説明

ハイブリッド自動車両のパワートレインのエネルギー管理の方法および装置

本発明は、ハイブリッド自動車両のパワートレインのエネルギー管理の方法および装置であって、パワートレインに含まれる少なくとも1つの要素の1つ又は複数の動作パラメータを考慮に入れるエネルギー管理の方法および装置に関する。この方法は、消費量利得(G)の決定がパワートレインの諸要素(1〜5)の少なくとも1つまたは一部の1つまたは複数の動作パラメータに依存することを特徴とする。有利には、その動作パラメータは、パワートレインの諸要素(1〜5)の少なくとも1つまたは一部のそれぞれの温度である。利用分野は自動車両の分野である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、ハイブリッド自動車両のパワートレインのエネルギー管理の方法および装置であって、そのパワートレインに含まれる少なくとも1つの要素の1つまたは複数の動作パラメータを考慮に入れたエネルギー管理の方法および装置に関する。
【0002】
パワートレインに含まれる少なくとも1つの要素の1つまたは複数のパラメータを考慮した、このハイブリッド自動車両のパワートレインのエネルギー管理の方法および装置は、実際の使用時の燃料消費を最小限に抑え、なおかつそのエネルギー貯蔵システムの寿命を保ちながら、パワートレインの電気的性能を高めることができる。
【0003】
有利には、ただし非限定的には、その1つまたは複数の動作パラメータの1つは、そのパワートレインに含まれる諸要素の少なくとも1つまたは一部のそれぞれの温度である。
【背景技術】
【0004】
現行技術によるハイブリッドパワートレインを図1に概略的に示す。
【0005】
かかるパワートレインは、周知のものとしては、車両の駆動輪2(図には1つの車輪2だけを示す)に機械エネルギーを供給する熱機関1と、1つまたは複数の電気機械3(図1には2つの機械を示す)とを有しており、それら電気機械3のうちの少なくとも1つは、電動機として機能し、車両の車輪2に電気エネルギーを供給することができる。パワートレインはまた、電気エネルギーの貯蔵手段4(図では点線で電気機械3に接続されている)と、車両の車輪2への機械エネルギーおよび電気エネルギーの伝動手段5とを有する。
【0006】
これら伝動手段5は、たとえば歯車装置、クラッチ、外サイクロイド歯車列などの機械的連結要素を有する。
【0007】
さらに、かかるパワートレインは一般に電気エネルギー回収手段を有しており、そのような手段は2つの電気機械3のうちの少なくとも1つに含まれていてもよい。すなわち、かかるエネルギー回収手段は、たとえば、減速時に発電機として働く電気機械を含んでよく、発電機として働く前記機械は、車輪から受けた機械エネルギーおよび/または運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0008】
国際公開特許WO−A−2008/053107などからは、限界消費量として知られる熱機関の特徴である消費量からリアルタイムに計算される消費量利得に応じて熱的または電気的な駆動モードを選択することによって、上述のパワートレインを備えるハイブリッド車両の駆動力の調節を行うことが知られている。
【0009】
この種の調節は、パワートレインの動作構成のうち多くの場合において満足を与えるものではあったにせよ、このような調節では、パワートレインの諸要素のうちの少なくとも1つの何らかの動作パラメータの状態、たとえばそれら諸要素のうちの1つまたは一部の熱的状態が考慮に入れられることはない。
【0010】
このような調節には、車両の始動から間もない段階で行われるパワートレインの諸動作に関しては、すなわちパワートレインが過渡動作領域にあって、パワートレインに含まれる諸要素1〜5がそれぞれの通常動作温度に到達していないときには、とりわけ不十分であることが明らかになっている。
【0011】
実際、電気機械3および電気エネルギー貯蔵システム4の熱的状態は、熱機関1および伝動手段5の熱的状態と同様に、損失および利用可能な電気出力に影響を及ぼす。
【0012】
内燃機関の燃料過消費を解析してみると、短距離の行程と結びついたときには、温態時の、すなわち通常動作の最低温度に到達した後の、熱機関による動作と比べて大幅な過消費をもたらすという熱パラメータの性格の重要性が裏付けられる。
【0013】
電動機の効率と熱機関の効率は、それぞれの動作温度によって逆の影響を受ける。電動機は冷態時に効率がよい一方、熱機関は温態で最適に動作する。
【0014】
したがって、車両のパワートレインの諸要素のうちの少なくとも1つの熱的状態をそのパワートレインの消費量の利得の計算で考慮に入れることは、そうした短距離の行程ではとりわけ至当なことである。
【0015】
ところで、パワートレインの過渡的な熱的条件のもとで行われることが多い短距離の行程は、自動車両の走行行程の相当部分を占める。調査によれば、日常的な行程の平均距離は8.5km未満であり、その平均時間は12分未満である。この統計データは、実際に使用するときの車両のエネルギー最適化における応用熱物理学の重要性を浮き彫りにするものである。
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、ハイブリッド自動車両のパワートレインの動作の管理方法において、そのパワートレインに含まれる諸要素のうちの少なくとも1つまたは一部の1つまたは複数の動作パラメータの状態を考慮に入れることにある。
【0017】
そのため、本発明は、1つの熱機関と、電動機として働くことができる少なくとも1つの電気機械とを備えるハイブリッド車両のパワートレインのエネルギー管理の方法であって、熱モードにおける消費量と電気モードにおける推定消費量の差を取って熱機関の燃料消費量の利得をリアルタイムで決定するステップを含む方法において、消費量の利得の決定がパワートレインの諸要素のうちの少なくとも1つまたは一部の1つまたは複数の動作パラメータに依存することを特徴とする方法を対象とする。
【0018】
本発明の追加的な特徴によれば、
− 考慮される動作パラメータまたはその1つは、パワートレインの諸要素のうちの1つまたは一部のそれぞれの温度であり、
− 損失要因の計算で温度が考慮されるパワートレインの前記1つまたは複数の要素は、電気機械およびエネルギー貯蔵手段であり、
− 利得は式
(g/s)=Conso−Consoequivalente
で表すことができ、
式中、
Consoは熱機関の消費量、
Consoequivalenteは同じ動作条件のときに電動機で生じると推定される消費量であって、車輪における出力に、放電時および再充電時の電気的パワートレインにおける損失を加え、それに熱機関の所定のマッピングによって定義される比例係数Kを掛け合わせたものに等しい消費量であり、
− 前記パワートレインがその要素の中にエネルギー回収手段およびエネルギー貯蔵手段を含むとき、本方法は、1つまたは複数の基準および消費量の利得Gに応じて熱機関を停止または動作させるステップを含み、熱機関停止のための必要条件であるが十分条件ではない1つの条件が消費量の正の利得であり、
− 本方法は、動作基準または複数の動作基準のいずれか1つが熱機関の特性温度に依存しており、特性温度が所定の値に到達しない限りは前記基準が熱機関の停止を保留するため、たとえ利得が正であっても熱機関の動作状態を維持するステップを含んでおり、
− 本方法は、基準または複数の基準のいずれか1つが電気エネルギー回収手段および/または電気エネルギー貯蔵手段の回収レベルに依存しており、エネルギー貯蔵手段に貯蔵された電気エネルギーが所定の値に到達しない限りはその基準が熱機関の停止を保留するため、たとえ利得が正であっても熱機関の動作状態を維持するステップを含んでおり、
− 熱機関の冷却のために少なくとも1つの電動送風装置が用意されるとき、本方法は、熱機関の温度が、とりわけ熱機関が一時的な停止状態にあるときに、所定の温度以下に下がらないように、熱機関の冷却のためのその1つまたは複数の電動送風装置の出力および/または起動頻度を調節するステップを含んでいる。
【0019】
本発明はまた、かかる方法を実施するための管理装置であって、制御ユニットと、パワートレインの少なくとも1つの動作パラメータのセンサとを備え、そのセンサが、パワートレインのエネルギー管理のために利用されるその1つまたはいずれか1つの動作パラメータを有するパワートレインの要素には少なくとも配置されることを特徴とする管理装置に関する。
【0020】
最後に、本発明は、かかる制御装置を備えること、および/またはパワートレインのエネルギー管理がかかる方法に従って行われることを特徴とするハイブリッド自動車両に関する。
【0021】
以下では、本発明について、添付の図を参照しながら、さらに詳細に、ただし非限定的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】現行技術において知られるハイブリッド自動車両のパワートレインの様々な構成要素を示した概略図である。
【図2】異なる原動機動作温度で、いずれも消費量の利得がゼロの場合について、原動機回転数を変化させたときの原動機トルクの曲線を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1については、本明細書の導入部分ですでに説明した。
【0024】
以下では、ハイブリッド車両のパワートレインの様々な要素に対しては、図1に照らして符号を与える。
【0025】
さらに、車両のパワートレインのエネルギー管理のための動作パラメータは、以下の説明では、そのパワートレインの諸要素の少なくとも1つまたは一部の熱的状態であるものとする。温度は、このパワートレインのエネルギー管理の指標として有利なパラメータであるが、それが考慮されるべき唯一のパラメータというわけではないこと、および/または、それを前記パワートレインのその要素または諸要素のうちの一部の1つまたは複数の補足的動作パラメータと組み合わせることも可能であるということは頭に入れておく必要がある。
【0026】
本発明は、1つの熱機関1と、電動機として働くことができる少なくとも1つの電気機械3とを備えるハイブリッド車両のパワートレインのエネルギー管理の方法に関する。
【0027】
この方法は、図2の曲線で値がゼロのところが示されている熱機関1の燃料消費量の利得Gを、熱モードでの消費量と電気モードでの消費量との差を取ることによってリアルタイムで決定するステップを含む。
【0028】
周知のように、燃料消費利得Gは次式によって計算される。
(g/s)=Conso−Consoequivalente
ここで、Consoは動作時の熱機関の消費量であり、
Consoequivalenteは、同じ動作条件のときに電動機で生じると推定される消費量である。
【0029】
本発明によれば、エネルギー管理の方法は、消費量利得Gの決定が、パワートレインの諸要素1〜5(図1に示すもの)のうちの少なくとも1つまたは一部の1つまたは複数の動作パラメータに依存することを特徴とする。
【0030】
有利には、パワートレインがエネルギー回収手段およびエネルギー貯蔵手段4を含むとき、前記方法は、1つまたは複数の基準および消費量の利得Gに応じて熱機関1を停止または動作させるステップを含み、熱機関停止のための必要条件であるが十分条件ではない1つの条件が消費量の正の利得であることを特徴とする。
【0031】
有利には、諸要素1〜5のうちの少なくとも1つまたは一部のそれぞれの温度は、原動機の始動直後など、特に原動機の過渡動作段階においては、考慮に入れるべき最も至当な動作条件パラメータである。
【0032】
温度は、等価消費量Consoequivalenteを決定するために、別の少なくとも1つの動作パラメータと組み合わせることもできる。
【0033】
有利には、稼働中の熱機関の消費量Consoと、熱機関の停止を補外する(すなわち電気的パワートレインによる)等価消費量Consoequivalenteとの差によって与えられる消費量の利得Gの決定後、その利得が正であれば、熱機関1を停止する決定が下され、パワートレインは電気に切り替わる。
【0034】
しかし、上で指摘したように、これは、1つの基準または複数の基準に従って、行ったり行わなかったりしてもよく、たとえば、その基準は、電気エネルギーの回収手段の回収レベルおよび/またはパワートレインの諸要素1〜5の少なくとも一部の温度に依存する。
【0035】
本発明の第1の実施形態では、その基準は、他の動作基準と組み合わせて、または組み合わせずに、熱機関1の特性温度に依存し、その特性温度が所定値に到達しない限りは前記基準が熱機関1の停止を保留する。
【0036】
本発明の第2の実施形態では、その基準は、他の動作基準と組み合わせて、または組み合わせずに、熱機関1を可能な限り頻繁に停止させて電気エネルギー貯蔵手段4の利用を増やすように決定され、それによって、熱機関1の停止による燃料の節約と、その熱機関1の動作を必要とする可能性のある電気エネルギーの回収手段の充電との間で折り合いをつける。
【0037】
熱機関1を止めた状態、すなわち電気的パワートレインによる等価消費量Consoequivalenteについては、以下の論理に従って推定する。
【0038】
純電気的な駆動が行われるときは、熱機関1の実消費量Consoはゼロである一方、電動機3の動力源で、たとえば1つまたは複数のバッテリなどの形を取る電気エネルギーの貯蔵システム4は放電する。この放電は、伝動損失分を除き、車輪2が駆動を果たすために必要な出力に等しい。
【0039】
貯蔵手段4である1つまたは複数のバッテリはもっぱら中継手段として働くものであって、唯一のエネルギー源は熱機関1であるから、純電気的な駆動時におけるこの放電は、それ以降に熱機関1が再稼働したときに充電を行うことで補う必要がある。
【0040】
熱機関1の出力の差は消費量の増分に比例するものとして近似すると、熱機関1が止まった状態での等価消費量Consoequivalenteは、車輪2における出力に、電気的パワートレインに含まれる貯蔵手段4の放電時および再充電時の電気的パワートレインにおける損失を加え、それに比例係数Kを乗じたものに等しい。
【0041】
前述の式の等価消費量Consoequivalenteに置き換えることで、消費量の利得Gを次のように導き出すことができる。すなわち、



後者の式中、
− Consoは熱機関1の消費量、
− Pmthは熱機関によってもたらされる出力、
− Kは、熱機関の所定のマッピングによって定義される比例係数、
− ηelecは電気的パワートレインの効率であり、この効率は、好ましくはパワートレインの諸要素1〜5のうちの少なくとも1つまたは一部のそれぞれの温度である、パワートレインの1つまたは複数の動作パラメータに依存する。
【0042】
熱機関の消費量Consoは、有利には、原動機の出力および回転数に応じた原動機の消費量が示される原動機回転数測定マッピングによって所与の瞬間について計算することができる。
【0043】
そのため、Gは、熱機関1の停止および純電気的パワートレインの利用によって得られる燃料消費量の利得を、ハイブリッド自動車両の走行の所与の瞬間についてリアルタイムで特徴づける。
【0044】
こうして、熱機関の停止および起動の管理を有利に決定する利得Gの等式から、パワートレインの動作パラメータに、とりわけそのパワートレインの諸要素1〜5のうちの1つまたは一部のそれぞれの温度に依存する物理的パラメータが明らかになる。
【0045】
その、またはそれらのパラメータ、とりわけ温度の変化を、たとえば熱機関1起動後の熱的過渡動作段階で、考慮に入れることは、温度など、その、またはそれらの動作パラメータの値を測定することができるようにハイブリッドパワートレインの各要素に配設されたセンサによって測定されるデータに基づいて行われる。
【0046】
そのため、本発明はまた、かかる方法を実施するための管理装置において、消費量ConsoおよびConsoequivalenteの計算を行うための計算機などを備えた制御ユニットと、パワートレインの少なくとも1つの動作パラメータのセンサであって、そのパワートレインのエネルギー管理および消費量計算の支援のために利用される動作パラメータまたはその1つを有するパワートレインの要素のうちの少なくとも1つまたはその一部に配設されたセンサとを備えることを特徴とする管理装置にも関する。
【0047】
本発明による方法の基本戦略は有利には以下の3つの段階からなる。すなわち、
− 熱機関1を運転/停止する段階、
− エネルギー回収を考慮に入れる段階、
− 熱機関1稼働時の熱機関の出力を選択する段階。
【0048】
戦略の核心は、走行の所与の瞬間に熱機関1の停止を有利に行うために行う消費量の利得Gの計算に基づいた第1段階にある。各々の動作ポイントに関して、この利得Gの式によって、とりわけ温度に依存し得る物理的動作パラメータが明らかになる。
【0049】
温度を動作パラメータまたはその1つとする場合は、戦略における熱的過渡動作の考慮に第2段階は関係しない。なぜならば、サイクルから減速時に、または車載もしくは外部のその他のあらゆるエネルギー源から、回収されるエネルギーは、戦略で推奨されるとおり、いずれにしても、純電気モードで走行するために利用されなければならないためである。
【0050】
第3段階は、熱機関1の稼働が決まったときのその出力の決定に関するものである。当該領域、すなわち利得Gが正であるところで、熱機関1の停止全体を回収によってまかなうことができないときは、基本的にパワートレインにおけるエネルギー貯蔵手段4としての役割を担う1つまたは複数のバッテリの再充電を行うのが有利である。
【0051】
実際には、熱機関1は補完的な出力を供給し、それによってその1つまたは複数のバッテリを再充電し、その充電状態を公称領域に戻らせる。
【0052】
電気的パワートレインにおける損失およびバッテリの損耗は出力の平方に比例することから、この再充電は徐々に行うのが有利である。同時に、バッテリの再充電は熱的過渡動作の管理に影響を与える。
【0053】
利得Gの計算に使用される動作パラメータまたは複数の動作パラメータのいずれか1つが温度である場合には、図2は、原動機の異なる温度と消費量の利得の所与の値について、原動機回転数を変化させたときの原動機トルクの曲線を示した概略図である。動作温度は、熱機関1の特性温度またはかかる特性温度に関連づけたものであり、必要に応じてかかる特性温度に対して補正したものであってよい。
【0054】
上述の曲線において、利得Gの値はゼロであり、原動機トルクは縦軸に取られ、その単位はニュートン−メートルであり、原動機回転数の単位は回転/分である。
【0055】
原動機回転数を変化させたときの原動機トルクの値を示した各々の曲線は、それぞれ熱機関1の異なる動作温度に対応している。
【0056】
冷態消費量の計算は、熱的過渡動作時における追加的な摩擦トルクの増大がその基本となる。その場合、図2に示すように、冷態での消費量の増大は温態消費量のマッピングをトルクが上昇する方向に平行移動したものに相当する。図では、利得Gの値がゼロで、原動機回転数の値が同じ場合、原動機の動作温度が下がると、原動機トルクは上がっている。
【0057】
エネルギー貯蔵手段4に対する再充電のために起動後の熱機関1に要求される追加トルクについて、過消費はトルクの増大に依存する。
【0058】
上述の等式で取り上げた係数Kは温度には依存しない。この係数は、原動機回転数および原動機トルクによっても比較的一定しており、それがために、本発明による方法の基礎をなす戦略は、原動機の回転数およびトルクによって著しく変動する原動機の全体的な平均効率を考慮に入れる他の戦略と比べて精度と単純さを持つ。
【0059】
伝動装置における損失は熱的過渡動作時における過消費の第2の要因である。しかし、こうした損失は、前述の利得Gの等式の2つの消費量ConsoおよびConsoequivalenteに、とりわけ熱機関1動作時の消費量Consoの値に含まれている。
【0060】
そのため、本発明による方法でこうした損失を計算するためのパラメータとして伝動装置の特性温度を用いる必要はない。
【0061】
それに対して、本発明によれば、パワートレイン用および/または車両のパワートレインで発電機として働く電気機械3用の電気エネルギー貯蔵手段4として、充電損失および放電損失の計算のために温度パラメータを用いることは有利である。
【0062】
消費量は、パワートレインのその他の動作パラメータとは異なり、利得計算に1次で作用するものであることから、エネルギーの最適化によってもたらされる消費量利得Gの範囲が機器温度による車両の消費量への直接的影響の限度を超えるものでないことは自明である。
【0063】
図2には電気駆動領域が示されている。
【0064】
この図2では、熱機関1の特性温度またはその補正値の影響を電気駆動領域の大きさに見ることができる。
【0065】
温度Tが低いほど、熱機関1では摩擦による損失が高くなり、パワートレインにおけるその原動機の効率は電動機よりも悪くなる。そのため、熱機関の特性温度が低いほど、電気駆動領域は広くなる。
【0066】
エネルギー貯蔵手段4の再充電戦略は、熱機関1稼働時の熱機関1の出力の選択にある。消費量の利得Gの計算でパワートレインの諸要素1〜5のうちの少なくとも1つまたは一部の熱的状態を考慮に入れると、電気モードの駆動を顕著に(MVEGサイクルで10%程度)増やす必要がある。なお、MVEGサイクルは、燃料消費および燃焼ガスの排出に関するヨーロッパの認定サイクルである。このサイクルには市街地部分および郊外部分が含まれ、それぞれの平均速度は18.8km/hおよび62.6km/hとされている。MVEGサイクルは、気温20°Cで冷温状態の原動機を始動して行われる。
【0067】
消費量を減らすために熱機関1の温度上昇にも同時に重きを置くためには、再充電損失を最小限に抑えることと並行して、必要に応じて熱的管理を用いることが好ましい。
【0068】
車両が冷温状態からの始動である場合、運転者の要求またはエネルギー貯蔵手段4の充電レベルによって熱機関1の始動が必要となったときは、特性温度のレベルが所定の閾値に到達しない間は熱機関1の停止を禁止してもよい。
【0069】
とりわけ熱機関1の停止段階では、冷却回路や、電気機械3および電子装置による1つまたは複数の電動送風装置の起動頻度によって、熱機関1の停止中に熱機関1の顕著な冷却を生じないように特に注意しながら、熱機関1の温度を規定の閾値よりも上に維持することが有利である。
【0070】
ただし、原動機区画の自然通風や、場合によって純電気モードで停止時に要求される居室の暖房は、熱機関1の冷却水温度の低下を来たし得るが、その低下は、暖房要求による値の調整余地がある閾値までは許容することができる。その閾値を超えると、熱機関1が再始動する。
【0071】
本発明による方法の基本原理は単純で、複雑な最適化技法の結果ではなく、物理的な近似に基づいており、この方法を新たな用途に適合させるのは容易である。
【0072】
この方法を作成するための基本アルゴリズムは、試作ハイブリッド車両で現に用いられている戦略と比べて単純であるから、本発明による管理装置の制御ユニットに搭載する計算機に要求される能力は軽減される。
【0073】
本発明による方法で熱的過渡動作を考慮することは、電気走行時の性能を高めることを可能にするものであり、しかもそのためのコストはかからない。
【0074】
本発明は、あくまでも例として説明され、図示されたものに過ぎない実施形態にいささかも限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの熱機関(1)と、電動機として働くことができる少なくとも1つの電気機械(3)とを含む複数の要素(1〜5)を備えるハイブリッド車両のパワートレインのエネルギー管理の方法であって、熱モードにおける消費量(Conso)と電気モードにおける推定消費量(Consoequivalente)の差を取って前記熱機関(1)の燃料消費量の利得(G)をリアルタイムで決定するステップを含む方法において、消費量の前記利得(G)の決定が前記パワートレインの諸要素(1〜5)のうちの少なくとも1つまたは一部の1つまたは複数の動作パラメータに依存することを特徴とする方法。
【請求項2】
考慮される前記動作パラメータまたはその1つが、前記パワートレインの前記諸要素(1〜5)のうちの1つまたは一部のそれぞれの温度であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
損失の計算でその温度を考慮に入れる前記パワートレインの前記1つまたは複数の要素(1〜5)が前記電気機械(3)および/またはエネルギー貯蔵手段(4)であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記利得(G)が、次式


で表すことができ、
式中、
Consoは熱機関(1)の消費量であり、
Pmthは熱機関によってもたらされる出力であり、
Kは、熱機関の所定のマッピングによって定義される比例係数であり、
ηelecは電気的パワートレインの効率であり、この効率は、好ましくは前記パワートレインの前記諸要素1〜5のうちの少なくとも1つまたは一部のそれぞれの温度である、前記パワートレインの1つまたは複数の動作パラメータに依存することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記パワートレインがその要素の中にエネルギー回収手段(3)およびエネルギー貯蔵手段(4)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、1つまたは複数の基準および消費量の前記利得Gに応じて前記熱機関(1)を停止または動作させるステップを含み、前記熱機関(1)停止のための必要条件であるが十分条件ではない1つの条件が消費量の正の利得(G)であることを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記動作基準または複数の動作基準のいずれか1つが前記電気エネルギー回収手段(3)および/または前記電気エネルギー貯蔵手段(4)の回収レベルに依存しており、前記エネルギー貯蔵手段(4)に貯蔵された電気エネルギーが所定の値に到達しない限りはその基準が前記熱機関(1)の停止を保留するため、たとえ利得が正であっても前記熱機関(1)の動作状態を維持するステップを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記動作基準または複数の動作基準のいずれか1つが前記熱機関(1)の潤滑油の温度に依存しており、前記熱機関(1)の潤滑油の温度が所定の値に到達しない限りは前記基準が熱機関の停止を保留するため、たとえ前記利得(G)が正であっても前記熱機関(1)の動作状態を維持するステップを含むことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記熱機関(1)の冷却のために少なくとも1つの電動送風装置が用意された、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法において、前記熱機関(1)の温度が、とりわけ前記熱機関(1)が一時的な停止状態にあるときに、所定の温度以下に下がらないように、前記熱機関(1)の冷却のための前記1つまたは複数の電動送風装置の出力および/または起動頻度を調節するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実施するための管理装置であって、制御ユニットと、パワートレインの少なくとも1つの動作パラメータのセンサとを備え、そのセンサが、前記パワートレインのエネルギー管理のために利用される前記1つまたはいずれか1つの動作パラメータを有する前記パワートレインの要素(1〜5)には少なくとも配置されることを特徴とする管理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の制御装置を備えること、および/またはパワートレインのエネルギー管理が請求項1から8のいずれか一項に記載の方法に従って行われることを特徴とするハイブリッド自動車両。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−516259(P2012−516259A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546903(P2011−546903)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052696
【国際公開番号】WO2010/086521
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(507274799)プジョー シトロエン オートモビル エス アー (72)
【Fターム(参考)】