説明

ハンドオーバメカニズムをサポートする方法

ハンドオーバメカニズム、特にIEEE802.21標準に準拠したメディア非依存ハンドオーバ(MIH)メカニズムをサポートする方法を提供する。ユーザ装置(UE)がポイントオブアタッチメント(PoA)を介してアクセスネットワーク(AN)にアタッチし、シグナリングメッセージがハンドオーバプロセスに関与するエンティティ間、特にユーザ装置(UE)とポイントオブアタッチメント(PoA)との間で交換され、ハンドオーバメカニズムは、ユーザ装置(UE)のすべての進行中の通信を維持しながら、ユーザ装置(UE)のネットワーク接続を、ポイントオブアタッチメント(PoA)の1つ、すなわち現ポイントオブアタッチメント(PoA)から、ポイントオブアタッチメント(PoA)の他の1つ、すなわちターゲットポイントオブアタッチメント(PoA)に変更することをサポートする。本方法は、ユーザ装置(UE)の進行中の通信に関する情報が、ハンドオーバプロセスで交換されるシグナリングメッセージに追加され、この情報が、ハンドオーバプロセス中に選択的に、ユーザ装置(UE)の進行中の通信の各トラフィックフローを処理するために使用されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドオーバメカニズム、特にIEEE802.21標準に準拠したメディア非依存ハンドオーバ(Media Independent Handover, MIH)メカニズムをサポートする方法に関する。ユーザ装置がポイントオブアタッチメントを介してアクセスネットワークにアタッチする。シグナリングメッセージが前記ハンドオーバプロセスに関与するエンティティ間、特に前記ユーザ装置と前記ポイントオブアタッチメントとの間で交換される。前記ハンドオーバメカニズムは、前記ユーザ装置のすべての進行中の通信を維持しながら、前記ユーザ装置のネットワーク接続を、前記ポイントオブアタッチメントの1つ、すなわち現ポイントオブアタッチメントから、前記ポイントオブアタッチメントの他の1つ、すなわちターゲットポイントオブアタッチメントに変更することをサポートする。
【背景技術】
【0002】
近年、いくつかの種類の無線通信システムが開発されている。例えば、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)は現在広く普及し、UMTS(Universal Mobile Telecommunication Systems)のようなセルラネットワークはきわめて重要なものとなっており、また最近では、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)が、ラストマイル無線ブロードバンドアクセスの配信を可能にする標準準拠技術として開発されている。これらの技術はそれぞれ、さまざまな種類のサービスおよび特定のアプリケーションを提供する。共存する技術が広く普及し、ユーザのモビリティが拡大する傾向にあることから、モビリティおよびサービス連続性のシームレスなサポートが要求されている。しかし、新しいアクセス技術が多数存在するため、これらの技術にわたってシームレスなモビリティを提供することは非常に困難である。
【0003】
一般的な場面において、ユーザの通信装置/端末のようなモバイルノード(以下、ユーザ装置UEという)は、ポイントオブアタッチメントPoAを介してアクセスネットワークにアタッチされる。PoAは、UEのネットワーク接続点を構成し、UEとアクセスネットワークとの間のデータ通信を可能にする一種の中継ノードとして作用する。PoAという用語は一般的な意味で用いられ、例えば、(例えばWLANにおける)アクセスポイントや(例えばUMTSネットワークにおける)基地局を含み得る。一般的に、PoAは、UEとネットワークとの間のデータ交換を可能にする任意の装置であり得る。ハンドオーバメカニズムは通常、すべての進行中のデータ通信を維持しながら、UE(これは例えば、以下のものに限定されないが、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ノート型コンピュータ、ホームネットワークを含み得る)のネットワーク接続を、あるPoA(現PoA)から別のPoA(ターゲットPoA)に変更することをサポートする。このようなハンドオーバは、いくつかの理由で実行される可能性がある。その理由としては、例えば、より経済的なアクセスネットワークに変更するため、有線デジタル加入者回線(DSL)から無線UMTS接続に変更するため、あるいは無線信号状態が悪いので無線アクセスポイントを変更するため、ということがある。
【0004】
UEとPoAとの間のリンク(有線・無線を問わず)の変更は通常、リンク層ハンドオーバとして実現され、その後さらに上位層でのハンドオーバ関連手続きが行われる場合もある。この変更は、いくつかのメカニズムによって容易にされる。ハンドオーバは、UEから開始されても、アクセスネットワークから開始されてもよく、いくつかの相異なる方法で実行可能である。細かい違いは別として、ハンドオーバは本質的に以下のステップを含む。
・UEまたはネットワークがハンドオーバプロセスをトリガする。
・ハンドオーバ候補PoAのリストを作成する。
・各ハンドオーバ候補PoAについて、それがUEのための十分なリソースを有するか、そしてUEがそれらリソースの使用を許可されているかをチェックする。
・1つの候補PoAをターゲットPoAとして選択する。
・このターゲットPoAへのハンドオーバを実行する。
【0005】
異種ネットワーク間のシームレスなハンドオーバのために、IEEE802.21 MIH仕様が策定されている。IEEE802.21標準の目的は、リンク層のインテリジェンスおよびその他の関連するネットワーク情報を上位層に提供することで、モビリティ決定機能(UEおよびネットワークの両方に配置される)を支援するとともに、異種メディア間ハンドオーバを最適化する仕様を策定することである。ここで、「メディア」とは、通信の感覚的諸側面(例えば、オーディオ、ビデオ等)ではなく、通信システムにアクセスする方法あるいは態様(例えばケーブル、無線、衛星等)のことを指している。MIH機能(MIH Function, MIHF)は、802.21標準の中心的コンポーネントである。これは、明確に定義され標準化されたサービスアクセスポイント(Service Access Point, SAP)のセットを提供する。SAPには、この情報(MIHユーザ)を使用するリンク層とのSAP(MIH_LINK_SAP)および上位層とのSAP(MIH_SAP)の両方がある。通信プロセスを容易にするために、これらのインタフェースを通じて、次のようなサービスのセットが提供される。
・メディア非依存イベントサービス(Media Independent Event Service, MIES)は、リンク層プロパティの変更を検出し、ローカルおよびリモート両方のインタフェースから適当なイベント(トリガ)を開始する。
・メディア非依存コマンドサービス(Media Independent Command Service, MICS)は、ハンドオーバおよび必要に応じてリンク間の切替に関するリンクプロパティを制御するための、MIHユーザに対するコマンドのセットを提供する。
・メディア非依存情報サービス(Media Independent Information Service, MIIS)は、さまざまなネットワークおよびそれらのサービスに関する静的情報を提供することによって、より効果的なハンドオーバ決定が異種ネットワークにわたって行われることを可能にする。
【0006】
要約すれば、この標準は、MIHピア間で情報、イベントおよびコマンドを共有することによって、802.Xファミリのネットワーク、3GPPおよび3GPP2ネットワーク等の異種ネットワークにわたるハンドオーバを改善する手段を提供することを目的としている。
【0007】
ハンドオーバに関与するエンティティ間で交換されるメッセージは、UEのリソースおよびサービス品質(QoS)に対する需要と、UEの識別およびセキュリティ証明書のような管理情報とを含む。この情報は、UEをサポートするには十分なリソースを有しない候補PoAを除外するために使用される。ハンドオーバ時に、十分なリソースを有するターゲットPoAが利用可能でない場合には、UEのすべての通信が切れてしまう。したがって、通信の拒否により、有効性が低下し、ユーザエクスペリエンスが劣化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、頭書のようなハンドオーバメカニズムをサポートする方法において、ハンドオーバの有効性向上という意味での改善が達成されるような改良およびさらなる展開を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1の構成を備えた方法によって達成される。この請求項に記載の通り、本方法は、以下のことを特徴とする。すなわち、前記ユーザ装置の進行中の通信に関する情報が、前記ハンドオーバプロセスで交換される前記シグナリングメッセージに追加され、前記情報が、前記ハンドオーバプロセス中に選択的に、前記ユーザ装置の進行中の通信の各トラフィックフローを処理するために使用される。
【0010】
本発明は、UEが通常、相異なるアプリケーション間で、および/または、相異なる通信相手との間で、複数のデータフローを同時に確立していることを考慮する。これに関して、本発明によって初めて認識されたこととして、フローどうしはきわめて独立しており、特にユーザエクスペリエンスの観点からは、それらのフローが全部切れるよりも、少なくともいくつかのフローを保持するほうが有益である。具体的に認識されたこととして、ハンドオーバプロセスで交換されるメッセージにUEの進行中のデータフローに関する情報を追加することによって、ハンドオーバ最適化を達成することができる。これにより、データフローは、ハンドオーバプロセスの期間中およびその後に選択的に処理されることが可能となる。実際、このような拡張により、同じユーザ装置による複数のデータフローを、UEとアクセスネットワークとの間の通信リンク上で、あるいはアクセスネットワーク内でも、別様に処理することが可能となる。こうして、各フロー関連情報を含めることによるシグナリングメッセージの改変によって、進行中のフローを効果的に保持し、切断しなければならないフロー数を最小にすることで、ユーザエクスペリエンスが大幅に向上する。
【0011】
本発明による方法は、例えばIEEE802.21標準に準拠したMIH環境において好適に適用可能である。しかし言うまでもなく、本発明は、ハンドオーバメカニズムが、進行中のデータ通信を維持しながら、UEのネットワーク接続を異なるPoAに変更することをサポートする任意の場面に適用可能である。したがって、以下でMIHに言及しつつ本発明を説明する場合、この言及は単なる例示的な言及と解すべきであり、いかなる意味でも本発明を限定する意図は全くないことをはっきりと指摘しておかなければならない。
【0012】
好ましい実施形態において、シグナリングメッセージに追加される情報は、各フローのリソース要求および/またはQoS需要に関する情報を含み、例えば、以下のものに限定されないが、帯域幅、遅延、ジッタ(遅延変動)または(パケット)損失パラメータが挙げられる。この情報は、各フローまたはフロー群の具体的特性に最も好適に適応した形でフローを選択的に処理するように、決定プロセスをサポートすることができる。
【0013】
これに加えて、あるいは別法として、シグナリングメッセージは、各フローのタイプ、例えばオーディオ/ビデオまたはウェブトラフィック、に関する情報を含んでもよい。例えば、単一のウェブページにアクセスするというような短寿命のセッションは通常、ハンドオーバやQoSを要求しない。VoIP、オーディオ/ビデオストリーミング(TV生放送やビデオオンデマンド等)、およびVPN(仮想私設ネットワーク)のようなより長期間のセッションは、ハンドオーバを要求する可能性が高く、通常、上記のようなQoS要求を有する。シグナリングメッセージに追加される各フローのタイプに関する情報は、ハンドオーバの前後のみならずハンドオーバの期間中にも、各フローのそれぞれのQoS需要が満たされることを保証することができる。
【0014】
有利な態様として、シグナリングメッセージは、各フローの優先度および/または重要度に関する追加情報を、絶対値として、または他のフローに対して相対的に、含んでもよい。例えば、このような情報に基づいて、PoAは、リアルタイムマルチメディアアプリケーションのような高優先度のUEを、例えば単一ウェブページへのアクセスのような低優先度のフローよりも優先的に引き受けようとして、関連する通知/メッセージをUEへ送信することができる。その結果、優先度および/または重要度に関連する情報を含めることは、リアルタイム型フローの期限の遵守をサポートし、ハンドオーバプロセスが円滑に実行されることを保証する。
【0015】
シグナリングメッセージに追加される情報は、各フローおよび/またはフロー群どうしの依存性に関する情報を含んでもよい。例えば、マルチメディアセッション(例えば動画ストリーム)のビデオチャネルとオーディオチャネルは、互いに依存していると指示することができる。このような依存性情報を用いることにより、ハンドオーバプロセスは、互いに依存する2つ以上のフローを別のエンティティにハンドオーバすることによるそれらの間の分離がなるべく回避できるような最適化された形で実行可能である。
【0016】
シグナリングメッセージに追加される情報、特に上記の情報は、ネットワーキングスタックのさまざまな上位レベルのプロトコルからの各フローに関する情報、例えば、フロー内に符号化されたマルチメディアストリームに関する情報を含んでもよい。これに関して注意すべき重要な点であるが、ネットワーキングスタックの各層は、一般的に、互いに別個かつ独立に実装される。ハンドオーバプロセスは通常、下位層、特にリンク層によって提供されるので、選択性を向上させるために、上位層からのフローに関する何らかの情報を使用すると有益な場合がある。例えば、ビデオを視聴する場合を考えると、何らかの理由で、関連するオーディオ/サウンド情報なしでビデオのみの画像を提供するか、あるいはその逆の提供をすることが望ましい場合がある。その場合、ハンドオーバを実行するために、画像またはオーディオ/サウンドのいずれかの関連情報を上位層から下位層に渡してもよい。
【0017】
ハンドオーバプロセスの開始に関して、UE自体から(例えば接続性が悪い場合)、またはネットワーク側から、トリガを提供してもよい。ハンドオーバプロセスがネットワーク側からトリガされる場合、トリガは、例えば、アクセスネットワークの現PoA(サービングPoA)によって発信されてもよい。
【0018】
一般的に、アクセスネットワークはコアネットワークに接続される。アクセスネットワークは、加入者をそのサービスプロバイダに接続する通信ネットワークの一部を構成する。コアネットワーク、例えば、GSM(Global System for Mobile Communications)におけるNSS(Networking Switching Subsystem)は、アクセスネットワークの相手方である。したがって、ハンドオーバの理由は、アクセスネットワークまたはコアネットワークのいずれから生じる可能性もある。例えば、この理由は、システムスループットを向上させアプリケーション応答時間を短縮する目的でリソース管理または負荷分散を実行する、コアネットワークに配置された機能から生じる場合がある。
【0019】
有利な態様として、ハンドオーバプロセスは、UEの全トラフィックフローに対して一括して、または、UEの各フローもしくはフロー群に対して個別に、トリガすることができるようにしてもよい。これにより、フローごとの情報に基づく拡張されたハンドオーバの準備および実行が可能となる。例えば、アクセスリンク上またはアクセスネットワーク内でのリソース予約や、リソース制約によりフローのサブセットのみを受け付けること、が可能である。
【0020】
効率的なフロー管理および明瞭なフロー識別のため、シグナリングメッセージは、UEの現在アクティブなフローの全部または一部の各識別子または識別子のリストを含んでもよい。識別子は、集約されたフロー情報を含むテーブル内のエントリへの参照として機能してもよい。
【0021】
ターゲットPoAの確認に関して、まず、PoAのうちから、UEのトラフィックフローのハンドオーバ先となる可能性のある1つ以上の候補PoAのセットを決定する。シグナリングメッセージは、直接に候補PoAへ送信してもよいし、その候補PoAのプロキシとして作用する別のエンティティへ送信してもよい。次のステップで、各候補PoAに問い合わせを行い、UEの各フローまたはフロー群をハンドオーバするのに適格かどうかを判定する。特に、問合せは、各候補PoAにおいてUEの各フローまたはフロー群をサポートするのに十分なリソースが利用可能かどうかを判定するための問合せを含んでもよい。なお、候補PoAによって実行されるこのリソースチェックは、UEの全フローをサポート可能かどうかを判定する場合を含む。この特別のサポート可能な場合、UEの全フローが、単一の候補PoAにハンドオーバするのに適格であることになる。
【0022】
次のステップで、候補PoAが、特に問合せを受けた後に、さまざまなタスクを実行するようにしてもよい。例えば、以下のものに限定されないが、候補PoAは、各フローごとに個別に、またはフロー群について、アクセスリンク、バックホール(backhaul)リンクまたはその両方に対するアドミッション制御テストおよびリソース利用可能性チェックを実行してもよい。候補PoAによって実行されたテスト/チェックの結果に基づいて、候補PoAは、サポート可能なフローのサブセットを示すシグナリングメッセージによって応答してもよい。全体的なフレキシビリティを向上させるため、候補PoAの応答は、サポートしてもよいフローの代替サブセットのリストをさらに含んでもよい。相異なる可能なサブセットどうしは、優先度が互いに等しくても異なってもよい。また、これに関して、PoAの観点からは、例えば当該PoAに対するユーザ証明書/権限がないために、リソースが利用可能であっても必ずしも最大のフロー数をとるとは限らないことに注意すべきである。例えば、携帯電話サービスプロバイダは、ユーザに対して、電話通話のみを許可し、インターネットアクセスのような他のサービスは遮断するかもしれない。このような場合、代替サブセットは、PoAがハンドオーバプロセスで実際に引き継いでも構わないフローを含むようにすることができる。
【0023】
有利な態様として、ハンドオーバを準備するエンティティは、各フローまたはフローのセットのハンドオーバ先となるターゲットPoAとしてどの候補PoAが選択されるかについて決定する。決定は、候補PoAから受信された応答に基づいてもよい。ハンドオーバを準備するエンティティは、例えば、以下のものに限定されないが、UE自体(WLANにおいては通常)、現在のサービングPoAまたは例えばアクセスネットワークに実装される中央コーディネータ(central coordinator)であってもよい。特に、GSM/UMTSネットワークでは、ハンドオーバを準備し決定するエンティティは、移動体通信事業者(mobile network operator)であってもよい。
【0024】
具体的応用において、ハンドオーバを準備するエンティティは、UEの現在アクティブなフローのサブセットのみをハンドオーバし、残りは切断すると決定してもよい。
【0025】
また、ハンドオーバを準備するエンティティは、UEの現在アクティブなフローの一部をあるターゲットPoAにハンドオーバし、他の部分を1つ以上の他のターゲットPoAにハンドオーバすると決定してもよい。例えば、これが起こり得るのは、UEのすべての現在アクティブなフローに対する十分なリソースを有するターゲットPoAが現在存在しない場合である。
【0026】
結果として、UEは、ハンドオーバがUEおよび対応するアクセスネットワークによってサポートされる場合には、ハンドオーバ後に複数のPoAに接続される可能性がある。しかし、言うまでもなく、ハンドオーバの実行前にも、UEは複数のPoAに接続されている場合がある。これは、以前のハンドオーバの結果であることもあり得る。
【0027】
有利な態様として、ターゲットPoAへのハンドオーバ実行を通知するため、あるいは以前のアクティブPoAや候補PoAへのリソースの解放を通知するために使用されるシグナリングメッセージは、ハンドオーバする各フローあるいはハンドオーバしない各フローに関する情報を伝達してもよい。この情報は、PoAが以前のメッセージ交換から情報を取り出すことを容易にする情報を追加することによって、明示的または暗黙的に含まれてもよい。フローごとの利用可能なリソースに関する情報データを収集した後、ハンドオーバを準備するエンティティは、ハンドオーバの具体的実現について決定する。これに関して、決定を行うエンティティは、リソースの利用に関するUEの証明書および/または権限を考慮する。決定プロセスの結果は、フローごとに、近隣エンティティに送信されてもよい。
【0028】
好ましい実施形態によれば、シグナリングメッセージに追加される各フローに関する情報は、アクセスリンク上およびアクセスネットワーク内の各フローに対するリソースを予約するために、ターゲットPoAによって使用されてもよい。また、各フローに関する情報は、アクセスネットワークを通る経路にフローをマッピングするために、ターゲットPoAによって使用されてもよい。
【0029】
それぞれのリソースは、各フローまたはフローのセットごとにターゲットPoAによって割り当てられてもよく、必要な状態が例えばMIHFに設定されてもよい。
【0030】
なお、本明細書に記載の方法は、IEEE802.21仕様に規定されたMIHに限定されない。当業者には明らかなように、上記の方法は、類似のメカニズムや機能を有する従来および将来のいかなるプロトコルにも適用できる。
【0031】
本発明を好適な態様で実施するにはいくつもの可能性がある。このためには、一方で請求項1に従属する諸請求項を参照しつつ、他方で図面により例示された本発明の好ましい実施形態についての以下の説明を参照されたい。図面を用いて本発明の好ましい実施形態を説明する際には、本発明の教示による好ましい実施形態一般およびその変形例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による方法の適用場面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、IEEE802.21標準における適用場面の一例を示している。例示した実施形態において、ユーザ装置UEが、ポイントオブアタッチメントを介してアクセスネットワークに接続されている。このポイントオブアタッチメントを、現ポイントオブアタッチメント(PoA)と称する。現PoAに加えて、さらに2つのポイントオブアタッチメントが(候補PoA1および候補PoA2と称する)、同一または別のアクセスネットワークへの可能なアクセスをUEに提供する。図1は、可能なハンドオーバ場面を例示し、IEEE802.21メッセージが本発明によりどのように拡張され得るかを示している。この拡張によって、候補PoAは、フローごとにアクセスリンクおよびバックホールの両方において利用可能なリソースをチェックすることができる。これにより、PoAは、フローのサブセットに対して利用可能なリソースのみを有することを通信することができる。また、PoAは、フローの代替サブセットを提示することも可能である。その場合、UEは、自己のフローのサブセットについて、複数のPoAへのハンドオーバであっても、ハンドオーバを要求することができる。なお、繰り返しになるが、MIHに言及しつつ本発明を説明する場合、この言及は単なる例示的な言及と解すべきであり、いかなる意味でも本発明を限定する意図は全くないことを再びはっきりと指摘しておかなければならない。
【0034】
以下、図1に示した例示的実施形態の各ステップについて、より詳細に説明する。UEは、PDA、ノート型コンピュータあるいはホームネットワークとすることが可能である。UEは、PoAを介してサービングネットワークに接続される。このPoAは、アクセスポイントまたは基地局とすることが可能であり、以下、現PoAと称する。初期状態において、現PoAは、フローF1、F2およびF3について、UEとネットワークとの間の通信を提供する。第1ステップ(1)で、UE、あるいはより正確にはUE上のMIHユーザが、例えば接続状況が最適でないため、他のPoAへのハンドオーバを実行したいと考える。このために、可能なハンドオーバ開始のために候補PoAに問い合わせるようMIHFに通知するプリミティブMIH_MN_HO_Candidate_Query RequestがUEによって生成される。特に、MIH_MN_HO_Candidate_Query Requestは、進行中のデータセッションのQoSリソースが候補ネットワークにおいてサポートされ得るかどうかの情報を取得する目的に応じる。MIH_MN_HO_Candidate_Query Requestは、IEEE802.21標準に準拠した通常のパラメータとともに、UEの現在アクティブなフローF1、F2およびF3に関する追加パラメータを含む。
【0035】
次に、サービングネットワーク上,すなわち現PoA上のMIHFによって、候補ネットワーク上のピアMIHFと通信するためのプリミティブMIH_N2N_HO_Query_Resources Requestが使用される。図1に例示した実施形態では、この通信は、候補ポイントオブアタッチメントPoA1およびPoA2上のMIHFとの間で確立される(2)。MIH_N2N_HO_Query_Resources Requestは、現PoAによって、UEからMIH_MN_HO_Candidate_Query Requestメッセージを受信した後に生成され、1つまたは複数の候補PoAへ送信される。MIH_N2N_HO_Query_Resources Requestは、これから行われるハンドオーバのための新たなリンクリソースを準備し、候補ネットワークの利用可能なリンクリソースを問い合わせるために使用される。MIH_N2N_HO_Query_Resources Requestもまた、各フローF1、F2およびF3に関する情報を含む。
【0036】
MIH_N2N_HO_Query_Resources Requestメッセージを受信した後、ステップ(3)で、候補PoA(候補PoA1および候補PoA2)は、それぞれの候補ネットワークにおいてフローごとにリソース利用可能性をチェックする。このチェックは、この例示的実施形態では、次ホップを構成するそれぞれの候補ネットワークのノードにコンタクトすることによって行われる。ただし、それぞれの利用可能性情報は、候補PoA自体にすでに保存されていることも可能であり、あるいは、他の候補ネットワークエンティティ、例えば、複数のPoAに対するリソース利用可能性情報を保存する集中化エンティティや、同じ候補ネットワークの次ホップエンティティから、候補PoAによって取得されることも可能である。ステップ(4)で、候補PoAは、候補ネットワークからそれぞれの利用可能性情報を受信する。具体的には、候補PoA1は、フローF2がサポート可能であるという情報を受信し、候補PoA2は、フローF1およびF3がサポート可能であるという情報を受信する。
【0037】
候補PoAは、MIH_N2N_HO_Query_Resources Response(5)によって、現PoAへ、自己のリソース利用可能性チェックの結果を応答する。次のステップで、現PoAは、MIH_MN_HO_Candidate Query Response(6)によって、候補ネットワークにおいて得られたリソース利用可能性情報をUEに通知する。
【0038】
上記ですでに述べたように、PoA1はフローF2のみをサポート可能であるのに対して、PoA2はフローF1およびF3をサポート可能である。この情報に基づいて、UEは、PoA2のみにアタッチすることを選択することにより実質的にフローF2を切断するか、または、3つのフローすべてを維持するためにPoA1およびPoA2の両方に同時にアタッチするかを選択してもよい。別法として、各フローをどう処理すべきかの決定はネットワークエンティティ、例えばアクセスポイントや基地局のようなPoAに委ねてもよい。図1に例示した適用例では、UEが、ハンドオーバのターゲットPoAとしてPoA2のみを選択することに決定し、MIH_MN_HO_Commit Request(7)を送信することによって、選択したターゲットPoAへのハンドオーバを現PoAに対して要求する。別法として、サービングPoAが、ローカルまたはリモートの(MIH_)Link_Handover_Imminent Indicationを受信することによって、ハンドオーバの必要性を検出し、収集したフローおよび利用可能性情報に基づいて、自らターゲットPoAを選択することも可能である。その後、サービング現PoAが、ターゲットPoAへMIH_N2N_HO_Commit Requestを送信することにより(8)、ターゲットネットワークにおけるリソース準備を要求する。このターゲットネットワークは、図1に例示した実施形態では、候補PoA2を介してアクセス可能である。
【0039】
上記の説明および添付図面の記載に基づいて、当業者は本発明の多くの変形例および他の実施形態に想到し得るであろう。したがって、本発明は、開示した具体的実施形態に限定されるものではなく、変形例および他の実施形態も、添付の特許請求の範囲内に含まれるものと解すべきである。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは総称的・説明的意味でのみ用いられており、限定を目的としたものではない。
【0040】
本発明に至った仕事は、助成金契約番号214994により欧州共同体第7次枠組計画(FP7/2007−2013)から資金提供を受けている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドオーバメカニズム、特にIEEE802.21標準に準拠したメディア非依存ハンドオーバ(MIH)メカニズムをサポートする方法において、
ユーザ装置(UE)がポイントオブアタッチメント(PoA)を介してアクセスネットワーク(AN)にアタッチし、
シグナリングメッセージが前記ハンドオーバプロセスに関与するエンティティ間、特に前記ユーザ装置(UE)と前記ポイントオブアタッチメント(PoA)との間で交換され、
前記ハンドオーバメカニズムは、前記ユーザ装置(UE)のすべての進行中の通信を維持しながら、前記ユーザ装置(UE)のネットワーク接続を、前記ポイントオブアタッチメント(PoA)の1つ、すなわち現ポイントオブアタッチメント(PoA)から、前記ポイントオブアタッチメント(PoA)の他の1つ、すなわちターゲットポイントオブアタッチメント(PoA)に変更することをサポートし、
該方法は、
前記ユーザ装置(UE)の進行中の通信に関する情報が、前記ハンドオーバプロセスで交換される前記シグナリングメッセージに追加され、
前記情報が、前記ハンドオーバプロセス中に選択的に、前記ユーザ装置(UE)の進行中の通信の各トラフィックフローを処理するために使用される
ことを特徴とする、ハンドオーバメカニズムをサポートする方法。
【請求項2】
前記シグナリングメッセージに追加される前記情報が、各フローのリソース要求および/またはサービス品質(QoS)需要、特に帯域幅、遅延、ジッタまたは損失パラメータに関する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シグナリングメッセージに追加される前記情報が、前記UEのフローのタイプに関する情報を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記シグナリングメッセージに追加される前記情報が、各フローの優先度および/または重要度に関する情報を、絶対値として、または他のフローに対して相対的に、含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記シグナリングメッセージに追加される前記情報が、各フローおよび/またはフロー群どうしの依存性に関する情報を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記シグナリングメッセージに追加される前記情報が、ネットワーキングスタックの1つ以上の上位レベルのプロトコルからの各フローに関する情報を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ハンドオーバプロセスが、前記ユーザ装置(UE)によって、またはネットワーク側から、特に前記現ポイントオブアタッチメント(PoA)によって、トリガされることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ハンドオーバの理由が、前記アクセスネットワーク(AN)から、または、前記アクセスネットワーク(AN)が接続されたコアネットワーク(CN)から、生じることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ハンドオーバプロセスが、前記ユーザ装置(UE)の全トラフィックフローに対して一括して、または、前記ユーザ装置(UE)の各フローもしくはフロー群それぞれに対して個別に、トリガされることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記シグナリングメッセージが、前記ユーザ装置(UE)の現在アクティブなフローの全部または一部の各識別子または識別子のリストを含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポイントオブアタッチメント(PoA)のうちから、前記ユーザ装置(UE)のトラフィックフローのハンドオーバ先となる可能性のある候補ポイントオブアタッチメント(PoA)のセットが決定されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ユーザ装置(UE)の各フローまたはフロー群をハンドオーバするのに適格かどうかを判定するため、特に各候補ポイントオブアタッチメント(PoA)において前記ユーザ装置(UE)の各フローまたはフロー群をサポートするのに十分なリソースが利用可能かどうかを判定するために、前記候補ポイントオブアタッチメント(PoA)が問合せを受けることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記候補ポイントオブアタッチメント(PoA)が、さまざまなタスク、特に、各フローごとに個別に、またはフロー群について、アクセスリンクおよび/またはバックホールに対するアドミッション制御テストおよびリソース利用可能性チェック、を実行することを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記候補ポイントオブアタッチメント(PoA)が、サポート可能なフローのサブセットまたはフローの代替サブセットのリストを示すシグナリングメッセージによって応答することを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
ハンドオーバを準備するエンティティが、好ましくは前記候補ポイントオブアタッチメント(PoA)からの応答に基づいて、各フローまたはフローのセットのハンドオーバ先となるターゲットポイントオブアタッチメントとしてどの候補ポイントオブアタッチメント(PoA)が選択されるかについて決定することを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ハンドオーバを準備するエンティティが、前記ユーザ装置(UE)の現在アクティブなフローのサブセットのみをハンドオーバし、残りは切断すると決定することを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ハンドオーバを準備するエンティティが、前記ユーザ装置(UE)の現在アクティブなフローの一部をあるターゲットポイントオブアタッチメント(PoA)にハンドオーバし、他の部分を1つ以上の他のターゲットポイントオブアタッチメント(PoA)にハンドオーバすると決定することを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ユーザ装置(UE)が、ハンドオーバの前および後に複数のポイントオブアタッチメント(PoA)に接続されることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ターゲットポイントオブアタッチメント(PoA)へのハンドオーバ実行、または、以前のポイントオブアタッチメント(PoA)もしくは候補ポイントオブアタッチメント(PoA)へのリソースの解放を通知するために使用される前記シグナリングメッセージが、ハンドオーバする各フローに関する情報も伝達することを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記情報は、前記ポイントオブアタッチメント(PoA)が以前のメッセージ交換から該情報を取り出すことを容易にする情報を追加することによって、明示的または暗黙的に含まれることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
各フローに関する前記情報が、アクセスリンク上およびアクセスネットワーク(AN)内の各フローに対するリソースを予約するために、ターゲットポイントオブアタッチメント(PoA)によって使用されることを特徴とする請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
各フローに関する前記情報が、アクセスネットワーク(AN)を通る経路にフローをマッピングするために、ターゲットポイントオブアタッチメント(PoA)によって使用されることを特徴とする請求項19ないし21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
それぞれのリソースが、各フローまたはフローのセットごとに前記ターゲットポイントオブアタッチメント(PoA)によって割り当てられることを特徴とする請求項12ないし22のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−530908(P2011−530908A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522389(P2011−522389)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002865
【国際公開番号】WO2010/022804
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(508342183)エヌイーシー ヨーロッパ リミテッド (101)
【氏名又は名称原語表記】NEC EUROPE LTD.
【Fターム(参考)】