説明

ハーネス配策構造

【課題】ハーネス配策構造は、ハーネスを所望の通りに配策しつつ保護すること、ハーネスを支持する蟻装部品の着脱作業に際してハーネスの着脱作業に順序を決めてハーネスを保護することにある。
【解決手段】艤装部品(3)は、該艤装部品(3)自体を取り付けて固定するための締結部(5)を有するとともに、締結部(5)の側方にベルトクランプ部材(6)を取り付けるための取付部(7)を有している。ベルトクランプ部材(6)は、クランプ部(13)に艤装部品(3)の取付部(7)に当接するガイド部(16・17)を備えるとともに、該ベルトクランプ部材(6)の長手方向に沿ってベルト部(11)から外れる外方に延出部(18)を備え、この延出部(18)を艤装部品(3)の締結部(5)の上方にかかるよう配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハーネス配策構造に係り、特に艤装部品の周辺に配索されるハーネスをベルトクランプ部材によって艤装部品に固定するハーネス配策構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジン等の艤装部品においては、電気機器に接続するハーネスを、その周辺で所定経路で配索するとともに、ベルトクランプ部材によって固定している。
このベルトクランプ部材は、ベース部でベル卜部とクランプ部とを一体にして構成されている。クランプ部は、ハーネスを配策するための取り付け作業で、この作業を迅速にするために設けられ、必要最小限の大きさとし、取り付けるだけの機能を有している。また、ベル卜部は、複数存在する場合に、配策されるハーネスの延出方向に沿って離間させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開1999−4526号公報
【特許文献2】特開1998−9445号公報
【特許文献3】特開2003−134647号公報
【0004】
特許文献1に係るワイヤーハーネス取付構造は、ワイヤーハーネスの幹線部の分岐部の少なくとも1ヶ所以上に、留め具を設けたものである。
特許文献2に係る線材の結束具は、ベルト部に、長手方向に延びるスリットと、このスリットによって互いに接近・離間可能な一対の分割ベルト部と、この分割ベルト部に形成された嵌合突起とを設けたものである。
特許文献3に係るクランプおよびその取付構造は、クランプが固定体とクランプ本体とを備え、固定体に対してクランプ本体が回動され、固定体にクランプを組み付けたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来、ベルトクランプ部材において、複数のベル卜部は、配策されるハーネスの延出方向に沿って離間されているが、その離間された寸法以上に一体型のベルトクランプ部材のベース部を延出させてはいなかった。また、クランプ部は、ハーネスを配策するために取り付ける作業を迅速にするために設けられており、取り付けるための必要最小限の機能しかなく、特に、回り止め機能等はあまり重要な機能ではなく、積極的に機能を向上して利用するまでは行われておらず、ベース部に新たな役割を持たせるまでに至ってなかった。
また、従来のベルトクランプ部材では、基本的に汎用性を最優先させるため、最小限の大きさと、取付機能しか与えていなかったので、例えば、艤装部品の防盗性を向上させるためには、新たな構造部品等を別途に設ける必要があった。
更に、車両に搭載するハーネスは、車両の走行やエンジンの運転により振動を受けるので、堅固に保持しないと振れて周辺部品と接触し易くなり、この接触によって異音が発生したり、磨耗によって破損したりする可能性があるので、周辺部品との接触を避ける必要があった。
また、従来、図4に示すように、ベルトクランプ部材101は、ベース部102と、単一のベルト部103と、クランプ部104とが一体になって構成されているものがある。この場合、クランプ部104では、該クランプ部104と艤装部品であるシリンダヘッドカバー105の取付部(取付穴)106のガタにより左右方向や上下方向に回転して、ハーネス107の経路が安定しなかった。従って、周辺部品とのクリアランスが狭い場所にハーネス107をレイアウトすると、周辺部品とハーネス107が干渉してしまう不具合があった。
更に、図5に示すように、シリンダヘッドカバー105を締結する取付ボルト108の上をハーネス107が通るレイアウトにおいて、クランプ部104ではハーネス107が取付ボルト108と接触して損傷したり、取付ボルト108を締め付けた時に、工具109にてハーネス107が傷つけられる懸念があるので、ハーネス107を良質の外装材110にて保護しなければならなかった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、ハーネスを所望の通りに配策しつつ保護すること、ハーネスを支持する艤装部品の着脱作業に際してハーネスの着脱作業に順序を決めてハーネスを保護するハーネス配策構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ハーネスの周囲に巻回する複数のベル卜部とクランプ部とを一体にしたベルトクランプ部材を設け、このベルトクランプ部材を艤装部品に取り付けるハーネス配策構造において、前記艤装部品は、該艤装部品自体を取り付けて固定するための締結部を有するとともに、この締結部の側方に前記ベルトクランプ部材を取り付けるための取付部を有し、前記ベルトクランプ部材は、前記クランプ部に前記艤装部品の取付部に当接するガイド部を備えるとともに、該ベルトクランプ部材の長手方向に沿って前記ベルト部から外れる外方に延出部を備え、この延出部を前記艤装部品の締結部の上方にかかるよう配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明のハーネス配策構造は、ハーネスを所望の通りに配策しつつ保護でき、また、ハーネスを支持する艤装部品の着脱作業に際してハーネスの着脱作業に順序を決めてハーネスを保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1はベルトクランプ部材の斜視図である。(実施例)
【図2】図2はベルトクランプ部材でハーネスを固定した状態の斜視図である。(実施例)
【図3】図3はベルトクランプ部材でハーネスを固定した状態の拡大斜視図である。(実施例)
【図4】図4は従来においてベルトクランプ部材でハーネスを固定した状態の斜視図である。(従来例)
【図5】図5は従来において工具がハーネスに接触する状態を示す斜視図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、ハーネスを所望の通りに配策しつつ保護すること、ハーネスを支持する艤装部品の着脱作業に際してハーネスの着脱作業に順序を決めてハーネスを保護する目的を、ベルトクランプ部材は、クランプ部に艤装部品の取付部に当接するガイド部を備えるとともに、該ベルトクランプ部材の長手方向に沿ってベルト部から外れる外方に延出部を備え、この延出部を艤装部品の締結部の上方にかかるよう配設して実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。
図2、図3において、1は車両に搭載されるエンジン、2はシリンダヘッド、3はシリンダヘッドカバーである。シリンダヘッドカバー3は、樹脂製であって、車両1の艤装部品である。
シリンダヘッドカバー3は、外周のフランジ部4に該シリンダヘッドカバー3自体をシリンダヘッド3へ取り付けて固定するための複数の締結部5を有するとともに、これら締結部5の側方かつ近傍位置にベルトクランプ部材6を取り付けるための取付部(取付穴)7を有している。締結部5には、シリンダヘッドカバー3のフランジ部4をシリンダヘッド3に固定するための取付ボルト8が取り付けられる。
【0012】
ベルトクランプ部材6は、図1、図2に示すように、ベース部9と、ハーネス10の周囲に巻回する複数のベル卜部として、例えば、2個の一側ベル卜部11・他側ベル卜部12と、クランプ部13とを一体に構成している。一側ベル卜部11・他側ベル卜部12は、一側ハーネス用孔14・他側ハーネス用孔15を備え、ベース部9の両端部位で上方に向かって配置されている。クランプ部13は、ベース部9の中央部位で下方に向かって配置され、シリンダヘッドカバー3の取付部7に係合して取り付けられる。
また、ベルトクランプ部材6は、図1に示すように、クランプ部13でシリンダヘッドカバー3の取付部7に当接するガイド部として、一対の一側ガイド部16・他側ガイド部17をクランプ部13の両側で備えるとともに、該ベルトクランプ部材6の長手方向に沿ってベルト部としての一方の一側ベルト部11から外れる外方に延出部18を備え、この延出部18をシリンダヘッドカバー3の締結部5の上方にかかるよう配設している。この延出部18は、水平方向で板状に形成されている。
ハーネス10は、図2、図3に示すように、保護チューブ等の外装材19を備えている。また、ハーネス10は、ベース部9と平行で一側ベル卜部11・他側ベル卜部12の一側ハーネス用孔14・他側ハーネス用孔15に挿着される直線部20と、この直線部20の一側ベル卜部11側の曲り部21と、この曲り部21に連設して直線部20の方向と略直交する方向に延びる側方部22とを形成している。
【0013】
つまり、一対の一側ガイド部材16・他側ガイド部材17の両外側に一対の一側ベル卜部11・他側ベル卜部12を配設し、その一側ベル卜部11・他側ベル卜部12をハーネス10の直線部20の周囲に巻回することによって、ベース部9の他方の面側にハーネス10の直線部20を保持可能とする。また、このベルトクランプ部材6の長手方向に沿って一側ベル卜部11から外れる外方に延出部18を設け、そして、この延出部18をシリンダヘッドカバー3の締結部5を覆うように締結部5の上方にかかるよう配設している。このように、一側ベル卜部11の外側かつベース部9の延長上に延出部18を設けているので、一側ベル卜部11の長さを利用して、延出部18の長さを短くし、コンパクトにしつつ、これら一側ベル卜部11と延出部18とによって、締結部5を覆うことが可能となる。
【0014】
上記のような構造により、一側ガイド部16・他側ガイド部17によってベルトクランプ部材6の姿勢が安定するので、ハーネス10の配策経路が安定し、周辺各部との様々な干渉がなくなるとともに、外観も向上する。また、シリンダヘッドカバー3の締結部5との干渉もなく、ハーネス10の外装材19を簡素に済ませることができ、ハーネス10をベルトクランプ部材6によって固定したままでの作業を防止することにより、工具による傷つきを防止できるので、外装材19を簡素に済ませることができる。
【0015】
また、図1に示すように、ベルトクランプ部材6は、該ベルトクランプ部材6の長手方向に沿って板状に延びるベース部9を設け、このベース部9の一方の面の中央にクランプ部13を設け、このクランプ部13の両外側に一側ガイド部16・他側ガイド部17を一対の縦壁として設け、これら一対の一側ガイド部16・他側ガイド部17の両外側かつベース部9の他方の面側にハーネス10の直線部20を保持可能とするようにベル卜部としての一側ベル卜部11を設け、この一側ベル卜部11の外側かつベース部9の延長上に延出部18を設けている。一対の縦壁としての一側ガイド部16・他側ガイド部17は、シリンダヘッドカバー3の取付部7に当接される。そして、クランプ部13と一側ガイド部16・他側ガイド部17とが協働してベルトクランプ部材6を艤装部品であるシリンダヘッドカバー3に安定して取り付けるので、この確実な固定によって締結部5の被覆も確実に行える。
このような構造により、板状のベース部9の二つの面で、ハーネス10の直線部20を保持する側の面と、締結部5に対する保護及びクランプする面とを分けることにより、ハーネス10を保護しつつ、納まり良く配策できる。また、ベルトクランプ部材6の延出部18を含むベース部9全長にわたってハーネス10の直線部20の下方に納められるので、外観も向上できる。更に、2つの一側ベル卜部11・他側ベル卜部12が互いに離れるので、ハーネス10の直線部20の保持が安定し、しかも、この一側ベル卜部11・他側ベル卜部12を介して延出部18を設けているので、冗長に延出させる必要がなく、全体をコンパクトにできる。
【0016】
更に、工場における組み立てでは、艤装部品であるシリンダヘッドカバー3を含むエンジン1の車両への搭載と、ハーネス10の車両への搭載とは別々に行われる。よって、シリンダヘッドカバー3の取付ボルト8の締結によるシリンダヘッド2への固定作業と、ハーネス10のベルトクランプ部材6の組付作業とは、全く別な工程で行われる。また、搭載後に行われるハーネス10のベルトクランプ部材6の組付作業が後に行われるので、搭載前におけるシリンダヘッドカバー3の締結による固定作業をベルトクランプ部材6が阻害することはない。
一方、サービス作業では、ハーネス10のベルトクランプ部材6の取外作業を先に行う必要があり、シリンダヘッドカバー3を脱離する取外作業は、後になる。
【0017】
この結果、この実施例においては、図3に示すように、シリンダヘッドカバー3の取付部7のガタでベルトクランプ部材6が回転しないように、取付部7の両側を挟みこむ形状の一側ガイド部16・他側ガイド部17を設け、そして、この一側ガイド部16・他側ガイド部17が回転抑止用の縦壁となりベルトクランプ部材6が回転しないようになるので、ハーネス経路が安定し、周辺部品と干渉することを解消できる。
また、取付ボルト8からハーネス10を保護するように、クランプ座面を延長し、取付ボルト8の上を覆うような形状の延出部18を設け、この延出部18が干渉防止用の壁となり、ハーネス10の曲り部21が取付ボルト8と接触することを回避できるので、外装材19を簡素にできる。
更に、取付ボルト8の真上をハーネス10が通るレイアウトにおいて、上記の機能としての、ベルトクランプ部材6が回転しない機能及びハーネス10が取付ボルト8に接触しない機能を併せ持ったベルトクランプ部材6を採用することにより、確実に取付ボルト8の上をベルトクランプ部材6が保護できる構造となる。これにより、取付ボルト8の締め付け時には、ベルトクランプ部材6がない状態でないと工具を入れることができないため、ハーネス10が工具によって傷つけられることを回避できる。
【0018】
なお、この発明においては、シリンダヘッドカバーを固定する取付ボルトからハーネスを保護する事例を挙げたが、例えば、各種コントローラやカーナビゲーションシステムを取り付ける取付ボルトに、上記の構造を適用すれば、ハーネスが邪魔で簡単に取付ボルトを取り外すことが困難になるので、盗難防止に役立つものである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明に係るハーネス配策構造を、エンジンの他に、他の動力機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 エンジン
2 シリンダヘッド
3 シリンダヘッドカバー
4 フランジ部
5 締結部
6 ベルトクランプ部材
7 取付部
8 取付ボルト
9 ベース部
10 ハーネス
11 一側ベルト部
12 他側ベルト部
13 クランプ部
16 一側ガイド部(縦壁)
17 他側ガイド部(縦壁)
18 延出部
19 外装部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーネスの周囲に巻回する複数のベル卜部とクランプ部とを一体にしたベルトクランプ部材を設け、このベルトクランプ部材を艤装部品に取り付けるハーネス配策構造において、前記艤装部品は、該艤装部品自体を取り付けて固定するための締結部を有するとともに、この締結部の側方に前記ベルトクランプ部材を取り付けるための取付部を有し、前記ベルトクランプ部材は、前記クランプ部に前記艤装部品の取付部に当接するガイド部を備えるとともに、該ベルトクランプ部材の長手方向に沿って前記ベルト部から外れる外方に延出部を備え、この延出部を前記艤装部品の締結部の上方にかかるよう配設したことを特徴とするハーネス配策構造。
【請求項2】
前記ベルトクランプ部材には、該ベルトクランプ部材の長手方向に沿って板状に延びるベース部を設け、このベース部の一方の面に前記クランプ部を設け、前記クランプ部の両外側に前記ガイド部を一対の縦壁として設け、これら一対のガイド部材の両外側かつ前記ベース部の他方の面側にハーネスを保持可能とするように前記ベル卜部を一対に設け、前記ベル卜部の外側かつ前記ベース部の延長上に前記延出部を設けていることを特徴とする請求項1に記載のハーネス配策構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−125103(P2012−125103A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275866(P2010−275866)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】