説明

ハンドル荷重検出装置及びそれを備えた輸送機器

【課題】ハンドルにかかる荷重を検出可能なハンドル荷重検出装置を提供する。
【解決手段】ハンドル荷重検出装置10は、ハンドルの左右のブリッジ16R,16Lの間に装着される。ハンドル荷重検出装置10は、ブリッジ16R,16Lにかかる引張力を検知するロードセル18と、ブリッジ16Rに固定されるアダプタ20と、ブリッジ16Lに固定されるアダプタ21と、ロードセル18とアダプタ20との間の距離を調整するためのアジャスタ22とを備える。アダプタ21は、ロードセル18の上面に突出する荷重印加軸26に螺合される。アジャスタ22は、ロードセル18の底面に突出する固定軸28に螺合され、かつアダプタ20に螺合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル荷重検出装置に関し、さらに詳しくは、自動二輪車、四輪バギー(ATV; All Terrain Vehicle)、スノーモビル、水上滑走艇など、ライダが自身の体重を移動させながら操縦する鞍乗り型輸送機器、特に自動二輪車のハンドルにかかる荷重を検出するためのハンドル荷重検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗り型輸送機器では、ハンドルに装備されたスロットルグリップをライダが手で操作することによってスロットル開度を調整している。アクセルペダルをドライバが足で操作することによってスロットル開度を調整する四輪自動車と異なり、鞍乗り型輸送機器では、ライダの体重移動が操縦に大きく影響する。
【0003】
自動二輪車、特にオフロードモデルでは、加減速時やコーナリング時におけるライダの姿勢は極めて重要である。加速時には、ライダは体重を前に移動することによって前輪が浮き上がるウィリーを抑えることができる。減速時には、ライダは体重を後ろに移動することによって後輪が浮き上がるジャックナイフを抑えることができる。コーナリング時には、ライダは体重を前に移動することによって後輪の横滑りに対して安定的に乗車でき、かつフロントタイヤの接地荷重を増加させてグリップ力を高め、その結果、旋回性を向上させることができる。
【0004】
このような体重移動は経験の豊富なライダには容易であるが、経験の浅いライダには難しいものがある。したがって、ライダの体重移動を車両側で検出し、ライダに知らせることは、自動二輪車の操縦を補助するために有効である。しかしながら、ライダの体重移動を検出できる装置は現存しない。
【0005】
特許3115052号公報(特許文献1)には、フロント及びリアサスペンションの変位量から車輪の接地荷重及び車体のピッチング角度を検出する車体状態検出装置が開示されている。しかしながら、この装置でもライダの体重移動を正確に検出することはできない。
【0006】
自動二輪車のステップに荷重センサを装着すれば、ライダの体重を検出することは可能であるが、それだけでは体重移動まで検出することは不可能である。ステップにかかる荷重に加え、ハンドルにかかる荷重も検出すれば、ライダの体重移動を検出することは可能と考えられる。ハンドルにかかる荷重はフロントサスペンションの変位量から検出することは可能と考えられるが、フロントサスペンションの変位量は走行状態に応じて変動するため、ハンドルにかかるライダの荷重を正確に反映したものとは言い難い。
【0007】
なお、本出願人は、特願2005−93466号(関連出願1)において、ライダの体重移動に応じて駆動力を制御することの可能な操縦制御装置を提案している。この装置は、ステップ及びハンドルにかかる荷重から体重移動を検出するようになっている。
【特許文献1】特許3115052号公報
【0008】
[関連出願1]特願2005−93466号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ハンドルにかかる荷重を検出することの可能なハンドル荷重検出装置及びそれを備えた輸送機器を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明によるハンドル荷重検出装置は、第1の連結部材と、第2の連結部材と、荷重センサとを備える。第1の連結部材は、ハンドルの一方側に連結され、中央に向かって延びる。第2の連結部材は、ハンドルの他方側に連結され、中央に向かって延びる。荷重センサは、第1及び第2の連結部材の間に挟持され、第1及び第2の連結部材にかかる引張又は圧縮力を検知する。
【0011】
このハンドル荷重検出装置では、ライダの体重が前側に移動し、ハンドルにかかる荷重が増加すると、第1及び第2の連結部材に引張又は圧縮力がかかり、荷重センサによりこの引張又は圧縮力が検知される。その結果、ハンドルにかかる荷重が検出される。
【0012】
好ましくは、荷重センサは、上面中心に突出する荷重印加軸を有するロードセルを含む。第1の連結部材はロードセルの荷重印加軸に連結される。第2の連結部材はロードセルの底面に連結される。
【0013】
この場合、汎用のロードセルを用い、簡単な構造でハンドル荷重検出装置を実現することができる。
【0014】
さらに好ましくは、ロードセルは、底面中心に突出する固定軸を有する。ハンドル荷重検出装置はさらにアジャスタを備える。アジャスタは、ロードセルの固定軸に螺合され、第2の連結部材に螺合される。
【0015】
この場合、アジャスタを回転させることにより、ロードセルと第2の連結部材との間の距離を自在に調整することができる。
【0016】
さらに好ましくは、第1の連結部材は第1のアダプタを含む。第1のアダプタの一方側はハンドルのブリッジの一方側に取り付けられ、他方側はロードセルの荷重印加軸に螺合される。第2の連結部材は第2のアダプタを含む。第2のアダプタの一方側はハンドルのブリッジの他方側に取り付けられ、他方側はアジャスタに螺合される。
【0017】
この場合、ハンドルのブリッジの一方側とロードセルとの間に第1のアダプタを介装し、ハンドルのブリッジの他方側とアジャスタとの間に第2のアダプタを介装するので、ロードセル及びアジャスタを容易に組み立てることができる。
【0018】
本発明による輸送機器は、上記ハンドル荷重検出装置を備える。
この輸送機器では、ハンドルにかかる荷重が検出されるため、ライダの体重移動を検出でき、その結果、検出された体重移動をライダに知らせたり、体重移動に応じて駆動力を制御したりすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
図1を参照して、本発明の実施の形態によるハンドル荷重検出装置10は、自動二輪車12のハンドル14に装着される。このハンドル14には、左右両側に渡ってブリッジ16が懸架されている。ブリッジ16は一般に、オフロードモデルに補強用に設けられる。本実施の形態では、ブリッジ16は中央で切断され、左右2つのブリッジ16R,16Lに分割される。右のブリッジ16Rは、ハンドル14の右側に連結され、中央に向かって延びる。左のブリッジ16Lは、ハンドル14の左側に連結され、中央に向かって延びる。ハンドル荷重検出装置10は、左右のブリッジ16R及び16Lの間に挟持され、ハンドル14にかかるライダの荷重を検出する。
【0021】
図2を参照して、ハンドル荷重検出装置10は概略、ロードセル18と、アダプタ20及び21と、アジャスタ22と、カバーケース24及び25とを備える。アダプタ20、アジャスタ22、ロードセル18、及びアダプタ21は、ブリッジ16R,16Lと同軸上に組み立てられ、左右のブリッジ16R及び16Lの間に取り付けられる。
【0022】
ロードセル18は、左右のブリッジ16L及び16Rの間に挟持され、左右のブリッジ16R,16Lにかかる引張力を検知する。ロードセル18は概略円柱状をなし、その上面中心には荷重印加軸26が突出し、底面中心には固定軸28が突出する。荷重印加軸26はロードセル18内部の歪みゲージ(図示せず)と連動し、荷重印加軸26にかかる引張加重に応じた電圧が出力される。荷重印加軸26の表面には雄ねじが形成される。固定軸28はロードセル18の底面に固定され、その表面には雄ねじが形成される。
【0023】
アジャスタ22は、ロードセル18とアダプタ20との間の距離を自在に調整可能とするためのもので、概略円筒状をなし、一方の端に円板状の鍔29を有する。鍔29の中心には貫通孔(図示せず)が形成され、その貫通孔の内面には固定軸28と螺合する雌ねじが形成される。アジャスタ22の外面には雄ねじが形成される。アジャスタ22は鍔29がロードセル18の底面に接触するまで固定軸28に螺合され、ロードセル18に固定される。
【0024】
アダプタ20は、ブリッジ16Rを介してハンドル14の右側に連結され、中央に向かって延びる連結部材である。アダプタ20は概略円筒状をなし、その内面にはアジャスタ22と螺合する雌ねじが形成される。アダプタ20はブリッジ16Rの内側に嵌め込まれ、アダプタ20に形成された貫通孔30とブリッジ16Rに形成された貫通孔31とが位置合わせされ、そこにボルト32が挿入され、ナット33で締結される。ボルト32とブリッジ16Rとの間及びナット33とブリッジ16Rとの間には、それらの外形を適合させるためのステー34及び35がそれぞれ介装される。
【0025】
アジャスタ22の雄ねじ及び鍔29の雌ねじは逆方向に形成されているため、アジャスタ22をアダプタ20にねじ込むほど、ロードセル18とアダプタ20との間の距離は短くなる。すなわち、アジャスタ22を回転させることにより、ロードセル18とアダプタ20との間の距離を自在に調整することができる。ロックナット36は、アジャスタ22が勝手に回転してしまうのを防止するためのもので、アジャスタ22に螺合され、上記距離の調整後にアダプタ20側に締め付けられる。
【0026】
一方、アダプタ21は、ブリッジ16Lを介してハンドル14の左側に連結され、中央に向かって延びる連結部材である。アダプタ21は概略円筒状をなし、一方の端に円板状の鍔38を有する。鍔38の中心には貫通孔39が形成され、その貫通孔39の内面には荷重印加軸26と螺合する雌ねじが形成される。アダプタ21は荷重印加軸26に螺合され、ロードセル18に固定される。ロックナット40は、荷重印加軸26が勝手に回転してしまうのを防止するためのもので、荷重印加軸26に螺合され、アダプタ21側に締め付けられる。
【0027】
カバーケース24及び25は対称な半円筒状をなす。カバーケース24及び25は合わせられて概略円筒状をなし、その内側にロードセル18及びその周辺部品を収容する。アダプタ21はブリッジ16Lの内側に嵌め込まれ、アダプタ21に形成された貫通孔41とブリッジ16Rに形成された貫通孔42とが位置合わせされる。さらに、その上下にカバーケース24及び25がかぶせられ、カバーケース24,25に形成された貫通孔43(カバーケース25の貫通孔は図示せず)がブリッジ16Rの貫通孔42及びアダプタ21の貫通孔41と位置合わせされ、そこにボルト44が挿入され、ナット45で締結される。
【0028】
カバーケース24,25には、ロードセル18に接続される配線を通すためのスリット46,47が形成される。カバーケース24及び25の表面のうちボルト44の頭部及びナット45が当接する部分は平坦になっているため、上記のようなステー34,35を介装する必要はない。
【0029】
このようなハンドル荷重検出装置10を備えた自動二輪車12おいては、ライダの体重が前側に移動し、ハンドル14にかかる荷重が増加すると、ブリッジ16R及び16Lが互いに離れる方向に力がかかり、ロードセル18の荷重印加軸26に引張力が印加される。ロードセル18はこの引張力に応じた電圧を出力する。この電圧を車両側に設けた機器で検出することにより、ライダの体重移動を検出することができる。自動二輪車のステップに設けた荷重センサを併用すれば、より正確にライダの体重移動を検出することができる。
【0030】
また、検出した体重の移動量を走行中又は走行後にライダに知らせることにより、ライディングスキルを向上させることができる。走行中に体重の移動量を知らせるには、音や発光ダイオード等で聴覚や視覚に訴えるようにしたり、体重の移動量に応じて駆動力を制御することにより加速感を体感させるようにしたりすればよい。走行後に体重の移動量を知らせるには、走行中に検出した体重の移動量を記録しておき、走行後にパソコン等で表示するようにすればよい。
【0031】
上記実施の形態ではブリッジ16R,16Lへの装着を容易にするためにアダプタ20,21を介装しているが、これらを省略することも可能である。この場合、ブリッジ16Rそれ自体がハンドルの右側に連結され、中央に向かって延びる連結部材として機能し、ブリッジ16Lそれ自体がハンドルの左側に連結され、中央に向かって延びる連結部材として機能する。
【0032】
また、上記実施の形態ではハンドル荷重検出装置10はブリッジ付きハンドル14に装着されているが、ハンドルの種類はこれに限らず、アップハンドル、コンチネンタルハンドル、スワローハンドル、セパレートハンドル、一文字ハンドルなどにも装着可能である。ブリッジのない場合は、それに代わる連結部材をハンドルの左右に取り付け、それらを中央に向かって延ばし、その間にロードセル18を配置すればよい。
【0033】
また、上記実施の形態では引張力を検知するロードセル18を用いているが、圧縮力を検知するロードセルを用いることも可能である。この場合、ハンドル14に何も荷重がかかっていないときにロードセルに圧縮力がかかるようにばね等で設定し、ハンドル14にかかる荷重が増加すると、ロードセルにかかる圧縮力が減少するようにすればよい。
【0034】
また、上記実施の形態ではグリップ部が中央部よりも高いハンドル14を用いているため、ブリッジ16がハンドル14の上方に位置し、ハンドル14に荷重がかかると、ブリッジ16に引張力がかかる。一方、グリップ部が中央部よりも低いハンドルを用いた場合、ブリッジがハンドルの下方に位置するため、ハンドルに荷重がかかると、ブリッジに圧縮力がかかる。よって、この場合、圧縮力を検知するロードセルを用いればよい。もっとも、上述したように引張力を検知するロードセルを用いることも可能である。
【0035】
また、上記実施の形態は、ハンドル荷重検出装置10を自動二輪車12に装着した例であるが、自動二輪車だけでなく、四輪バギー、スノーモビル、水上滑走艇などの輸送機器に装着することも可能である。
【0036】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態によるハンドル荷重検出装置を装着した自動二輪車を示す正面図である。
【図2】図1に示した自動二輪車に装着されたハンドル荷重検出装置の構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10 ハンドル荷重検出装置
14 ハンドル
16,16R,16L ブリッジ
18 ロードセル
20,21 アダプタ
22 アジャスタ
26 荷重印加軸
28 固定軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの一方側に連結され、中央に向かって延びる第1の連結部材と、
ハンドルの他方側に連結され、中央に向かって延びる第2の連結部材と、
前記第1及び第2の連結部材の間に挟持され、前記第1及び第2の連結部材にかかる引張又は圧縮力を検知する荷重センサとを備えたことを特徴とするハンドル荷重検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハンドル荷重検出装置であって、
前記荷重センサは、上面中心に突出する荷重印加軸を有するロードセルを含み、
前記第1の連結部材が前記ロードセルの荷重印加軸に連結され、前記第2の連結部材が前記ロードセルの底面に連結されることを特徴とするハンドル荷重検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のハンドル荷重検出装置であって、
前記ロードセルは、底面中心に突出する固定軸を有し、
前記ハンドル荷重検出装置はさらに、
前記ロードセルの固定軸に螺合され、前記第2の連結部材に螺合されるアジャスタを備えたことを特徴とするハンドル荷重検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載のハンドル荷重検出装置であって、
前記第1の連結部材は、一方側がハンドルのブリッジの一方側に取り付けられ、他方側が前記ロードセルの荷重印加軸に螺合される第1のアダプタを含み、
前記第2の連結部材は、一方側がハンドルのブリッジの他方側に取り付けられ、他方側が前記アジャスタに螺合される第2のアダプタを含むことを特徴とするハンドル荷重検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のハンドル荷重検出装置を備えた輸送機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−337055(P2006−337055A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159009(P2005−159009)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】