説明

ハロゲン化揮発性麻酔剤の静脈投与による、心臓保護および神経保護のための方法

虚血事象に暴露される組織を有する患者を処置する方法が提供される。この方法は、ハロゲン化揮発性麻酔剤を含む処方物を、その組織の虚血事象に対する抵抗性または寛容性を改善するに有効な量で非経口的に投与することによって実施される。本発明の好ましい実施形態において、患者に投与される処方物の量は、麻酔量未満である。この処方物は、虚血事象の前、同時またはその後に投与され得る。この方法は、例えば、虚血事象に暴露された心筋または神経組織を有する患者の処置に使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年10月11日に出願された米国仮出願番号第60/417,934号の優先権の利益を主張する。この開示は、本明細書において、本明細書において完全に開示されているかのごとく、参考として援用される。
【0002】
本発明は、患者にハロゲン化揮発性麻酔剤(HVA)の有効量を含む静脈内処方物を投与することによる、患者(好ましくはヒト)における虚血事象に対する組織の寛容性および抵抗性を改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
前臨床および臨床上の証拠によって、HVA(例えば、ハロタン、メトキシフルラン、イソフルラン、エンフルラン、デスフルランおよびセボフルラン)が、虚血事象の間の心臓保護に関する二次的利益を付与することが示唆されている。この利益は、プロポフォルおよびバルビツレート類のような非経口的に投与される麻酔剤では見られない。HVAが大脳酸素消費を減少させ、そしてこの機構および他の機構によって、神経組織の虚血の間の神経保護を付与し得るとの知見もまた増えつつある。
【0004】
虚血の組織寛容性に対するこれらの改善は、非常に所望され得るが、現在の揮発性麻酔剤は、概して、吸入のみによって投与され、これは、手術室のような管理された環境において麻酔機器を使用することを必要とする。これらの麻酔がより簡便に投与され得ることがより広い患者集団に提供されるために、病院の他の領域および病院外でHVAと投与する方法が非常に所望され得る。
【0005】
HVAの非経口的投与(特に、静脈内投与)は、血漿との組み合わせに関連する多数の因子に起因して問題となってきた。これらの麻酔剤は、水溶性が低く、そして従来の処方物を用いたその静脈内投与あまり寛容性がなく、重篤な局所反応を生じていた。さらに、その沸点がヒト体内の体温よりも通常同じまたは低いHVAの静脈内投与の際にガス塞栓が生じ得る。従来の麻酔剤のために使用されているより大規模な非経口処方物が提案されている。しかし、当該分野は、組織保護のためのそのような非経口処方物の使用の所望性を認識しておらず、そして特に、そのような組織保護を達成するための手術用麻酔剤の軌道の外にある使用の所望性を認識してこなかった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、虚血事象に暴露された、心臓、脳、血管系、腸、肝臓、腎臓および眼のような組織を有する患者を処置する方法に関する。この方法は、ハロゲン化揮発性麻酔剤を含む処方物を、該虚血事象への該組織の抵抗性または寛容性を改善するに有効な量で該患者に非経口的に投与する工程を包含する。好ましい実施形態では、その患者に投与される処方物の量は、麻酔量未満である。
【0007】
1つの好ましい実施形態では、この方法は、ハロゲン化揮発性麻酔剤に加えて、乳化アジュバントおよび乳化剤を含む処方物を用いて実施される。
【0008】
この方法を用いて、患者への処方物の投与は、虚血事象の前、同時および/または前に実施され得る。この虚血事象は、例えば、大動脈瘤修復、多発外傷、末梢血管疾患、腎臓血管疾患、心筋梗塞、卒中、敗血症および多臓器不全に関連し得る。
【0009】
処方物の投与は、処方物のボーラス投与または処方物の連続的な注入によって実施され得る。好ましくは、ハロゲン化揮発性麻酔剤は、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、ハロタンおよびセボフルランからなる群より選択される。
【0010】
本発明の好ましい局面は、虚血事象に暴露される心筋組織を有する患者を処置する方法に関する。虚血事象は、例えば、血管形成、冠状動脈バイパス手術、心筋カテーテル手術および不安定狭心症に関連し得る。この方法は、心筋組織の虚血事象に対する抵抗性または寛容性を改善するに有効な量で患者にハロゲン化不揮発性麻酔剤を含む処方物を非経口的に投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、患者に投与される処方物の量は、麻酔量未満である。処方物におけるハロゲン化揮発性麻酔剤は、例えば、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、ハロタンまたはセボフルランであり得る。
【0011】
本発明の別の好ましい局面は、心筋梗塞に暴露された心筋組織を有する患者を処置する方法に関する。この方法は、ハロゲン化揮発性麻酔剤を含む処方物を、該虚血事象に対する該心筋組織の抵抗性または寛容性を改善するに有効量で該患者に非経口的に投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、患者に投与される処方物の量は麻酔量未満であり、そして投与は、静脈投与によって行われる。処方物におけるハロゲン化揮発性麻酔剤は、好ましくは、セボフルラン、エンフルランおよびイソフルランから選択される。
【0012】
本発明の別の局面は、虚血事象に暴露される神経組織を有する患者を処置する方法に関する。例えば、虚血事象は、大動脈瘤修復、頚動脈血管内膜切除術、大脳動脈造影、卒中、切迫卒中および一過性虚血事象からなる群より選択され得る。この方法は、ハロゲン化揮発性麻酔剤を含む処方物を、該虚血事象に対する該神経組織の抵抗性または寛容性を改善するに有効量で該患者に非経口的に投与する工程を包含する。好ましくは、処方物の量は、麻酔量未満である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(定義)
以下の用語は、本願の目的のために、以下に示されるそれぞれの意味を有する。
【0014】
「ボーラス用量(投与)」とは、当業者に認識されるように、比較的短時間(例えば、約5分間以下)の間に行われる処方物の投与を意味する。
【0015】
「有効量」とは、麻酔剤の用量を記載するために使用されるとき、組織の虚血事象に対する抵抗性または寛容性を改善するに有効なHVAの量をいう。
【0016】
「組織の虚血事象に対する抵抗性および寛容性を改善する」とは、処置の効果を記載するために使用されるとき、(i)虚血事象後に期待される壊死性組織の量を減少させる処置;(ii)化学的符号(例えば、pH、CPKレベル、トロポニンレベル、S−100レベル、一酸化窒素、誘導性一酸化窒素合成酵素)を減少させる処置;または(iii)それ以外に、虚血臓器の構造的、機械的または挙動上の機能に関連すると期待される傷害の減少のような虚血傷害の減少の薬理学的、生理学的または医学的な指数を提供する処置をいう。
【0017】
「注入用量」とは、当業者によって認識されるように比較的長い時間(例えば、約2分より長く、好ましくは5分より長く)にわたり行われる処方物の投与を意味する。この投与は、虚血傷害の前、間または後に行われ得る。
【0018】
「最小肺胞内濃度(MAC)」とは、当該分野に於いて知られるように、麻酔剤の肺胞内濃度であり、そして1気圧の圧力下で吸入により投与され、これは、疼痛刺激に応答する患者の50%の運動を妨害する。MACは、加齢依存的であり、患者の医学的状態によって影響を受け得る、そしてこれはまた、患者に投与される他の薬学的因子によって影響を受け得る。HVAの静脈内投与の情況において、用語「MAC」または「MAC等価物」とは、患者の50%におけるそのような運動を妨害するガス状濃度の麻酔剤の吸入投与によって保持されるのと同じ血漿濃度の麻酔剤を生成する静脈内用量を意味することが意図される。
【0019】
「患者」とは、動物を意味し、好ましくは哺乳動物およびより好ましくはヒトを意味する。
【0020】
「鎮静」とは、十分な刺激を用いて患者が興奮され得るような患者を弛緩させるレベルを意味する。
【0021】
「麻酔量未満の用量」とは、以下の少なくとも1つが適用される麻酔用量をいう:(a)疼痛減少が患者の大部分における外科的刺激または外傷に対する患者の応答を除去するに不十分である用量;または(b)用量が1MACまたはMAC等価物未満であり、より好ましくは0.75MACまたはMAC等価物である。好ましい実施形態において、麻酔量未満の用量とは、(b)をさす。MAC値は、他のパラメータに応じて変動し得るが、麻酔量未満の用量は当業者(例えば、臨床医)により、患者の年齢、大きさおよび種について適切な値によって、近似され得る。患者に対して投与される血漿濃度は、患者によって吐き出されたHVAの濃度を監視することによって(非平衡質量移動についての適切な分配計数および補正を用いて)、または血液を直接サンプリングすることによって、見積もられ得る。
【0022】
「%v/v」とは、このエマルジョンの総用量の百分率とした、成分の用量に基づく特定の成分の百分率をいう。
【0023】
「%w/v」とは、このエマルジョンの総用量の百分率とした、成分の重量に基づく特定の成分の百分率をいう。
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、虚血事象からの損傷に対して感受性のある組織(例えば、心筋組織または神経組織)を有する患者を、HVAで処置して組織の虚血事象に対する寛容性を改善するための方法を提供する。この方法は、好ましくは、HVAを含む処方物を、虚血事象の前または間に静脈内で患者に投与することに関する。とりわけ、この方法は、組織を迅速に予備馴化させて虚血事象に抵抗させるための簡便な手順を提供する。
【0025】
より簡便な投与方法を提供することに加えて、HVAの静脈投与は、吸入による投与よりも、より迅速な保護効果の誘導を提供し得る。さらに、HVAの静脈内投与は、患者の気道狭窄を回避する。さらに、静脈投与は、いくつかのHVAに関連する気道過敏を除外し、HVAが処置環境に放出されることを減少させ、薬剤を投与するために噴霧器の必要性を除去し、病院の環境の内または外において投与を可能にし、虚血事象の前、間または後にHVAの投与を容易にし、そして吸入された麻酔剤の投与において訓練された人員の必要性を減少させる。
【0026】
虚血の結果としての組織損傷は、組織への血液供給の欠損と同時に生じ得る。そして、これはまた、次いで、例えば、損傷組織の再潅流に起因して虚血傷害を引き起こし得る。虚血事象に特に感受性のある組織としては、心筋、血管および神経の組織(特に大脳組織)が挙げられる。虚血に感受性のある他の組織としては、腸、肝臓、腎臓および眼からの組織が挙げられる。
【0027】
1つの好ましい局面において、処置されるべき患者は、心臓保護を必要とする。いくつかの実施形態において、この必要性は、心臓の治療または診断の手順において虚血の固有リスクに起因して発生し得る。例えば、虚血状態は、心臓および大脳の血管形成術(ステント置換を伴うかまたは伴わない)、大脳塞栓形成術のような治療手順の間、ならびに冠状動脈バイパス手術(バイパスポンプを使用するかまたは使用しない)の間に生じ得る。虚血状態はまた、カテーテル法および大脳動脈撮影法の間の診断手順の間に生じえ得る。さらに、心臓保護の必要性は、不安定アンギナのような特定の生理学的障害に起因して、外傷または心臓停止の期間の間、あるいは臓器採取または臓器移植の間に生じ得る。
【0028】
心臓保護の必要性が示される手術および診断の手順について、非経口処方物は、手術または診断の手順が虚血に対する組織の寛容性を改善するために行われる、直前、間またはその直後に与えられ得る。
【0029】
非経口処方物はまた、心臓保護が指示される緊急の状況(例えば、継続中の心筋梗塞を伴う患者の処置)において投与され得る。エンフルラン、イソフルランまたはセボフルランの処方物の、冠状動脈閉塞の前の静脈投与は、いまや、ビヒクル処置した動物にわたりウサギにおける心筋梗塞のサイズにおける顕著な減少を付与することが示された(実施例2を参照のこと)。
【0030】
別の好ましい局面において、処置されるべき患者は、神経保護を必要とする。そのような必要性は、例えば、動脈血流の中断の可能性のある特定の状況から生じ得る。そのような手順の非限定的な例は、頚動脈動脈内切除(carotid endarectomy)、大動脈瘤修復、大脳血管形成術、大脳ステント法および大脳動脈撮影法である。さらに、不全、一過性虚血性攻撃または妨害性不全(amarosisfugax)のような障害は、本発明の方法を用いた処置に関する候補状態である。二次不全のリスクを生じる不全が生じるか、または数時間もしくは数日内に不全のリスクが生じる別の状態が生じる場合、この方法は、そのようなリスクを減少させるために適用され得る。さらに、その処方物は、不全に対する組織の抵抗性または寛容性を改善するために、継続する不全に罹患する患者のために緊急使用のために投与され得る。
【0031】
当業者は、他の虚血組織傷害のリスクの増加に関連する状況を認識する。そのような状態としては、腸間膜動脈不全、腎臓動脈狭窄、肝臓静脈血栓症、末梢欠陥不全、多重外傷、敗血症および多臓器系不全が挙げられる。
【0032】
本発明の方法において、患者に投与される処方物の用量は、患者の状態および追求される処置の選択肢に依存する。多くの場合、HVAによって主な組織保護効果のみが提供されるように麻酔量未満である用量でこの処方物を投与することが望ましい。しかし、組織保護のほかに鎮静が所望される場合が存在する。例えば、その手順が患者を鎮静させることを必要とする上記手術および診断の手順のいくつかのような場合において、HVAは、二重の役割を果たし得、虚血からの組織保護を提供し、そして鎮静を提供する。
【0033】
HVAは、鎮静および組織保護の両方を患者に実現するためにより高い用量で投与される。麻酔量未満の用量のHVAはまた、ある用量の別の麻酔剤が投与されつつ、組織保護効果を提供するために、静脈内送達され得る。組織保護よび麻酔の両方が所望される場合において、さらなる薬物(例えば、筋弛緩剤、鎮静剤および鎮痛剤)もまた、鎮静剤の投与の間に通常なされるように、投与され得る。
【0034】
投与される処方物の投薬量が組織保護および鎮静の両方を提供するべきこの方法の実施形態において、実施者は、手術刺激または外傷に対する適切な感覚喪失を確実にする当該分野において周知である麻酔プロトコールに依存し得る。有効な鎮静を確実にする投薬量は、有効な組織保護に必要な寮よりも高く、その結果、これらのより高い用量での処方物の投与は、必要とされる適応症の両方を有効に処置する。
【0035】
この方法の他の実施形態において、麻酔量未満のより少量の処方物を投与し、その結果、組織保護効果のみがこの処置によって提供されることが所望される。そのような投与は、診断手順のような手順によって保障され得、ここでは、実施者からの刺激に対する患者の感覚を保存する必要があり、または本発明の処方物を用いて、組織保護効果を保障し、他方で正味の麻酔効果を別の麻酔処方物が達成する。当業者は、この処方物の麻酔量未満の用量を非経口的に投与することが望ましい他の実施形態(例えば、この投与が組織保護効果を提供する緊急の医学的状況)を認識する。そのような投与は、例えば、病院の救急室の職員による患者の処置の前(例えば、患者の搬送の間)に救急医療技師によって実施され得る。あるいは、非経口のHVAは、オピオイドまたはプロポフォルのような別のクラスの麻酔剤、あるいは別の吸入HVAとともに増す医療未満の量で用いられ得る。
【0036】
麻酔量未満有効量のエンフルラン、イソフルラン、セボフルランの投与は、例えば、いまや、ウサギにおける心筋保護を提供することが示された。ウサギでの実験は、0.15〜0.17のMAC等量(血中濃度として測定される)ほどの低さの投薬量でみられ得る(実施例2を参照のこと)。
【0037】
この処方物は、患者の必要性に依存して、ボーラス投与または注入投与を用いて投与され得る。当然、この処方物はまた、虚血事象の前、間または後に、緩慢な静脈プッシュ手順のような他の静脈注射を用いるか、または連続注入ポンプ手段によって投与され得る。
【0038】
処方物のボーラス静脈内投与のために、患者に送達されるHVAの量は、特定のHVAの選択に依存し、そしてHVAが麻酔性の役割を果たすべきかどうかに依存する。イソフルランについて、例えば、約10mg/kgから200mg/kgの投薬量が一般的に使用されるが、より高い量は、患者に挿管されている場合に用いられ得る。当業者には、任意の所定の患者において麻酔を誘発するに必要な投薬量レベルが、個々の患者の医学的状態、使用されるHVAに対する患者の応答および他の因子に依存して変動することが明らかである。従って、麻酔を誘発するために本明細書において使用される投薬量は、単に、例示であり、限定ではない。一般的に、組織保護を提供し、そして患者を麻酔させるイソフルランの用量は、約125mg/kgより多い。例えば、イソフルランについて、麻酔有効用量は、約145mg/kgであり、これは、このエマルジョンが10%v/vイソフルランを用いて処方される場合、1.0mL/kg処方物に対応する。患者に組織保護(例えば、心臓保護、神経保護)に有効であるが麻酔量未満である量でイソフルラン量を与える場合、約125mg/kgのイソフルラン未満の用量が代表的に投与される(例えば、110mg/kg)。実際の麻酔量未満の投薬量は、患者の年齢、状態および麻酔剤に応答、使用される他の薬物および多数の他の因子に依存する。表1(以下)は、イソフルランおよびデスフルランについての好ましい投薬量範囲を提供する。他のHVAについて好ましいボーラス投薬量は、HVAの相対力価に基づいて当業者に容易に算出され得る。
【0039】
処方物の注入投与のために、例えば、2mg/kg/分から20mg/kg/分のイソフルランの投薬量が、虚血事象からの組織保護のために有用である。この処方物の投与は、好ましくは、組織の予備馴化を生成するにおいて有用である時間にわたり、例えば、約15分である。いくつかの場合において、より短い期間(例えば、5分)もまた、十分であり得る。患者に対して組織保護および麻酔の両方を提供するイソフルランの注入速度は、約8mg/kg/分より速く、たとえば、12mg/kg/分である。患者が、組織保護(例えば、心臓保護、神経保護)に有効であるが麻酔量未満である量のイソフルランの量が与えられる場合、イソフルランは、好ましくは、約8mg/kg/分未満の速度で投与される。表1(以下)は、イソフルランおよびデスフルランについての好ましい投薬速度を例示する。他のHVAについての好ましい注入速度は、HVAの相対効力に基づいて当業者によって容易に算出され得る。
【0040】
【表1】

【0041】
本発明において用いられ得る代表的なHVAとしては、ハロタン、メトキシフルラン、イソフルラン、エンフルラン、デスフルランおよびセボフルランが挙げられる。好ましくは、HVAは、イソフルラン、ハロタン、エンフルランまたはセボフルランである。エマルジョンは、約1%から30%v/vの範囲のHVAを含む。
【0042】
HVAは、虚血事象に対する組織抵抗性または慣用性を改善するに有効なHVAの量の送達を達成する任意の処方物中で投与され得る。本発明に適切な処方物としては、例えば、油および界面活性剤を含む処方物、およびリポソーム処方物が挙げられる。
【0043】
この方法において使用される1つの好ましい静脈内処方物は、HVA、乳化アジュバントおよび1または複数の乳化剤(エマルジョン安定化剤としても知られる)を含むエマルジョンである。このエマルジョンは、代表的には水成分であるビヒクルを含む。必要に応じて、このエマルジョンは、等張化剤および塩基のようなさらなる成分を含み得る。
【0044】
このエマルジョンは、乳化アジュバントを含み、この乳化アジュバント中では、HVAは、可溶性であり、そして好ましくは、ここではHVAは、高度の可溶性である。適切なアジュバントとしては、例えば、ダイズ油またはペルフルオロカーボン溶媒(例えば、ペルフルオロデカリン)が挙げられる。ダイズ油またはペルフルオロカーボン溶媒の特性を有する他の乳化アジュバントは、当業者に明らかであり、そしてこの処方物において使用され得る。乳化アジュバントのために有用な濃度は、約5%から30%w/vであり、そして好ましい範囲は、10%から20%w/vである。HVAおよび乳化アジュバントの総容量は、好ましくは40%以下である。
【0045】
麻酔処方物はまた、乳化剤を含み得、この乳化剤は、とりわけ、エマルジョンを安定化するに於いて支援する。例えば、レシチンのようなリン脂質は、エマルジョンを安定化するに有効な量で使用され得る。レシチンは、例えば、代表的に、約0.2%から3.6%w/vの量で使用される。
【0046】
この処方物のためのビヒクルは、代表的には、水成分(例えば、希釈水性緩衝剤または水ニート)である。水ニートがビヒクルとして用いられる場合、塩基(例えば、水酸化ナトリウム)が適切なレベルに処方物のpH(例えば、約6−9)を調整するために用いられ得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、等張化剤としてさらなる成分を含むことが利益があり得る。等張化剤は、塩化ナトリウムまたはポリオール(例えば、グリセロール)であり得、これは、存在する場合、約1%w/vから4%w/vの範囲で用いられる。
【0048】
この方法において使用するための1つの特に好ましい処方物は、乳化アジュバントとして大豆油を、乳化剤として約2.4w/v%のレシチン、等張化剤としてグリセロールを、注入ビヒクルとして水を、およびイソフルラン、エンフルランおよびセボフルランから選択されるHVAとを使用する。
【0049】
別の特に好ましい処方物は、乳化アジュバントとしてペルフルオロデカリンのようなペルフルオロカーボン、乳化剤として約3.6%w/v中のリン脂質およびビヒクルとして水を用いる。例えば、フルオロカーボンエマルジョン(例えば、米国特許第5,628,930号および同第5,635,538号)(Weers et al.;これらは、両方とも、本明細書において参考として援用される)が使用され得る。イソフルラン、エンフルランおよびセボフルランから選択されるHVAが好ましくは、この処方物に添加され得る。
【0050】
エマルジョン処方物は、安定かつ滅菌した処方物を得るための任意の方法によって調製され得る。処方物を調製するための1つの好ましい方法において、適切な量の乳化剤アジュバント(例えば、ダイズ油)および乳化剤(例えば、レシチン)が、熱または攪拌のような任意の溶解プロセスを急がせるさらなる手段を用いて合わせられる。次いで、適切な量のHVAをアジュバント乳化剤混合物に溶解して、そのエマルジョンの油相を形成させる。別個に、このエマルジョンの水相は、処方物において使用される水野成分を含む溶液を用いて調製される。この時点で、最適な等張化成分(例えば、塩化ナトリウム、グリセロール)が、この水成分と合わせられ得る。この油相をこの水相に加えて、混合して一次乳化物を生成させる。乳化剤のpHは、塩基(例えば、水酸化ナトリウム)を用いて調整され得、そして残りの水をその乳化剤に加えて、その処方物を所望の容量に仕上げる。得られた混合物は、例えば、ホモジナイザを用いて乳化されて、最終乳化物をを形成する。乳化剤は、濾過され得、ついで、最終の容器に移され得る。これらは、そのような処理が処方物に対して顕著なかつ不可逆的な物理的変化を生じない場合、適切な熱処理によって滅菌され得る。
【0051】
好ましくは、投与プロトコルは、HVAの揮発性に起因する微少なバブルの形成を最小化するよう設計される。微少なバブルは、特に、デスフルランのようなより揮発性のHVAを含む処方物において、呼吸終期COにおける減少および動脈と肺胞血との間のCO勾配における減少を生じ得る。そのような事象は、HVA含有処方物が体温に温められるときよりも乳化剤が室温で投与されるときにより生じるようである。従って、この処方物は、好ましくは、一旦体温にまでそれが温められると患者に投与される。
【0052】
さらに、投与プロトコルは、好ましくは、多数回用量バイアルから用量を引き抜くための陰圧の使用を回避すべきである。なぜなら、バイアルに残るHVAの濃度が、HVAの揮発性に起因して変動し得るからである。しかし、より高い沸点の麻酔剤は、これは、余り問題にならなくあり得る。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は、本発明をさらに例証するが、当然、本発明の範囲をいかなる様式でも制限しないと解釈されるべきである。
【0054】
(実施例1:静脈内HVA処方物の調製)
本実施例において、セボフルランエマルジョン処方物の調製を具体的に記載する。類似の手順を、エンフルラン、イソフルランおよびデスフルランを含む処方物のために用いる(以下を参照のこと)。
【0055】
(油相の調製)
混合アセンブリとともに容器の風袋重量を測る。
【0056】
精製ダイズ油をこれに加える。
【0057】
油を約50±5℃に加熱する。
【0058】
レシチンを油相容器に加える。
【0059】
レシチンが完全に溶解するまで内容物を混合する。
【0060】
油/レシチンの温度を約22±2℃にし、そしてこの温度を維持する。
【0061】
要求された量のセボフルランを加え、そして温度を22±2℃に維持する。
【0062】
(水相の調製)
水相の調製のために用いられる混合アセンブリを用いて溶液の風袋重量を測る。
【0063】
水相容器に必要な注射用の水を加える。
【0064】
グリセリンを水相容器に加える。
【0065】
(油相への水相の添加)
水相中の成分および油相中の成分を完全に溶解させ、この水相をその油相に移動させる。
【0066】
(乳化)
一次エマルジョンを22±2℃で少なくとも10分間激しく攪拌する。
【0067】
この一次エマルジョンを均質性について観察する。エマルジョンが均一になったら攪拌を停止する。
【0068】
(一次エマルジョンの冷却)
この一次エマルジョンの冷却のために氷冷浴を組み立てる。
【0069】
この一次エマルジョンを、定常的な攪拌を伴い迅速に15℃未満に冷却する。
【0070】
(均質化)
この一次エマルジョンを3回ホモジナイザーに14,500psiで通す。
【0071】
氷冷浴を使用してこのエマルジョンをこの工程の間冷却する。
【0072】
きれいな乾燥容器に最終通過物を集める。
【0073】
このエマルジョンを個々の最終容器に窒素カバーのもとで充填する。
【0074】
【表2】

【0075】
処方が完了した後、処方物中のエボフルランの実際の回収は、ガスクロマトグラフィー分析により7.0%w/vであると測定された。
【0076】
エンフルラン、およびイソフルランを含む他の静脈内処方物のためのプロトコールは、セボフルランに使用したものと同一であった。
【0077】
この手順はまた、デスフルランでも、デスフルランの沸点が低いのでさらに冷却を提供することが必要であったことを除けば同様の様式で行った。特に、油相を冷却し、そしてデスフルランと混合したときに2−5℃に維持し、水相を2−5℃に冷却し、その後油相と混ぜた。そしてエマルジョンを次の処理工程において2−5℃に維持する。
【0078】
表3は、エンフルラン、イソフルランおよびデスフルランの処方物について最終の処方後のHVAの標的濃度および実際のHVA濃度を示す。
【0079】
【表3】

【0080】
これらの静脈内処方物を実施例2において使用した。
【0081】
(実施例2:静脈内のデスフルラン、エンフルラン、イソフルランおよびセボフルランの、ウサギ心筋梗塞サイズに対する効果)
これらの実験を、エマルジョン中で静脈内投与される異なるHVA(エンフルラン、イソフルラン、セボフルランおよびデスフルラン)の、ウサギにおける虚血および再灌流後の心筋梗塞サイズに対する効果を特徴付けるために設計した。
【0082】
(一般的な調製)
雄性ニュージーランド白ウサギ(体重2.5−3.0kg)を、静脈内ペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)を用いて麻酔した。足反射および眼瞼反射が、実験の間完全になくなることを確実にするために必要とされるさらなるペントバルビタールの用量を滴定した。気管切開術を、背中中線切除により行い、そして気管にカニューレを入れた。ウサギには、大気酸素混合物(FiO=0.33)を用いて陽圧で呼吸させた。動脈血液ガス張力および酸塩基状態を、呼吸速度または換気量を調整することによって正常な生理学的な範囲(pH7.35−7.45、PaCO 25−40mmHg、およびPaO 90−150mmHg)に維持した。体温を、保温毛布で維持した。ヘパリン充填したカテーテルを右の頸動脈および左の頸静脈に、それぞれ動脈血圧および液体もしくは薬物の投与のために挿入した。維持流体は、実験の間に継続された0.9%生理食塩水(15ml/kg/h)からなった。
【0083】
左の開胸術を、第四肋間空間において行い、そして心臓を、心嚢のクレードルにつるした。左前方下降冠状動脈(LAD)の隆起した分岐を選択し、そして絹糸の結紮を、この動脈の周りに、基部と先端との間のほぼ半分のところに配置し、心筋梗塞サイズ実験における冠状動脈閉塞および再灌流を生成した、各々のウサギに、LAD閉塞の直前に500Uのヘパリンで抗凝固処置を執った。冠状動脈閉塞は、心外膜チアノーゼおよび虚血帯での部分的なジスキネジーの存在によって確認し、そして再灌流を、心外膜充血応答を観察することによって確認した。血液力学を、実験の間ポリグラフに連続記録した。手術の調製後、30分安定化させた。
【0084】
(実験計画)
実験のための実験計画を図1に例示する。ウサギを、ランダムに6実験群のうちの一つに割り当てた:コントロール群(0.9%生理食塩水注入)、ビヒクル群(薬物液体ビヒクル)、または4つの麻酔剤群(乳化デスフルラン、イソフルラン、エンフルランまたはセボフルラン)のうちの一つ。麻酔剤のバイアルは、実施例1において調製されるように4℃に保存した。開封後、バイアルは、水浴に37℃で2時間放置した。麻酔剤は、シリンジに直接注ぎ、陰圧吸引は使用しなかった。
【0085】
全身の血流力学、動脈血液ガス張力および麻酔剤の血中濃度の基本線の測定を装置が完成した後30分で行った。ウサギに0.9%生理食塩水、薬物脂質ビヒクル(10mg/h)または静脈内の揮発性麻酔剤(10mg/h)を30分にわたり与えた。注入を、冠状動脈閉塞(記憶時間)の前30分で停止した。麻酔剤の血中濃度測定を、基本線において、麻酔注入の最後にて、および記憶時間の最後にて(冠状閉塞の直前)行った。血中のHVA濃度を、ガスクロマトグラフィー(GC)分析により測定した。すべてのウサギには、30分のLAD閉塞、その後3時間の再灌流を受けさせた。
【0086】
(心筋梗塞サイズの決定)
各実験の終わりに、LADを再度閉塞させ、そして3mlのPatent青色素を静脈内注射した。梗塞リスクのある左心室領域を、周りに正常領域(青く染まる)から分離し、そして2つの領域を37℃で20分から30分間、pH7.4に調整した0.1Mリン酸緩衝液中で1%の2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロリド中でインキュベートした。10%ホルムアルデヒド中で一晩保存した後、梗塞心筋およびリスク領域内の非梗塞心筋を、慎重に分離し、そして秤量した。梗塞サイズは、リスク面積の%として表現した。処置しにくい心室細動を発祥したウサギおよびLV質量の15%未満のリスク面積を有するウサギを、次の分析から排除した。
【0087】
(統計学的分析)
群内および群間のデータの統計学的分析を、反復測定値について偏差分析(ANOVA)を用いて、続いてStudent−Newman−Keuls検定を行うことによって実施した。群間の変化は、p値が0.05未満であったときに統計学的に有意であるとみなした。すべてのデータは平均±SEMで表現する。
【0088】
(結果)
(一般的考察)
すべての麻酔剤は、以前に示されるように等価の実験条件(すなわち、注射前2時間室温で温めた)で用いた。
【0089】
デスフルランの場合において、バブルがシリンジに蓄積することが観察され、そしてデスフルランの調製中ゆっくり温める間チューブが延びることが観察された。バブルを取り除く努力にもかかわらず、すべてのバブルを取り除くことは不可能であり、いくらかは、注射時間の間注入されたようである。従って、デスフルランの結果は、この実験の限定の制約であると解釈されるべきである。
【0090】
(血流力学)
各々の実験群の血流力学データを、表4に示す。実験群間では心拍の差異はなかった。平均動脈圧(MAP)において、コントロールウサギに比べてデスフルラン処置ウサギの記憶時間の間に減少があった。MAPは、コントロールウサギに比べてセボフルラン処置において基本線および注入の時間の間増加した。MAPは、イソフルラン群において注入時間の間減少した。心筋酸素消費の間接的な指標である(心拍)−圧力の積は、1時間の再灌流後、デスフルランおよびイソフルランを受けたウサギにおいて減少した。
【0091】
【表4】

【0092】
(麻酔剤濃度、動脈血液ガス張力および呼吸期終期ガスの分析)
動脈血液ガス張力、呼吸期終期ガスおよび麻酔剤の血中濃度のデータをそれぞれ表5−7にまとめる。実験群間でのpH、PaOまたは呼吸期終期COには変化はなかった。
【0093】
GCによって測定される血中濃度は、以下に記載される計算によりMAC等価の値に変換した。まず「n」すなわち、1.0MACのHVAに暴露される間の1Lの肺胞ガス中のHVAのモル数を、算出した。理想気体法則n=PV/RTを用いて、肺胞ガス中の1MACに存在するHVAのモル数を算出する。ここで、V=1L、T=273+37=310(K);およびR=0.0821(一般ガス定数)。Pすなわち圧力は、37℃での蒸気圧(これは、47.1torr)およびHVAの容積%を考慮し決定した。HVAの容積%(MAC値)は、ウサギにおいて決定された文献値から得(Schelleretal.Can.J.Anaesth.1988,35:133−136;Drummond,JC Anesthesiology 1985;62:336−8,およびDoorley et al.Anesthesiology 1988;69,89−91)、そして表8に提示する。
【0094】
ついで、ウサギにおける1MACでの37℃での1L中HVAのモル数値を用いて、既知の血液/ガス分画値(λとしても知られる)を用いることによって血液中に存在するHVAの濃度を決定した。この研究に用いたHVAについての血液ガス分画値を、表8に示す。ついで、「x」(すなわち、ウサギにおける37℃での1MACでのHVAの等価の血中濃度)についての値を、以下の等式で決定する:
x=λn。
【0095】
MAC等価値としてHVAの測定血中濃度を表現するために、測定した血中濃度をxで割る。表8において示されるMAC等価値は、且つされた血中濃度から上記にしたがって算出した(表7を参照のこと)。
【0096】
【表8】

【0097】
【表5】

【0098】
【表6】

【0099】
【表7】

【0100】
(梗塞サイズ)
体重、左心室重量、リスク重量面積、およびリスク面積/左心室質量は、群間で同様であった(表9)。エンフルラン、イソフルランおよびセボフルランは、心筋虚血再灌流障害に対して保護を与えた(図2)。逆に、乳化デスフルランは、心臓保護を付与しなかった(デスフルランの一部が付与できなかったのは、この揮発性麻酔剤がエマルジョン中に残っていたことに関連し得る)。これらの結果はまた、梗塞サイズの重量を、リスク面積の重量の関数としてプロットすることによって確認した(図3、4A、4B、5Aおよび5B)。脂質エマルジョン注入は、図3により示されるように、心筋の虚血再灌流障害に対してなんの効果もなかった。デスフルラン群におけるすべての点は、コントロールの回帰線に近く存在する。これは、リスク面積の任意の値について、デスフルラン群は、コントロールに匹敵する梗塞サイズを発祥させたことを示す(図4A)。エンフルラン、イソフルラン、およびセボフルランの群についてのデータ点は、コントロール線よりも顕著に低く存在した。これは、リスク領域の任意のサイズについて、梗塞がコントロールよりも小さかったことを示す(図4B、5A、および5B)。
【0101】
【表9】

【0102】
これらの結果は、HVAであるエンフルラン、イソフルランおよびセボフルランが、このウサギインビボモデルにおいてエマルジョン中で静脈内投与されるとき心筋虚血再灌流障害に対して、適切な保護を提供することを示す。そのような心臓保護が、0.17MAC等価物未満の血中濃度で達成されることは注目に値する。
【0103】
現在のデータは、デスフルラン処方物は、この研究において心臓保護を付与しなかったことを示唆するが、この特定の処方物は、デスフルランの静脈内送達に最適化されていなかったかもしれないことに留意すべきである。上記のように、静脈内投与のために体温にデスフルランを温めた際にバブルが形成された。従って、デスフルランについての心臓保護の結果は、これらの観察に鑑みて解釈されるべきである。他の静脈処方物または他の注射技術は、デスフルランにおいて観察された困難を克服し得る可能性があり得る。
【0104】
好ましい実施形態において協調して本発明を記載してきたが、当業者には、好ましいデバイスおよび方法における変形が使用され得ること、および本発明が本明細書において具体的に記載されたもの以外にも実施され得ることが自明である。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲によって規定される、本発明の趣旨および範囲内に包含されるすべての改変を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、ウサギにおける心筋梗塞サイズを決めるために使用される実験プロトコルの例示である。
【図2】図2は、各々の動物についてのリスクにある領域(AAR)の百分率として表現される梗塞サイズ(IS)を示す。
【図3】図3は、ビヒクル処置した動物についてのリスクにある領域(AAR)の関数としてプロットした梗塞サイズ(IS)を示すグラフである。
【図4A】図4Aは、デスフルラン処置した動物についてのリスクにある領域(AAR)の関数としてプロットした梗塞サイズ(IS)を示すグラフである。
【図4B】図4Bは、エンフルラン処置した動物についてのリスクにある領域(AAR)の関数としてプロットした梗塞サイズ(IS)を示すグラフである。
【図5A】図5Aは、イソフルラン処置した動物についてのリスクにある領域(AAR)の関数としてプロットした梗塞サイズ(IS)を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、セボフルラン処置した動物についてのリスクにある領域(AAR)の関数としてプロットした梗塞サイズ(IS)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血事象に供される組織を有する患者を処置する方法であって、該方法は以下の工程:
ハロゲン化揮発性麻酔剤を含む処方物を、該虚血事象への該組織の抵抗性または寛容性を改善するに有効な量で該患者に非経口的に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
投与される前記処方物が乳化アジュバントおよび乳化剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者に投与される前記処方物が麻酔性未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組織が、心臓、脳、血管系、腸、肝臓、腎臓および眼から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記虚血事象は、大動脈瘤修復、多発外傷、末梢血管疾患、腎臓血管疾患、心筋梗塞、卒中、敗血症および多臓器不全から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
投与される前記処方物の前記量は、麻酔量未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与は、前記虚血事象前に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記投与は、前記虚血事象と同時に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記投与は、前記虚血事象後に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記投与は、前記処方物のボーラス投与を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記投与は、前記処方物の連続注入を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ハロゲン化揮発性麻酔剤は、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、ハロタンおよびセボフルランからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
虚血事象に暴露される心筋組織を有する患者を処置する方法であって、該方法は:
ハロゲン化揮発性麻酔剤を含む処方物を、該虚血事象に対する該心筋組織の抵抗性または寛容性を改善するに有効量で該患者に非経口的に投与する工程を包含する、方法。
【請求項14】
投与される前記処方物が乳化アジュバントおよび乳化剤をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者に投与される前記処方物が麻酔性未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記虚血事象が、血管形成、冠状動脈バイパス手術、心臓カテーテル手術および不安定狭心症からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ハロゲン化揮発性麻酔剤は、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、ハロタンおよびセボフルランからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
心筋梗塞に暴露される心筋組織を有する患者を処置する方法であって、該方法は:
ハロゲン化揮発性麻酔剤を含む処方物を、該虚血事象に対する該心筋組織の抵抗性または寛容性を改善するに有効量で該患者に非経口的に投与する工程を包含する、方法。
【請求項19】
投与される前記処方物の前記量は、麻酔有効量未満である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記投与は、静脈投与によって実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ハロゲン化揮発性麻酔剤は、セボフルラン、エンフルランおよびイソフルランから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
虚血事象に暴露される神経組織を有する患者を処置する方法であって、該方法は:
ハロゲン化揮発性麻酔剤を含む処方物を、該虚血事象に対する該神経組織の抵抗性または寛容性を改善するに有効量で該患者に非経口的に投与する工程を包含する、方法。
【請求項23】
投与される前記処方物の前記量は、麻酔量未満である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記虚血事象は、大動脈瘤修復、頚動脈血管内膜切除術、大脳動脈造影、卒中、切迫卒中および一過性虚血事象からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ハロゲン化揮発性麻酔剤は、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、ハロタンおよびセボフルランからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2006−504740(P2006−504740A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543499(P2004−543499)
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/031826
【国際公開番号】WO2004/032858
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】