説明

ハイブリッド駆動装置

【課題】環境負荷が少なく、より安価で簡易なハイブリッド駆動装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、ハイブリッド駆動装置は、車両の駆動軸12を駆動する主駆動装置20と、車両の駆動軸に選択的に接続可能に設けられたコンプレッサ30と、前記コンプレッサからのエネルギーを蓄える蓄圧部32と、車両の制動時に前記コンプレッサを前記駆動軸に接続してコンプレッサを作動させ、前記コンプレッサからのエネルギーを前記蓄圧部に蓄え、車両の起動時に前記蓄えたエネルギーにより前記駆動軸を駆動する制御装置50と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、回生エネルギーを利用して駆動を行うハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世の中では環境に対する意識の高まりから高効率な駆動装置が求められており、ハイブリッド駆動装置が広く知られるようになってきている。この装置は、これは主駆動装置のほかに制動時に発電機としてはたらく装置を備え、制動エネルギーを電気エネルギーに変換して二次電池等に蓄える。そして、起動時のそのエネルギーを利用してモータを駆動することにより高効率化を図る装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−001125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のハイブリッド駆動装置において、エネルギー回収装置として主に使用される二次電池には希少資源が使われており、高価な物となっている。そこで、より安価で簡易に構築できるハイブリッド駆動装置が望まれている。
【0005】
そこで、この発明の課題は、環境負荷が少なく、より安価で簡易なハイブリッド駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、ハイブリッド駆動装置は、車両の駆動軸を駆動する主駆動装置と、
前記車両の駆動軸に選択的に接続可能に設けられたコンプレッサと、前記コンプレッサからのエネルギーを蓄える蓄圧部と、車両の制動時に前記コンプレッサを前記駆動軸に接続してコンプレッサを作動させ、前記コンプレッサからのエネルギーを前記蓄圧部に蓄え、車両の起動時に前記蓄えたエネルギーにより前記駆動軸を駆動する制御装置と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態に係るハイブリッド駆動装置を示す平面図。
【図2】図2は、前記ハイブリッド駆動装置のコンプレッサを示す断面図。
【図3】図3は、前記ハイブリッド駆動装置の回生エネルギー蓄積動作を示す平面図。
【図4】図4は、前記ハイブリッド駆動装置の駆動アシスト動作を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るハイブリッド駆動装置について説明する。
【0009】
図1は、第1の実施形態に係る圧縮空気式のハイブリッド駆動装置を概略的に示す平面図。本実施形態は、例えば、鉄道車両の駆動台車に設置されたハイブリッド駆動装置を示している。
【0010】
駆動台車10は、台車本体11とこの台車本体に支持された複数、例えば、2本の車軸12、14を有している。車軸12、14は、台車本体11に回転自在に支持され、各車軸の両端部には、車輪16が取り付けられている。これらの車輪16は、図示しないレール上に載置される。一方の車軸12は、駆動車軸として構成され、以下に述べる圧縮空気式のハイブリッド駆動装置から駆動力を受けて車輪16を駆動する。
【0011】
圧縮空気式のハイブリッド駆動装置18は、主駆動装置としての主電動機20、および主電動機に電力を供給するインバータ22を有している。インバータ22は、架線24から例えば交流電流を受け、直流電流に変換して主電動機20に供給する。主電動機20は、ギア列(変速ギア)26および電磁クラッチ28を介して駆動車軸12に駆動力を伝達する。
【0012】
ハイブリッド駆動装置18は、コンプレッサ30、およびコンプレッサにより圧縮された空気を蓄える蓄圧部として機能するエアタンク32を備えている。図1および図2に示すように、コンプレッサ30は、例えば、シリンダ34と、シリンダ内に摺動自在に設けられたピストン36と、コンロッド37を介してピストンに連結されたクランク軸38と、を有している。シリンダ34内の圧縮室は、吸排気を制御する電磁弁40を介してエアタンク32に接続されている。クランク軸38は、例えば、トルクを変換するトルクコンバータ42あるいは変速ギア列、電磁クラッチ44を介して駆動車軸12に接続されている。
【0013】
主電動機20、インバータ22、電磁クラッチ28、電磁弁40、電磁クラッチ44は、制御装置50に接続され、この制御装置50により動作が制御される。
【0014】
上記のように構成されたハイブリッド駆動装置18を備えた車両において、通常の走行時には、図1に示すように、架線24より電力供給を受けてインバータ22により主電動機20が駆動される。この通常走行時、制御装置50は、電磁クラッチ28をオンとし、主電動機20から駆動力がギア列26および電磁クラッチ28を介して駆動車軸12に伝達され、車輪16が駆動される。この間、制御装置50は、電磁クラッチ44をオフとし、駆動車軸12とコンプレッサ30とが切り離されている。
【0015】
車両の制動時、図3に示すように、制御装置50は、電磁クラッチ44をオンとして駆動車軸12とコンプレッサ30とを接続し、駆動車軸12の回転エナルギーによりコンプレッサ30を作動させる。同時に、制御装置50は、電磁弁40を所定のタイミングで開閉し、コンプレッサ30により圧縮された空気をエアタンク32へ送り蓄える。
【0016】
なお、車両の制動時、電磁クラッチ28は制御装置50によりオンあるいはオフに切り換えられる。電磁クラッチ28をオンとした場合、制動時の回生エネルギーが主電動機20、インバータ22を介して架線24に送られ、この架線24を通して、他の鉄道車両で利用される。また、電磁クラッチ28をオフとした場合は、駆動車軸12からコンプレッサ30によりエアタンク32のみに蓄えられる。
【0017】
図4に示すように、車両の起動時あるいは加速時、制御装置50により電磁クラッチ44をオンするとともに、電磁弁40を所定のタイミングで開閉することにより、エアタンク32に蓄えられた圧縮空気は、コンプレッサ30の加圧室に供給されてピストン36を駆動し、この駆動力をギア列および電磁クラッチ44を介して駆動車軸12に伝達する。これにより、蓄えられた圧縮空気により車両の駆動をアシストする。車両が所望の速度に達した時点で、あるいは、エアタンク32内の圧縮空気が無くなった時点で、制御装置50は電磁クラッチ44をオフとして、コンプレッサ30による駆動アシストを停止する。
【0018】
以上のように構成された圧縮空気式のハイブリッド駆動装置によれば、車両の制動時のエネルギーをエアコンプレッサにより圧縮空気の形で蓄え、この回生エネルギーを活用することで停止、加速時のエネルギーロスを減少させることができる。電磁クラッチおよびギア列により主電動機の接続、分離、並びに、コンプレッサの接続、分離を制御することにより、エネルギーの回生と駆動を効率よく行うことができる。これにより、希少資源を使用し、保護が複雑になる二次電池を使用した装置と比較して、環境負荷が少なく、簡易で高効率なハイブリッド駆動装置が得られる。
【0019】
なお、ハイブリッド駆動装置において、主駆動装置は電動機に限らず、レシプロエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関を用いても良い。また、回生エネルギーを蓄える蓄圧部は、エアータンクに限らず、ばね、フライホイール等を用いることもできる。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば、ハイブリッド駆動装置は、鉄道車両に限らず、自動車等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
10…駆動台車、11…台車本体、12、14…車軸、16…車輪、
18…ハイブリッド駆動装置、20…主電動機、22…インバータ、
24…架線、26…ギア列、28、44…電磁クラッチ、30…コンプレッサ、
32…エアタンク、40…電磁弁、50…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動軸を駆動する主駆動装置と、
前記車両の駆動軸に選択的に接続可能に設けられたコンプレッサと、
前記コンプレッサからのエネルギーを蓄える蓄圧部と、
車両の制動時に前記コンプレッサを前記駆動軸に接続してコンプレッサを作動させ、前記コンプレッサからのエネルギーを前記蓄圧部に蓄え、車両の起動時に前記蓄えたエネルギーにより前記駆動軸を駆動する制御装置と、
を備えるハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記主駆動装置あるいはコンプレッサと前記駆動軸とを接続、分離するためのクラッチを備えている請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記コンプレッサと駆動軸との間に設けられ、トルクを変換する変速ギヤを備える請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記蓄圧部は、前記コンプレッサの加圧室に接続されたエアタンク、およびコンプレッサとエアタンクとの間に設けられた開閉弁と、を備えている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−31343(P2013−31343A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167507(P2011−167507)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】