説明

バイオセンサ測定装置

【課題】弾性接触端子のヘタリに起因する接触不良が生じ難いバイオセンサ測定装置を提供し、センサチップの電気接続信頼性を向上させる。
【解決手段】バイオセンサチップ65又は補正チップ53が選択的に挿入される接続部挿入空間93を有するコネクタハウジング89と、接続部挿入空間93内に配置されて電気接触部67,85に電気的に導通する弾性接触端子81と、を有するコネクタ61が設けられたバイオセンサ測定装置であって、弾性接触端子81が、コネクタハウジング89に支持固定される基端固定部と、接触部挿入空間93に突出して対向内壁109に近接配置されるように屈曲形成された中間接触部107と、対向内壁109に接近する方向に付勢されて所定の予圧力でコネクタハウジング61の支持部111に当接する先端当接部113と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオセンサ測定装置に関し、特に、採取した試料の付着するバイオセンサチップ等を装着することにより試料中の例えばブドウ糖のような特定成分を測定するバイオセンサ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病の早期発見・悪化防止のため、日常の血糖値の変動をモニタリングする自己血糖測定が推奨されている。自己血糖測定にはランセット、センサチップ、測定装置が用いられる。自己血糖測定は、1日複数回行われることがあることから測定が容易に行えることが望ましい。
【0003】
図6は特許文献1に記載されているランセット一体型のバイオセンサの外観斜視を(a)、分解斜視を(b)に表した構成図である。
図6に示すように、ランセット一体型のバイオセンサ11は、センサチップ(チップ本体)13、ランセット15及び保護カバー17を有してなる。チップ本体13は、カバー19と基板21とを開閉可能に有しており、カバー19の内面には内部空間23が形成されている。内部空間23は、ランセット15を移動可能に収納できる形状をしている。
【0004】
ランセット15の先端に設けられている穿刺用器具(針)25は、ランセット15の移動に伴って、チップ本体13の内部空間23の前端部に形成されている開口部27から出没可能となっている。
内部空間23の形状は、突起29が位置する端部において、その幅がランセット15より若干狭くなるよう湾曲しており、互いの押圧力や摩擦力によってランセット15がチップ本体13に係止されるようになっている。
【0005】
保護カバー17は針25を挿嵌する管部31を有しており、針25の移動に伴って管部31もチップ本体13の内部に収納可能となっている。
従って、使用前の状態では、保護カバー17を針25に被せて、針25を保護するとともに誤って使用者を傷付けないようになされている。なお、基板21には、一対の電極端子33,33が設けられており、バイオセンサ測定装置(図示省略)に設けられたコネクタを介して計測手段に電気的に接続できるようになっている。
【0006】
このように構成されたランセット一体型のバイオセンサ11は、使用時に、保護カバー17を外して、ランセット15を押して針25をチップ本体13から突出させる。この状態で被検体を穿刺した後、針25をチップ本体13内部に収納し、チップ本体13の前端に設けられている開口部27を被検体の穿刺口に近づけて、流出した血液を採取する。
【0007】
ところで、前述したようなランセット一体型のバイオセンサ11においては、製造ロット間にバラツキの生じることがある。このバラツキには、例えば検知電極の電気抵抗のバラツキや試薬塗布のバラツキ等がある。このようなバイオセンサ11のバラツキは、例えば血糖値を測定する場合の検量線(測定機検出電流値に基づく血糖値変換式)に影響を及ぼす。このため、市販されるバイオセンサ11には、使用開始時、バイオセンサ11と同梱された(検量線情報の記録された)補正チップ35(図7参照)をバイオセンサ測定装置に挿入することで、補正が行われる製品もある。
【0008】
【特許文献1】WO02−056769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記バイオセンサ11の電極端子33,33に設けられた電気接触部37が、図7に示すバイオセンサ測定装置のコネクタ39に繰り返し着脱されると、弾性変形を繰り返すコネクタ内の弾性接触端子41に金属疲労に起因するヘタリが発生し、電気接触部37との接触位置に変位が生じる可能性がある。すなわち、本来の接触位置より徐々に離反した位置に変位する。
【0010】
更に、補正チップ35には、バイオセンサ11の厚みTよりも厚みtが厚く(T<t)設定される製品もある。そのため、厚い補正チップ35の挿入の繰り返しにより変形が生じて電気接触部37との接触位置に変位が生じた弾性接触端子41は、特に薄厚のバイオセンサ11の電気接触部43に対する接触圧が不十分となり、バイオセンサ11に対する電気的な接触が不安定になり易いという問題があった。
【0011】
従って、本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、弾性接触端子のヘタリに起因する接触不良が生じ難いバイオセンサ測定装置を提供し、センサチップの電気接続信頼性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る上記目的は、センサチップの電気接触部が挿入される接触部挿入空間を有するコネクタハウジングと、前記接触部挿入空間内に配置されて前記電気接触部に電気的に導通する弾性接触端子と、を有するコネクタが設けられたバイオセンサ測定装置であって、
前記弾性接触端子が、前記コネクタハウジングに支持固定される基端固定部と、前記接触部挿入空間に突出して対向内壁に近接配置されるように屈曲形成された中間接触部と、前記対向内壁に接近する方向に付勢されて所定の予圧力で前記コネクタハウジングに当接する先端当接部と、を備えることを特徴とするバイオセンサ測定装置により達成される。
【0013】
上記構成のバイオセンサ測定装置によれば、センサチップの電気接触部がコネクタの接触部挿入空間に挿入されると、弾性接触端子の中間接触部が前記電気接触部に電気的に弾性接触する。この時、弾性接触端子の予圧力は、先端当接部を介してコネクタハウジングに支持されており、電気接触部に接触する中間接触部には直接作用しない。そこで、センサチップの挿入抵抗を低く抑えることができる。
【0014】
そして、センサチップの電気接触部がコネクタに繰り返し着脱されると、弾性変形を繰り返す弾性接触端子に金属疲労に起因するヘタリが発生し、予圧力が徐々に減少するが、この予圧力が完全に消失した時点で、予圧力の付与されていない従来構造のコネクタと同等の接触圧となる。つまり、予圧力が消失するまでの時間分、従来構造のコネクタに比べ、ヘタリに起因する接触不良が発生するまでの時間を遅延させることができる。
【0015】
また、上記構成のバイオセンサ測定装置において、前記弾性接触端子における前記先端当接部と前記中間接触部との間には、前記接触部挿入空間の挿入口に向かうにしたがって前記対向内壁から徐々に離反する案内傾斜部が形成されることが望ましい。
【0016】
このような構成のバイオセンサ測定装置によれば、センサチップの電気接触部が接触部挿入空間の挿入口に挿入されると、その先端が案内傾斜部に当たり、さらに電気接触部が挿入されることで、先端が案内傾斜部に摺接しながら弾性接触端子を対向内壁から離反方向へ変形させる。これにより、良好な摺接状態を維持しながらスムースな挿入が可能となる。
【0017】
また、上記構成のバイオセンサ測定装置において、前記弾性接触端子の材料にベリリウム銅合金を用いることが望ましい。
即ち、ベリリウム銅合金は常温下での強度が高く、磁化し難く、打撃を受けても火花が出ない特徴を持つ。このためベリリウム銅合金を弾性接触端子に用いると耐久性が高まる。なお、ベリリウム銅合金は純銅に近い電気伝導性があるため、コネクタ端子の材料として適している。
【0018】
また、上記構成のバイオセンサ測定装置において、前記弾性接触端子の接触面に0.3μm厚以上の金メッキを施すことが望ましい。
即ち、金は柔らかい金属であるため、金メッキ処理を行うことで、端子の接触が良くなる。また、金は安定しているため酸化し難いメリットもある。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るバイオセンサ測定装置によれば、基端固定部がコネクタハウジングに支持固定されるとともに、屈曲形成された中間接触部が接触部挿入空間に突出して対向内壁に近接配置され、且つ先端当接部が所定の予圧力で対向内壁に接近する方向に付勢されてコネクタハウジングに当接する弾性接触端子を有するコネクタが設けられている。
そこで、センサチップの電気接触部の繰り返し着脱に伴う弾性接触端子の金属疲労により、予圧力が消失するまでの時間分、予圧力の付与されていない従来コネクタに比べてヘタリに起因する接触不良を遅延させることができる。特に、薄厚の補正チップに対する良好な接触圧を長期間に渡って維持することができる。この結果、バイオセンサチップおよび補正チップ等のセンサチップの電気接続信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて本発明に係るバイオセンサ測定装置の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明に係るバイオセンサ測定装置の概略構成を表した模式図、図2はバイオセンサチップを(a)〜(c)、補正チップを(d)で表した模式図である。
【0021】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、下記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
本実施形態によるバイオセンサ測定装置100は、図1に示すように、選択的に装着されるセンサチップであるバイオセンサカートリッジ51又は補正チップ53(図2参照)に電気的に接続して採取した試料(血液)の情報、或いは較正情報を得る測定器55を有する。測定器55は、電源57、制御装置59、コネクタ61および表示部63を備え、これらが相互に接続される。
【0023】
コネクタ61は、センサチップ後端の電気接触部67に露出している電極69(図2参照)に電気的に接続される。なお、本実施形態によるバイオセンサ測定装置100では、穿刺用器具71を備えた穿刺具73とバイオセンサチップ65とを一体にしたバイオセンサカートリッジ51が装着される構成を例示するが、本発明に係るバイオセンサ測定装置は、試薬の設けられたバイオセンサチップ65のみを装着し、穿刺を行わずに試薬の電気特性を検出して血液の特定成分を測定するものであってもよい。
【0024】
そして、バイオセンサ測定装置100は、バイオセンサカートリッジ51を装着し、バイオセンサカートリッジ51の電極69に接続して特定成分の情報を得ることに加え、上記補正チップ53を装着することにより検出電気特性を較正する情報も得られるようになっている。
【0025】
ここで、センサチップとしてのバイオセンサチップ65及び補正チップ53についてさらに説明する。
先ず、バイオセンサチップ65は、試料(例えば血液)中の特定成分と反応する試薬が設けられ、電極69にて試薬の電気特性が検出される。電極69には測定器55のコネクタ61が電気的に接続される。測定器55は、試料と試薬の反応により発生した電流を制御装置59に入力することで、特定成分を計測し、その結果を表示部63に表示する。
【0026】
図2(a)〜(c)に示すように、バイオセンサチップ65は、互いに対向する2枚の絶縁基板(以下、単に「基板」とも称す。)75,77と、これら基板75,77に挟装されるスペーサ層79とを積層してなる。2枚の基板75,77の少なくとも1枚の基板75におけるスペーサ層側の表面には、複数(本実施の形態では5つ)の電極69が設けられている。
【0027】
バイオセンサチップ65の先端部には、スペーサ層79を挟む2枚の基板75,77により中空反応部(図示せず)が形成され、この中空反応部の先端は採取した血液を導入する試料採取口(図示せず)となって開口している。
中空反応部では、2つの電極69,69が相互に向かい合ってL字状に曲げられ、平行な対向電極となって離間される。この対向電極部の直上或いは近傍に、例えば酵素とメディエータを固定化し血液中のグルコースと反応して電流を発生する試薬が設けられている。つまり、中空反応部は、試料採取口から採取入された血液等の試料が、試薬と生化学反応する部分となる。
【0028】
基板75,77およびスペーサ層79の材質としては、絶縁性材料のフィルムが選ばれ、絶縁性材料としては、セラミックス、ガラス、紙、生分解性材料(例えば、ポリ乳酸微生物生産ポリエステル等)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂、UV硬化樹脂等のプラスチック材料を例示することができる。機械的強度、柔軟性、およびチップの作製や加工の容易さ等から、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料が好ましい。代表的なPET樹脂としては、メリネックスやテトロン(以上、商品名、帝人デュポンフィルム株式会社製)、ルミラー(商品名、東レ株式会社製)等が挙げられる。
【0029】
試薬としては、例えばグルコースオキシダーゼ(GOD)が挙げられる。また、検体の採血負担を考慮すると、中空反応部の容積は1μL(マイクロリットル)以下が好ましく、特に300nL(ナノリットル)以下であることが好ましい。このような微小な中空反応部であると、穿刺用器具の直径は小さくても検体の充分な血液量が採取可能となる。
【0030】
上記バイオセンサチップ65は、電気接触部67がコネクタ61に挿入されると、電極69に弾性接触端子81が接触する。これにより、弾性接触端子81に接続された信号配線83を介して制御装置59へ検出値が送られるようになっている。
【0031】
一方、図2(d)に示す補正チップ53には、同梱されるバイオセンサカートリッジ51のチップ情報が含まれる。このチップ情報としては、例えば、製造ロット情報(製造年月日、製造数等)、試薬種類、電極材料、電極抵抗値等が挙げられる。これらの情報が適宜、制御装置59にて較正値として利用される。
補正チップ53の後端には電気接触部85が設けられ、電気接触部85には上記チップ情報を検出するための複数の電極87が設けられている。この補正チップ53も、電気接触部85がコネクタ61に挿入されると、電極87に弾性接触端子81が接触する。これにより、弾性接触端子81に接続された信号配線83を介して制御装置59へチップ情報検出値が送られるようになっている。
【0032】
ところで、本実施形態においては、バイオセンサチップ65の厚みTが、補正チップ53の厚みtより厚く(T>t)形成されている。したがって、バイオセンサチップ65が装着されるコネクタ61の接触部挿入空間は、補正チップ53の装着も可能としている。
【0033】
図3は図1に示したコネクタの斜視を(a)、そのA−A矢視を(b)に表した構成部材説明図である。
図3に示すように、コネクタ61のコネクタハウジング89には、バイオセンサカートリッジ51又は補正チップ53における電気接触部67,85が挿入される扁平矩形状の挿入口91が開口され、挿入口91はコネクタハウジング89の内部に形成された接触部挿入空間93に連通する。
【0034】
接触部挿入空間93には複数の端子収容空間95が区画形成され、各端子収容空間95はそれぞれ弾性接触端子81を収容している。端子収容空間95は、先端部が透孔97となってコネクタハウジング89の前面99に開口されるとともに、後端部が端子導出口101となってコネクタハウジング89の後面103に開口される。
【0035】
本実施形態の弾性接触端子81は、図3(b)に示すように、コネクタハウジング89に支持固定される基端固定部105と、接触部挿入空間93に突出して対向内壁109に近接配置されるように屈曲形成された中間接触部107と、対向内壁109に接近する方向に付勢されて所定の予圧力でコネクタハウジング89に当接する先端当接部113と、を備える。
【0036】
弾性接触端子81の基端固定部105は、端子導出口101から導出された状態でコネクタハウジング89に支持固定されている。この基端固定部105の端部には、上記信号配線83が接続される。
略V字状に屈曲形成された中間接触部107は、図中上方より接触部挿入空間93を横断して図中下方の対向内壁109に近接配置され、適宜接触している。
【0037】
コネクタハウジング89の透孔97と挿入口91との間には、支持部111が形成されている。弾性接触端子81の先端当接部113は、対向内壁109に接近する方向に付勢されて所定の予圧力(プリロード)で支持部111に当接している。
【0038】
更に、弾性接触端子81における先端当接部113と中間接触部107との間には、接触部挿入空間93の挿入口91に向かうにしたがって対向内壁109から徐々に離反する案内傾斜部115が形成されている。
そこで、バイオセンサカートリッジ51又は補正チップ53における電気接触部67,85が接触部挿入空間93の挿入口91に挿入されると、その先端が案内傾斜部115に当たり、さらに電気接触部67,85が挿入されることで、先端が案内傾斜部115に摺接しながら弾性接触端子81を対向内壁109から離反方向へ変形させる。これにより、良好な摺接状態を維持しながらスムースな挿入が可能となっている。
【0039】
また、略V字状に折曲された中間接触部107の折曲先端は、曲線状に屈曲したR部117を備えている。上記電気接触部67,85の挿入先端が中間接触部107のR部117に接触することで、電気接触部67,85に対する電気的接触性と、電気接触部67,85の挿入性とがより良好となる。
【0040】
尚、弾性接触端子81の材料には、ベリリウム銅合金を用いることが望ましい。即ち、ベリリウ銅合金は常温下での強度が高く、磁化し難く、打撃を受けても火花が出ない特徴を持つ。このためベリリウム銅合金を弾性接触端子81に用いると耐久性が高まる。なお、ベリリウム銅合金は純銅に近い電気伝導性があるため、コネクタ端子の材料として適している。
更に、弾性接触端子81の接触面に0.3μm厚以上の金メッキを施すことが望ましい。即ち、金は柔らかい金属であるため、金メッキ処理を行うことで、端子の接触が良くなる。また、金は安定しているため酸化し難いメリットもある。
【0041】
次に、上記構成のバイオセンサ測定装置100の作用を説明する。
図4はバイオセンサチップの挿入されたコネクタを(a)、補正チップの挿入されたコネクタを(b)で表した作用説明図であり、図5は接触圧と時間との相関を表したグラフである。
【0042】
測定器55のコネクタ61には、図4(a)に示すバイオセンサカートリッジ51のバイオセンサチップ65、又は図4(b)に示す補正チップ53とが選択的に挿入される。バイオセンサチップ65と補正チップ53とは、厚みT,tが異なるため、コネクタ61にバイオセンサチップ65が挿入された時と、補正チップ53が挿入された時とで、弾性接触端子81の中間接触部107の変位量は異なる。すなわち、図4に示すように、バイオセンサチップ65が挿入されたときの変位量ΔTは、補正チップ53が挿入されたときの変位量Δtより大きい。
【0043】
ところで、弾性接触端子81は、弾性変形範囲内で変形を繰り返すが、経時的には疲労によりヘタリが生じる。ヘタリが生じれば電極69,87への接触圧は不安定となる。ヘタリは、弾性接触端子81の変位量が大きいほど顕著となる。
バイオセンサ測定装置100は、通常使用において、バイオセンサチップ65の挿入頻度が高い。すなわち、バイオセンサチップ65が複数回挿入される毎に、補正チップ53が1回挿入される。したがって、弾性接触端子81にヘタリが生じた状態で、特に肉厚である補正チップ53が挿入された場合、弾性接触端子81は接触圧力が減少する方向に変形し、その後のバイオセンサ100の接触性に不利が生じる。
【0044】
そこで、本実施形態に係るバイオセンサ測定装置100では、測定器55のコネクタ61における弾性接触端子81に、上述した予圧力を付与している。
例えば、従来の予圧力の付与されていない弾性接触端子41(図7参照)では、電気接触部37が挿入されると、弾性接触端子41の弾性復元力によって図5に示す接触圧F1が生じる。これに対し、本実施形態による弾性接触端子81では、予圧力F2が付与されていることにより、電気接触部67が挿入されると、F1+F2の接触圧が生じる。
【0045】
従来の弾性接触端子41では、電気接触部37の着脱が繰り返されてヘタリが生じると、時間T1の経過後に接触圧F1が消失する。これに対し、本実施形態による弾性接触端子81では、着脱が繰り返されてヘタリが生じると、先ず、予圧力F2分の接触圧が消失する。この接触圧が消失した状態においても、従来の弾性接触端子41と略同等の接触圧F1は確保されることとなる。
つまり、本実施形態に係るコネクタ61は、予圧力F2が消失するまでの時間T2−T1分、従来構造のコネクタ39に比べ、ヘタリに起因する接触不良の発生するまでの時間を遅延させることができる。
【0046】
したがって、本実施形態のバイオセンサ測定装置100によれば、バイオセンサカートリッジ51又は補正チップ53における電気接触部67,85がコネクタ61における接触部挿入空間93の挿入口91に挿入されると、弾性接触端子81の中間接触部107が電気接触部67,85に電気的に弾性接触する。この時、弾性接触端子81の予圧力F2は、先端当接部113を介してコネクタハウジング89の支持部111に支持されており、電気接触部67,85に接触する中間接触部107には直接作用しない。そこで、バイオセンサカートリッジ51又は補正チップ53の挿入抵抗を低く抑えることができる。
【0047】
そして、バイオセンサカートリッジ51又は補正チップ53の電気接触部67,85がコネクタ61に繰り返し着脱されると、弾性変形を繰り返す弾性接触端子81に金属疲労に起因するヘタリが発生し、予圧力F2が徐々に減少するが、この予圧力F2が完全に消失した時点で、予圧力F2の付与されていない従来構造のコネクタ39と同等の接触圧F1となる。つまり、本実施形態に係るコネクタ61は、予圧力F2が消失するまでの時間分、従来構造のコネクタ39に比べ、ヘタリに起因する接触不良が発生するまでの時間を遅延させることができる。特に、薄厚の補正チップ53に対する良好な接触圧を長期間に渡って維持することができる。この結果、バイオセンサチップ65および補正チップ53の電気接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るバイオセンサ測定装置の概略構成を表した模式図である。
【図2】バイオセンサチップを(a)〜(c)、補正チップを(d)で表した模式図である。
【図3】図1に示したコネクタの斜視を(a)、そのA−A矢視を(b)に表した構成部材説明図である。
【図4】バイオセンサチップの挿入されたコネクタを(a)、補正チップの挿入されたコネクタを(b)で表した作用説明図である。
【図5】接触圧と時間との相関を表したグラフである。
【図6】従来のランセット一体型のセンサの外観斜視を(a)、分解斜視を(b)に表した構成図である。
【図7】従来装置に設けられたコネクタの断面図である。
【符号の説明】
【0049】
53…補正チップ(センサチップ)
61…コネクタ
65…バイオセンサチップ(センサチップ)
67,85…電気接触部
81…弾性接触端子
89…コネクタハウジング
91…挿入口
93…接触部挿入空間
100…バイオセンサ測定装置
105…基端固定部
109…対向内壁
107…中間接触部
111…支持部
113…先端当接部
115…案内傾斜部
117…R部
F2…予圧力
T,t…電気接触部の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサチップの電気接触部が挿入される接触部挿入空間を有するコネクタハウジングと、前記接触部挿入空間内に配置されて前記電気接触部に電気的に導通する弾性接触端子と、を有するコネクタが設けられたバイオセンサ測定装置であって、
前記弾性接触端子が、前記コネクタハウジングに支持固定される基端固定部と、前記接触部挿入空間に突出して対向内壁に近接配置されるように屈曲形成された中間接触部と、前記対向内壁に接近する方向に付勢されて所定の予圧力で前記コネクタハウジングに当接する先端当接部と、を備えることを特徴とするバイオセンサ測定装置。
【請求項2】
前記弾性接触端子における前記先端当接部と前記中間接触部との間には、前記接触部挿入空間の挿入口に向かうにしたがって前記対向内壁から徐々に離反する案内傾斜部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項3】
前記弾性接触端子の材料にベリリウム銅合金を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項4】
前記弾性接触端子の接触面に0.3μm厚以上の金メッキを施したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイオセンサ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−178367(P2009−178367A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20610(P2008−20610)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】