説明

ハーネス製造装置と電線ジョイント部の処理方法及びワイヤハーネス

【課題】ワイヤハーネスの電線ジョイント部の絶縁防水処理を効率的に低コストで行わせる。
【解決手段】電線11〜13,16,19を支持する複数の布線具3を布線台2に設けたハーネス製造装置で、絶縁キャップ28及び/又はシール材30を入れる収容部27を有する絶縁防水処理具261〜263を布線台に配置し、絶縁防水処理具で電線11〜13のジョイント部81〜83,81’〜83’を絶縁防水する。複数の絶縁防水処理具261〜263をジョイント部の大きさに応じてグループ分けして配置した。絶縁防水処理具を布線台2に着脱自在とした。ジョイント部を形成するためのジョイント装置39,49を布線台に配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布線台上でワイヤハーネスの電線ジョイント部を絶縁防水処理するハーネス製造装置と電線ジョイント部の処理方法及びそれらによって製造されたワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来のハーネス製造装置とそれを用いた電線ジョイント方法の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
このハーネス製造装置32は、複数の布線台33を斜めに配置した状態でゆっくりと搬送させつつ、布線台上の複数の布線具34に複数本の電線35を布線してワイヤハーネス36を形成させるものであり、布線台33を跨いでジョイント装置39が配置され、ジョイント装置39は布線台33の上方に溶着機37を有し、溶着機37はアーム31で支持されてアーム31に沿って昇降可能で、アーム31は布線台33と共に搬送方向に移動可能である。
【0004】
作業者は、布線台上に布線された所要の電線同士の端末部を皮剥きした状態でその芯線部を溶着機37にセットし、溶着機37の一対の電極の間で抵抗溶接によりジョイントさせる。溶着機37を支持したアーム31は布線台33の突部にシリンダ38で係止した状態で布線台33と一体的に移動し、ジョイント(溶着)が完了した時点でシリンダ38と突部との係止が解除され、次(隣接)の布線台33’がアーム31の下に搬送される。
【0005】
布線具34は、U字状や櫛歯状等の電線支持部と、電線支持部を支持する支柱と、支柱を布線台33にねじ止め固定する固定部とで構成されている。複数本の電線が布線された後、あるいは布線されつつ、上記ジョイント処理が行われ、保護チューブ39やクリップやグロメット等の部品が電線35に装着され、電線35がテープで集束されてワイヤハーネス36が完成する。
【0006】
ジョイント処理は二本ないしそれ以上の電線を相互に接続させるためのものであり、それによって複数本の電線が同電位で通電可能となり、給電やアース等が少ない電線数や電線長で効率的に行われる。ジョイント処理を行う各電線の端末は予め皮剥きされている。
【0007】
電線のジョイント部には後工程で絶縁防水処理が施される。電線端末や電線中間部のジョイント部は例えば合成樹脂製の絶縁キャップ内に挿入され、その状態で絶縁樹脂が絶縁キャップ内に注入される。
【0008】
図10は電線ジョイント方法の一例を示すものであり(特許文献2参照)、ワイヤハーネスの幹線部41から分岐された複数本の電線42と他の複数本の電線43とが上下の電極44の間で加圧されつつ通電されて溶着する。各電線42,43の端末部は予め皮剥きされて芯線42a,43aが露出される。
【0009】
図11は従来の電線ジョイント部の処理方法の一例を示すものであり(特許文献3参照)、熱収縮チューブ45の前端の開口をホットメルト接着剤46で塞ぎ、熱収縮チューブ内に電線端末のジョイント部47を挿入すると共にシーリング剤としてのブチルゴム48を注入して、加熱炉(図示せず)で熱収縮チューブ45を収縮させて、ジョイント部47の絶縁防水を図る。
【特許文献1】特開2001−67954号公報(第4〜6頁、図1)
【特許文献2】特公平7−3762号公報(第2頁、図2)
【特許文献3】特開平11−178144号公報(第2頁、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のハーネス製造装置(図9)にあっては、布線台33上で電線35をジョイントさせた後、別工程で電線ジョイント部の絶縁防水処理を行うために、絶縁防水処理工程にワイヤハーネスを搬送したり、絶縁防水処理工程の段取りを行ったりしなけれなばらず、ワイヤハーネスの製造に多くの工数を必要とした。また、上記従来の電線ジョイント部の処理方法(図11)にあっては、熱収縮チューブ45を加熱炉に通す時間や、加熱炉の設備コスト等がかかり、ジョイント部の絶縁防水構造が高コスト化するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑み、電線ジョイント部の絶縁防水処理を効率的に低コストで行うことのできるハーネス製造装置と電線ジョイント部の処理方法及びそれらによって形成されるワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るハーネス製造装置は、電線を支持する複数の布線具を布線台に設けたハーネス製造装置において、絶縁キャップ及び/又はシール材を入れる孔部を有する絶縁防水処理具が前記布線台に配置され、該絶縁防水処理具で電線のジョイント部が絶縁防水されることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、複数本の絶縁被覆電線を所要形態に布線する布線台上で電線のジョイント部の絶縁防水処理が行われる。絶縁防水処理は全ての電線の布線が完了した後又は布線途中において行われる。ジョイント部は、複数本の電線の芯線部を相互に溶着させたものや、芯線部に金属製の導電パイプやジョイント端子を圧着やスウェージング加工で固着させたもの等である。絶縁キャップを用いる場合は、絶縁キャップを絶縁防水処理具の収容部内に収容し、絶縁キャップ内にシール材を注入し、電線のジョイント部を挿入する。又は絶縁キャップ内に電線のジョイント部を挿入し、シール材を注入する。絶縁キャップを用いない場合は、絶縁防水処理具の収容部内にシール材を注入し、電線のジョイント部を挿入する。又は収容部内に電線のジョイント部を挿入し、シール材を注入する。ジョイント部は電線の端末に形成されたものでも、電線の中間部に形成されたものでもよい。
【0014】
請求項2に係るハーネス製造装置は、請求項1記載のハーネス製造装置において、複数の前記絶縁防水処理具が前記ジョイント部の大きさに応じてグループ分けして配置されたことを特徴とする。
【0015】
上記構成により、小さなジョイント部は第一のグループの絶縁防水処理具、大きなジョイント部は第二のグループの絶縁防水処理具というように、各大きさの収容部をもつ絶縁防水処理具に作業者が簡単にジョイント部を収容することができる。電線のジョイント部はジョイント部の大きさ(外径)毎に布線台上でグループ分けして配置されることが好ましく、その場合、大きなジョイント部の近くに大きな収容部の絶縁防水処理具が配置され、小さなジョイント部の近くに小さな収容部の絶縁防水処理具が配置される。
【0016】
請求項3に係るハーネス製造装置は、請求項1又は2記載のハーネス製造装置において、前記絶縁防水処理具が前記布線台に着脱自在に配置されたことを特徴とする。
【0017】
上記構成により、絶縁防水処理具を布線台から離脱させた状態で絶縁防水処理具内の絶縁キャップ又は収容部内にシール材注入機でシール材が注入され、シール材注入済みの絶縁防水処理具が布線台に装着され、絶縁キャップ又は収容部内に電線のジョイント部が挿入される。シール材注入機は布線台とは別に配置することが好ましいが、布線台上に配置することも可能である。各絶縁防水処理具を並べた状態でシール材注入機でシール材が次々に効率良く注入される。
【0018】
請求項4に係るハーネス製造装置は、請求項1〜3の何れかに記載のハーネス製造装置において、前記ジョイント部を形成するためのジョイント装置が前記布線台に配設されたことを特徴とする。
【0019】
上記構成により、布線台上のジョイント装置で電線の端末又は中間部のジョイント部が形成され、次いで布線台上でジョイント部の絶縁防水処理が行われる。ジョイント処理と絶縁防水処理とは同じ布線台上で行うことが好ましいが、例えば絶縁防水処理を行う一つ前の布線台上でジョイント処理を行うことも可能である。
【0020】
請求項5に係る電線ジョイント部の処理方法は、布線台に設けた複数の布線具で電線を支持するハーネス製造装置を用い、絶縁キャップ及び/又はシール材を入れる収容部を有する絶縁防水処理具を前記布線台に配置し、該布線台上で電線のジョイント部を絶縁防水することを特徴とする。
【0021】
上記構成により、複数本の絶縁被覆電線を所要形態に布線する布線台上で電線のジョイント部の絶縁防水処理が行われる。絶縁防水処理は全ての電線の布線が完了した後又は布線途中において行われる。ジョイント部は、複数本の電線の芯線部を相互に溶着させたものや、芯線部に金属製の導電パイプやジョイント端子を圧着やスウェージング加工で固着させたもの等である。絶縁キャップを用いる場合は、絶縁キャップを絶縁防水処理具の収容部内に収容し、絶縁キャップ内にシール材を注入し、電線のジョイント部を挿入する。又は絶縁キャップ内に電線のジョイント部を挿入し、シール材を注入する。絶縁キャップを用いない場合は、絶縁防水処理具の収容部内にシール材を注入し、電線のジョイント部を挿入する。又は収容部内に電線のジョイント部を挿入し、シール材を注入する。ジョイント部は電線の端末に形成されたものでも、電線の中間部に形成されたものでもよい。
【0022】
請求項6に係る電線ジョイント部の処理方法は、請求項5記載の電線ジョイント部の処理方法において、複数の前記絶縁防水処理具を前記ジョイント部の大きさに応じてグループ分けして配置し、各サイズの該ジョイント部をグループ別に前記布線台に支持させることを特徴とする。
【0023】
上記構成により、小さなジョイント部は第一のグループの絶縁防水処理具、大きなジョイント部は第二のグループの絶縁防水処理具というように、各大きさの収容部をもつ絶縁防水処理具に作業者が簡単にジョイント部を収容することができる。電線のジョイント部はジョイント部の大きさ(外径)毎に布線台上でグループ分けして配置されることが好ましく、その場合、大きなジョイント部の近くに大きな収容部の絶縁防水処理具が配置され、小さなジョイント部の近くに小さな収容部の絶縁防水処理具が配置される。
【0024】
請求項7に係る電線ジョイント部の処理方法は、請求項5又は6記載の電線ジョイント部の処理方法において、前記絶縁防水処理具を前記布線台から離脱させた状態で前記シール材を注入し、該シール材の注入後に該絶縁防水処理具を前記布線台に装着することを特徴とする。
【0025】
上記構成により、絶縁防水処理具を布線台から離脱させた状態で絶縁防水処理具内の絶縁キャップ又は収容部内にシール材注入機でシール材が注入され、シール材注入済みの絶縁防水処理具が布線台に装着され、絶縁キャップ又は収容部内に電線のジョイント部が挿入される。シール材注入機は布線台とは別に配置することが好ましいが、布線台上に配置することも可能である。各絶縁防水処理具を並べた状態でシール材注入機でシール材が次々に効率良く注入される。
【0026】
請求項8に係るワイヤハーネスは、請求項1〜4の何れかに記載のハーネス製造装置又は請求項5〜7の何れかに記載の電線ジョイント部の処理方法によって製造されたことを特徴とする。
【0027】
上記構成により、請求項1〜7の何れかに記載の発明の作用効果を奏して、低コストなワイヤハーネスが完成する。
【発明の効果】
【0028】
請求項1,5記載の発明によれば、一つの布線台上で電線の布線とジョイント部の絶縁防水処理とを同時に又は順に行うことができるから、従来のようにジョイント部の絶縁防水処理を別工程で行う必要がなく、電線の布線作業とジョイント部の絶縁防水処理作業との間の時間が短縮され、且つ絶縁防水処理工程へのワイヤハーネスの搬送が不要となって、ワイヤハーネスの生産性が向上すると共に製造コストが低減される。
【0029】
請求項2,6記載の発明によれば、作業者が各ジョイント部の大きさに合った絶縁防水処理具を簡単に選択することができ、絶縁防水処理具へのジョイント部の収容作業が容易化・時間短縮され、ワイヤハーネスの生産性が一層向上すると共に製造コストが一層低減される。
【0030】
請求項3,7記載の発明によれば、各絶縁防水処理具を布線台から外した状態で各絶縁防水処理具内に一括してシール材を注入することができるから、シール材注入作業が容易化・迅速化し、且つ別段取りでシール材注入を行うことで、布線台上での各ジョイント部の絶縁防水処理が少ない時間で効率良く行われる。
【0031】
請求項4記載の発明によれば、電線のジョイント処理を行った後、直ぐに同じ布線台上であるいは隣の布線台上でジョイント部の絶縁防水処理を連続して行うことができるから、電線の端末又は中間部の処理が迅速に効率良く行われ、ワイヤハーネスの生産性が一層向上すると共に製造コストが一層低減される。
【0032】
請求項8記載の発明によれば、電線ジョイント部の絶縁防水処理を効率良く行った低コストなワイヤハーネスが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は、本発明に係るハーネス製造装置と電線ジョイント部の処理方法及びそれらによって形成されるワイヤハーネスの一実施形態を示すものである。
【0034】
このハーネス製造装置1は、布線台2と、布線台2の表面に立設された複数の布線具3と、布線台2を跨いで配置されたジョイント装置39と、布線台2の表面に配置された複数の絶縁防水処理具26(261〜263)とを備えるものである。
【0035】
布線台2上でワイヤハーネス18の幹線部16から上下に複数のジョイント用の電線(分岐線)11〜13が分岐され、各電線11〜13の端末部はジョイント装置39の溶着機37でジョイント接続されている。ジョイント装置39は図9の従来例と同様のもので、アーム31と溶着機37と係止用のシリンダ38とを有している(詳細は図9の説明を参照)。
【0036】
各電線11〜13はジョイント部である溶着部81〜83の外径すなわちジョイントする芯線部の径に応じて複数のグループ(本例では三グループ)に分けて布線される。本例では各電線11〜13を二本ずつないしそれ以上の本数毎に同じ布線具31〜33で支持している。布線具3(31〜33)は従来同様のUフォーク等である。ジョイント用の電線11〜13は必ずしも布線具3で支持しなくてもよい。
【0037】
図1においてワイヤハーネス18の幹線部16の上側で中央の電線19を境に右側に小径の溶着部(ジョイント部)82を有する電線12が布線され、左側に大径の溶着部(ジョイント部)81を有する電線11が布線され、幹線部16の下側に中径の溶着部(ジョイント部)83を有する電線13が各布線具31〜33に布線されている。
【0038】
なお、小径〜大径の溶着部8(81〜83)を有する各電線11〜13の配置やグループの数は図1の例に限るものではなく、要は溶着部8の外径毎に各電線が布線台2上で分類(島化)されていればよい。
【0039】
布線台2は図板とも呼ばれ、各電線11〜13,16,19の布線位置や布線順等を布線台2の表面に図示したものであり、溶着部8の径に応じてグループ分けされる電線(分岐線)11〜13は布線台2の表面に色別や長さ等が表示され、作業者はその表示に従って各種電線11〜13を布線する。
【0040】
布線台2には、電線11〜13のグループ毎に各溶着部(ジョイント)部81〜83に対応した数の絶縁防水処理具261〜263が島分け配置されている。図2に示す如く、各絶縁防水処理具261〜263はグループ毎に相互に接しないし近接して並列に配置され、図1の布線台2の表面上に固定手段(図示せず)で着脱自在になっている。固定手段としては、例えば各絶縁防水処理具26のブロック部の下端に突設した鍔部をクランプで押圧固定する等の手段を用いることができる。
【0041】
図2において、各絶縁防水処理具26のブロック部(符号26で代用)にはキャップ収容孔(収容部)27が下向きに設けられ、各収容孔27に合成樹脂製の各絶縁キャップ28が挿入され、各絶縁キャップ28内に例えば図3のシール材注入機29で流動性のシール材(樹脂材)30が注入され、次いで図2の如く電線(便宜上符号11で図示する)での溶着部8が絶縁キャップ28内に挿入される。
【0042】
図3のシール材注入機29は図1の布線台2とは別に布線台2の近くに配置されることが好ましく、この場合、絶縁防水処理具26内の絶縁キャップ28(図2)にシール材30を注入した後、作業者が絶縁防水処理具26を布線台2上に移動させて固定手段で固定する。
【0043】
図4に示す如く、シール材注入機29のノズル31に対して各絶縁防水処理具261〜263をグループ毎に整列した状態でXY方向移動自在なテーブル等で進退させつつ順番にノズル31からシール材30を注入したり、あるいはシール材注入機29のノズル31を含むヘッド部40を卓上型三軸ロボット等でXYZ方向に進退させつつシール材30を注入するようにすることも可能である。ヘッド部40の形状は図3の形態のものに限らない。
【0044】
なお、図1で布線台2上にシール材注入機29を配置することも可能である。シール材注入機29のノズルを含むヘッド40を布線台2上でXYZ方向に移動自在とすれば、絶縁防水処理具26内の絶縁キャップ28に電線溶着部8を挿入した後、シール材30を注入することも可能である。
【0045】
図1の例では、各絶縁防水処理具261〜263内の絶縁キャップ28にシール材30(図3)を注入した後、図5(図1の要部説明図)の如く、布線台上に各絶縁防水処理具261〜263をグループ毎に配置し、電線11〜13の溶着部81〜83をグループ毎に各絶縁防水処理具261〜263の絶縁キャップ28内に挿入する。図5で左上の溶着部81は大径のもの、右上の溶着部82は小径のもの、右下の溶着部83は中径のものである。絶縁キャップ28の径は各溶着部81〜83の大きさに応じて異なることが好ましい。各溶着部8の数や外径等は回路形態に応じて適宜設定される。
【0046】
シール材30(図3)としては二,三分で固化する樹脂材が好ましい。ウレタン材や発泡性の樹脂材等も使用可能である。必ずしも硬化しなくとも、流動性や粘着性がなくなるものであれば使用可能である。何れも絶縁性のものであることは言うまでもない。
【0047】
図6は参考例として、ブロック本体51に開閉式のカバー52を備えた絶縁防水処理具26’を示すものである(本出願人が提案済み)。ブロック本体51とカバー52とでブロック部が構成され、ブロック部に垂直なキャップ収容孔(収容部)27’が設けられ、収容孔27’の上部開口に、絶縁キャップ28(図2)の開口と電線外周とに密着する弾性パッキン53が装着され、収容孔27’の底部にばねで上向きに付勢された押圧ピン54が設けられ、カバー52は係止手段55でブロック本体51に係止される。
【0048】
この絶縁防水処理具26’は発泡性のシール材30を用いる場合に特に有効である。図2に示すブロック部(26)にキャップ収容孔27をあけただけの簡易的な絶縁防水処理具26も使用可能であることは言うまでもない。
【0049】
図1において、各絶縁防水処理具261〜263内のシール材注入済みの各絶縁キャップ28に電線11〜13の各溶着部81〜83を挿入し、数分放置してシール材30を固化させた後、各絶縁キャップ28を絶縁防水処理具261〜263から取り出して、電線溶着部81〜83の絶縁防水処理済みのワイヤハーネス18が完成する。
【0050】
なお、図2の絶縁防水処理具26において絶縁キャップ28を用いずに収容孔(収容部)27に直接、電線溶着部8とシール材30(図3)を入れて、シール材30を固化させた状態で外部に直接露出した絶縁防水部とすることも可能である。
【0051】
図7は、本発明に係るハーネス製造装置と電線ジョイント部の処理方法及びそれらによって形成されるワイヤハーネスの他の実施形態を示すものである。
【0052】
このハーネス製造装置1’は、図1の製造装置1と較べて電線ジョイント部を溶着ではなく導電パイプ81’〜83’をスウェージング加工することで形成させるものであり、スウェージング機7を含むジョイント装置49を備えたものである。説明の便宜上、上記図2〜図6におけるジョイント部である溶着部8を導電パイプ8’と呼称して図2〜図6を流用する。
【0053】
ハーネス製造装置1’は、布線台2と、布線台2の表面に立設される複数の布線具3と、布線台2の上方に配置されるXY方向のレール4,5と、レール4に沿ってスライド自在に設けられたバランサ6と、バランサ6で昇降自在に支持されたジョイント接続用のスウェージング機(加締機)7とを備えたものである。
【0054】
図8に示す如く、スウェージング機7は、回転鍛造により、導電金属製のパイプ(筒状体)8’を径方向に叩いて均一に圧縮して(加締めて)、パイプ内の各電線の端末の芯線部9を相互に強く密着接続させるものである。詳細構造においては後述する。
【0055】
図7において、布線台2にはスウェージング機7をセットするための受け台10が手前側に設けられている。バランサ6は市販のエア式や電動式のもので、本例ではエアー式のホイストタイプのものを使用している。なお、スウェージング機7の加締主体部(スウェージング機7の前半部部分)を布線台2上に常時配置し、加締主体部を駆動する駆動部(スウェージング機7の後半部分)を分離して床置きすることも可能である。これらの構成は別件で提案済である。
【0056】
図7の例では、バランサ6のスイッチ部14を作業者がオンして軽力でスウェージング機7を昇降自在であり、スウェージング機7をワイヤ15で吊り下げて空中に停止させた状態で布線台上に各電線11〜13,16,19を布線する。
【0057】
スウェージング機7を受け台10に載置し、所要の電線11〜13の端末の芯線部を金属製の導電パイプ81’〜83’に挿入し(パイプを芯線部に外挿し)、導電パイプ81’〜83’を芯線部と共にスウェージング機7の中心の孔部内に挿入する。この状態で電動式のスウェージング機7のスイッチ17をオンしてスウェージング機7を作動させ、導電パイプ81’〜83’を径方向に均一に圧縮させつつ導電パイプ内に各電線13の芯線部を圧着させる。
【0058】
布線台上でワイヤハーネス18の幹線部16から上下に複数のジョイント用の電線(分岐線)11〜13が分岐され、各電線11〜13は使用する導電パイプ81’〜83’の径すなわちジョイントする芯線部の径に応じて複数のグループ(本例では三グループ)に分けて各布線具31〜33に布線される。ジョイント用の電線11〜13は布線具3で支持してもしなくてもよい。
【0059】
図7においてワイヤハーネス18の幹線部16の上側で中央の電線19を境に右側に小径の導電パイプ82’を用いる電線12が布線され、左側に大径の導電パイプ81’を用いる電線11が布線され、幹線部16の下側に中径の導電パイプ83’を用いる電線13が布線されている。小径〜大径の導電パイプ81’〜83’を使用する各電線11〜13の配置やグループの数は図7の例に限るものではなく、要は使用する導電パイプ8’の種類毎に各電線が布線台上で分類(島化)されていればよい。布線台2上においてジョイント用の電線11〜13のグループ毎に、導電パイプ81’〜83’を収容した部品箱20が配置されている。
【0060】
作業者は部品箱20から所要の導電パイプ81’〜83’を取り出して電線11〜13の芯線部に外挿し、その状態でスウェージング機7内に挿入する。あるいは、導電パイプ81’〜83’をスウェージング機7内に挿入した後、電線11〜13を導電パイプ内に挿入する。そして、スウェージング機7を作動させてジョイントを行う。
【0061】
前記実施形態と同様に、布線台2の表面上には、電線11〜13のグループ毎に各ジョイント部に対応した数の絶縁防水処理具261〜263が島分け配置されている。上記図2の如く、各絶縁防水処理具261〜263は相互に接しないし近接して並列に配置され、図7の布線台2の表面上に固定手段で着脱自在になっている。固定手段としては、例えば絶縁防水処理具261〜263のブロック部の下端に突設した鍔部(図示せず)をクランプ(図示せず)で押圧固定する等の手段を用いることができる。
【0062】
前記図2と同様に、各絶縁防水処理具26のブロック部(符号26で代用)にはキャップ収容孔(収容部)27が下向きに設けられ、各収容孔27に合成樹脂製の各絶縁キャップ28が挿入され、各絶縁キャップ28内に例えば前記図3のシール材注入機29で流動性のシール材(樹脂材)30が注入され、次いで前記図2の如く電線11のジョイント部である導電パイプ8’が絶縁キャップ28内に挿入される。
【0063】
シール材注入機29は図7の布線台2とは別に布線台2の近くに配置されることが好ましく、この場合、絶縁防水処理具内の絶縁キャップ28にシール材30を注入した後、作業者が絶縁防水処理具26を布線台2上に移動させて固定手段(図示せず)で固定する。
【0064】
前記図4と同様に、シール材注入機29のノズル31に対して各絶縁防水処理具261〜263をグループ毎に整列した状態でXY方向移動自在なテーブル等で進退させつつ順番にノズル31からシール材30(図3)を注入したり、あるいはシール材注入機29のノズル31を含むヘッド部40を卓上型三軸ロボット等でXYZ方向に進退させつつシール材30を注入することも可能である。
【0065】
なお、図7で布線台2上にシール材注入機29(図3)を配置することも可能である。シール材注入機29のノズル31を含むヘッド40を布線台2上でXYZ方向に移動自在とすれば、絶縁防水処理具261〜263内の絶縁キャップ28(図2)に電線ジョイント部である加締められた導電パイプ81’〜83’を挿入した後、シール材30(図3)を注入することも可能である。
【0066】
図7の例では、各電線11〜13の端末に導電パイプ81’〜83’をスウェージング加工で圧着した後、各絶縁防水処理具261〜263内の絶縁キャップ28(図2)にシール材30(図3)を注入し、あるいは、各電線11^13の端末に導電パイプ81’〜83’をスウェージング加工で圧着すると同時に又はその前に、各絶縁防水処理具内の絶縁キャップ28にシール材30を注入して、前記図5(図2の要部説明図)と同様に、布線台2上に各絶縁防水処理具261〜263をグループ毎に配置し、電線ジョイント部である加締められた導電パイプ81’〜83’をグループ毎に各絶縁防水処理具261〜263の絶縁キャップ28内に挿入する。導電パイプ81’〜83’はスウェージング加工でほぼ真円に圧縮加工されているから、絶縁キャップ内に引っ掛かりなくスムーズに挿入される。
【0067】
図5で左上の電線11のジョイント部として使用する導電パイプ81’は大径のもの、右上の電線12のジョイント部として使用する導電パイプ82’は小径のもの、右下の電線13のジョイント部として使用する導電パイプ83’は中径のものである。ジョイント部としての各導電パイプ81’〜83’の数や外径等は回路形態に応じて適宜設定される。
【0068】
シール材30(図3)としては二,三分で固化する樹脂材が好ましい。ウレタン材や発泡性の樹脂材等も使用可能である。必ずしも硬化しなくとも、流動性や粘着性がなくなるものであれば使用可能である。何れも絶縁性のものであることは言うまでもない。
【0069】
図7の実施形態においても、図6の参考例として示したブロック本体51に開閉式のカバー52を備えた絶縁防水処理具26’を使用することが可能である。
【0070】
図7において、各電線11〜13のジョイント部として導電パイプ81’〜83’をスウェージング加工で装着した後、絶縁防水処理具261〜263内のシール材注入済みの絶縁キャップ28(図2)に電線ジョイント部である加締め済みの導電パイプ81’〜83’を挿入し、数分放置してシール材30(図3)を固化させ、絶縁キャップ28を絶縁防水処理具261〜263から取り出して、電線ジョイント部の絶縁防水処理済みのワイヤハーネス18’が完成する。
【0071】
なお、前記図2の絶縁防水処理具26において絶縁キャップ28を用いずに収容孔(収容部)27に直接、電線ジョイント部である加締め済みの導電パイプ8’とシール材30を入れて、シール材30を固化させた状態で外部に直接露出した絶縁防水部とすることも可能である。
【0072】
また、図7において、一種類の電線11の端末に導電パイプ81’をスウェージング加工で圧着した後、直ぐに絶縁防水処理具261内のシール材注入済みの絶縁キャップ28ないし収容孔27内に電線ジョイント部である加締め済みの導電パイプ81’を挿入し、次いで他の電線12の端末に導電パイプ82’をスウェージング加工で圧着した後、直ぐに絶縁防水処理具262内のシール材注入済みの絶縁キャップ28ないし収容孔27内に電線ジョイント部である加締め済みの導電パイプ82’を挿入し、という動作を繰り返し行って、ジョイント部の絶縁防水処理をすることも可能である。
【0073】
図8はスウェージング機の一形態を示すものであり、このスウェージング機7はロータリスウェージング機と呼ばれ、円筒形の導電パイプ8’の外周面に接する複数のダイス21と、ダイス21に固定された外側のハンマ22と、ハンマ22の外側のカム面22aに接するローラ23と、ローラ23の外周面に接するリング24と、ダイス21に固定されたスピンドル25と、スピンドル25を回転駆動させるモータと(図示せず)で構成されている。
【0074】
モータの駆動でスピンドル25が回転すると、ダイス21とハンマ22が矢印A方向に一体に回転し、ハンマ22の山型のカム面22aの頂部がローラ23に接した時にダイス21が矢印Bの如く内向きに閉じて導電パイプ8’を径方向に叩き(圧縮し)、カム面22aの裾部がローラ23に接しつつダイス21が遠心力で矢印Cの如く外側に開く。この動作が短いピッチで繰り返されて、電線11〜13の芯線部9と導電パイプ8’が周方向に均一に加締められる。
【0075】
導電パイプ8’の径が大きく異なる場合は、例えばダイス21とハンマ22の固定位置(径方向長さ)を調整することで、導電パイプ径の相違に容易に対応することができる。導電パイプ8’の径差があまり大きくない場合は調整なしで加締可能である。電線11〜13の芯線部9は導電パイプ8と共に径方向に圧縮変形して小径化される。
【0076】
上記ダイス等は四等配に設けられているが、ダイス等の数は適宜設定可能である。また、スウェージング機7の構成は図8の例に限らず、例えば各一対のダイスとハンマとをサイドライナに沿って径方向にスライド自在とし、ハンマのカム面を上記例同様に外側のローラで押接させるようにすることも可能である。これらスウェージング機の構成は本出願人が特開2002−198155で提案済である。
【0077】
なお、加締機としてスウェージング機7に代えて既存の端子加締用の圧着機(図示せず)を用いることも可能である。圧着機は一対の加締型を有し、加締型は内面に突部を有し、一対の加締型が電動モータや油圧等で閉じ方向に付勢されることで、加締型内の導電パイプ8’が加締型の内面にならって圧縮変形され、導電パイプ内の電線11〜13の芯線部9をジョイントさせる。
【0078】
また、図1,図7の各実施形態においては、複数の布線台2を移動式に配置したが、例えば布線台2を一枚のみとして、布線台上で各電線11〜13,16,19の布線とジョイント処理と電線ジョイント部8,8’の絶縁防水処理を行わせることも可能である。
【0079】
また、図1の実施形態において、布線台2上での電線11〜13のジョイント処理を廃除し、ジョイント処理は例えば一つ前の布線台2上で行わせたり、あるいは布線台2とは別の工程で行わせることも可能である。同様に、図7の実施形態において、スウェージング加工による導電パイプ8’の圧着を例えば一つ前の布線台2上で行わせたり、あるいは布線台2とは別の工程で行わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係るハーネス製造装置と電線ジョイント部の処理方法及びワイヤハーネスの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のハーネス製造装置と電線ジョイント部の処理方法で使用する絶縁防水処理具の一形態を示す斜視図である。
【図3】絶縁防水処理具内にシール材を注入するシール材注入機の一形態を示す斜視図である。
【図4】シール材注入機で絶縁防水処理具内にシール材を注入する方法の一例を示す平面図である。
【図5】図1のハーネス製造装置における絶縁防水処理具の配置の一例を示す平面図である。
【図6】絶縁防水処理具の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るハーネス製造装置と電線ジョイント部の処理方法及びワイヤハーネスの他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】電線のジョイントに使用するスウェージング機の一形態を示す要部正面図である。
【図9】従来のハーネス製造装置と電線ジョイント方法の一形態を示す斜視図である。
【図10】従来の電線ジョイント方法の他の形態を示す斜視図である。
【図11】従来の電線ジョイント部の処理方法の一形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1,1’ ハーネス製造装置
2 布線台
3,31〜33 布線具
1〜83 溶着部(ジョイント部)
1’〜83’ 導電パイプ(ジョイント部)
11〜13,16,19 電線
18,18’ ワイヤハーネス
261〜263 絶縁防水処理具
27 収容孔(収容部)
28 絶縁キャップ
30 シール材
39,49 ジョイント装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を支持する複数の布線具を布線台に設けたハーネス製造装置において、絶縁キャップ及び/又はシール材を入れる収容部を有する絶縁防水処理具が前記布線台に配置され、該絶縁防水処理具で電線のジョイント部が絶縁防水されることを特徴とするハーネス製造装置。
【請求項2】
複数の前記絶縁防水処理具が前記ジョイント部の大きさに応じてグループ分けして配置されたことを特徴とする請求項1記載のハーネス製造装置。
【請求項3】
前記絶縁防水処理具が前記布線台に着脱自在に配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載のハーネス製造装置。
【請求項4】
前記ジョイント部を形成するためのジョイント装置が前記布線台に配設されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のハーネス製造装置。
【請求項5】
布線台に設けた複数の布線具で電線を支持するハーネス製造装置を用い、絶縁キャップ及び/又はシール材を入れる収容部を有する絶縁防水処理具を前記布線台に配置し、該布線台上で電線のジョイント部を絶縁防水することを特徴とする電線ジョイント部の処理方法。
【請求項6】
複数の前記絶縁防水処理具を前記ジョイント部の大きさに応じてグループ分けして配置し、各サイズの該ジョイント部をグループ別に前記布線台に支持させることを特徴とする請求項5記載の電線ジョイント部の処理方法。
【請求項7】
前記絶縁防水処理具を前記布線台から離脱させた状態で前記シール材を注入し、該シール材の注入後に該絶縁防水処理具を前記布線台に装着することを特徴とする請求項5又は6記載の電線ジョイント部の処理方法。
【請求項8】
請求項1〜4の何れかに記載のハーネス製造装置又は請求項5〜7の何れかに記載の電線ジョイント部の処理方法によって製造されたことを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−103143(P2007−103143A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290837(P2005−290837)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】