説明

バイオエタノール及びメタンガスの製造方法並びに同製造過程において発生する廃棄物の循環利用システム

【課題】バイオエタノール製造コスト削減へ向けたバイオエタノール製造プロセスの見直し、並びにそれに関連する廃液の処理方法ないしは再利用方法等の考案、さらに、より経済的合理性のある、バイオエタノール製造のためのバイオマス循環システムの構築にある。
【解決手段】多収量生産作物を原料として、バイオエタノール製造をおこない、その廃液処理対策として、廃液自体を原料としてメタンガスを製造し、当該メタンガスをバイオエタノール精製時に必要な上流熱源として利用し、さらにそのメタンガス製造過程で発生する消化液を、前記多収量生産作物の肥培管理に液肥として利用するバイオマス循環システムの提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多収量作物を原料にしてバイオエタノールを製造する際に発生する廃棄物を再利用して、メタンガスを製造し、かつそれぞれの製造過程において発生する廃棄物を再利用することを可能にする循環システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止、循環型社会形成、戦略的産業育成、農山漁村活性化等の観点から、農林水産省をはじめとした関係府省が協力して、バイオマスの利活用推進に関する具体的取組や行動計画を「バイオマス・ニッポン総合戦略」として、日本政府は、平成14年12月に閣議決定し、以後さまざまな施策を講じてきた。なかでも、この「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と同戦略で定義されるバイオマスの利活用手段として、バイオエタノールの製造技術開発は、ガソリン代替燃料の製造として、重点課題とされ、資源エネルギー庁は、平成18年10月、北海道、山形、大阪、岡山、沖縄の、全国6箇所で、規格外小麦、とうもろこし、コウリャン、建築廃材、製材所端材、とうもろこし糖蜜等を原料としたバイオエタノール燃料実証事業を実施したが、いずれも、製造コスト等の面から、いまだ本格的に実用化される技術には至っていない。
【0003】
その後、経済産業省と農水省は、平成20年3月に「バイオ燃料技術革新計画」を取りまとめ、その中で、その生産コストを「バイオマスニッポンケース」として100円/リットル、さらに、同計画にある技術革新ロードマップにのっとった「技術革新ケース」として40円/リットルを、その目標として掲げている。これらの目標生産コストをクリアーするための課題としては、大規模生産を前提とし、そのためには多収量生産作物の品種改良が必要とされるなど、バイオエタノールの変換効率の向上以外にも、低コスト化に向けた多くの課題が山積している。
【0004】
このような現状のなかで、バイオエタノールの製造コスト削減に向けた課題となっているのが、バイオエタノール製造過程で発生する廃液処理の問題がある。通常、この廃液は、バイオエタノール1リットル製造に対して、15リットル程度排出が見込まれ、処理には、5〜10円/リットル程度のコストがかかることが予想され、すなわち、バイオエタノール1リットルあたり廃液処理だけで75〜150円かかるとされるこのコストが、先の製造コスト削減目標に向けての大きな課題となる。現在、バイオエタノール製造工場の普及が進まないのは、一面この大量に排出される廃液の処理について効果的かつ経済的アイデアがなく、問題が解決されないことが原因となっている。
【0005】
なお、バイオエタノール製造時発生する廃液に関する先行技術としては、「デンプン質を含む原料を用い、発酵によりエタノールを生産する方法に係り、エタノール生産過程で廃液を生じることないエタノールの製造方法およびエタノール製造システム」(特許文献1)があるが、これは廃液そのものを発生させないものであり、廃液自体を再利用し、更なる経済的合理性を求めたシステムとはことなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−65695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、バイオエタノール製造コスト削減へ向けたバイオエタノール製造プロセスの見直し、並びにそれに関連する廃液の処理方法ないしは再利用方法等の考案、さらに、より経済的合理性のある、バイオエタノール製造のためのバイオマス循環システムの構築にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記状況を鑑み、多収量生産作物を原料として、バイオエタノール製造をおこない、その廃液処理対策として、廃液自体と未利用系バイオマス等を混合したものを原料としてメタンガスを製造し、当該メタンガスをバイオエタノール精製時に必要な蒸留熱源として利用し、さらにそのメタンガス製造過程で発生する消化液を、前記多収量生産作物の肥培管理に液肥として利用する循環システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、バイオエタノール製造時の廃液は、メタンガス製造の原料となり、この時点で原則として廃液処理はほぼ0となり、また、製造されるメタンガスを、バイオエタノール精製時に必要な蒸留熱源として利用することで、バイオエタノール製造コストの削減につながる。あわせて、メタンガス製造時に発生する消化液を、バイオエタノール製造の原料となる多収量生産作物の肥培管理用液肥として、同作物の栽培農家へ有償または無償にて利用させることにより、さらにバイオエタノール製造の原価低減が図れることとなる。これにより、バイオマスを効率的に循環させて利用するシステムを構築することにより、より安価なバイオエタノールの製造普及を促進し、あわせて地球温暖化防止へ貢献することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明により提供されるバイオマス循環システムのフローを示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多収量生産作物を原料として、バイオエタノール製造をおこない、その廃液処理対策として、廃液自体と未利用系バイオマス等を混合したものを原料としてメタンガスを製造し、当該メタンガスをバイオエタノール精製時に必要な蒸留熱源として利用し、さらにそのメタンガス製造過程で発生する消化液を、前記多収量生産作物の肥培管理に液肥として利用するバイオマス循環システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−91104(P2012−91104A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239919(P2010−239919)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(510284820)
【出願人】(510285230)
【出願人】(510285241)
【Fターム(参考)】