(図3)、標準MOFと同じPXRDスペクトルを示し(図4)、比較例2で製造したMOFの特性と比較例3のメソポーラスシリカの特性とをいずれも持つと(図6)示された。前記MOFの特性とは、低い相対圧力(P/P)で吸脱着曲線の傾斜が険しい部分が存在することを意味し、前記メソポーラスの特性とは、吸着曲線と脱着曲線とが一致しない部分が存在すること(これを、ヒステリシスともいう)を意味する。一方、比較例2で製造した多孔性物質がMOFという事実は、図4のPXRDスペクトルで、前記多孔性物質のPXRDスペクトルが標準MOFのPXRDスペクトルと一致することから分かる。
【0069】
図2及び図3から、実施例1で製造した多孔性物質は、混合物ではないハイブリッド化した化合物であるということが分かる。また前記表1を参照すれば、実施例1で製造した多孔性物質は、その比表面積のサイズが比較例2で製造したMOFより小さく、比較例3のメソポーラスシリカよりは大きく、気孔サイズは、比較例2で製造したMOFの気孔サイズ範囲と、比較例3のメソポーラスシリカの気孔サイズ範囲とをいずれもカバーしていることが分かった。
【0070】
前記結果をまとめれば、実施例1で製造した多孔性物質は、MOFとメソポーラスシリカとが互いに化学的に結合されているハイブリッド多孔性物質ということが分かる。
【0071】
一方、図5を参照すれば、比較例1で製造した多孔性物質は相分離現象が観察されて、化合物ではない2種の物質、すなわち、MOFとメソポーラスシリカとが互いに物理的に混合されている混合物に過ぎないということが分かり、これによって、前記混合多孔性物質は、MOFの短所(低い水分安定性)と、メソポーラスシリカの短所(低い吸着容量及び表面改質の困難)とをそのまま持つということを類推できる。
【0072】
以上、添付図面を参照して本発明による望ましい具現例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、ハイブリッド多孔性物質に関連する技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0074】
10 ハイブリッド多孔性物質
11 第1多孔性物質部
12 第2多孔性物質部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに化学的に結合され、物質種の互いに異なる少なくとも2種の多孔性物質部を含むハイブリッド多孔性物質。
【請求項2】
前記各多孔性物質部は、多孔性シリカ、多孔性アルミナ、多孔性カーボン、ゼオライト、活性炭、多孔性金属酸化物、多孔質粘度、エアロゲル、MOF、ZIF及びこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の多孔性物質を含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド多孔性物質。
【請求項3】
前記MOF、ZIF及びこれらの誘導体は、それぞれ周期律表上の元素のうち、少なくとも1種の中心金属元素及び有機リガンドを含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド多孔性物質。
【請求項4】
前記金属元素は、Zn、Co、Cd、Ni、Mn、Cr、Cu、La、Fe、Pt、Pd、Ag、Au、Rh、Ir、Ru、Pb、Sn、Al、Ti、Mo、W、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ga、Ge、In、Bi、Se及びSbからなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド多孔性物質。
【請求項5】
前記有機リガンドは、少なくとも2つ以上の金属イオンと結合できる作用基を有していることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド多孔性物質。
【請求項6】
互いに化学的に結合されたMOF及びメソポーラスシリカを含むことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド多孔性物質。
【請求項7】
物質種の互いに異なる少なくとも2種の多孔性物質部を化学的に結合させる段階を含むハイブリッド多孔性物質の製造方法。
【請求項8】
前記各多孔性物質部は、多孔性シリカ、多孔性アルミナ、多孔性カーボン、ゼオライト、活性炭、多孔性金属酸化物、多孔質粘土、エアロゲル、MOF、ZIF及びこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の多孔性物質を含むことを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド多孔性物質の製造方法。
【請求項9】
第1多孔性物質形成用金属前駆体または有機リガンド前駆体を、前記第1多孔性物質と物質種の異なる第2多孔性物質に含浸させる段階と、
前記金属前駆体またはリガンド前駆体が含浸された前記第2多孔性物質を、前記第1多孔性物質形成用リガンド前駆体または金属前駆体と反応させる段階と、を含むことを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド多孔性物質の製造方法。
【請求項10】
前記第1多孔性物質は、MOF、ZIF及びこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の物質を含むことを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド多孔性物質の製造方法。
【請求項11】
前記第2多孔性物質は、多孔性シリカ、多孔性アルミナ、多孔性カーボン、ゼオライト、活性炭、多孔性金属酸化物、多孔質粘土及びエアロゲルからなる群から選択された少なくとも1種の物質を含むことを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド多孔性物質の製造方法。
【請求項12】
前記金属前駆体は、周期律表上の元素のうち少なくとも1種の金属元素を含むことを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド多孔性物質の製造方法。
【請求項13】
前記金属元素は、Zn、Co、Cd、Ni、Mn、Cr、Cu、La、Fe、Pt、Pd、Ag、Au、Rh、Ir、Ru、Pb、Sn、Al、Ti、Mo、W、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ga、Ge、In、Bi、Se及びSbからなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載のハイブリッド多孔性物質の製造方法。
【請求項14】
前記金属前駆体は、金属硝酸塩、金属塩化物、金属ブロマイド、金属ヨウ化物、金属アセテート、金属炭酸塩、金属蟻酸塩、金属モリブデン酸塩、金属硫酸塩、金属硫化物、金属酸化物、金属フッ化物、金属リン酸塩、金属過塩素酸塩、金属ホウ酸塩及び金属水酸化物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド多孔性物質の製造方法。
【請求項15】
前記有機リガンド前駆体は、2つ以上の金属イオンと結合できる作用基を有する有機化合物であることを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド多孔性物質の製造方法。
【請求項16】
前記有機リガンド前駆体は、テレフタル酸、置換テレフタル酸、トリベンゼン酸、イミダゾール、置換イミダゾール、ピリジン、置換ピリジン、ピラゾール、置換ピラゾール、テトラゾール及び置換テトラゾールからなる群から選択された少なくとも1種の有機化合物を含むことを特徴とする請求項15に記載のハイブリッド多孔性物質の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−126775(P2011−126775A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274539(P2010−274539)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】