説明

ハイブリッド駆動装置

【課題】電気モータによりエンジンを始動するに際して、トルクコンバータのロックアップクラッチを解放してトルク変動を吸収するが、ロックアップクラッチの解放にタイムラグがある。
【解決手段】コントロールバルブ31は、SLUにより制御され、ポートaにライン圧PLを供給する位置と、ポートaを解放状態とする位置に切換えられる。リレーバルブ30は、ソレノイドバルブS1により制御され、ポートbとcとの間を、セカンダリ圧Psecを循環する位置と、低い保持圧を循環する位置に切換えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源としてエンジン及び電気モータを備えたハイブリッド駆動装置に係り、詳しくはエンジン出力軸との間に駆動クラッチを介した1モータパラレルタイプのハイブリッド駆動装置において、電気モータと自動変速装置との間に配置したトルクコンバータのロックアップクラッチの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機の入力軸に、電気モータを連結すると共に駆動クラッチ(K0クラッチ)を介してエンジンに連結するハイブリッド駆動装置が案出されている(例えば特許文献1参照)。該ハイブリッド駆動装置は、上記K0クラッチを解放して上記電気モータで走行するEV走行モードや、K0クラッチを係合してエンジン及び電気モータにより車両を駆動するHEV走行モード等に切換えることができる。
【0003】
該ハイブリッド駆動装置において、自動変速機には、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータが備えられており、この場合、上記走行駆動用の電気モータによりエンジンを始動する際には、該エンジン始動時、ロックアップクラッチを解放して、電気モータのトルクを、トルクコンバータの油流を介して自動変速装置そして駆動車輪に伝達する。
【0004】
これにより、エンジン始動のための電気モータの出力変動並びにエンジン始動に伴うエンジンからのトルク変動を、上記トルクコンバータの油流により吸収して、駆動車輪のトルク変動を減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−35241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジン駆動のみからなる一般タイプの自動変速機におけるトルクコンバータには、ロックアップクラッチに、係合用油圧供給するポート、ロックアップクラッチの背面側となるトルクコンバータ部に、セカンダリ圧又は該セカンダリ圧より低い保持圧を切換えて供給するための入力ポート及び出力ポートの3ポート(3ウェイ)タイプがある。
【0007】
該トルクコンバータの制御用回路は、上記ロックアップクラッチ操作用の油圧を供給可能なロックアップコントロールバルブと、上記トルクコンバータ部に供給するセカンダリ圧又は保持圧を切換えるロックアップリレーバルブを備えている。
【0008】
上記ロックアップコントロールバルブは、ロックアップクラッチの解放指令により直ちにその操作用の油圧が減圧されるが、上記ロックアップリレーバルブは、ロックアップクラッチ操作用の油圧が減圧されて実際にロックアップクラッチが解放された状態でセカンダリ圧供給状態に切換えられる。一方で、ロックアップクラッチは、ロックアップ解放指令してもすぐには完全解放されず所定タイムラグをもって完全に解放される。特に、上記コントロールバルブは、ロックアップの解放ショックを低減するために滑らかにロックアップクラッチを解放するため、一般に比較的低いスイープ勾配により減圧するため、ロックアップクラッチが解放され、トルクコンバータ部のインペラとタービンとの間に所定相対回転を生じてトルク変動を吸収するには、所定のタイムラグがある。
【0009】
上記一般タイプのロックアップクラッチの制御用回路を上記ハイブリッド駆動装置に適用すると、エンジン始動時に該ロックアップクラッチを解放するためにタイムラグが発生する。特に、運転者が、アクセルペダルを踏んでトルク要求している際、電気モータの出力トルクが不足して、エンジンの出力トルクを必要とする場合、ロックアップクラッチの解放指令から該ロックアップクラッチの解放まで所定タイムラグがあると、エンジン始動に所定時間必要となり、運転者に違和感を生じる。
【0010】
そこで、本発明は、ロックアップリレーバルブをロックアップ解放指令により直ちに切換えるようにして、ロックアップクラッチの解放を素早く行うようにし、もって上述した課題を解決したハイブリッド駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電気モータ(3)と、ロックアップクラッチ(5)を有するトルクコンバータ(6)と、自動変速装置(7)と、を備え、前記電気モータ(3)を、前記ロックアップクラッチ(5)の入力側(9)に連結すると共に、駆動クラッチ(10)を介してエンジン出力軸(2a)に連結し得る、ハイブリッド駆動装置(1)において、
前記トルクコンバータ(6)は、前記ロックアップクラッチ操作用の第1のポート(a)、該トルクコンバータのインペラ(6a)とタービン(6b)との間に油流を生じる第2のポート(b)及び第3のポート(c)を有し、
前記第1のポート(a)への係合圧を制御するロックアップコントロールバルブ(31)と、
前記第2のポート(b)と第3のポート(c)との間を、所定循環圧(Psec)で循環する第1の位置と、前記所定循環圧より低い所定圧で循環する第2の位置とに切換えるロックアップリレーバルブ(30)と、
該ロックアップリレーバルブを切換えるソレノイドバルブ(S1)と、を備え、
ロックアップ解放指令に基づき、前記ロックアップコントロールバルブ(31)による係合圧の低下を開始すると同時に前記ソレノイドバルブ(S1)により前記ロックアップリレーバルブ(30)が前記第2の位置から第1の位置に切換えられてなる、
ことを特徴とするハイブリッド駆動装置にある。
【0012】
前記ロックアップコントロールバルブ(31)は、リニアソレノイドバルブ(SLU)により前記第1のポート(a)に係合圧を供給する第1の位置と、前記第1のポート(a)を解放圧状態とする第2の位置に切換えられ、
ロックアップ解放指令に基づき、前記リニアソレノイドバルブ(SLU)により前記ロックアップコントロールバルブ(31)が前記第1の位置から前記第2の位置に切換えると共に、前記ソレノイドバルブ(S1)により前記ロックアップリレーバルブ(30)が前記第2の位置から前記第1の位置に切換えられてなる。
【0013】
前記ロックアップコントロールバルブ(31)は、前記リニアソレノイドバルブ(SLU)からの制御油圧が作用する制御油室(n)と、ライン圧入力ポート(o)と、前記第1のポート(a)と連通する第4のポート(p)と、解放ポート(w)と、を有し、
前記ロックアップリレーバルブ(30)は、前記ソレノイドバルブ(S1)からの油圧が作用する制御油室(30a)と、セカンダリ圧入力ポート(i)と、前記第2のポート(b)に連通する第5のポート(j)と、前記第3のポート(c)に連通する第6のポート(k)と、オイルクーラ(37)に連通する第7のポート(l)と、前記所定循環圧より低い所定圧を保持する保持圧バルブ(36)に連通する第8のポート(x)及び第9のポート(y)と、ドレーンポート(EX)と、を有し、
ロックアップ解放指令に基づき、前記ロックアップコントロールバルブ(31)は、前記リニアソレノイドバルブ(SLU)からの前記制御油室(n)に作用する制御油圧が減圧されることにより、前記第4のポート(p)が前記ライン圧ポート(o)に連通する状態から前記解放ポート(w)に連通する状態に切換えられ、前記ロックアップリレーバルブ(30)は、前記ソレノイドバルブ(S1)からの前記制御油室(30a)に作用する油圧が排出されることにより、前記第5のポート(j)が前記第8のポート(x)から前記セカンダリ圧入力ポート(i)に連通すると共に前記第6のポート(k)が前記ドレーンポート(EX)に連通する状態から前記第7のポート(l)に連通する状態に切換えられてなる。
【0014】
なお、前記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明によると、ロックアップリレーバルブがソレノイドバルブにより切換えられるので、ロックアップ解放指令に基づき、ロックアップコントロールバルブによる係合圧の低下を開始すると同時に、ロックアップリレーバルブが所定循環圧を供給する第1の位置に切換えられるので、ロックアップクラッチは、解放操作されると共に、トルクコンバータ側に上記所定循環圧を作用して上記ロックアップクラッチを解放方向に助勢して、素早く解放される。これにより、電気モータによりエンジンを始動する際、特に電気モータのトルク容量では運転者のトルク要求に不足して、エンジンを始動する際、ロックアップクラッチが素早く解放されることにより、トルクコンバータの油流れを介しての動力伝達により電気モータのトルク変動を吸収しつつ素早くエンジン始動を行うことができ、運転者のトルク要求に対して違和感を与えることなくエンジントルクに遷移することができる。
【0016】
請求項2に係る本発明によると、ロックアップリレーバルブは、ソレノイドバルブにより制御され、ロックアップコントロールバルブが、リニアソレノイドバルブにより制御されるので、上記ロックアップ解放指令によるロックアップコントロールバルブとロックアップリレーバルブの同時切換えを高い信頼性でもって容易に行うことができる。
【0017】
請求項3に係る本発明によると、ロックアップコントロールバルブ及びロックアップリレーバルブに大きな設計変更することなく、上述した素早いロックアップクラッチの解放操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用し得るハイブリッド駆動装置を示す概略図。
【図2】本発明に係るトルクコンバータ及び駆動クラッチ(K0クラッチ)の制御用油圧回路図。
【図3】本発明に係る各要素のタイムチャート。
【図4】一般タイプのロックアップクラッチの制御用回路を用いたタイムチャート。
【図5】本発明に係るロックアップクラッチの制御によるタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。ハイブリッド駆動装置1は、内燃エンジン2側から順次、電気モータ3、ロックアップクラッチ5を有するトルクコンバータ6、自動変速装置7が配置されており、電気モータ3のロータ3aを支持しているロータ軸9と、内燃エンジン2の出力軸2aとの間に駆動クラッチ10(以下K0クラッチ10という)が介在している。上記トルクコンバータ6及び自動変速装置7とは、エンジンを駆動源とする車両に搭載される一般タイプの自動変速機11と略々同じものが用いられ、従って本ハイブリッド駆動装置1は、一般タイプの自動変速機11に電気モータ3を付設し、かつ内燃エンジン出力軸2aとの間にK0クラッチ10を配置したものである。なお、自動変速装置7は、多段変速装置でも、ベルト式CVT、トロイダル式CVT、コーンリング式CVT等の各種の無段変速装置でもよい。
【0020】
本ハイブリッド駆動装置1は、トルクコンバータ6と自動変速装置7との間にオイルポンプ8が配設されており、上記自動変速装置7の一側に油圧回路を有するバルブユニット12が配設されており、該バルブユニット12は電子制御装置(ECU)15からの信号により制御される。自動変速装置7は、トルクコンバータ6からの回転が入力される入力軸16と、該自動変速装置で変速された出力回転を出力する出力軸17とを有しており、出力軸17は、ディファレンシャル装置19を介して左右の駆動車輪20,20に繋がっている。
【0021】
通常、本ハイブリッド駆動装置1は、車両停止中はエンジン2が停止しかつK0クラッチ10が解放している。車輌の始動時は、この状態から電気モータ3が駆動されて、該電気モータのロータ3aの回転がトルクコンバータ6及び自動変速装置7を介して、更にディファレンシャル装置19を介して車輪20に伝達されるEV走行モードで走行を開始する。そして、所定走行速度に達すると、K0クラッチ10が係合して、上記電気モータ3のトルクによりエンジン2が始動される。この際、トルクコンバータ6のロックアップクラッチ5は、係合状態から解放状態に切換えられ、エンジン始動のための電気モータ3の出力変動並びにエンジン始動に伴うエンジンからのトルク変動を、上記トルクコンバータ6の油流により吸収して、出力軸17のトルク変動を減少する。
【0022】
エンジン2が始動された後は、エンジン及び電気モータにより車両を駆動するHEV走行モードとなり、エンジン出力軸の動力は、トルクコンバータ6、自動変速装置7及びディファレンシャル装置19を介して車輪20に伝達されて、車両は、上記自動変速装置7で変速された速度で走行する。この際、電気モータ3は、無負荷で回転するか、前記エンジン出力をアシストするように所定トルクを出力するか、車両慣性又はエンジン2の出力により回生してバッテリを充電する。また、前記自動変速装置7は、車速及びアクセル開度に基づく制御装置15からの信号によりバルブユニット12の油圧回路が切換えられ、ギヤによる動力伝達経路が変更されて変速すると共に、該変速に応じて、トルクコンバータ6のロックアップクラッチ5が断接制御される。
【0023】
前記EV走行モードからHEV走行モードに切換える際、トルクコンバータ6のロックアップクラッチ5は、係合状態から解放状態に切換えられ、エンジン始動のための電気モータ3の出力変動並びにエンジン始動に伴うエンジンからのトルク変動を、上記トルクコンバータ6の油流により吸収して、出力軸17のトルク変動を減少する。特に、運転者が、アクセルペダルを踏んで、トルク要求をする際、電気モータ3のトルクでは不足する場合、素早くエンジン2を始動して、上記トルク不足感を解消することが好ましく、そのためロックアップクラッチ5の素早い解放作動が望まれる。
【0024】
本発明は、上記ロックアップクラッチ5の素早い解放を行うための油圧回路にあり、図2に示す。
【0025】
本油圧回路Aに用いられるトルクコンバータ6は、図2に示すように、複数の入力側摩擦板22及び出力側摩擦板23を有する多板クラッチからなるロックアップクラッチ5を備えており、かつ3個のポートa,b,cが連通する3ポート(3ウェイ)タイプからなる。また、K0クラッチ10も、複数の入力側摩擦板25及び出力側摩擦板26を有する多板クラッチからなり、かつ3個のポートd,e,fを有する。
【0026】
油圧回路Aは、ロックアップクラッチ制御用のリニアソレノイドバルブSLUと、K0クラッチ制御用のリニアソレノイドバルブSK0と、ロックアップリレーバルブ30と、ロックアップコントロールバルブ31と、ロックアップ用ソレノイドバルブS1と、K0コントロールバルブ32と、を備える。
【0027】
図3に示すタイムチャートに基づく作用の説明と共に、上記油圧回路Aを説明する。EV走行モード、Dレンジ、ブレーキOFF、車速一定の状態で、リニアソレノイドバルブSLUは、その出力ポートmから高い係合制御圧(L−up制御圧)を出力している状態にあり、該係合制御圧は、ロックアップコントロールバルブ31の制御油室nに作用して、該バルブ31は右半位置(第1の位置)にあり、ライン圧PLが作用している入力ポートoと(第4の)ポートpとが連通状態にあって、ライン圧がポートo,pを介してロックアップクラッチ5の(第1の)ポートaに供給され、該ロックアップクラッチ5は係合状態にある。
【0028】
一方、ソレノイドバルブS1は、ON状態にあって、出力ポートhから高い圧力(係合圧)を出力し、ロックアップリレーバルブ30のスプール上端の制御油室30aに作用して、該バルブ30は左半位置(第2の位置)にある。従って、トルクコンバータ6のイン(第2の)ポートbに連通する(第5の)ポートjは、(第8の)ポートxを介して所定保持圧を保持する保持圧バルブ36に連通し、(第3の)ポートcに連通する(第7の)ポートkはドレーンポートEXに連通し、かつセカンダリ圧(PSEC)に連通するセカンダリ圧入力ポートiが上記保持圧バルブ36に連通する第9のポートyに連通して、トルクコンバータ6は、所定低圧に保持された状態にある。即ち、セカンダリ圧PSECは、ポートi,yを介して保持圧バルブ36に連通し、該保持圧バルブ36による所定低圧がポートx,yを介してポートbに作用する。また、ポートcは、ポートk、ドレーンポートEXからドレーンされる。従って、該EV走行モードにあっては、ポートaにライン圧が供給されて、ロックアップクラッチ5が係合状態にあると共に、トルクコンバータ6内は所定低圧状態で油が循環されている。
【0029】
また、K0クラッチ制御用リニアソレノイドバルブSK0の出力ポートrからは、低い解放制御圧(0圧)を出力し、該解放制御圧は、K0クラッチ10のポートdに作用する。また、K0コントロールバルブ32は、該バルブ32の入力ポートtに入力されるライン圧PLを出力ポートuから所定圧が出力されるように調圧するためのバルブであって、該バルブ32によって調圧された所定圧がポートfに入力され、K0クラッチ10の複数の入力側摩擦板25及び出力側摩擦板26を冷却した後にポートeからオリフィスを介してドレーンされるようになっている。従って、K0クラッチ10には、ポートdに解放制御圧、ポートfに所定圧が供給された状態にあって解放状態にある。
【0030】
従って、該EV走行モードにあっては、K0クラッチ10が解放され、エンジン2は回転停止状態にあり、電気モータ3のロータ3aの回転が、係合状態にあるロックアップクラッチ5を介して、即ちトルクコンバータ6のインペラ6aとタービン6bと一体に回転する状態で自動変速装置7の入力軸16に伝達される。
【0031】
そして、該EV走行モードにおいて、運転者がアクセルペダルを増加傾向で踏み続けている場合、現在のEV走行モードによる電気モータ3のトルク容量では、上記運転者のトルク要求に対して不足する状況となる。この状況を制御装置15が判断すると、該制御装置15は、エンジン始動要求とロックアップクラッチ5の解放指令を出力する。
【0032】
上記ロックアップクラッチの解放指令によりリニアソレノイドバルブSLUの指令値が直ちに減少を開始するが、該指令値は所定スイープ角で減少し、従って該リニアソレノイドバルブSLUの出力ポートmからの制御圧(L−up制御圧)も所定スイープ角で減圧する。該出力ポートmからの制御圧は、ロックアップコントロールバルブ31の制御油室nに作用して、該バルブ31を左半位置(第2の位置)に切換え、ライン圧入力ポートoを遮断すると共に、(第4の)ポートpをドレーンチェックボール35に連通する解放ポートwに切換える。従って、ロックアップクラッチ5のポートaは、上記コントロールバルブ31のポートp,wを介してドレーンチェックボール35に連通して、該ロックアップクラッチ5は解放状態に切換えられる。
【0033】
一方、上記制御装置からのロックアップクラッチ解放指令によりソレノイドバルブS1をOFF状態に切換え、直ちに出力ポートhから低い解放(0)圧を出力する。該ポートhからの解放圧はロックアップリレーバルブ30の制御油室30aに作用して、該バルブ30を右半位置(第1の位置)に切換え、セカンダリ圧入力ポートiを(第5の)ポートjに連通すると共に、(第6の)ポートkを(第7の)ポートlに連通する。
【0034】
この状態では、セカンダリ圧(所定の循環圧)Psecが、ポートi,jを介してトルクコンバータ6の(第2の)ポートbに供給されると共に、該トルクコンバータ6の(第3の)ポートcがポートk,lを介してオイルクーラ37に供給され、トルクコンバータ6は、セカンダリ圧Psecが供給された状態で、インペラ6aからタービン6bに油流を介して動力伝達される状態となり、この間でトルクがステータ6cにより変換されると共に、インペラ6aとタービン6bとの間に相対回転を許容してトルク変動を吸収する。
【0035】
この状態を、図4及び図5に沿って説明する。図2に示す本実施の形態では、リニアソレノイドバルブSLUの出力ポートmをロックアップリレーバルブ30の制御油室30aに連通させず、ロックアップコントロールバルブ31の制御油室nにのみ連通するように構成されて、上記リニアソレノイドバルブSLUからの制御圧がリレーバルブ30に対して関与しないように設定しているが、上記出力ポートmを制御油室30aに連通して、該リレーバルブ30を上記リニアソレノイドバルブSLUの制御圧で切換えることも考えらえる。この状態を図4で示す。制御装置からのロックアップ解放指令により、リニアソレノイドバルブSLUの電流指令値Islu((c)参照)がスイープダウンすることで、ロックアップコントロールバルブ31のポートpから出力される油圧もスイープダウンされ、結果、ロックアップクラッチ5のポートaに作用する油圧(PL−up)もスイープダウンするが、リニアソレノイドバルブSLUのスイープダウンでは、ロックアップリレーバルブ30は直ちに切換えることはなく、所定時間遅れて該ロックアップリレーバルブ30は切換わり、トルクコンバータ6にセカンダリ圧Psecが供給される((a)'参照)。
【0036】
このため、ロックアップクラッチ5は、ポートaとポートbとの差圧により((b)'参照)、少し遅れて切断され、トルクコンバータ6の油流による滑りに基づくタービン回転Ntに対するインペラ回転Neの増速も少し遅れて開始される((d)'参照)。なお、エンジンのみ使用による一般のトルクコンバータにあっては、ロックアップクラッチ5の切断を更に滑らか(緩やか)にして、ロックアップクラッチ5の解放ショックを軽減しており、図4に示すロックアップリレーバルブ作動の遅れは、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧(電流指令値)を最大傾斜でスイープダウンした状態を示す。
【0037】
図5は、前述した図2に示す油圧回路Aによるタイムチャートの要部を示す。ロックアップコントロールバルブ31は、上述した図4と同様に、リニアソレノイドバルブSLUの制御油圧[電流指令値Islu (c)参照]により切換わり、ロックアップクラッチ5のポートaへのライン圧(PL−up)は、制御装置からのロックアップ解放指令と同時に供給開始される。
【0038】
ロックアップリレーバルブ30も、ソレノイドバルブS1により上記ロックアップ解放指令と同時に切換えられ、トルクコンバータ6へセカンダリ圧Psecが直ちに供給開始される。これにより、ロックアップクラッチ5は、ポートaに作用するライン圧により入力側摩擦板22と出力側摩擦板23とを押圧すると共に、その背面側からセカンダリ圧Psecが作用して、該ロックアップクラッチを解放方向に助勢して、ロックアップクラッチ5は素早く解放される((b)並びに図3のL−upトルク容量参照)。そして、トルクコンバータ6は、インペラ回転Neとタービン回転(Nt)との差回転を素早く生じ((d)参照)、電気モータ3のトルク変動を吸収し得る状態に素早く立上げる。
【0039】
この状態で、図3に示すように、制御装置からの指令値(K0制御開始)に基づきK0クラッチ制御用リニアソレノイドバルブSK0がその出力ポートrから制御油圧を生じて、該制御油圧は、K0クラッチ10のポートdに導かれる。一方で、K0コントロールバルブ32は、該バルブ32の入力ポートtに入力されるライン圧PLを出力ポートuから所定圧が出力されるように調圧するためのバルブであって、該バルブ32によって調圧された所定圧がポートfに入力され、K0クラッチ10の複数の入力側摩擦板25及び出力側摩擦板26を冷却した後にポートeからオリフィスを介してドレーンされるようになっている。従って、K0クラッチ10は、制御油圧がポートdから供給されると共に、ポートfに所定圧が供給された状態にあって、トルク容量を有する。即ち、ロックアップクラッチ5が解放(L−up解放)後に、K0クラッチ10の制御が開始されてK−0補償状態となる。
【0040】
そして、K−0補償状態によりエンジンの回転数が上昇し始め(Eng始動トルク開始)、電気モータ3のトルクによりエンジン2が始動される(クランキング)。この際、電気モータ3の出力トルク(MGトルク)は増加され、車両の走行負荷に上記エンジン始動トルクが加えられる。エンジン始動後、該エンジントルクは増大すると共に、それに応じて上記電気モータ3のトルクが減少し、ロータ軸9へは、電気モータトルクからエンジントルクへトルク遷移される。そして、該トルク遷移が完了したエンジン始動トルクを確保した後、電気モータ3は、無負荷回転(トルク0)となって、エンジン2の出力になり車両が走行される。
【符号の説明】
【0041】
1 ハイブリッド駆動装置
2 エンジン
2a エンジン出力軸
3 電気モータ
5 ロックアップクラッチ
6 トルクコンバータ
7 自動変速装置
9 入力側(ロータ軸)
10 駆動クラッチ(K0クラッチ)
22 入力側(摩擦板)
23 出力側(摩擦板)
30 ロックアップリレーバルブ
30a 制御油室
31 ロックアップコントロールバルブ
36 保持圧バルブ
37 オイルクーラ
A 油圧回路
SLU リニアソレノイドバルブ
S1 ソレノイドバルブ
a 第1のポート
b 第2のポート
c 第3のポート
n 制御油室
o ライン圧入力ポート
p 第4のポート
i セカンダリ圧入力ポート
j 第5のポート
k 第6のポート
l 第7のポート
x 第8のポート
y 第9のポート
w 解放ポート
EX ドレーンポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータと、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、自動変速装置と、を備え、前記電気モータを、前記ロックアップクラッチの入力側に連結すると共に、駆動クラッチを介してエンジン出力軸に連結し得る、ハイブリッド駆動装置において、
前記トルクコンバータは、前記ロックアップクラッチ操作用の第1のポート、該トルクコンバータのインペラとタービンとの間に油流を生じる第2のポート及び第3のポートを有し、
前記第1のポートへの係合圧を制御するロックアップコントロールバルブと、
前記第2のポートと第3のポートとの間を、所定循環圧で循環する第1の位置と、前記所定循環圧より低い所定圧で循環する第2の位置とに切換えるロックアップリレーバルブと、
該ロックアップリレーバルブを切換えるソレノイドバルブと、を備え、
ロックアップ解放指令に基づき、前記ロックアップコントロールバルブによる係合圧の低下を開始すると同時に前記ソレノイドバルブにより前記ロックアップリレーバルブが前記第2の位置から第1の位置に切換えられてなる、
ことを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記ロックアップコントロールバルブは、リニアソレノイドバルブにより前記第1のポートに係合圧を供給する第1の位置と、前記第1のポートを解放圧状態とする第2の位置に切換えられ、
ロックアップ解放指令に基づき、前記リニアソレノイドバルブにより前記ロックアップコントロールバルブが前記第1の位置から前記第2の位置に切換えると共に、前記ソレノイドバルブにより前記ロックアップリレーバルブが前記第2の位置から前記第1の位置に切換えられてなる、
請求項1記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記ロックアップコントロールバルブは、前記リニアソレノイドバルブからの制御油圧が作用する制御油室と、ライン圧入力ポートと、前記第1のポートと連通する第4のポートと、解放ポートと、を有し、
前記ロックアップリレーバルブは、前記ソレノイドバルブからの油圧が作用する制御油室と、セカンダリ圧入力ポートと、前記第2のポートに連通する第5のポートと、前記第3のポートに連通する第6のポートと、オイルクーラに連通する第7のポートと、前記所定循環圧より低い所定圧を保持する保持圧バルブに連通する第8のポート及び第9のポートと、ドレーンポートと、を有し、
ロックアップ解放指令に基づき、前記ロックアップコントロールバルブは、前記リニアソレノイドバルブからの前記制御油室に作用する制御油圧が減圧されることにより、前記第4のポートが前記ライン圧ポートに連通する状態から前記解放ポートに連通する状態に切換えられ、前記ロックアップリレーバルブは、前記ソレノイドバルブからの前記制御油室に作用する油圧が排出されることにより、前記第5のポートが前記第8のポートから前記セカンダリ圧入力ポートに連通すると共に前記第6のポートが前記ドレーンポートに連通する状態から前記第7のポートに連通する状態に切換えられてなる、
請求項2記載のハイブリッド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250608(P2012−250608A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124293(P2011−124293)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】