説明

ハードプラスチッククラッド光ファイバ

【課題】伝送損失やファイバ強度を悪化させることなく、湿熱特性に優れたハードプラスチッククラッド光ファイバを提供する。
【解決手段】コア1と、その外周に設けられたクラッド層3とを備えたハードプラスチッククラッド光ファイバ6であって、該クラッド層の外周に紫外線硬化性樹脂で形成された水蒸気遮断層5を有する。また該水蒸気遮断層が平板状フィラーを含む。さらに上記クラッド層の外周に多層構造の被覆層を備え、該多層構造の被覆層を構成する層の少なくとも1層が上記水蒸気遮断層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードプラスチッククラッド光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの一種に、ハードプラスチッククラッド光ファイバと呼ばれるものがある。このハードプラスチッククラッド光ファイバは、例えば、純シリカなどの石英系ガラスからなる直径200μm程度のコアガラスと、該コアガラスを中心としてその外周上に設けられた紫外線硬化型フッ化アクリレート樹脂などのフッ素系樹脂からなる厚み15μm程度のクラッド層とからなるハードプラスチッククラッドファイバ素線の外周に、さらにエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素系熱可塑性樹脂からなる樹脂被覆層を押出被覆して設けて心線化したものであり、通常外径は0.5mm前後から0.9mm程度である。
このハードプラスチッククラッド光ファイバは、機械的強度が高く、光コードとして、これにコネクタを装着することにより、局内光配線などの短距離伝送用として使用されている。
【0003】
通常、ハードプラスチッククラッド光ファイバの作製は、線引機で石英系ガラス母材を溶融線引きして光ファイバのコアガラスを形成した後、前記コアガラスの外周に、コーティングダイス等によってクラッド層となる紫外線硬化型フッ化アクリレート樹脂などのフッ素系樹脂液を塗布し、紫外線を照射して硬化することにより、まず、ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線が形成される(素線化工程)。
そして、作製されたハードプラスチッククラッド光ファイバ素線は、押出機によりエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素系熱可塑性樹脂からなる樹脂被覆層を被覆することにより、ハードプラスチッククラッド光ファイバとされる(心線化工程)。
【0004】
このように、現行のハードプラスチッククラッド光ファイバは、コアとプラスチッククラッド層からなる素線をETFEなどの樹脂被覆層によって保護する構造を有している。しかし、該樹脂被覆層は透湿性が高いため、高温高湿の環境下で長期間使用した場合には、コア、プラスチッククラッド層又はコアとプラスチッククラッド層の界面にまで浸透した水蒸気等の水分や、水分により運ばれる物質によって、伝送損失の増加やファイバ強度の低下という問題が生じる。
【0005】
一方、光ケーブル等の技術分野においては、被覆層からの水蒸気の浸透を防御する方法として、いくつかの方法が提案されている。例えば特許文献1では、水中で使用する光ファイバケーブルについて、ファイバ心線に遮水層となるポリ塩化ビニリデンを塗布することで水分の流入を阻止している。特許文献2では、遮水性フィルムを介在させることによってハードプラスチック光ケーブルの遮水性を改良している。特許文献3では、高吸水性ポリマーを含む吸水性樹脂組成物を光ファイバケーブル用のテープ状遮水材として使用している。特許文献4では、ガラスに蒸着したカーボンコートにより水分の浸入を防止した光ファイバが開示されている。したがって、これらの方法を適用することによってハードプラスチッククラッド光ファイバに遮水性を付与することが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−126511号公報
【特許文献2】特開昭62−184411号公報
【特許文献3】特開2005−129351号公報
【特許文献4】特開平2−88446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で使用されているポリ塩化ビニリデンは、高温では十分機能しないという難点があり、特許文献2の方法では、遮水性フィルムの隙間から水蒸気が浸透することが懸念される。また特許文献3で使用されている吸水性樹脂組成物は吸収量に限界があり、特許文献4のようにカーボンを蒸着させる方法は、ハードプラスチッククラッドファイバへの適用が難しい。またLAPケーブルのように、ケーブル外被からの透湿を防止する手段として、外被の内面に薄いアルミテープを接着した構造を適用することも考えられるが、ハードプラスチッククラッド光ファイバのような細径コードへの適性は低く、アルミテープの隙間からの水蒸気浸透や誘導電流、コスト高の問題も生じ得る。
そのため、これらの方法を適用してハードプラスチッククラッド光ファイバの遮水性を改善することは困難である。
【0008】
本発明は、従来のハードプラスチッククラッド光ファイバにおける上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、伝送損失やファイバ強度を悪化させることなく、湿熱特性に優れたハードプラスチッククラッド光ファイバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、紫外線硬化性樹脂を用いた水蒸気遮断層をクラッド層の外周に形成することにより上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のハードプラスチッククラッド光ファイバは以下の通りである。
【0010】
(1) コアと、その外周に設けられたクラッド層とを備えたハードプラスチッククラッド光ファイバであって、該クラッド層の外周に紫外線硬化性樹脂で形成された水蒸気遮断層を有することを特徴とするハードプラスチッククラッド光ファイバ。
(2) 前記水蒸気遮断層が平板状フィラーを含むことを特徴とする上記(1)記載のハードプラスチッククラッド光ファイバ。
(3) 前記水蒸気遮断層は、前記クラッド層の外周に備えられた多層構造の被覆層の内の少なくとも1層であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のハードプラスチッククラッド光ファイバ。
(4) 前記多層構造の被覆層の最内層以外の何れかの層が前記水蒸気遮断層であることを特徴とする上記(3)記載のハードプラスチッククラッド光ファイバ。
(5) 前記多層構造の被覆層の最外層が前記水蒸気遮断層であることを特徴とする上記(4)記載のハードプラスチッククラッド光ファイバ。
(6) 前記水蒸気遮断層の水蒸気透過率が、85℃、85%RHの高温高湿下において4.0g/day・m以下であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のハードプラスチッククラッド光ファイバ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紫外線硬化性樹脂を用いた水蒸気遮断層をクラッド層の外周に形成することとしたため、伝送損失やファイバ強度を悪化させることなく、湿熱特性に優れたハードプラスチッククラッド光ファイバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のハードプラスチッククラッド光ファイバの一例を示す概略断面図である。
【図2】ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線の製造方法の一実施形態を示す概略図である。
【図3】ハードプラスチッククラッド光ファイバ心線の製造方法の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のハードプラスチッククラッド光ファイバについて、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係るハードプラスチッククラッド光ファイバの一実施形態を示す断面概略図である。
ハードプラスチッククラッド光ファイバ6は、石英系ガラスからなるコア1の外周に、紫外線硬化型樹脂からなるクラッド層3を備え、更にその外周に被覆層5を備える。コア1とクラッド層3は、ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4を形成する。
被覆層5は紫外線硬化性樹脂で形成された水蒸気遮断層を含み、単層であっても多層構造であってもよい。単層の場合は、被覆層5自体が水蒸気遮断層である。多層構造の場合は、水蒸気遮断層を1層又はそれ以上含んでいる。
【0014】
(1)ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線
ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4は、コア1とクラッド層3から形成される。
コア1は、純シリカなどの石英系ガラスからなり、その寸法は、例えば200μm、300μm、400μmの径のものが一般的であるが、これには限定されない。
クラッド層3を形成する紫外線硬化型樹脂は、機械的強度があり、可撓性を有し、かつ透明性に優れた硬化物が得られる樹脂であることが求められる。そのような樹脂としては、フッ素原子含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物、フッ素化されたポリエーテルを構造中に有する(メタ)アクリレート化合物、フッ素化されたポリエーテルを構造中に有する(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート化されたフッ素原子含有ビニル重合体、光重合開始剤から構成される樹脂組成物等を挙げることができる。これらの紫外線硬化型樹脂には、コア1のガラスとの密着性を確保するため、シランカップリング剤を0.1〜3質量%配合することが好ましい。
クラッド層3の厚みは、ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4の仕様にもよるが、例えば15μm〜25μm程度である。またコア1の屈折率(n)とクラッド層3の屈折率(n)は、n>nの関係にある。これは、光伝搬時に光をコア1内に閉じこめるためである。
【0015】
(2)被覆層
被覆層5は、単層の水蒸気遮断層であってもよいし、水蒸気遮断層を1層以上含む多層構造の層であってもよい。
水蒸気遮断層は、紫外線硬化性樹脂に平板状フィラーを混合し、硬化して形成される。このように紫外線硬化性樹脂平板状フィラーを混合することによって、水蒸気が透過しにくい構造となり低透湿性が得られる。また水蒸気遮断層は、機械的強度があり、可撓性を有することが求められる。さらにクラッド層3と被覆層5との界面を形成する場合は、被覆除去性に優れることが求められる。
【0016】
そのような樹脂としては、フッ素原子含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物、フッ素化されたポリエーテルを構造中に有する(メタ)アクリレート化合物、フッ素化されたポリエーテルを構造中に有する(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート化されたフッ素原子含有ビニル重合体、光重合開始剤から構成される樹脂組成物等を挙げることができる。本発明で用いられるフッ素原子含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、例えば、フッ素原子含有(メタ)アクリレート化合物とジイソシアネート化合物を反応させることにより得ることができる。また、ポリエーテルを分子構造中に有するフッ素原子含有(メタ)アクリレート化合物は、例えば、フッ素原子含有(メタ)アルコール化合物と、フッ素原子含有(メタ)アクリレート化合物またはアクリル酸とを反応させることによって得ることができる。その他、例えばN−ビニルカプロラクタムなどの重合性不飽和モノマーや、下記光重合開始剤、各種添加剤など、ハードプラスチッククラッド光ファイバ心線のクラッド層の形成材料として通常用いられるものを使用することができ、これらの化合物と前記記載のフッ素原子含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物、及び/又はフッ素化されたポリエーテルを構造中に有する(メタ)アクリレート化合物を適宜混合して紫外線硬化樹脂液となし、本樹脂液に紫外線を照射して水蒸気遮断層を製造する形態が好ましい。樹脂液の塗布方法は、ダイスコーティング方式とすることが好ましい。
これらの紫外線硬化性樹脂で用いる光重合開始剤としては公知の光重合開始剤を用いることができるが、配合した後の貯蔵安定性が良いものが好ましい。このような光重合開始剤の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等を挙げることができる。
【0017】
水蒸気遮断層の厚みは、水蒸気遮断層が単層の被覆層5を形成する場合は135μm程度である。一方、水蒸気遮断層が多層構造の被覆層5を構成する層のうちの一層である場合は、その多層構造の積層数にもよるが、5μm以上であることが好ましい。また水蒸気透過率は、85℃、85%RHの高温高湿下において4.0g/day・m以下であることが好ましい。水蒸気透過率をこの範囲とすることで、浸透した水分による伝送損失の増加やファイバ強度の低下をより有効に抑制することができる。
【0018】
水蒸気遮断層は、平板状フィラーを含むことが好ましい。ここで「平板状」とは、アスペクト比(長辺と短辺の比率)が2以上のものをいう。平板状フィラーとしては、例えばアスペクト比が20〜30のフッ素金雲母(トピー工業株式会社製)を挙げることができる。その他、モンモリロナイト、ベントナイト、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等が挙げられるがこれには限定されない。水蒸気遮断層において、これらの平板状フィラーが長手方向を一定の方向に揃えて樹脂中に分散することによって、外部からの水分の浸透を遮断する壁を形成し、いわゆる「迷路効果」が得られる。
平板状フィラーの添加量は、樹脂100質量部に対して5〜90質量部であることが好ましい。この範囲の添加量とすることで、紫外線硬化性樹脂の硬化を阻害することなく、遮水効果がより有効に得られる。
【0019】
被覆層5が水蒸気遮断層を含む多層構造の場合、特に水蒸気遮断層に平板状フィラーを含む場合は、最内層以外が水蒸気遮断層であること(第一の形態)また、第一の形態の中で最外層が水蒸気遮断層であること(第二の形態)が好ましい。第一の形態では、水蒸気遮断層とクラッド層3との間に上記の紫外線硬化性樹脂等で形成された別の樹脂層が介在して水蒸気遮断層とクラッド層3が直に接することがないので、平板状フィラーがクラッド層3に傷をつけることを抑制できる。第二の形態では、フィラーを含む層が最外層にあるので、よりクラッド層3に傷をつけにくく、また、最外層に水蒸気遮断層があるので、より水蒸気の浸入(クラッド層3への到達)を防ぎやすい。
なお、多層構造の被覆層5において、水蒸気遮断層以外の層は、水蒸気遮断層と同様に上記の紫外線硬化性樹脂で形成された層であってもよいし、またエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素系熱可塑性樹脂の層であってもよい。
【0020】
次に、本発明のハードプラスチッククラッド光ファイバ6について、まずその素線4の製造方法の態様を以下に例示するが、ここに示した製造方法には限定されない。
図2は、ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4の製造方法の一実施形態を示す概略図である。
まず、図2に示すように、線引炉11内に石英系ガラス母材12を収め、常法により溶融紡糸して、石英系ガラスからなるコア1を得る。このコア1を引き続き冷却筒14に送り、この冷却筒14に導入される冷却ガスのヘリウムによって冷却する。次いで、冷却されたコア1をコーティングダイス15に導入して、ここでクラッド層3となる紫外線硬化型フッ化アクリレート樹脂などのフッ素系樹脂液を塗布する。次いで、フッ素系樹脂液が塗布されたコア1を紫外線照射装置16に導入して紫外線を照射し、このフッ素系樹脂液を硬化させ、ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4が得られる。なお、通常はこの後の工程で被覆層5を形成するが、この工程において、続けて被覆層5となる紫外線硬化性樹脂を塗布・硬化させても良く、この樹脂には、平板状フィラーが含まれていても良い。また被覆層5が多層の場合は、この工程においてクラッド層3の外側に被覆層5の最内層となる透明ウレタンアクリレート樹脂等の樹脂液を塗布・硬化させ、該最内層を形成することとしても良い。
【0021】
次に、ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4の外周面に被覆層5を設けて心線化する製造方法の態様を以下に例示するが、ここに示した製造方法には限定されない。
図3は、ハードプラスチッククラッド光ファイバ6の製造方法、即ちハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4を心線化する製造工程の一実施形態を示す概略図である。係る心線化工程は、図3に示すように、まず、供給リール20からハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4を繰り出し、サプライダンサー21を通してこれをコーティングダイス22に導入し、被膜層5(単層の場合は、水蒸気遮断層)となる紫外線硬化性樹脂の樹脂液を塗布する。この樹脂には、平板状フィラーが含まれていてもよい。また被膜層5が多層構造の場合は、コーティングダイス(不図示)がさらに連結される。そして、樹脂液が塗布されたハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4を紫外線照射装置23に導入して紫外線を照射し、樹脂液を硬化させて、ハードプラスチッククラッド光ファイバ6が得られる。次いで、巻取りダンサー24を通して巻き取り、リール25に巻き取られる。なお被膜層5が多層構造の場合は、コーティングダイス22以降の作業が適宜繰り返される。
なお、多層構造の被膜層5に、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素系熱可塑性樹脂の層が含まれる場合は、ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4に熱可塑性樹脂組成物を押出被覆して樹脂層を形成することができる。具体的には、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を押し出し機で押し出すことによってハードプラスチッククラッド光ファイバ素線4の外周に塗布した後、冷却水槽内で冷却して樹脂被覆層5を硬化させる。
【実施例】
【0022】
以下に本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらに
よって限定されるものではない。
【0023】
上述した製造方法に基づき、図1に示すハードプラスチッククラッド光ファイバを作製した。作製したハードプラスチッククラッド光ファイバの仕様は、コア径;200μm、クラッド径;230μm、ファイバ径;500μmとした。
実施例1及び比較例1〜3は、被覆層が単層である。実施例2は、被覆層が水蒸気遮断層を含む多層構造である。クラッド層を形成する樹脂はフッ素系樹脂ウレタンアクリレートを用いた。
【0024】
実施例1:水蒸気遮断層に平板状フィラー(フッ素金雲母:トピー工業株式会社製)を樹脂100質量部に対して50質量部添加した。UV硬化性樹脂としては、汎用光ファイバ用のセカンダリ被覆用樹脂(ウレタンアクリレート)を用いた。
実施例2:被覆層を2層とし、外側の水蒸気遮断層に平板状フィラー(フッ素金雲母:トピー工業株式会社製)を樹脂100重量部に対して70質量部添加した。UV硬化性樹脂としては、実施例1と同じ汎用光ファイバ用のセカンダリ被覆用樹脂を用いた。
比較例1:被覆層の樹脂をエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)とした。
比較例2:被覆層の樹脂を実施例1と同じUV硬化性樹脂とし、フィラーを添加せずに被覆した。
比較例3:平板でないフィラーを樹脂100重量部に対して50質量部添加した実施例1と同じUV硬化性樹脂により被覆した。
【0025】
実施例1、2及び比較例1〜3のハードプラスチッククラッド光ファイバについて、水蒸気透過率、伝送損失増、強度維持率を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
水蒸気透過率:透湿カップ法にて測定した。測定環境は85℃、85%RHである。
伝送損失増:85℃、85%RHの条件下で30日間劣化試験を行い、劣化試験後に増加した伝送損失の値を算出し、損失の増加が1dB/km以下のものを合格(○、△)とし、外れたものを×とした。伝送損失は850nmにおけるカットバック法により測定した。
強度維持率:85℃、85%RH条件下で30日間劣化試験を行い、劣化試験前後に測定した引張試験による強度値により算出した。
【0026】
【表1】

【0027】
被覆層が単層の実施例1、被覆層が多層構造の実施例2ともに、水蒸気透過率4.0g/day・m以下である水蒸気遮断層を被覆層に含む構造の場合は、伝送損失、強度維持率共に良好な結果となった。
一方、被覆層にフィラーを含まなかったり、フィラーを含んでいても平板では無く、水蒸気透過率4.0g/day・mを超える比較例1〜3では、伝送損失、強度維持率ともに、実施例に比べ悪化した。
【符号の説明】
【0028】
1…コア、3…クラッド層、4…ハードプラスチッククラッド光ファイバ素線、5…被覆層、6…ハードプラスチッククラッド光ファイバ、11…線引炉、12…ガラス母材、14…冷却筒、15, 22…コーティングダイス、16, 23…紫外線照射装置、20…供給リール、21…サプライダンサー、24…巻取りダンサー、25…リール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、その外周に設けられたクラッド層とを備えたハードプラスチッククラッド光ファイバであって、
該クラッド層の外周に紫外線硬化性樹脂で形成された水蒸気遮断層を有することを特徴とするハードプラスチッククラッド光ファイバ。
【請求項2】
前記水蒸気遮断層が平板状フィラーを含むことを特徴とする請求項1記載のハードプラスチッククラッド光ファイバ。
【請求項3】
前記水蒸気遮断層は、前記クラッド層の外周に備えられた多層構造の被覆層の内の少なくとも1層であることを特徴とする請求項1又は2記載のハードプラスチッククラッド光ファイバ。
【請求項4】
前記多層構造の被覆層の最内層以外の何れか層が前記水蒸気遮断層であることを特徴とする請求項3記載のハードプラスチッククラッド光ファイバ。
【請求項5】
前記多層構造の被覆層の最外層が前記水蒸気遮断層であることを特徴とする請求項4記載のハードプラスチッククラッド光ファイバ。
【請求項6】
前記水蒸気遮断層の水蒸気透過率が、85℃、85%RHの高温高湿下において4.0g/day・m以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のハードプラスチッククラッド光ファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−37642(P2012−37642A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176154(P2010−176154)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】