説明

ハウジング構造体

ハウジング構造体は、装着部(6)若しくは構造モジュール(6’)に保持された複数の光学素子(5)が、複数の接続部材(7)によって配置されたフレーム構造体(1)を有している。光学素子(5)は、取付け状態で、取着部若しくは構造モジュールと接続部材とが、支持ユニットしてフレーム構造体に一体的であるように、取着部(6)若しくは構造モジュール(6’)と接続部材(7)とによってフレーム構造体(1)に着脱可能に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取着部若しくは構造モジュールに保持されている幾つかの光学素子が、接続部材によって配置されているフレーム構造体を有するハウジング構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのハウジング構造体は、例えば、EP1278089A2に開示されている。このハウジング構造体は、フレーム部分と接続プレートとを有し、これらに、幾つかの光学素子が取着され、また、この目的のために、ボア、即ち開口部が部分的に形成されている。このハウジング構造体は、安定性のある自己支持ユニットをなしている。光学素子を装着部若しくは構造モジュールによって取着するために、取着部材を有した適切な補助構造体が必要である。このような取着はかなり複雑であり、更なる取付けスペースが接続のために必要である。フレーム構造体に接続された光学素子は、ハウジング構造体から分離した部分を実質的に構成し、従って、ハウジング構造体に動的作用を及ぼすことはない。さらに、熱作用と内部応力の作用とは、算出するのが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来技術の上述されたような欠点を防止し、特に、ハウジング構造体とこの中に配置された光学素子との間に単純で再現可能な接続を有するハウジング構造体を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、取付け状態で、取着部若しくは構造モジュールと接続部材とが、支持ユニットとしてフレーム構造体に一体的であるように、光学素子が、取着部若しくは構造モジュールと接続部材とによってフレーム構造体に着脱可能に接続されているときに、本発明に従って達成される。
【0005】
本発明のデザインによって、フレーム構造体を有したハウジング構造体と、接続部材に加えて装着部並びに構造モジュールを有した光学素子とのための、一様な機械支持構造体を得ることができる。従って、光学素子は、ハウジング構造体の安定性若しくは剛性に対して動作する。このことは、光学素子が挿入されることなく、ハウジング構造体が自身の自己支持性若しくは十分な安定性を有するのではなく、一体的な装填式支持ユニットが、光学素子の取付けの後に得られることを意味している。
【0006】
材料、重量、並びに取付けスペースを省くことに加えて、比較的明瞭で再現可能な接続部が、このような方法でフレーム構造体と光学素子との間に形成される。装着部、若しくは、下位群、即ち構造モジュールに個々に配置された個々の光学素子は、別々に構成され、事前調節され、テストされてから、適切なプレハブユニットとしてフレーム構造体に取り付けられ、このプロセスで適切に調節されることができる。
【0007】
光学素子は、運動学的に決定された形式で支持されることが好ましい。これは、例えば、6自由度で調節され得るセッティング部材によって果たされることができる。例えば6脚体が、この目的のために適している。
【0008】
さらに好ましい改良並びに開発点は、従属請求項と、図面を用いて原則的に説明された以下の例示的な実施形態とから明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1並びに2に示されているハウジング構造体は、幾つかのフレーム部分2と補強プレート3とで組み合わされたフレーム構造体1を有している。このフレーム構造体1には、複数の切欠部、即ち開口部4が形成されている。装着部6を有する光学素子5が、これら開口部4中に挿入されている。この目的のために、複数の接続部材(詳細には図示されず)7が設けられている。複数のセッティング部材、即ちアクチュエータ8が、基部として果たされ得る装着部6と、例えばミラー5のような光学素子5との間に配置されている。セッティング部材8のこのような配置並びに構造は、原理的に知られているので詳細に後述されない。これらセッティング部材8は、光学素子5を6自由度でできるだけ調節可能にすべきであり、またこの目的のために例えば6脚体(hexapods)として構成されることができる。
【0010】
図2は、例えばEP1278089A2により詳細に説明されているような、例えば、マイクロリソグラフィー(micro-lithography)の投影対象物9の対物ハウジングであり得るハウジング構造体を示している。この投影対象物9は、高精度が要求されている例えばEUVリソグラフィーのために設けられることができる。この場合、光学素子は、ミラー5、例えばダッシュを付けた5’を構成している。上方エリアでの図1並びに図2から見られ得るように、装着部6を有する複数の光学素子5は、フレーム構造体1の開口部4中にそれぞれ挿入されている。接続部材7と装着部6とは、装着部6を有する光学素子5の図示されているような取付け状態で、フレーム構造体1と共に支持ユニットを形成するか、非常に剛性な安定ユニットがこのような方法でもたらされるようにフレーム構造体と一体的であるように構成されている。
【0011】
図3は、フレーム部分2を有するフレーム構造体1の細部の拡大図を示しており、このフレーム部分に、ミラー5として構成された光学素子の装着部6が、例えば適切な部材(スペーサ)10によって接続されている。重力補償器11が、光学素子5と装着部6との間に配置されることができる。この重力補償器11は、光学素子5の重量を減じるという目的にかなっており、このために、セッティング部材、即ちアクチュエータ8が、光学素子5を調節するために比較的小さい力を加えるだけで良い。ローレンツ(Lorenz)アクチュエータ若しくは圧電部材が、例えば、アクチュエータ8として設けられることができる。1つ以上のアクチュエータが、各々の場合において、光学素子5を調節する目的からセッティング部材8として設けられている。さらに、前記装着部6には、光学素子5の位置を測定するためのセンサ12が設けられている。米国出願60/502,334は、これについての更なる情報を含んでいる。この情報は、前記出願全体の一部分である。
【0012】
各光学素子5のための単純な装着部6の代わりに、必要に応じて、構造モジュール6’をいわゆる下位群として設け、従って、幾つかの光学素子5が、例えば図2に示されているように構造モジュール6’によって構造モジュールに保持されることが可能である。見られ得るように、この場合は、構造モジュール6’は、横方向で互いに対向したフレーム部分2間に横方向の接続を与え、このようにしてフレーム構造体9に高い安定性を与えている。
【0013】
フレーム構造体1のフレーム部分2と、装着部6と、構造モジュール6’とは、特に、EUVリソグラフィーで生じた熱の場合に、内部応力が生じないように、ほぼ同じ熱膨張係数を少なくとも有する材料で構成されるべきである。同様の理由で、例えば結晶化ガラス(Schott Glasのゼロデュア(登録商標))のような、非常に低い熱膨張係数を有する材料が、使用されるべきである。
【0014】
図4は、図2の変形例のフレーム構造体9を示している。見られ得るように、このフレーム構造体9は幾つかのパーツに分割されており、装着部6若しくは構造モジュール6’を有する光学素子が、個々の構成部品と一体的である。適切な事前調節の後に、個々の構成部品9は、一体式の支持ユニットを形成するようにフレーム構造体9に組み合わされる。
【0015】
前記装着部6並びに/若しくは構造モジュールの様々な例が、図5ないし8に示され、また、各々のケースで、フレーム構造体1に接続されるための6つの取着ポイントを有している。アクチュエータ8によって装着部6にそれぞれ接続された光学素子5は、ここには図示されていない。
【0016】
矢印は自由度をそれぞれ示しており、接続ポイントは、これら自由度でフレーム構造体1にそれぞれしっかりと接続されている。この接続ポイントは、それぞれ他の方向若しくは自由度で「柔軟に(softly)」形成されている。このような構造によって、いわゆる運動学的な方向付け機構(kinematic bearing)が、6自由度並びに6支持方向で果たされる。
【0017】
矢印13によって図示されているように、支持方向付け機構は、この場合、フレーム構造体1の関連したプレート若しくは支柱の表面にそれぞれ位置するように選択されることが好ましいだろう。
【0018】
従って、これら矢印13、かくして力の方向(force direction)のコースは、各ケースにおいて、フレーム構造体1への取付けの位置並びに/若しくは場所によって、また、このポイントでのフレーム構造体、即ちフレームの支柱若しくはフレームの面のコースによって決定される。
【0019】
6自由度は、3座標(coordinate)方向への移動と、重心をそれぞれ通る3つの回転軸の各々を中心とした回転とに関連している。このことは、総合で6つの移動において、特に、空間座標系の軸方向の3つの成分の項での直線動と、3つの回転軸を中心とした3つの回転成分の項での回転動とが可能であることを意味している。
【0020】
図5ないし8は、力の方向との関係の同じ原理を示している。6自由度のための矢印13の方向は、取付けの位置のみの関数であり、様々な位置のための一例としてのみ図5ないし8に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】挿入された光学素子を収容するハウジング構造体の原理的な図を示している。
【図2】複数の光学素子を有するフレーム構造体の更なる構造を示している。
【図3】装着部に支持された光学素子を有するハウジング構造体の細部を示している。
【図4】分解された形式のフレーム構造体を示している。
【図5】取着ポイントを有する装着部/構造モジュールを示している。
【図6】取着ポイントを有する装着部/構造モジュールを示している。
【図7】取着ポイントを有する装着部/構造モジュールを示している。
【図8】取着ポイントを有する装着部/構造モジュールを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着部若しくは構造モジュールに保持されている複数の光学素子が、複数の接続部材によって配置されているフレーム構造体を有するハウジング構造体において、前記光学素子(5)は、取付け状態で、前記装着部若しくは構造モジュールと前記接続部材とが、支持ユニットとして前記フレーム構造体(1)と一体的であるように、前記装着部(6)若しくは構造モジュール(6’)と接続部材(7)とによって前記フレーム構造体(1)に着脱可能に接続されていることを特徴とするハウジング構造体。
【請求項2】
前記光学素子(5)は、基部部材(6)の形状の前記装着部(6)に支持されていることを特徴とする請求項1のハウジング構造体。
【請求項3】
前記装着部(6)若しくは構造モジュール(6’)には、セッティング部材(8)が設けられていることを特徴とする請求項1のハウジング構造体。
【請求項4】
アクチュエータ(8)が、前記セッティング部材として、前記光学素子(5)と、前記装着部(6)若しくは構造モジュール(6’)との間に設けられていることを特徴とする請求項3のハウジング構造体。
【請求項5】
前記光学素子(5)は、前記セッティング部材(8)によって6自由度で調節され得ることを特徴とする請求項3のハウジング構造体。
【請求項6】
調節部材(10)が、前記基部部材(6)とフレーム構造体(1)との間に配置されていることを特徴とする請求項2のハウジング構造体。
【請求項7】
前記装着部(6)若しくは構造モジュール(6’)は、前記接続部材によって6自由度で前記フレーム構造体(1)に固定して接続されていることを特徴とする請求項1のハウジング構造体。
【請求項8】
前記6自由度の力の少なくとも幾つかの方向は、前記フレーム構造体(1)のプレート面若しくは支柱面内にあることを特徴とする請求項1のハウジング構造体。
【請求項9】
重力補償器(11)が、前記光学素子(5)と、前記装着部(6)若しくは構造モジュール(6’)との間に配置されていることを特徴とする請求項1のハウジング構造体。
【請求項10】
前記フレーム構造体(1)と、前記装着部(6)若しくは構造モジュール(6’)と、前記接続部材(7)とは、ほぼ同じ熱膨張係数を少なくとも有していることを特徴とする請求項1のハウジング構造体。
【請求項11】
前記フレーム構造体(1)と、前記装着部(6)若しくは構造モジュール(6’)と、前記接続部材(7)とは、例えばゼロデュア若しくはキョウセラのような、熱膨張係数の低い材料で形成されることを特徴とする請求項10のハウジング構造体。
【請求項12】
マイクロリソグラフィーでの投影対象物のための対物ハウジング(9)としての構造によって特徴付けられている請求項1のハウジング構造体。
【請求項13】
前記対物ハウジング(9)は、EUVリソグラフィーのために設けられていることを特徴とする請求項12のハウジング構造体。
【請求項14】
ミラー(5)が、光学素子として前記対物ハウジング(9)内に設けられていることを特徴とする請求項13のハウジング構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−524129(P2007−524129A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500060(P2007−500060)
【出願日】平成16年4月20日(2004.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004235
【国際公開番号】WO2005/083487
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・アーゲー (435)
【Fターム(参考)】