説明

ハロゲン含有フェニルアラニン誘導体の製造方法

【課題】 工業的に有用な、ハロゲン含有フェニルアラニン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】 下記式(1)で示されるイミノグリシン誘導体を、スピロ型キラル相間移動触媒存在下、ハロゲン含有ベンジルブロミド誘導体と反応を行い、ハロゲン含有フェニルアラニン誘導体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン含有フェニルアラニン誘導体の製造方法に関する。ハロゲン含有アミノ酸類は医薬品の合成中間体として期待される化合物である。
【背景技術】
【0002】
本発明の化合物は知られていない。本発明に関連するキラル相間移動触媒を用いたアミノ酸類の合成方法としては、例えば、下記一般式(9)
【0003】
【化1】

【0004】
で示される光学活性スピロ型四級アンモニウム塩において、
=水素原子、X=臭化物イオンである化合物(A)、
=フェニル基、X=臭化物イオンである化合物(B)、
=3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、X=臭化物イオンである化合物(C)
等が知られており、同触媒を用いた光学活性フェニルアラニン誘導体の製造法が知られている。[特許文献1、非特許文献1参照]。
【0005】
また、光学選択性の向上のため、性能が改善された下記一般式(10)
【0006】
【化2】

【0007】
(上記式中、Rは3,5−ジフェニルフェニル、Xが臭素イオンを表す。)
で示される触媒を用いた光学活性フェニルアラニン誘導体の製造法が知られている[特許文献2参照]。
【0008】
【特許文献1】特開2001−48866号公報
【特許文献2】特開2002−326992号公報
【非特許文献1】K.Maruoka et. al. Angew.Chem.Int.Ed.,2003,42(5),579
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の触媒を用いた場合、後述する式(1)で示されるイミノグリシン誘導体のベンジル化において満足できる光学選択性を与える触媒はあるものの、触媒の製造工程が長く、複雑で高価な触媒となり、工業的に利用可能な製法ということができなかった。
【0010】
一方、核がハロゲンで置換されたフェニルアラニン誘導体は公知であるが、キラル相間移動触媒を用いて、高い光学選択性で製造する方法は知られていなかった。
【0011】
さらに従来の触媒では、ベンジルブロミドの2位が置換されたベンジルブロミド誘導体を用い、2−が置換されたフェニルアラニン誘導体の製法は知られていなかった。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、核の2−位、3−位、又は4−位のいずれかの位置がハロゲン又はハロゲン含有アルキルで置換されたフェニルアラニン誘導体を、高収率、高選択性で工業的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、後述する一般式(3)又は一般式(5)で示される合成が容易なスピロ型キラル相間移動触媒を用い、高収率、高選択性でフェニル環上の2−位、3−位、又は4−位のいずれかの場所がハロゲン又はハロゲン含有アルキル基で置換されたフェニルアラニン誘導体が製造可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち本発明は、以下に示すとおりのハロゲン含有フェニルアラニン誘導体の製造方法である。
【0015】
[1]下記式(1)
【0016】
【化3】

【0017】
で示されるジフェニルイミノグリシン誘導体と、下記一般式(2)
【0018】
【化4】

【0019】
[上記一般式(2)中、Rはハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。]
で示されるベンジルブロミド誘導体を、下記式(3)
【0020】
【化5】

【0021】
で示されるキラル相間移動触媒及びアルカリの存在下反応させることを特徴とする下記一般式(4)
【0022】
【化6】

【0023】
[上記一般式(4)中、Rはハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。]
で示されるハロゲン含有フェニルアラニン誘導体の製造方法。
【0024】
[2]上記式(1)で示されるジフェニルイミノグリシン誘導体と、上記一般式(2)で示されるベンジルブロミド誘導体を、下記式(5)
【0025】
【化7】

【0026】
で示されるキラル相間移動触媒及びアルカリの存在下反応させることを特徴とする一般式(6)
【0027】
【化8】

【0028】
[上記一般式(6)中、Rはハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。]
で示されるハロゲン含有フェニルアラニン誘導体の製造方法。
【0029】
[3]上記一般式(4)で示されるハロゲン含有フェニルアラニン誘導体を酸の存在下、加水分解することを特徴とする下記一般式(7)
【0030】
【化9】

【0031】
[上記一般式(7)中、Rはハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。]
で示されるハロゲン含有フェニルアラニンの製造方法。
【0032】
[4]上記一般式(6)で示されるハロゲン含有フェニルアラニン誘導体を酸で存在下、加水分解することを特徴とする下記一般式(8)
【0033】
【化10】

【0034】
[上記一般式(8)中、Rはハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。]
で示されるハロゲン含有フェニルアラニンの製造方法。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、核の2−位、3−位、又は4−位のいずれかの位置がハロゲン又はハロゲン含有アルキルで置換されたフェニルアラニン誘導体を、高収率、高選択性で工業的に製造することができる。
【0036】
含フッ素異常アミノ酸類は医薬品の合成原料として有用な化合物であり、本発明は工業上極めて有意義である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0038】
本発明の上記式(1)で示されるイミノグリシン誘導体はtert−ブチル 2−アミノアセテート・塩酸塩(グリシン tert−ブチルエステル・塩酸塩)とベンゾフェノンイミン及びトリエチルアミンの反応で用意に調製できる。
【0039】
本発明に適用可能なベンジルブロミド誘導体としては、上記一般式(2)で示されるベンジルブロミド誘導体であればよく、特に限定するものではないが、具体的には、2−フルオロベンジルブロミド、3−フルオロベンジルブロミド、4−フルオロベンジルブロミド、2−クロロベンジルブロミド、3−クロロベンジルブロミド、4−クロロベンジルブロミド、2−ブロモベンジルブロミド、3−ブロモベンジルブロミド、4−ブロモベンジルブロミド、2−ヨウドベンジルブロミド、3−ヨウドベンジルブロミド、4−ヨウドベンジルブロミド、2−トリフルオロメチルベンジルブロミド、3−トリフルオロメチルベンジルブロミド、4−トリフルオロメチルベンジルブロミド、2−(2,2,2−トリフルオロエチル)ベンジルブロミド、3−(2,2,2−トリフルオロエチル)ベンジルブロミド、4−(2,2,2−トリフルオロエチル)ベンジルブロミド、2−ペンタフルオロエチルベンジルブロミド、3−ペンタフルオロエチルベンジルブロミド、4−ペンタフルオロエチルベンジルブロミド等が例示される。
【0040】
本発明の製造方法で得られる上記一般式(4)で示されるハロゲン含有フェニルアラニン誘導体としては特に限定するものではないが、具体的には、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(2−フルオロフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(3−フルオロフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(4−フルオロフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(2−クロロフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(3−クロロフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(4−クロロフェニル)ブチレート、(R)−2−ジフェニルイミノ−(2−ブロモフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(3−ブロモフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(4−ブロモフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(2−ヨウドフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(3−ヨウドフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(4−ヨウドフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(2−トリフルオロメチルフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(3−トリフルオロメチルフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(4−トリフルオロメチルフェニル)ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−[2−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−[3−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]ブチレート、tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−[4−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]ブチレート等が例示される。
【0041】
本発明の製造方法で得られる上記一般式(6)で示されるハロゲン含有フェニルアラニン誘導体としては、特に限定するものではないが、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(2−フルオロフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(3−フルオロフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(4−フルオロフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(2−クロロフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(3−クロロフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(4−クロロフェニル)ブチレート、(S)−2−ジフェニルイミノ−(2−ブロモフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(3−ブロモフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(4−ブロモフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(2−ヨウドフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(3−ヨウドフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(4−ヨウドフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(2−トリフルオロメチルフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(3−トリフルオロメチルフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−(4−トリフルオロメチルフェニル)ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−[2−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−[3−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]ブチレート、tert−ブチル (S)−2−ジフェニルイミノ−[4−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]ブチレート等が例示される。
【0042】
本発明の上記式(3)又は式(5)で示されるキラル相間移動触媒は、例えば、特開2005−41791号公報に記載の方法により、光学活性(S)−1,1’−ビ−2−ナフトール又は(R)−1,1’−ビ−2−ナフトールを原料とし、11反応で調製することができる。
【0043】
本発明の上記式(3)又は式(4)で示されるキラル相間移動触媒の使用量は、反応に具する上記式(1)で示されるイミノグリシン誘導体に対して、0.03モル%〜5モル%の範囲で、好ましくは0.05モル%〜2モル%の範囲である。
【0044】
本発明の上記一般式(4)又は一般式(6)で示される化合物を得る反応に適用可能な溶剤としては、反応に不活性な溶剤であればあらゆるものが適用可能であるが、好ましくはトルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、THF等のエーテル類等が例示される。
【0045】
本発明の上記一般式(4)又は一般式(6)で示される化合物を得る反応に適用可能な溶剤の使用量としては、反応に用いる上記式(5)で示されるtert−ブチル 4,4,4−トリフルオロ−2−(4−クロロフェニル)イミノブチレートに対して、3重量倍量〜200重量倍量の範囲で使用可能であるが好ましくは5重量倍量〜100重量倍量の範囲である。
【0046】
本発明の上記一般式(4)又は一般式(6)で示される化合物を得る反応に適用可能なアルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化セシウム・1水和物等が好適なものとして例示され、反応に用いる上記式(1)で示されるイミノグリシン誘導体に対して、通常1モル量〜30モル量使用する。アルカリの添加方法としては、反応に用いる溶剤に溶解させて使用しても良いし、粉末を添加しても良く、さらに水溶液を用いても良い。
【0047】
本発明の上記一般式(4)又は一般式(6)で示される化合物を得る反応の反応温度としては通常0℃〜−20℃の範囲、反応時間としては通常15分〜24時間の範囲である。
【0048】
本発明の上記一般式(4)又は一般式(6)で示される化合物を得る反応の終了後、例えば、飽和の重曹水溶液で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮することにより上記一般式(4)又は一般式(6)で示される目的物を得る。また、必要に応じて、シリカゲルカラム等により精製を行っても良い。
【0049】
上記一般式(7)で示されるハロゲン含有フェニルアラニンとしては、特に限定するものではないが、具体的には、(R)−(2−フルオロフェニル)アラニン、(R)−(3−フルオロフェニル)アラニン、(R)−(4−フルオロフェニル)アラニン、(R)−(2−クロロフェニル)アラニン、(R)−(3−クロロフェニル)アラニン、(R)−(4−クロロフェニル)アラニン、(R)−(2−ブロモフェニル)アラニン、(R)−(3−ブロモフェニル)アラニン、(R)−(4−ブロモフェニル)アラニン、(R)−(2−ヨウドフェニル)アラニン、(R)−(3−ヨウドフェニル)アラニン、(R)−(4−ヨウドフェニル)アラニン、(R)−(2−トリフルオロメチルフェニル)アラニン、(R)−(3−トリフルオロメチルフェニル)アラニン、(R)−(4−トリフルオロメチルフェニル)アラニン、(R)−[2−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]アラニン、(R)−[3−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]アラニン、(R)−[4−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]アラニン等が例示される。
【0050】
また、上記一般式(8)で示されるハロゲン含有フェニルアラニンとしては、特に限定するものではないが、(S)−(2−フルオロフェニル)アラニン、(S)−(3−フルオロフェニル)アラニン、(S)−(4−フルオロフェニル)アラニン、(S)−(2−クロロフェニル)アラニン、(S)−(3−クロロフェニル)アラニン、(S)−(4−クロロフェニル)アラニン、(S)−(2−ブロモフェニル)アラニン、(S)−(3−ブロモフェニル)アラニン、(S)−(4−ブロモフェニル)アラニン、(S)−(2−ヨウドフェニル)アラニン、(S)−(3−ヨウドフェニル)アラニン、(S)−(4−ヨウドフェニル)アラニン、(S)−(2−トリフルオロメチルフェニル)アラニン、(S)−(3−トリフルオロメチルフェニル)アラニン、(S)−(4−トリフルオロメチルフェニル)アラニン、(S)−[2−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]アラニン、(S)−[3−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]アラニン、(S)−[4−(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル]アラニン等が例示される。
【0051】
本発明の上記一般式(7)又は一般式(8)で示されるハロゲン含有フェニルアラニンを得る方法としては、特に限定するものではないが、例えば、3〜12Nの塩酸水溶液中又は5〜30%の硫酸水溶液中、0℃〜60℃で1〜24時間反応することにより得られる。また、必要に応じてメタノール、THF等の有機溶剤を用いても良い。基質濃度としては、溶剤全量に対して通常1〜50重量%の範囲で実施可能である。
【実施例】
【0052】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0053】
調製例1 tert−ブチル 2−ジフェニルイミノアセテートの調製
滴下ロート及び攪拌子を備えた500mlの3つ口丸底フラスコにtert−ブチル 2−アミノアセテート・塩酸塩(グリシン tert−ブチルエステル・塩酸塩、10.0g、59.7mmol)、ベンゾフェノンイミン(10.81g、59.7mmol)、及びジクロロメタン(265g)を仕込み室温下、24時間攪拌した。
【0054】
反応終了後、ろ過し、ろ液を濃縮、40℃で減圧乾燥し、ジエチルエーテル(200ml)に溶解、水(200ml×2回)で洗浄、硫酸マグネシウム(10g)で乾燥、ろ過、濃縮、減圧乾燥することにより目的物のtert−ブチル 2−ジフェニルイミノアセテート(18.02g、59.7mmol)を無色固体として得た(収率:>99%)。
【0055】
実施例1 tert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(2−フルオロフェニル)ブチレートの調製
攪拌子を備えた50mlのナス型フラスコに調製例1で調製したtert−ブチル 2−ジフェニルイミノアセテート(300mg,1.02mmol)、スピロビス[{(S)−1,1′−ビ−{4,6−ビス(オクチルジメチルシリル)ナフチル}}−2,2′−ジメチル]アンモニウムブロミド(10.2mg,0.0051mmol)及びトルエン(10ml)を仕込み攪拌しながら0℃に冷却した。次いで、これに2−フルオロベンジルブロミド(230mg,1.22mmol)を添加し、さらに50%水酸化カリウム水溶液(2.40g,30.6mmol)を添加し、同温度で24時間反応を行った。
【0056】
反応終了後、飽和の塩化アンモニウム水溶液(10ml)を添加し、分液の後、水層をジクロロメタン(5ml×2回)抽出、有機層を合わせて、硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮し粗製の目的物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=80/10 vol/vol)で精製することにより目的物のtert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(2−フルオロフェニル)ブチレート(405mg、1.05mmol)を無色のオイルとして得た(収率:>99%)。ダイセル社製キラルカラムAD−H(ヘキサン/イソプロパノール=9/1 vol/vol)を用いた測定において、光学純度は98.5%eeであった。
【0057】
実施例2〜実施例6 各種ハロゲン含有フェニルアラニン誘導体の調製
実施例1と同じ反応装置を用い、2−フルオロベンジルブロミドを表1に示したベンジルブロミドに替えた以外、実施例1と同じ操作を行い、各種ハロゲン含有フェニルアラニン誘導体を調製した。結果を表1中に示した。実施例4及び実施例6は1N−塩酸でイミノ基を脱離した後、ダイセル社製キラルカラムAD−H(ヘキサン/イソプロパノール=9/1 vol/vol)で光学純度を測定した。実施例5はダイセル社製キラルカラムOD−H(ヘキサン/イソプロパノール=9/1 vol/vol)で光学純度を測定した。これらの結果を表1に併せて示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例7
攪拌子を備えた50mlのナス型フラスコに、実施例1で得られたtert−ブチル (R)−2−ジフェニルイミノ−(2−フルオロフェニル)ブチレート(300mg,0.743mmol)、6N塩酸(10ml)及びエタノール(10ml)を入れ40℃で6時間反応を行った。反応終了後、重曹粉末で中和、蒸発乾固の後、エタノールを加え、ろ過、硫酸マグネシウム上で乾燥、ろ過、濃縮することにより目的物の(2−フルオロフェニル)アラニン(116mg、0.851mmol)を無色の固体として得た(収率85%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

で示されるジフェニルイミノグリシン誘導体と、下記一般式(2)
【化2】

[上記一般式(2)中、Rはハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。]
で示されるベンジルブロミド誘導体を、下記式(3)
【化3】

で示されるキラル相間移動触媒及びアルカリの存在下反応させることを特徴とする下記一般式(4)
【化4】

[上記一般式(4)中、Rはハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。]
で示されるハロゲン含有フェニルアラニン誘導体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の式(1)で示されるジフェニルイミノグリシン誘導体と、請求項1に記載の一般式(2)で示されるベンジルブロミド誘導体を、下記式(5)
【化5】

で示されるキラル相間移動触媒及びアルカリの存在下反応させることを特徴とする一般式(6)
【化6】

[上記一般式(6)中、Rはハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。]
で示されるハロゲン含有フェニルアラニン誘導体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の一般式(4)で示されるハロゲン含有フェニルアラニン誘導体を酸の存在下、加水分解することを特徴とする下記一般式(7)
【化7】

[上記一般式(7)中、Rはハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。]
で示されるハロゲン含有フェニルアラニンの製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の一般式(6)で示されるハロゲン含有フェニルアラニン誘導体を酸で存在下、加水分解することを特徴とする下記一般式(8)
【化8】

[上記一般式(8)中、Rはハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。]
で示されるハロゲン含有フェニルアラニンの製造方法。

【公開番号】特開2008−7461(P2008−7461A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179753(P2006−179753)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】