説明

ハイブリッドH形鋼

【課題】弾性設計においてフランジ降伏前にウェブの降伏が生じず設計が容易かつ製作も簡単なハイブリッドH形鋼を提供する。
【解決手段】降伏強度fのT形鋼2と降伏強度fのウェブ板3とを溶接wにより接合して形成されるウェブ高さhのハイブリッドH形鋼1であって、f>fで、かつT形鋼のウェブ高さhがh≧(f−f)×h/(2×f)である。例えば、T形鋼2に高張力鋼を用い、ウェブ板3に軟鋼を用いる。T形鋼2には、圧延T形鋼またはCT形鋼を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築、土木構造物等の鋼構造に用いるハイブリッドH形鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示すように、溶接組立H形鋼であって、軟鋼からなるウェブ板11に、このウェブ板11よりも強度の高い高張力鋼からなるフランジ板12を溶接したハイブリッドH形鋼13が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、このハイブリッドH型鋼13を製作するためには、ウェブ板11とフランジ板12との間を4箇所の溶接wを行う必要があり、4つの溶接線が形成される。
【0003】
【特許文献1】特公平7−68738号公報(段落番号[0002])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のハイブリッドH形鋼においては、図4に示すように、降伏強度fの強度の高いフランジ12が降伏する前に、降伏強度fのウェブ11のフランジ12近傍(図4においてハッチングを付した部分)が早期に降伏するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたもので、弾性設計においてフランジ降伏前にウェブの降伏が生じず設計が容易かつ製作も簡単で、特許文献1の発明と比較して高強度鋼も効率的に利用したハイブリッドH形鋼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、降伏強度fのT形鋼と降伏9強度fのウェブ板とを溶接により接合して形成されるウェブ高さhのハイブリッドH形鋼であって、f>fで、かつT形鋼のウェブ高さhがh≧(f−f)×h/(2×f)であることを特徴とする。
前記T形鋼には、圧延T形鋼またはCT形鋼を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウェブよりもフランジの降伏強度を高くしたハイブリッドH形鋼において、フランジ降伏前にウェブ降伏が生じないようにすることができる。また、T形鋼とウェブ板とを溶接により接合するだけで作製することができるので、製作が簡単である。
さらに、前記T形鋼に圧延T形鋼またはCT形鋼を用いることにより、溶接線の数を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッドH型鋼を示す正面図である。
図1に示すように、このハイブリッドH型鋼1は、溶接組立H形鋼であって、降伏強度fの2つのT形鋼2と、降伏強度fのウェブ板3とを溶接により接合して組み立てたものであり、ハイブリッドH型鋼1のフランジ5はT形鋼のフランジ2aにより構成され、ハイブリッドH型鋼1のウェブ6はT形鋼のウェブ2bおよびウェブ板3により構成される。そして、T形鋼2の降伏強度fは、ウェブ板3の降伏強度fよりも高く設定されており、例えば、T形鋼2に高張力鋼を用い、ウェブ板3に軟鋼を用いる。また、ウェブ高さhのハイブリッドH形鋼において、T形鋼のウェブ高さhはh≧(f−f)×h/(2×f)となるように設定されている。
【0009】
このようなハイブリッドH型鋼1にあっては、ウェブ高さhのハイブリッドH型鋼1におけるT形鋼2のウェブ高さhが前述のように設定されることにより、ハイブリッドH型鋼1のウェブ6のフランジ5近傍の降伏強度が高くなるので、フランジ5が降伏してもウェブ6の降伏が生じない。
また、このハイブリッドH型鋼1は、T形鋼2とウェブ板3とを溶接により接合するだけで簡単に作製することができる。
【0010】
また、T形鋼2として、圧延形鋼、または圧延H形鋼から切断して製作するCT形鋼を用いると、図1に示すように、ハイブリッドH型鋼1を製作するために、T形鋼2のウェブ2bとウェブ板3とを2箇所の溶接wを行えばよいので、従来の図2の場合に比べて、溶接線の数が半分で済む利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッドH形鋼を示す正面図である。
【図2】図1のハイブリッドH形鋼の応力図である。
【図3】従来のハイブリッドH形鋼を示す正面図である。
【図4】図3のハイブリッドH形鋼の応力図である。
【符号の説明】
【0012】
1 ハイブリッドH形鋼
2 T形鋼
3 ウェブ板
T形鋼の降伏強度
ウェブ板の降伏強度
h ハイブリッドH形鋼のウェブ高さh
T形鋼のウェブ高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
降伏強度fのT形鋼と降伏強度fのウェブ板とを溶接により接合して形成されるウェブ高さhのハイブリッドH形鋼であって、f>fで、かつT形鋼のウェブ高さhがh≧(f−f)×h/(2×f)であることを特徴とするハイブリッドH形鋼。
【請求項2】
前記T形鋼は、圧延T形鋼またはCT形鋼であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドH形鋼。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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