ハニカム構造体及びその製造方法
【課題】高温環境下において、金属とセラミックとの機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の確保が可能なハニカム構造体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体10の表面に金属層からなる一対の電極11を設けてなるハニカム構造体1及びその製造方法である。金属層11は、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする表面金属層110と、ハニカム体10との境界部に形成される金属シリサイドからなる拡散層111とからなる。ハニカム構造体1は、ハニカム体10の表面に、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を配設した状態で加熱することにより製造することができる。
【解決手段】炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体10の表面に金属層からなる一対の電極11を設けてなるハニカム構造体1及びその製造方法である。金属層11は、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする表面金属層110と、ハニカム体10との境界部に形成される金属シリサイドからなる拡散層111とからなる。ハニカム構造体1は、ハニカム体10の表面に、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を配設した状態で加熱することにより製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体とその表面に形成された金属層からなる電極とを有するハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車輌の排ガス管内に設けられ、排ガス浄化に用いられる触媒コンバータがある。かかる触媒コンバータにおいては、例えばPt、Pd、Rh等の触媒が担持されたハニカム体が用いられるが、触媒の活性化には例えば温度400℃程度の加熱が必要になる。そのため、金属製のハニカム体や多孔質の炭化珪素からなるハニカム体に電極を形成してなる電気加熱式触媒コンバータ(EHC)が開発されている。
【0003】
金属と炭化珪素等のセラミックとの接合体において、セラミックと金属は用途に応じて様々な接合方法で接合される。特に、自動車の排気管内等のように高温酸化雰囲気で使用される用途においては、高温環境下でのセラミック体と金属体との機械的及び電気的接合信頼性の確保が要求される。
従来、例えばセラミックの表面に接合された金属薄層に酸化膜を形成した金属/セラミック接合体が提案されている(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−203158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動車の排気管内等のような高温酸化雰囲気において、炭化珪素等からなる多孔質のハニカム体に通電を行なうにあたっては、該ハニカム体を所望の触媒活性温度まで速やかにかつ均一に昇温させるように電極を形成する必要がある。そのため、ハニカム体に接合する電極には、耐熱性及び耐酸化性の他に、抵抗値が変動しないという電気的接合信頼性や、割れや剥離が生じないという機械的接合信頼性が要求される。
従来の接合体は、これらの特性を満足することはできない。
【0006】
また、EHC等の用途において重要な電気的接合信頼性を確保するためには、金属とセラミックスの接合界面を適切に形成する必要がある。しかしながら、従来においては、電気的接合信頼性を確保する接合形態は明らかにされておらず、電気的接合信頼性を確保する接合体の実現は困難であった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされてものであり、高温環境下において、金属とセラミックとの機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の確保が可能なハニカム構造体及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体の表面に金属層からなる一対の電極を設けてなるハニカム構造体であって、
上記金属層は、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする表面金属層と、上記ハニカム体との境界部に形成される金属シリサイドからなる拡散層とからなり、
上記拡散層の厚みは25〜150μmであり、
上記拡散層の厚みをt(μm)、上記ハニカム構造体の重量あたりの電力投入量をw(W/g)としたとき、t/wが2.3以上であることを特徴とするハニカム構造体にある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明のハニカム構造体の製造方法において、
上記ハニカム体の表面に、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を配設した状態で加熱することにより、上記ハニカム体の表面に、上記電極として、上記表面金属層と上記拡散層とからなる上記金属層を形成する電極形成工程を有することを特徴とするハニカム構造体の製造方法にある(請求項7)。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明のハニカム構造体は、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体の表面に、金属層からなる一対の電極を設けてなる。そして、上記金属層は、少なくともCrとFeとを含有しかつCr又はFeを主成分とする表面金属層と、上記ハニカム体との境界部に形成される金属シリサイドからなる拡散層とからなる。
そのため、上記ハニカム体と上記金属層との間の熱膨張係数差を小さくすることが可能になる。それ故、上記ハニカム構造体においては、高温環境下においても上記ハニカム体と上記金属体との間の熱応力を低減させ、機械的接合信頼性を十分に確保できる。また、Crは耐熱性の観点からも優位であり、上記金属層の耐熱性を確保することができる。
【0011】
また、上記ハニカム構造体においては、上記ハニカム体と上記金属層との上記境界部には、例えばCrシリサイド及びFeシリサイド等の金属シリサイドからなる上記拡散層が形成される。即ち、上記金属層は、金属シリサイドからなる上記拡散層によって上記ハニカム体に拡散接合されている。そのため、熱膨張係数が段階的に変化する傾斜層が形成され、高温環境下における熱応力を緩和させ、機械的接合信頼性を十分に確保することが可能になる。また、多孔質セラミックスからなる上記ハニカム体においては、比較的大きな厚みで上記拡散層を形成することができる。そのため、上記拡散層による熱応力の緩和効果が大きくなる。
また、上記ハニカム体の表面が電気抵抗の低い金属シリサイドからなる上記拡散層で形成されるため、上記ハニカム体と上記金属層からなる上記電極との電気的接合信頼性を向上させることができる。
【0012】
従来においても、金属とセラミックスとを拡散接合させることは提案されていた(特許文献1参照)が、具体的な拡散層の構成については示されていなかった。本発明においては、上記のごとく、金属シリサイドからなる上記拡散層を形成することにより、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を十分に確保できることを見出した。
【0013】
また、上記ハニカム構造体においては、上記拡散層の厚みが25〜150μmであり、該拡散層の厚みをt(μm)、上記ハニカム構造体の重量あたりの電力投入量をw(W/g)としたとき、t/wが2.3以上である。
そのため、上記ハニカム構造体は、該ハニカム構造体に急速加熱のために大電力を投入しても、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を十分に確保することが可能になる。それ故、上記ハニカム構造体は、比較的重量の大きな上記ハニカム構造体が必要とされる例えば自動車の電気加熱式触媒コンバータ(EHC)等の用途に好適である。
【0014】
このように、上記第1の発明によれば、高温環境下において、金属とセラミックとの機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の確保が可能なハニカム構造体を提供することができる。
【0015】
次に、上記第2の発明の製造方法においては、上記電極形成工程を行なうことにより、上記ハニカム体の表面に金属層からなる一対の電極を設けてハニカム構造体を製造する。
上記電極形成工程においては、上記ハニカム体の表面に、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を配設した状態で加熱する。
【0016】
そのため、上記電極形成工程においては、加熱により上記ハニカム体に接合する上記金属層からなる上記電極を形成できると共に、上記ハニカム体に含まれるSiと該ハニカム体の表面に配設した合金中に含まれるCr及びFeとを相互に拡散させることができる。それ故、上記ハニカム体の表面に、上記電極として、少なくともCrとFeとを含有しかつCr又はFeを主成分とする上記表面金属層と、Crシリサイド及びFeシリサイド等の金属シリサイドからなる上記拡散層とからなる上記金属層を形成することができる。
また、炭化珪素を主成分とする上記ハニカム体の表層を電気抵抗の低い金属シリサイドに変えることができる。そのため、電気的接合信頼性が高くなり、安定してハニカム体に電力を供給することが可能になる。
【0017】
上記表面金属層と上記拡散層とからなる上記金属層を上記ハニカム体に接合形成した上記ハニカム構造体は、上述のごとく、高温環境下において、金属とセラミックとの機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の確保が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実験例にかかる、接合体の断面を示す説明図。
【図2】実験例にかかる、金属粉末のペーストを塗布したセラミック体の断面を示す説明図。
【図3】実験例にかかる、金属及びその金属シリサイドの耐熱温度及び熱膨張係数を示す説明図。
【図4】実施例1にかかる、円柱形状のハニカム体の外周壁に対向する一対の電極を形成してなるハニカム構造体の斜視図。
【図5】実施例1にかかる、ハニカム構造体における金属層とハニカム体との接合部を拡大して示す説明図。
【図6】実施例1にかかる、ハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における断面を示す説明図。
【図7】実施例1にかかる、ハニカム構造体の電極とハニカム体との接合部について、走査型電子顕微鏡写真を示す説明図(a)、Siのエネルギー分散型蛍光X線分析結果を示す説明図(b)、Crのエネルギー分散型蛍光X線分析結果を示す説明図(c)、Feのエネルギー分散型蛍光X線分析結果を示す説明図(d)。
【図8】実施例1にかかる、ハニカム構造体に電圧を印加して電流を流したときの回路の概略を示す説明図。
【図9】実施例1にかかる、ハニカム体の軸方向に並べて形成した一対の電極を有するハニカム構造体の斜視図。
【図10】ハニカム体の電気抵抗値に対する金属層の抵抗値の割合と、5KWの電力を印加した際の剥離、破損の発生状況との関係を示す説明図。
【図11】実施例1にかかる、立方体形状のハニカム体の外周壁に対向する一対の電極を形成してなるハニカム構造体の斜視図。
【図12】実施例1にかかる、Cr−Fe合金におけるFeの配合と酸化増量率との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明のハニカム構造体の好ましい実施形態について説明する。
上記ハニカム構造体は、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体の表面に金属層からなる一対の電極を設けてなる。
【0020】
具体的には、例えば格子状に配された多孔質の隔壁と、該隔壁に囲まれて軸方向伸びる複数のセルと、外周側面を覆う筒状の外周壁とを有する上記ハニカム体の上記外周壁に上記一対の電極が形成されていることが好ましい。
この場合には、上記ハニカム構造体は、排ガスの浄化に用いられる電気加熱式触媒コンバータとして好適になる。
【0021】
上記ハニカム体としては、気孔率20〜70%、平均気孔径1〜30μmのものを用いることができる。この場合には、上記金属層の形成時に、大きな厚みで拡散層を形成することができる。そのため、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性をより一層向上させることができる。
気孔率が20%未満の場合には、ハニカムの重量が大きくなり、通電加熱時の昇温性が低下するおそれがある。一方、70%を越える場合、強度が低下する為、破損しやすくなおそれがある。また、平均気孔径が1μm未満の場合には、上記金属層の接地が困難になるおそれがある。一方、平均気孔径が30μmを超える場合には、クラックの起点となり、破損が発生するおそれがある。より好ましくは、気孔率は30〜50%がよく、平均気孔径は5〜15μmがよい。
上記のように所定範囲の気孔率及び平均気孔径のハニカム体を用いることにより、上述のように拡散層の厚みが25〜150μmで、t/wが2.3以上のハニカム構造体をより実現し易くなる。
気孔率及び平均気孔径は、水銀圧入式のポロシメータ(Shimadzu製の「オートポア」)を用いた水銀圧入法により測定することができる(測定範囲:0.5〜10000psia)。
【0022】
また、上記金属層は、上記表面金属層と上記拡散層とからなる。
該拡散層は、Crシリサイド及びFeシリサイド等からなる金属シリサイドにより形成される。
【0023】
上記拡散層の厚みは25〜150μmであることが好ましい。
厚み25μm以上の大きな拡散層を形成することにより、上記金属層と上記ハニカム体との接合界面付近において、熱膨張係数が段階的に変化する傾斜層を大きな幅で形成することができ、接合部の応力緩和効果を大きくすることができる。より好ましくは、上記拡散層の厚みは100μm以上がよい。
一方、上記拡散層の厚みが150μmを超える場合には、ハニカム体表面における抵抗値が低くなり、電極に電力を供給したときにハニカム体の温度を昇温させることが困難になる。そのため、上記拡散層の厚みは150μm以下が好ましい。
上記拡散層の厚みは走査型電子顕微鏡(SEM)観察及びエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)により測定することができる。
拡散層厚みの測定方法は400倍に拡大した視野内において、多孔質セラミックスからなるハニカム体の表層部に、多孔質セラミックスを構成する成分と金属層を構成する成分とを含む少なくとも2元素以上が同時に検出される層を等間隔に10点以上計測し、その平均値とすることができる。具体的には、ハニカム体の表層部に少なくともSi(多孔質セラミックスを構成する成分)とFe(金属層を構成する成分)を含む2元素以上が同時に検出される層を等間隔に10点以上計測し、その平均値を拡散層の厚みとすることができる。
【0024】
上記拡散層の厚みは、ハニカム体の気孔率及び平均細孔径を調整したり、ハニカム構造体の作製時にハニカム体の表面に配設する合金の厚み(量)、合金中のFeの配合割合、加熱時における加熱温度及び加熱時間を調整したりすることにより制御することができる。
具体的には、気孔率及び平均細孔径を大きくすることにより、拡散層の厚みを大きくすることができる。また、合金の厚みを大きくしたり、合金中のFeの配合割合を増やしたり、加熱時における加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりすることにより、拡散層の厚みを大きくすることができる。
【0025】
上記金属層の電気抵抗値は、上記ハニカム体の電気抵抗値の10%以下であることが好ましい(請求項2)
上記金属層の電気抵抗値が上記ハニカム体の電気抵抗値の10%を超える場合には、電極での発熱により金属層が剥離、破損するおそれがある。
図10に、ハニカム体への金属層形成条件を変え、金属層の抵抗値を変化させた場合において、5KWの電力を印加した際の剥離、破損の発生状況を示す。同図において、横軸は、ハニカム体のサンプルの種類(A〜J)を示し、縦軸は各サンプルのハニカム体の電気抵抗値に対する金属層の電気抵抗値の割合(金属層抵抗割合;%)を示す。また、剥離、破損が起こらなかった場合を「○」で示し、剥離、破損が起こった場合を「×」で示した。
図10より知られるごとく、金属層の抵抗値がハニカム体の電気抵抗値の10%を超える場合は金属層の剥離及び破損が発生するおそれがある。
【0026】
上記表面金属層は、Feを20〜70質量%含有する合金からなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、拡散係数の大きなFeを含有するため、上記拡散層が深く形成され、その厚み大きくすることができる。そのため、上述のように拡散層の厚みが25〜150μmで、t/wが2.3以上のハニカム構造体をより実現し易くなる。
【0027】
また、上記表面金属層は、Crを主成分とし、Feを20〜40質量%含有する合金からなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記表面金属層の熱膨張係数を小さくすることができ、熱応力緩和効果をより大きくすることができる。また、不導体膜を形成することができ、電極の耐食性を向上させることができる。また、拡散係数の大きなFeを含有するため、上記拡散層が深く形成され、その厚み大きくすることができる。
【0028】
上記表面金属層は、さらにAlを1〜7質量%含有する合金からなることが好ましい(請求項5)。
この場合には、不導体膜を形成させることができ、電極の耐食性をより向上させることができる。
【0029】
次に、上記ハニカム構造体は、上記電極に電力を供給し、電気加熱式触媒コンバータとして用いることが好ましい(請求項6)。
車輌の排ガス管に配置して排ガスの浄化に用いられる触媒コンバータにおいては、触媒の活性化のために温度400℃程度に加熱する必要がある。
本発明のハニカム構造体においては、上記電極に電力を供給して上記ハニカム体を加熱することにより、触媒活性を速やかに発揮させる電気加熱式触媒コンバータを実現することができる。かかる用途においては、上記ハニカム体の隔壁等に、Pt、Pd、Rh等からなる三元触媒を担持させることができる。
【0030】
また、上記ハニカム構造体は、電極形成工程を行なうことにより製造することができる。該電極形成工程においては、上記ハニカム体の表面に、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を配設した状態で加熱する。これにより、上記ハニカム体の表面に、上記電極として、上記表面金属層と上記拡散層とからなる上記金属層を形成することができる。
【0031】
上記ハニカム体の表面への合金の配設は、例えば溶射、メッキ、転写シート、印刷、ディスペンサ、インクジェット、刷毛塗布、蒸着、又は金属箔等により行なうことができる。これらの方法により、例えば膜状の金属を上記ハニカム体の表面に配設することができる。形成範囲が広いため、作業性などを考慮すると、溶射によって配設することが好ましい。また、合金粉末のペーストを塗布することにより配設することが好ましい。合金粉末ペーストの塗布は、インクジェット等により上記ハニカム体に直接印刷したり、ペーストを直接塗布する方法を採用することができる。また、予め転写シートに印刷し、この転写シートから上記ハニカム体の表面に配設することもできる。
【0032】
また、上記電極の厚みは、上記セラミック体への合金の付着量を調整することにより制御することができる。合金の付着量を増やすことにより、より厚みの大きな電極を形成することができる。
【0033】
また、上記電極形成工程における加熱は、例えば温度900〜1300℃で行なうことができる。
上記拡散層の厚みは、加熱温度及び加熱時間を調整することにより制御することができる。具体的には、加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりすることにより、より拡散層の厚みを大きくすることができる。そのため、上述のように拡散層の厚みが25〜150μmで、t/wが2.3以上のハニカム構造体をより実現し易くなる。
【0034】
また、電極の酸化を防止するという観点から、上記電極形成工程における加熱は、真空中又は不活性ガス中で行なうことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン等がある。
【実施例】
【0035】
(実験例)
本例においては、多孔体又は緻密体からなる基材の表面に各種金属電極材料を接合させた接合体を作製し、その機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の評価を行なう。
具体的には、図1に示すごとく、SiCからなる板状のセラミック体90(縦30mm×横30mm×厚さ5mm)と、その厚さ方向において対向する一対の表面にそれぞれ形成した金属からなる電極91(厚さ30μm)とを有する接合体9を作製する。また、接合体9においては、セラミック体90と電極91との間に金属シリサイドからなる拡散層92が形成される。
【0036】
本例においては、セラミック体90として、内部に多数の細孔を有する気孔率約40%の多孔質プレート、又は内部に細孔を有さない緻密質プレートを採用し、各セラミック体90の表面に、後述の表1に示す各金属電極材料からなる電極91を形成して、9種類の接合体9(試料X1〜試料X9)を作製した。
【0037】
各試料(試料X1〜試料X9)は、図2に示すごとく、セラミック体90の厚さ方向に対向する一対の表面に、各金属電極材料からなる金属粉末911のペースト910を塗布し、温度400℃で脱脂した後、真空中で温度1200℃で60分間加熱することにより作製した。
【0038】
試料X1は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてCr粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイドが形成される(図1参照)。
試料X2は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてCr−40Fe合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド及びFeシリサイドが形成される(図1参照)。
【0039】
試料X3は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてFe−25Cr−5Al合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド及びFeシリサイドが形成される(図1参照)。
試料X4は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてFe−20Ni−25Cr合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド、Feシリサイド、及びNiシリサイドが形成される(図1参照)。
【0040】
試料X5は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてNi−8.5Fe−15.5Cr合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド、Feシリサイド、及びNiシリサイドが形成される(図1参照)。
試料X6は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてW粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともWシリサイドが形成される(図1参照)。
試料X7は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてNi粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、Niシリサイドが形成される(図1参照)。
【0041】
また、試料X8は、セラミック体として緻密質プレートを採用し、金属電極材料としてCr−40Fe合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド及びFeシリサイドが形成される(図1参照)。
試料X9は、セラミック体として緻密質プレートを採用し、金属電極材料としてFe−25Cr−5Al合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド及びFeシリサイドが形成される(図1参照)。
【0042】
各金属粉末は、平均粒径D50が約5μmの粉末を採用した。平均粒径D50はレーザ回折式粒度分布測定装置にて測定した。
また、後述の表1に、各金属粉末の熱膨張係数を示す。熱膨張係数は、熱機械分析装置を用い、恒温保持測定方法(JIS Z2285)に基づいて測定した。
【0043】
次に、各試料(試料X1〜X9)の接合体について、以下のようにして機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の評価を行なった。
「機械的接合信頼性」
各試料(試料X1〜X9)を温度950℃で2分間保持し、次いで常温(約25℃)で2分間保持するという冷熱サイクルを1サイクルとし、この冷熱サイクルを1000サイクル繰り返し行なった(冷熱サイクル試験)。次いで、各試料の接合体について、電極の剥離を目視にて観察した。
電極の剥離が認められなかったものを「○」として評価し、ほぼ完全に剥離したものを「×」として評価し、剥離が認められるが完全に剥離しているわけではないものを「△」として評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
「電気的接合信頼性」
各試料(試料X1〜X9)を温度950℃の高温炉に500時間放置した(高温放置試験)。次いで、この高温放置試験及び上記冷熱サイクル試験を行なった各試料について、接合体の電気抵抗を測定した。電気抵抗は、後述のハニカム構造体(試料X26〜X32)の電気抵抗の評価と同様にして測定した。そして、試験前後における接合体の抵抗変化率が5%以下のものを「○」として評価し、100%以上のものを「×」として評価し、5%を超えかつ100%未満のものを「△」として評価した。その結果を表1に示す。なお、評価対象となる抵抗変化率は、冷熱サイクル試験後の試料及び高温放置試験後の試料のうち変化率が大きい方を対象とした。変化率が5%を超えてしまうと、同電力条件において、使用期間中に狙い通りの加熱が得られなくなってしまうため好適でない。
【0045】
【表1】
【0046】
表1より知られるごとく、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてCr−Fe合金を採用した試料X2及びFe−Cr−Al合金を採用した試料X3は、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性のいずれもが優れていた。
【0047】
ここで、図3に、本例において用いた各種金属、及び金属シリサイドの耐熱温度及び熱膨張係数をまとめたグラフを示す。
金属電極材料としてCrを採用した試料X1においては、図3より知られるごとく、Crシリサイドの熱膨張係数が大きいため、接合部の熱応力が大きくなり、電極の剥離が生じた。また、高温放置試験後に酸化が起り電気抵抗値が増大していた。したがって、表1に示すごとく、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性のいずれもが不十分であった。
【0048】
また、表1に示すごとく、Fe−Ni−Cr合金を採用した試料X4及びNi−Fe−Cr合金を採用した試料X5は、合金の熱膨張係数が大きく(図3参照)、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性のいずれもが不十分であった。
また、Wを採用した試料X6は、Wの熱膨張係数が小さいため(図3参照)、機械的接合信頼性を確保することができる。しかし、Wの耐熱温度が低いため(図3参照)、酸化し易く、表1に示すごとく、電気的接合信頼性を確保することができない。
【0049】
また、熱膨張係数の大きなNi(図3参照)を採用した試料X7は、Niの展性のため完全な剥離には至らなかったものの機械的接合信頼性が不十分であった。さらに、耐熱温度が低いため(図3参照)、酸化し易く、表1に示すごとく、電気的接合信頼性を確保することができなかった。
【0050】
これに対し、金属電極材料としてCr−Fe合金を採用した試料X2及びFe−Cr−Al合金を採用した試料X3においては、拡散層にCrシリサイドだけでなく、熱膨張係数の小さいFeシリサイド(図3参照)が形成されるため、拡散層の熱膨張を小さくして剥離を防止できると共に、Crの酸化を防止することできる。よって、上述のごとく機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性に優れる。また、Cr及びFeの他にAlを含有する試料X3においては、耐酸化性が向上する。
このように、多孔質プレートにおいては、Cr−Fe合金及びFe−Cr−Al合金を用いることにより、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を確保できることがわかる。
【0051】
一方、Cr−Fe合金を緻密質プレートに適用した試料X8、及びFe−Cr−Al合金を緻密質プレートに適用した試料X9においては、剥離が生じ、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を確保することができなかった。これは、緻密体であるため、多孔質体の場合ほど拡散が進行し難く、拡散層の厚みを十分に大きくできなかったためである。
【0052】
また、試料X2及び試料X3においては、セラミック体90と電極91との接合界面に厚さ約30μmの拡散層92が形成されており、その拡散層92の厚みは試料X8及び試料X9よりも大きいことを走査型電子顕微鏡(SEM)により確認している。さらに、拡散層92においては、Crシリサイド及びFeシリサイドが形成されていることをエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)により確認している。
【0053】
以上のように、本例によれば、多孔質セラミックスに、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を接合させることにより、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を確保できる接合体が得られることがわかる。
【0054】
(実施例1)
次に、本例においては、ハニカム体の表面に電極を形成したハニカム構造体を作製する例である。
図4〜図6に示すごとく、本例のハニカム構造体1は、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体10の表面に金属層からなる一対の電極11(11a、11b)を設けてなる。図5に示すごとく、金属層11は、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする表面金属層110と、ハニカム体10との境界部に形成される金属シリサイドからなる拡散層111とからなる。
【0055】
図4〜図6に示すごとく、本例においてハニカム体10は、四角格子状に配された多孔質の隔壁101と、この隔壁101に囲まれて軸方向伸びる多数のセル102と、外周側面を覆う筒状の外周壁100とを有する。ハニカム体10は、直径φ93mm×長さ100mmの円柱形状であり、外周壁100の厚みは300μm、隔壁101の厚みは170μm、セル102のピッチ幅は1100μmである。また、ハニカム体の気孔率は40%であり、平均細孔径は10μmである。
【0056】
図4及び図6に示すごとく、金属層からなる一対の電極11は、ハニカム体10の外周壁100を挟むように、ハニカム体10の径方向に対称に形成されている。また、各電極11は、図6に示すごとく、ハニカム構造体11の軸方向と垂直な断面におけるハニカム体10の中心と、ハニカム体10の外周壁100に形成された各電極11の両端部とをそれぞれ結ぶ線がなす中心角αが90°となるように形成されている。
【0057】
本例において、金属層11における表面金属層110は、Cr−40Fe合金からなり、拡散層111においては、Crシリサイド及びFeシリサイドが形成される。
表面金属層110及び拡散層111の厚みは、30μmである。
【0058】
ハニカム体10の隔壁101にはPt、Pd、Rh等からなる三元触媒を担持させることができる。そして、ハニカム構造体1は、図1に示すごとく、外部電源5から一対の電極11に電力を供給することにより、ハニカム体10を加熱することができる。これにより、ハニカム構造体1は、電気加熱式触媒コンバータとして用いられる。
【0059】
本例のハニカム構造体1は、電極形成工程を行なうことにより製造することができる。
即ち、ハニカム体10の表面に、Cr−40Fe合金を配設した状態で加熱する。これにより、ハニカム体10の表面に、電極として、表面金属層110と拡散層111とからなる金属層11を形成することができる(図5参照)。
【0060】
具体的には、まず、SiCの多孔体からなるハニカム体10を準備し、その多孔質の外周壁100にCr−40Fe合金粉末を溶射して配設した。次いで、温度1200℃で60分間加熱した。これにより、合金粉末が焼結し、ハニカム体10の外周壁100に一対の金属層からなる電極11を接合形成することができる。また、この接合時には、合金に含まれるCr及びFeと、ハニカム体10に含まれるSiとが相互に拡散する。そのため、電極11として、表面金属層110と拡散層111とからなる金属層を形成することができる(図5参照)。このようにして得られたハニカム構造体を試料X10とする。
【0061】
また、本例においては、Cr−40Fe合金粉末の代わりに、Fe−25Cr−5Al合金粉末を用い、その他は上記試料X10と同様にして、ハニカム構造体を作製した。これを試料X11とする。
試料X10及び試料X11のハニカム構造体の作製に用いた合金、即ち、Cr−Fe合金及びFe−Cr−Al合金は、上述の実験例において、多孔質プレートにおいて機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の確保が確認された合金材料である。
【0062】
次に、上記試料X10及び試料X11についても上述の実験例と同様にして、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2より知られるごとく、多孔質のハニカム体を用いた試料X10及び試料X11においても、上記実験例の試料X2及び試料X3と同様に、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を確保できることがわかる。
【0065】
また、本例においては、試料X10のハニカム構造体1について、電極11とハニカム体10との接合部(接合界面)の状態を調べた(図5参照)。
具体的には、接合界面を含む電極とハニカム体との接合部分を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果を図7(a)に示す。また、Si、Cr、及びFeの各元素についてエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を行い、Siについての結果を図7(b)に、Crについての結果を図7(c)に、Feについての結果を図7(d)にそれぞれ示す。拡散層の検出については、金属層へのSi拡散範囲とハニカム体へのFe及びCrの拡散範囲を検出し、この間を拡散層とした。
【0066】
図7(a)に示すごとく、接合部には、拡散層が形成されており、電極とハニカム体とが拡散接合されていることがわかる。
また、図7(b)〜(d)に示すごとく、拡散層においては、セラミック体成分であるSiと金属体成分であるCr及びFeとが相互に拡散して、Crシリサイド及びFeシリサイドからなる金属シリサイドが形成されていることがわかる。
【0067】
したがって、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体の表面に、金属層からなる一対の電極を設けてなるハニカム構造体において、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする表面金属層と、金属シリサイドからなる拡散層とからなる上記金属層を形成することにより、ハニカム構造体の機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を十分に確保できることがわかる。
【0068】
次に、本例においては、拡散層の厚みの影響を調べるため、後述の表3に示すごとく、拡散層の厚みが異なる10種類のハニカム構造体(試料X12〜X21)を作製した。
本例において、拡散層の厚みは、電極形成工程における加熱時間を調整することにより制御した。各試料X12〜X21は、拡散層の厚みを変更した点を除いては上記試料X10と同様にして作製した。
【0069】
各試料X12〜X21について、実験例と同様に電気的接合信頼性の評価を行なった。但し、本例においては、ハニカム構造体の抵抗変化率が3%以下のものを「◎」として評価し、3%を超えかつ10%以下のものを「○」として評価し、10%を超え、30%以下のものを「△」として評価した。
変化率が10%を超える場合には、電極での発熱により電力が消費されてしまうおそれがある。また、電極の発熱により、電極が剥離するおそれがある。3%以下の場合には、電力の大部分がハニカム体で消費されることとなり、加熱性が好適であると共に、電極部での発熱がなく、電極の耐久性が向上する。
そして、表3に、拡散層の厚さと電気的接合信頼性と安定に接合できる金属層(表面金属層)の厚さとの関係を示す。なお、表面金属層の厚さは、50μm以上のものを「◎」として評価し、20μm以上かつ50μm未満のものを「○」として評価し、20μm未満のものを「△」として評価した。
【0070】
【表3】
【0071】
表3より知られるごとく、拡散層の厚みが小さい場合には、剥離などは認められないものの、電気的接合信頼性の低下が認められる。また、安定に形成できる表面金属層の厚さも小さく、電気加熱式触媒コンバータ用のハニカム構造体に要求される機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性が低下する。拡散層の厚みは、25μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。これにより、電気的接合信頼性だけでなく、機械的接合信頼性をより一層確保しつつ、表面金属層の厚みを十分に確保することができる。そのため、表面金属層からなる電極に外部電源等から電力を供給するためのリード線等の配設を容易に実施することができる。
【0072】
一方、拡散層の厚みが150μmを超える場合には、ハニカム体10の外周壁100周辺における隔壁101において、電気抵抗が小さくなるおそれがある(図5参照)。その結果、電極11に電力を供給してもハニカム体10を十分に加熱させることが困難になり、電気加熱式触媒コンバータに適用することが困難になるおそれがある。したがって、拡散層の厚みは150μm以下が好ましい。
【0073】
次に、通電による熱負荷に対する拡散層の接合信頼性への影響を調べた。
上記拡散層の接合信頼性は、図11に示すごとく、略立方体形状のハニカム体20の対向する面に一対の金属層21を形成してなるハニカム構造体2について評価を行った。
【0074】
具体的には、まず、上記試料X10の作製に用いた円柱状のハニカム体から1辺の長さが30mmの立方体形状のハニカム体20を切り出し、表面を研磨して平坦にした。
次いで、図11に示すごとく、立方体形状のハニカム体20の対向する一対の表面に、試料X10と同様に、Cr−40Fe合金を配設し、この状態で加熱することにより、表面金属層と拡散層とからなる一対の金属層(電極)21を形成した。このとき、加熱時間を調整することにより拡散層の厚みが異なる複数のハニカム構造体を作製した。これらを試料X33〜X37とする。
【0075】
試料X33は、拡散層の厚み20μmのハニカム構造体である。また、試料X34は、拡散層の厚み40μmのハニカム構造体である。また、試料X35は、拡散層の厚み57μmのハニカム構造体である。試料X36は、拡散層の厚み78μmのハニカム構造体である。試料X37は、拡散層の厚み100μmのハニカム構造体である。
各試料の拡散層の厚みを後述の表4に示す。
【0076】
次いで、各試料X33〜X37に、外部電源5から所定量の電力を20秒間供給した(図11参照)。そして、2.5W/gずつ電力投入量を大きくし、20秒間の電力供給時に電極の剥離や破損が生じたときに、その直前の投入電力(W/g)を記録し、これを最大投入電力w(W/g)とした。そして、拡散層の厚みt(μm)、最大投入電力w(W/g)、及びt/wの関係を調べた。その結果を表4に示す。
なお、本例においては、上述のごとく、立方形状のハニカム体を用いた。これは、立方形状を採用することにより、一対の金属層同士が平行関係となり、形状因子による発熱の偏りを防ぐためである。また、電力の供給時間を20秒間としたが、これは、実使用環境上、ハニカム体を目的温度までに通電加熱する時間を考慮して設定したものである。
【0077】
【表4】
【0078】
表4より知られるごとく、拡散層の厚みを大きくするにつれて、より大きな電力印加に耐えうることが明らかとなった。
これは電力印加量の増加に従い、時間あたりの温度上昇が急峻となるが、応力緩和層となる拡散層を大きな厚みで設けることにより、熱勾配による応力を緩和せしめているからである。
具体的には拡散層の厚みt(μm)とハニカムの重量あたりの電力印加量w(W/g)の比t/wが2.3以上であることが好ましい。なお、試料X37のサンプルについては電力量を大きくするにあたり、電極部ではなく、ハニカム体の内部が破損したため、t/wは参考値である。表4より知られるごとく、t/wが2.3以上という関係を満足させる事によって、使用する電力量に応じた接合信頼性の高い構造を得られることがわかる。
【0079】
次に、ハニカム構造体の作製時にハニカム体の表面に配設するCr−Fe合金におけるFeの配合割合(質量%)を変えて4種類のハニカム構造体(試料X22〜X25)を作製し、これらのハニカム構造体における拡散層の厚さを比較した。
後述の表5に示すごとく、試料X22は、Cr−20Fe合金粉末を用いて作製したハニカム構造体である。試料X22は、Cr−20Fe合金粉末を用いた点を除いては、上記試料X10と同様にして作製したハニカム構造体である。
また、試料X23は、Cr−40Fe合金粉末を用いて作製したハニカム構造体である。即ち、試料X23は、上記試料X10と同様にして作製したハニカム構造体である。
【0080】
試料X24は、Cr−55Fe合金粉末を用いて作製したハニカム構造体である。試料X24は、Cr−55Fe合金粉末を用いた点を除いては、上記試料X10と同様にして作製したハニカム構造体である。
試料X25は、Cr−70Fe合金粉末を用いて作製したハニカム構造体である。試料X25は、Cr−70Fe合金粉末を用いた点を除いては、上記試料X10と同様にして作製したハニカム構造体である。
【0081】
各試料X22〜X25のハニカム構造体について、拡散層の厚さ比を求めた。拡散層の厚さ比は、Cr−40Feを採用した試料X23の拡散層の厚さを1としたときの各試料の拡散層の相対的な厚さである。その結果を表5に示す。
【0082】
また、Cr−Fe合金について、Feの配合割合(質量%)と、酸化増量率(%)との関係を調べた。
酸化増量率は、次のようにして測定した。
即ち、まず、上述の実験例と同様にして、気孔率約40%のSiCからなる多孔質プレートの表面に、Feの配合割合が異なるCr−Fe合金からなる一対の電極(金属層)を形成した。そして、電極を形成したこれらの多孔質プレートを温度950℃まで加熱し、加熱前後における重量増加分Aを測定した。また、電極を形成してない多孔質プレートを準備し、この多孔質プレートについても温度950℃まで加熱して加熱前後における重量増加分Bを測定した。この重量増加分Bは、SiC自体の酸化による重量増量分である。そして、重量増加分Aと重量増加分Bとの差(重量増加分A−重量増加分B)を算出することにより、電極部分のみの酸化による重量増加分Cを算出した。そして、多孔質プレートに形成した電極の重量をDとすると、C/D×100を算出して、これを金属層の酸化増量率とした。
その結果を図12に示す。図12において、横軸はCr−Fe合金におけるFeの配合割合(質量%)を示し、縦軸は酸化増量率(%)を示す。
【0083】
【表5】
【0084】
Feは、拡散係数がCrよりも大きいため、表5に示すごとく、Cr−Fe合金中のFeの配合割合を増やすことにより、拡散層の厚みを大きくすることができる。但し、図12より知られるごとく、Feの配合割合が20質量%未満の場合又は70質量%を超える場合には、形成される電極の耐酸化性が低下し、電極自体が酸化しやすくなる。そのため、合金中のFeの含有量は20〜70質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%がよい。
【0085】
次に、表面金属層の厚みの異なる複数のハニカム構造体を作製し、これらの電極抵抗の評価を行なった。
具体的には、ハニカム体の表面に配設するCr−40Fe合金粉末の量を調整することにより、後述の表6に示すごとく、表面金属層の厚みの異なる7種類のハニカム構造体(試料X26〜X32)を作製した。各試料のハニカム構造体は、Cr−40Fe合金粉末の量を変えて表面金属層の厚みを変更した点を除いては上記試料X10と同様にして作製した。
【0086】
次に、各試料X26〜X32のハニカム構造体について、以下のようにして電極抵抗の評価を行なった。
「電極抵抗」
ハニカム構造体1の外周壁100に形成された一対の電極11間に電圧を印加して、ハニカム構造体1に1Aの電流を流す(図4参照)。このとき、金属層からなる一対の電極11の電気抵抗をそれぞれr1、r1’とし、電極11とハニカム体10との接合界面の電気抵抗をそれぞれr2、r2’とし、ハニカム体の電気抵抗をr3とすると、一対の電極11間に電圧を印加してハニカム構造体1に電流I(I=1A)を流したときの回路は、図8のようになる。ハニカム構造体に1Aの電流を流しながら所望のポイントの電位差をデジタルボルトメーターで測定する。これにより、接合界面抵抗を含む電極抵抗R1、R1’又はハニカム体の電気抵抗R2を区別して測定することができる。そして、一対の電極抵抗R1、R1’の両方を測定し、これらの合計値を電極抵抗とし、(R1+R1’)/R×100という式から、ハニカム構造体の抵抗(R)に対する電極抵抗(R1+R1’)の割合(百分率)を求めた。
【0087】
電極抵抗がハニカム構造体の電気抵抗の10%を超える場合を「×」として評価し、3%以下の場合を「◎」として評価し、3%を超えかつ10%以下の場合を「○」として評価した。その結果を表6に示す。電気抵抗が3%以下の場合、電力の大部分がハニカム体で消費されることとなり、加熱性が好適であると共に、電極部での発熱がなく、電極の耐久性をより向上させることができる。
【0088】
【表6】
【0089】
表6より知られるごとく、2μmという厚みの小さな表面金属層を形成した試料X26においては、拡散層の厚みが小さくなり、接合界面抵抗を十分に抑制することができず、電極の抵抗が高くなっていた。また、200μmという厚みの大きな表面金属層を形成した試料X32においては、表面金属層の厚みが増大したことによる抵抗値の増加が認められ、電極抵抗が増加傾向に転じていた。したがって、表面金属層の厚みは5μm以上かつ200μm未満であることが好ましく、より好ましくは20μm以上かつ100μm以下がよい。
【0090】
また、本例において作製したハニカム構造体(試料X10〜試料X32)においては、図4に示すごとく、金属層からなる一対の電極11a、11bを、ハニカム体10の外周壁100を挟むように、ハニカム体10の径方向に対称に形成したが、例えば図9に示すごとく、一対の電極11a、11bをハニカム体10の軸方向(セル102の伸長方向)に並べて形成することもできる。
【0091】
即ち、図9に示すハニカム構造体3においては、一対の電極11a、11bはそれぞれハニカム体10の円筒状の外周壁100を周回するように形成されている。そして、電極11aは、ハニカム体の軸方向の一方の端部側に形成されており、電極11bは、他方の端部側に形成されている。
【0092】
かかるハニカム構造体3(図9参照)においても、図4に示す上述のハニカム構造体1と同様に、本発明の条件を採用することにより、同様の作用効果を得ることができる。そして、図9に示すハニカム構造体3においても、一対の電極11a、11b間に外部電源5から電圧を印加することにより、ハニカム体10を加熱することができる。これにより、ハニカム構造体3を電気加熱式触媒コンバータとして用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
1 ハニカム構造体
10 ハニカム体
11 金属層(電極)
110 表面金属層
111 拡散層
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体とその表面に形成された金属層からなる電極とを有するハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車輌の排ガス管内に設けられ、排ガス浄化に用いられる触媒コンバータがある。かかる触媒コンバータにおいては、例えばPt、Pd、Rh等の触媒が担持されたハニカム体が用いられるが、触媒の活性化には例えば温度400℃程度の加熱が必要になる。そのため、金属製のハニカム体や多孔質の炭化珪素からなるハニカム体に電極を形成してなる電気加熱式触媒コンバータ(EHC)が開発されている。
【0003】
金属と炭化珪素等のセラミックとの接合体において、セラミックと金属は用途に応じて様々な接合方法で接合される。特に、自動車の排気管内等のように高温酸化雰囲気で使用される用途においては、高温環境下でのセラミック体と金属体との機械的及び電気的接合信頼性の確保が要求される。
従来、例えばセラミックの表面に接合された金属薄層に酸化膜を形成した金属/セラミック接合体が提案されている(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−203158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動車の排気管内等のような高温酸化雰囲気において、炭化珪素等からなる多孔質のハニカム体に通電を行なうにあたっては、該ハニカム体を所望の触媒活性温度まで速やかにかつ均一に昇温させるように電極を形成する必要がある。そのため、ハニカム体に接合する電極には、耐熱性及び耐酸化性の他に、抵抗値が変動しないという電気的接合信頼性や、割れや剥離が生じないという機械的接合信頼性が要求される。
従来の接合体は、これらの特性を満足することはできない。
【0006】
また、EHC等の用途において重要な電気的接合信頼性を確保するためには、金属とセラミックスの接合界面を適切に形成する必要がある。しかしながら、従来においては、電気的接合信頼性を確保する接合形態は明らかにされておらず、電気的接合信頼性を確保する接合体の実現は困難であった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされてものであり、高温環境下において、金属とセラミックとの機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の確保が可能なハニカム構造体及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体の表面に金属層からなる一対の電極を設けてなるハニカム構造体であって、
上記金属層は、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする表面金属層と、上記ハニカム体との境界部に形成される金属シリサイドからなる拡散層とからなり、
上記拡散層の厚みは25〜150μmであり、
上記拡散層の厚みをt(μm)、上記ハニカム構造体の重量あたりの電力投入量をw(W/g)としたとき、t/wが2.3以上であることを特徴とするハニカム構造体にある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明のハニカム構造体の製造方法において、
上記ハニカム体の表面に、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を配設した状態で加熱することにより、上記ハニカム体の表面に、上記電極として、上記表面金属層と上記拡散層とからなる上記金属層を形成する電極形成工程を有することを特徴とするハニカム構造体の製造方法にある(請求項7)。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明のハニカム構造体は、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体の表面に、金属層からなる一対の電極を設けてなる。そして、上記金属層は、少なくともCrとFeとを含有しかつCr又はFeを主成分とする表面金属層と、上記ハニカム体との境界部に形成される金属シリサイドからなる拡散層とからなる。
そのため、上記ハニカム体と上記金属層との間の熱膨張係数差を小さくすることが可能になる。それ故、上記ハニカム構造体においては、高温環境下においても上記ハニカム体と上記金属体との間の熱応力を低減させ、機械的接合信頼性を十分に確保できる。また、Crは耐熱性の観点からも優位であり、上記金属層の耐熱性を確保することができる。
【0011】
また、上記ハニカム構造体においては、上記ハニカム体と上記金属層との上記境界部には、例えばCrシリサイド及びFeシリサイド等の金属シリサイドからなる上記拡散層が形成される。即ち、上記金属層は、金属シリサイドからなる上記拡散層によって上記ハニカム体に拡散接合されている。そのため、熱膨張係数が段階的に変化する傾斜層が形成され、高温環境下における熱応力を緩和させ、機械的接合信頼性を十分に確保することが可能になる。また、多孔質セラミックスからなる上記ハニカム体においては、比較的大きな厚みで上記拡散層を形成することができる。そのため、上記拡散層による熱応力の緩和効果が大きくなる。
また、上記ハニカム体の表面が電気抵抗の低い金属シリサイドからなる上記拡散層で形成されるため、上記ハニカム体と上記金属層からなる上記電極との電気的接合信頼性を向上させることができる。
【0012】
従来においても、金属とセラミックスとを拡散接合させることは提案されていた(特許文献1参照)が、具体的な拡散層の構成については示されていなかった。本発明においては、上記のごとく、金属シリサイドからなる上記拡散層を形成することにより、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を十分に確保できることを見出した。
【0013】
また、上記ハニカム構造体においては、上記拡散層の厚みが25〜150μmであり、該拡散層の厚みをt(μm)、上記ハニカム構造体の重量あたりの電力投入量をw(W/g)としたとき、t/wが2.3以上である。
そのため、上記ハニカム構造体は、該ハニカム構造体に急速加熱のために大電力を投入しても、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を十分に確保することが可能になる。それ故、上記ハニカム構造体は、比較的重量の大きな上記ハニカム構造体が必要とされる例えば自動車の電気加熱式触媒コンバータ(EHC)等の用途に好適である。
【0014】
このように、上記第1の発明によれば、高温環境下において、金属とセラミックとの機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の確保が可能なハニカム構造体を提供することができる。
【0015】
次に、上記第2の発明の製造方法においては、上記電極形成工程を行なうことにより、上記ハニカム体の表面に金属層からなる一対の電極を設けてハニカム構造体を製造する。
上記電極形成工程においては、上記ハニカム体の表面に、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を配設した状態で加熱する。
【0016】
そのため、上記電極形成工程においては、加熱により上記ハニカム体に接合する上記金属層からなる上記電極を形成できると共に、上記ハニカム体に含まれるSiと該ハニカム体の表面に配設した合金中に含まれるCr及びFeとを相互に拡散させることができる。それ故、上記ハニカム体の表面に、上記電極として、少なくともCrとFeとを含有しかつCr又はFeを主成分とする上記表面金属層と、Crシリサイド及びFeシリサイド等の金属シリサイドからなる上記拡散層とからなる上記金属層を形成することができる。
また、炭化珪素を主成分とする上記ハニカム体の表層を電気抵抗の低い金属シリサイドに変えることができる。そのため、電気的接合信頼性が高くなり、安定してハニカム体に電力を供給することが可能になる。
【0017】
上記表面金属層と上記拡散層とからなる上記金属層を上記ハニカム体に接合形成した上記ハニカム構造体は、上述のごとく、高温環境下において、金属とセラミックとの機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の確保が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実験例にかかる、接合体の断面を示す説明図。
【図2】実験例にかかる、金属粉末のペーストを塗布したセラミック体の断面を示す説明図。
【図3】実験例にかかる、金属及びその金属シリサイドの耐熱温度及び熱膨張係数を示す説明図。
【図4】実施例1にかかる、円柱形状のハニカム体の外周壁に対向する一対の電極を形成してなるハニカム構造体の斜視図。
【図5】実施例1にかかる、ハニカム構造体における金属層とハニカム体との接合部を拡大して示す説明図。
【図6】実施例1にかかる、ハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における断面を示す説明図。
【図7】実施例1にかかる、ハニカム構造体の電極とハニカム体との接合部について、走査型電子顕微鏡写真を示す説明図(a)、Siのエネルギー分散型蛍光X線分析結果を示す説明図(b)、Crのエネルギー分散型蛍光X線分析結果を示す説明図(c)、Feのエネルギー分散型蛍光X線分析結果を示す説明図(d)。
【図8】実施例1にかかる、ハニカム構造体に電圧を印加して電流を流したときの回路の概略を示す説明図。
【図9】実施例1にかかる、ハニカム体の軸方向に並べて形成した一対の電極を有するハニカム構造体の斜視図。
【図10】ハニカム体の電気抵抗値に対する金属層の抵抗値の割合と、5KWの電力を印加した際の剥離、破損の発生状況との関係を示す説明図。
【図11】実施例1にかかる、立方体形状のハニカム体の外周壁に対向する一対の電極を形成してなるハニカム構造体の斜視図。
【図12】実施例1にかかる、Cr−Fe合金におけるFeの配合と酸化増量率との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明のハニカム構造体の好ましい実施形態について説明する。
上記ハニカム構造体は、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体の表面に金属層からなる一対の電極を設けてなる。
【0020】
具体的には、例えば格子状に配された多孔質の隔壁と、該隔壁に囲まれて軸方向伸びる複数のセルと、外周側面を覆う筒状の外周壁とを有する上記ハニカム体の上記外周壁に上記一対の電極が形成されていることが好ましい。
この場合には、上記ハニカム構造体は、排ガスの浄化に用いられる電気加熱式触媒コンバータとして好適になる。
【0021】
上記ハニカム体としては、気孔率20〜70%、平均気孔径1〜30μmのものを用いることができる。この場合には、上記金属層の形成時に、大きな厚みで拡散層を形成することができる。そのため、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性をより一層向上させることができる。
気孔率が20%未満の場合には、ハニカムの重量が大きくなり、通電加熱時の昇温性が低下するおそれがある。一方、70%を越える場合、強度が低下する為、破損しやすくなおそれがある。また、平均気孔径が1μm未満の場合には、上記金属層の接地が困難になるおそれがある。一方、平均気孔径が30μmを超える場合には、クラックの起点となり、破損が発生するおそれがある。より好ましくは、気孔率は30〜50%がよく、平均気孔径は5〜15μmがよい。
上記のように所定範囲の気孔率及び平均気孔径のハニカム体を用いることにより、上述のように拡散層の厚みが25〜150μmで、t/wが2.3以上のハニカム構造体をより実現し易くなる。
気孔率及び平均気孔径は、水銀圧入式のポロシメータ(Shimadzu製の「オートポア」)を用いた水銀圧入法により測定することができる(測定範囲:0.5〜10000psia)。
【0022】
また、上記金属層は、上記表面金属層と上記拡散層とからなる。
該拡散層は、Crシリサイド及びFeシリサイド等からなる金属シリサイドにより形成される。
【0023】
上記拡散層の厚みは25〜150μmであることが好ましい。
厚み25μm以上の大きな拡散層を形成することにより、上記金属層と上記ハニカム体との接合界面付近において、熱膨張係数が段階的に変化する傾斜層を大きな幅で形成することができ、接合部の応力緩和効果を大きくすることができる。より好ましくは、上記拡散層の厚みは100μm以上がよい。
一方、上記拡散層の厚みが150μmを超える場合には、ハニカム体表面における抵抗値が低くなり、電極に電力を供給したときにハニカム体の温度を昇温させることが困難になる。そのため、上記拡散層の厚みは150μm以下が好ましい。
上記拡散層の厚みは走査型電子顕微鏡(SEM)観察及びエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)により測定することができる。
拡散層厚みの測定方法は400倍に拡大した視野内において、多孔質セラミックスからなるハニカム体の表層部に、多孔質セラミックスを構成する成分と金属層を構成する成分とを含む少なくとも2元素以上が同時に検出される層を等間隔に10点以上計測し、その平均値とすることができる。具体的には、ハニカム体の表層部に少なくともSi(多孔質セラミックスを構成する成分)とFe(金属層を構成する成分)を含む2元素以上が同時に検出される層を等間隔に10点以上計測し、その平均値を拡散層の厚みとすることができる。
【0024】
上記拡散層の厚みは、ハニカム体の気孔率及び平均細孔径を調整したり、ハニカム構造体の作製時にハニカム体の表面に配設する合金の厚み(量)、合金中のFeの配合割合、加熱時における加熱温度及び加熱時間を調整したりすることにより制御することができる。
具体的には、気孔率及び平均細孔径を大きくすることにより、拡散層の厚みを大きくすることができる。また、合金の厚みを大きくしたり、合金中のFeの配合割合を増やしたり、加熱時における加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりすることにより、拡散層の厚みを大きくすることができる。
【0025】
上記金属層の電気抵抗値は、上記ハニカム体の電気抵抗値の10%以下であることが好ましい(請求項2)
上記金属層の電気抵抗値が上記ハニカム体の電気抵抗値の10%を超える場合には、電極での発熱により金属層が剥離、破損するおそれがある。
図10に、ハニカム体への金属層形成条件を変え、金属層の抵抗値を変化させた場合において、5KWの電力を印加した際の剥離、破損の発生状況を示す。同図において、横軸は、ハニカム体のサンプルの種類(A〜J)を示し、縦軸は各サンプルのハニカム体の電気抵抗値に対する金属層の電気抵抗値の割合(金属層抵抗割合;%)を示す。また、剥離、破損が起こらなかった場合を「○」で示し、剥離、破損が起こった場合を「×」で示した。
図10より知られるごとく、金属層の抵抗値がハニカム体の電気抵抗値の10%を超える場合は金属層の剥離及び破損が発生するおそれがある。
【0026】
上記表面金属層は、Feを20〜70質量%含有する合金からなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、拡散係数の大きなFeを含有するため、上記拡散層が深く形成され、その厚み大きくすることができる。そのため、上述のように拡散層の厚みが25〜150μmで、t/wが2.3以上のハニカム構造体をより実現し易くなる。
【0027】
また、上記表面金属層は、Crを主成分とし、Feを20〜40質量%含有する合金からなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記表面金属層の熱膨張係数を小さくすることができ、熱応力緩和効果をより大きくすることができる。また、不導体膜を形成することができ、電極の耐食性を向上させることができる。また、拡散係数の大きなFeを含有するため、上記拡散層が深く形成され、その厚み大きくすることができる。
【0028】
上記表面金属層は、さらにAlを1〜7質量%含有する合金からなることが好ましい(請求項5)。
この場合には、不導体膜を形成させることができ、電極の耐食性をより向上させることができる。
【0029】
次に、上記ハニカム構造体は、上記電極に電力を供給し、電気加熱式触媒コンバータとして用いることが好ましい(請求項6)。
車輌の排ガス管に配置して排ガスの浄化に用いられる触媒コンバータにおいては、触媒の活性化のために温度400℃程度に加熱する必要がある。
本発明のハニカム構造体においては、上記電極に電力を供給して上記ハニカム体を加熱することにより、触媒活性を速やかに発揮させる電気加熱式触媒コンバータを実現することができる。かかる用途においては、上記ハニカム体の隔壁等に、Pt、Pd、Rh等からなる三元触媒を担持させることができる。
【0030】
また、上記ハニカム構造体は、電極形成工程を行なうことにより製造することができる。該電極形成工程においては、上記ハニカム体の表面に、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を配設した状態で加熱する。これにより、上記ハニカム体の表面に、上記電極として、上記表面金属層と上記拡散層とからなる上記金属層を形成することができる。
【0031】
上記ハニカム体の表面への合金の配設は、例えば溶射、メッキ、転写シート、印刷、ディスペンサ、インクジェット、刷毛塗布、蒸着、又は金属箔等により行なうことができる。これらの方法により、例えば膜状の金属を上記ハニカム体の表面に配設することができる。形成範囲が広いため、作業性などを考慮すると、溶射によって配設することが好ましい。また、合金粉末のペーストを塗布することにより配設することが好ましい。合金粉末ペーストの塗布は、インクジェット等により上記ハニカム体に直接印刷したり、ペーストを直接塗布する方法を採用することができる。また、予め転写シートに印刷し、この転写シートから上記ハニカム体の表面に配設することもできる。
【0032】
また、上記電極の厚みは、上記セラミック体への合金の付着量を調整することにより制御することができる。合金の付着量を増やすことにより、より厚みの大きな電極を形成することができる。
【0033】
また、上記電極形成工程における加熱は、例えば温度900〜1300℃で行なうことができる。
上記拡散層の厚みは、加熱温度及び加熱時間を調整することにより制御することができる。具体的には、加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりすることにより、より拡散層の厚みを大きくすることができる。そのため、上述のように拡散層の厚みが25〜150μmで、t/wが2.3以上のハニカム構造体をより実現し易くなる。
【0034】
また、電極の酸化を防止するという観点から、上記電極形成工程における加熱は、真空中又は不活性ガス中で行なうことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン等がある。
【実施例】
【0035】
(実験例)
本例においては、多孔体又は緻密体からなる基材の表面に各種金属電極材料を接合させた接合体を作製し、その機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の評価を行なう。
具体的には、図1に示すごとく、SiCからなる板状のセラミック体90(縦30mm×横30mm×厚さ5mm)と、その厚さ方向において対向する一対の表面にそれぞれ形成した金属からなる電極91(厚さ30μm)とを有する接合体9を作製する。また、接合体9においては、セラミック体90と電極91との間に金属シリサイドからなる拡散層92が形成される。
【0036】
本例においては、セラミック体90として、内部に多数の細孔を有する気孔率約40%の多孔質プレート、又は内部に細孔を有さない緻密質プレートを採用し、各セラミック体90の表面に、後述の表1に示す各金属電極材料からなる電極91を形成して、9種類の接合体9(試料X1〜試料X9)を作製した。
【0037】
各試料(試料X1〜試料X9)は、図2に示すごとく、セラミック体90の厚さ方向に対向する一対の表面に、各金属電極材料からなる金属粉末911のペースト910を塗布し、温度400℃で脱脂した後、真空中で温度1200℃で60分間加熱することにより作製した。
【0038】
試料X1は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてCr粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイドが形成される(図1参照)。
試料X2は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてCr−40Fe合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド及びFeシリサイドが形成される(図1参照)。
【0039】
試料X3は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてFe−25Cr−5Al合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド及びFeシリサイドが形成される(図1参照)。
試料X4は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてFe−20Ni−25Cr合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド、Feシリサイド、及びNiシリサイドが形成される(図1参照)。
【0040】
試料X5は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてNi−8.5Fe−15.5Cr合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド、Feシリサイド、及びNiシリサイドが形成される(図1参照)。
試料X6は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてW粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともWシリサイドが形成される(図1参照)。
試料X7は、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてNi粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、Niシリサイドが形成される(図1参照)。
【0041】
また、試料X8は、セラミック体として緻密質プレートを採用し、金属電極材料としてCr−40Fe合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド及びFeシリサイドが形成される(図1参照)。
試料X9は、セラミック体として緻密質プレートを採用し、金属電極材料としてFe−25Cr−5Al合金粉末を採用して作製した接合体である。この場合には、拡散層92には、少なくともCrシリサイド及びFeシリサイドが形成される(図1参照)。
【0042】
各金属粉末は、平均粒径D50が約5μmの粉末を採用した。平均粒径D50はレーザ回折式粒度分布測定装置にて測定した。
また、後述の表1に、各金属粉末の熱膨張係数を示す。熱膨張係数は、熱機械分析装置を用い、恒温保持測定方法(JIS Z2285)に基づいて測定した。
【0043】
次に、各試料(試料X1〜X9)の接合体について、以下のようにして機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の評価を行なった。
「機械的接合信頼性」
各試料(試料X1〜X9)を温度950℃で2分間保持し、次いで常温(約25℃)で2分間保持するという冷熱サイクルを1サイクルとし、この冷熱サイクルを1000サイクル繰り返し行なった(冷熱サイクル試験)。次いで、各試料の接合体について、電極の剥離を目視にて観察した。
電極の剥離が認められなかったものを「○」として評価し、ほぼ完全に剥離したものを「×」として評価し、剥離が認められるが完全に剥離しているわけではないものを「△」として評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
「電気的接合信頼性」
各試料(試料X1〜X9)を温度950℃の高温炉に500時間放置した(高温放置試験)。次いで、この高温放置試験及び上記冷熱サイクル試験を行なった各試料について、接合体の電気抵抗を測定した。電気抵抗は、後述のハニカム構造体(試料X26〜X32)の電気抵抗の評価と同様にして測定した。そして、試験前後における接合体の抵抗変化率が5%以下のものを「○」として評価し、100%以上のものを「×」として評価し、5%を超えかつ100%未満のものを「△」として評価した。その結果を表1に示す。なお、評価対象となる抵抗変化率は、冷熱サイクル試験後の試料及び高温放置試験後の試料のうち変化率が大きい方を対象とした。変化率が5%を超えてしまうと、同電力条件において、使用期間中に狙い通りの加熱が得られなくなってしまうため好適でない。
【0045】
【表1】
【0046】
表1より知られるごとく、セラミック体として多孔質プレートを採用し、金属電極材料としてCr−Fe合金を採用した試料X2及びFe−Cr−Al合金を採用した試料X3は、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性のいずれもが優れていた。
【0047】
ここで、図3に、本例において用いた各種金属、及び金属シリサイドの耐熱温度及び熱膨張係数をまとめたグラフを示す。
金属電極材料としてCrを採用した試料X1においては、図3より知られるごとく、Crシリサイドの熱膨張係数が大きいため、接合部の熱応力が大きくなり、電極の剥離が生じた。また、高温放置試験後に酸化が起り電気抵抗値が増大していた。したがって、表1に示すごとく、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性のいずれもが不十分であった。
【0048】
また、表1に示すごとく、Fe−Ni−Cr合金を採用した試料X4及びNi−Fe−Cr合金を採用した試料X5は、合金の熱膨張係数が大きく(図3参照)、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性のいずれもが不十分であった。
また、Wを採用した試料X6は、Wの熱膨張係数が小さいため(図3参照)、機械的接合信頼性を確保することができる。しかし、Wの耐熱温度が低いため(図3参照)、酸化し易く、表1に示すごとく、電気的接合信頼性を確保することができない。
【0049】
また、熱膨張係数の大きなNi(図3参照)を採用した試料X7は、Niの展性のため完全な剥離には至らなかったものの機械的接合信頼性が不十分であった。さらに、耐熱温度が低いため(図3参照)、酸化し易く、表1に示すごとく、電気的接合信頼性を確保することができなかった。
【0050】
これに対し、金属電極材料としてCr−Fe合金を採用した試料X2及びFe−Cr−Al合金を採用した試料X3においては、拡散層にCrシリサイドだけでなく、熱膨張係数の小さいFeシリサイド(図3参照)が形成されるため、拡散層の熱膨張を小さくして剥離を防止できると共に、Crの酸化を防止することできる。よって、上述のごとく機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性に優れる。また、Cr及びFeの他にAlを含有する試料X3においては、耐酸化性が向上する。
このように、多孔質プレートにおいては、Cr−Fe合金及びFe−Cr−Al合金を用いることにより、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を確保できることがわかる。
【0051】
一方、Cr−Fe合金を緻密質プレートに適用した試料X8、及びFe−Cr−Al合金を緻密質プレートに適用した試料X9においては、剥離が生じ、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を確保することができなかった。これは、緻密体であるため、多孔質体の場合ほど拡散が進行し難く、拡散層の厚みを十分に大きくできなかったためである。
【0052】
また、試料X2及び試料X3においては、セラミック体90と電極91との接合界面に厚さ約30μmの拡散層92が形成されており、その拡散層92の厚みは試料X8及び試料X9よりも大きいことを走査型電子顕微鏡(SEM)により確認している。さらに、拡散層92においては、Crシリサイド及びFeシリサイドが形成されていることをエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)により確認している。
【0053】
以上のように、本例によれば、多孔質セラミックスに、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を接合させることにより、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を確保できる接合体が得られることがわかる。
【0054】
(実施例1)
次に、本例においては、ハニカム体の表面に電極を形成したハニカム構造体を作製する例である。
図4〜図6に示すごとく、本例のハニカム構造体1は、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体10の表面に金属層からなる一対の電極11(11a、11b)を設けてなる。図5に示すごとく、金属層11は、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする表面金属層110と、ハニカム体10との境界部に形成される金属シリサイドからなる拡散層111とからなる。
【0055】
図4〜図6に示すごとく、本例においてハニカム体10は、四角格子状に配された多孔質の隔壁101と、この隔壁101に囲まれて軸方向伸びる多数のセル102と、外周側面を覆う筒状の外周壁100とを有する。ハニカム体10は、直径φ93mm×長さ100mmの円柱形状であり、外周壁100の厚みは300μm、隔壁101の厚みは170μm、セル102のピッチ幅は1100μmである。また、ハニカム体の気孔率は40%であり、平均細孔径は10μmである。
【0056】
図4及び図6に示すごとく、金属層からなる一対の電極11は、ハニカム体10の外周壁100を挟むように、ハニカム体10の径方向に対称に形成されている。また、各電極11は、図6に示すごとく、ハニカム構造体11の軸方向と垂直な断面におけるハニカム体10の中心と、ハニカム体10の外周壁100に形成された各電極11の両端部とをそれぞれ結ぶ線がなす中心角αが90°となるように形成されている。
【0057】
本例において、金属層11における表面金属層110は、Cr−40Fe合金からなり、拡散層111においては、Crシリサイド及びFeシリサイドが形成される。
表面金属層110及び拡散層111の厚みは、30μmである。
【0058】
ハニカム体10の隔壁101にはPt、Pd、Rh等からなる三元触媒を担持させることができる。そして、ハニカム構造体1は、図1に示すごとく、外部電源5から一対の電極11に電力を供給することにより、ハニカム体10を加熱することができる。これにより、ハニカム構造体1は、電気加熱式触媒コンバータとして用いられる。
【0059】
本例のハニカム構造体1は、電極形成工程を行なうことにより製造することができる。
即ち、ハニカム体10の表面に、Cr−40Fe合金を配設した状態で加熱する。これにより、ハニカム体10の表面に、電極として、表面金属層110と拡散層111とからなる金属層11を形成することができる(図5参照)。
【0060】
具体的には、まず、SiCの多孔体からなるハニカム体10を準備し、その多孔質の外周壁100にCr−40Fe合金粉末を溶射して配設した。次いで、温度1200℃で60分間加熱した。これにより、合金粉末が焼結し、ハニカム体10の外周壁100に一対の金属層からなる電極11を接合形成することができる。また、この接合時には、合金に含まれるCr及びFeと、ハニカム体10に含まれるSiとが相互に拡散する。そのため、電極11として、表面金属層110と拡散層111とからなる金属層を形成することができる(図5参照)。このようにして得られたハニカム構造体を試料X10とする。
【0061】
また、本例においては、Cr−40Fe合金粉末の代わりに、Fe−25Cr−5Al合金粉末を用い、その他は上記試料X10と同様にして、ハニカム構造体を作製した。これを試料X11とする。
試料X10及び試料X11のハニカム構造体の作製に用いた合金、即ち、Cr−Fe合金及びFe−Cr−Al合金は、上述の実験例において、多孔質プレートにおいて機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の確保が確認された合金材料である。
【0062】
次に、上記試料X10及び試料X11についても上述の実験例と同様にして、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性の評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2より知られるごとく、多孔質のハニカム体を用いた試料X10及び試料X11においても、上記実験例の試料X2及び試料X3と同様に、機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を確保できることがわかる。
【0065】
また、本例においては、試料X10のハニカム構造体1について、電極11とハニカム体10との接合部(接合界面)の状態を調べた(図5参照)。
具体的には、接合界面を含む電極とハニカム体との接合部分を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果を図7(a)に示す。また、Si、Cr、及びFeの各元素についてエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を行い、Siについての結果を図7(b)に、Crについての結果を図7(c)に、Feについての結果を図7(d)にそれぞれ示す。拡散層の検出については、金属層へのSi拡散範囲とハニカム体へのFe及びCrの拡散範囲を検出し、この間を拡散層とした。
【0066】
図7(a)に示すごとく、接合部には、拡散層が形成されており、電極とハニカム体とが拡散接合されていることがわかる。
また、図7(b)〜(d)に示すごとく、拡散層においては、セラミック体成分であるSiと金属体成分であるCr及びFeとが相互に拡散して、Crシリサイド及びFeシリサイドからなる金属シリサイドが形成されていることがわかる。
【0067】
したがって、炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体の表面に、金属層からなる一対の電極を設けてなるハニカム構造体において、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする表面金属層と、金属シリサイドからなる拡散層とからなる上記金属層を形成することにより、ハニカム構造体の機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性を十分に確保できることがわかる。
【0068】
次に、本例においては、拡散層の厚みの影響を調べるため、後述の表3に示すごとく、拡散層の厚みが異なる10種類のハニカム構造体(試料X12〜X21)を作製した。
本例において、拡散層の厚みは、電極形成工程における加熱時間を調整することにより制御した。各試料X12〜X21は、拡散層の厚みを変更した点を除いては上記試料X10と同様にして作製した。
【0069】
各試料X12〜X21について、実験例と同様に電気的接合信頼性の評価を行なった。但し、本例においては、ハニカム構造体の抵抗変化率が3%以下のものを「◎」として評価し、3%を超えかつ10%以下のものを「○」として評価し、10%を超え、30%以下のものを「△」として評価した。
変化率が10%を超える場合には、電極での発熱により電力が消費されてしまうおそれがある。また、電極の発熱により、電極が剥離するおそれがある。3%以下の場合には、電力の大部分がハニカム体で消費されることとなり、加熱性が好適であると共に、電極部での発熱がなく、電極の耐久性が向上する。
そして、表3に、拡散層の厚さと電気的接合信頼性と安定に接合できる金属層(表面金属層)の厚さとの関係を示す。なお、表面金属層の厚さは、50μm以上のものを「◎」として評価し、20μm以上かつ50μm未満のものを「○」として評価し、20μm未満のものを「△」として評価した。
【0070】
【表3】
【0071】
表3より知られるごとく、拡散層の厚みが小さい場合には、剥離などは認められないものの、電気的接合信頼性の低下が認められる。また、安定に形成できる表面金属層の厚さも小さく、電気加熱式触媒コンバータ用のハニカム構造体に要求される機械的接合信頼性及び電気的接合信頼性が低下する。拡散層の厚みは、25μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。これにより、電気的接合信頼性だけでなく、機械的接合信頼性をより一層確保しつつ、表面金属層の厚みを十分に確保することができる。そのため、表面金属層からなる電極に外部電源等から電力を供給するためのリード線等の配設を容易に実施することができる。
【0072】
一方、拡散層の厚みが150μmを超える場合には、ハニカム体10の外周壁100周辺における隔壁101において、電気抵抗が小さくなるおそれがある(図5参照)。その結果、電極11に電力を供給してもハニカム体10を十分に加熱させることが困難になり、電気加熱式触媒コンバータに適用することが困難になるおそれがある。したがって、拡散層の厚みは150μm以下が好ましい。
【0073】
次に、通電による熱負荷に対する拡散層の接合信頼性への影響を調べた。
上記拡散層の接合信頼性は、図11に示すごとく、略立方体形状のハニカム体20の対向する面に一対の金属層21を形成してなるハニカム構造体2について評価を行った。
【0074】
具体的には、まず、上記試料X10の作製に用いた円柱状のハニカム体から1辺の長さが30mmの立方体形状のハニカム体20を切り出し、表面を研磨して平坦にした。
次いで、図11に示すごとく、立方体形状のハニカム体20の対向する一対の表面に、試料X10と同様に、Cr−40Fe合金を配設し、この状態で加熱することにより、表面金属層と拡散層とからなる一対の金属層(電極)21を形成した。このとき、加熱時間を調整することにより拡散層の厚みが異なる複数のハニカム構造体を作製した。これらを試料X33〜X37とする。
【0075】
試料X33は、拡散層の厚み20μmのハニカム構造体である。また、試料X34は、拡散層の厚み40μmのハニカム構造体である。また、試料X35は、拡散層の厚み57μmのハニカム構造体である。試料X36は、拡散層の厚み78μmのハニカム構造体である。試料X37は、拡散層の厚み100μmのハニカム構造体である。
各試料の拡散層の厚みを後述の表4に示す。
【0076】
次いで、各試料X33〜X37に、外部電源5から所定量の電力を20秒間供給した(図11参照)。そして、2.5W/gずつ電力投入量を大きくし、20秒間の電力供給時に電極の剥離や破損が生じたときに、その直前の投入電力(W/g)を記録し、これを最大投入電力w(W/g)とした。そして、拡散層の厚みt(μm)、最大投入電力w(W/g)、及びt/wの関係を調べた。その結果を表4に示す。
なお、本例においては、上述のごとく、立方形状のハニカム体を用いた。これは、立方形状を採用することにより、一対の金属層同士が平行関係となり、形状因子による発熱の偏りを防ぐためである。また、電力の供給時間を20秒間としたが、これは、実使用環境上、ハニカム体を目的温度までに通電加熱する時間を考慮して設定したものである。
【0077】
【表4】
【0078】
表4より知られるごとく、拡散層の厚みを大きくするにつれて、より大きな電力印加に耐えうることが明らかとなった。
これは電力印加量の増加に従い、時間あたりの温度上昇が急峻となるが、応力緩和層となる拡散層を大きな厚みで設けることにより、熱勾配による応力を緩和せしめているからである。
具体的には拡散層の厚みt(μm)とハニカムの重量あたりの電力印加量w(W/g)の比t/wが2.3以上であることが好ましい。なお、試料X37のサンプルについては電力量を大きくするにあたり、電極部ではなく、ハニカム体の内部が破損したため、t/wは参考値である。表4より知られるごとく、t/wが2.3以上という関係を満足させる事によって、使用する電力量に応じた接合信頼性の高い構造を得られることがわかる。
【0079】
次に、ハニカム構造体の作製時にハニカム体の表面に配設するCr−Fe合金におけるFeの配合割合(質量%)を変えて4種類のハニカム構造体(試料X22〜X25)を作製し、これらのハニカム構造体における拡散層の厚さを比較した。
後述の表5に示すごとく、試料X22は、Cr−20Fe合金粉末を用いて作製したハニカム構造体である。試料X22は、Cr−20Fe合金粉末を用いた点を除いては、上記試料X10と同様にして作製したハニカム構造体である。
また、試料X23は、Cr−40Fe合金粉末を用いて作製したハニカム構造体である。即ち、試料X23は、上記試料X10と同様にして作製したハニカム構造体である。
【0080】
試料X24は、Cr−55Fe合金粉末を用いて作製したハニカム構造体である。試料X24は、Cr−55Fe合金粉末を用いた点を除いては、上記試料X10と同様にして作製したハニカム構造体である。
試料X25は、Cr−70Fe合金粉末を用いて作製したハニカム構造体である。試料X25は、Cr−70Fe合金粉末を用いた点を除いては、上記試料X10と同様にして作製したハニカム構造体である。
【0081】
各試料X22〜X25のハニカム構造体について、拡散層の厚さ比を求めた。拡散層の厚さ比は、Cr−40Feを採用した試料X23の拡散層の厚さを1としたときの各試料の拡散層の相対的な厚さである。その結果を表5に示す。
【0082】
また、Cr−Fe合金について、Feの配合割合(質量%)と、酸化増量率(%)との関係を調べた。
酸化増量率は、次のようにして測定した。
即ち、まず、上述の実験例と同様にして、気孔率約40%のSiCからなる多孔質プレートの表面に、Feの配合割合が異なるCr−Fe合金からなる一対の電極(金属層)を形成した。そして、電極を形成したこれらの多孔質プレートを温度950℃まで加熱し、加熱前後における重量増加分Aを測定した。また、電極を形成してない多孔質プレートを準備し、この多孔質プレートについても温度950℃まで加熱して加熱前後における重量増加分Bを測定した。この重量増加分Bは、SiC自体の酸化による重量増量分である。そして、重量増加分Aと重量増加分Bとの差(重量増加分A−重量増加分B)を算出することにより、電極部分のみの酸化による重量増加分Cを算出した。そして、多孔質プレートに形成した電極の重量をDとすると、C/D×100を算出して、これを金属層の酸化増量率とした。
その結果を図12に示す。図12において、横軸はCr−Fe合金におけるFeの配合割合(質量%)を示し、縦軸は酸化増量率(%)を示す。
【0083】
【表5】
【0084】
Feは、拡散係数がCrよりも大きいため、表5に示すごとく、Cr−Fe合金中のFeの配合割合を増やすことにより、拡散層の厚みを大きくすることができる。但し、図12より知られるごとく、Feの配合割合が20質量%未満の場合又は70質量%を超える場合には、形成される電極の耐酸化性が低下し、電極自体が酸化しやすくなる。そのため、合金中のFeの含有量は20〜70質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%がよい。
【0085】
次に、表面金属層の厚みの異なる複数のハニカム構造体を作製し、これらの電極抵抗の評価を行なった。
具体的には、ハニカム体の表面に配設するCr−40Fe合金粉末の量を調整することにより、後述の表6に示すごとく、表面金属層の厚みの異なる7種類のハニカム構造体(試料X26〜X32)を作製した。各試料のハニカム構造体は、Cr−40Fe合金粉末の量を変えて表面金属層の厚みを変更した点を除いては上記試料X10と同様にして作製した。
【0086】
次に、各試料X26〜X32のハニカム構造体について、以下のようにして電極抵抗の評価を行なった。
「電極抵抗」
ハニカム構造体1の外周壁100に形成された一対の電極11間に電圧を印加して、ハニカム構造体1に1Aの電流を流す(図4参照)。このとき、金属層からなる一対の電極11の電気抵抗をそれぞれr1、r1’とし、電極11とハニカム体10との接合界面の電気抵抗をそれぞれr2、r2’とし、ハニカム体の電気抵抗をr3とすると、一対の電極11間に電圧を印加してハニカム構造体1に電流I(I=1A)を流したときの回路は、図8のようになる。ハニカム構造体に1Aの電流を流しながら所望のポイントの電位差をデジタルボルトメーターで測定する。これにより、接合界面抵抗を含む電極抵抗R1、R1’又はハニカム体の電気抵抗R2を区別して測定することができる。そして、一対の電極抵抗R1、R1’の両方を測定し、これらの合計値を電極抵抗とし、(R1+R1’)/R×100という式から、ハニカム構造体の抵抗(R)に対する電極抵抗(R1+R1’)の割合(百分率)を求めた。
【0087】
電極抵抗がハニカム構造体の電気抵抗の10%を超える場合を「×」として評価し、3%以下の場合を「◎」として評価し、3%を超えかつ10%以下の場合を「○」として評価した。その結果を表6に示す。電気抵抗が3%以下の場合、電力の大部分がハニカム体で消費されることとなり、加熱性が好適であると共に、電極部での発熱がなく、電極の耐久性をより向上させることができる。
【0088】
【表6】
【0089】
表6より知られるごとく、2μmという厚みの小さな表面金属層を形成した試料X26においては、拡散層の厚みが小さくなり、接合界面抵抗を十分に抑制することができず、電極の抵抗が高くなっていた。また、200μmという厚みの大きな表面金属層を形成した試料X32においては、表面金属層の厚みが増大したことによる抵抗値の増加が認められ、電極抵抗が増加傾向に転じていた。したがって、表面金属層の厚みは5μm以上かつ200μm未満であることが好ましく、より好ましくは20μm以上かつ100μm以下がよい。
【0090】
また、本例において作製したハニカム構造体(試料X10〜試料X32)においては、図4に示すごとく、金属層からなる一対の電極11a、11bを、ハニカム体10の外周壁100を挟むように、ハニカム体10の径方向に対称に形成したが、例えば図9に示すごとく、一対の電極11a、11bをハニカム体10の軸方向(セル102の伸長方向)に並べて形成することもできる。
【0091】
即ち、図9に示すハニカム構造体3においては、一対の電極11a、11bはそれぞれハニカム体10の円筒状の外周壁100を周回するように形成されている。そして、電極11aは、ハニカム体の軸方向の一方の端部側に形成されており、電極11bは、他方の端部側に形成されている。
【0092】
かかるハニカム構造体3(図9参照)においても、図4に示す上述のハニカム構造体1と同様に、本発明の条件を採用することにより、同様の作用効果を得ることができる。そして、図9に示すハニカム構造体3においても、一対の電極11a、11b間に外部電源5から電圧を印加することにより、ハニカム体10を加熱することができる。これにより、ハニカム構造体3を電気加熱式触媒コンバータとして用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
1 ハニカム構造体
10 ハニカム体
11 金属層(電極)
110 表面金属層
111 拡散層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体の表面に金属層からなる一対の電極を設けてなるハニカム構造体であって、
上記金属層は、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする表面金属層と、上記ハニカム体との境界部に形成される金属シリサイドからなる拡散層とからなり、
上記拡散層の厚みは25〜150μmであり、
上記拡散層の厚みをt(μm)、上記ハニカム構造体の重量あたりの電力投入量をw(W/g)としたとき、t/wが2.3以上であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のハニカム構造体において、上記金属層の電気抵抗値は、上記ハニカム構造体の電気抵抗値の10%以下であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハニカム構造体において、上記表面金属層は、Feを20〜70質量%含有する合金からなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体において、上記表面金属層は、Crを主成分とし、Feを20〜40質量%含有する合金からなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体において、上記表面金属層は、Alを1〜7質量%含有する合金からなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体は、上記電極に電力を供給し、電気加熱式触媒コンバータとして用いることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法において、
上記ハニカム体の表面に、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を配設した状態で加熱することにより、上記ハニカム体の表面に、上記電極として、上記表面金属層と上記拡散層とからなる上記金属層を形成する電極形成工程を有することを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項1】
炭化珪素を主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体の表面に金属層からなる一対の電極を設けてなるハニカム構造体であって、
上記金属層は、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする表面金属層と、上記ハニカム体との境界部に形成される金属シリサイドからなる拡散層とからなり、
上記拡散層の厚みは25〜150μmであり、
上記拡散層の厚みをt(μm)、上記ハニカム構造体の重量あたりの電力投入量をw(W/g)としたとき、t/wが2.3以上であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のハニカム構造体において、上記金属層の電気抵抗値は、上記ハニカム構造体の電気抵抗値の10%以下であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハニカム構造体において、上記表面金属層は、Feを20〜70質量%含有する合金からなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体において、上記表面金属層は、Crを主成分とし、Feを20〜40質量%含有する合金からなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体において、上記表面金属層は、Alを1〜7質量%含有する合金からなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体は、上記電極に電力を供給し、電気加熱式触媒コンバータとして用いることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法において、
上記ハニカム体の表面に、少なくともCrとFeとを含有し、かつCr又はFeを主成分とする合金を配設した状態で加熱することにより、上記ハニカム体の表面に、上記電極として、上記表面金属層と上記拡散層とからなる上記金属層を形成する電極形成工程を有することを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【公開番号】特開2011−246340(P2011−246340A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67749(P2011−67749)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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