説明

ハンド装置

【課題】指機構の屈伸動作を高精度に制御することができるハンド装置を提供する。
【解決手段】ハンド本体に内蔵されて指機構6を屈伸作動させる従動流体圧シリンダ23と、ハンド本体の外部にあって従動流体圧シリンダ23に流体圧伝達管45を介して接続され、従動流体圧シリンダ23に作動用流体圧を付与する駆動流体圧シリンダ36と、駆動流体圧シリンダ36から流体圧伝達管45に出力される出力流体圧を測定する第1の圧力センサ48と、従動流体圧シリンダ23に流体圧伝達管45から入力された入力流体圧を測定する第2の圧力センサ49と、第1及び第2の圧力センサ48,49による測定結果に基づいて指機構の屈伸を制御する制御手段36とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈伸機能を有した指機構を備えるハンド本体と、指機構の屈伸動作を駆動する駆動手段とを備えるハンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハンド装置においては、人間の手を模倣した複数の屈伸機構たる指機構を備えている。各指機構は、複数の関節を備えて各関節毎に屈伸自在となっており、ハンド本体に設けられた複数の従動流体圧シリンダのピストンロッドの伸縮により、各関節毎に屈伸動作が行われるようになっている。また、ハンド本体の外部には、各従動流体圧シリンダの夫々に流体圧伝達管を介して接続された複数の駆動流体圧シリンダが設けられている。そして、各駆動流体圧シリンダから、当該駆動流体圧シリンダに接続された従動流体圧シリンダに作動用流体圧が付与され、当該従動流体圧シリンダにより関節の屈伸動作が行われる(例えば下記特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−126984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記駆動流体圧シリンダと従動流体圧シリンダとに連通して充填される作動用流体としては、油等の液体や空気等の気体を採用することが考えられるが、両シリンダ間で高い応答性を得るためには、非圧縮性流体である油等の液状流体を用いることが好ましい。
【0005】
しかし、上記従来の構成において作動用流体として油等の液状流体を用いた場合であっても、例えば、駆動流体圧シリンダと従動流体圧シリンダと流体圧伝達管とで構成される流体の流動経路の内部にエアが混入したり、流体圧伝達管の径が膨張収縮して流体の流動抵抗が変化した場合には、駆動流体圧シリンダにより発生させた流体圧が従動流体圧シリンダに十分に伝達されないことがある。このため、駆動流体圧シリンダに対する従動流体圧シリンダの応答性が悪化し、指機構の屈伸動作を高精度に制御することが困難となる不都合がある。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決し、指機構の屈伸動作を高精度に制御することができるハンド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、屈伸機能を有した指機構を備えるハンド本体と、指機構の屈伸動作を駆動する駆動手段とを備えるハンド装置において、前記駆動手段は、前記ハンド本体に内蔵されて前記指機構を屈伸作動させる従動流体圧シリンダと、前記ハンド本体の外部にあって該従動流体圧シリンダに流体圧伝達管を介して接続されて該従動流体圧シリンダに作動用流体圧を付与する駆動流体圧シリンダと、該駆動流体圧シリンダから前記流体圧伝達管に出力される出力流体圧を測定する第1の圧力センサと、前記従動流体圧シリンダに前記流体圧伝達管から入力された入力流体圧を測定する第2の圧力センサと、第1及び第2の圧力センサによる測定結果に基づいて、前記駆動流体圧シリンダの作動用流体圧を調節することにより指機構の屈伸を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、前記従動流体圧シリンダは、前記駆動流体圧シリンダから付与される作動用流体圧により前記指機構を屈伸作動させる。具体的には、例えば、駆動流体圧シリンダから作動用流体が加圧送出されると、従動流体圧シリンダに作動用流体が充填されて指機構の屈曲動作が行われ、駆動流体圧シリンダにおいて作動用流体が吸引されると、従動流体圧シリンダから作動用流体が抜き取られて指機構の延ばし動作が行われる。
【0009】
このとき、前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとを設けたことにより、駆動流体圧シリンダにおいて生成された作動用流体の出力流体圧と、従動流体圧シリンダに作用する作動用流体の入力流体圧とを同時に測定することができる。更に、前記制御手段においては、前記第1の圧力センサが測定した出力流体圧と、前記第2の圧力センサが測定した入力流体圧とを比較することで、例えば、流体の流動経路へのエアの混入や、流体圧伝達管の径の膨張収縮に伴う流体の流動抵抗の変化等による応答性の低下を容易に検出することができる。そして、このような応答性の低下が検出されたとき、前記制御手段においては、出力流体圧と入力流体圧との圧力差に応じて駆動流体圧シリンダの作動を即座に補正することが可能となり、指機構の屈伸を高精度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のハンド装置を示す概略構成図。
【図2】ハンド本体の各関節を模式的に示す説明図。
【図3】ハンド本体に備える指機構の一つを示す説明的断面図。
【図4】本実施形態における駆動手段の一部の構成を模式的に示す説明図。
【図5】駆動手段の作動を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のハンド装置1は、図1に示すように、人間の手を模倣したハンド本体2と、ハンド本体2を駆動する駆動手段3とにより構成され、所謂ヒューマノイドロボットに好適に用いることができるものである。
【0012】
ハンド本体2は、基部4と、5本の指に夫々対応する屈伸機能を有した5つの指機構である拇指機構5、示指機構6、中指機構7、環指機構8、及び小指機構9とを備えている。基部4は、各指機構を連結支持するフレーム10を備え、基部4の表側が手の甲とされ裏側が手の平とされる。図1は、ハンド本体2の手の平側を示している。
【0013】
各指機構は、各関節を露出させて指表皮部材11により被覆され、基部4は基部表皮部材12により被覆されている。各指機構は、図2に模式的に示すように、複数の指節及び関節を備えている。示指機構6、中指機構7、環指機構8、及び小指機構9は、夫々、指先側から順に、DIP関節13(遠位指節間関節)、PIP関節14(近位指節間関節)、MP1関節15、及びMP2関節16を備えて、各関節毎に回動自在とされている。
【0014】
DIP関節13は1軸で回動し、PIP関節14はDIP関節13と平行の軸線回りに1軸で回動する。MP1関節15及びMP2関節16は2軸で回動する中手指節関節を構成するものであって、MP1関節15はPIP関節14と平行の軸線回りに回動し、MP2関節16はMP1関節15に交差する軸線回りに回動する。
【0015】
DIP関節13と、PIP関節14と、MP1関節15とは、基部4の手の平側に向かう方向に回動して握り動作等の屈伸運動が行えるようになっている。MP2関節16は、各指機構同士が近接・離間する方向に各指機構を揺動させ、例えば手を広げる動作等が行えるようになっている。
【0016】
拇指機構5は、図2に模式的に示すように、指先側から順に、IP関節17(拇指指節間関節)、MP関節18(拇指中手指節関節)、CM1関節19、及びCM2関節20を備えて、各関節毎に回動自在とされている。
【0017】
IP関節17は1軸で回動し、MP関節18はIP関節17と平行の軸線回りに1軸で回動する。CM1関節19及びCM2関節20は2軸で回動する手根中手関節を構成するものであって、CM1関節19はMP関節18と平行の軸線回りに回動し、CM2関節20はCM1関節19に交差する軸線回りに回動する。
【0018】
IP関節17と、MP関節18と、CM1関節19とは、基部4の手の平側或いは他の4つの指機構6,7,8,9の何れかの指腹側に向かう方向に回動して握り動作等の屈伸運動が行えるようになっている。CM2関節20は、拇指機構5を手の平側或いは他の4つの指機構6,7,8,9の何れかの指腹側に対向するように回動させる。
【0019】
示指機構6の構成を説明すれば、図3に示すように、示指機構6は、MP1関節15の回動軸151(中手指節関節の第1の回動軸)を回動させる第1の従動流体圧シリンダ23と、PIP関節14の回動軸141を回動させる第2の従動流体圧シリンダ24とを備えている。
【0020】
第1の従動流体圧シリンダ23のシリンダ本体231は、人間の中手骨に相当し、MP2関節16の回動軸161(中手指節関節の第2の回動軸)により回動自在に前記基部4のフレーム10(図1参照)に支持されている。第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241は、人間の基節骨に相当し、MP1関節15の回動軸151を介して第1の従動流体圧シリンダ23に回動自在に連結されている。
【0021】
第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241に流体を供給する配管244は、MP1関節15の回動軸151の内部に収容されている。これにより、MP1関節15の回動時に配管244が邪魔にならず、示指機構6の屈伸動作を円滑に行うことができる。
【0022】
また、第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241を示指機構6の長手方向に沿ってMP1関節15とPIP関節14との間に配設することにより、示指機構6をコンパクトに構成することができる。
【0023】
PIP関節14には、人間の中節骨に相当する連結部材25を介してDIP関節13が連結されている。DIP関節13の回動軸131には、指先部材22が回動自在に連結されている。連結部材25は、その一端がPIP関節14の回動軸141に回動自在に連結され、他端がDIP関節13の回動軸131に連結されている。
【0024】
更に、PIP関節14とDIP関節13との間には、リンク部材27が設けられている。リンク部材27は、連結部材25に並設され、第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241と指先部材22とを連結する。
【0025】
第1の従動流体圧シリンダ23は、シリンダ本体231の圧力室234に流体が供給されることによりピストン232が摺動し、ピストンロッド233が伸縮してMP1関節15を回動させる。これにより、示指機構6がMP1関節15を介して屈伸する。
【0026】
第2の従動流体圧シリンダ24は、シリンダ本体241の圧力室245に流体が供給されることによりピストン242が摺動し、ピストンロッド243が伸縮してPIP関節14を回動させる。このとき、PIP関節14とDIP関節13とが、連結部材25とリンク部材27とにより連結されているので、第2の従動流体圧シリンダ24によるPIP関節14の回動に追従してDIP関節13が回動する。
【0027】
DIP関節13は、連結部材25とリンク部材27とによって第2の従動流体圧シリンダ24によるPIP関節14の回動に連動するように構成されている。これにより、人間の指の動きに近い動作が得られるだけでなく、DIP関節13を駆動するためのシリンダ等が不要となり、示指機構6を軽量に構成することができる。
【0028】
以上の構成により、示指機構6は、第1の従動流体圧シリンダ23及び第2の従動流体圧シリンダ24のピストンロッド231,241を伸長させることにより折り曲げ状態となり、ピストンロッド231,241を収縮させることにより延ばし状態となる。
【0029】
以上、示指機構6の構成を詳しく述べたが、他の指機構も略同様の構成を備えているので、他の指機構についての構成の説明は省略する。
【0030】
次に、ハンド本体2の各指機構を駆動するための駆動手段3について説明する。駆動手段3は、図1に示すように、ハンド本体2の外部に設けられた駆動シリンダユニット35と、この駆動シリンダユニット35を介してハンド本体2を制御するコントローラ36(制御手段)と、前述した従動流体圧シリンダ23,24を含む各指機構に備える複数の従動流体圧シリンダとにより構成される。
【0031】
駆動シリンダユニット35は、図1に示すように、複数の駆動流体圧シリンダ37を備えている。駆動流体圧シリンダ37は、図4に示すように、シリンダ本体371と、シリンダ本体371の内部を摺動するピストン372と、ピストン372に連設された中空のピストンロッド373とを備え、シリンダ本体371の圧力室374に充填された流体により作動用流体圧を生成する。更に、駆動流体圧シリンダ37は、ピストンロッド373の軸線に沿ってピストンロッド373内に挿入されるボールねじ38と、ピストンロッド373の内部に固設されてボールねじ38に螺合するナット39と、ボールねじ38を回転駆動することによりナット39を介してピストンロッド373を進退させるモータ40(回転駆動手段)と、モータ40の作動量を検出するためのエンコーダ41とを備えている。
【0032】
モータ40は、プーリ42,43に掛けわたされたベルト44を介してボールねじ38を回転駆動する。これにより、モータ40の出力軸401とピストンロッド373との軸線が平行となり、モータ40をシリンダ本体371に隣設することができてコンパクトに形成される。
【0033】
駆動シリンダユニット35の各駆動流体圧シリンダ37は、ハンド本体2に内蔵されている従動流体圧シリンダ23や24等の複数の従動流体圧シリンダの夫々に、1つずつ対応して設けられている。図1に概略を示しているが、駆動シリンダユニット35の各駆動流体圧シリンダ37とハンド本体2の従動流体圧シリンダ23や24等の各従動流体圧シリンダとは夫々が流体圧伝達管45を介して各別に接続される。
【0034】
コントローラ36は、信号線46を介して駆動シリンダユニット35に接続され、信号線47を介してハンド本体2に接続されており、各駆動流体圧シリンダ37から従動流体圧シリンダ23,24を含む各指機構に備える複数の従動流体圧シリンダに伝達される作動用流体圧を調節することにより各指機構の屈伸を制御する。
【0035】
ところで、流体圧伝達管45の内部等にエアが混入したり、流体圧伝達管45の径が膨張収縮して流体の流動抵抗が変化した場合には、駆動流体圧シリンダ37の出力流体圧と各従動流体圧シリンダ(23や24)への入力流体圧とに圧力差が生じることがある。
【0036】
そこで、本実施形態においては、コントローラ36により、駆動流体圧シリンダ37の出力流体圧と各従動流体圧シリンダ(23や24)への入力流体圧との両方を検出している。即ち、図4に示すように、駆動流体圧シリンダ37の圧力室374に開設された流体出入り口375には、該圧力室374で発生した出力流体圧を測定する第1の圧力センサ48が設けられている。また、図3に示すように、第1の従動流体圧シリンダ23の圧力室234に開設された流体出入り口235の近傍には、該圧力室234に付与される入力流体圧を測定する第2の圧力センサ49が設けられている。なお、図示しないが、第2の従動流体圧シリンダ24やその他の指機構に設けられた従動流体圧シリンダにも、各々の入力流体圧を測定する第2の圧力センサが設けられている。
【0037】
この構成により、図5(a)及び(b)に模式的に示すように、駆動流体圧シリンダ37の内部に流体を送出・吸入すれば、それに対応して従動流体圧シリンダ23や24等では流体が圧入・排出され、従動流体圧シリンダ37による指機構6(7,8,9,5)の駆動が行われる。
【0038】
このとき、コントローラ36は、第1の圧力センサ48と第2の圧力センサ49とにより測定した夫々の流体圧により、流体の流動経路へのエアの混入や、流体圧伝達管45の径の膨張収縮に伴う流体の流動抵抗の変化等による応答性の低下を検出する。そして、コントローラ36は、この検出に応じて、モータ40を介して駆動流体圧シリンダ37における流体の送出量及び吸入量を補正することにより応答性の低下を解消する。これにより、従動流体圧シリンダ23や24等への入力流体圧を十分に得て、指機構6(7,8,9,5)に所望の屈伸作動を行わせることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…ハンド装置、2…ハンド本体、3…駆動手段、5,6,7,8,9…指機構、23,24…従動流体圧シリンダ、36…コントローラ(制御手段)、37…駆動流体圧シリンダ、45…流体圧伝達管、48…第1の圧力センサ、49…第2の圧力センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈伸機能を有した指機構を備えるハンド本体と、指機構の屈伸動作を駆動する駆動手段とを備えるハンド装置において、
前記駆動手段は、前記ハンド本体に内蔵されて前記指機構を屈伸作動させる従動流体圧シリンダと、前記ハンド本体の外部にあって該従動流体圧シリンダに流体圧伝達管を介して接続されて該従動流体圧シリンダに作動用流体圧を付与する駆動流体圧シリンダと、該駆動流体圧シリンダから前記流体圧伝達管に出力される出力流体圧を測定する第1の圧力センサと、前記従動流体圧シリンダに前記流体圧伝達管から入力された入力流体圧を測定する第2の圧力センサと、第1及び第2の圧力センサによる測定結果に基づいて、前記駆動流体圧シリンダの作動用流体圧を調節することにより指機構の屈伸を制御する制御手段とを備えることを特徴とするハンド装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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