説明

ハンドルホルダ及び骨セメント注入針セット

【課題】大きな力を要することなく、穿刺針の外針基に対して容易に着脱することが可能なハンドルホルダ、及びそのようなハンドルホルダと骨セメント注入用穿刺針との組合せからなる骨セメント注入針セットを提供する。
【解決手段】骨セメント注入針セット10は、外針基16を有する骨セメント注入用穿刺針11と、外針基16に着脱可能なハンドルホルダ60とを有する。ハンドルホルダ60は、長尺な棒形状に形成されたホルダ本体62と、ホルダ本体62の一端部に設けられ、外針基16の側部に設けられたサイドポート42に嵌合可能な接続部64とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨セメント注入用穿刺針の外針基に接続するハンドルホルダ、及びそのようなハンドルホルダと骨セメント注入用穿刺針との組合せからなる骨セメント注入針セットに関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的椎体形成術は、椎体圧迫骨折による痛みを除去するために、骨セメントを椎体の損傷部位に注入して椎体を補強する治療法である。経皮的椎体形成術は、1987年フランスで初めて行われた比較的新しい治療法であるが、近年わが国においても多くの施設で行われている。
【0003】
経皮的椎体形成術は、椎体の背側左右に位置する椎弓根から中空構造の穿刺針を穿刺して、穿刺針内の注入通路を介して椎体内に骨セメントを注入する椎弓根アプローチ(trans pedicular approach)が基本である。骨セメントを注入するための穿刺針としては、骨生検針が一般的に用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。また、下記特許文献2には、骨セメント注入用穿刺針が開示されている。
【0004】
骨セメント注入用穿刺針の一従来例として、図10に示す構成の穿刺針100が知られている。この穿刺針100は長尺管状の外針102と、外針102の基端部に固定された外針基104と、外針102の中空部に挿通される内針106と、内針106の基端部に固定された内針基108とを備える。内針基108は、外針基104に対して着脱可能に構成されている。
【0005】
経皮的椎体形成術において、上記のように構成された穿刺針100を目的の骨に穿刺するには、X線透視下において穿刺位置及び穿刺目標を決定した後、内針106を装着した状態の穿刺針100をハンマーで打撃して、骨内の穿刺目標まで穿刺する。この穿刺作業に際し、X線の被爆を防止するため、先端部にC字状の接続部110を有する長尺棒形状のハンドルホルダ112を用いる場合がある。術者は、ハンドルホルダ112の接続部110を外針基104の下部に設けられた小径部分114に接続し、ハンドルホルダ112を把持することで、穿刺針100を所望の位置に保持したまま、自己の手をX線の照射領域の外に退避させておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−24663号公報
【特許文献2】国際公開第2010/044462号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のハンドルホルダ112の使用において、外針基104の小径部分114に対する着脱の際には、接続部110をC字が開く方向に弾性変形させるため、使用者はそれなりに大きな力を入れた状態でハンドルホルダ112と穿刺針100を取り扱わざるを得ない。穿刺針100の先端には鋭利な刃先116が形成されているため、大きな力を入れた状態でハンドルホルダ112と穿刺針100を取り扱わざるを得ない状況は、使用者に不安感や恐怖感を与える可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、大きな力を要することなく、穿刺針の外針基に対して容易に着脱することが可能なハンドルホルダ、及びそのようなハンドルホルダと骨セメント注入用穿刺針との組合せからなる骨セメント注入針セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、軸線方向に貫通する骨セメント通路を有する外針と、前記外針の基端部に固定された外針基と、先端に針先を有し、かつ前記外針の中空部に摺動可能に挿通される内針と、前記内針の基端部に固定された内針基と、を備えた骨セメント注入用穿刺針の前記外針基に着脱可能なハンドルホルダであって、長尺な棒形状に形成されたホルダ本体と、前記ホルダ本体の一端部に設けられ、前記外針基の側部に設けられた嵌合部に嵌合可能な接続部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、ハンドルホルダと外針基とが嵌合により接続可能であるため、大きな力を要することなく、ハンドルホルダを着脱することが可能である。このため、使用者は、不安感や恐怖感を感じることなく、スムーズにハンドルホルダの着脱を行うことができる。また、穿刺針を骨に穿刺すべく穿刺針をハンマーで打撃した場合でも、ハンドルホルダと外針基とがしっかりと接続されることからハンドルホルダが外針基から外れにくいため、手技を円滑に行うことが可能である。
【0011】
上記のハンドルホルダにおいて、前記ホルダ本体は、軸線方向に貫通する中空部を有するとよい。
【0012】
上記の構成によれば、ハンドルホルダの接続対象が、骨セメント注入時の骨内の圧力上昇を防止するために外針に設けた徐圧通路と、外針基に設けたサイドポートとを有する穿刺針である場合には、ハンドルホルダが、中空部が穿刺針の徐圧通路と連通することで、骨内の気体又は液体を体外に出すための流路として機能する。このため、徐圧機能付きの穿刺針に接続した場合でも、穿刺針の徐圧機能を損なうことなく穿刺針を支持する機能を果たすことが可能である。
【0013】
上記のハンドルホルダにおいて、前記ホルダ本体は、伸縮自在に構成されてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、ハンドルホルダを穿刺針に接続しない状態ではコンパクトにすることができるとともに、使用時には伸長したうえで必要に応じて長さ調整を行うことができるため、使い勝手がよい。
【0015】
上記のハンドルホルダにおいて、前記ホルダ本体は、液体を貯留可能な液体貯留部を有してもよい。
【0016】
上記の構成によれば、骨セメント注入時において、骨内からの気体を生体外に出しつつ、骨内から流出した液体をホルダ本体内に貯留できる。このため、骨内からの液体がハンドルホルダから流出することを防止又は抑制することができる。
【0017】
上記のハンドルホルダにおいて、前記ホルダ本体は、前記中空部に液体を吸収する吸収体が設けられてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、骨セメント注入時において、骨内からの気体を生体外に出しつつ、骨内から流出した液体をハンドル本体内に設けた吸収体により吸収できる。このため、骨内からの液体がハンドルから流出することを防止又は抑制することができる。
【0019】
上記のハンドルホルダにおいて、前記ホルダ本体は、気体は通すが液体は通さない気体透過膜が設けられてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、骨内からの液体を漏らすことなく気体を外部に排出することができる。
【0021】
上記のハンドルホルダにおいて、前記ホルダ本体は、内部を視認できる程度の透明性を有するとよい。
【0022】
上記の構成によれば、骨内から流出した液体がハンドルホルダに流入したとき、ハンドルホルダの外部から内部の液体を視認できるため、骨内からの液体の流出を早期に確認し、円滑な手技の進行に寄与できる。
【0023】
また、本発明は、骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針と、前記骨セメント注入用穿刺針に着脱可能なハンドルホルダとを備えた骨セメント注入針セットであって、前記骨セメント注入用穿刺針は、軸線方向に貫通する骨セメント通路を有する外針と、前記外針の基端部に固定され、側部に嵌合部が設けられた外針基と、先端に針先を有し、かつ前記外針の中空部に摺動可能に挿通される内針と、前記内針の基端部に固定された内針基と、を有し、前記ハンドルホルダは、長尺な棒形状に形成されたホルダ本体と、前記ホルダ本体の一端部に設けられ、前記外針基の前記嵌合部に嵌合可能な接続部と、を有することを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、大きな力を要することなく、ハンドルホルダを着脱することが可能であるため、使用者は、不安感や恐怖感を感じることなく、スムーズにハンドルホルダの着脱を行うことができるとともに、ハンドルホルダが外針基から外れにくいため手技を円滑に行うことが可能である。
【0025】
上記の骨セメント注入針セットにおいて、前記嵌合部は、前記外針基の長手方向の一端部に設けられ、前記ハンドルホルダは、前記外針基に接続された状態で、前記外針基の長手方向を指向するとよい。
【0026】
上記の構成によれば、経皮的椎体形成術において複数の骨セメント注入用穿刺針を互いの外針基が平行となる向きで患者の体に穿刺する場合に、穿刺針に接続されたハンドルホルダが、他の穿刺針との関係で邪魔にならず、手技を円滑に行うことが可能となる。
【0027】
上記の骨セメント注入針セットにおいて、前記嵌合部は、前記外針基の長手方向の両端部にそれぞれ設けられ、前記ハンドルホルダは、前記外針基に接続された状態で、前記外針基の長手方向を指向してもよい。
【0028】
上記の構成によれば、外針基に対するハンドルホルダの接続位置を選択することができるため、例えば、穿刺針の穿刺作業の途中で、必要に応じて、ハンドルホルダの接続位置を外針基の長手方向の一端部から他端部に変更することが可能である。また、ハンドルホルダが複数ある場合には、ハンドルホルダを外針基の長手方向の両端部に接続することで、穿刺針をより安定的に保持することが可能となる。
【0029】
上記の骨セメント注入針セットにおいて、前記嵌合部は、前記接続部をネジ嵌合するネジ部を有するとよい。
【0030】
上記の構成によれば、ハンドルホルダと外針基との接続がより好適に保持され、ハンドルホルダが外針基からより外れにくくなるため、手技を一層円滑に行うことが可能である。
【0031】
上記の骨セメント注入針セットにおいて、前記外針は、先端部近傍の外周部に位置する第1の側孔と、基端部近傍の外周部に位置する第2の側孔と、前記骨セメント通路とは独立した通路であって前記第1の側孔と前記第2の側孔とを連通する徐圧通路と、を有し、前記外針基の側部には、前記第2の側孔と連通し、前記ネジ部を有するサイドポートが設けられ、前記ホルダ本体は、軸線方向に貫通する中空部を有するとよい。
【0032】
上記の構成によれば、ハンドルホルダを穿刺針の外針基に接続した状態で、ハンドルホルダに設けられた中空部が穿刺針の徐圧通路と連通することでハンドルホルダが骨内の気体又は液体を体外に出すための流路として機能するため、穿刺針の徐圧機能を阻害することがない。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、大きな力を要することなく、ハンドルホルダを穿刺針の外針基に対して容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る骨セメント注入針セットの全体斜視図である。
【図2】図1に示した骨セメント注入用穿刺針の一部省略断面図である。
【図3】図1に示した骨セメント注入用穿刺針において、内針を外針から抜去した状態を示す一部省略断面図である。
【図4】図1に示したハンドルホルダの一部省略断面図である。
【図5】ハンドルホルダを骨セメント注入用穿刺針の外針基に接続した状態の骨セメント注入針セットの一部省略断面図である。
【図6】図6Aは、第1変形例に係る骨セメント注入用穿刺針の一部省略断面図であり、図6Bは、第2変形例に係る骨セメント注入用穿刺針の一部省略断面図である。
【図7】図7Aは、第3変形例に係る骨セメント注入用穿刺針の一部省略断面図であり、図7Bは、第4変形例に係る骨セメント注入用穿刺針の一部省略断面図である。
【図8】図8Aは、第1変形例に係るハンドルホルダの一部省略断面図であり、図8Bは、第2変形例に係るハンドルホルダの一部省略断面図であり、図8Cは、第3変形例に係るハンドルホルダの一部省略断面図である。
【図9】図9Aは、第4変形例に係るハンドルホルダの一部省略断面図であり、図9Bは、第5変形例に係るハンドルホルダの一部省略断面図である。
【図10】従来例に係る骨セメント注入用穿刺針の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る骨セメント注入用穿刺針について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において「骨セメント」には、骨セメント(プラスチック製剤など)だけでなく骨ペースト(リン酸カルシウム製剤など)も含まれるものとする。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係る骨セメント注入針セット10(以下、「注入針セット10」ともいう)の全体斜視図である。図1に示すように、注入針セット10は、骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針11(以下、「穿刺針11」ともいう)と、穿刺針11に着脱可能なハンドルホルダ60とを備える。この注入針セット10は、穿刺針11を目的の骨に穿刺する際に、ハンドルホルダ60と穿刺針11とを組み合わせた状態、すなわち、ハンドルホルダ60を穿刺針11の外針基16に接続した状態で使用する。
【0037】
まず、穿刺針11の構成について説明する。図2は、図1に示した穿刺針11の一部省略断面図である。図3は、外針12から内針14を抜いた状態の一部省略断面図である。
【0038】
穿刺針11は、中空構造の外針12と、外針12の基端部に固定された外針基16と、外針12の中空部に摺動可能に挿通される内針14と、内針14の基端部に固定された内針基20とを有する。図1及び図2では、内針14を外針12の中空部に挿入した状態を示している。
【0039】
以下の説明では、内針14及び外針12の軸心方向をZ方向とし、Z方向に垂直な方向であって外針基16の延在方向をX方向とし、Z方向及びX方向に垂直な方向をY方向とする。Z方向のうち、特に、穿刺針11の先端側に向かう方向をZ1とし、穿刺針11の基端側に向かう方向をZ2とする。
【0040】
外針12は、両端が開口した中空構造の部材であり、外針12の先端には鋭利な刃先13が形成されている。図示例の外針12は、内針14が挿通される内管22と、内管22を囲繞する外管24とを有し、これにより二重管構造が構成されている。
【0041】
内管22及び外管24の構成材料としては、骨への穿刺及び骨からの抜去に際して破損したり変形したりしない程度の適度の強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅系合金等が挙げられる。
【0042】
図3に示すように、内管22は、両端が開口し、骨セメント通路(中空部)26を内部に有する。骨セメント通路26は、内針14と外針12とを組み合わせる際には内針14を挿通するための孔として機能し、骨セメントを注入する際には骨セメントを流す流路として機能する。内管22の長さは、100〜200mm程度である。図3に示す構成例では、内管22は中空円筒管であり、その内径は、1.5〜2.7mm程度である。
【0043】
内管22は、二重管構造の内管壁を構成する内管部28と、この内管部28の先端部に設けられたチップ部30とにより構成されている。チップ部30は内管部28よりも大径である。内管22の基端部22aは拡径され、外管24の基端部24aの内周面によって支持されている。
【0044】
外管24は、両端が開口し、その中空部には内管22が挿入される。外管24の長さは、100〜200mm程度であり、チップ部30の長さ分、内管22よりも短く設定される。外管24は中空円筒管である。外管24の内径d2は、内管22の細径部分の外径d1よりも大きく設定されており、外管24と内管22との間に軸方向に延在する徐圧通路32が形成される。外管24の内径は、例えば、1.9〜3.2mm程度である。
【0045】
外管24の先端部は、内管22のチップ部30に溶接等の手段により固着されており、これにより、徐圧通路32の先端側が閉じられている。内管22の基端部22aが外管24の基端部24aの内周部によって支持されることで、内管22の基端部22aと外管24の基端部24aとは密着して重なっており、これにより、徐圧通路32の後端側が閉じられている。
【0046】
外管24の先端部近傍には、第1の側孔34が設けられている。第1の側孔34は、外管24の内外を貫通する孔であり、周方向及び軸方向に複数設けられることが好ましい。第1の側孔34の数は、4〜36個が好ましく、10〜26個がより好ましい。
【0047】
外針12の最先端位置から、最も基端側に位置する第1の側孔34(具体的には、該当する第1の側孔34の最も基端側の部位)までの距離L1は、外針12を骨に穿刺した状態で、最も基端側の第1の側孔34が骨外に位置しない、つまり、全ての第1の側孔34が骨内に位置するように設定される。具体的には、距離L1は、20mm以内であり、好ましくは15mm以内に設定される。
【0048】
第1の側孔34の大きさは、全て同じである必要はなく、大きさを異ならせてもよい。例えば、サイドポート42に洗浄装置を接続して骨内を洗浄する際、サイドポート42から近位となる第1の側孔34の基部側から噴射される洗浄液の量が先端側よりも多くならないよう、先端側の側孔になるほど孔径を大きくすることも可能である。第1の側孔34の形状は、円形である必要はなく、例えば楕円形や多角形状であってもよく、また、異なる形状を混在させてもよい。
【0049】
第1の側孔34の大きさは、骨内の気体又は液体(例えば、浸出液や血液など)が外針12にスムーズに流入できるように設定されるのがよい。第1の側孔34が円形である場合、その直径は、0.3〜0.7mmに設定されるのが好ましい。第1の側孔34が円形以外の形状である場合、その最も狭い部分の寸法は、0.3〜0.7mmに設定されるのがよい。
【0050】
第1の側孔34が小さ過ぎると、骨内からの液体が第1の側孔34に詰まりやすくなるが、第1の側孔34の大きさの下限を上記のように設定することにより、骨内からの液体が第1の側孔34に詰まりにくくなる。第1の側孔34が大き過ぎると刺通抵抗が大きくなり、手技の円滑性を低下させる要因となるが、第1の側孔34の大きさの上限を上記のように設定することにより、刺通抵抗の増大を抑制できる。
【0051】
外管24の基端部近傍には、第2の側孔36が設けられている。第2の側孔36は、外管24の内外を貫通する孔である。第2の側孔36の形状は、円形である必要はなく、例えば楕円形や多角形状であってもよい。
【0052】
第2の側孔36の大きさは、骨内の気体又は液体(例えば、浸出液や血液など)が徐圧通路32からスムーズに流出できるように設定されるのがよい。第1の側孔34が円形である場合、その直径は、0.3〜0.7mm程度に設定されるのが好ましい。第1の側孔34が円形以外の形状である場合、その最も狭い部分の寸法は、0.3〜0.7mm程度に設定されるのがよい。
【0053】
外針12の最先端位置から、第2の側孔36(具体的には、第2の側孔36の最も先端側(Z1方向側)の部位)までの距離L2は、穿刺針11を骨に穿刺したとき、第2の側孔36が体外に確実に位置するように設定される。具体的には、距離L2は、80mm以上であり、好ましくは120mm以上に設定される。
【0054】
第2の側孔36は、図3に示す構成例では1つだけ設けられているが、後述する変形例のように、複数設けられてもよい。第1の側孔34と第2の側孔36は、内管22と外管24との間に形成された徐圧通路32を介して連通している。この徐圧通路32は、骨セメント通路26とは独立した通路である。
【0055】
図示例の穿刺針11において、外針基16には、サイドポート形成部材18が埋設されている。サイドポート形成部材18は、第2の側孔36の周囲を覆い、かつ外針基16の外側と第2の側孔36とを連通するように形成されている。具体的には、サイドポート形成部材18は、外針12が挿入された結合部38と、結合部38の側部から外方(X2方向)に延在する中空状のポート本体部40とを有する。
【0056】
結合部38は、中空円筒形であり、その内径は外管24の外径とほぼ同じに設定されている。結合部38の内周面と外針12(外管24)の外周面とは、接着剤により接着されている。第2の側孔36は、ポート本体部40の基端側開口部40aに臨んでいる。ポート本体部40の基端側開口部40aの内径は、第2の側孔36よりも大きく設定されることが好ましく、例えば、1.5〜5.0mm程度に設定される。
【0057】
サイドポート形成部材18の先端部は、外針基16から突出し、他の装置又は構造が着脱可能なサイドポート42として構成され、サイドポート42の一端側の外周部には、他の装置又は構造が螺合可能な雄ネジ部42aが形成されている。ポート本体部40の中空部は、軸線方向に沿って内径が一定に形成し得るが、図3に示すように、先端側に向かって拡大するテーパ状に形成するとよい。このようなテーパ状に形成することにより、ハンドルホルダ60の後述する先端管部70(図4参照)をサイドポート42に挿入した際に、先端管部70の外周部とサイドポート42の内周部とが密着し、その間を液密に保持しやすい。
【0058】
サイドポート形成部材18の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)等が挙げられる。
【0059】
外針基16は、外針12の基端部に結合された部材であり、穿刺針11の使用者が握るためのグリップとしての機能を有する。外針基16は、インサート成型によって、外針12の基端部及びサイドポート形成部材18を覆うように形成されている。外針基16の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、サイドポート42の構成材料として例示したものから選択することができる。外針基16とサイドポート42の構成材料は、同一である必要はなく、異なるものであってもよい。
【0060】
外針基16は、外針12の軸線に対して垂直な方向(X方向)の両側に張り出す(延在する)ように形成され、上述したサイドポート42は、外針基16の長手方向の一端部にて開口する。外針基16の内部には、外針12の骨セメント通路26と連通する通路44が形成されている。外針基16のZ2方向の端部には、内針基20が接続されるメインポート46が設けられており、メインポート46の中空部は、通路44の一部を構成している。メインポート46の外周部には、ロック付き骨セメント注入具(例えば、シリンジ)が着脱可能に係合するための雄ネジ部44aが形成されている。
【0061】
また、後述するように、メインポート46は、骨セメントを穿刺針11に供給するためのシリンジを、穿刺針11に接続するための差込口としても機能する。
【0062】
図2に示すように、内針14は、外針12の骨セメント通路26に挿入され、先端に鋭利な刃先15を有する棒状の部材である。内針14の構成材料としては、骨への刺入に際して破損したり変形したりしない程度の適度の強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅系合金等が挙げられる。
【0063】
内針14の外径は、外針12の内径(内管22の内径)と略同一に設定されるのがよく、具体的には、内針14を外針12の中空部(ルーメン)である骨セメント通路26にスムーズに挿入でき、且つ内針14の外周と外針12の内周(内管22の内周)との間にほとんど隙間が生じない程度に設定されるのがよい。
【0064】
内針14の長さは、内針基20を外針基16に接続した状態で、内針14の先端が外針12の先端より僅かに突出するように設定される。内針基20を外針基16に接続した状態で、内針14の刃先15の刃面は、外針12の刃先13の刃面と面一となり、外針12と内針14の刃先13、15が一体となって穿刺針11の針先47を構成する。
【0065】
内針基20は、内針14の基端部に結合された部材である。内針基20の外径は、内針14の外径よりも大きく設定されており、具体的には、使用者(医師等の医療従事者)が指でつまんで押し引きや回転をさせやすいような大きさに設定される。内針基20の構成材料としては、特に限定されないが、外針基16の構成材料と同様の構成材料、例えば、ポリカーボネート等の硬質樹脂を用いることができる。
【0066】
図1及び図2に示すように、穿刺針11は、ロック機構48を有する。このロック機構48は、内針基20の外周から突出する複数の突起体50a、50bと、外針基16に設けられ、内針基20を外針基16に接続したときに突起体50a、50bと係合する複数の係合溝52a、52bとを有する。突起体50a、50bは、内針基20の外周に、互いに対称位置(反対位置)に配置されている。
【0067】
係合溝52a、52bは、外針基16の凹部54を形成する側壁に、外針基16の厚さ方向(Y方向)に延在している。X2方向側の係合溝52aは、一端が外針基16の厚さ方向の略中央に位置し、他端が外針基16の一方(Y1側)の側面で開口している。X1方向側の係合溝52bは、一端が外針基16の厚さ方向の略中央に位置し、他端が外針基16の他方(Y2側)の側面で開口している。
【0068】
ロック機構48は、上記のように構成されているので、内針基20を外針基16に接続するために内針基20を外針基16に係合させるときに、内針基20と外針基16との相対回転により、突起体50a、50bがそれぞれ係合溝52a、52bに係合する。このとき、内針14の刃先15の刃面と外針12の刃先13の刃面とは面一となり、かつこの状態が保持される。
【0069】
穿刺針11は上記のように構成されているので、穿刺針11を目的の骨に穿刺し、外針12の中空部を介して骨セメントを骨内に注入したとき、骨内の気体又は液体(例えば、浸出液や血液など)が第1の側孔34から徐圧通路32内に入り、第2の側孔36から体外に出ることが可能であるため、骨セメントの注入による骨内の内圧の上昇を防止し、骨セメントが骨外に漏出することを防止することができる。
【0070】
次に、図4を参照し、ハンドルホルダ60の構成について説明する。図4に示すように、ハンドルホルダ60は、管状体であって、長尺な棒形状に形成されたホルダ本体62と、外針基16に着脱可能な接続部64とを有する。
【0071】
ホルダ本体62は、軸線方向に貫通する中空部66を有する直線状の中空円筒形であり、図示例では、中空部66の内径は軸線方向に沿って略一定である。ホルダ本体62の外径は、使用者が握りやすいように、6〜11mm程度に設定され、好ましくは7〜10mm程度に設定される。ホルダ本体62の内径は、骨内からの気体又は液体が流れやすいように3〜10mm程度に設定され、好ましくは5〜8mm程度に設定される。
【0072】
ホルダ本体62の長さは、X線透視下において穿刺針11を目的の骨に穿刺する際に、使用者が穿刺針11に接続したハンドルホルダ60を握ることで、X線照射領域から退避できるように、200〜400mm程度に設定され、好ましくは250〜350mm程度に設定される。
【0073】
接続部64は、ホルダ本体62の一端部(図4で右側の端部)に設けられ、外針基16の側部に設けられたサイドポート42の一端(嵌合部)に嵌合可能に構成されている。図示例の接続部64は、ホルダ本体62の中空部66と連通する通路68を有する先端管部70と、先端管部70を囲繞する円筒状のロック部72とを有する。
【0074】
先端管部70はサイドポート42に挿入可能であり、先端管部70がサイドポート42に挿入された状態で、先端管部70とサイドポート42とが隙間なく嵌合するように構成されている。先端管部70とサイドポート42は、テーパ嵌合するように構成されていてもよい。この場合、先端管部70は雄ルアーテーパー、サイドポート42は、雌ルアーテーパーになっている。
【0075】
先端管部70の先端は、ロック部72よりも軸線方向に僅かに突出している。ロック部72と先端管部70との間には、サイドポート42が挿入可能な環状の嵌合溝74が形成されている。ロック部72の内周部には、サイドポート42の外周部に形成された雄ネジ部(ネジ部)42aに螺合可能な雌ネジ部72aが設けられている。
【0076】
ホルダ本体62と接続部64は、射出成型等により一体的に形成されてもよく、別々に製作された部品を接着、溶着等の適宜の接合手段により接合されてもよい。ホルダ本体62は円筒形に限らず、非円形(楕円形、多角形等)の筒体として形成されてもよい。
【0077】
ハンドルホルダ60の構成材料としては、穿刺針11をハンマー等で打撃した際にも安定した剛性を有する樹脂製の材料が好ましく、例えば、サイドポート形成部材18の構成材料として例示したものから選択することができる。
【0078】
上記のように構成された注入針セット10を用いて骨セメントを骨内に注入するには、まず、図5に示すように、穿刺針11の外針基16にハンドルホルダ60を接続する。この場合、ハンドルホルダ60と外針基16とがネジ嵌合により接続可能であるため、大きな力を要することなく、ハンドルホルダ60を外針基16に着脱することが可能である。このため、使用者は、不安感や恐怖感を感じることなく、スムーズにハンドルホルダ60の着脱を行うことができる。
【0079】
次に、画像誘導下(X線透視下またはCT透視下)において穿刺位置及び穿刺目標を決定した後、ハンドルホルダ60を接続した穿刺針11をハンマーで打撃して、骨(例えば、椎骨)76内の穿刺目標まで穿刺する。このとき、術者は、外針基16ではなく、ハンドルホルダ60のホルダ本体62を把持することで、自己の手をX線の照射領域から退避させることができる。また、ハンドルホルダ60と外針基16とがネジ嵌合によりしっかりと接続されることから、穿刺針11をハンマーで打撃した際でもハンドルホルダ60が外針基16から外れにくいため、手技を円滑に行うことが可能である。
【0080】
なお、穿刺針11を患者に穿刺する前に、メインポート46に、洗浄液供給用のチューブを接続し、通路44を介して洗浄液を内針14の骨セメント通路26に供給し、骨セメント通路26を洗浄してもよい。同様に、サイドポート42に洗浄液供給用のチューブを接続し、ポート本体部40の中空部66及び第2の側孔36を介して洗浄液を外管24と内管部28の間の徐圧通路32に供給し、徐圧通路32を洗浄してもよい。
【0081】
穿刺目標まで穿刺針11を穿刺した後、内針14を外針12から抜去する。このとき、第1の側孔34は骨76内に位置し、第2の側孔36は体外に位置している。
【0082】
次いで、骨セメントを入れたシリンジを外針基16のメインポート46に装着して、シリンジ内の骨セメントを、通路44及び骨セメント通路26を介して骨76内に注入する。このとき、骨76内の気体または液体(例えば、浸出液や血液など)は、第1の側孔34、徐圧通路32、第2の側孔36、サイドポート42、ハンドルホルダ60の中空部66を介して、体外に出ることが可能である。これにより、骨セメントの注入による骨76内の内圧の上昇が防止されるので、骨セメントが骨76外に漏出することを防止することができる。
【0083】
このように、ハンドルホルダ60は、骨76内の気体又は液体を体外に出すための流路としての機能を兼ね備えるので、徐圧機能付きの穿刺針11に接続した場合でも、穿刺針11の徐圧機能を損なうことなく穿刺針11を支持する機能を果たすことが可能である。
【0084】
なお、ハンドルホルダ60を内部の状態が視認できる程度の透明性を有する材料(例えば、ポリカーボネート)により構成しておくと、骨76内から流出した液体がハンドルホルダ60に流入したとき、ハンドルホルダ60の外部から内部の液体を視認できるため、骨76内からの液体の流出を早期に確認できる。ハンドルホルダ60の基端部に吸引装置を接続し、徐圧通路32内の気体又は液体の排出を補助すると、骨76内の内圧の上昇をより効果的に防止することができる。
【0085】
シリンジ内の骨セメントを必要量注入した後、シリンジを取り外す。次いで、内針14を外針基16の通路及び外針12の骨セメント通路26に挿入して、通路及び骨セメント通路26内に残存している骨セメントを骨76内に押し出す。
【0086】
経皮的椎体形成術では、複数の穿刺針11を用いる場合に、互いの外針基16が平行となる向きに、複数の穿刺針11を患者の体に穿刺することがある。本実施形態に係る穿刺針11のように外針基16の長手方向端部にサイドポート42が設けられると、隣接する穿刺針11同士でサイドポート42が邪魔にならず、手技を円滑に行うことが可能となる。
【0087】
また、本実施形態において、ハンドルホルダ60は、外針基16に接続された状態で外針基16の長手方向を指向するので、複数の穿刺針11を互いの外針基16が平行となる向きで患者の体に穿刺する場合に、穿刺針11に接続されたハンドルホルダ60が、他の穿刺針11との関係で邪魔にならず、手技を円滑に行うことが可能となる。
【0088】
上述した注入針セット10において、穿刺針11に代えて、図6Aに示す第2変形例に係る骨セメント注入用穿刺針11A(以下、「穿刺針11A」という)を採用してもよい。この穿刺針11Aは、図2等に示した穿刺針11に対して、外針基16のサイドポート42が設けられた側と反対側の長手方向の端部に、ハンドルホルダ60が接続可能な嵌合部80が設けられている。この嵌合部80は、ハンドルホルダ60の先端管部(接続部)70が挿入可能な穴部82を有する円筒形に形成され、その外周部にはハンドルホルダ60のロック部72が螺合可能な雄ネジ部(ネジ部)84が設けられている。
【0089】
このような構成によれば、外針基16に対するハンドルホルダ60の接続位置を選択することができるため、例えば、穿刺針11Aの穿刺作業の途中で、必要に応じて、ハンドルホルダ60の接続位置を外針基16の長手方向の一端部から他端部に変更することが可能である。また、ハンドルホルダ60が複数ある場合には、ハンドルホルダ60を外針基16の長手方向の両端部に接続することで、穿刺針11Aをより安定的に保持することが可能となる。
【0090】
上述した注入針セット10において、穿刺針11に代えて、図6Bに示す第2変形例に係る骨セメント注入用穿刺針11B(以下、「穿刺針11B」という)を採用してもよい。この穿刺針11Bにおいて、サイドポート形成部材18aは、外針基16の長手方向の両端部にそれぞれサイドポート42、43をし、外針12には各サイドポート42、43に連通する第2の側孔36、37が設けられている。各サイドポート42、43は、図2等に示したサイドポート42と同一構成であり、ハンドルホルダ60が接続可能である。
【0091】
このような構成によれば、図6Aに示した穿刺針11Aと同様の効果が得られるとともに、2つのサイドポート42、43を介して、骨76内からの気体又は液体をよりスムーズに体外に出すことで骨76内の圧力上昇をより効果的に防止できる。
【0092】
上述した注入針セット10において、穿刺針11に代えて、図7Aに示す第3変形例に係る骨セメント注入用穿刺針11C(以下、「穿刺針11C」という)を採用してもよい。この穿刺針11Cは、外針基16の一方の側面(Y1方向側の面)にサイドポート42が設けられている。すなわち、穿刺針11Cにおいて、サイドポート42は、外針12の軸線方向に直交し、かつ外針基16の長手方向に直交する方向に突出している。
【0093】
上記のように構成された穿刺針11Cを用いる場合でも、穿刺針11を用いる場合と同様に、X線透視下において穿刺針11Cを穿刺する際に、穿刺針11Cの外針基16に接続したハンドルホルダ60のホルダ本体62を把持することで、使用者が自己の手をX線の照射領域から退避させることができる。
【0094】
上述した注入針セット10において、穿刺針11に代えて、図7Bに示す第4変形例に係る骨セメント注入用穿刺針11D(以下、「穿刺針11D」という)を採用してもよい。この穿刺針11Dにおいて、外針12aは一重管として構成されており、外針基16の長手方向の一端部にはハンドルホルダ60が接続可能な嵌合部86が設けられている。この嵌合部86は、ハンドルホルダ60の先端管部70が挿入可能な穴部88を有する円筒形に形成され、その外周部にはハンドルホルダ60のロック部72が螺合可能な雄ネジ部(ネジ部)90が設けられている。嵌合部86は、図7Aに示したサイドポート42と同様に、外針基16の一方の側面に設けられもよい。
【0095】
上記のように構成された穿刺針11Dを用いる場合でも、穿刺針11を用いる場合と同様に、X線透視下において穿刺針11Dを穿刺する際に、ハンドルホルダ60のホルダ本体62を把持することで、使用者が自己の手をX線の照射領域から退避させることができる。
【0096】
なお、図2等に示した穿刺針11と異なり、穿刺針11Dは徐圧機能を有しないため、穿刺針11Dを用いる場合には、上述したハンドルホルダ60は、中空構造ではなく、中実構造に構成されてもよい。
【0097】
上述した注入針セット10において、ハンドルホルダ60に代えて、図8Aに示す第1変形例に係るハンドルホルダ60Aを採用してもよい。このハンドルホルダ60Aは、長尺な棒形状に形成され伸縮自在に構成されたホルダ本体92と、ホルダ本体92の一端部に設けられた接続部64とを有する。
【0098】
ホルダ本体92は、大きさの異なる複数の筒状部材を軸線方向に相対移動自在に連結したテレスコピック機構94として構成されている。図示例のホルダ本体92は、ハンドルホルダ60Aの先端側から基端側に向かって順に、円筒形の第1筒体96及び第2筒体98を有している。
【0099】
第1筒体96の基端部に設けられた半径方向内方に突出する環状の内側凸部96aと、第2筒体98の先端部に設けられた半径方向外方に突出する環状の外側凸部98aとにより、第1筒体96と第2筒体98の抜け止め用のストッパが構成されている。第1筒体96及び第2筒体98は円筒形に限らず、非円形(楕円形、多角形等)の筒体として形成されてもよい。ホルダ本体92(テレスコピック機構94)を構成する筒体の数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0100】
ハンドルホルダ60Aの接続部64の構成は、図4に示したハンドルホルダ60の接続部64と同じである。なお、経皮的椎体形成術において、図7Bに示した徐圧機能を有しない穿刺針11Dを用いる場合には、ハンドルホルダ60Aの第2筒体98は、中空構造ではなく、中実構造に構成されてもよい。
【0101】
上記のように構成されたハンドルホルダ60Aによれば、図4に示したハンドルホルダ60と同様の作用効果が得られ、さらに、ハンドルホルダ60Aを穿刺針11に接続しない状態ではコンパクトにすることができるとともに、使用時には伸長したうえで必要に応じて長さ調整を行うことができるため、使い勝手がよい。
【0102】
図8Aに示すハンドルホルダ60Aのテレスコピック機構94では、基端側の筒状部材ほど外径が小さくなるように構成されている(第2筒体98の外径が第1筒体96の外径よりも小さい)が、図8Bに示す第2変形例に係るハンドルホルダ60Bのホルダ本体92a(テレスコピック機構94a)のように、基端側の筒状部材ほど外径が大きくなるように構成されてもよい。
【0103】
すなわち、ハンドルホルダ60Bにおいて、第2筒体122の外径は、第1筒体120の外径よりも大きい。テレスコピック機構94aにおいて、第1筒体120の基端部に設けられた半径方向外方に突出する環状の外側凸部120aと、第2筒体122の先端部に設けられた半径方向内方に突出する環状の内側凸部122aとにより、第1筒体120と第2筒体122の抜け止め用のストッパが構成されている。第1筒体120及び第2筒体22は円筒形に限らず、非円形(楕円形、多角形等)の筒体として形成されてもよい。テレスコピック機構94aを構成する筒体の数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0104】
上記のように構成されたハンドルホルダ60Bによっても、ハンドルホルダ80Aと同様の作用効果が得られる。
【0105】
上述した注入針セット10において、ハンドルホルダ60に代えて、図8Cに示す第3変形例に係るハンドルホルダ60Cを採用してもよい。このハンドルホルダ60Cは、長尺な棒形状に形成され基端部側の開口部100が縮径したホルダ本体126と、ホルダ本体126の一端部(先端部)に設けられた接続部64とを有する。ホルダ本体126の基端部側の開口部128は、中空部66の内径よりも小さい。これにより、中空部66は、液体を貯留可能な液体貯留部130として構成されている。ハンドルホルダ60Cの接続部64の構成は、図4に示したハンドルホルダ60の接続部64と同じである。
【0106】
上記のように構成されたハンドルホルダ60Cによれば、図4に示したハンドルホルダ60と同様の作用効果が得られ、さらに、骨セメント注入時において、骨76内からの気体を生体外に出しつつ、骨76内から流出した液体をホルダ本体126内の液体貯留部130に貯留できる。このため、骨76内からの液体がハンドルホルダ60Bから流出することを防止又は抑制することができる。
【0107】
上述した注入針セット10において、ハンドルホルダ60に代えて、図9Aに示す第4変形例に係るハンドルホルダ60Dを採用してもよい。このハンドルホルダ60Dは、長尺な棒形状に形成されたホルダ本体62と、ホルダ本体62内に設けられた吸収体132と、ホルダ本体62の一端部(先端部)に設けられた接続部64とを有する。
【0108】
ハンドルホルダ60Dのホルダ本体62及び接続部64の構成は、図4に示したハンドルホルダ60のホルダ本体62及び接続部64と同じである。吸収体132は、液体を吸収する機能を有するスポンジ状又は綿状の部材であり、図示例ではホルダ本体62の基端部側の中空部66に配置されている。
【0109】
上記のように構成されたハンドルホルダ60Dによれば、図4に示したハンドルホルダ60と同様の作用効果が得られ、さらに、骨セメント注入時において、骨76内からの気体を生体外に出しつつ、骨76内から流出した液体をハンドル本体62内に設けた吸収体132により吸収できる。このため、骨76内からの液体がハンドルホルダ60Dから流出することを防止又は抑制することができる。
【0110】
上述した注入針セット10において、ハンドルホルダ60に代えて、図9Bに示す第5変形例に係るハンドルホルダ60Eを採用してもよい。このハンドルホルダ60Eは、長尺な棒形状に形成されたホルダ本体62と、ホルダ本体62に設けられた気体透過膜134と、ホルダ本体62の一端部(先端部)に設けられた接続部64とを有する。
【0111】
ハンドルホルダ60Eのホルダ本体62及び接続部64の構成は、図4に示したハンドルホルダ60のホルダ本体62及び接続部64と同じである。気体透過膜134は、液体は通さないが気体は通す機能(性質)を有する、例えば、延伸多孔質PTFE製の部材である。図示した構成例では、気体透過膜134は、ホルダ本体62の基端部に設けられた(固定された)保持部136の孔部に保持されている。ホルダ本体62と保持部136とは、別々の部材により構成されてもよく、一体に形成されてもよい。
【0112】
上記のように構成されたハンドルホルダ60Eによれば、図4に示したハンドルホルダ60と同様の作用効果が得られ、さらに、骨セメント注入時において、気体透過膜134が液体を通さないことにより、骨76内からの液体がハンドルホルダ60Eから流出することを防止することができる。
【0113】
穿刺針11、11A〜11Cにおいて、外針基16とサイドポート形成部材18は、別々の部材で構成されているが、外針基16とサイドポート形成部材18とを一部材として一体化した構成を採用してもよい。すなわち、サイドポート形成部材18を省略し、代わりに、外針基16をインサート成型する際に、サイドポート形成部材18に相当する部分を外針基16の一部として一体に形成してもよい。
【0114】
穿刺針11、11A〜11Dにおいて、外針基16はインサート成型によって形成することに限らず、射出成型等により予め製作した外針基16を、適宜の接合手段又は固定手段を用いて外針12、12aに固定してもよい。
【0115】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0116】
10…骨セメント注入針セット
11、11A、11B、11C、11D…骨セメント注入用穿刺針
12、12a…外針 14…内針
16…外針基 20…内針基
26…骨セメント通路 42、43…サイドポート
42a、43a、84…雄ネジ部
60、60A、60B、60C、60D、60E…ハンドルホルダ
62、92、91a、120…ホルダ本体 64、86…接続部
80…嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に貫通する骨セメント通路を有する外針と、
前記外針の基端部に固定された外針基と、
先端に針先を有し、かつ前記外針の中空部に摺動可能に挿通される内針と、
前記内針の基端部に固定された内針基と、
を備えた骨セメント注入用穿刺針の前記外針基に着脱可能なハンドルホルダであって、
長尺な棒形状に形成されたホルダ本体と、
前記ホルダ本体の一端部に設けられ、前記外針基の側部に設けられた嵌合部に嵌合可能な接続部と、を備える、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項2】
請求項1記載のハンドルホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、軸線方向に貫通する中空部を有する、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のハンドルホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、伸縮自在に構成される、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項4】
請求項2記載のハンドルホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、液体を貯留可能な液体貯留部を有する、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項5】
請求項2記載のハンドルホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、前記中空部に液体を吸収する吸収体が設けられる、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項6】
請求項2記載のハンドルホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、気体は通すが液体は通さない気体透過膜が設けられている、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のハンドルホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、内部を視認できる程度の透明性を有する、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項8】
骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針と、前記骨セメント注入用穿刺針に着脱可能なハンドルホルダとを備えた骨セメント注入針セットであって、
前記骨セメント注入用穿刺針は、
軸線方向に貫通する骨セメント通路を有する外針と、
前記外針の基端部に固定され、側部に嵌合部が設けられた外針基と、
先端に針先を有し、かつ前記外針の中空部に摺動可能に挿通される内針と、
前記内針の基端部に固定された内針基と、を有し、
前記ハンドルホルダは、
長尺な棒形状に形成されたホルダ本体と、
前記ホルダ本体の一端部に設けられ、前記外針基の前記嵌合部に嵌合可能な接続部と、を有する、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。
【請求項9】
請求項8記載の骨セメント注入針セットにおいて、
前記嵌合部は、前記外針基の長手方向の一端部に設けられ、
前記ハンドルホルダは、前記外針基に接続された状態で、前記外針基の長手方向を指向する、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。
【請求項10】
請求項8記載の骨セメント注入針セットにおいて、
前記嵌合部は、前記外針基の長手方向の両端部にそれぞれ設けられ、
前記ハンドルホルダは、前記外針基に接続された状態で、前記外針基の長手方向を指向する、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の骨セメント注入針セットにおいて、
前記嵌合部は、前記接続部をネジ嵌合するネジ部を有する、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の骨セメント注入針セットにおいて、
前記外針は、先端部近傍の外周部に位置する第1の側孔と、基端部近傍の外周部に位置する第2の側孔と、前記骨セメント通路とは独立した通路であって前記第1の側孔と前記第2の側孔とを連通する徐圧通路と、を有し、
前記外針基の側部には、前記第2の側孔と連通し、前記嵌合部を有するサイドポートが設けられ、
前記ホルダ本体は、軸線方向に貫通する中空部を有する、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−70931(P2012−70931A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217884(P2010−217884)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(596165589)学校法人 聖マリアンナ医科大学 (53)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】