説明

ハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法

本発明は、ハウジング(10)の水を導通する構成要素(11)の水密性を検査するためのインジケータの使用に関する。前記インジケータは、水に混合されるか、水滴が接触すると放出されるか、または水が接触すると発生する材料から発生する。本発明によれば、ガスまたは蒸気の形でのインジケータの存在がセンサ(13)によって検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングの水を導通する構成要素(water conducting components)の水密性を検査する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大量生産品の品質検査において、多くの場合、水密性検査を実行することが必要である。したがって、ホースやパイプで起こり得る漏れを検出するために、洗濯機や皿洗い機を検査しなければならない。
【0003】
独国特許発明第102007032250号明細書には、液体の漏れを検出する装置が記載されている。該装置は、大きな面である、導体経路が設けられた非導電性の面要素を有する。前記導体経路には、電圧が加えられる。電気抵抗を測定することによって、前記面要素の上に液体の滴が存在するかが検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第102007032250号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、雰囲気ガスを収容する、囲まれているハウジングの中の構成要素の水密性の検査に適した水密性を検査する方法を提供することである。
【0006】
本発明の第1のバリエーションは、水を導通する構成要素が、水とインジケータとを組み合わせたもので満たされ、水滴が漏れた場合、水滴に含まれるインジケータが、ハウジングに囲まれた雰囲気ガスに漏れ出し、インジケータに反応するセンサによって検出されることを提案する。
【0007】
インジケータは、水と混合された液体であるか、または水に溶解したガスであってもよい。特に、適したインジケータは、雰囲気ガスに素早く蒸発するエタノールのようなアルコールや他の液体である。面に衝突する水滴は、大きな面領域を有するので、大量のインジケータがハウジングに収容された雰囲気ガスの中に短時間で蒸発する。対応するセンサ、すなわちインジケータに選択的に反応するガスセンサまたは蒸気センサは、雰囲気ガスにおけるインジケータの生成および「漏れ」の信号を検出する。
【0008】
前記センサは、ハウジングの雰囲気ガスを吸引するポンプを備えている。ハウジングの雰囲気ガスは、インジケータの存在についての情報を与えるセンサに供給される。センサは、赤外吸収、質量分析計、または同類のものの測定を用いたガスセンサであってもよい。水密性の検査が、検査中、構成要素の中の圧力の増加を必要としないことが本発明の利点である。それどころか、圧力のない測定を行うことが可能である。インジケータが、例えば二酸化炭素やヘリウムのような、溶解した形で水に含まれるガスであることも可能である。
【0009】
本発明にかかる方法の第2のバリエーションは、水が接触すると透過性を有するようになる少なくとも1つの壁を有する容器にインジケータが導入されることを提供する。容器は、検査される構成要素の下方に配置され、容器からのインジケータの漏れは、インジケータに反応するセンサによって検出される。ここでは、水滴が容器の壁の上に落ちると、容器の壁がインジケータを透過させるようになるという効果が利用される。これにより、インジケータが、容器の内側から、容器を取り囲んでいるハウジングの雰囲気ガスに漏れ出す。望ましくは、インジケータは、ガスまたは蒸気である。不活性ガス、特にヘリウムや二酸化炭素が、インジケータガスとして選択される。
【0010】
第2のバリエーションの特別な実施形態は、容器が、例えばアルコールであるインジケータで満たされたマイクロカプセルによって形成されることを提案する。漏れが生じた場合、水は、マイクロカプセルに接触し、それによってマイクロカプセルが破壊される。マイクロカプセルに収容されたアルコールは放出される。対応のセンサは、空気中のアルコールの存在を検出し表示する。センサの検出を行うのに必要な水の量は、極めて少ない。約0.1mlである。「マイクロカプセル」は、薄く、場合によっては半透過性を有する壁によって完全に囲まれたコアを有する物体を意味する。一般に、マイクロカプセルの大きさは、1〜1500μmであり、望ましくは、10〜300μmであり、さらに望ましくは、30〜150μmであるが、特別な場合、例えば、2000、3000、4000、5000μmまで大きくなってもよい。
【0011】
マイクロカプセルは、賦形剤、カプセルに入れられていない匂いのする物質または生物学的物質のような他の物質、場合により、無機キャリアまたは有機キャリア、あるいは生物学的キャリア、または生物学的材料との協働によって設けてもよい。これらは、全て、水、水溶液、適当な有機液体、またはそれらの混合物によって湿らせてもよい。
【0012】
望ましい実施形態では、マイクロカプセルは、半透過性の壁を有する。これらの壁を通して、作用物質がカプセルから水の中に拡散できる。ここでは、水は、外側からカプセルの壁を通って浸透し、コアの中の成分を溶解し、溶解した成分と一緒にカプセルから外に拡散できる。
【0013】
本発明の方法の第3のバリエーションは、水が接触すると、ガスのインジケータまたは蒸気のインジケータを生成する発生用物質が、検査中、構成要素の下方のハウジングに配置されること、およびインジケータの生成がインジケータに反応するセンサによって検出されることを提案する。発生用物質は、水溶性の容器に貯蔵することができ、貯蔵中、湿気から保護される。水滴が容器に接触するときのみ、容器の壁は透過性を有するようになる。水が発生用物質に到達すると、例えば二酸化炭素が放出され、該二酸化炭素をハウジングの内部で検出できる。適した発生用物質は、ナトリウムと酸の混合物である。この物質は、水が接触すると、インジケータとして二酸化炭素を生成する。二酸化炭素は、赤外線センサを用いて良好に検出可能である。
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1のバリエーションにかかる水密性検査中の洗濯機のハウジングを示す図。
【図2】本発明にかかる方法の第2のバリエーションを実行するための容器の側面図。
【図3】フィルム層の2つのタイプの溶接を示す、図2の容器の平面図。
【図4】本発明にかかる方法の第3のバリエーションを実行する発生用物質によってコーティングされた基質から形成された材料を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、水密性が検査される構成要素11を有するハウジング10を示す。これらの構成要素には、例えば、ウォータジェット管111を介して洗剤室112に連結された石鹸水容器110がある。洗剤室112は、水供給部113に連結されている。さらに、構成要素は、石鹸水容器110と洗剤室112とを連結する石鹸水容器のベント管114を備えている。そして、排水管115は、その上端に排水口116を有し、その下端で石鹸水ポンプ117に連結されている。石鹸水容器110には、レベルを制御するセンサ118および水密性が検査される加熱要素シール119が設けられている。110〜119の全部品は、水密性検査を受ける構成要素11を形成する。これらの構成要素は、外気に一致する雰囲気ガスを有するハウジング10の内部12に収容されている。ハウジング10では、内部12が全ての側面で包囲されるが、内部の完全なガスシールは必要とされていない。内部12のインジケータ物質を検出できるように、内部が、ハウジング10の内部で画定されたガス空間を有する点が重要である。
【0017】
センサ13は、インジケータを検出するために設けられ、ライン14を介して内部12に接続されている。センサ13は、ハウジング10からガスを吸引し、該ガスを外気に排気できる吸引ポンプ(図示せず)を有している。センサは、INFICON GmbH社製、HLD5000型であってもよい。このセンサは、赤外線のキュベットである。
【0018】
水密性検査は、滴の形の少量の水が構成要素11から漏れるかどうかを示すことである。ハウジング10内の湿気の測定は、感度が十分でないか、または時間がかかり過ぎるだろう。本発明によれば、アルコール類のようなインジケータが、水に加えられる。構成要素11の水漏れ16によって落下する滴15は、床17に落下して弾ける。洗濯機の大きさの空間の中で、10%のエタノール/水の混合物の0.1mlの滴を、HLD5000型の装置によって3分以内に検出できる。ブロワによって、または洗濯機の駆動部(図示せず)によって、内部12の雰囲気ガスを対流させることは有利である。
【0019】
図2および3は、本発明にかかる方法の第2のバリエーションを実行する装置を示す。この装置は、キャリアフィルム21、および該キャリアフィルム上に配置された別のフィルムによって形成された壁22によって形成された容器20を備え、前記壁は、水が接触すると、透過性を有するようになる。キャリアフィルム21と壁22との間には、キャビティ23が存在する。キャビティ23は、インジケータで満たされている。壁22は、孤立させたスポット溶接点24で、または線状の溶接シーム部によって、キャリアフィルム21と連結されている。スポット溶接点の場合、同じ形のスペースが形成される。一方、分離されたフィルムポケットは、線状の溶接シーム部によって形成される。
【0020】
ポリビニルアルコール(PVOH、PVAL)のフィルムが、壁22に適した材料である。前記フィルムは、水溶性である。前記フィルムは、SOLUBLON(登録商標)やSOKUFOLという名前で市販されている。ポリビニルアルコールのフィルムは、多くのガスに対して気密性を有しており、機械的に比較的丈夫である。それらは、吸湿性を有していないが、外気の湿気とのバランスを確立する。すなわち、それらは、湿気を吸収し、再び放出する。それらは、市販のフィルム溶着機を用いて良好に溶着可能である。
【0021】
容器20の内部のインジケータとして、様々なガスを使用できる。前記様々なガスは、特に、不活性ガスや二酸化炭素である。
【0022】
フィルムバッグのように設計された柔軟性のある容器20は、ハウジングの底部に拡げられた水溶性ガスの貯蔵部を形成する。水滴が壁22に落下すると、インジケータがハウジングの内部の雰囲気ガスの中に漏れ出るように、壁22がインジケータを透過させるようになる。センサは、内部のインジケータの存在を検出する。
【0023】
図4は、第3のバリエーションを実行する装置30を示す。この装置は、キャリアフィルムの基質31を備えている。基質31は、水が接触するとガスのインジケータ33を放出する発生用物質を含むコーティング32を有する。2次元の装置30は、ハウジングの底部に配置されている。水滴が装置30に落下すると、発生用物質32は、ハウジングに連結されたセンサによって検出されるインジケータ33を生成する。
【0024】
インジケータガスは、化学反応によって発生する。例えば、発生用物質は、酒石酸ナトリウムの粉末(2NaHCO+C)である。水が加えられると、以下の反応が起こる。
【0025】
【化1】

【0026】
インジケータガスの二酸化炭素は、この反応によって生成される。このガスは、適切なセンサによって検出できる。
【0027】
炭酸水素ナトリウムの代わりに、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸カルシウムも使用できる。酒石酸の代わりに、他の酸や弱酸性物質も使用できる。
【符号の説明】
【0028】
10 ハウジング
11 構成要素
110 石鹸水容器
111 ウォータジェット管
112 洗剤室
113 水供給部
114 ベント管
115 排水管
116 排水口
117 石鹸水ポンプ
118 センサ
119 加熱要素シール
12 内部
13 センサ
14 ライン
15 滴
16 水漏れ
17 床
20 容器
21 キャリアフィルム
22 壁
23 キャビティ
24 スポット溶接点
30 装置
31 基質
32 コーティング
33 インジケータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(10)の水を導通する構成要素(11)の水密性を検査する方法であって、
前記構成要素(11)は、水とインジケータとを組み合わせたもので満たされ、
水滴が漏れた場合、前記水滴に含まれる前記インジケータは、前記ハウジング(10)に囲まれた雰囲気ガスに漏れ出し、前記インジケータに反応するセンサ(13)によって検出されることを特徴とするハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項2】
ハウジング(10)の水を導通する構成要素(11)の水密性を検査する方法であって、
インジケータは、水が接触すると、前記インジケータを透過させる少なくとも1つの壁(22)を有する容器(20)に導入され、
前記容器(20)は、検査中、前記構成要素(11)の下方の前記ハウジング(10)に配置され、前記インジケータの前記容器からの漏れは、前記インジケータに反応するセンサ(13)によって検出されることを特徴とするハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項3】
ハウジング(10)の水を導通する構成要素(11)の水密性を検査する方法であって、
水が接触すると、ガスのインジケータまたは蒸気のインジケータを生成する発生用物質(32)は、検査中、前記構成要素(11)の下方の前記ハウジング(10)に配置され、
前記インジケータの生成は前記インジケータに反応するセンサ(13)によって検出されることを特徴とするハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項4】
使用される前記インジケータは、水に溶解したガスであることを特徴とする請求項1に記載のハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項5】
使用される前記インジケータは、アルコールであることを特徴とする請求項1または2に記載のハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項6】
使用される前記インジケータは、不活性ガス、特にヘリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載のハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項7】
使用される前記インジケータは、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1または2に記載のハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項8】
前記容器は、コーティングを有するキャリアのマイクロカプセルによって形成され
水が接触すると、前記マイクロカプセルに包まれた物質が漏れ出すことができることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載のハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項9】
前記発生用物質(32)は基質に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項10】
前記発生用物質は、水が接触すると、前記発生用物質を透過させることができる少なくとも1つの壁を有する容器に収容されていることを特徴とする請求項3に記載のハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項11】
使用される前記発生用物質(32)は、水が接触すると、前記インジケータとして二酸化炭素を生成するナトリウムと酸の混合物であることを特徴とする請求項3に記載のハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項12】
使用される前記センサは、前記ハウジング(10)の内部の雰囲気ガスを検出する赤外部を有するガスセンサであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載のハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項13】
洗濯機や皿洗い機のような家電製品を検査する際、その使用によって検査することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載のハウジングの水を導通する構成要素の水密性を検査する方法。
【請求項14】
コーティングが塗布されたキャリア(21)を備える容器(30)であって、
前記コーティングは、水が接触するか、または水が前記容器(20,30)の上に落ちると、反応が開始される、請求項1ないし13のいずれか1項の方法を実行するための、インジケータであることを特徴とする容器。
【請求項15】
前記コーティングは、マイクロカプセルにより構成され、
水が接触すると、前記マイクロカプセルに包まれた物質が漏れ出すことができることを特徴とする請求項14に記載の容器。
【請求項16】
前記キャリア(21)は、フィルムや紙のような平らな材料によって形成されていることを特徴とする請求項14に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−512418(P2013−512418A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540346(P2012−540346)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066403
【国際公開番号】WO2011/064067
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(500469855)インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (43)
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D−50968 Koeln, Germany
【Fターム(参考)】