説明

ハードコートフィルムおよびそれを用いた透明導電性フィルム

【課題】各種画像表示装置の表面保護フィルムとして高い表面硬度と高精度のカールの制御性を有するハードコートフィルムに関する。
【解決手段】プラスチック基材フィルムの片面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、下記要件(1)〜(5)を満たすことを特徴とするハードコートフィルム。(1)プラスチック基材フィルムの厚さが50μm以上500μm以下、(2)ハードコート層の膜厚が1μm以上30μm以下、(3)ハードコートフィルムの鉛筆硬度がH以上、(4)150℃、30分処理後の熱収縮率が0.1%以上2%以下、(5)下記測定方法により測定した150℃、30分処理後のカール値が0mm以上5mm以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードコートフィルムに関するものであり、さらに詳しくは各種画像表示装置の表面保護フィルムとして必要十分な表面硬度を有し、加熱処理後のカールが良好なハードコートフィルムおよびそれを用いた透明導電フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードコートフィルムは、各種画像表示装置、例えばLCD(液晶表示体)、タッチパネル、CRT(ブラウン管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、EL(エレクトロルミネッセンス)などにおいて、表面保護に加えて、防眩性や反射防止などの目的で用いられている。このハードコートフィルムは、一般に、プラスチック基材フィルム上に、紫外線硬化型樹脂などにより形成されたハードコート層を有するものである。
【0003】
ハードコート層とプラスチック基材フィルムは、熱収縮率に差異を有する。さらに、硬度が高いハードコート層は一般に柔軟性の低い。そのため、熱処理条件によっては、ハードコートフィルムにカールが生じ、作業性、生産性の低下する要因となっていた。
【0004】
ハードコートフィルムに生じるカールを低減させる方法として、例えば、プラスチック基材フィルムを加熱処理等により低熱収縮化する手法(特許文献1)が提案されている。しかしながら、この方法では、ハードコート加工前に加熱処理を施さなければならず、工程数の増加するため、生産性に劣る欠点があった。そのため、プラスチック基材フィルムの熱収縮率を調整する手法(特許文献2〜4)が提案されている。
【0005】
また、ハードコート層の組成を改良することで、ハードコートフィルムのカールを低減させる方法として、2種の紫外線硬化型物質とオリゴマー型重合開始剤を含む組成物を用いてハードコート層を形成させる手法(特許文献5)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−104623号公報
【特許文献2】特開2003−41020号公報
【特許文献3】特開2008−248027号公報
【特許文献4】特開2008−246780号公報
【特許文献5】特開2003−292828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カールを低減する方法として、上記の方法がこれまで提案され、一定の成果を得ている。しかしながら、近年、特に導電性フィルムの分野など画像表示装置分野では高機能化進展しており、導電回路の精密化や回路形成工程における寸法安定性が厳しく要求されている。加えて、これらの分野では高度な耐久性が必要とされる。そのため、表面硬度の高いハードコート層が用いられるが、このような硬度の高いハードコート層は、上述のようにカールが生じやすい。そのため、コスト低減に耐えうる生産性を維持したまま、高い表面硬度と高精度のカールの制御という相反する特性を高度に両立するハードコートフィルムが期待された。
【0008】
これに対して、特許文献2〜4に記載の手法では、高度なカールの抑制と高い表面硬度を両立する上で未だ十分ではない。また、特許文献4の方法ではハードコート層の充分な硬度を確保の点で未だ十分ではなかった。さらに、特許文献4の方法は、特定の熱収縮率を有するプラスチック基材フィルムを選好するものであり、種々の熱収縮率を有する広範囲のプラスチック基材フィルムに対応できるものではない。以上のように、従来技術においては、ハードコートフィルムのカールを低減する手段は、プラスチック基材フィルムとハードコート層の性質に依存したものであり、如何なる構成であっても、加熱処理後のカールを低減可能な技術はない。
【0009】
さらに、後工程において、単にカールを低減するのではなく、画面サイズなど種々の画像装置の態様に応じて、ハードコート層側への微少な凸状のカール(例えば、0〜5mm範囲内)を設ける処理がなされるが、従来技術においては、カールを低減することができても、カールを精密にコントロールできない
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、ハードコートフィルム、さらに詳しくは、各種画像表示装置の表面保護フィルムとして高い表面硬度と高精度のカールの制御性を有するハードコートフィルムおよびそれを用いた透明導電フィルムに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決することができる本発明のハードコートフィルムおよびそれを用いた透明導電性フィルムは以下の構成を有する。
【0012】
第1の発明は、プラスチック基材フィルムの片面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、下記要件(1)〜(5)を満たすことを特徴とするハードコートフィルムである。
(1)プラスチック基材フィルムの厚さが50μm以上500μm以下
(2)ハードコート層の膜厚が1μm以上30μm以下
(3)ハードコートフィルムの鉛筆硬度がH以上
(4)150℃、30分処理後の熱収縮率が0.1%以上2%以下
(5)下記測定方法により測定した150℃、30分処理後のカール値が0mm以上5mm以下
(測定方法)
ハードコートフィルムを縦方向に20cm、幅方向に2cm、および縦方向に2cm、幅方向に20cmの大きさに2つのフィルム試料を切り出し、150℃の熱風循環式オーブンで30分間放置し熱処理を行った。室温にて放置冷却後、プラスチック基材フィルム面を下にしてガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向での4隅の浮き上がり量を測定した。切り出した2つのフィルム試料において、最大の浮き上がり量をカール値とした。
第二の発明は、プラスチック基材フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする前記ハードコートフィルムである。
第三の発明は、前記ハードコートフィルムのハードコート層の反対面に、透明導電層を形成してなることを特徴とする透明導電性フィルムである。
第四の発明は、プラスチック基材フィルムの片面に、少なくとも紫外線硬化型物質及び紫外線重合開始剤を含む塗布液を塗布、乾燥した後に、紫外線により硬化し形成されたハードコート層を有するハードコートフィルムであり、下記要件(6)を満たすことを特徴とする前記ハードコートフィルムである。
(6)ハードコートフィルムの150℃、30分処理後の熱収縮率をX(%)、ハードコート層の重量減率をY(%)、としたとき、Yは3%以下であって、かつ以下の式(I)を満たす。
(式I) 0< Y ≦ X+0.5
第五の発明は、プラスチック基材フィルムに、少なくとも紫外線硬化型物質及び紫外線重合開始剤を含む塗布液を塗布し、乾燥温度の最大が60〜180℃かつ張力が100〜300N/mの条件で乾燥した後に、0〜100℃の温度下で紫外線により硬化したハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、以下の要件を満たすハードコートフィルムの製造方法である。
(1)プラスチック基材フィルムの厚さが50μm以上500μm以下
(2)ハードコート層の膜厚が1μm以上30μm以下
(3)ハードコートフィルムの鉛筆硬度がH以上
(4)150℃、30分処理後の熱収縮率が0.1%以上2%以下
(5)ハードコートフィルムの150℃、30分処理後の熱収縮率をX(%)、ハードコート層の重量減率をY(%)としたとき、Yは3%以下であって、かつ以下の式(I)を満たす
(式I) 0< Y ≦ X+0.5
【発明の効果】
【0013】
本発明のハードコートフィルムは、生産性と汎用性に優れ、ハードコート層の硬度が高く、さらに、加熱処理により発生するカールを高度に制御することができる。そのため、各種画像表示装置、とりわけ導電性フィルムを用いたタッチパネルの生産を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のハードコートフィルムを構成する各層の材料、好適な実施形態、ハードコートフィルムの製造方法などについて、詳細に説明する。
【0015】
(プラスチック基材フィルム)
本発明において、プラスチック基材フィルムは特に限定されるものではないが、全光線透過率が80%以上で、かつヘイズが5%以下であることが好ましい。プラスチック基材フィルムの透明性が劣る場合には、ディスプレイ等の画像表示装置上に設置した際の輝度を低下させるだけでなく、画像のシャープさが不良となる。
【0016】
このようなプラスチック基材フィルムとしては、例えば、ポリエステル系、アクリル系、セルロ−ス系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボネ−ト、フェノ−ル系、ウレタン系等のプラスチックフィルム又はシート、ガラス及びこれらの任意の2種類以上を貼り合わせたものが挙げられる。好ましくは、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なポリエステルフィルムであり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【0017】
本発明で用いるプラスチック基材フィルムとして好適なポリエステルフィルムとは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどをエステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合反応させて得たポリエステルチップを乾燥後、押出機で溶融し、Tダイからシート状に押し出して得た未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸し、次いで熱固定処理、緩和処理を行うことにより製造されるフィルムである。前記のフィルムは、強度等の点から、二軸延伸フィルムが特に好ましい。
【0018】
延伸方法としては、チューブラ延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸法が好ましい。逐次二軸延伸フィルムは、例えば、長手方向にポリエステルのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+30℃)で、2.0〜5.0倍に長手方向にロール延伸し、引き続き、テンターで予熱後120〜150℃で1.2〜5.0倍に幅方向に延伸する。さらに、二軸延伸後に220℃以上(融点−10℃)以下の温度で熱固定処理を行い、次いで幅方向に3〜8%緩和させることによって製造することができる。
【0019】
本発明のハードコートフィルムの150℃、30分間における熱収縮率は、0.1%以上、2%以下であり、より好ましくは0.2%以上1.8%以下、さらに好ましくは0.3%以上1.5%以下、よりさらに好ましくは、0.4%以上1.0%以下である。上記熱収縮率が0.1%未満であると、ハードコート層の影響によりカールが生じる場合がある。また、上記熱収縮率が2%を超えると、後工程として加熱処理が施される回路形成工程での寸法安定性の確保が困難になる。
【0020】
なお、二軸延伸して得られるプラスチック基材フィルムでは、長手方向と幅方向で熱収縮率が異なる場合があるが、この場合はいずれか最大の熱収縮率の値を本願発明の熱収縮率とする。
【0021】
上記熱収縮率の値は主として、主として基材となるプラスチック基材フィルムに由来する。そのため、上記要件を満たすためには、基材となるプラスチック基材フィルムの熱収縮率を上記範囲に制御することが望ましい。
【0022】
プラスチック基材フィルムの熱収縮率を上記範囲にするためには、上記範囲に適合したプラスチック基材フィルムを選択する。また、例えば、プラスチック基材フィルムとして、ポリエステルフィルムを用いる場合は、前述の熱固定処理において、緩和処理条件を適宜選択してもよい。さらに、長手方向の熱収縮率の制御するためには、上記熱固定処理において、縦弛緩処理を併用してもよい。縦弛緩処理の方法としては、製造後のプラスチック基材フィルムを、所定の温度下で所定の張力で処理することが挙げられる。ただし、本願発明は、後述する達成手段により、精度の高いカール制御が可能であるため、いわゆるオフラインでの低熱収縮化処理(例えば、熱収縮率を0.1%未満にする処理)を必ずしも行なわなくても良い。
【0023】
本発明のプラスチック基材フィルムの厚みは、下限が50μm以上、より好ましくは75μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、上限が500μm以下、より好ましくは400μm以下、さらに好ましくは350μm以下である。プラスチック基材フィルムの厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良となりやすくい。また、カールを高度に制御するための十分な剛性が得られない場合がある。一方、プラスチック基材フィルムの厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生し、コーティングの外観不良が発生し易くなる。
【0024】
プラスチック基材フィルムにハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、フィルム中に粒子を含有させて、フィルムの表面に突起を形成させることが好ましい。フィルム中に含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、架橋アクリル、架橋PMMA、ナイロン、架橋ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないほど好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。さらに、透明性の点から、屈折率が基材フィルムを構成する樹脂に近い粒子を選択することが好ましい。例えば、ポリエステルの場合には、シリカ粒子、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子などが挙げられる。また、透明基材フィルム中に、必要に応じて各種機能を付与するために、耐光剤(紫外線防止剤)、色素、帯電防止剤などを含有させてもよい。
【0025】
プラスチック基材フィルムには、本発明の目的を損なわない範囲で、コロナ放電処理、グロー放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、オゾン処理、酸またはアルカリを用いた化学薬品処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0026】
(中間層)
本発明のハードコートフィルムは、プラスチック基材フィルム上にハードコート層を積層した構成になっているが、プラスチック基材フィルムとハードコート層の密着性の向上を目的に中間層を設けることが好ましい。なお、プラスチック基材フィルム中に粒子を含有させない場合、粒子を含有する中間層をプラスチック基材フィルムの製造時に同時に設けることにより、ハンドリング性を維持しながら高度な透明性を得ることができる。
【0027】
前記中間層を構成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、プラスチック基材フィルムおよびハードコート層との密着性が良好となるように樹脂を選択することが重要である。具体的には、プラスチック基材フィルム及びハードコートを構成する樹脂がエステル系であれば、類似した構造を有するポリエステル系、ポリエステルウレタン系を選定することが好ましい。
【0028】
前記中間層には、密着性の向上、耐水性の向上を目的に架橋剤を含有させて、樹脂に架橋構造を形成させても構わない。架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系が挙げられる。特に、樹脂が高温・高湿度下での白化や強度が低下する場合には、架橋剤による効果が顕著である。なお、架橋剤を用いずに、樹脂として自己架橋性を有するグラフト共重合樹脂を用いてもよい。
【0029】
中間層には、表面に凹凸を形成させて滑り性を改善する目的で、各種の粒子を含有させてもよい。中間層中に含有させる粒子としては、例えば、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、スチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の有機粒子が挙げられる。
【0030】
さらに、中間層に各種機能を付与するために、界面活性剤、帯電防止剤、色素、紫外線吸収剤等を含有させてもよい。中間層は目的とする機能を有する場合は単層でも構わないが、必要に応じて2層以上に積層しても構わない。中間層の厚みは、目的とする機能を有すれば特に限定されるものではないが、0.01μm以上5μm以下が好ましい。厚みが薄い場合には中間層としての機能が発現しにくくなり、逆に、厚い場合には透明性が不良となりやすい。
【0031】
中間層を設ける方法としては、塗布法が好ましい。塗布法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式などの公知の塗布方法を用いて、フィルムの製造工程で塗布層を設けるインラインコート方式、フィルム製造後に塗布層を設けるオフラインコート方式により設けることができる。これらの方式のうち、インラインコート方式がコスト面で優れるだけでなく、塗布層に粒子を含有させることで、プラスチック基材フィルムに粒子を含有させる必要がなくなるため、透明性を高度に改善することができるため好ましい。
【0032】
(ハードコート層)
本発明において、ハードコート層は、プラスチック基材フィルムの片面に設けられる。ハードコート層の形成は、少なくとも紫外線硬化型物質および紫外線重合開始剤を含有する塗布液を塗布し、乾燥した後に、紫外線を照射して紫外線硬化型物質を架橋硬化させることにより行う。
【0033】
紫外線硬化型物質は、ラジカル重合系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合の混合系であってもよいが、反応速度が大きく生産性に優れるため、ラジカル重合系が特に好ましい。ラジカル重合系紫外線硬化型物質としては、不飽和モノマー、オリゴマー、樹脂又はそれらを含む組成物などが挙げられる。その具体例としては、アクリレート、ウレタンアクリレートやポリエステルアクリレート等の2官能基以上を有する多官能の紫外線線硬化型のアクリル系化合物が挙げられ、エチレングリコージ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリアリル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート等が好ましい。紫外線硬化型物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0034】
紫外線重合開始剤は、ラジカル重合系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合の混合系であってもよいが、反応速度が大きく生産性に優れるため、ラジカル重合系が特に好ましい。紫外線ラジカル重合開始剤の例として、アルキルフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類、チタノセン類、オキシ酢酸フェニル類が挙げられ、単独または2種以上混合して使用しても良い。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル-プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル-プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドおよびビスアシルフォスフィンオキサイドが含まれる。オキシ酢酸フェニル類には、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルおよび2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルが含まれる。
【0035】
紫外線重合開始剤は、紫外線硬化型物質100質量部に対して、下限が0.1質量部以上、より好ましく1質量部以上、上限が30質量部以下、より好ましくは20質量部以下の範囲で使用することができる。添加量が少なすぎるとハードコート層の硬度が不十分となる場合がある。また、多すぎると、ハードコート層が黄変したりする、ハードコート層の硬化が不十分となる場合がある。
【0036】
ハードコート層の厚みは、下限が0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、上限が50μm以下、より好ましくは30μm以下である。1μm未満では十分な表面硬度が得られない。30μm以上ではフィルム全体としての柔軟性がなくなり、ハードコート層にクラックが発生しやすくなる、ハードコート層形成直後にカールが発生する、ハードコートフィルムの熱収縮率とハードコート層の重量減率が所定の関係を満たす場合においても、加熱後に発生するカールを良好なものとすることができない、といった問題が生じる。
【0037】
本発明においてハードコート層の表面硬度は、JIS K5400に準ずる鉛筆硬度測定にて、H以上、好ましくは2H以上である。H未満では耐擦傷性が不十分である。
【0038】
紫外線重合開始剤に加えて、本発明を損なわない範囲で、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0039】
(ハードコートフィルム)
本発明においてハードコート性とは、ハードコートフィルムのハードコート層側の耐殺傷性であり、JIS 5400に準拠して測定される鉛筆硬度にて主に表記され、具体的にはH以上である。ハードコートフィルムのハードコート性は、前述の範囲でプラスチック基材フィルムの種類と厚み、ハードコート層の厚み、紫外線硬化型組成物の種類、紫外線重合開始剤の種類と添加量、紫外線照射強度を変化させることによって調整できる。
【0040】
本発明において、ハードコートフィルムの加熱処理後のカールは、後記の測定法にて0〜5mmである。この範囲から逸脱すると、回路形成工程などの熱処理が施される後工程において不具合が生じる。
【0041】
本願発明者は、高い表面硬度と高精度のカールの制御という相反する特性を高度に両立すべく、鋭意検討を行なった結果、ハードコート層に揮発成分を含有せしめ、ハードコート層の重量減率をハードコートフィルムの熱収縮率に対して特定の範囲に制御することにより、高精度にカールが制御できることを見出し、本願発明に至った。
【0042】
すわなち、カールとは熱処理温度に対して収縮性の異なる2つの材質が積層されることにより生じる。このようなカールを高度に制御するためには、2つの材質の熱収縮挙動を等しくすることが望ましい。そこで、本発明者は、プラスチック基材フィルムの熱収縮率を所与とし、ハードコート層に加熱により消滅する揮発成分を含有させた。係る揮発成分は加熱により消滅し、消滅体積分についてハードコート層の体積変化を許容しうる。そのため、ハードコート層がプラスチック基材フィルムの収縮に追随し、上記のように高精度にカールを制御することができるのである。
【0043】
理論的には、揮発性成分の消滅によるハードコート層の重量減少と、基材となるプラスチック基材フィルムの熱による寸法変化量を等しくすることで、積層間での熱による挙動が一致し、カールを極限まで抑制することができる。しかしながら、経験上、カールの発生は上記理論に加え、プラスチック基材フィルムの厚み、ハードコート層の膜厚、ハードコート層の硬度の影響を受けることがわかった。これらの要素を鑑み、上記理論と経験則により得られた結果として、本願発明において加熱処理後のカールを0〜5mmの範囲内で制御するためには、以下の関係を満足するように設定することが望ましい。ここで、ハードコートフィルムの熱収縮率をX(%)、ハードコート層の重量減率をY(%)としたとき、Yは3%以下であって、かつ以下の式(I)を満たす。
(式I) 0< Y ≦ X+0.5
【0044】
Yの上限は、上記理論によれば、Y=Xが好ましいが、上記理論と経験則から、Y≦X+0.5であれば、加熱処理後のカールを0〜5mmの範囲内で制御することが好適に可能となる。上記Yの上限は、好ましくは(X+0.4)以下であり、より好ましくは(X+0.3)以下である。ただし、Yが3より大きい場合は、重量減物質が過多であり、ハードコート層としての硬度が不十分になったり、ハードコート層に不均一な変形が生じる場合がある。また、加熱処理後のカールが0mm未満となる、などの問題が生じる。
【0045】
Yの下限は、0以上である場合には、ハードコート層がプラスチック基材フィルムの加熱による寸法変化に対応でき、加熱処理後のカールを低減の制御を好適に行なうことができる。上記Yの下限は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上である。なお、Xとの関係では、上記理論と経験則からYは(X−3)以上であると、加熱処理後のカールを0〜5mmの範囲内で制御することが好適に可能となる。
【0046】
本発明において、ハードコート層の重量減率を制御する方法は、ハードコート層の重量減要因となる揮発成分をハードコート層に存在せしめ、その添加量を調整することである。ハードコート層の重量減要因となる揮発成分は、上記関係式を満たすものであれば、特に限定されないが、低温で揮発しないものが好ましく、生産性やコストの観点から、紫外線重合開始剤、高沸点溶剤が特に好ましい。
【0047】
揮発性成分として紫外線重合開始剤を用いる場合は、上記の紫外線ラジカル重合開始剤が好適に使用でき、紫外線硬化型物質100質量部に対して、下限が0.1質量部以上、より好ましく1質量部以上、上限が30質量部以下、より好ましくは20質量部以下の範囲で使用することができる。添加量が少なすぎるとハードコート層の硬度が不十分となるだけでなく、加熱処理後のカールが大きくなる問題がある。多すぎると、ハードコート層が黄変する、ハードコート層の硬化が不十分となる、加熱処理後のカールが0mm未満となる、などの問題がある。
【0048】
また、揮発性成分として高沸点溶剤を用いる場合は、沸点が150℃以上の溶剤であることが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、N−メチルピロリドン、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、テレビン油などが挙げられる。高沸点溶剤は、紫外線硬化型物質100質量部に対して、下限が0.1質量部以上、より好ましく1質量部以上、上限が30質量部以下、より好ましくは20質量部以下の範囲で使用することができる。添加量が少なすぎると、加熱処理後のカールが大きくなる問題がある。多すぎると、ハードコート層の硬化が不十分となる、加熱処理後のカールが0mm未満となる、などの問題がある。
【0049】
ハードコートフィルムの熱収縮率を制御する方法としては、プラスチック基材フィルムの製造工程において、延伸、加熱後に、所定の温度で緩和させること、さらに、製造後のプラスチック基材フィルムを、所定の温度下で所定の張力で処理することが挙げられる。
【0050】
本発明において、ハードコートフィルムの反対面には、各種の層を形成しても良い。例えば、透明導電層、透明導電層の密着を向上させるための中間層、などが挙げられる。
【0051】
(透明導電性フィルム)
本発明において、タッチパネルへの使用を目的に、ハードコートフィルムのハードコート層の反対面に、無機導電薄膜またはπ共役系導電性高分子で構成される表面抵抗値が2000Ω以下の透明導電層が設けられる。
【0052】
無機導電薄膜は、金、銀、銅、タングステンなどの金属、酸化錫、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ビスマスなどの金属酸化物が好ましい。特に好ましくは、インジウム錫酸化物であり、これによって、より低い表面抵抗値とより高い可視光線透過率を得ることが出来る。
【0053】
無機導電薄膜の膜厚は4〜200nmの範囲が好ましく、特に好ましくは5〜100nmである。透明導電性薄膜の膜厚が4nmよりも薄い場合、連続した薄膜になりにくく良好な導電性を示しにくい傾向がある。一方、200nmよりも厚い場合、透明性が低下しやすくなる。
【0054】
無機導電薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができる。
【0055】
例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素、等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。
【0056】
π共役系導電性高分子としては、アニリン又はその誘導体、ピロール又はその誘導体、イソチアナフテン又はその誘導体、アセチレン又はその誘導体、チオフェン又はその誘導体等を主たる繰り返し単位とする高分子が挙げられる。その中でも、オフェン又はその誘導体を繰り返し単位とするポリチオフェン又はその誘導体が、着色が少ないので好ましい。
π共役系導電性高分子から構成される透明導電層を設ける方法としては、塗布法が好ましい。塗布法としては、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、カーテンコート法など従来公知の方法が挙げられる。
【0057】
本発明において、ハードコートフィルムと透明導電層の間は、各種の中間層を形成しても良い。例えば、透明導電層の密着を向上させるための中間層、加熱処理後に発生するハードコートフィルムの白化を防止する中間層などが挙げられる。
【0058】
(ハードコートフィルムの製造方法)
【0059】
紫外線硬化型物質と紫外線重合開始剤を含有する塗布液には、得られるハードコートフィルムの外観が良好となるように、所定量の有機溶剤を含有させる。有機溶剤には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0060】
また、使用する有機溶媒は、沸点が60〜180℃の範囲の溶媒を選択することが好ましい。沸点が60℃以上の有機溶媒を用いることにより、塗布時の塗布液の固形分濃度の変化を抑え、塗布厚みを安定化させることができる。180℃以下とすることにより、乾燥時に発生する熱シワによるプラスチック基材フィルムの平面性の悪化を抑制できる。
【0061】
紫外線硬化型物質と紫外線重合開始剤を含有する塗布液には、ハードコート層に反射防止能を発現させるため、シリカ(コロイド状シリカを含む)、シリコーンパウダー、マイカ、ガラスビーズ、アクリル系微粉末、中空粒子等のフィラーを含ませてもよい。この場合、フィラーは紫外線硬化性組成物100質量部に対して、0.5〜50質量部が好ましい。0.5質量部未満であると反射防止能が低下するし、50質量部を超えるとハードコート層の硬度が低下する。また、紫外線硬化型物質を含有する組成物に、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、着色剤、帯電防止剤、滑剤、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、界面活性剤、表面改質剤等の添加成分を含ませることは任意である。
【0062】
紫外線硬化型物質を含有する塗布液のプラスチック基材フィルムへの塗布方法は、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、カーテンコート法など従来公知の方法が挙げられる。これらのなかで、均一に塗布することのできるグラビアコート方式、特にリバースグラビア方式が好ましい。また、グラビアの直径は、80mm以下であることが好ましい。直径が大きい場合には流れ方向にうねスジが発生する頻度が増える。
【0063】
塗布液をプラスチック基材フィルムに塗布し、乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられるが、乾燥速度が早い熱風乾燥が好ましい。このような迅速に乾燥を行なうことにより、揮発性成分をハードコート層内に略均一に分散させたまま、ハードコート層を形成することができ、高度なカールの制御に好適である。
【0064】
塗布後の、初期の恒率乾燥の段階では、20℃以上80℃以下で、2m/秒以上30m/秒の熱風を用いて乾燥することが好ましい。初期乾燥を強く行う(熱風温度が高い、熱風の風量が大きい)場合には、泡由来の微小なコートヌケ、微小なハジキ、クラック等の塗膜の微小な欠点が発生しやすくなる。逆に、初期乾燥を弱くする(熱風温度が低い、熱風の風量が小さい)場合には、揮発性成分のハードコート層内の分布が不均一になりやすく好ましくない。
【0065】
減率乾燥の工程では、初期乾燥よりも高温とし、塗膜中の溶媒を減少させる必要があり、好ましい温度は、50℃以上200℃以下である。特に好ましくは、下限値が60℃であり、上限値は180℃である。乾燥温度が低い場合には、塗膜中の溶媒が減少しにくくなり、残留溶媒が多く存在することになるため、揮発性成分によるカールの制御が困難になったり、ハードコート層の硬度が低下する。逆に、高温の場合には、熱シワにより基材フィルムの平面性が不良となるだけでなく、加熱処理後のカールを良好なものとするハードコート層の重量減少の因子となる物質が消失する問題がある。また、乾燥炉を通過するフィルムの時間は、5秒以上180秒以下であることが好ましい。時間が短い場合には塗膜中の残留する溶媒が多くなる。一方、時間が長い場合には、生産性が不良となるだけでなく、プラスチック基材フィルムに熱シワが発生して平面性が不良となるだけでなく、加熱処理後のカールを良好なものとするハードコート層の重量減少の因子となる物質が消失する問題がある。
【0066】
紫外線の照射は、通常、塗布層側から行うが、プラスチック基材フィルムとの密着性を高めるため、プラスチック基材フィルム面側から行ってもよく、さらには、紫外線を反射し得る反射板をフィルム面側に設けてもよい。紫外線は、通常波長300〜400nmの領域にスペクトル分布を有する紫外線を発光する、高圧水銀ランプ、ヒュ−ジョンHランプ、キセノンランプなどから照射される。その照射量は下限が50mJ/m以上、より好ましくは100mJ/m以上、上限が1000mJ/m以下、より好ましくは800mJ/m以下である。照射量が小さすぎると、ハードコート層の硬度が不十分となりやすい問題がある。逆に大きすぎると、走行速度が遅く生産が劣る、また紫外線照射源からの熱によりプラスチック基材フィルムが収縮し、得られたハードコートフィルムの平面性の不良や加熱後カールの均一性が不良になるばかりか、加熱処理後のカールを良好なものとするハードコート層の重量減少の因子となる物質が消失する問題がある。紫外線照射時の雰囲気温度は、下限が0℃以上、上限が100℃である。
【0067】
乾燥炉内の張力は、下限が50N/m以上、より好ましくは100N/m以上、上限が350N/m以下、より好ましくは300N/m以下である。張力が小さすぎると、タルミが発生し、走行できなくなる問題がある。大きすぎると、走行中にプラスチック基材フィルムが長手方向に伸ばされると共に横方向に収縮し、トタン上のカールが発生する問題がある。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。本発明で使用した特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0069】
<熱収縮率>
150℃雰囲気下、ハードコートフィルムを無張力状態で30分間熱処理し、その前後のフィルムの長さを測定し、下記の式にて計算した。
熱収縮率(%)=(L0−L1)×100/L0
(L0は熱処理前の長さ、L1は加熱処理後の長さ)
【0070】
<加熱処理後のカール量>
ハードコートフィルムを縦方向に20cm、幅方向に2cm、および縦方向に2cm、幅方向に20cmの大きさに切り出し、150℃の熱風循環式オーブンで30分間放置し熱処理を行った。室温にて放置冷却後、ガラス板上に置き、ガラス面からの4隅の浮き上がり量を測定した。切り出した2つのフィルムのなかで、最大の浮き上がり量を加熱処理後のカール量とした。ハードコート層側への凸状のカールをプラス表示、凹状のカールをマイナス表示し、カール値で、下記ランク付けを行った。
○:カール値が0〜5mm
×:カール値が0mm未満、5mm以上
【0071】
<ハードコートの重量減率>
ハードコートフィルムからハードコート層を削り取り、粉末状とした。熱重量測定装置(島津製作所製TA−50)により、20℃/分の昇温速度で室温から150℃まで昇温した後、150℃に達してから30分保持したときの重量減率を求めた。
【0072】
<鉛筆硬度の測定法>
ハードコートフィルムのハードコート層の表面の鉛筆硬度を、JIS K5400に準拠して、鉛筆引っかき試験機を用いて、測定した。
【0073】
実施例1
1.基材フィルムの製造
ポリエステルフィルムの原料として、実質的に不活性微粒子を含有しておらず、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートペレットを用いた。このポリエチレンテレフタレートペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1.3hPa)した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押出した。次いで、表面温度を20℃に保った金属ロール上で、静電密着法を用いて急冷固化して、未延伸ポリエステルフィルムを得た。次に、この未延伸ポリエステルフィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱した。その後、周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0074】
次いで、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂を構成成分として含む中間層形成用塗布液を、一軸配向ポリエステルフィルムの両面にリバースコート法で塗布した。続いて、温度:65℃、相対湿度:60%、風速:15m/秒の条件で2秒間風乾し、その後、連続的に端部をクリップで把持しながら、テンターに導き、120℃に加熱し、3.7倍に横延伸し、幅固定して230℃で5秒間の熱処理を施した後、220℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚みが188μmの、両面に中間層を有する2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。最終的な中間層の乾燥塗布量は、いずれの面とも0.1g/mであった。熱収縮率は、縦方向0.8%、幅方向0.5%であった。
【0075】
2.ハードコート層の形成
下記の塗布液Aを上記の中間塗布層上に硬化後の膜厚が7μmになるよう斜線グラビアを用いてリバースで塗工し、200N/mの張力下、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、80℃で20m/秒の熱風で40秒間、炉内を通過させて乾燥した。次いで、硬化型樹脂組成物層側より高圧水銀紫外線ランプ(160W/cm)の紫外線を積算光量約300mJ/cm2 の条件で照射し、硬化処理することによって、厚さ7μmのハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを作製した。
【0076】
(塗布液A)
塗布液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Aを調整した。
・トルエン 30質量%
・メチルエチルケトン 30質量%
・紫外線硬化型樹脂 40質量%
(荒川化学社製ビームセット700、アクリレート)
・紫外線重合開始剤 2質量%
(チバ・ジャパン社製イルガキュア754)
【0077】
得られたハードコートフィルムの物性を表1に示す。表面硬度に優れ、加熱処理後のカールが良好であった。
【0078】
実施例2
実施例1において、ハードコート層の硬化後の膜厚を20μmとした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。表面硬度に優れ、加熱処理後のカールが良好であった。
【0079】
実施例3
実施例1において、基材フィルムの厚みを350μm、ハードコート層の硬化後の膜厚を30μmとした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。表面硬度に優れ、加熱処理後のカールが良好であった。
【0080】
実施例4
実施例1において、基材フィルムの厚みを350μm、紫外線硬化重合開始剤をチバ・ジャパン社製イルガキュア184で2質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。表面硬度に優れ、加熱処理後のカールが良好であった。
【0081】
実施例5
実施例1において、基材フィルムの厚みを350μm、ハードコート層の硬化後の膜厚を1μm、紫外線硬化重合開始剤をチバ・ジャパン社製イルガキュア754で6質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。表面硬度に優れ、加熱処理後のカールが良好であった。
【0082】
実施例6
実施例1において、厚みが50μmの基材フィルムを100N/mの張力にて180℃で前処理し、ハードコート層の硬化後の膜厚を1μm、紫外線硬化重合開始剤をチバ・ジャパン社製イルガキュア184で2質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコートフィルムの熱収縮率が低くなったが、表面硬度に優れ、加熱処理後のカールが良好であった。
【0083】
実施例7
実施例6において、基材フィルムの厚みを350μm、紫外線硬化重合開始剤をチバ・ジャパン社製イルガキュア2959で2質量%に変更したこと以外は実施例6と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコートフィルムの熱収縮率が低くなったが、表面硬度に優れ、加熱処理後のカールが良好であった。
【0084】
実施例8
実施例1において、横延伸後の緩和温度を200℃とし、紫外線硬化重合開始剤をチバ・ジャパン社製イルガキュア754で6質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコートフィルムの熱収縮率が大きくなったが、表面硬度に優れ、加熱処理後のカールが良好であった。
【0085】
実施例9
実施例8において、基材フィルムの厚みを350μm、ハードコート層の硬化後の膜厚を5μm、紫外線硬化重合開始剤をチバ・ジャパン社製イルガキュア184で2質量%に変更したこと以外は、実施例8と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコートフィルムの熱収縮率が大きくなったが、表面硬度に優れ、加熱処理後のカールが良好であった。
【0086】
実施例10
実施例8において、基材フィルムの厚みを350μm、ハードコート層の硬化後の膜厚を2μmに変更しN−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)を2質量%追加で添加したこと以外は、実施例8と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコートフィルムの熱収縮率が大きくなったが、表面硬度に優れ、加熱処理後のカールが良好であった。
【0087】
実施例11
実施例1で得られたハードハードコートフィルムを真空暴露するために、真空チェンバー中で巻き返し処理を行なった。このときの圧力は0.002Paであり、暴露時間は10分とした。また、センターロールの温度は40℃とした。
次に、インジウム錫酸化物からなる透明導電性薄膜を成膜した。このとき、スパッタリング前の圧力を0.0007Paとし、ターゲットとして酸化スズを5質量%含有する酸化インジウム(三井金属鉱業製、密度7.1g/cm3)を用いて、2W/cm2のDC電力を印加した。また、Arガスを130sccm、O2ガスを10sccmの流速で流し、DCマグネトロンスパッタリング法を用いて0.4Paの雰囲気下で成膜した。以上のようにして、厚さ22nmのインジウム錫酸化物からなる、表面抵抗値が250Ωの透明導電性層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0088】
比較例1
実施例1において、ハードコート層の硬化後の膜厚を0.5μmに変更した以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。加熱処理後のカールは良好であったが、膜厚が薄すぎるため、表面硬度が不足していた。
【0089】
比較例2
実施例1において、基材フィルムの厚みを38μmに変更した以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。表面硬度は良好であったが、基材フィルムが薄すぎるために、カールが大きいうえに、ハンドリング性が悪くなり、硬化型樹脂組成物を塗布し難く、外観が不良となった。
【0090】
比較例3
実施例1において、基材フィルムの厚みを600μmとした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。表面硬度とカールは良好であったが、基材フィルムが厚すぎるために、巻き癖による平面性不良となり、硬化型樹脂組成物を塗布し難く、外観が不良となった。
【0091】
比較例4
実施例1において、硬化後の膜厚を35μmとした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。表面硬度は良好であったが、ハードコード層の膜厚が厚すぎるために、カールが不良となっただけでなく、巻取り時にハードコート層にクラックが発生した。
【0092】
比較例5
実施例5において、N−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)を1質量%追加で添加したこと以外は、実施例5と同様にしてハードコートフィルムを得た。表面硬度は良好であったが、ハードコート層の重量減が大きすぎるため、加熱処理後のカールが不良となった。
【0093】
比較例6
実施例7において、紫外線硬化重合開始剤をチバ・ジャパン社製イルガキュア754で2質量%に変更したこと以外は、実施例7と同様にしてハードコートフィルムを得た。表面硬度は良好であったが、ハードコート層の重量減が大きすぎるため、加熱処理後のカールが不良となった。
【0094】
比較例7
実施例10において、N−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)を3質量%に変更したこと以外は、実施例10と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコート層の重量減が大きすぎるため、加熱処理後のカールが不良となった。
【0095】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のハードコートフィルムを各種画像表示装置の表面保護フィルムとして用いた場合、ハードコート層の硬度が優れるだけでなく、加熱処理後のカールを調整できるので、各種画像表示装置における回路形成を効率よく実施できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材フィルムの片面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、下記要件(1)〜(5)を満たすことを特徴とするハードコートフィルム。
(1) プラスチック基材フィルムの厚さが50μm以上500μm以下
(2) ハードコート層の膜厚が1μm以上30μm以下
(3) ハードコートフィルムの鉛筆硬度がH以上
(4) 150℃、30分処理後の熱収縮率が0.1%以上2%以下
(5) 下記測定方法により測定した150℃、30分処理後のカール値が0mm以上5mm以下
(測定方法)
ハードコートフィルムを縦方向に20cm、幅方向に2cm、および縦方向に2cm、幅方向に20cmの大きさに2つのフィルム試料を切り出し、150℃の熱風循環式オーブンで30分間放置し熱処理を行った。室温にて放置冷却後、プラスチック基材フィルム面を下にしてガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向での4隅の浮き上がり量を測定した。切り出した2つのフィルム試料において、最大の浮き上がり量をカール値とした。
【請求項2】
プラスチック基材フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハードコートフィルムのハードコート層の反対面に、透明導電層を形成してなることを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項4】
プラスチック基材フィルムの片面に、少なくとも紫外線硬化型物質及び紫外線重合開始剤を含む塗布液を塗布、乾燥した後に、紫外線により硬化し形成されたハードコート層を有するハードコートフィルムであり、下記要件(6)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
(6) ハードコートフィルムの150℃、30分処理後の熱収縮率をX(%)、ハードコート層の重量減率をY(%)、としたとき、Yは3%以下であって、かつ以下の式(I)を満たす
(式I) 0< Y ≦ X+0.5
【請求項5】
プラスチック基材フィルムに、少なくとも紫外線硬化型物質及び紫外線重合開始剤を含む塗布液を塗布し、乾燥温度の最大が60〜180℃かつ張力が100〜300N/mの条件で乾燥した後に、0〜100℃の温度下で紫外線により硬化したハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、以下の要件を満たすハードコートフィルムの製造方法。
(1) プラスチック基材フィルムの厚さが50μm以上500μm以下
(2) ハードコート層の膜厚が1μm以上30μm以下
(3) ハードコートフィルムの鉛筆硬度がH以上
(4) 150℃、30分処理後の熱収縮率が0.1%以上2%以下
(5) ハードコートフィルムの150℃、30分処理後の熱収縮率をX(%)、ハードコート層の重量減率をY(%)としたとき、Yは3%以下であって、かつ以下の式(I)を満たす
(式I) 0< Y ≦ X+0.5

【公開番号】特開2011−31457(P2011−31457A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179156(P2009−179156)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】