説明

バイアス印加したボロメータ検出器を備える電磁波検出装置およびその赤外線検出への適用

本電磁波検出装置は、検出した放射線が表すそれぞれの電流(Im)を供給する放射線(IR)検出画素(10)と、前記画素と接続し、前記画素(10)が供給する電流を伝送する列(12)と、伝送列(12)と接続し、前記画素(10)が供給する電流を処理する電気モジュール(14)とを備える。各画素(10)は、ボロメータ検出器(20)へのバイアス電圧印加手段(22)に直列接続しているボロメータ検出器(20)を含む検出回路(18)を備え、伝送列(12)から処理モジュールが(14)に供給される電流を調節する。装置はさらに、ボロメータ検出器(20)へバイアス電流を印加し、伝送列(12)から処理電気モジュール(14)に供給される電流を調節するバイアス電流印加回路(34)を有し、前記バイアス電流印可回路(34)は、検出回路(18)とは異なり、ボロメータ検出器(20)とバイアス電圧印加手段(22)との間に位置する検出回路(18)の点(36)でボロメータ検出器(20)に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波検出装置およびその赤外線検出のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、赤外線イメージセンサの使用による赤外線検出に関してより明確に説明しているが、これ以外の可視放射線または紫外線などの放射線の検出分野にも適用できる。
【0003】
本発明は特に、検出した放射線が表す電流を供給する少なくとも1つの放射線検出画素を備える電磁波検出装置であって、画素がバイアス電圧印加手段に直列接続したボロメータ検出器を備える検出回路を有する検出装置に適用される。
【0004】
図1はこのような装置を概略的に示しており、この場合はスキャン機能を持つ赤外線イメージセンサである。これと同様の具体例が仏国特許公報第FR2848666号にも開示されている。
【0005】
一般にこの装置は、行列配置した画素というセンサ行列を備えている。図1には、簡略化のために画素10のみを示している。この画素は、1つの画素列全体に共通の電流を伝送する伝送列12に接続している。この伝送列12は、対象となる列の画素から連続的に供給され列12から伝送される電流を処理するモジュール14に接続し、各画素が電磁波IRを検出することによって行列画像を表示する。この処理モジュール14は、列の下の回路16内にある。
【0006】
さらに正確には、モジュール14が実行する処理は、積分器接続を介して画素10から受け取った電流を積分することである。積分結果は電圧の形で出される。したがって、画素10が供給する情報を含んでいるのはこの電圧である。次にこの電圧は、検出装置の行列の全画素に関連する全電圧を順に取得するバスに送られる。次に、画素に関連するこの一連の値はビデオアンプに伝送され、検出した電磁波が表す画像を再構築して表示する。
【0007】
画素10は、電磁波を検出する電気回路18を有するセンサである。赤外線撮像の場合、この検出回路18は一般に、トランジスタ22に直列接続している非冷却型のマイクロボロメータ検出器20を有し、トランジスタはこのマイクロボロメータ検出器20にバイアス電圧を印加する。トランジスタ22は一般に、電界効果を有するMOS型トランジスタであり、さらに正確には図1の例に示すn型で、マイクロボロメータ検出器20から供給される電流を取得して処理することができるように電圧発生器に搭載される。
【0008】
実際マイクロボロメータ検出器20は、構成材料の一部によって電気抵抗が平均値前後を変化することによって起こる温度変化に反応するセンサである。オームの法則を適用すると、バイアス電圧を印加することによって、イメージセンサの影響を受けるシーンの温度変化に応じて流れる電流を、バイアス印加によって決まる平均値前後に変化させることができる。
【0009】
従来の方法では、非冷却型のマイクロボロメータ検出器は、
− 電磁波IRを吸収してこの電磁波を熱に変換する手段と、
− 検出器を断熱して検出器を温めることができる手段と、
− 温度による変化が可能な抵抗素子
とを有する。
【0010】
マイクロボロメータ検出器20の一方の端子の電位は、値Vdtに固定されている。したがって、n型MOSトランジスタ22によるマイクロボロメータ検出器20へのバイアス電圧印加は、マイクロボロメータ検出器20のもう一方の端子に接続しているこのトランジスタのグリッド電圧Gdtに制御される。そのため、n型MOSトランジスタ22は一般に、インジェクショントランジスタまたはバイアストランジスタという。
【0011】
検出回路18はさらに、n型MOSトランジスタ22とマイクロボロメータ検出器20とに直列に取り付けられ、この電気回路を通って伝送列12へ流れる電流Imを(他の画素と)同期して伝送させる制御スイッチ24を有する。この電流Imは、トランジスタ22を流れる電流Idsおよびマイクロボロメータ検出器20を流れる電流Iboloと同じであるため、この電流が変動した場合は検出器から出た有益情報が含まれていることになる。
【0012】
電流Iboloは、次式の関係にある。
【0013】
【数1】

式中Vsはn型MOSトランジスタ22のソース電圧、Vdはドレイン電圧、Vdsはドレイン・ソース電圧、RboIoはマイクロボロメータ検出器20の抵抗である。
【0014】
これにより、図2の下降直線Dが示すような電流・電圧特性が現れる。
【0015】
このほか、n型MOSトランジスタ22の端子で得られるこの電流・電圧特性は、グリッドとソースとの間の電圧Vgsによって決まり、図2に3つの曲線C1、C2およびC3で示しており、それぞれ電圧Vgsが取り得る3つの値Vgs1、Vgs2およびVgs3に対応している。
【0016】
従来のように、電圧Vgsに左右されるこれらの電流・電圧特性はそれぞれ、対象となるトランジスタのいわゆる抵抗モードである第1の部分であって、Vdsが(Vgs−Vt)よりも小さいかぎり(Vtは対象となるトランジスタの特性の閾値電圧)電流Idsの強度が電圧Vdsとともに増大する部分と、飽和モードである第2の部分であって、Vdsの値が(Vgs−Vt)よりも大きい場合は電流Idsの強度がほぼ一定に保持される部分とを有する。
【0017】
この2つのモードの間にある飽和限界では、電流Idsは次式の関係になる。
【0018】
【数2】

式中WおよびLはトランジスタのチャンネルの幅および長さ、μは電子(nチャンネルの大多数のキャリア)の移動度、Coxはトランジスタの表面の単位ごとの容量である。
【0019】
飽和限界にある電圧Vgsに左右される電流・電圧特性を示す点の集合は、図2に示す放物線Pになる。
【0020】
検出回路18を正常に動作させるため、トランジスタが飽和限界で動作するようにn型MOSトランジスタ22のグリッド電圧Gdtを決定する。その結果、Ibolo=Ids=Imの値は、直線Dと放物線Pとの交点にある動作点となる。
【0021】
検出回路18が伝送列12へ供給するこの電流Imは、マイクロボロメータ検出器20からくるためにコモンモードが高く、このコモンモードの前後では温度の変動を表す電流のわずかな変動がみられる。有益情報となるのはむしろこのわずかな変動である。よって、列の上の回路28には通常ベースクリップ回路26を備え、このコモンモードを再製して伝送列12に送るためのベースクリップの電流Iebを供給する。このようにすると、電流Iebを電流Imから取り除いて電流Imのコモンモードを削除することができ、そこから有益な部分のみを保存することができる。
【0022】
ベースクリップ回路26は一般に、電界効果MOSトランジスタ32、さらに正確には図1の例ではp型の電界効果MOSトランジスタに直列接続している熱化したマイクロボロメータ検出器30を有する。p型MOSトランジスタ32に接続していない熱化したマイクロボロメータ検出器30の端子は電圧Vebに固定され、p型MOSトランジスタ32はグリッド電圧Gebを受ける。「熱化したマイクロボロメータ検出器」とは、抵抗が一定であり、受けた放射線とは無関係のマイクロボロメータ検出器のことである。
【0023】
可視化を目的とする信号では劣化が起こる。この劣化は、ボロメータ検出器自体に起因するだけでなく、インジェクショントランジスタ22や処理モジュール14の部品などその他の電子素子にも起因する。したがって、ボロメータの雑音が存在するだけでなく、処理する信号を妨害する電子雑音も存在する。このような妨害は、ボロメータ検出器のボロメータ抵抗が平均的に弱い際にとりわけ顕著に現れる。
【0024】
実際に、ボロメータの平均抵抗値を下げると、バイアス電圧印可トランジスタ22のインジェクション効率が低下することがわかる。この効率低下により、トランジスタ22はマイクロボロメータ検出器20が供給する電流を伝送しにくくなる。
【0025】
しかし、主な現象は電流雑音の増大である。ボロメータの平均抵抗値が下がると、マイクロボロメータ検出器20によって生じる電流雑音は減少するが、バイアス電圧印可トランジスタ22によって生じる電流雑音はトランジスタを流れる電流が増加するためにさらに増大することがわかる。
【0026】
バイアス電圧印可トランジスタ22によって生じる電流雑音を減少するために知られている方法が、トランジスタのサイズを拡大することである。実際に、トランジスタが大きいほど雑音は少なくなることがわかる。
【0027】
しかしながら、部品の寸法に手を加えることは、特に撮像分野においては明らかに慎重な問題である。実際に、検出装置は一般に画素行列で構成されているため、1画素内にある部品はすべて、画素サイズが小さいために窮屈なサイズになっている。ただし、複数画素に共通の部品のなかには、行列外で列および/または行の下および/または上に置くことができるものもある。この場合、窮屈なサイズになることはない。
【0028】
特にバイアス電圧印可トランジスタ22の場合、このトランジスタはマイクロボロメータ検出器20の直近かつ画素10の内部でこの検出器に直列接続している。よって、トランジスタが画素内にあるかぎりそのサイズには限界がある。
【0029】
トランジスタを複数の画素に対して共通にすることで、トランジスタのサイズを拡大することを検討できるが、この場合は全体的な設計を全面的に作り変えなければならない。さらに、バイアス電圧印可トランジスタ22をこのように複数の画素で共有すると、検出装置の動作に新たな制約が生じる。実際、赤外線イメージセンサの中には、「ローリングシャッター(rolling shutter)」現象というスキャンモードに従って有利に動作するものがあり、この現象では連続する複数の行が1つの画像取得を同時に行うことができる。したがって、サイズの大きいバイアス電圧印可トランジスタを複数の画素で共有する場合は、このスキャンモードを検討することは不可能になる。
【0030】
よって、バイアス電圧印可トランジスタ22のサイズを拡大するという方法は、前述の総合的性能の課題を解決するには最適ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】仏国特許公報第FR2848666号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
したがって、このような方法に頼る必要なく前述の課題および制約を少なくとも部分的に緩和することができる電磁波検出装置を備えることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0033】
よって本発明は、検出した放射線が表す電流を供給する少なくとも1つの放射線検出画素を備える電磁波検出装置であって、画素はバイアス電圧印加手段に直列接続しているボロメータ検出器を含む検出回路を有し、この装置はさらに、ボロメータ検出器とバイアス電圧印可手段との間に位置する検出回路の1点でボロメータ検出器に接続する、検出回路とは異なるボロメータ検出器のバイアス電流印加回路を有する検出装置を目的とする。
【0034】
したがって、ボロメータ検出器に対するこのバイアス電流の印加が、検出回路とは無関係にバイアス電圧印可手段の上流で起こることにより、ボロメータ検出器に必要な電流をもたらし、分岐点に関するキルヒホッフの法則を適用してバイアス電流印加回路の下流を流れる電流を下げつつ最適な方法で動作することができる。その結果、バイアス電流印加回路の下流で発生する電流雑音は減少し、大きいサイズの部品が必要になることはない。
【0035】
このほか、このバイアス電流の印加は、ボロメータ検出器が供給する電流のコモンモードを少なくとも部分的に補完する役割も果たし、それによってバイアス電圧印可手段の上流に実行されるベースクリップ機能を果たすことに気づく。コモンモードの完全な補完を検討することができれば、この新たな設計により、列の上に位置する通常のベースクリップ構造は必要なくなる。
【0036】
よってこの新たな設計は、前述した電子雑音の減少と上流のベースクリップとの二重機能を果たすだけでなく、部品の寸法を再設計する必要も行列の全体的な設計を修正する必要もない。
【0037】
選択的に、バイアス電流印加回路は、電流ソースに取り付けられる電界効果MOSトランジスタを有する。
【0038】
同じく選択的に、バイアス電圧印可手段は、電圧発生器に取り付けられる電界効果MOSトランジスタを有する。
【0039】
同じく選択的に、バイアス電流印加回路のMOSトランジスタおよびバイアス電圧印可手段のMOSトランジスタは、n型またはp型で両者は異なる型である。
【0040】
同じく選択的に、バイアス電圧印可手段のMOSトランジスタはp型である。実際、p型MOSトランジスタはn型MOSトランジスタよりも雑音が少ないため、バイアス電流印加回路のMOSトランジスタよりもバイアス電圧印可手段のMOSトランジスタがp型MOSトランジスタである方が有利である。
【0041】
同じく選択的に、バイアス電流印加回路は、バイアス電流印加手段に直列接続するように取り付けられた熱化したボロメータを有する。この場合、バイアス電流印加回路はさらに、最適なベースクリップを実行し、従来のベースクリップ回路は完全に必要なくなる。
【0042】
同じく選択的に、バイアス電流印加回路は、検出画素内に配置される。回路の寸法が小さいため、画素のサイズが小さくても事実上この回路をこの画素内に搭載することができる。
【0043】
同じく選択的に、本発明による検出装置は、行列配置した画素行列と、各列に対するバイアス電流印加回路であって、この列の画素すべてに共通でこの列の上に配置される回路とを有する。その結果、大幅な場所の節約になる。
【0044】
同じく選択的に、ボロメータ検出器は、非冷却型のマイクロボロメータである。実際、このタイプのボロメータは、とりわけボロメータの平均抵抗値が低い場合、本発明が提供する設計に特に適合する。
【0045】
最後に、本発明は、赤外線タイプの放射線を検出する上に定義したような検出装置の使用も目的とする。
【0046】
本発明は、添付の図を参照しながら例として挙げたにすぎない以下の説明文を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】すでに説明したように、先行技術による電磁波検出装置の全体構造の概略図である。
【図2】すでに説明したように、図1の装置の画素の動作点を決定する電流・電圧特性を示すグラフである。
【図3】本発明の第1および第2の実施形態による電磁波検出装置の全体構造の概略図である。
【図4】本発明の第1および第2の実施形態による電磁波検出装置の全体構造の概略図である。
【図5】図3または図4の装置の画素の動作点を決定する電流・電圧特性を示すグラフである。
【図6】本発明の第3および第4の実施形態による電磁波検出装置の全体構造の概略図である。
【図7】本発明の第3および第4の実施形態による電磁波検出装置の全体構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図3に示す電磁波検出装置は、前述した先行技術による装置と同じ素子をいくつか備えている。そのため、再度用いるこれらの素子には同じ符号を付している。
【0049】
したがって、本装置は行列配置した画素行列を有するが、明確にするために画素10および伝送列12のみを図示している。
【0050】
この伝送列12は、列の下の回路16内にある電流処理モジュール14に接続している。
【0051】
画素10は、電磁波を検出する電気回路18を有する。この検出回路18は、直列接続されるボロメータ検出器20、ボロメータ検出器20のn型MOSバイアス電圧印可トランジスタ22および制御スイッチ24を有し、この電気回路18を通って伝送列12へ流れる電流Imを同期伝送させる。この電流Imは、n型MOSトランジスタ22を流れる電流Idsと同じであるが、図1の装置とは逆に、ボロメータ検出器20を流れる電流Iboloとは同じではない。
【0052】
実際、画素10はさらに、ボロメータ検出器20のバイアス電流印加回路34を有し、この回路は検出回路18とは異なり、ボロメータ検出器20とバイアス電圧を印可するn型MOSトランジスタ22との間にある検出回路18の点36でボロメータ検出器20と接続している。
【0053】
バイアス電流印加回路34は、電源に取り付けられるp型MOSトランジスタ38を有する。具体的には、この回路の電源は電位Vddで給電され、そのグリッドは調節可能な電圧Goに制御されて所定強度の電流Ioを供給する。
【0054】
キルヒホッフの法則を分岐点36に適用することにより、3つの電流Io、Ids=ImおよびIboloの間には関係式Ids=Ibolo−Ioが成り立つ。
【0055】
したがって、ボロメータ検出器20が例えば平均電流約IμAで動作するマイクロボロメータ検出器である場合、Ioが約I−εμA(εはIよりも小さい)に達するようにGoを調節することができ、この値はマイクロボロメータ検出器20が供給する電流のコモンモードと一致するのが有利である。したがって、バイアス電圧を印可するn型MOSトランジスタ22の端子でεμAに近似の電流Idsが得られ、これによってこのトランジスタによって発生する電流雑音を顕著に減少させることができる。この電流Ids=Imがコモンモードではない場合は、処理モジュール14に供給する有益情報のみを有することが有利である。
【0056】
このほか、マイクロボロメータ検出器20の場合、端子間の電圧が所定値VoVに近ければ最適な動作が得られる。この値は、電圧発生器に取り付けられるn型MOSトランジスタ22で調節することにより得ることができる。さらに正確には、この値は、マイクロボロメータ検出器20の一方の端子の電位を値Vdtに固定し、バイアス電圧を印可するn型MOSトランジスタ22のグリッド電圧Gdtを調節してもう一方の端子の電位を点36で固定することによって得られる。
【0057】
本発明が提供する設計の範囲内である、バイアス電圧を印可するn型MOSトランジスタ22があることにより、検出回路18はこのトランジスタのドレインの辺りにフロート電圧を備えることができ、これによって画素10が他の行列画素から電圧を絶縁され、一般的な方法で他の画素を読み取る間に画素が妨害されないようになることがわかる。
【0058】
バイアス電流Ioは、p型MOSトランジスタ38のグリッド電圧Goを介して調節可能であることがわかった。同じように、n型MOSトランジスタ22のグリッド電圧Gdtは、ボロメータ検出器20にバイアス電圧を印加して電流Ids=Imをある程度調節する。したがって、2つのトランジスタ22および38のグリッド電圧によって検出回路およびバイアス電流印加回路の3つの分岐線を流れる3つの平均電流、すなわちIo、IboloおよびIds=Imを固定することができる。このようにすると、測定電流Imが適切な値に達する、つまりn型MOSトランジスタ22の雑音を抑えるのに十分に小さい値であり、検出したシーンの温度変動によって起こる電流の変動全体を含むのに十分に大きい値に達するような適正な構成にすることができる。
【0059】
電流Iboloは依然として次式の関係にある。
【0060】
【数3】

ただし、Ids=Ibolo−Ioであり、式中、
【0061】
【数4】

である。
【0062】
これは、図5に下降直線D’で示した電流・電圧特性になる。この特性は直線Dと平行だが、縦座標を負の方向に向かってIoだけずれている。
【0063】
検出回路18を正常に動作させるため、n型MOSトランジスタ22のグリッド電圧は、このトランジスタが飽和限界で動作するように決定する。その結果、Im=Ids=Ibolo−Ioの値は、上で定義した直線D’と放物線Pとの交点にある動作点となる。動作点の電流は、図1の装置で得られた電流Imと比較して大幅に減少している。
【0064】
検出回路18から伝送列12に供給されるこの電流Imは、Ioの値が正しく設定されていればもはやコモンモードではなくなる。そのためこの電流は、有益情報となるわずかな変動のみを有する。そのため、一般に図1に示したように列の上に備えられるベースクリップ回路26は、この場合もはや必要ではなくなる。これによって検出装置の設計は簡略化される。
【0065】
図1に示したような、インジェクショントランジスタを介してボロメータ検出器20にバイアス電圧を印加しただけの設計とは逆に、図3に示す設計では異なる2つの作用を考慮する必要がある。
【0066】
第1の作用は、ボロメータ検出器20は、バイアス電流印加回路34を介してバイアス電流を受ける。これは、いわばボロメータ検出器20内の電流をおおまかに調節するということである。
【0067】
第2の作用は、バイアス電圧を印可するn型MOSトランジスタ22は、飽和限界にある動作状態で、グリッド電圧Gdtを基に検出回路18の新たな動作点を決定する働きをする。図5から明らかなように、この動作点はバイアス電流印加回路34から印加されるバイアス電流Ioに左右され、n型MOSトランジスタ22の端子の平均電流を決定し、その結果、ソース電圧を固定するとともにボロメータ検出器20の端子の電圧も固定する。
【0068】
よってn型MOSトランジスタ22は、ボロメータ検出器20にバイアス電圧を印加するという図1の設計と同じ役割を果たすが、バイアス電圧を印加するこの機能は第2の作用にしか生じない。このトランジスタのグリッド電圧Gdtに起こる働きは、ボロメータ検出器20内の電流および均等状態をさらに細かく調節するということである。
【0069】
検出回路18を動作点の1点に向かわせるものは、第1の作用でバイアス電流を印加し、第2の作用でバイアス電圧を印加するという2つの作用である。最終的には次の最適な動作条件が確保される。ボロメータ検出器20を流れる電流が、バイアス電流と測定電流Im=Idsとの和として十分に高いだけでなく、測定電流が、n型MOSトランジスタ22によって発生する電流雑音を減少させるのに十分に弱いが有益情報をすべて含むのには十分に強いことであり、いずれの条件にもn型MOSトランジスタ22の寸法を再設計せずに実現できることである。
【0070】
さらに、バイアス電圧を印可するn型MOSトランジスタ22およびバイアス電流を印加するトランジスタ38は、n型またはp型で、両者は異なる型の電界効果MOSトランジスタであることがわかる。この場合は、トランジスタ22はn型であり、トランジスタ38はp型である。しかし、設計の再構成によってこの逆も可能である。この再構成を提供する本発明の第2の実施形態を図4に示す。
【0071】
この図では、画素10は、バイアス電圧を印加するp型のトランジスタ22’およびバイアス電流を印加するn型のトランジスタ38’を有する。さらにこの画素10の設計は、以下のようにわずかに再構成される。バイアス電流を印加するトランジスタ38’のソースはアースに接続し、初期には電位Vdtに固定されていたボロメータ検出器20の端子は、今度はVdd−Vdtに固定される。さらに、電流Io、ImおよびIboloの流れは逆になっているが、これによって上記の式および動作点が変化することはない。
【0072】
単純に、p型MOSトランジスタが一般にn型MOSトランジスタよりも雑音が少ないことがわかる。その結果、p型MOSトランジスタをインジェクショントランジスタ(つまり、バイアス電圧を印加するトランジスタ)として使用する方が有利である。よって第2の実施形態は、この点に関して第1の実施形態よりも良好な結果になる。
【0073】
このほか、バイアス電流印加回路34は少なくとも部分的にベースクリップの機能も実行することから、この回路を画素10に搭載することは必ずしも必要ではない。そのため、本発明の第3の実施形態を示した図6では、バイアス電流印加回路34は依然として画素10内の点36に接続しているが、列の上の回路28へと移動している。このように、検出装置の画素行列の各列の上にバイアス電流印加回路を配置してもよい。
【0074】
第1の実施形態の変形例であるこの第3の実施形態によれば、バイアス電流印加回路34はさらに、制御スイッチ40を有し、このスイッチは制御スイッチ24のように作動して情報の読み取りおよび伝送の段階で行列画素を同期させる。
【0075】
前述した第1の実施形態と同じく、バイアス電流印加回路34は電流ソースに取り付けられるトランジスタのみを有することができるため、ここでも同じく実行したベースクリップは、動作温度が何度であっても、常に一定に固定されコモンモードであるとみなす値Ioからの単なる減算に相当する。温度が上昇するとボロメータ検出器は温められ、この加熱によって抵抗の平均値が下がり、回路を流れる電流のコモンモードが上がるため、これは最適なベースクリップではない。
【0076】
この現象に適応させるため、選択的に、電位Vddとバイアス電流を印加するp型MOSトランジスタ38のソースとの間に熱化したボロメータ検出器42を挿入することができる。この熱化したボロメータ検出器42もシーンの迅速な変動を受けることなく温められ、バイアス電流印加回路34のベースクリップ機能を最適化する。このように、図1を参照して説明したベースクリップ機能がここで完全に再現される。
【0077】
熱化したボロメータ検出器を第1の実施形態の各画素に搭載することもできたが、この選択はバイアス電流印加回路34が列の上28に流される場合に用いることが有利である。
【0078】
最後に、前述のように、設計をわずかに再構成することで、用いた2つのタイプの電界効果MOSトランジスタを逆にすることも可能である。この再構成を提供する本発明の第4の実施形態を図7に示す。
【0079】
この図では、画素10は、バイアス電圧を印加するp型のトランジスタ22’および列の上28に流されるバイアス電流印加回路34を有し、バイアス電流を印加するn型のトランジスタ38’を有する。さらに画素10の設計は、以下のように再構成される。初期には電位Vdtに固定されていたボロメータ検出器20の端子は、今度はVdd−Vdtに固定される。列の上の回路28の設計は、以下のように再構成される。バイアス電流を印加するトランジスタ38’のソースに接続してはない熱化したボロメータ検出器42の端子は、アースに接続する。さらに、電流Io、ImおよびIboloの流れは逆になっているが、これによって上記の式および動作点が変化することはない。
【0080】
ここでもまた、インジェクショントランジスタ(すなわちバイアス電圧を印加するトランジスタ)としてp型MOSトランジスタを使用することが有利であることから、第4の実施形態はこの点に関して第3の実施形態よりも良好な結果になる。
【0081】
本発明の実施形態によれば、前述した装置のうちの1つのようなボロメータ検出器を備える電磁波検出装置によって、ボロメータ検出器に接続する電子部品のサイズをそれほど拡大する必要なく、電子雑音をボロメータの雑音よりも減少させることができることが明らかになる。
【0082】
したがって、例えば図1および図3の装置に対して実施した比較測定から、総合的な雑音に対する電子雑音の割合は大幅に減少していることがわかる。ボロメータの雑音に対して圧倒的であった電子雑音が比較的減少していることがわかる。一方、信号雑音比は改善しているため、最終的に得られる画像は解像度がさらに向上してさらに高質になる。
【0083】
このような装置であれば依然として実装は容易であり、初期設計が複雑化したり大幅な再構成をしたりすることもない。全体的な行列の設計を作り直す必要もない。最終的には、初期設計と比較して追加する材料も必ずしも必要ではない。バイアス電流を印加するために追加したトランジスタは、少なくとも部分的にベースクリップの役割も果たす。このトランジスタは、列の上に設置してベースクリップの初期構造の代わりに用いることができる。熱化したボロメータ検出器と直列させて使用する場合は、最適な形でベースクリップの機能も果たす。
【0084】
さらに、各画素に含まれる電子部品のサイズ拡大を検討する必要もないため、複数の画素でこれらの部品を共有しなくてもよい。「ローリングシャッター」でのスキャンモードも可能である。
【0085】
結論として、本発明が提供する設計により、マイクロボロメータ検出器用のイメージセンサの性能を向上させることができる。
【0086】
このようなイメージセンサの開発は、作成した画像の品質の点で、より高性能な赤外線カメラを産業規模で作製するのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出した放射線が表すそれぞれの電流(Im)を供給する放射線(IR)検出画素(10)と、前記画素と接続し、前記画素(10)が供給する電流を伝送する列(12)と、伝送列(12)と接続し、前記画素(10)が供給する電流を処理する電気モジュール(14)とを備える電磁波検出装置であって、各画素(10)は、ボロメータ検出器(20)へのバイアス電圧印加手段(22;22’)に直列接続しているボロメータ検出器(20)を含む検出回路(18)を備え、伝送列(12)から処理モジュール(14)に供給される電流を調節する検出装置において、該装置はさらに、前記ボロメータ検出器(20)へバイアス電流を印加し、前記伝送列(12)から前記処理電気モジュール(14)に供給される前記電流を調節するバイアス電流印加回路(34)を有し、該バイアス電流印可回路(34)は、前記検出回路(18)とは異なり、前記ボロメータ検出器(20)と前記バイアス電圧印加手段(22)との間に位置する前記検出回路(18)の点(36)で前記ボロメータ検出器(20)に接続することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記バイアス電流印加回路(34)は、電流ソースに取り付けられる電界効果MOSトランジスタ(38;38’)を有する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記バイアス電圧印可手段(22;22’)は、電圧発生器に取り付けられる電界効果MOSトランジスタを有する、請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記バイアス電流印加回路の前記MOSトランジスタ(38;38’)および前記バイアス電圧印可手段の前記MOSトランジスタ(22;22’)は、n型またはp型で、両者は異なる型である、請求項2および3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記バイアス電圧印可手段のMOSトランジスタ(22)はp型である、請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記バイアス電流印加回路(34)は、前記バイアス電流印加手段(38;38’)に直列接続するように取り付けられた熱化したボロメータ(42)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記バイアス電流印加回路(34)は、前記検出画素(10)内に配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
行および列(12)に配置した画素(10)行列と、各列(12)に対するバイアス電流印加回路(34)であって、前記列(12)の前記画素(10)すべてに共通で前記列の上(28)に配置される回路とを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記ボロメータ検出器(20)は、非冷却型のマイクロボロメータである、請求項1から8のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項10】
赤外線タイプの放射線を検出する、請求項1から9のいずれか一項に記載の検出装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−530242(P2012−530242A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514518(P2012−514518)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051121
【国際公開番号】WO2010/146284
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(510191207)
【Fターム(参考)】