説明

ハニカム構造体及び該ハニカム構造体の製造方法

【課題】再生処理のような熱サイクルを長期間に渡って繰り返した場合であっても、接着剤層とシール材層との間で破壊しにくいハニカム構造体を提供する。
【解決手段】多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着剤層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にシール材層が設けられたハニカム構造体であって、
前記接着剤層と前記シール材層とは一体的に形成されており、両者を区分けする境界面が存在しないことを特徴とするハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及び該ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、排ガス浄化フィルタ又は触媒担体として、長手方向に多数のセルが並設された柱状のハニカム焼成体を複数個組み合わせてなる集合型ハニカム構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような集合型ハニカム構造体では、各ハニカム焼成体の側面に接着材層が形成され、上記接着材層を介してハニカム焼成体同士が接着されてセラミックブロックを構成し、このセラミックブロックの周囲にシール材層が形成されていた。
【0003】
このようなハニカム構造体を製造する際には、複数のハニカム焼成体を接着材ペーストを用いて接着させた後、接着材ペーストを乾燥させ、ハニカム焼成体同士がしっかり接着されたセラミックブロックを形成していた。
そして、その後、セラミックブロックの周囲にシール材層を形成することにより、ハニカム構造体を製造していた。
【0004】
しかし、上述した方法によりハニカム構造体を製造した際には、接着材層を乾燥させた後、別の工程でシール材層を形成するため、接着材層とシール材層との間に境界面が形成されていた。
このハニカム構造体を、例えば、車両用の排ガス浄化フィルタとして使用し、再生処理を行ったり、車両の運転を開始すると、ハニカム構造体が急激に温度上昇するが、このような熱サイクルを長期間繰り返すと、接着材層とシール材層との間に境界面が形成されていることに起因して、ハニカム構造体は、接着材層とシール材層との界面で破壊しやすいという問題があった。
【特許文献1】特開2005−154202号公報
【0005】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、再生処理のような熱サイクルを長期間に渡って繰り返した場合であっても、接着材層とシール材層との間で破壊しにくいハニカム構造体を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に記載のハニカム構造体は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にシール材層が設けられたハニカム構造体であって、
前記接着材層と前記シール材層とは一体的に形成されており、両者を区分けする境界面が存在しないことを特徴とする。
【0007】
請求項1記載のハニカム構造体においては、前記接着材層と前記シール材層とは一体的に形成されており、両者を区分けする境界面が存在しない。
従って、再生処理のような熱サイクルを長期間に渡って繰り返した場合であっても、接着材層とシール材層との間でのクラック等による破壊を防止することができる。
【0008】
請求項2に記載のハニカム構造体では、前記接着材層及び前記シール材層は、無機繊維と無機バインダとを含む。
【0009】
請求項2に記載のハニカム構造体においては、前記接着材層及び前記シール材層には、両者を区分けする境界面が存在せず、無機繊維が、従来であれば前記接着材層と前記シール材層との界面が存在する部分を、横切るように存在しているため、クラック等による破壊がより発生しにくくなる。
【0010】
請求項3に記載のハニカム構造体では、前記多数のセルのいずれか一方の端部は、封止材により封止されている。
【0011】
請求項3に記載のハニカム構造体においては、前記多数のセルのいずれか一方の端部は、封止材により封止されているので、ハニカムフィルタとして機能する。
【0012】
請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にシール材層が設けられたハニカム構造体の製造方法であって、
前記ハニカム焼成体を接着材層を介して結束する結束工程と、前記セラミックブロックの周囲にシール材層を形成するシール材層形成工程とを同時に行うことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法においては、上記結束工程と上記シール材層形成工程とを同時に行い、接着材層とシール材層とを一体的に形成するので、得られたハニカム構造体に、接着材層とシール材層とを区分けする境界面は存在せず、再生処理のような熱サイクルを長期間に渡って繰り返した場合であっても、接着材層とシール材層との間でのクラック等による破壊を防止することができる。
【0014】
請求項5に記載のハニカム焼成体の製造方法は、円筒容器のなかで、複数個の上記ハニカム構造体を所定の位置に位置決めし、その両端面を保持し、上記ハニカム焼成体が所定の間隔で配置されたハニカム集合体を形成する保持工程と、
上記ハニカム集合体の内部及び周囲に接着兼シール用ペーストを注入する注入工程と、
上記接着兼シール用ペーストを乾燥固化させて接着材層及びシール材層とする乾燥工程とを行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法によれば、上記方法によりハニカム構造体を製造するので、得られたハニカム構造体は、接着材層とシール材層とが一体的に形成され、両者を区別する境界面が存在しない。従って、再生処理のような熱サイクルを長期間に渡って繰り返した場合であっても、接着材層とシール材層との間でクラック等による破壊を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第一実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
本発明では、まず、セラミック粉末とバインダとを含む原料組成物を押出成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製する押出成形工程と、上記ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製する焼成工程とを行い、ハニカム焼成体を得る。
【0017】
ハニカム焼成体の形状は、特に限定されるものではなく、四角柱状等であってもよいが、本実施形態では、複数種類の形状からなるハニカム焼成体を製造しておき、これらを組み合わせることにより、切削加工等の後加工等を行うことなく、円柱形状のハニカム構造体を作製する方法を採用した場合について説明する。
【0018】
図1(a)〜(c)は、種々のハニカム焼成体を組み合わせて製造する際に用いるハニカム焼成体を模式的に示した斜視図であり、矢印Aで示したセルに平行な方向を長手方向といい、セルが露出した面を端面といい、端面以外の面を側面ということとする。
【0019】
ハニカム焼成体31では、多数のセル31aがセル壁31bを隔てて長手方向に平行に形成されており、セル31aのいずれかの端部が封止材31cにより封止されており、側面は、2つの平面と1つの曲面により構成されている。
ハニカム焼成体32では、多数のセル32aがセル壁32bを隔てて長手方向に平行に形成されており、セル32aのいずれかの端部が封止材32cにより封止され、側面は、3つの平面と1つの曲面により構成されている。
ハニカム焼成体33では、多数のセル33aがセル壁33bを隔てて長手方向に平行に形成されており、セル33aのいずれかの端部が封止材33cにより封止され、側面は、4つの平面により構成されている。
【0020】
図2(a)〜(d)、図3(a)〜(d)及び図4(a)は、上記ハニカム焼成体31、32、33を用いた本発明のハニカム構造体の製造方法においてハニカム焼成体結束工程(保持工程)とシール材層形成工程(シール材充填工程)とを同時に行う様子を模式的に示した縦断面図及び平面図であり、左側は、縦断面図、右側は、平面図である。
各ハニカム焼成体については、輪郭のみで示している。ハニカム焼成体は、円筒状の容器(円筒容器)に収納されているが、右側の平面図では、円筒容器を省略している。また、図2(a)〜(d)に示す縦断面図でも、円筒容器18を一部省略している。
図4(b)は、作製された本発明のハニカム構造体30を示す概略斜視図である。
【0021】
本実施形態では、円筒容器のなかで、複数個の上記ハニカム焼成体を所定の位置に位置決めし、その両端面を保持し、ハニカム焼成体が所定の間隔で配置された外形が略円柱形状のハニカム集合体を形成する保持工程と、
ハニカム集合体の内部(所定の位置に保持された複数の上記ハニカム焼成体間の空間)及びハニカム集合体の周囲(円筒容器とハニカム焼成体との間の空間)に接着兼シール用ペーストを注入する注入工程と、
上記接着兼シール用ペーストを乾燥固化させて接着材層及びシール材層とする乾燥工程とを行う。
【0022】
本実施形態では、載置面を有する複数個の載置部材の載置面上にそれぞれ複数個の上記ハニカム焼成体を互いに長手方向が平行となる向きに前もって載置しておく。
そして、まず、図2(a)に示すように、載置部材10の載置面10a上の左右の両端の位置に、2個のハニカム焼成体31を配置し、一方、2個のハニカム焼成体31に挟まれる位置に2個のハニカム焼成体32を配置し、これらのハニカム焼成体31、32が載置された載置部材10を、接着兼シール用ペーストの注入等が可能な円筒容器18の内部に搬送し、所定位置で固定する。
【0023】
このとき、載置部材10の載置面10a上に、長さ方向が平行になるように載置された4個のハニカム焼成体31、32のそれぞれの四隅の位置には、位置決め用の突起部11a、11bが立設されている。これによりハニカム焼成体31、32の位置が所定の範囲内に決められる。すなわち、それぞれのハニカム焼成体31、32は、四隅の位置に配置された4個の突起部11a、11bに挟まれており、図面上、左右方向の位置は、これらの突起部11a、11bにより規制される。この場合、載置面10a上には、合計10個の突起部11a、11bが形成されている。
【0024】
載置部材10を固定する際には、載置面10aが水平になり、かつ、ハニカム焼成体31、32と円筒容器18との間隔が一定の距離dとなり、円筒容器18の内側の最も高い部分と載置部材10の載置面10aとの距離がhとなるように載置部材10を固定する。この円筒容器18とハニカム焼成体31、32との間に、後の工程において、シール材層を形成するのである。
【0025】
載置部材10の上下方向の位置(間隔h)に関しては、ハニカム焼成体32の鉛直方向の最大幅を測定しておき、その値に基づき、円筒容器18の内側の最も高い部分と載置部材10の上面10aとの位置を距離dを含めて計算する。また、水平方向の位置に関しては、円筒容器の中心軸(長手方向)と、載置部材10の長手方向の中心軸とが鉛直方向に重なるように載置部材を配置する。このような位置は、計算可能であるので、アーム等の把持部を有するロボット等を用いることにより、計算された位置に載置部材10を配置することができる。
【0026】
次に、図2(b)に示すように、保持部材20がハニカム焼成体31、32の両端面方向に延び、ハニカム焼成体31、32の両端面に当接し、ハニカム焼成体31、32を両端面からしっかり挟んで保持する。
このとき、保持部材20は、ハニカム焼成体31、32の端面31a、32aが同一平面上に揃うように、ハニカム焼成体31、32を保持する。
【0027】
次に、載置部材10を他所に移動させるが、ハニカム焼成体31、32は、保持部材20によりしっかりと保持されており、載置部材10上に載置された際の位置と同一の位置にしっかりと固定されている。
【0028】
次に、図2(c)に示すように、載置面12a上に2個のハニカム焼成体32と四角柱状の2個のハニカム焼成体33とが4個の突起部13a、13bにそれぞれ挟まれて互いに平行に載置された載置部材12を、保持部材20により保持され4個のハニカム焼成体31、32の下の位置に搬送する。この場合、載置部材12の載置面12a上には、合計10個の突起部13a、13bが形成されている。この後、固定されている上の4個のハニカム焼成体31、32の最上部と下の4個のハニカム焼成体32、33の最下部との鉛直方向の間隔hが一定の間隔となり、上の4個のハニカム焼成体31、32の底面と下の4個のハニカム焼成体32、33の底面とが平行になり、かつ、長手方向に中心軸を設定した際、上の4個のハニカム焼成体31、32の中心軸と下の4個のハニカム焼成体32、33の中心軸とが鉛直方向に重なるように、載置部材12が配置される。
【0029】
次に、図2(d)に示すように、別の保持部材21が周囲からハニカム焼成体32、33の両端面方向に延びてハニカム焼成体32、33の両端面に当接し、ハニカム焼成体32、33を両端面からしっかり挟んで保持する。
このとき、保持部材21は、8個のハニカム焼成体31、32、33(以下、ハニカム焼成体31〜33と記す)の端面が同一平面上に揃うように、ハニカム焼成体32、33を保持する。
【0030】
次に、前と同様に載置部材12を他所に移動させるが、ハニカム焼成体32、33は、保持部材21によりしっかりと保持されており、載置部材12上に載置された際の位置と同一の位置にしっかりと固定されている。
【0031】
次に、図3(a)に示すように、載置面14a上に2個のハニカム焼成体32と2個のハニカム焼成体33とが4個の突起部15a、15bにそれぞれ挟まれて互いに平行に載置された載置部材14を、保持部材20、21により保持された8個のハニカム焼成体31〜33の下の位置に搬送する。この場合、載置面14a上には、合計10個の突起部15a、15bが形成されている。この後、固定されている上の8個のハニカム焼成体31〜33の最上部と下の4個のハニカム焼成体32、33の最下部との鉛直方向の間隔hが一定の間隔となり、上の8個のハニカム焼成体31〜33の底面と下の4個のハニカム焼成体32、33の底面とが平行になり、かつ、長手方向に中心軸を設定した際、上の8個のハニカム焼成体31〜33の中心軸と下の4個のハニカム焼成体32、33の中心軸とが鉛直方向に重なるように、載置部材14が配置される。
【0032】
次に、図3(b)に示すように、別の保持部材22が周囲からハニカム焼成体32、33の両端面方向に延びてハニカム焼成体32、33の両端面に当接し、ハニカム焼成体32、33を両端面からしっかり挟んで保持する。
このとき、保持部材22は、12個のハニカム焼成体31〜33の端面が同一平面上に揃うように、ハニカム焼成体32、33を保持する。
次に、前と同様に載置部材14を他所に移動させるが、ハニカム焼成体32、33は、保持部材22によりしっかりと保持されており、載置部材14上に載置された際の位置と同一の位置にしっかりと固定されている。
【0033】
次に、図3(c)に示すように、曲面により構成された載置面16a上に2個のハニカム焼成体31と2個のハニカム焼成体32とが6個の突起部17a、17bにより所定の位置に載置された載置部材16を、保持部材20、21、22により保持され12個のハニカム焼成体31〜33の下の位置に搬送する。この後、固定されている上の12個のハニカム焼成体31〜33の最上部と下の4個のハニカム焼成体31、32の最下部との鉛直方向の間隔h、すなわち、ハニカム構造体30の鉛直方向の間隔が一定となり、上の12個のハニカム焼成体31〜33の底面と下の4個のハニカム焼成体31、32の上面とが平行になり、かつ、長手方向に中心軸を設定した際、上の12個のハニカム焼成体31〜33の中心軸と下の4個のハニカム焼成体31、32の中心軸とが鉛直方向に重なるように、載置部材16が配置される。
【0034】
この場合、2個のハニカム焼成体31と2個のハニカム焼成体32は、作製しようとする円柱形状のハニカム構造体の下部に相当するため、曲面となっている部分を下側にする必要がある。そのため、図3(c)に示すように、載置面16aが、ハニカム焼成体31、32の下部と同じ曲面形状であり、また、その厚さがシール材層の厚さdより薄い断面が円弧形状の載置部材16の載置面16aに嵌合するようにハニカム焼成体31、32が曲面を下にして載置される。
【0035】
次に、図3(d)に示すように、円筒容器18の近くに配設された別の保持部材23が周囲からハニカム焼成体31、32の両端面方向に延びてハニカム焼成体31、32の両端面に当接し、ハニカム焼成体31、32を両端面からしっかり挟んで保持する。
このとき、保持部材23は、16個のハニカム焼成体31〜33の端面が同一平面上に揃うように、ハニカム焼成体31、32を保持する。この後、載置部材16を円筒容器18とハニカム焼成体31、32との間から抜き去る。
【0036】
このようにして、ハニカム構造体30を構成する16個のハニカム焼成体31〜33を長さ方向に平行に、かつ、両端面が同じ平面を構成するように整列、固定させることができる。このように整列した16個のハニカム焼成体31〜33をハニカム集合体300ということとする。
【0037】
この後、図4(a)に示すように、円筒容器18とハニカム集合体300との間の空間、及び、ハニカム集合体内部のハニカム焼成体31〜33の間の空間をシールするように、円環形状の外枠40aと格子状の内枠40bとからなる端面密着部材40を円筒容器18とハニカム集合体300とに密着させ、接着兼シール用ペーストを注入した際に、接着兼シール用ペーストが円筒容器18から漏れないようにする。円筒容器18には、接着兼シール用ペーストを注入するための注入パイプ18aが配設されており、注入パイプ18aより接着兼シール用ペーストを注入することにより、ハニカム集合体300を構成するハニカム焼成体31〜33間の空間部分及びハニカム集合体300の周辺部分であるハニカム焼成体31〜33と円筒容器18との間の空隙部分を塞ぐように接着兼シール用ペーストが充填される。
【0038】
図示していないが、円筒容器18は、2つに分割できるようになっているので、加熱処理等により、接着兼シール用ペーストがある程度固まった後、円筒容器18を分割して他の場所に移動させる。さらに、所定の温度で接着兼シール用ペーストを乾燥させることにより、図4(b)に示すように、ハニカム焼成体31〜33が接着材層34を介して接着されるとともに外周にシール材層35が形成され、ハニカム焼成体31〜33同士を接着する接着材層34と外周に形成されたシール材層35とが一体的に形成され、両者を区分けする境界面が存在しないハニカム構造体30を得ることができる。
上述の工程では、接着兼シール用ペーストの乾燥処理のみを行ったが、接着兼シール用ペーストの乾燥処理を行った後、さらに高温で、脱脂処理、焼成処理を行ってもよい。
【0039】
従来のように、接着材層34とシール材層35とを別々に形成した場合と比べ、上記実施形態では、ハニカム焼成体31〜33同士を接着する接着材層34と外周に形成されたシール材層35とが一体的に形成され、両者を区分けする境界面が存在しないので、再生処理のような熱サイクルを長期間に渡って繰り返した場合であっても、接着材層34とシール材層35との間でのクラック等による破壊を防止することができる。
【0040】
また、上記実施形態では、ハニカム構造体30中のハニカム焼成体の水平方向の間隔は、載置部材の載置面に突起部を形成して制御しており、垂直方向の間隔は、載置部材の鉛直方向の位置の制御により制御しているため、ハニカム焼成体の寸法やハニカム焼成体間の空間のばらつきが大きい方に偏ったり、小さい方に偏ることに起因する寸法の大きなずれが発生せず、寸法精度の高いハニカム集合体300を製造することができるので、ずれをカバーするようにシール材層35を厚くする必要がなく、シール材層35を薄くすることができる。
【0041】
以上、複数個のハニカム焼成体を所定の位置に位置決めし、その両端面を保持部材で挟んで保持する方法について説明を行ったが、ハニカム焼成体の保持の方法は、保持部材で挟んで保持する方法に限られず、ハニカム焼成体の両端面を保持部材で引っ掛けて保持する方法等、どのような方法で保持してもよい。しかしながら、保持のしやすさ、確実性、ハニカム焼成体の外周部へのクラック、損傷の影響を考えると、保持部材で挟んで保持する方法が好ましい。
【0042】
また、初めから円筒容器内でハニカム集合体を形成するのではなく、複数個のハニカム焼成体を所定の位置に位置決めし、その両端面を保持部材で保持することによりハニカム集合体300を形成した後、円筒容器18及び端面密着部材40を用い、図4(a)に示したハニカム集合体300が円筒容器18内に配置され、ハニカム集合体300の端面に端面密着部材40が配置された状態とし、上述の方法と同様に接着兼シール用ペーストを円筒容器18内に充填し、加熱してハニカム構造体を製造してもよい。
【0043】
図4(b)に示したハニカム構造体30は、セルのいずれか一方の端部が封止されており、排ガス浄化用のハニカムフィルタとして用いることができ、場合によっては、触媒も担持することができる。
一方、ハニカム構造体は、セルの端部がいずれも封止材で封止されていないハニカム構造体であってもよく、このようなハニカム構造体は、排ガス中の有害物質を浄化する触媒担体として好適に使用することができる。
【0044】
図5(a)は、ハニカム構造体30を構成するハニカム焼成体33を示す斜視図であり、(b)は、そのA−A線断面図である。
このハニカム焼成体33では、長手方向(図5(a)中、矢印Aの方向)に多数のセル33aが並設され、セル33a同士を隔てるセル壁33bがフィルタとして機能するようになっている。他のハニカム焼成体31、32も同様である。
【0045】
即ち、ハニカム構造体30を構成するハニカム焼成体33に形成されたセル33aは、図5(b)に示すように、排ガスの入口側又は出口側の端部のいずれかが封止材33cにより目封じされ、一のセル33aに流入した排ガスは、必ずセル33aを隔てるセル壁33bを通過した後、他のセル33aから流出するようになっており、排ガスがこのセル壁33bを通過する際、パティキュレートがセル壁33b部分で捕捉され、排ガスが浄化されるのである。
【0046】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法の全工程について説明する。以下においては、ハニカム構造体の端部のいずれかが封止材により目封じされたハニカム構造体の製造方法について説明することとする。
まず、セラミック原料として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末と有機バインダとを混合して混合粉末を調製するとともに、液状の可塑剤と潤滑剤と水とを混合して混合液体を調製し、続いて、上記混合粉末と上記混合液体とを湿式混合機を用いて混合することにより、成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0047】
上記炭化ケイ素粉末の粒径は特に限定されないが、後の焼成工程を経て作製されたハニカム焼成体は、ハニカム成形体に比べて小さくなる場合が少ないものが好ましく、例えば、0.3〜50μmの平均粒径を有する粉末100重量部と0.1〜1.0μmの平均粒径を有する粉末5〜65重量部とを組み合せたものが好ましい。
ハニカム焼成体の気孔径等を調節するためには、無機粉末の粒径を調節することにより、気孔径を調節することができる。
【0048】
続いて、上記湿潤混合物を押出成形機に投入する。
上記湿潤混合物を押出成形機に投入すると、湿潤混合物は押出成形により所定の形状のハニカム成形体となる。このハニカム成形体を、乾燥機を用いて乾燥させ、乾燥させたハニカム成形体とする。
【0049】
次に、乾燥させたハニカム成形体の両端を切断装置を用いて切断する切断工程を行い、ハニカム成形体を所定の長さに切断する。次いで、ガス流入側端面が開口するセル群のガス流出側の端部、及び、ガス流出側端面が開口するセルのガス流入側の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封じする。このセルの目封じの際には、例えば、ハニカム成形体の端面(すなわち切断工程後の切断面)に目封じ用のマスクを当てて、目封じの必要なセルにのみ封止材ペーストを充填する方法を用いることができる。
このような工程を経て、セル封止ハニカム成形体を作製する。
【0050】
次に、セル封止ハニカム成形体中の有機物を脱脂炉中で加熱する脱脂工程を行い、焼成炉に搬送し、焼成工程を行ってハニカム焼成体を作製する。
この後は、図2(a)〜(d)、図3(a)〜(d)及び図4(a)〜(b)を用いて説明したように、複数個のハニカム焼成体を円筒容器内部の所定の位置に位置決めし、その両端面を保持部材で挟んで保持し、次に、所定の位置に保持された複数の上記ハニカム焼成体間の空間及び円筒容器とハニカム焼成体との間の空隙に接着兼シール用ペーストを注入し、さらに、上記接着兼シール用ペーストを乾燥固化させて接着材層とシール材層とが一体化され、両者の間を区分けする境界がないハニカム構造体を製造する。
【0051】
なお、接着兼シール用ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機繊維及び/又は無機粒子とからなるものを使用することができる。
【0052】
以下、本実施形態に係るハニカム構造体の作用効果について説明する。
第一実施形態に係るハニカム構造体においては、ハニカム焼成体を接着材層を介して結束させる結束工程とセラミックブロックの外周にシール材層を形成するシール材層形成工程とを同時に行い、接着材層とシール材層とを一体的に形成するので、得られたハニカム構造体に、接着材層とシール材層とを区分けする境界面は存在せず、再生処理のような熱サイクルを長期間に渡って繰り返した場合であっても、接着材層とシール材層との間でのクラック等による破壊を防止することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示すが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
以下の実施例及び比較例では、上記実施形態による方法及び従来の方法によりハニカム構造体を製造し、得られたハニカム構造体を対象としてヒートサイクル試験を行うことによりハニカム構造体のクラック等による破壊の有無を観察した。
【0055】
(実施例1)
(1)平均粒径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合し、得られた混合物に対して、アクリル樹脂2.1重量%、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日本油脂社製 ユニルーブ)2.8重量%、グリセリン1.3重量%、及び、水13.8重量%を加えて混練して混合組成物を得た後、押出成形を行い、その長手方向の長さが150mmとなるように切断し、図1(a)に示すハニカム焼成体31の形状と略同様の形状の生のハニカム成形体、図1(b)に示すハニカム焼成体32の形状と略同様の形状の生のハニカム成形体、及び、図1(c)に示すハニカム焼成体33の形状と略同様の形状の生のハニカム成形体をそれぞれ作製した。
【0056】
(2)次に、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を乾燥させ、ハニカム成形体の乾燥体とした後、上記生成形体と同様の組成のペーストをハニカム成形体の乾燥体の所定のセルに充填し、再び乾燥機を用いて乾燥させた。
【0057】
(3)乾燥させたハニカム成形体を400℃で脱脂し、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成を行うことにより、ハニカム焼成体31、32、33を作製した。
製造したハニカム焼成体31〜33は、長さが150mm、セルの数が31個/cm、セル壁の厚さが0.3mmであった。
【0058】
(4)平均繊維長20μmのアルミナファイバ30重量%、平均粒子径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性の接着兼シール用ペーストを用い、上述した方法(図2(a)〜(d)、図3(a)〜(d)及び図4(a)〜(b)に示した方法)を用いてハニカム構造体を製造した。
【0059】
すなわち、最初に、位置決め用の突起部が形成された載置部材上に4個のハニカム焼成体を互いに長手方向が平行となる向きに前もって載置し、円筒容器を基準とした一定の位置に正確に搬送することによりハニカム焼成体を所定の位置に位置決めし、それぞれのハニカム焼成体の端面を保持部材で挟んで保持し、位置決めした16個のハニカム焼成体からなるハニカム集合体間の空間及びハニカム集合体と円筒容器との空隙に接着兼シール用ペーストを注入し、16個のハニカム焼成体を接着するとともに、シール材層を形成した後、120℃で乾燥させることにより、ハニカム構造体を製造した。このとき、円柱からなるハニカム構造体の直径は、145mmに設定した。
【0060】
この後、接着材層とシール材層との境界に相当する部分を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。図9は、その結果を示すSEM写真である。
図9に示すように、実施例1では、ハニカム構造体には全く境界が見当たらず、従来において、セラミックブロックとシール材層との境界と想定される部分(黒い破線で示した部分)には、境界と分かるような部分は発見されなかった。
【0061】
(比較例1)
(1)平均粒径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合し、得られた混合物に対して、アクリル樹脂2.1重量%、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日本油脂社製 ユニルーブ)2.8重量%、グリセリン1.3重量%、及び、水13.8重量%を加えて混練して混合組成物を得た後、押出成形を行い、その長手方向の長さが150mmとなるように切断し、図1(c)に示すハニカム焼成体33の形状と略同様の形状の生のハニカム成形体を作製した。
【0062】
(2)次に、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を乾燥させ、ハニカム成形体の乾燥体とした後、上記生成形体と同様の組成のペーストを所定のセルに充填し、再び乾燥機を用いて乾燥させた。
【0063】
(3)乾燥させたハニカム成形体を400℃で脱脂し、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成を行うことにより、ハニカム焼成体33を作製した。
製造したハニカム焼成体33は、長さが150mm、セルの数が31個/cm、セル壁の厚さが0.3mmであった。
【0064】
(4)次に、平均繊維長20μmのアルミナファイバ30重量%、平均粒子径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性の接着材ペーストを用い、ほぼ均一な厚さになるように塗布して約1mmの厚さの接着材ペースト層を形成し、この接着材ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返し、この後、120℃で乾燥させる乾燥工程を行うことにより、16個のハニカム焼成体33からなる大きな四角柱状の積層体を形成した。次に、ダイヤモンドカッターを用いて積層体を切断することにより、直径が143mmで円柱形状のセラミックブロックを作製した。
【0065】
(5)次に、接着材ペーストと同じ組成のシール材ペーストを用い、上記セラミックブロックの外周部にシール材ペースト層を形成し、120℃で乾燥することにより、厚さが1.0mmのシール材層を形成した。
この後、実施例1と同様に、ハニカム構造体の接着材層とシール材層との境界に相当する部分をSEMにより観察した。図10、11は、その結果を示すSEM写真である。なお、図11は、図10における境界部分を拡大した図である。
図10、11に示すように、比較例1では、セラミックブロックとシール材層との境界部分を明確に区別することができ、接着材層とシール材層との境界部分に明らかな境界が発生していた。
【0066】
(サイクル運転に対する耐久性の評価)
まず、実施例1及び比較例1に係るハニカム構造体をエンジンの排気通路に配置し、さらにハニカム構造体よりガス流入側に、市販のコージェライトからなるハニカム構造体の触媒担持体(直径:145mm、長さ:100mm、セル数(セル密度):400セル/inch、白金担持量:5g/L)を設置して排気ガス浄化装置とし、エンジンを回転数3000min−1、トルク50Nmでパティキュレートを7時間捕集した。パティキュレートの捕集量は、8g/Lであった。
【0067】
その後、エンジンを回転数1250min−1、トルク60Nmとし、フィルタの温度が一定となった状態で、1分間保持した後、ポストインジェクションを行い、エンジンの前方にある酸化触媒を利用して排気温度を上昇させ、パティキュレートを燃焼させた。
上記ポストインジェクションの条件は、開始後1分間にハニカム構造体の中心温度が600℃でほぼ一定になるように設定した。そして、上記工程を10回繰り返し、ハニカム構造体に剥離等が発生したか否かを目視により観察した。
【0068】
その結果、比較例1のハニカム構造体では、接着材層とシール材層との境界部分で剥離が生じていたが、実施例1のハニカム構造体では、依然として接着材層とシール材層との境界部分は認められず、剥離も生じていなかった。
【0069】
(第二実施形態)
第一実施形態においては、載置面上に位置決め用の突起部が立設された載置部材を用いたが、載置部材は、載置面に位置決め用の溝が設けられた載置部材であってもよい。
図6(a)〜(d)は、載置面に位置決め用の溝が設けられた載置部材と該載置部材上に配置されたハニカム焼成体を模式的に示した正面図である。
【0070】
図6(a)〜(c)において、それぞれ載置面60a、62a、64aに位置決め用の溝部61a、63a、65aが設けられた載置部材60、62、64を示している。平面図は示していないが、長手方向に同じ幅で形成された溝部61a、63a、65aのなかにハニカム焼成体31〜33の下部が収容され、微小の幅でのみハニカム焼成体31〜33が左右に移動可能なようになっている。
ハニカム構造体の最下部に相当するハニカム焼成体31、32を載置する載置部材は、下に凸の形状となっている必要があり、図3(c)に示した載置部材16は、載置面16aが、ハニカム焼成体31、32の下部と同じ形状であり、また、その厚さがシール材層の厚さdより薄い円弧形状であるので、図6(d)に示すように、第二実施形態でもこの載置部材16を用いる。また、突起部17aを長さ方向に連続的に形成することにより、載置面16aに溝部を設けてよい。
【0071】
ハニカム構造体の製造方法に関しては、載置部材として図6(a)〜(d)に示した載置部材60、62、64、16を用いる他は、第一実施形態と同様に実施するので、詳しい説明は、省略する。
第二の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法においても、上述した第一の実施形態と同様の作用・効果を奏することができる。
【0072】
(第三実施形態)
第一実施形態及び第二実施形態においては、複数のハニカム焼成体の端面に当接して、それぞれのハニカム焼成体を保持することが可能なように構成された保持部材を使用していたが、保持部材は、複数のハニカム焼成体の端面に当接して、上記複数のハニカム焼成体を一括して保持することが可能なように構成されていてもよい。
【0073】
図7(a)〜(d)及び図8(a)〜(d)は、複数のハニカム焼成体の端面に当接して、上記複数のハニカム焼成体を一括して保持することが可能なように構成された保持部材及び円筒容器を模式的に示した図であり、左側が縦断面図、右側が平面図である。なお、各ハニカム焼成体については、輪郭のみで示している。
【0074】
まず、本実施形態で使用する保持部材について説明すると、図7(a)〜(d)及び図8(a)〜(d)に示すように、それぞれの保持部材70、72、74、76は、当接保持部材70a、72a、74a、76aとそれを支持する支持部材71a、73a、75a、77aとから構成されている。
すなわち、1個の保持部材70は、1個の板状の当接保持部材70aとそれを支持する4本の支持部材71aより構成されており、当接保持部材70aが、載置部材上に載置された4個のハニカム焼成体を一括して挟んでしっかりと保持する。支持部材71aの数は、4本に限られるものではない。当接保持部材70a、72a、74a、76aは、接着兼シール用ペーストの端面及び円筒容器18からの漏れを防止する端面密着部材40(図4(a)参照)の役割も果たしている。なお、図示はしないが、ハニカム焼成体のセルに接する部分に空気孔を設けている。
【0075】
次に、図7(a)〜(d)及び図8(a)〜(d)に基づいて、円筒容器中でハニカム集合体を形成し、該ハニカム集合体の内部及びハニカム集合体と円筒容器との空隙に接着兼シール用ペーストを注入する工程について簡単に説明する。
まず、第一実施形態と同様に、載置部材10の載置面10a上に4個のハニカム焼成体31、32を配置した後、円筒容器18の内部に搬送し、載置面10aが水平になるように所定の位置に固定する(図7(a)参照)。
【0076】
次に、円筒容器18の近くに配設された保持部材70がハニカム焼成体31、32の両端面方向に延び、2個の当接保持部材70aが4個のハニカム焼成体31、32の両端面に当接し、しっかり挟んで保持するとともに、当接保持部材70aの曲面部分が円筒容器18の内側面にぴったりと密着する(図7(b)参照)。また、当接保持部材70aの当接面は、平面であるので、ハニカム焼成体31、32の端面が同一平面上に揃うこととなる。
【0077】
次に、載置部材10を他所に移動させ、載置面12a上に4個のハニカム焼成体32、33とが載置された載置部材12を、円筒容器18内であって、保持部材70により保持されハニカム焼成体31、32の下の所定の位置に搬送して固定する(図7(c)参照)。
【0078】
次に、円筒容器18の近くに配設された別の保持部材72がハニカム焼成体32、33の両端面方向に延びてハニカム焼成体32、33の両端面に当接し、しっかり挟んで保持するとともに、当接保持部材72aの曲面部分(図7(d)中、左右の曲線部分)が円筒容器18の内側面にぴったりと密着する。
このとき、保持部材72は、8個のハニカム焼成体31〜33の端面が同一平面上に揃うように、ハニカム焼成体32、33を保持する(図7(d)参照)。
【0079】
次に、前と同様に載置部材12を他所に移動させ、載置面14a上に4個のハニカム焼成体32、33が載置された載置部材14を、円筒容器18内であって、保持部材70、72により保持されハニカム焼成体31〜33の下の所定の位置まで搬送して固定する(図8(a)参照)。
【0080】
次に、円筒容器18の近くに配設された別の保持部材74が周囲からハニカム焼成体32、33の両端面方向に延びてハニカム焼成体32、33の両端面に当接し、ハニカム焼成体32、33を両端面からしっかり挟んで保持するとともに、当接保持部材74aの曲面部分(図8(b)中、左右の部分)が円筒容器18の内側面にぴったりと密着する。(図8(b)参照)。
このとき、保持部材74は、12個のハニカム焼成体31〜33の端面が同一平面上に揃うように、ハニカム焼成体32、33を保持する。
【0081】
次に、載置面16aに4個のハニカム焼成体31、32が載置された載置部材16を、保持部材70、72、74により保持されハニカム焼成体31〜33の下の所定の位置に搬送し、固定する(図8(c)参照)。
【0082】
次に、円筒容器18の近くに配設された別の保持部材76が周囲からハニカム焼成体31、32の両端面方向に延びてハニカム焼成体31、32の両端面に当接し、しっかり挟んで保持するとともに、当接保持部材76aの曲面部分(図8(d)中、左右の部分)が円筒容器18の内側面にぴったりと密着する。
このとき、保持部材76は、16個のハニカム焼成体31〜33の端面が同一平面上に揃うように、ハニカム焼成体31、32を保持する(図8(d)参照)。
【0083】
本実施形態では、保持部材76が第一実施形態で用いる端面密着部材40(図4(a)参照)をかねているので、図4(a)に示した端面密着部材40の配置工程を省くことができる。この後、第一実施形態と同様に、注入パイプ18aより接着兼シール用ペーストを注入し、接着兼シール用ペーストの乾燥工程を経てハニカム構造体30の製造を完了する。
【0084】
第三の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法においても、上述した第一の実施形態と同様の作用・効果を有することができる。
【0085】
(その他の実施形態)
本発明の製造方法により得られるハニカム構造体の形状は、図4(b)に示した円柱状に限定されるものではなく、楕円柱状、多角柱状等の任意の柱の形状であればよい。
また、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の数は、上記実施形態のように、16個に限定されるものではなく、16個より多くても少なくてもよい。
【0086】
本発明のハニカム構造体の製造方法により製造されるハニカム構造体の気孔率は、30〜70%であることが望ましい。
上記ハニカム構造体の強度を維持することが可能であるとともに、排ガスがセル壁を通過する際の抵抗を低く保つことができるからである。
【0087】
これに対し、気孔率が30%未満であると、セル壁が早期に目詰まりを起こすことがあり、一方、上記気孔率が70%を超えるとハニカム構造体の強度が低下して容易に破壊されることがある。
なお、上記気孔率は、例えば、水銀圧入法、アルキメデス法、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定等、従来公知の方法により測定することができる。
【0088】
上記ハニカム構造体の長手方向に垂直な断面におけるセル密度は特に限定されないが、望ましい下限は、31.0個/cm(200.0個/in)、望ましい上限は、93.0個/cm(600.0個/in)、より望ましい下値は、38.8個/cm(250.0個/in)、より望ましい上限は、77.5個/cm(500.0個/in)である。
【0089】
上記ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に限定されるわけではなく、他のセラミック原料として、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、金属と窒化物セラミックの複合体、金属と炭化物セラミックの複合体等であってもよい。
また、上述したセラミックに金属ケイ素を配合したケイ素含有セラミック、ケイ素やケイ酸塩化合物で結合されたセラミック等のセラミック原料も構成材料として挙げられる。
【0090】
上記ハニカム焼成体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素が特に望ましい。
耐熱性、機械強度、熱伝導率等に優れるからである。
また、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたもの(ケイ素含有炭化ケイ素)も望ましい。
【0091】
湿潤混合物における炭化ケイ素粉末の粒子径は、特に限定されないが、後の焼成工程を経て作製されたハニカム焼成体は、ハニカム成形体に比べて小さくなる場合が少ないものが望ましい。例えば、1.0〜50μmの平均粒子径を有する粉末100重量部と0.1〜1.0μmの平均粒子径を有する粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが望ましい。
【0092】
湿潤混合物を調製する際に使用する有機バインダは特に限定されず、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。このなかでは、メチルセルロースが望ましい。有機バインダの配合量は、通常、セラミック粉末100重量部に対して、1〜10重量部が望ましい。
【0093】
湿潤混合物を調製する際に使用する可塑剤や潤滑材は、特に限定されず、可塑剤としては、例えば、グリセリン等が挙げられる。また、潤滑剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物等が挙げられる。
潤滑剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等が挙げられる。
なお、可塑剤、潤滑剤は、場合によっては、湿潤混合物に含まれていなくてもよい。
【0094】
また、湿潤混合物を調製する際には、分散媒液を使用してもよく、分散媒液としては、例えば、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられる。
さらに、湿潤混合物中には、成形助剤が添加されていてもよい。
成形助剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられる。
【0095】
さらに、湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0096】
また、湿潤混合物中の有機分の含有量は10重量%以下であることが望ましく、水分の含有量は8〜30重量%であることが望ましい。
【0097】
セルを封止する封止材ペーストとしては特に限定されないが、後工程を経て製造される封止材の気孔率が30〜75%となるものが望ましく、例えば、湿潤混合物と同様のものを用いることができる。
【0098】
接着兼シール用ペーストにおける無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機バインダのなかでは、シリカゾルが望ましい。
【0099】
接着兼シール用ペーストにおける有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0100】
接着兼シール用ペーストにおける無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバー等を挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維のなかでは、アルミナファイバが望ましい。
【0101】
接着兼シール用ペーストにおける無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等を挙げることができ、具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素からなる無機粉末等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化ケイ素が望ましい。
【0102】
さらに、接着兼シール用ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
ハニカム構造体には、触媒が担持されていてもよい。この場合、上記触媒は、ハニカム構造体のセル壁表面及び/又は内部に触媒担持層が形成され、その表面に触媒が担持されるのが望ましい。
【0103】
上記触媒担持層を形成する材料としては、比表面積が高く触媒を高分散させて担持させることのできる材料であることが望ましく、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ等の酸化物セラミックが挙げられる。
これらの材料は、単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
この中でも、250m/g以上の高い比表面積を有するものを選択することが望ましく、γ−アルミナが特に望ましい。
【0104】
上記アルミナからなる触媒担持層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、ハニカム構造体をアルミニウムを含有する金属化合物の溶液、例えば、硝酸アルミニウムの水溶液などに含浸して、ゾル−ゲル法によりセル壁にアルミナ膜を被膜させ、ハニカム構造体を乾燥、焼成する方法を用いてもよい。
【0105】
上記触媒担持層の表面に担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましく、このなかでは、白金がより望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属、それらの酸化物、酸化物触媒を用いることもできる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1(a)〜(c)は、ハニカム構造体を種々のハニカム焼成体を組み合わせて製造する際に用いるハニカム焼成体を模式的に示した斜視図である。
【図2】図2(a)〜(d)は、第一の実施形態に係るハニカム構造体の製造工程における保持工程と注入工程とを模式的に示した縦断面図及び平面図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、第一の実施形態に係るハニカム構造体の製造工程における保持工程と注入工程とを模式的に示した縦断面図及び平面図である。
【図4】図4(a)は、第一の実施形態に係るハニカム構造体の製造工程における保持工程と注入工程とを模式的に示した縦断面図及び平面図であり、図4(b)は、作製された本発明のハニカム構造体30を示す概略斜視図である。
【図5】図5(a)は、ハニカム構造体30を構成するハニカム焼成体33を示す斜視図であり、(b)は、そのA−A線断面図である。
【図6】図6(a)〜(d)は、載置面に位置決め用の溝が設けられた載置部材と該載置部材上に配置されたハニカム焼成体を模式的に示した正面図である。
【図7】図7(a)〜(d)は、第三の実施形態に係るハニカム構造体の製造工程における保持工程と注入工程とを模式的に示した縦断面図及び平面図である。
【図8】図8(a)〜(d)は、第三の実施形態に係るハニカム構造体の製造工程における保持工程と注入工程とを模式的に示した縦断面図及び平面図である。
【図9】実施例1に係るハニカム構造体の接着材層とシール材層との境界に相当する部分を示すSEM写真である。
【図10】比較例1に係るハニカム構造体の接着材層とシール材層との境界部分を示すSEM写真である。
【図11】比較例1に係るハニカム構造体の接着材層とシール材層との境界部分を示すSEM写真であり、図10の拡大図である。
【符号の説明】
【0107】
10、12、14、16 載置部材
10a、12a、14a、16a 載置面
11a、11b、13a、13b、15a、15b、17a、17b 突起部
20、21、22、23 保持部材
30 ハニカム構造体
31、32、33 ハニカム焼成体
31a、32a、33a セル
31b、32b、33b セル壁
31c、32c、33c 封止材
40 端面密着部材
40a 外枠
40b 内枠
60、62、64 載置部材
60a、62a、64a 載置面
61a、63a、65a 溝部
70、72、74、76 保持部材
70a、72a、74a、76a 当接部材
71a、73a、75a、77a 支持保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着剤層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にシール材層が設けられたハニカム構造体であって、
前記接着剤層と前記シール材層とは一体的に形成されており、両者を区分けする境界面が存在しないことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記接着剤層及び前記シール材層は、無機繊維と無機バインダとを含む請求項1記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記多数のセルのいずれか一方の端部は、封止材により封止されている請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着剤層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にシール材層が設けられたハニカム構造体の製造方法であって、
前記ハニカム焼成体を接着剤層を介して結束する結束工程と、前記セラミックブロックの周囲にシール材層を形成するシール材層形成工程とを同時に行うことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
円筒容器のなかで、複数個の前記ハニカム焼成体を所定の位置に位置決めし、その両端面を保持し、前記ハニカム焼成体が所定の間隔で配置されたハニカム集合体を形成する保持工程と、
前記ハニカム集合体の内部及び周囲に接着兼シール用ペーストを注入する注入工程と、
前記接着兼シール用ペーストを乾燥固化させて接着剤層及びシール材層とする乾燥工程とを行うことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−307525(P2008−307525A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16388(P2008−16388)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】