説明

ハンガータイプの試験管ストッカー及び試験管準備装置

【課題】簡易小型化でポータビリティ性に優れ、机上等にも容易に設置でき、災害時等の緊急対応性にも優れ、且つ医師からの採血指示に応じて種類の異なる試験管を準備することができるようにする。
【解決手段】一つの搬送ベルトの往復するベルトどうしの中に試験管保持部材をベルトに沿って配置し、試験管のキャップの下端面を試験管保持部材と往き側送りベルトの上端面とで支持している。そして、往き側ベルトによってキャップを通じて試験管に送り(フィード)を与えている。このようなストッカーであれば、試験管を搬送する装置を一種類の試験管について一つもので構成することができ、搬送装置の数を必要最小限のものとすることができる。また一つのストッカーの幅は僅か数センチメートルであり、多種類の試験管に対応すべく複数種類のストッカーを併設した場合でも全体としての幅寸法は従来技術に比較して格段に小さくできるという利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血検査の前工程における採血工程での試験管の事前準備作業を行なうものであって、エンドレス状の送りベルトを利用して試験管を吊下げ保持するハンガータイプの試験管ストッカーと、医師からの採血指示に応じて種類の異なる試験管を前記ハンガータイプのストッカーから選択し、患者IDや前記採血指示内容等の採血情報を印字したラベルを貼り付け、ラベル貼付後の試験管を患者別にトレイへ収納することのできる小型且つ簡単な構造で移動性に優れた試験管準備装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院、医院、診療所その他の医療機関における血液検査部門では、採血作業者(看護師等)により、患者から血液を採取し、採取した検体を試験管へ収容して検査部門へ移送するようにしている。血液検査では、その血液検査項目に応じて、多種類の試験管が準備されており、通常、一人の患者に対して複数種類の検査が同時に行われる。そのため、試験管の準備も一人の患者に対して複数種類のものが試験管準備装置によって自動的に準備されるようになっている。そして、採血室では多数の患者を取り扱うのが当たり前であり、前記試験管準備装置で準備された各試験管にはオーダ番号等のバーコードが印刷されたラベルが貼付されている。
また患者には、採血受付時に受付番号等のバーコードが印刷された採血受付票が発行されている。採血作業に際しては、これらのラベルや受付票の内容をバーコードリーダ等の光学的機器により読み取って患者及び試験管の取り間違いが起こらないようにしている。
【0003】
このような採血業務の自動化を図り、採血業務を支援する技術として、特許文献1に示す技術がある。この特許文献1の技術は、縦方向(垂直方向)に回転駆動するエンドレス状のベルト駆動装置を利用するものである。このベルト駆動装置では、ベルト幅が試験管の長さ寸法以上に設定され、ベルト面から外径方向へ突出して設けられたキャタピラー状の仕切り板を有し、ベルト面の前後の仕切り板どうしの間を一個の試験管収容部(ストック部)とし、一つのベルト面上に多数の試験管収容部を構成するようにしている。この場合、一つのベルト駆動装置は同一種類の試験管を収容するように設定されている。そして、このようなキャタピラー方式で試験管を収容するベルト駆動装置を利用したストッカー機構を、複数段上下方向に重ねて配置することで、複数種類の試験管を取り扱うことができるようにしている。
医師からの採血オーダ情報に基づいて患者の採血に必要な試験管を、対応する試験管ストッカー機構部から取り出し、ラベル印字・貼付手段を用いて患者の採血に関する情報をラベルへ印字し、印字後のラベルを取り出した試験管に貼り付けるようにしている。そして、ラベル貼付後の試験管を排出手段で試験管回収部まで移送し、試験管回収部にて患者毎にトレイへ収容するようにしている。
【0004】
このような試験管準備装置であると、ストッカー機構部が上下に重ねて配置される関係上、高さ方向の寸法がかなりのものとなり、装置自体が大型化するという問題があった。
一方、従来の上記問題点を解決する方法として、特許文献2及び特許文献3に示すような試験管の形状に類似した製品をハンガー方式で搬送する技術を、ストッカーとして利用することが考えられる。これらの搬送技術は、樹脂ボトル等の口部近傍に設けられる環状の鍔部(リング)を利用し、左右二つの搬送ベルトどうしの間において、搬送ベルトに前記リングを係合支持し得るアタッチメントを取り付け、当該対向する一対のアタッチメント間に樹脂ボトル等のリングを係止して吊下げた状態で搬送するようにしている。
【特許文献1】特開2005−67660号公報
【特許文献2】特開2006−21854号公報
【特許文献3】特開2007−145493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献2及び3に示す技術では、左右に配置した二つの搬送ベルトを一対として一つの搬送装置を構成するものであり、一つの搬送装置のために二つの搬送ベルトの駆動機構が必要であった。
また二つの搬送ベルトを水平方向で回転駆動するように配置すると、左右の搬送ベルトの二つのプーリーの直径を足した寸法と、ベルトの厚み寸法及びアタッチメントの寸法と、搬送する製品の幅寸法とが必須となる。従って、全体としては幅方向の寸法がかなりのものとなり、多種類の試験管を自動的に準備する装置として構成した場合、装置全体の大型化は避けられず、前記特許文献2及び3の技術をそのまま試験管準備装置へ適用することはできないという問題があった。
【0006】
このように特許文献1に示す技術では、多種類の試験管の収容部を上下方向に重ねて配置する関係上、上下方向の高さ寸法が大きくなるという大型化の問題があり、特許文献2及び3に示す技術をそのまま試験管準備装置の技術へ利用した場合は、水平方向の幅寸法が大きくなり、やはり多種類の試験管を取り扱う装置として構成したときには、装置自体が大型化するという問題があった。また特許文献2及び3に示す技術をそのまま利用した場合は、取り扱う試験管の種類の数の2倍の搬送機構を必要とするという問題があった。
このような試験管準備装置の大型化の問題は、レイアウト変更などのときには、容易に試験管準備装置を移動させたりすることができず、また個人の病院へ適用するにはスペース的に制限を受けるという問題があった。更に、大型化の問題は、災害時等において、簡易に設置する必要のある場合などにも対処することができない原因の一つとなり、緊急対応が出来ないという欠点があった。
【0007】
本発明は従来の前記課題に鑑みてこれを改良除去したものであって、簡易小型化でポータビリティ性に優れ、机上等にも容易に設置でき、災害時等の緊急対応性にも優れ、且つ医師からの採血指示に応じて種類の異なる試験管を準備することのできるハンガータイプの試験管ストッカー及び試験管準備装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して、前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、両端側に配設されたプーリー間に懸架され、水平方向に回転駆動するエンドレス状の送りベルトと、該送りベルトの往復するベルトどうしの間にあって送りベルトに沿って配設された試験管保持部材とを有し、往き側の送りベルトの上端面と前記試験管保持部材の上端面との間に、試験管キャップの対向する下端面を載置すると共に、試験管保持部材の終端側を通過した位置において試験管が自重により落下排出される排出部を設けたことを特徴とするハンガータイプの試験管ストッカーである。
【0009】
本発明が採用した請求項2の手段は、試験管保持部材の終端側において、先頭の試験管のキャップ前面に対して進入退出自在に配設された第一のストッパーと、先頭から第一番目と第二番目の試験管のキャップどうしの間に形成される隙間に対して上方から進入退出自在に配設された二股状の第二のストッパーとが配設されている請求項1に記載のハンガータイプの試験管ストッカーである。
【0010】
本発明が採用した請求項3の手段は、第一のストッパーと第二のストッパーとが同一の軸に枢支された二つのアームの一端側に取り付けられており、各アームの他端側にはソレノイドが連結されている請求項2に記載のハンガータイプの試験管ストッカーである。
【0011】
本発明が採用した請求項4の手段は、試験管保持部材の終端側下方には試験管を寝かせた状態で搬送する搬送ベルトが配設されている請求項1乃至3に記載のハンガータイプの試験管ストッカーである。
【0012】
本発明が採用した請求項5の手段は、両端側に配設されたプーリー間に懸架され、水平方向に回転駆動するエンドレス状の送りベルトと、該送りベルトの往復するベルトどうしの間にあって送りベルトに沿って配設された試験管保持部材とを有し、往き側の送りベルトの上端面と前記試験管保持部材の上端面との間に、試験管キャップの対向する下端面を載置すると共に、試験管保持部材の終端側には試験管が自重により落下排出される排出部を設け、該排出部の下方には試験管の搬送ベルトを配設し、該搬送ベルトの終端側にラベルの印字・貼付手段を設けたことを特徴とする試験管準備装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明にあっては、水平方向に回転駆動する一つのエンドレス状の送りベルトの往復するベルトどうしの間に、試験管保持部材を配設している。この試験管保持部材は、レール状又は板状部材等の平滑面を有するガイドフレームであって、試験管のキャップ下端面の一方側を支持するものである。キャップの対向する他方側下端面は、送りベルトの往き側の上端面に支持されている。従って、試験管は、キャップ下端面を、前記試験管保持部材と往き側の送りベルトの上端面とに支持された状態でこれらの部材上を滑って移動するようになる。試験管に送りを与えるのは、前記往き側の送りベルトの上端面と試験管キャップの下端面との接合によってなされる。
試験管は、試験管保持部材の終端側において、その係合が解かれ、往き側の送りベルトの上端面に片持支持された状態となり、係合が開放された試験管保持部材の方向へキャップ(頭部)側が傾斜してやがて落下する。そして、排出される。
【0014】
このように請求項1の発明にあっては、一つの搬送ベルトの往復するベルトどうしの中に試験管のキャップ下端面を支持するハンガータイプのストッカーを構成している。そのため、ストッカーにおける試験管の搬送装置を、一種類の試験管について一つもので構成することができ、搬送装置の数を必要最小限のものとすることができる。また一つの搬送ベルトの往復するベルトどうしの中に試験管のストッカーを構成しているので、一つのストッカーの幅は僅か数センチメートルであり、多種類の試験管に対応すべく複数種類のストッカーを併設した場合でも全体としての幅寸法は従来技術に比較して格段に小さくできるという利点がある。
【0015】
この請求項2の発明は、前記請求項1 の発明のストッカーにおいて、先頭の試験管を一本ずつ切り出して排出するようにした機構であり、第一のストッパーと第二のストッパーとを有している。第一のストッパーは、先頭の試験管のキャップ前面側に当接し得るように進退自在に構成されている。第二のストッパーは、先頭と第二番目の試験管のキャップどうしの間に形成される隙間に対して進退自在に構成されている。
第一のストッパーが先頭の試験管のキャップ前面側に当接し、第二のストッパーが先頭と第二番目の試験管のキャップどうしの間に形成される隙間に進入している。この状態から第一のストッパーが退出動作をし、先頭の試験管のキャップ前面側との係合を解放すると、先頭の試験管は往き側送りベルトの上端面とキャップ下端面との接合による送りによって更に前進し、やがて試験管保持部材の終端側との係合が解放される。そのため、先頭の試験管は、キャップ側が試験管保持部材の無くなった方へ傾斜した姿勢となり、ついには他方の往き側送りベルトの上端面との係合も外れるようになり、自重によって落下排出される。二番目以降の試験管は、第二のストッパーによって停止のままである。先頭の試験管が排出された後、第一のストッパーが復帰動作し、第二のストッパーが退出動作をしたときに、残りの試験管は全部のものが押せ押せで試験管一個分だけ前進し、第一のストッパーによって移動が停止される。その後、第二のストッパーが元の状態へ復帰動作する。
【0016】
請求項3の発明にあっては、第一及び第二のストッパーは例えばアームの一端側に取り付けられており、アームの中間部分を揺動自在に枢支されており、アームの他端側にソレノイド(ソレノイドのロッド先端)が連結されている。従って、ソレノイドをON,OFF制御することにより、ソレノイドのロッドが本体ケースに対して突出退入動作をし、アームの一端側に取り付けられた第一及び第二のストッパーが、それぞれ試験管のキャップに対して進退自在の動作を行うように構成されている。
前述した通り、第一及び第二のストッパーの進退動作を制御することにより、先頭の試験管を一本ずつ切り出して排出することが可能である。
【0017】
請求項4の発明にあっては、試験管保持部材の終端側下方に、試験管を寝かせた状態で搬送する搬送ベルトを配設している。搬送ベルトは、請求項2の発明で説明したように試験管保持部材の終端側から傾斜しながら落下供給される試験管の底部を掬い取り、寝かした状態で搬送するようになる。そのため、試験管の向きが常に底部側が先になって搬送されるようになり、次のラベル貼付工程において試験管の向きを揃えるなどの手間を省略することが可能である。
【0018】
請求項5の発明は、請求項4の発明の試験管ストッカーを用い、ストッカーから一本ずつ切り出されて排出された試験管を、その底部側が先になるように寝かしてラベルの印字・貼付手段の位置まで搬送する。ラベルの印字貼付手段では、例えば上位システム又は医師のパソコン端末から当該採血患者の採血情報を入手し、ラベルに印字し、印字後のラベルを試験管の外周面に貼着する。貼着後は、同一の患者ごとにトレイに収容される。
【0019】
このような試験管用のストッカーを用いた試験管準備装置であれば、多種類の試験管を取り扱うことができるように構成した場合であっても、その大きさは極めて小さく、全体の軽量小型化という点に関して優れた特徴を有している。例えば、6管種を取り扱うように構成した場合であっても、その大きさは高さ375mm×幅480mm×奥行き500mm程度である。
【0020】
従って、本発明の試験管準備装置は、ポータビリティ性に優れ、移動も容易である。そのため、災害時などにおいて、現場の救急施設などへ搬入設置することが極めて容易であり、医師が使用するノート型パソコン等のコンピュータ端末に接続して医師が診察した患者の採血に関する情報を取り込み、当該採血に必要な試験管をストッカーから選択的に取り出し、これに患者の採血情報を印字したラベルを貼り付けて患者ごとにトレイへ収容し、採血の準備を自動的に行うことが可能である。また個人経営の病院等においても、試験管準備装置の導入が可能となる等の利点がある。更には、入院病棟においては、移動できるワゴンに当該試験管準備装置を載置し、各病室の患者のベッドサイドまで行って、本装置試験管を自動的に準備し、採血を行うようにすることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の構成を図面に示す発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1は本発明の一実施の形態に係る一つのストッカー1の送りベルト2と試験管保持部材3と試験管4との関係を示す平面図、図2はストッカー1の側面図、図3は図1のA−A線断面図、図4は第一のストッパー5と第二のストッパー6と試験管4との位置関係を示す平面図である。また図5は試験管準備装置の正面図、図6は試験管準備装置のラベルの印字・貼付手段7を示す側面図である。
【0022】
図1に示すごとく、この実施の形態の試験管ストッカー1は、両端に平置きで配置した従動プーリー8A及び駆動プーリー8B間に跨ってエンドレス状の送りベルト2が懸架されている。送りベルト2は、往き側送りベルト2Aと戻り側送りベルト2Bとが対向するその内面側に突起9が多数設けられたいわゆる歯付きベルトである。歯付きベルトにすることで、駆動プーリー8Bとの間の滑りをなくし、当該駆動プーリー8Bの駆動力を確実に送りベルト2へ伝達できるようにしている。なお、この送りベルト2は、平ベルトであってもよいことは当然である。
【0023】
この送りベルト2の往き側送りベルト2Aと戻り側送りベルト2Bとの間の空間領域には、ベルトに沿って配設された試験管保持部材3が設けられている。これにより、往き側送りベルト2Aと、試験管保持部材3との間に、試験管4を収容するための空間(溝)が形成される。また試験管保持部材3は、レール状又は板状部材等の上端面が平滑面とされたガイドフレームであって、上端面の高さは送りベルト2の上端面の高さと同一高さ寸法に設定されている。
【0024】
而して、往き側送りベルト2Aの突起9の先端面と試験管保持部材3との間に形成される溝幅の寸法は、試験管4の外径寸法と同一か若しくは僅かに大きく(最大で1mm程度)設定されている。この溝幅の間隔は、ストックする試験管4の外径寸法の大きさにより可変できるようになされている。大きさの変更は、試験管保持部材3を往き側送りベルト2Aに対して平行移動できるように、試験管保持部材3の取付ステー(図示せず)を長孔とビス等の方式により装置本体に固定する手段を採用すればよく、連続的に寸法調整ができるようになされている。試験管4は、図2及び図3に示すように、チューブ状の試験管本体4Aとキャップ10とからなり、キャップ10の下端面は試験管本体4Aの外径寸法よりも大きい外径寸法(前記溝幅よりも大きい寸法)を有している。この試験管4は、図3に示すように、往き側の送りベルト2Aの上端面と、試験管保持部材3の上端面とにキャップ10の対向する下端面が載置されてこれらの部材に吊下げ保持されている。つまり、試験管4をハンガー方式でストックするようにしている。送りベルト2の駆動力は、往き側送りベルト2Aに載置されたキャップ10の下端面の接合部分を通じて試験管4に伝達される。反対側のキャップ10の下端面は、試験管保持部材3の上端面との間で摺動するのみである。
【0025】
往き側送りベルト2Aの背面側には、図3に示すように、ガイドフレームとしての試験管保持部材3と同様に構成されたバックアップ部材11が設けられている。バックアップ部材11は、往き側の送りベルト2Aの上端面が試験管4のキャップ下端面と確実に当接接合するようにするためのものである。これにより、往き側の送りベルト2Aがキャップ10の下端面から逸脱することがなく、吊下げ保持された試験管4に確実に送り(フィード)を与えることが可能である。
【0026】
試験管保持部材3の終端側には、試験管4の排出部12が設けられている。この排出部12は試験管保持部材3の終端側とプーリー8Aとの間の空間領域に設けられている。試験管4が試験管保持部材3の終端側に至ることによって、キャップ10の下端面が試験管保持部材3との係合を解放されて自然的に自重により落下することで行われる。
ところで、排出部12に臨む位置には、第一及び第二のストッパー5,6が設けられている。これらの第一及び第二のストッパー5,6は、同一の軸13に中間部分を揺動自在に枢支されたアーム14,15の一端側下面に二股状の棒状突起が5A,5B及び6A,6Bが直立した状態で設けられている。第一及び第二のストッパー5及び6において、これらの棒状突起5A,5B及び6A,6Bが設けられる部分は、平面視した状態でL型に折れ曲がった部分が前後して相互に入り込み、干渉しないようになされている。第一のストッパー5は、先頭の試験管4のキャップ前面側に当接し得るように進退自在に構成されており、第二のストッパー6は、先頭と第二番目の試験管4,4のキャップどうしの間に形成される隙間に対して進退自在に構成されている。
【0027】
またアーム14,15の他端側下面には、ソレノイド16,17のロッド16A,17Aが連結されている。この場合のソレノイド16,17は、小型化を目的としてボールペンとほぼ同じ外径寸法を有するものが採用され、電源をONにするとロッド16A,17Aが退入動作をし、アーム14,15を図2の鎖線で示すように上昇位置へ揺動させるようになっている。なお、これらのソレノイド16,17は、通常は交互に動作するように設定されている。各アーム14,15の枢軸13と棒状突起5A,5B及び6A,6Bとの間には、それぞれリターンスプリング(引張りばね)18,19が取り付けられている。これはソレノイド16,17の電源をOFFにしたときに、リターンスプリング18,19の引張り力により、アーム14,15が水平の姿勢に復帰するようにするためのものである。またリターンスプリング18及び19は、落下する試験管4が前方側へ飛び出さないようにする働きもある。
【0028】
この実施の形態においては、上記のように構成されたハンガータイプの試験管ストッカー1が、図5に示すように、6列併設されている。排出部12の下方には、送りベルト2の搬送方向と直行する方向に配設された一本の搬送ベルト20が配設されており、6列の各ストッカー1から落下供給される試験管4を、この搬送ベルト20で図5の左側から右側方向に向けて搬送する。このとき、試験管4は、試験管保持部材3の終端側でキャップ10の下端面との係合が解放されるので、キャップ10側が試験管保持部材3から解放された側へ傾斜する。これにより、図5の鎖線で示すように、試験管4の底部側は必ず搬送方向の前方側へ向けて揃えられることになり、この状態で搬送ベルト20上に落下供給される。
なお、搬送ベルト20は、図5の実施例では一本の連続したもので構成したが、ストッカー1の領域と、ラベルの印字貼付手段7の領域とに分割して二つの搬送ベルトで構成し、試験管4が自動的に二つの搬送ベルト間を乗り移ることができるようにすることも可能である。このようにした場合、試験管準備装置をストッカー装置と、ラベルの印字貼付装置とに分離する構成をとることができ、ストッカー装置の独立した使用が可能であり、またメンテナンスも分離して行えるので便利である。
【0029】
搬送ベルト20の終端側には、試験管4の到着検知板21が設けられている。到着検知板21は、通常の状態では、図5の鎖線で示すように、斜めに傾斜した姿勢で待機しており、試験管4が送り込まれるとこれに押圧されて実線で示すように直立の状態となり、同時に試験管4の停止位置を決定するようになる。到着検知板21は、コ字状に折曲された部分を有し、傾斜した待機状態では赤外線センサーやフォトセンサー等の投受光器からなる検知センサー(図示せず)の照射光が遮られ、試験管4が到着した直立の状態では投光器から照射された光が受光器で受光されるようになっている。更に、試験管4の停止位置の側面部には、図5及び図6に示すように、搬送ベルト20の搬送方向と直交する方向へ往復動作する試験管4の切出用スライダー22が設けられており、試験管4を搬送ベルト20から押し出してラベル貼付装置7の貼付位置へ落下供給するようになっている。
なお、到着検知板21の直前には試験管4の向きを検知するための方向検知手段が設けられている(図示せず)。これは誤ってキャップ10が先頭になって到着検知板21に当接して停止したときに、キャップ10によって投光器からの照射光が遮られ、試験管4の向きを検知することができるようにしたものである。
【0030】
ラベル貼付装置7は、図6に示すように、連続した剥離紙上に貼付されたラベルの供給ロール23と、剥離紙を巻き取るための巻取ロール24とを有している。供給ロール23から繰り出されるラベルと剥離紙は、鋭角的に折り返して移動させることにより、腰が強い(剥離紙より弾力があって折れにくい)ラベルのみが剥離紙から剥離される。ラベルはそのまま直進して貼付手段29側へ供給され、後の残った剥離紙のみが巻取りロール24で巻き取られる。この剥離部の上流側には、ラベルへの患者情報等を印字するための印字装置25が配設されている。印字する情報は、当該採血管準備装置の制御部のインターフェースを上位の医事システム等のコンピュータ若しくは医師のコンピュータ端末などへ接続してこれらのデータベース若しくはハードディスクなどから取得するようになされている。更に、剥離紙から剥離されたラベルの進行方向には、駆動ローラ26及び支持ローラ27並びに進退自在な加圧ローラ28から成る貼付手段29が配設されている。更に、貼付手段29の斜め下方には、トレイ30の載置部が設けられている。
【0031】
次に、上記の如く構成された試験管準備装置の動作態様を説明する。先ず、6列の各試験管ストッカー1の試験管保持部材3と往き側送りベルト2Aとの間に形成される各溝(試験管4のストック部)に、手作業でそれぞれ別々の種類の試験管4をセットする。試験管4のセットは、試験管4をその底部側から前記溝へ挿入するだけでよい。これにより、各試験管4のキャップ10の対向する下端面が試験管保持部材3の上端面と、往き側送りベルト2Aの上端面とに跨って載置され、これに吊下げ保持される。動作開始前の状態にあって、試験管準備装置の第一のストッパー5の棒状突起5A,5Bは、先頭の試験管4のキャップ10の前面側に当接してその前進移動を拘束している。また第二のストッパー6の棒状突起6A,6Bは、先頭と二番目に位置する試験管4,4のキャップ10,10どうしの間に形成される左右両側面の隙間31,31に入り込み、第二番目の試験管4の前進移動を拘束している。
【0032】
このような状態で試験管準備装置の電源をONにし、上位のコンピュータ若しくは医師のコンピュータ端末などから採血する患者の採血情報を入手する。試験管準備装置の制御部は、前記入手した情報に基づいて、選択する試験管の種類を決定し、該当する種類の試験管4がストックされている試験管ストッカー1の駆動プーリ−8Bを回転駆動させる。これにより、当該ストッカー1の全ての試験管4は、往き側送りベルト2Aの上端面と接合しているキャップ10の下端面が前記往き側送りベルト2Aのフィードを受けるようになる。なお、この状態では、第一及び第二のストッパー5及び6の働きにより、先頭と二番目の試験管4がそれぞれ移動を拘束されているので、全ての試験管4は停止したままである。
【0033】
次に、試験管準備装置の制御部は、該当するストッカー1の第一のストッパー5のソレノイド16をON動作させる。これにより、ソレノイド16は、そのロッドが退入動作をし、アーム14を枢軸13を支点として図6の半時計方向へ回動させるようになる。そのため、アーム14の一端側に取り付けられた棒状突起5A,5Bが先頭の試験管4のキャップ10の前面側から離れ、先頭の試験管4の拘束を解放する。先頭の試験管4は、フリーの状態となり、往き側の送りベルト2Aのフィードを受けて、停止位置から前進を始める。やがて先頭の試験管4は、試験管保持部材3の終端側の排出部12に至り、試験管保持部材3との係合が解放されるので、キャップ10が試験管保持部材3の無くなった方へ傾斜した姿勢となって往き側送りベルト2Aに片持ち支持され、ついには往き側送りベルト2Aとの係合も解放されて図5の鎖線で示すように、試験管4の底部側が搬送ベルト20の前進方向へ向けた状態で自重により搬送ベルト20の上に落下する。
【0034】
一方、第一のストッパー5は、ソレノイド16がOFF動作するので、アーム14はリターンスプリング18によって、元の水平状態へ復帰する。続いて、第二のストッパー6のソレノイド17がON動作し、アーム15を図6の鎖線で示す位置まで半時計方向へ回動させるようになる。これにより、棒状突起6A,6Bが第二番目の試験管4のキャップ10との接合を解放する。そのため、第二番目以降の残りの全ての試験管4は、往き側送りベルト2Aの駆動力を受けて前進し、新たに先頭になった試験管4が第一のストッパー5の棒状突起5A,5Bにそのキャップ10の前面側を当接して停止するようになる。最後に、第二のストッパー6のソレノイド17がOFF動作し、リターンスプリング19によって水平状態へ復帰し、新たに先頭になった試験管4と二番目に位置する試験管4とのキャップ10どうしの隙間に進入し、次の試験管4の供給指令が発せられるまでこの状態で待機する。
【0035】
前記搬送ベルト20は、第一のストッパー5のソレノイド16がON動作するのと同じタイミングで駆動を開始している。そのため、自重により落下供給された試験管4は、搬送ベルト20により図5の左方向から右方向へ向けて搬送され、到着検知板21を押圧付勢するようになる。なお、試験管4は搬送ベルト20へ直立の状態で落下供給されたとしても、搬送ベルト20が同図の左方向から右方向へ駆動していることにより、足元を掬われるようになり、底部側が先頭になって搬送されるようになる。搬送ベルト20上の試験管4は、搬送路の終端側でその底部が到着検知板21に当接してこれを押圧し、到着検知板21を傾斜した姿勢から直立の姿勢に揺動させて停止するようになる。
なお、この停止位置では、図示しない試験管4の方向検知センサーが試験管4のキャップ10を検知することで、音声や発光素子の点滅信号などにより警報を発し、作業者に知らせるようになっている。この場合、作業者は試験管4を取り出し、向きを変えて作業を続行するようにすればよい。
【0036】
到着検知板21が直立の姿勢に押圧付勢されることで、投受光センサー等の到着検知手段が働き、試験管4が供給されて来たことを検知することができる。この到着検知信号により、搬送ベルト20の搬送方向に直行する方向へ往復動作するスライダー22が動作を開始し、到着した試験管4を横方向へ押し出してラベル貼付装置7の貼付手段29側へ落下させて供給する。貼付手段29では、加圧ローラ28が後退位置にあり、試験管4を受け取ると前進し、試験管4を駆動ローラ26と支持ローラ27側へ押圧付勢し、駆動ローラ26の駆動力を試験管4に伝達し、試験管4を周方向へ回転させる。
【0037】
一方、ラベルの印字装置25では、供給ローラ23から繰り出されるラベルに上位コンピュータ及び医師のコンピュータ端末等から取得した患者ID、検査項目、採血管種、採血量などの採血情報の必要項目を印字する。印字後のラベルは、剥離紙が図6に示すように、鋭角的に折り返して移動することで、腰の強いラベルのみがそのまま直進し、前記剥離紙から自然的に剥離される。そして、剥離されたラベルは、駆動ローラー26と試験管4の外周面との間に進入して巻き取られ、試験管4の外周面に貼付される。ラベル貼付後の試験管4は、加圧ローラ28が斜め下方(図6の左下方)へ後退復帰することにより、貼付部から解放されて自重により落下し、トレイ30内へ収容される。
【0038】
以上により、一つの管種の一本の試験管の準備が完了する。以後は、他にも要求されている試験管があれば、その管種のストッカー1を駆動させ、順次、上述の動作を繰り返して試験管4をトレイ30内へ収容する。このようにして、上位コンピュータ及び医師のコンピュータ端末等からの情報で要求されている全ての管種の試験管の準備が完了すれば、一人の患者分についての採血用試験管の準備が完了したことになる。以後は同様にして他の患者の試験管を準備すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
ところで、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、試験管ストッカー1に使用する送りベルト2は、歯付きベルトの場合を説明したが、通常の平ベルトであってもよい。また試験管ストッカー1は、6個を併設した場合を説明したが、1個、2個、3個等の6個以下であってもよく、6個以上であってもよい。目的に応じてその数を任意に設定することが可能である。
更に、ソレノイド16,17はON動作時にロッドが退入する場合を説明したが、突出と退入の往復動作をするものであってもよい。この場合、リターンスプリング18,19は省略することが可能である。
【0040】
更にまた、搬送ベルト20をストッカー1の領域と、ラベル貼付装置7の領域とに分割して二つの搬送ベルトが連続するように構成し、試験管4が自動的に乗り移ることができるようにすることも可能である。この場合は、試験管準備装置の筐体を構成する外部カバーを、ストッカー1の領域とラベル貼付装置7の領域とに分離することができ、それぞれの領域で固有のメンテナンス作業を実施することができる。また試験管ストッカー装置と、ラベル貼付装置7とを別々に構成し、試験管ストッカー装置を単独販売し、ラベル貼付装置をオプション製品として両者を連結して試験管準備装置を構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態に係る試験管ストッカーの基本構成を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る試験管ストッカー全体を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るものであり、図1のA−A線断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るものであり、第一及び第二のストッパーを示す平面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る試験管準備装置を示す正面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る試験管準備装置のラベル貼付装置を構成する部材の位置関係を示す側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…試験管ストッカー、2…送りベルト、2A…往き側送りベルト、2B…戻り側送りベルト、3…試験管保持部材、4…試験管、5…第一のストッパー、5A,5B…棒状突起、6…第二のストッパー、6A,6B…棒状突起、7…ラベル貼付装置、8A,8B…プーリー、9…歯、10…キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端側に配設されたプーリー間に懸架され、水平方向に回転駆動するエンドレス状の送りベルトと、該送りベルトの往復するベルトどうしの間にあって送りベルトに沿って配設された試験管保持部材とを有し、往き側の送りベルトの上端面と前記試験管保持部材の上端面との間に、試験管キャップの対向する下端面を載置すると共に、試験管保持部材の終端側を通過した位置において試験管が自重により落下排出される排出部を設けたことを特徴とするハンガータイプの試験管ストッカー。
【請求項2】
試験管保持部材の終端側において、先頭の試験管のキャップ前面に対して進入退出自在に配設された第一のストッパーと、先頭から第一番目と第二番目の試験管のキャップどうしの間に形成される隙間に対して上方から進入退出自在に配設された二股状の第二のストッパーとが配設されている請求項1に記載のハンガータイプの試験管ストッカー。
【請求項3】
第一のストッパーと第二のストッパーとが同一の軸に枢支された二つのアームの先端側に取り付けられており、各アームの一端側にはソレノイドが連結されている請求項2に記載のハンガータイプの試験管ストッカー。
【請求項4】
試験管保持部材の終端側下方には試験管を寝かせた状態で搬送する搬送ベルトが配設されている請求項1乃至3に記載のハンガータイプの試験管ストッカー。
【請求項5】
両端側に配設されたプーリー間に懸架され、水平方向に回転駆動するエンドレス状の送りベルトと、該送りベルトの往復するベルトどうしの間にあって送りベルトに沿って配設された試験管保持部材とを有し、往き側の送りベルトの上端面と前記試験管保持部材の上端面との間に、試験管キャップの対向する下端面を載置すると共に、試験管保持部材の終端側には試験管が自重により落下排出される排出部を設け、該排出部の下方には試験管の搬送ベルトを配設し、該搬送ベルトの終端側にラベルの印字・貼付手段を設けたことを特徴とする試験管準備装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−54477(P2010−54477A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222675(P2008−222675)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【特許番号】特許第4356096号(P4356096)
【特許公報発行日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(509140951)
【出願人】(508141597)ジェネシス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】