説明

ハンドオーバ制御方法、基地局装置および無線通信システム

【課題】ハンドオーバ指令の再送に掛かる無線リソースの無駄な消費を抑えて、システムのスループット向上を図ること。
【解決手段】このハンドオーバ制御方法は、移動局(1)との無線通信中に基地局(10)が無線リンク障害の有無を検出するステップと、ハンドオーバの実行条件になった場合に基地局(10)が移動局(1)にハンドオーバ指令を送信するステップと、ハンドオーバ指令の送信後に移動局(1)からフィードバック情報が受信されない場合にハンドオーバ指令を再送するステップと、ハンドオーバ指令の送信後に、無線リンク障害有りとする検出条件を、無線リンク障害が早く検出される方向へ変更するステップと、ハンドオーバ指令の送信後に、無線リンク障害有りと検出された場合に、ハンドオーバ指令の再送を中止させるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LTEなどの通信方式におけるハンドオーバ制御方法、基地局装置および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、移動体通信システムのアクセス方式としてLTE(Long Term Evolution)方式の標準化が進められている。LTEシステムでは、移動局(例えばUE:User Equipment)のハンドオーバ(H/O)処理において、次のような規定がなされている。すなわち、ハンドオーバの遅延を小さくするため、基地局(eNB)からハンドオーバ指令を受信した移動局は、この指令に対してレイヤ2の肯定応答(ACK)を返す必要がない。そして、そのまま、内部リソースの再設定など、ハンドオーバ処理を進めてよい規定となっている(非特許文献1参照)。
【0003】
LTEシステムの一般的なハンドオーバ手順を図4と図5に示す。図4に示すように、ステップS1〜S6において、ハンドオーバ実行の判断とハンドオーバの準備処理が行われると、続いて、ハンドオーバ元のソース基地局(ソースeNB)10からUE1へハンドオーバ指令が送信される(ステップS7)。この指令を受信したUE1は、無線リンクの接続先をソース基地局10からターゲート基地局30へ変えるべく、ステップJ3の内部処理を行って、ターゲート基地局30との同期化を開始する(ステップS9)。同期化に成功した場合、ターゲット基地局10aからUE1に上りリンクのリソース割当とタイミングアドバンスの情報が送信される(ステップS10)。UE1はこれらの情報に基づいて上りリンクに関する設定を切り換えた後、ハンドオーバ完了を通知するRRC接続・再設定完了の通知をターゲット基地局10aへ送信する(ステップS11)。
【0004】
ハンドオーバ完了の通知がなされたターゲート基地局30は、続く、ハンドオーバ最終ステップJ4(図5参照)で、上位局(例えばサービスゲートウェイ:Serving Gateway)52に対して、UE1のユーザデータを自局に送信するようにデータ転送経路を切り替えるための処理を実行する(ステップS12〜S16)。そして、この切り替えが完了した後、ターゲート基地局30は、ソース基地局10へUEコンテキストの解放を通知する(ステップS17)。ソース基地局10は、この通知に基づいて、UE1に割り当てていたリソースを解放する(ステップS18)。
【0005】
他方、ソース基地局10が、ステップS7でハンドオーバ指令を送信した後、所定時間経過してもステップS17のUEコンテキストの解放通知が受信されない場合には、ハンドオーバ失敗とみなし、自発的にステップS18のリソース解放を実行する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TS36.331 V10.1.0 "Reception of an RRC Connection Reconfiguration including the mobility Control Info by the UE ( handover ) "
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LTEシステムのハンドオーバ処理では、先に述べたように、ステップS7のハンドオーバ指令に対して、UE1はレイヤ2の肯定応答を返す必要がない。したがって、ハンドオーバ指令を送信したソース基地局10は、ハンドオーバ指令が正常にUE1に受信されたかすぐに知ることができない場合がある。この場合、レイヤ2の自動再送処理によって、ハンドオーバ指令がUE1へ無駄に再送され、無線の周波数リソースが無駄に消費されてしまうという課題を生じさせる。また、LTEシステムでは無線の周波数リソースを複数のUE1に共通に振り分けて利用しているため、周波数リソースの消費はシステム全体のスループットの低下をまねく。
【0008】
本発明は、ハンドオーバ指令の再送に掛かる無線リソースの無駄な消費を抑えて、システムのスループット向上を図ることのできるハンドオーバ制御方法、基地局装置および無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るハンドオーバ制御方法は、移動局との無線通信中に基地局が当該移動局との間の無線リンク障害の有無を検出するステップと、ハンドオーバの実行条件になった場合に前記基地局が前記移動局にハンドオーバ指令を送信するステップと、前記ハンドオーバ指令の送信後に前記移動局からフィードバック情報が受信されない場合に前記ハンドオーバ指令を再送するステップと、前記ハンドオーバ指令の送信後に、前記無線リンク障害有りとする検出条件を、当該無線リンク障害が早く検出される方向へ変更するステップと、前記ハンドオーバ指令の送信後に、前記無線リンク障害有りと検出された場合に、前記ハンドオーバ指令の再送を中止させるステップとを含む構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従うと、ハンドオーバ指令に対する肯定応答がなくても、速やかにハンドオーバ指令の再送が中止される。したがって、この再送に掛かる無線リソースの消費が速やかに解消されて、システムのスループット向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態の基地局を含んだ無線通信システムの構成を示すブロック図
【図2】本発明の第2実施形態の基地局を含んだ無線通信システムの構成を示すブロック図
【図3】第2実施形態の無線通信システムのハンドオーバ手順を示すシーケンス図
【図4】従来の無線通信システムのハンドオーバ手順を示すシーケンス図
【図5】図4のハンドオーバ最終ステップJ4の詳細な手順を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の基地局が含まれる無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
この実施形態の無線通信システムは、複数の移動局(例えばUE1)と、複数の基地局10と、これら複数の基地局10とネットワーク接続された複数の上位局(51,52)を備えている。上位局には、移動局のユーザ認証およびネットワーク接続に関する管理等を行うMME(Mobility Management Entity)51と、ユーザデータのルーティングを行うサービスゲートウェイ(S−GW,図3参照)52が含まれる。基地局10については、ハンドオーバ元の基地局10をソース基地局、ハンドオーバ先の基地局10をターゲット基地局と呼ぶ。
【0015】
基地局10は、上位局(MME51、サービスゲートウェイ52など)と接続されてデータ送受信を行うネットワーク部11と、UE1に対して無線信号の送受信を行う無線部16と、UE1の信号を受信してレイヤ2の上りリンクの信号処理を行う受信部12と、レイヤ2の下りリンクの信号処理を行ってUE1へ信号を送信する送信部13と、送信データがUE1に正常に受信されていないと判断される場合に送信データの再送を行わせる再送制御部14と、UE1との間で無線リンク障害(Radio Link Failure)が発生したことを検出するRLF検出部(障害検出部)15等を備えている。送信部13は、ハンドオーバ指令を送信する送信制御部としても機能する。
【0016】
再送制御部14は、送信部13のデータ送信に対して肯定応答”ACK”のフィードバック情報がUE1から受信されたか監視する。そして、否定応答”NACK”が受信された場合、または肯定応答”ACK”の受信がない場合に、送信部13へ再送制御情報を出力して、MACレイヤ(メディアアクセス制御層)またはRLCレイヤ(無線リンク制御層)のデータ再送を行わせる。このデータ再送の制御は、送信部13からハンドオーバ指令が送信される際にも、同様に行われる。
【0017】
受信部12は、上りリンクの信号処理と並行して、UE1から受信した無線信号の同期のズレの検出を行い、この同期情報をRLF検出部15へ出力する。また、送信データに対する応答が受信された場合に、この応答内容を示すフィードバック情報を再送制御部14へ出力する。
【0018】
送信部13は、下りリンクの信号処理と並行して、再送制御部14から再送制御情報が入力された場合に、対象データの再送を行う。また、データ再送を行う際には、再送回数を表わす信号22をRLF検出部15へ出力する。ハンドオーバ指令の送信時には、この信号22によりハンドオーバ指令の再送回数が示される。また、この送信部13は、再送制御部14から再送制御情報が入力されている場合でも、RLF検出部15から再送を停止させる送信制御情報21が入力された場合には、対象データの再送を停止させるように構成されている(第1の中止制御部)。
【0019】
RLF検出部15は、受信部12から供給される上述の同期情報、送信部13から供給されるデータ再送回数を示す信号22、受信部12と送信部13で使用される各種の制御タイマ(RRCタイマ:無線リソース制御タイマ等)の監視を行う。そして、同期情報に示される同期のズレが所定の閾値を越えた場合、データ再送の回数が上限値を超えた場合、制御タイマが満了となった場合に、無線リンク障害有りと検出する。
【0020】
無線リンク障害有りの検出がなされると、RLF検出部15から受信部12や送信部13へ障害情報が送られて、受信部12と送信部13とによりUE1との無線リンクを修復するための処理、或いは、無線リンクを解放する処理等が実行される。また、RLF検出部15は、無線リンク障害有りと検出した場合に、障害有りとしたUE1に対するデータ再送を停止させる送信制御情報21を送信部13へ出力して、このUE1に対するデータ再送を停止させるようになっている。
【0021】
上記の同期のズレに対する閾値、再送回数の上限値(MACレイヤとRLCレイヤにおける再送回数の上限値)は、通常の無線リンク時においては通常の値に設定される。例えば、次のような3GPP_TS36.331の規定に従った設定が行われる。
同期ズレに関する閾値・・・同期はずれ”Out-of-sync”を示す閾値“N310”
MACレイヤの再送回数上限値・・・上限値“maxHARDQ-Tx”
RLCレイヤの再送回数上限値・・・上限値“maxRetxThreshold”
【0022】
また、上記の同期のズレに対する閾値、再送回数の上限値は、UE1へハンドオーバ指令が送信されてからUE1のリソース開放が行われるまでの期間、無線リンク障害の発生が速やかに検出される方向に設定変更されるようになっている。すなわち、同期のズレに対する閾値は小さく、再送回数の上限値は少なくされる。これらの設定変更はRLF検出部15の制御部、あるいは、基地局10の別の制御部によって実行される。これらの制御部が条件変更部として機能する。
【0023】
なお、従来の無線通信システムにおいては、ハンドオーバ処理の開始から、UE1がハンドオーバ先の基地局に対してランダムアクセス手続き(Random Access Procedure)を進めて同期化が成功するまでの時間が計数される。そして、この時間が、所定のタイムアップ時間“T304”(3GPP_TS36.331に規定)を超えた場合に、ハンドオーバ処理が失敗したと判断し、このUE1との無線リンクを解放する処理等が行われるようになっている。上記の設定変更後の閾値と上限値は、無線リンク障害の発生の検出が、上記のタイムアップ時間“T304”よりも、短い時間で行われるような値にされる。
【0024】
[動作説明]
この実施形態の基地局10においては、無線接続されているUE1がハンドオーバの実行条件を満たした場合に、送信部13からUE1にハンドオーバ指令が送信される。
【0025】
ハンドオーバ指令が送信されると、この送信に基づいてRLF検出部15の上記閾値および上限値が設定変更されて、対象のUE1との間の無線リンク障害が通常よりも速やかに検出されやすい状態になる。
【0026】
ここで、UE1がハンドオーバ指令を受信した後に、肯定応答“ACK”の送信を省略したとする。すると、基地局10の再送制御部14の制御によって送信部13からハンドオーバ指令の再送が継続的に行われる。
【0027】
ここで、早い段階で、UE1から受信される無線信号の同期のズレが設定変更された閾値を超えるか、あるいは、ハンドオーバ指令のデータ再送回数が設定変更された上限値を越えて、RLF検出部15で無線リンク障害と検出される。
【0028】
無線リンク障害の検出がなされると、RLF検出部15から送信部13へデータ再送を停止させる送信制御情報21が送られて、ハンドオーバ指令のデータ再送が停止される。
【0029】
以上のように、この実施形態の基地局10および無線通信システムによれば、ハンドオーバ指令に対する肯定応答の送信がUE1において省略された場合でも、速やかに基地局10からのハンドオーバ指令の再送が中止される。したがって、この再送に掛かる無線リソースの消費が速やかに解消されて、システムのスループット向上が図られる。
【0030】
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態の基地局10,10aが含まれる無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【0031】
第2実施形態は、第1実施形態の構成に加えて、ハンドオーバ対象のUE1がターゲット基地局10aに対して無線接続を開始した際に、ターゲット基地局10aからソース基地局10へハンドオーバ開始の通知を送信する構成を追加したものである。そして、ソース基地局10から上記UE1に対するハンドオーバ指令のデータ再送が継続されている場合でも、上記のハンドオーバ開始の通知により、このデータ再送を中止するようにしたものである。
【0032】
上記作用を実現するため、この実施形態の基地局10aには、さらに、通知送信部としてのハンドオーバ開始判断部18が設けられている。図2では省略しているが、ハンドオーバ開始判断部18は、ソース基地局10を含めてシステム上の全ての基地局に同様に設けられている。また、再送制御部14およびRLF検出部15の構成も、ターゲット基地局10aを含めてシステム上の全ての基地局に同様に設けられている。
【0033】
ハンドオーバ開始判断部18は、新たにUE1を無線接続するハンドオーバ処理において、他の基地局10からハンドオーバ要求を受信して許可応答を行った際(図3のステップS6参照)、あるいは、その後、他の基地局10からハンドオーバ対象のUE1に送信するパケットデータが転送された際(図3のステップS8を参照)に、ハンドオーバ処理が開始されたことを記憶する。これらハンドオーバ要求の受信、あるいは、パケットデータの転送は、これらを表わすハンドオーバ送信情報が送信部13から送られてくることでハンドオーバ開始判断部18において認識される。
【0034】
また、ハンドオーバ開始判断部18には、受信部12がハンドオーバ対象のUE1から同期化するためのデータ(例えばランダムアクセスチャンネルのプリアンプル)を受信した場合に、これを通知するメッセージ受信情報が受信部12から送られる。
【0035】
あるいは、このメッセージ受信情報の代わりに、次のような構成を適用してもよい。すなわち、対象のUE1からハンドオーバ完了メッセージ(例えば、RRC接続・再設定の完了の通知)が受信部12に受信された場合に、これを知らせるメッセージ受信情報が受信部12からハンドオーバ開始判断部18へ送られるように構成してもよい。
【0036】
ハンドオーバ開始判断部18は、ハンドオーバ処理の開始を記憶している状態で、上記のメッセージ受信情報が送られてきた場合に、対象のUE1がハンドオーバ手続きを開始したと判断する。そして、この判断に基づいて、ネットワークを介してソース基地局10へハンドオーバ開始の情報を送信するように構成されている。
【0037】
また、第2実施形態におけるソース基地局10の再送制御部14は、UE1へハンドオーバ指令のデータ再送が継続されている状況で、上記のハンドオーバ開始の情報を受信した場合に、このハンドオーバ指令のデータ再送を停止するようになっている(第2の中止制御部)。
【0038】
[動作説明]
図3には、第2実施形態の無線通信システムにおけるハンドオーバ手順を表わしたシーケンス図を示す。
【0039】
基地局10,10aおよびその上位局(MME51およびサービスゲートウェイ52)は各UE1のエリア規制に関する処理を行い(ステップS0)、ソース基地局10はエリア規制情報に従って各UE1に近隣セルの信号測定を行わせる(ステップS1)。
【0040】
信号測定の結果、UE1からハンドオーバの実行を必要とする測定レポートがソース基地局10へ送信されると(ステップS2)、この測定レポートに基づいてソース基地局10によりハンドオーバ先のターゲット基地局10aが決定される(ステップS3)。続いて、ソース基地局10からターゲット基地局10aへハンドオーバ要求が行われ(ステップS4)、ターゲット基地局10aの内部処理によりハンドオーバ要求が許容されると(ステップS5)、肯定応答がなされる(ステップS6)。
【0041】
この肯定応答に伴って、図2に示すように、ターゲット基地局10aの送信部13からハンドオーバ開始判断部18へハンドオーバ送信情報が送られる。これにより、ハンドオーバ開始判断部18は、対象のUE1に対してハンドオーバ処理が開始されたことを記憶する。
【0042】
肯定応答がなされると、ソース基地局10はUE1に対してハンドオーバ指令を送信する(ステップS7)。このハンドオーバ指令は、具体的には、モビリティ制御情報を含むRRC接続再設定メッセージ(Radio Resource Connection Reconfiguration Message)である。
【0043】
ハンドオーバ指令を受信すると、UE1は、ソース基地局10との無線リンクを切断してターゲット基地局10aと同期化する処理を開始する(ステップJ3)。ここで、UE1がハンドオーバ指令に対する応答を省略する場合が生じえる。応答が省略された場合、ソース基地局10では、ハンドオーバ指令のデータ再送が継続的に行われる。
【0044】
また、ハンドオーバ指令を送信したら、ソース基地局10とターゲット基地局10aとの間で、UE1に送信するために蓄積されていたパケットデータを転送する処理が行われる(ステップJ1,J2)。このデータ転送に際して、パケットのシーケンス番号(SN:Sequence Number)を表わすSNステータスの転送も並行して行われる(ステップS8)。
【0045】
UE1とターゲット基地局10aとを同期化する処理では、UE1は、先ず、ターゲット基地局10aへ同期化を行うためのデータ(ランダムアクセスチャンネルのプリアンプル)の送信処理を行う(ステップS9)。その結果、同期化が成功したら、ターゲット基地局10aから上りリンクのリソース割当情報とタイミングアドバンス情報とがUE1に送信される(ステップS10)。UE1は、これらの情報に基づき内部設定を行ってRRC接続と再設定完了の通知をターゲット基地局10aへ送信する(ステップS11)。
【0046】
上記一連の同期化の処理の途中、ターゲット基地局10aにてステップS9のデータ受信が行われると、図2に示したように、このデータ受信を示すメッセージ受信情報が受信部12からハンドオーバ開始判断部18へ送られる。ハンドオーバ開始判断部18は、この情報に基づいてUE1でハンドオーバ処理が開始されたと判断し、ハンドオーバ開始通知をネットワークを介してソース基地局10へ送信する(ステップJ5)。
【0047】
あるいは、ターゲット基地局10aでステップS11のデータ受信が行われた際に、このデータ受信を示すメッセージ受信情報が受信部12からハンドオーバ開始判断部18へ送られる。そして、ハンドオーバ開始判断部18が、この情報に基づいて、ハンドオーバ開始通知をネットワークを介してソース基地局10へ送信する(ステップJ6)。
【0048】
ステップJ5,J6のハンドオーバ開始通知の送信時、ソース基地局10でステップS7のハンドオーバ指令のデータ再送が継続されていた場合、この通知が再送制御部14へ送られて、このデータ再送が中止される。
【0049】
UE1とターゲット基地局10aとが無線接続された後には、図5に示したように、サービスゲートウェイ52からUE1へユーザデータの転送経路を切り替える処理(ステップS12〜S16)が行われる。その後、ソース基地局10で対象のUE1のUEコンテキストの開放とリソース開放とが行われて(ステップS17,S18)、ハンドオーバ処理が完了となる。
【0050】
以上のように、この実施形態の基地局10,10aおよび無線通信システムによれば、ソース基地局10からUE1にハンドオーバ指令のデータ再送が継続される状況になっても、ステップJ5のハンドオーバ開始の通知に基づいて、このデータ再送が停止される。したがって、ハンドオーバ指令のデータ再送に掛かる無線リソースの消費が速やかに解消されて、システムのスループット向上を図ることができる。
【0051】
あるいは、ステップJ5のハンドオーバ開始通知の代わりに、UE1の完了通知に基づくステップJ6のハンドオーバ開始通知に基づいて、データ再送を停止するように構成されても、同様の作用が得られる。ステップJ5の通知に基づく制御により、より速やかにデータ再送を停止させることができる一方、ステップJ6の通知に基づく制御によって、UE1がハンドオーバを実行したことをより正確に判断することができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、ハンドオーバ開始通知がターゲット基地局10aから送信される構成としたが、ターゲット基地局10aの上位局からソース基地局10へ同様の通知を送信する構成としても良い。また、図3のステップJ5のハンドオーバ開始通知の送信と、ステップS10の上りリンクのリソース割当情報の送信の順番が逆になってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、LTE方式の無線通信システム、基地局、および、そのハンドオーバ制御方法に適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 UE
10,10a 基地局
12 受信部
13 送信部
14 再送制御部
15 RLF検出部
18 ハンドオーバ開始判断部
51 MME
52 サービスゲートウェイ
S7 ハンドオーバ指令の送信ステップ
S9 同期化の送信ステップ
J5 ハンドオーバ開始通知の送信ステップ
S11 RRC接続・再設定完了通知の送信ステップ
J6 ハンドオーバ開始通知の送信ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局との無線通信中に基地局が当該移動局との間の無線リンク障害の有無を検出するステップと、
ハンドオーバの実行条件になった場合に前記基地局が前記移動局にハンドオーバ指令を送信するステップと、
前記ハンドオーバ指令の送信後に前記移動局からフィードバック情報が受信されない場合に前記ハンドオーバ指令を再送するステップと、
前記ハンドオーバ指令の送信後に、前記無線リンク障害有りとする検出条件を、当該無線リンク障害が早く検出される方向へ変更するステップと、
前記ハンドオーバ指令の送信後に、前記無線リンク障害有りと検出された場合に、前記ハンドオーバ指令の再送を中止させるステップと、
を含むハンドオーバ制御方法。
【請求項2】
ハンドオーバ先の別の基地局あるいは当該基地局の上位局が、前記ハンドオーバ指令を受けた前記移動局と無線通信を開始した際に、ハンドオーバの開始通知をハンドオーバ元の前記基地局へ送信するステップと、
前記ハンドオーバ元の前記基地局が、前記ハンドオーバ指令の送信後に前記開始通知を受信した場合に、前記ハンドオーバ指令の再送を中止するステップと、
をさらに含む請求項1記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項3】
移動局との無線通信中に当該移動局との間の無線リンク障害の有無を検出する障害検出部と、
ハンドオーバの実行条件になった場合に前記移動局にハンドオーバ指令を送信する送信制御部と、
前記ハンドオーバ指令の送信後に前記移動局からフィードバック情報が受信されない場合に当該ハンドオーバ指令を再送させる再送制御部と、
前記ハンドオーバ指令の送信後に、前記障害検出部の前記無線リンク障害有りとする検出条件を、当該無線リンク障害が早く検出される方向へ変更する条件変更部と、
前記ハンドオーバ指令の送信後に、前記障害検出部により前記無線リンク障害有りと検出された場合に、前記再送制御部による前記ハンドオーバ指令の再送を中止させる第1の中止制御部と、
を具備する基地局装置。
【請求項4】
前記ハンドオーバ指令の送信後に、ハンドオーバ先の別の基地局あるいは当該基地局の上位局から、前記移動局がハンドオーバ処理を開始したことを表わす開始通知を受信した場合に、前記再送制御部による前記ハンドオーバ指令の再送を中止させる第2の中止制御部、
をさらに具備する請求項3記載の基地局装置。
【請求項5】
別のハンドオーバ処理によりハンドオーバ対象の移動局と無線通信が開始された際に、ハンドオーバ元の別の基地局へ前記開始通知を送信する通知送信部、
をさらに具備する請求項4記載の基地局装置。
【請求項6】
複数の移動局と、これら複数の移動局と無線通信可能な複数の基地局とを具備し、
前記複数の基地局の各々が、請求項3〜5の何れか一項に記載の基地局装置である無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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