バイオセンシングのための勾配注入
構造的および方法論的の両面でバイオセンサーでの単一注入勾配は、センシングエリアを再生する必要無しに幅広い濃度範囲に渡ってアナライトの固定化されたリガンドへの結合を達成する。フローセルに隣接するかまたはフローセル内の濃度の勾配は、複数の離散容積または濃度の範囲を達成する注入を要求すること無く、相互作用の動力学的分析を容易にする。連続的勾配流体は好ましくは、フローセル入口または注入ポイントにおけるサンプル/緩衝液分散の領域に直接隣接して、フローセルのフローチャネル中に形成される。アナライト勾配は、低アナライト濃度からフローセルを通して流されても良い。複数成分勾配もまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それでセンシング領域に対して流体のフローを注入するところの流体工学的システムおよび方法に関する。より特定には、発明は単一注入濃度勾配を提供することと使うことに関し、勾配形成手段はバイオセンシングシステム中に一体化されている。応用の一つの特定の分野は、生体分子的リガンドおよびアナライトを使ったマイクロ流体工学的バイオセンシングである。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサーのような分析機器は、生体分子的相互作用の進行をリアルタイムで記録する手段として良く確立されている。バイオセンサーは、生体分子間の相互作用を検出するのに種々の形質導入技術を採用する。そのような器具使用は、サンプルをセンシング領域に配送するためにマイクロ流体工学的チャネルを要求し、ポンプとバルブが、制御された再現可能なやり方でサンプルをチャネルを通して動かすために好まれる手段である。
【0003】
マイクロ流体工学技術への最近の関心は、そのようなセンシング応用のための流体ストリームの洗練された制御についての大きくなりつつある必要のために起こってきている。一体化されたマイクロ流体工学的カードと呼ばれる、数々の先行するシステムは、結合されたときに内部通路とバルブやポンプのような活性コンポーネンツを形成するチャネルや構造を有する一連の実質的に平面状の基板からなっている。多くの進歩にも拘わらず、これらのシステムは滅多に、活性コンポーネンツが流体工学的カードに一体化されていない従来のフロー注入分析流体工学的システムほど強健ではない。しかし、これらの非一体化システムは、典型的には比較的大きなデッドボリュームを有する。
【0004】
検出されるべき生体分子的相互作用の進行を記録することが可能ないくつかのトランスデューサーがある。一つの例は、石英結晶マイクロバランスである。石英結晶の表面への分子の結合は、結合イベントの定量化を許容する基本共鳴周波数を変化させる。他の技術には、光散乱、反射型干渉分光法、エリプソメトリー、蛍光分光法、熱量測定法、エバネッセントフィールドに基づいた光学的検出が含まれる。表面プラズモン共鳴(SPR)として知られる特に効果的なエバネッセントフィールドに基づいた技術は、例えば金被覆された光学的基板からの反射の際の光の振る舞いを活用する。
【0005】
SPRは、テストすべき物質が位置しているセンシング表面に近い薄膜の屈折率の変化のリアルタイム監視を可能とする光学的技術である(典型的な物質タイプは、センシング表面に付着したリガンド、流体緩衝液、およびリガンドと結合してテストされるべき流動する/流れる物質中含まれた流体アナライト(例えば、可溶性または不溶性のコロイド溶液)を含む)。表面において作り出されたエバネッセントフィールドは表面から指数的に衰退し、表面から約300ナノメーター(nm)でその最大強度の1/3まで落ちる。このためSPR技術は表面屈折率変化に敏感である。
【0006】
SPR活性センシング領域へのサンプルの配送は、活性センシング領域を覆うフローチャネルを作り出すことによって可能とされる。各フローチャネルは、SPR活性センシング領域上での緩衝液またはサンプルの流れを許容する入口と出口を有する。薄膜センシング表面は、生体分子(「リガンド」)が被覆上に恒久的に固定化されることを可能とする重合体被覆を有するように誘導体化される。固定化された生体分子は通常、サンプル中に含まれた別の生体分子(「アナライト」)についての結合特異性を有する。この結合の強度は、単純に結合レート定数割る解離レート定数である、親和性定数によって与えられる。SPRに基づいたバイオセンサーは、結合および解離イベントの進行をリアルタイムで記録するので、これらの定数を測定することが可能である。
【0007】
特に注目すべきは、そのような相互作用の動力学的分析である。測定すべき重要な定数には、流れているサンプルとセンシングエリア上に固定化されたリガンド中のアナライトの間の会合と解離が含まれる。他のファクター(例えば、サンプルの質量輸送特性)も知ることが重要である。これらは、その上に混合物の反応性内容物と相互作用するように受容体化学物質(リガンド)が位置しているところのセンシングエリア上に、一つ以上の化合物(アナライト)を含んだ液体混合物を流すことによって決定される。サンプルの異なる濃度(例えば、混合物中の一つ以上のアナライトの異なる量)を使うことは、そのような特性が正確に測定されることを可能にするのに重要である。
【0008】
これらの既知のタイプのシステムから複数の濃度情報を達成するための異なるやり方がある。一つの従来のやり方は、各々が異なる濃度を有する、溶液の異なる注入可能な容積を使うことである。一つの溶液がセンシングエリアに跨って流され、データが収集される。センシングエリアはそれから、前のサンプルの内容物を取り除くようにセンシングエリア上に「洗浄」流体を流すことによって再生される。つまり、アナライトが固定化されたリガンドに結合されるときには通常、別のアナライト注入を実行するために、相互作用は反転され(「再生され」)なければならない。しかしながら、表面を再生することは、固定化されたリガンドのいくらかを損傷することができ、それにより後続のテストのための減少された表面容量に結果としてなる。
【0009】
WO2004/109284に開示されているように、異なる濃度を持った溶液の順次注入された容積を再生無しで使うことができる。このステップ注入アプローチでは、アナライトは低濃度で第一の容積に注入され、それから表面が飽和するまで別の容積へのより高い濃度が続く等々である。このようにして、再生を使うことなく異なる濃度での結合を表すデータを得ることが可能である。これらの異なる濃度はまた、それ自体内に変動する濃度を有する混合物から得ることもできる。WO2004/109295、US2003/0143565、および“Nonregeneration protocol for surface plasmon resonance: Study of high affinity interaction with high density biosensors.”Tang, Y., Mernaugh, R. and Zeng, X. (2006), Anal. Chem., 78, 1841-1848も参照。
【0010】
“Analyte gradient-surface plasmon resonance: A one-step method for determing kinetic rates and macromolecular binding affinities.” Shank-Retzlaff, M.L. and Sligar, S.G. (2000), Anal. Chem., 72, 4212-4220によると、その中にインライン勾配マーカーの働きによって濃度勾配が存在するところのサンプルを連続的に注入することによって、表面の再生は避けることができる。望ましい動力学的定数を決定するようにデータを処理するために使われる動力学的モデルは、単一注入中の変化するアナライト濃度を取り入れるように変形される。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、濃度の範囲を達成するのに複数の離散容積または注入を要求すること無く、相互作用の動力学的分析を容易にする濃度の勾配を、フローセルに直ぐに隣接してまたはフローセル内に提供する方法を含む。この勾配は好ましくは、フローセル入口に直接隣接してまたは典型的には注入ポイントにおけるサンプル/緩衝液分散の領域であるものの中で、フローセルのフローチャネル中に形成される。また本発明の新規な側面に含まれるものには、望ましい勾配を得る勾配生成装置と方法があるが、本発明の様々な実施形態は既存の流体工学的システムを使って実装することができる。勾配は、再現可能であるタイプのものであっても良く、またはそうではないものであっても良い。どちらにしても、しかし、本発明は勾配が決定されて動力学的分析に使われることを可能とする。
【0012】
述べられたように、キャリア流体中の成分の変動する濃度を有する連続的な勾配流体は、フローセルに接続されたサンプル保持チャネルの少なくとも一部内でそれに沿ってかまたは、フローセル自体の内部に作り出される。連続的勾配流体は、連続的注入で、フローセルまたはフローセルのセンシング領域中に直接注入される。本発明のより広範な側面を制限することなく、様々なコンポーネンツと勾配がここに含まれる。本発明のアナライト勾配方法は、濃度勾配のアナライトとその中に第一の液体の第一の部分が配置されているフローセル内の一つ以上のセンシング領域上に固定化されたアナライト結合種の間の結合相互作用を特徴付けることができる。この方法は、第一の液体の第二の部分中に連続的アナライト濃度勾配が生成されるように、第一の液体の第一の部分と近接する第一の液体の第二の部分と、一つ以上のアナライトを含んだ液体サンプルを混合することからなる。このアナライト勾配は、フローセルを通して低アナライト濃度から高アナライト濃度へ流される。
【0013】
更には、この発明は複数成分勾配を提供することができる。例えば、もしこれらの勾配がお互いに向けて親和性を有する2つの分子(AとB)のためのものであれば、勾配中のあらゆるポイントにおける2つの反応物の比は変化する。一旦作り出されると、2つの成分は結合平衡に近づくことが許容され、複合化されていない成分Bの濃度はバイオセンサー濃度分析物中で決定される。好ましい実施形態では、質量輸送が制限された濃度分析物が勾配に沿ったBの濃度を明らかにするのに使われても良く、これはそれからAの濃度と、フィットされた親和性モデルの関数としてプロットされる。この方法における利点は、単一注入が相互作用についての親和性定数を明らかにするのに使われることができることである(従来の親和性分析物は、複数の濃度と数時間を完了するのに要することができ、それは試薬安定性が乏しいと可能ではないかも知れない)。
【0014】
本発明の別の側面では、バイオセンサー内の勾配注入方法は、勾配成分溶液の間にバルク屈折率差が存在するように勾配を構成する溶液の少なくとも一つの組成を調整することによって決定された勾配プロファイルを提供する。勾配はそれから一つ以上のセンシング表面上に注入される。方法は更に、勾配注入中の全ての時間においてセンシング表面にある各勾配成分溶液の相対的比率を決定するために、勾配注入中のバルク屈折率変化へのバイオセンサーの応答を記録することを含む。
【0015】
本発明の様々な実施形態で以下の一つ以上を達成することができる。再生は要求されない。ここで単一注入は、幅広い濃度範囲に渡ってアナライトの固定化されたリガンドへの結合を達成し、よって非線形曲線フィッティングを使って動力学的定数を決定することに付随するエラーを低下させる。複数のサンプルを準備する必要はない。勾配プロファイルが濃度は非常に大きな範囲に渡って変動することを確かにするので、飽和する濃度の事前知識への依存はより決定的に重要ではない。この方法は、単一注入用量応答曲線を作成するのに採用されても良い。
【0016】
従って前述から、本発明の全般的な目的は、バイオセンサー内で単一注入勾配を提供するまたは使用するための新規で改良された方法と装置を提供することである。本発明のその他の更なる目的、特徴、定義、および利点は、添付された図面との関係で好ましい実施形態の以下の記載が読まれた時に、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、それと共に本発明が実装され得るところの従来技術のバイオセンサーのブロック表現である。
【図2A】図2Aは、例えば、図1のフローセル中に緩衝液とサンプルのフローを入力するのに使われた従来技術のサンプルループとサンプルループバルブの概略図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに描かれたサンプルループで使われることができるような従来技術の緩衝液/サンプルインターフェースを表す。
【図3A】図3Aは、本発明の一実施形態を実装するように適応された図2Aのコンポーネンツの概略図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに示された構成を使って本発明によって提供された単一注入濃度勾配を表す。
【図3C】図3Cは、図3Bに示されたサンプルの濃度勾配を表すグラフである。
【図4】図4は、図3Cの濃度勾配の連続的注入に対応するシミュレーションのためのSPR型バイオセンサーについての屈折率の変化を表すグラフである。
【図5】図5は、注入された蔗糖勾配についての変化するバルク屈折率に応答した(屈折単位の)曲線を示す。
【図6】図6は、図5に示された応答の正規化されたグラフである。
【図7】図7は、図6の正規化された曲線と実質的に一致するようにフィットされたシグモイドモデル曲線を示す。
【図8】図8は、(1)抗インターロイキン2抗体で被覆された表面上のインターロイキン2のシグモイド勾配注入についての実験的に得られた結合応答曲線と、(2)フィットされたモデル曲線、の両方を示す。
【図9】図9は、線形濃度勾配を表すグラフである。
【図10】図10は、指数的濃度勾配を表すグラフである。
【図11】図11は、別の指数的濃度勾配を示すグラフである。
【図12】図12は、例えば、本発明の一実装においてシグモイド勾配から線形勾配を達成するのに使われ得る、フローセルと隣接する勾配発生器を表すブロック図である。
【図13】図13は、それで指数的勾配を得るところの実装に関するブロック図である。
【図14】図14は、それで本発明のための様々な勾配を得るところのマイクロミキサーの概略図である。
【図15】図15は、本発明を使ったシミュレーションからの3つの勾配プロファイルを示す。
【図16】図16は、図15の勾配の指数的テール部分が最初に使われて注入されるような、図15の実質的に線形な曲線の変換を示すグラフである。
【図17】図17は、4つのシミュレーション:単一濃度サンプル、線形勾配、指数的勾配、シグモイド勾配、についての応答曲線のグラフである。
【図18】図18は、より複雑な勾配プロファイルを描く。
【図19】図19は、期待された最大バルク屈折率応答を使うことによって正規化された図18の勾配である。
【図20】図20は、そこから親和性定数が単一注入から決定されたところのシミュレーションされた応答(および一致するフィットされたモデル曲線)である。
【図21】図21は、そこからリガンドをもった抑制剤の相互作用の正しい動力学的値が単一注入から得られたところのシミュレーションされた応答(および一致するフィットされたモデル曲線)である。
【図22】図22は、そこでアナライト−リガンド複合体の解離が始まるところの濃度を決定するのに使われたもののような、リン酸の勾配についての理想的応答曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
それと共に本発明を使うことができるところのあらゆるタイプの従来のバイオセンサー2が図1に表されている。そのようなバイオセンサー2は、一つ以上のフローセル4を含み、そこには、その上に固定化され、それと共に一つ以上のタイプの分子(アナライトと呼ばれる)が既知のやり方で結合反応(例えば、会合するや解離する)を形成することができるところの、一つ以上のタイプの分子(リガンドまたはアナライト結合種と呼ばれる)を有する一つ以上のセンシングエリアがある。
【0019】
アナライトを含んだサンプルは、フローセル入口に直接接続する好適な流体フローコンポーネンツ6を通してそのようなフローセルに入力される。流体フローコンポーネンツ6は、フローセルの入口に直接接続された細長いサンプル保持チャネルを提供する。このサンプル保持チャネルは、フローセルに隣接し、それは勾配がフローセル中に直接通信されることができるように本発明の一側面に従って勾配が作り出されるところである。サンプル保持チャネルは好ましくは、使用されるサンプルの容積よりも小さくない(または等価的に、以上の)容積を有する。発明の別の側面では、勾配はフローセル自体内に作り出されることができる。
【0020】
一つ以上の流体ソース8は、サンプルまたはサンプルの成分を流体フローコンポーネンツ6に提供する(一般のサンプルは典型的には、一つ以上のアナライトと、アナライトを運ぶ一つ以上のリガンドを含み、もし複数のアナライトサンプルが使われれば、そのようなキャリア流体は、サンプル緩衝液または他のアナライト含有液体を含んでいる)。従来型のソースは、注射器および他の手動注入器や、例えばオートサンプラーのような自動化されたソースを含む。流体ソース8はまた、既知の機能と組成の一つ以上のタイプの緩衝液(アナライトをもたない非反応性の液体)も提供する。
【0021】
流体、典型的にはバイオセンサーに対する液体は、一つの流体がチャンネルまたはフローセル中に以前あった別の流体を部分的に置き換え、それにより勾配が形成されることを引き起こすように、コンポーネンツ6のサンプル保持チャネル中に(またはフローセル自体内に)装填される。望まれる特定の勾配または全体システム内での系列化に依存して、緩衝液が最初に装填されサンプルがそれに続くか、その逆であることができる。しかしながら、一般的にサンプルは、勾配サンプルの低濃度端から高濃度端へセンシングエリアに跨って流される。
【0022】
サンプルがフローセル4に入力された時に、アナライトとリガンドの物質間の会合および解離反応が、例えばSPR型のバイオセンサー中の屈折率を変え、バイオセンサーがどのようなタイプであれ、図1に示された一つ以上のシステム10を規定する好適なコンポーネンツ中で、これらの反応が感知され、データが収集され、分析がなされる。
【0023】
特定の例として、SPRバイオセンサーの一つのタイプは、当該技術で既知の通り、レーザー、ポラライザー、プリズム、金スライド、およびフォトダイオード検出器を含む。フォトダイオード検出器は、サンプルフロー中のアナライトと金スライド上のリガンドの間の会合および解離反応によって影響された金スライドの屈折率に応答する。検出器からのデータ信号は格納することができるが、当該技術で既知の通り、データは最終的にはシステム10の数値処理コンポーネンツで使われる(例えば、好適なアルゴリズム的および制御ソフトウェアでプログラムされたマイクロプロセッサーに基づいた回路)。
【0024】
一般に、本発明の好ましい実施形態は、それと共に単一注入で一つ以上のアナライトの異なる濃度が提供でき、会合、解離および好ましくは質量輸送のデータが収集される、バイオセンサーのあらゆる好適なタイプを使って実装することができる。いくつかの分析的側面も本発明に含まれているが、そのようなバイオセンサーで既に使われている数値処理技術への付加物としてである。
【0025】
図2Aを参照すると、本発明のために適応されることができる流体フローコンポーネンツ6の一実装は、6ポート2ポジションサンプルループバルブ14のような、従来のフロー注入分析インジェクターバルブの2つのポートの間に接続された従来のサンプルループ12を含む。従来の使用では、ポンプ(図示されないが流体ソース8の一タイプを構成している)によって緩衝液が供給され、ポンプからバルブ14の緩衝液入力ポート中に流れ、回転バルブがその「装填」位置にある時にバルブ14の別のポートから接続導管15を通してフローセル4中へ直接流れ出る。装填位置にある時、サンプル(つまり、アナライトを含んだ流体)は、例えば、注射器を使って手動で、またはオートサンプラーを使って自動的に、装填されても良い(そのような注射器、オートサンプラー、または他のサンプル装填コンポーネントは、図1の流体ソース8の一部である)。最適な再現性のためにはオートサンプラーが好ましい、装填は、図2にラベル付けされている「装填ループ」または「注入ポート」を通して、サンプルループ12中に起こる。このバルブ設定でのサンプルループ12からのフローは、バルブ14の「ループ廃物」ポートを通して出る。
【0026】
図1および2Aに示されるフロー注入システムは、当該技術で既知の従来の注入と本発明の勾配注入を行うのに使われることができる。従来の注入を行う際には、サンプルがサンプルループ中の既に含まれている緩衝液と混合するのを防ぐのに空気バブルを使っても良い。従来のフロー注入では、バルブ14のポートとポートへの接続は、バルブ14が「注入」に切り替えられた時にループ中に一方向に装填されたサンプルが反対方向に流れ、それによりサンプルループ12の内容物がフローセル中に流れるように、配置されている。これは、部分的に満たされたループ中に含まれたサンプルが、遅延なくフローセルに入ることを許容する。これは図2Bに表されており、そこではサンプルループ12(図2Aから明らかなようにバルブ14の緩衝液入口ポートをサンプルループに接続する、バルブ14の以前の「注入」状態中のような)中に以前あった緩衝液16が、その装填状態にあるバルブ14で装填されたサンプル20からの空気バブル18によって分離される。装填方向は図2Bで右にであり、注入方向は図2Bで左にである。
【0027】
図3は、本発明の一つのアプローチを使って作り出された勾配を示す。このアプローチでは、バルブ14のサンプル入力(「装填ループ」)およびサンプル出力(「ループ廃物」)ポートは、勾配が低濃度から高濃度へフローセル中に流れることを確かにするために、逆転されている。これは図3Aに示され、そこでは「装填ループ」および「ループ廃物」機能は、図2Aに示された従来の向きから逆転されている。だから同じサンプルループ12とサンプルループバルブ14が使われ、バルブ14のこれら2つのポートから/へのフローだけが変えられる。6ポート2ポジションバルブ14は依然として注入状態とサンプル装填状態の間で回転するが、図3Aに示されるようにサンプル装填ポートとループ廃物ポートを再配置することにより、ループに最初に入るサンプルが、また最初に出る(ファーストイン、ファーストアウト)。
【0028】
本発明のこの例を続けると、前に図2の従来の装填と注入においてそうであったように、サンプルループ12中に緩衝液がある(もしそうでなければ、バルブ14をその注入状態に切り替え、それからサンプルループ12中に緩衝液を流すことによって、それはサンプルループ中に入れることができる)。サンプルループ12中の緩衝液のこの部分は、導管15およびフローセル4中の緩衝液の一部と近接している。本発明では、しかし、バルブ14がその装填状態に入れられた時に、サンプルはサンプルループ12のより低い端の中に流される(図3Aに見られる「より低い」)。例えば、空気バブルが最初流体ソース8の注射器の中に吸引され、サンプルが続く;装填および注入に際してサンプルの先頭または先端となるものにおける、終端バブルは要求されない。サンプルはそれから、注射器からバルブ14の新たな装填ループポートを通してサンプルループ中に装填される。サンプルの先端をサンプルループ中に既にある緩衝液から分離する終端バブルは無いので、混合はそれらの流体が一緒になるサンプルループ中の縦方向容積に沿って起こる。これは、前述したこれまでの従来技術とは反対に、サンプルをファーストイン、ファーストアウトのやり方で装填する。つまり、本発明では、サンプルループ中に装填されたサンプルの第一の部分はまた、フローセル中に注入されたサンプルの第一の部分でもある。これは図3Bに描かれており、そこではサンプル22の先頭部分が緩衝液24のテール部分との混合に強制されるのにつれて、濃度勾配が形成されている。このやり方で作り出された勾配のプロファイルは、最適化された時には常にシグモイドである。しかしながら、第二の成分が注入されるレートを変えることで、曲線の傾きを変える。加えて、勾配プロファイル全体を変えるように各サンプルの相対的容積を変えても良い。シグモイド曲線は生物科学では一般的であり、通常は4パラメータロジスティック方程式を使ってモデル化される。図3Bでは、先端(サンプルのファーストイン部分)においては比較的僅かなサンプルしかないが、濃度はサンプルの主体(ラストイン部分)に向けて増加する。よって、これは、本発明がサンプルループ内部の少なくとも二つの流体の間の濃度勾配を能動的に成形する一つのやり方である。図3Bは、インターフェースの長さに沿って緩衝液とサンプルの相対的量を描くように描かれたものであることに注意すべきである;しかしながら、実際には、これらの量は断面エリアを跨いで混ぜられる。つまり、実際には、サンプルの緩衝液に対する比は、インターフェースされたまたは分散された領域の微分長セグメント内にあるが、液体は混合され、これらのセグメント中にはっきりとした緩衝液/サンプル分離ラインは無い。
【0029】
分散されたサンプル/緩衝液インターフェースの長さに沿った濃度の変化は、図3Cのグラフによって表されている(グラフの0距離点が、図3Bで向けられているようなサンプルループセクションの左端に対応する;XNポイントが、100%サンプルが始まるところのサンプルループ12中のポイントに対応する)。このグラフは、シグモイド勾配を示す。シグモイド濃度勾配は、既知のシグモイド4パラメータロジスティック表現によって良く特徴付けられる。装填注射器中に吸引された空気バブルの存在は、その空気バブルは図3の例においてループ内のサンプルのテール端にあるようになるのだが、サンプルのテール端における注入駆動緩衝液の混合を防止する。もしそのような混合が起これば、それはより複雑な勾配プロファイルに結果としてなるであろう。
【0030】
好ましくは、濃度勾配は、手頃な時間でフローセルのセンシング表面の飽和を確かなものとするように選択される。図3の例で一旦望ましい勾配が確立されると、バルブ14はその注入状態に切り替えられ、サンプルループ12の内容物がそれから従来のやり方でフローセル4中に注入される。例えば、緩衝液の別の部分は、緩衝液のこの追加の部分がサンプルの勾配をサンプルループ12から導管15を通してフローセル中に押し出すように、図3Aのバルブ14の緩衝液入力ポートを通して、サンプルのラストイン端に対抗して流される。好ましくは、注入は、勾配サンプル流体がサンプルループからフローセル中に可能な限り短い導管15を通して直接流れている、単一の連続的注入で起こる。異なる濃度についての結合反応をマスクしないようにするため、勾配は、サンプルの最低濃度端が最初に入り最高濃度端が最後に入るように、フローセル中に注入されるべきである。これは、例えば図3Bに示された勾配で起こる。
【0031】
図3を参照して上述されたシグモイドプロファイルを決定するのに、記載されたようにサンプル勾配が作成された。詳しくは、勾配を形成するのに高インデックス溶液(即ち、水の中の蔗糖)が採用された。図4は、検出された応答とフィットされた曲線を示す。図4では、曲線26は、図3を参照して上述されたようにして得られた水の中の蔗糖のシグモイド勾配で装填されたループを注入することから得られる屈折率応答曲線である。曲線28はフィットされた表現である。フィットされた曲線28は、実際の曲線の良い近似であり(図4で見える誤差は、実際のデータ曲線端26a、26bに対する曲線端28a、28bにおいてのみ起きている)、よって曲線のための表現がシグモイド勾配動力学的注入中の注入されたアナライトの変化している濃度を記載するのに使われても良い。だから、変化している濃度を、数学的に規定して、アナライト/リガンド反応の動力学的特性を決定するための既知の処理アルゴリズム中に挿入することができる。
【0032】
動力学的定数を決定するためのアルゴリズムの一つのタイプの例は、以下の微分方程式の組によって与えられる従来の2区画相互作用モデルである。これらの方程式は数値積分によって、または解析的な厳密解を見つけて、それから最適パラメータ値を見つけるように非線形曲線フィッティングを施すことによって、解かれる。
【0033】
A=Conc
A0=0
dA/dt=kt*(Conc−A)−(ka*A*B−kd*AB)
B0=Rmax
dB/dt=−(ka*A*B−kd*AB)
AB0=0
dAB/dt=(ka*A*B−kd*AB)
総応答:
AB+RI
ここで、A=表面におけるアナライト濃度
B=リガンド濃度
ka=会合レート定数
kd=解離レート定数
Conc=注入されたアナライト濃度
AB=A+Bから形成された複合体
kt=質量輸送定数
Rmax=最大アナライト結合応答
RI=バルク屈折率応答
表面におけるアナライトの濃度(A)が、質量輸送定数ktによって支配されていることに注意。もしktが大きければ、AはConcの良い近似である。勾配注入をする時には、Aも時間に対して変化している。よってこの変化は、単純にAに、勾配プロファイルとよって全ての時間(t)におけるアナライト濃度を記述する或る関数Gを掛けることによって、含められても良い。
【0034】
A=G*Conc
図3Bでは、勾配はシグモイドであり、それは以下の4パラメータロジスティック関数によって記述される。
【0035】
G=Rhi−((Rhi−Rlo)/(1+(t/A)^B))
ここで、Rhi,Rlo、A&Bは全てフィットされたパラメータである。
【0036】
更なる詳細では、本発明に従って準備された勾配に沿ったアナライトの濃度は、もし勾配注入応答が動力学的分析のために使われるものであるならば、決定されるべきものである。最大アナライト濃度のみが知られており、勾配関数(即ち、注入中の全ての時間におけるアナライト濃度を規定する厳密な関数)も知られている良く定義された勾配形成手段が採用されない限り、勾配に沿ったアナライト濃度は未知のままである。動力学的/親和性モデルフィッティング中に勾配に沿ったアナライト濃度を未知のパラメータとしてフィッティングすることは、理に適った結果を生み出し得るが、もし勾配に沿ったアナライト濃度を明白に決定することができれば、それが好ましい。このために、勾配の両成分の間にバルク屈折率オフセットを生じさせるような成分をサンプルに追加することによりアナライト勾配を明らかにすることが可能である。すると、勾配が作られるにつれて様々な割合で混合される時に、各成分の相対的比率をバルク屈折率応答から決定し得る。実効的には、相補的であるアナライト勾配と蔗糖勾配(例えば)の両方が同じ勾配サンプル中に準備される。その代わりに、もし勾配形成および注入が非常に再現可能であると仮定することができるならば、蔗糖勾配注入は、アナライト注入とは別に準備されて注入されても良い。特定の勾配形成および注入条件の組について一旦勾配がこのように規定されると、その規定は格納されて将来の実験で使われても良い。もしアナライト勾配形成および注入に顕著な変動性が期待されるのであれば、バルクインデックス勾配がアナライト勾配に追加されるべきである。蔗糖は、飲料/ソフトドリンク業界において使われているbrix(蔗糖濃度)値テーブルから既知の屈折率の標準が容易に準備されるので、便利な添加剤である。しかしながら、多くの種類の他の物質を採用しても良い;例には、親水性ポリマー、カーボハイドレート、グリコール、および水混和性溶剤が含まれる。
【0037】
従って、本発明は、バイオセンサー(例えば、光学的バイオセンサーのような)と共に使用するための勾配注入方法を含む。この方法では、勾配成分溶液の間にバルク屈折率差が存在するように、勾配を構成する溶液の少なくとも一つの組成を調整することによって、勾配プロファイルが決定される。この勾配は、一つ以上のセンシング表面上に注入される。勾配注入中のバルク屈折率変化へのバイオセンサーの応答は、勾配注入中の全ての時間においてセンシング表面にある各勾配成分溶液の相対的比率を決定するために記録される。
【0038】
一実装では、バルク屈折率の勾配は、アナライト濃度中に相補的な勾配を有し、勾配は二つ以上のセンシング表面上に注入され、アナライト勾配組成は、アナライトについての親和性結合リガンドを有していないセンシング表面上に記録されたバルク屈折率応答から推測される。より詳細には、バルク屈折率の勾配は、その全体の組成が第一および第二のセンシング表面上に注入される、一つ以上のアナライト中に相補的な勾配を有することができる。第一のセンシング表面は勾配中に含まれた一つ以上のアナライトについての親和性を有する捕獲物質で被覆されており、第一のセンシング表面からの応答はアナライトの捕獲物質への結合から結果として得られるバルク屈折率変化および表面屈折率変化の両方からの貢献を表す。第二のセンシング表面は親和性捕獲物質で被覆されておらず、第二のセンシング表面からのバイオセンサー応答はアナライト結合無しのバルク屈折率変化を表し、注入中のアナライト勾配組成を推測するのに使われる。一つ以上のアナライトの第一の表面への結合による応答は、第一のセンシング表面からの応答から第二のセンシング表面の応答を引く、または割る、ことによって解決される。例えば、第二のチャネルからのバルク屈折率応答は、より高い屈折率勾配成分の100%純粋溶液についての最大の期待された応答によって応答を割り、それから勾配のプロファイルを注入時間の関数として好適にモデル化する回帰曲線フィッティング手順を使って方程式をフィッティングし、それから勾配注入中の時間の関数としてのアナライト濃度を推定するために、この勾配関数を勾配を準備するのに使われた開始アナライト濃度に掛けることによって、相補的アナライト勾配の濃度を推測するのに使われる。更により特定には、アナライト勾配は、高屈折率物質中の勾配と相補的だが反対であり、勾配関数がGであると、勾配注入中の時間の関数としてのアナライト濃度を推定するのに1−Gが開始アナライト濃度に掛けられる。
【0039】
別の実装では、勾配は単一のセンシング表面上に注入され、アナライトの固定化されたリガンドへの結合の個別の貢献とバルク屈折率変動は、予め規定された数学的モデルの非線形回帰曲線フィッティングを採用することによって注入時間の関数としての単一の応答曲線から解決される。
【0040】
勾配成分溶液のバルク屈折率は、その溶液の屈折率を変えるがアナライトの固定化されたリガンドへの結合とは顕著に干渉しない物質または試薬の追加によって調整されても良い。非限定的な例には、糖分、ポリサッカライド、グリコール、ハイドロゲル、塩分、親水性ポリマー、および水混和性溶剤が含まれる。
【0041】
次に、センシング表面上に固定化された抗IL−2抗体とのIL−2の相互作用の動力学的分析に適用された発明の応用が記載される。蔗糖勾配が準備されて注入され、その勾配は、実際のアナライト勾配注入のために使われるべきであるものと同じ勾配準備および注入パラメータを使った既知の屈折率のものである。光学的バイオセンサーは、勾配に沿った変化するバルク屈折率に応答して、図5に示されるような典型的なシグモイド応答曲線30を与える。曲線は、図6に示されるように0から1.0の限界をもった曲線32を生み出すようにy−正規化されている。シグモイドモデル[即ちG=Rhi−((Rhi−Rlo)/(1+(t/A)^B))]は、図7に曲線34によって示されるようにこの曲線32にフィットされている。全てのパラメータは、Rhi=1.016、Rlo=−0.2271、A=77.75およびB=0.009097を与えるモデルフィットから得られている。よって、関数Gはここでは勾配注入についての厳密な勾配プロファイルを規定し、同じやり方で準備されて注入されたアナライト勾配中のアナライトの濃度を規定するのに使われる。先に規定されたような2区画モデルがそれからフィットされる。その代わりに、センシング表面においてアナライトの非定常状態濃度がある時には質量輸送限定はそれ程顕著ではないので、単純なモデルをフィットしても良い。従って、単純なモデルは以下のように書くことができる。
【0042】
A(溶液)=Conc*G
G=1.016−((1.016+0.2271)/
(1+(t/77.75)^0.0091))
A[0]=0
B[0]=Rmax
dB/dt=−(ka*A*B−kd*AB)
AB[0]=0
dAB/dt=(ka*A*B−kd*AB)
総応答:
AB+RI
図8に示す指数的結合応答曲線は、抗IL−2抗体(即ち、リガンド)で被覆された表面上のインターロイキン2(IL−2)のシグモイド勾配の注入についてのものである。勾配容積は125μLであり、25μL/分で注入された。結合されたIL−2がそれからおよそ400秒の間解離することを許容された(即ち、指数的衰退フェーズ)。グラフは、実際のIL−2結合曲線36とフィットされたモデル曲線38を含む。動力学的定数は、ka=3.2×105M−1s−1、kd=1.6×10−3s−1、KD=5nMであった(KDは解離親和性定数=kd/ka)。これらの値は、複数固定濃度注入を採用する従来の動力学的分析によって決定された相互作用定数と一致している。
【0043】
別の実施形態では、注入フローレートは、勾配が注入されるにつれて「その場で」変化させられても良い。これは、注入された勾配自体は連続的勾配であるとしても、勾配中にステッププロファイルを引き起こす。
【0044】
一般に、サンプル注入方法を変形することによって幅広い種類の勾配プロファイルを生成し得る。この発明の範囲内である他の勾配を制限しない例が、図9〜11に示されている。図9は、サンプルの線形的に増加する濃度を描いている。図10と11は、サンプルの二つの異なる指数的に増加する勾配を描いている。
【0045】
図12は、線形勾配を得る一つの方法を提供するのに使われることができるコンポーネンツを描いている。これは、それにより連続的勾配流体の選択された部分を使うことができる本発明の別の側面の一例である。これは、単一の連続的注入中に濃度の勾配のためのテストイベント全体が得られるように、そのような選択的注入が依然として単一の連続的注入で行われるので、ステップまたはセグメント化された注入ではない。
【0046】
図12の描写では、図3を参照して記載されたように前に記載されたシグモイド勾配がサンプルループ中に形成される。図3Cでは、ポイントXAとXBの間のような実質的に線形な領域があることに注意。この勾配を本発明のこの実装に従って隣接する勾配生成器42からフローセル40中に注入するには、注入は最初、ポイント0からポイントXAまでの勾配サンプルの部分が除去される(即ち、この非線形部分は廃物に流れる)ように、廃物1ポート44が開かれ廃物2ポート46が閉じられて進められ、それから実質的に線形なXAからXBの部分がフローセル40のセンシング領域48上を流れるように、ポート44が閉じられポート46が開かれる。ポート制御はそれから、ポート44、46の状態を逆転させて、勾配の残りを廃物に流す(ポイントXBの後の残りの非線形な部分)。
【0047】
図13を参照すると、以下に更に記載されるように閉じられたミキサー50を使うことによって指数的勾配を得ることができる。そのようなミキサー50は、もし本発明のために使われれば、実効的にサンプルループ実施形態の導管15があるところに、即ち、フローセル中への直接入力のために、置かれる。これらの二つを直列にすることは、二つの異なる指数的勾配を得るのに使うことができる。また、もしミキサーから追加されるよりも多くの液体を引き出すことによって勾配形成中に勾配メーカーの混合チェンバー内部の容積がインクリメント的に減少されるならば、線形勾配を得ても良い。もし入力フローレートの出力フローレートに対する比が0.588であれば、アナライト中の非常に線形な勾配が存在する。多くの場合、もし比が0.5であれば十分に線形な勾配が作成される。このように形成された線形勾配は、勾配の最後の15%に渡って線形性から実質的にずれるので、このセグメントは通常廃棄される。
【0048】
上で言及された2区画モデルでの使用のために、例えば、線形勾配はアナライトの濃度が線形的に変化し、以下のように記述し得ることを仮定する:
A=C*t
ここで、Cは秒当りの濃度のインクリメント的な増加であり、
tはフローの時間(秒)である。
【0049】
指数的濃度勾配は、それから混合されるサンプルを閉じた容積中に注入することによって作り出すことができる。始めに閉じた容積中のサンプルの濃度は0であるが、一旦注入が始まると、サンプルは閉じた容積中の液体を置き換える。置き換えられた液体はフローセルに流れる。よって、本発明のこの実装のステップは:液体サンプルを混合チェンバー中に流すことと、液体サンプルと混合チェンバー中の他の液体が均質に混合され、スムーズな指数的アナライト勾配として特徴付けられる増加するアナライト勾配としてフローセルに出力されるように、混合チェンバーを動作させることとを含む。注入が進むにつれて、フローセル中に流れる置き換えられた液体中のアナライトの濃度は以下のように記述され得る。
【0050】
サンプル保持チャネルの他のタイプでの混合を使うことができる。例えば、サンプル保持チャネルは、サンプル装填注射器またはサンプル注入プローブまたは注入針の円筒を含むことができる。そこから種々の勾配を得ることができる別のタイプが、次に記載される。
【0051】
フロー注入分析(FIA)システムと一体化した勾配を準備する手段
勾配注入を行うことへの商業的に実現可能なアプローチとなるためには、低い容積が使われることが必要不可欠である。上に引用したShank-RetzlaffとSligarは、標準的勾配生成器を使って18ミリリッター(mL)の勾配溶液を準備し、それから勾配生成器からの出力が、SPR検出器によって調べられたフローセル中に直ちにポンプで送り込まれた。この18mLの容積は、商業的に有用なシステムにとって一般的に受け入れ可能であろうものよりも100倍大きな領域中にある。従って、低容積の勾配を準備する手段と従来の低容積流体取り扱いシステムとの一体化が要求される。また、システムは、高品質低容積フロー注入分析システムとも一体化されるべきである。
【0052】
従って、現発明の別の好ましい実施形態では、勾配は、ミニアチュア混合容器から液体を追加し、取り除く、二重ルーメンサンプルプローブを採用することによって準備される。入力/出力フローレートは、勾配プロファイルを成形するように適切に選ばれる。生体分子相互作用分析のために好適なバイオセンサーは、低サンプル容積を処理するように最適化される。液体の低容積の吸引と分取のために精密な注射器ポンプが採用される。
【0053】
本発明のこの実施形態の勾配作成は、革新的なマイクロ混合チェンバーと組み合わされた従来のオートサンプラー流体工学的構成を使って行われる。従来の勾配メーカーは、チェンバーの底に置かれた回転する磁石攪拌器を採用することによって混合を達成する。これらの商業的に入手可能な磁石攪拌器の大きなスケールは、低容積勾配の生成には好適ではない。安定した勾配を作成するのに要求される容積が50mLを超える商業的に入手可能な勾配生成器を使って勾配を作り出すことが可能である。生体分子相互作用分析では、0.5mLの容積は非常に大きいと考えられる。これは、試薬のコストとマイクロ流体工学的サンプル配送システムの使用による。
【0054】
図14に示されたこの本発明の一実施形態では、ミキサー52が、あらゆる好適なタイプのミニアチュアバイブレータ56(例えば、ミニアチュア非対称モーター、ピエゾ結晶、アコースティック/ソニック)を使うことによって混合チェンバー54中の液体を混合する。混合は、いかなる他の能動的混合手段を要求することもなく、良く混合された液体が出力ストリーム中に流れることを許容する、乱流混合を引き起こすバッフルのような構造をミキサーの内部に形成することによって達成することもできる。もし混合が十分でなければ、勾配は歪みによって苦しめられる;ただし、これらの歪みは多くの勾配プロファイルを生成するのに活用されても良い。バッフル配置は、不完全な混合によって特徴付けられるミキサー中の勾配プロファイルを変化させるように好適に選ばれても良い。ミニアチュアミキサー52は、オートサンプラーシステムのサンプル保持区画の内部または近傍に位置していても良い。
【0055】
図14では、勾配作成装置はまた、ロボットアーム(オートサンプラーシステムのロボットアームのような)上に搭載された二重ルーメンプローブ58からなる。ルーメン58aは入力ストリームに接続され、ルーメン58bは出力ストリームに接続される。各ストリームは、液体を分取または吸引可能な精密なポンプによって接続される/作り出される。ロボットアームとポンプは、オートサンプラーに隣接するサンプルラック上の離散した位置からのサンプルの分取および吸引のための一般的なオートサンプラー構成の一部であることができる。
【0056】
図14に描かれ上述した設備を使って本発明に従って勾配を生成するには、液体成分Aおよび液体成分Bのそれぞれによって満たされた2つのサンプル小ビンがサンプルラック中に装填される。オートサンプラーはそれから成分Aの規定された容積を吸引し、それをミキサー52の混合チェンバー54中に置く。プローブ58のチャネル/ルーメンはそれから、オートサンプラーの/に隣接する洗浄ステーションにおいて洗浄液で濯がれる。図14の特定の例に示されるように、どちらのルーメンも入力または出力であることができるが、オートサンプラーはそれから、ミキサー中の成分Aの容積と等しい成分Bの容積をルーメン58a中に吸引するようにプローブ58を動かすよう操作される。二重ルーメンプローブ58の先端58cはそれから、成分Aの既知の容積を有する混合チェンバー54の底に位置させられる。線形勾配を生成するには、成分Bが、規定されたフローレートでルーメン58aを介して混合チェンバー54中に追加されると共に、混合された液体(即ち、勾配)が、入力フローレートの2倍のフローレートでルーメン58bを介して同時に取り除かれる。混合チェンバー54内部の液体の総容積は、混合チェンバー54中に残存する液体がなくなるまで時間をかけて減少する。成分B中の線形勾配は、ルーメン58bの出力から回復される。最初のBの濃度はゼロであり、最後のBの濃度は100%である。
【0057】
出力ストリームは、分析のための一つ以上のセンシング領域上に直ちに向けられても良く、それにより勾配生成と分析が同時に行われる。勾配を保持チャネル中に格納して、勾配が或る後の時間に注入されることを許容することも可能である。サンプルをセンシング領域上に向けながら保持チャネルからのフローを逆転し、それにより逆の勾配に表面を晒すことも可能である。成分Bをミキサー中に置き、プローブから成分Aを追加することによって逆の勾配プロファイルを作成することも可能である。ミキサー入力/出力フローレートを変えることによって非線形勾配を生成しても良い。例えば、入力および出力フローレートをマッチさせる(即ち、入力フローレート=出力フローレート)ことによりミキサー内部の容積を一定に保持することで、指数的に衰退する勾配を作成しても良い。入力フローレートに対して出力フローレートを下げることによって、凹状勾配を作成しても良い。別の実施形態では、相対的入力/出力フローをその場で変えることによって複数の勾配を作成することも可能である。例えば、勾配は、指数的領域が続いた線形領域を有することができる。
【0058】
この勾配作成装置によって作成された成分B中の勾配のプロファイルは、以下の方程式によって予測することができる。
【0059】
B(t)=Bmax−(Bmax*e^(−Fin*t/V)
ここで、Bmax=成分Bの最大濃度
Fin =入力フローレート
V =時間t=V0+(Fout−Fin)*tにおけるミキサー中の容積で、
ここで、V0=t=0におけるミキサー中の容積で、
Fout=出力フローレート
図15は、上記方程式を使ってシミュレーションされた3つの勾配プロファイルを示す。図15では:(1)200μLのミキサー容積を使って37マイクロリッター/分(μL/分)の等しい入力および出力フローレートから結果として得られた凸状勾配曲線62;(2)37μL/分の入力フローレートと、74μL/分の出力フローレートと、200μLのミキサー容積から結果として得られた凹状勾配曲線64;(3)37μL/分の入力フローレートと、63μL/分の出力フローレートと、200μLのミキサー容積から結果として得られた線形勾配曲線66(この曲線66は85%まで近似的に線形であることに注意)。
【0060】
図15に示す線形勾配については、出力フローレートが入力フローレートよりも高いので、混合チェンバー中の液体の容積は減少する。この勾配はおよそ80%まで非常に線形であり、それから凸状になる。この勾配プロファイルは従って、異なる勾配プロファイルをもった2つの区別されたセグメントがあるマルチフェーズのものと考えられるべきである。この場合マルチフェーズの勾配プロファイルを作成するのにフローレートの変化は要求されなかった。成分B中のこの勾配は、指数的上昇フェーズ66aが線形領域66bの前にフローセルに入るように、図16に示されるように変換された時に特に有用である。これは、勾配が親和性および動力学的分析物でしばしば要求されるような幅広い濃度範囲をカバーすることを許容する。変換は単に成分を反対にすることを要求し、そこでは成分Bがミキサー中に置かれ成分Aが追加されて勾配を形成する。加えて、表面が低濃度から高濃度へと成分Bに晒されるように、勾配はそれから逆の順番でセンシング表面上に注入される。
【0061】
上述したのは、好ましくはフロー注入分析システムに一体化された、2成分液体勾配を生成する手段の実装である。混合区画は、第一の液体が混合区画中に置かれ、第二の液体が選択された既知のフローレートで追加されると共に、混合された液体勾配が選択された既知のフローレートでミキサーから取り除かれる時に、混合された液体が均質であることを確かにする。混合区画中に置かれた容積と、第二の液体ストリームのフローレートと、混合された液体の出力ストリームは、望ましい勾配プロファイルを生み出すように調整される。特定の実装では、混合区画の容積は1mLより少なく、装置は流体工学的オートサンプラーのサンプリング区画中に置かれている。上述した実装では、第二の液体ストリームと混合された液体の出力ストリームは、混合区画中に位置していても良い二重ルーメン液体プローブによって提供されており、そこでは各プローブルーメンは制御されたポンプ手段と流体接触している。
【0062】
選択可能なフローレートに関しては、勾配生成手段を実装するミキサーの好ましい実装は、それぞれの勾配を達成するように一つ以上の以下のフローレート関係を可能とする。上述したミキサーはこれを達成する。もし混合された液体の出力ストリームのフローレートが、追加された第二の液体ストリームのフローレートに等しければ、混合された液体の出力ストリームは、第一の液体中に第二の液体の指数的勾配を有する。もし混合された液体の出力ストリームのフローレートが、追加された第二の液体ストリームのフローレートの約2倍であれば、混合された液体の出力ストリームは、第一の液体中に第二の液体の線形的に増加する勾配を有する。もし混合された液体の出力ストリームのフローレートが、追加された第二の液体ストリームのフローレートの2倍よりも大きければ、混合された液体の出力ストリームは、第一の液体中に第二の液体の凹状勾配を有する。もし混合された液体の出力ストリームのフローレートが、追加された第二の液体ストリームのフローレートの2倍よりも小さければ、混合された液体の出力ストリームは、第一の液体中に第二の液体の凸状勾配を有する。もし混合された液体の出力ストリームのフローレートおよび/または追加された第二の液体ストリームのフローレートが間欠的に変えられれば、混合された液体の出力ストリームは、異なる勾配プロファイルによって特徴付けられた二つ以上のセグメントをもった、第一の液体中の第二の液体の複合勾配である。
【0063】
混合された液体の出力ストリームのフローレートが、追加された第二の液体ストリームのフローレートの「約2倍」であるという言及は、xと2xの名目上のフローレートを提供する商業的に入手可能な装置に基づいている。倍化された(2x)フローレートは線形性を近似するだけであるのに対し、1/2.73(前述した「第二の液体ストリーム」の入力フロー)と1−(1/2.73)(前述した「混合された液体の出力ストリーム」の出力フロー)のフローレート関係で、本発明では向上された線形性を得ることができる。この関係は、図15の線形勾配について上に示されている(37μL/分の入力フローレートと、63μL/分の出力フローレート)。63/37=1.7というこの出力/入力関係は、本発明のこの側面に関してここで使われた「約2倍」という用語に含まれている。そのような特定の場合には、約2倍よりも大きいことは、例えば図15の凹状曲線64について示されたように、入力フローの倍の出力フローを含むことができる。
【0064】
一定濃度と、線形、指数的、およびシグモイド勾配についてのシミュレーション結合応答曲線が図17に示されている。曲線68は、アナライト濃度が25ナノモル(nM)である通常の固定濃度注入である。曲線70は、同じ相互作用であるが濃度がゼロで始まり最終濃度が25nMに近づくまでスムーズに衰退する指数的勾配に従って増えるものについてである。曲線72は、濃度がゼロで始まり注入の最後において25nMである線形濃度勾配から結果として得られる。曲線74は、図8で実験的に決定されたものと同様のシグモイド形濃度勾配から結果として得られる。
【0065】
まとめると、どのようにアナライト勾配が決定され得るかについて3つのアプローチがある。
【0066】
1.もし勾配が非常に再現可能であれば、その数学的な形は一定であり、一旦規定されるとこれはサンプル緩衝液と流動する緩衝液の間にバルク屈折率差が存在しない全ての将来の勾配注入について使われ得る。フローレートの変動、サンプル容積およびループ容積は、モデル化されても良く、これらのパラメータはモデルフィッティングの時に入れられても定数として入れられても良い。よって、再現可能なアナライト勾配は、単純な数学的関数によって記述されることができ、この関数は、変化するアナライト濃度をその中に取り入れるように動力学的評価アルゴリズム中に組み込まれる。これは、先に記載された勾配メーカーによって作成された全ての勾配に適用される。
【0067】
2.もし規定された関数が適用されることを仮定できない複合勾配が何らかの手段によって準備されれば、その関数を規定するのにバルクインデックス勾配が上述したように採用されるべきである。この手順は、条件の特定の組(即ち、サンプル容積、ループ容積、フローレート、サンプル装填フローレート等)の下で勾配関数を規定することを許容する。この勾配関数はそれから、動力学的/親和性モデルフィットで適用される。一旦規定されるとこの関数は、同一条件が適用されることを仮定して、全ての将来の勾配注入で適用されることを仮定されても良い。
【0068】
3.もし勾配プロファイルが非常に複雑であれば、または正確に再現されていなければ、アナライト勾配でもってバルク屈折率勾配が生成されるべきである。通常、モデルをフィッティングする際の煩雑さを避けるように、サンプルのバルク屈折率と流動する緩衝液のそれをできるだけ近くにマッチさせることが薦められる。しかしながら、これらの煩雑さは、バルクインデックス変化が極めて高くない限り重要ではない。例えば、サンプル緩衝液のバルク屈折率が流動する緩衝液のそれよりも僅かに高い(例えば、100μ屈折率単位と等価である〜100RU)ことを単に確かにすることが可能である。すると、勾配が注入された時に、勾配プロファイルが参照チャネル応答中に存在し(低い非特定の結合を仮定して)、活性センシングチャネル(リガンドで被覆された)での応答は、結合相互作用とバルク屈折率勾配の両方の生成物となる。結合応答は、活性チャネル応答から参照応答を引くことによって決定される。勾配プロファイルは参照チャネルから決定され、これは注入中のアナライトの変化する濃度を推定するのに使われる。先に議論した4パラメータロジスティック表現が適切であり得る。複雑な多項式を含んだ、他の非線形モデルがフィットされても良い。もし勾配プロファイルに正確にフィットする好適な表現が見つけられなければ、単純に勾配自体を使うことが可能である。例えば、アナライトサンプル(即ち、成分B)に対して0.13%重量当り重量(w/w)の最終濃度まで蔗糖を追加しなさい。0.13%(w/w)の蔗糖を含んだ溶液は、100RUのバルク屈折率応答を与える。図18に示すような複雑なプロファイルを与える複合勾配を準備しなさい。もし勾配が、蔗糖の最大濃度に近づくことが許容されるように準備されれば、最大の期待された応答は100RUである。その時に、成分B(即ち、アナライト)の濃度もまた100%であることが仮定されている。従って、勾配は、図19に示されたような時間の関数としての単位勾配プロファイル(即ち、存在する成分Bの比率)を与えるように、期待された最大バルク屈折率応答で割ることによって正規化されることができる。時間tにおけるアナライトの濃度がそれから、最大アナライト濃度(即ち、成分B中のアナライト濃度)にその時間点における対応する比率を掛けることによって得られる。ポイント間の補間がオプションで採用されても良い。よって、そのような場合には、本発明の方法は、フローセルの第一のセンシング表面上にアナライト結合種をもったアナライトを結合すること、それにより結合反応を形成し、フローセルの第二のセンシング表面上にアナライト濃度勾配を流し続け、そこでは第二のセンシング表面はアナライト結合種を含んでいない;サンプル液体と第二の液体の間にバルク屈折率差を作り出すことと、その上のアナライト濃度勾配のフローに対する第二のセンシング表面の応答からバルク屈折率差に対する参照応答を検出することを含んだ、アナライト勾配のプロファイルを経験的に決定すること、そこでは参照応答はバルク屈折率の勾配を含んでいる;バルク屈折率の勾配をアナライト勾配として記録すること;変化するアナライト濃度を取り入れるために、アナライト勾配としてのバルク屈折率の勾配を少なくとも一つの動力学的評価アルゴリズムに組み込むこと、を含むことができる。
【0069】
本発明はまた、一つより多くのアナライトを有するサンプルとの使用も包含する。最も単純には、異なるアナライトを有する別の流体内に一つのアナライト流体があることができ、その流体の一つはキャリア流体と呼ばれることができる。そのような他の流体は、2つの流体を混合することが二重勾配を形成するように、結合されていないアナライト結合種を含み、そこではアナライトの濃度と結合されていないアナライト結合種の濃度の両方が連続的な勾配を形成する。例えば、もしこれらの勾配が、お互いに向けて親和性を有する2つの分子(AとB)についてのものであれば、勾配中のあらゆるポイントにおける2つの反応物の比は変化する。一旦作り出されると、2成分勾配は注入されても良い。もし勾配が直ちに注入されると、結果として得られる相互作用曲線は動力学的情報を有し、MotulskyとMahanによって導出され(”The Kinetics of Competitive Radioligand Binding Predicted by the Law of Mass Action”, Molecular Pharmacology, 25:1-9 (1983)参照)、後にKarlssonによって変形され(”Real-Time Competitive Kinetic Analysis of Interactions between Low-Molecular-Weight Ligands in Solution and Surface-Immobilized Receptors”, Analytical Biochemistry 221: 142-151 (1994)参照)、Nieba, Krebber, Pluckthunによって更に変形された(”Competition BIAcore for Measuring True Affinities: Large Differences from Values Determined from binding Kinetics”, Analytical Biochemistry 234: 155-165 (1996)参照)、競合的動力学モデルを使って分析されても良い。これらのモデルは、会合レート定数と解離レート定数を返す。もし勾配成分が、注入される前に定常状態複合体を形成することを許容されていれば、相互作用についての親和性定数を生み出すように、結果として得られる結合曲線が調べられても良い。
【0070】
アナライト勾配を使った生体分子相互作用分析(BIA)の更なる応用
競合的溶液フェーズ親和性
溶液フェーズ親和性モデルの競合的2成分勾配は、競合剤/抑制剤が存在する中で観測された結合レート中の変化を分析することによって素早く分析することができる。上に引用されたNieba他の文献は、アナライトが自由リガンド(または競合剤)の異なる濃度と共に混合される一連の従来の結合相互作用曲線についての観測されたレート定数の決定に基づいた競合的親和性アプローチを報告した。このモデルは、前述したKarlssonとMotulsky/Mahanのモデルに基づいている。Nieba他の方法では、2成分勾配は、注入される前に平衡に達することを許容されている。単純な1:1相互作用モデルの微分方程式は上述された。複合体形成の変化のレートが記載された主要な微分方程式はこれである。
【0071】
dAB/dt=(ka*A*B−kd*AB)
ここで、A=アナライト濃度
B=リガンド濃度
ka=会合レート定数
kd=解離レート定数
AB=A+Bから形成された複合体
バイオセンサーは、AB形成がバイオセンサー応答Rであるように複合体形成を測定する。会合フェーズについての微分方程式の積分形は従って、
Rt=(r0/kobs)(1−e^(−kobst))
ここで、r0=ka*A*Rmax
Rmaxは飽和における最大アナライト結合応答
kobsは観測されたレート定数=ka*A+kd
このモデルでは、サンプル中の競合剤の存在のために表面結合されたリガンドへの結合の抑制は、観測されたレート定数(kobs)の削減を引き起こす。これは、競合剤が不在の時に同じアナライト濃度について記録された観測されたレート定数(kobs0)と比較されても良い。本発明の実施形態は、注入が進行するにつれての抑制剤の濃度中の勾配を取り入れるようにこのモデルを適応させる。モデルが抑制剤勾配を取り入れるように適応された時に、KDと共にkobs0を推定するのに十分な情報が単一勾配曲線中にある。これは、単一の結合応答曲線から親和性定数が決定されることを可能とする。これはKarlssonへの米国特許第5,753,518号やKarlsson他への米国特許第6,143,574号と対照的である。ここに開示された本発明は、抑制剤−アナライト相互作用についてのKDが、アナライト−リガンド相互作用についてのkobs0と共に、全て2成分勾配結合応答曲線から決定されることを許容する。更には、この勾配相互作用曲線の解離フェーズが、アナライト−リガンド相互作用についての解離レート定数(kd)を決定するのに使われても良い。kobs0とkdの両方が既知であるので、アナライト−リガンド相互作用についての会合レート定数(ka)が以下:ka=kobs0−kd)/Aから計算できるということも現在構想されている。よって変形されたモデルは、アナライト−リガンド相互作用についての固体フェーズ動力学的定数と抑制剤−アナライト相互作用についての溶液フェーズ親和性定数を返すために、2成分勾配についての単一の応答曲線にフィットされても良い。もし抑制剤が異なる種ではなく単にバルク溶液中に存在する更なるリガンド分子であれば、この方法は、固体フェーズ動力学的定数の比から計算されたKDが溶液フェーズ定常状態KDを近似すべきであるという便利な自己一貫性チェックを提供する。従って、本発明の目的である2成分勾配注入方法は、再生の無い、動力学的および親和性定数を決定するための速くて情報が豊富な方法を提供する。この情報は、非勾配方法を使って単一の結合相互作用曲線から得ることは出来ない。
【0072】
下の例では、抑制剤濃度中の線形勾配が仮定されている。
【0073】
Increment=I/InjectTime
ここで、Iは最大抑制剤濃度
InjectTimeは秒での注入の長さ
Incrementは各秒の抑制剤濃度中の変化
Is=Increment*t
ここで、Isはあらゆる時間tにおける抑制剤の濃度
W=(B0+Is+KD)/2
ここで、B0は自由リガンド濃度
KDは抑制剤についての親和性定数
抑制の結果としての観測されたレート定数中の変化はすると以下によって与えられる
kobs0=(kobs0/B0)*(B0−W+((W^2)−Is*B)^0.5)
ここで、kobs0は抑制剤の不在における観測されたレート定数。
【0074】
そして、結合応答曲線の会合フェーズは、時間(t)に対する会合フェーズについての以下の表現とフィットされる:
会合=BASELINE+(r0/kobs)*(1−e^(−1*kobs*t))
オプションで、解離フェーズが固定化されたリガンドをもったアナライト相互作用についてのkdを確認するのに使われても良い。よって、解離フェーズは以下のように記述される:
YatSTOP
=(r0/kobs)*(1−e^(−1*kobs*InjectTime))
解離=YatSTOP*e^(−1*kd*(t−InjectTime))
シミュレーション
上のモデルを使って、シミュレーションは、各パラメータが実験的に期待され得るであろう典型的な値を与えられた期待された曲線を生み出す。以下のシミュレーションでは、
I=1.000000*10^−8M
B0=1.000000*10^−8M
KD=1.000000*10^−7M
kobs0=0.01s
BASELINE=0.0RU
r0=1.0
kd=0.001s−1
会合フェーズと解離フェーズの両方が300秒であった。シミュレーションの結果として得られる応答が図20に示されている。Nieba他と対照的に、上述した本モデルを使ったシミュレーションは、抑制剤が存在してない実験的に決定されたkobs0は要求されないことを示す。ここで記載された発明の実施形態では、kobs0の実験的な決定はオプションである。IとBが既知であるので、KDとkobs0は、このモデルを実際の曲線にフィッティングする時の唯一のフィットされたパラメータである。図20に示されたシミュレーションされたデータセットでは、モデルがシミュレーションされた曲線(曲線78)にフィットされ(曲線76)、KDとkobs0が未知数としてフィットされ、正しい値が成功裡に返された。従って、本発明は、この単一注入勾配方法を含み、そこではKDは単一の注入から決定され得る。
【0075】
競合的動力学モデル
競合的動力学モデルは、MotulskyとMahanからとKarlssonからの先の引用文献によって記載されたように導出され適用された。このモデルでは、固定化されたリガンド結合サイトについての2つのアナライト種の間の競合が、複雑な結合相互作用曲線に結果としてなる。相互作用は、分析の直前に混合される。この方法の特定の利点は、アナライト種の一つが非常に低い分子重量を有しても良く(即ち、抑制剤に指名され)、従って非常に低い(検出不能でさえある)結合応答を生じさせるが、それでも固定化されたリガンドと相互作用する時のその動力学的結合定数は、結果として得られる大きなアナライト結合応答の抑制から依然決定され得ることである。これは上で議論した競合的親和性アプローチと同様であるが、動力学的定数が決定されることを許容する。従って、データから動力学的定数を抽出するために、定常状態が発展するのを待つ必要はない。上に引用したKarlssonによって適用されたモデルは、アナライトの固定された濃度の存在の中で複数の異なる抑制剤濃度を表す複数の結合応答曲線を要求する。曲線はそれから、抑制剤−リガンド相互作用についての動力学的定数を返すモデルにフィットされる。大きなアナライトの固定化されたリガンドとの相互作用についての動力学的定数は、予め決定されそれから定数としてフィットされるのが最も良く、それによりモデルから推定される抑制剤動力学的定数の信頼性を向上させる。
【0076】
本発明の好ましい実施形態は、単一の競合的結合相互作用曲線が、溶液中のアナライトとの抑制剤の相互作用の動力学を単一の結合相互作用曲線から決定することを可能とするのに十分な動力学的情報を有するような、MotulskyとMahanとKarlssonの競合的動力学モデルの本発明の勾配注入方法への適応を含む。これは再び、表面を再生する必要を回避する。
【0077】
本発明の新しいモデルは、抑制剤が、無視できる結合応答を生じさせる低分子重量の分子であることを仮定し、従ってそれは結合応答には貢献をしないことが仮定される。しかしながら、もしその質量がかなりであれば、先の引用文件中でKarlssonによって記載されるように、モデルはこれを取り入れるように調整されても良い。
【0078】
Increment=I/InjectTime
ここで、Iは最大抑制剤濃度
InjectTimeは秒での注入の長さ
Incrementは各秒の抑制剤濃度中の変化
Ig=Increment*t
ここで、Igはあらゆる時間tにおける抑制剤の濃度
方程式は複雑であるので、項、即ち上で引用した彼らの論文でMotulsky他によって使われた表記法中の4つの項(KA、KB、KFおよびKS)、を指定して記述するのが最も良い。これらは親和性および動力学的定数と混同されるべきではない。
【0079】
KA=ka*A+kd
KB=ka’*Ig+kd’
ここでka’とkd’は、抑制剤−リガンド相互作用についての動力学的定数。
【0080】
S=SQRT((KA−KB)^2+4*ka*kd*A*Ig)
KF=0.5*(KA+KB+S)
KS=0.5*(KA+KB−S)
DIFF=KF−KS
Q=Bmax*ka*A/DIFF
そして、時間の関数としての勾配注入の会合フェーズは、以下の方程式によって記述される:
ASSOCIATION=Q*(k4*DIFF/(KF*KS)+
((kd’−KF)/KF)*e^(−KF*t)−
((k4−KS)/KS)*e^(−KS*t))
ここでk4は第二の相互作用のkdである。
【0081】
シミュレーション
上のモデルを使うことで、以下のシミュレーションされた期待された結合応答曲線が作成された。解離フェーズは、結合相互作用曲線のこの部分がモデルによって要求されないので、省略された。以下の定数が採用された。
【0082】
ka=1000000.0M−1s−1
A=5.0*10^−8M
kd=0.001s−1
ka’=1000000.0M−1s−1
I=1.0*10^−8M
kd’=0.001s−1
Bmax=100.0RU
図21を参照すると、シミュレーションで得られた曲線80がモデル曲線82にフィットされて示され、ここでka’とkd’は未知のパラメータとしてフィットされている。モデルは成功裏に正しい動力学的値を返した。従って、リガンドとの抑制剤の相互作用についての動力学的定数を得るには、単一の結合会合フェーズ曲線で十分であることが期待される。本質的ではないが、アナライト相互作用についての動力学的定数(即ち、kaとkd)は、予め決定され、モデル中に定数として入れられるべきである。いくつかの場合には、抑制剤は実際には固定化されたリガンドと同じ分子であっても良い。モデルは従って、動力学的定数の単一の組にまで簡素化されることができる。もし別々の動力学的定数がそのような自由リガンド抑制剤について維持されれば、単一の結合相互作用曲線中の溶液フェーズと固体フェーズ動力学のいかなる変動をも決定することが可能である。他の勾配方法と共通して、この方法も表面再生を回避することを許容する。勾配抑制曲線の複雑な形状は情報が豊富であり、単一の曲線で、抑制剤濃度の範囲をカバーする曲線の組を置き換えることを許容する。
【0083】
制御された固定化(即ち、制御された事前集中)についてのpH勾配
未知の親和性相互作用の動力学的分析にアプローチする時に、動力学的分析の前にいくつかのパイロット実験を行うことが有用である。多くの場合、これらの相互作用の等電点は未知である。等電点(pI)は生体分子の実効電荷がゼロであるpHである。表面上へのリガンドの静電荷事前集中は、通常リガンド固定化のために必要であり、これはリガンドが正に荷電されていることを要求する。リガンドは通常それを低pH緩衝液中に溶解することによって正に荷電されたものとなる。正に荷電されたリガンドの事前集中は、それが電気陰性センシング表面に晒された時に起こる。静電場の中性化を防ぐために、総塩分濃度は低くなくてはならない。しかしながら、好ましい共有結合反応(即ち、表面結合されたN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを介したアミン結合)は中性のpHで最も良く進行する。従って、最適pHは、リガンドの事前集中が効果的となる中性のpHに最も近いものである。このpHは通常一連の注入によって経験的に決定される。最適pHを決定するには、pHが変動する一連の緩衝液中にリガンドを準備する必要がある。例えば、0.2pH単位のインクリメントで3pH単位の範囲をカバーする一連の15個のサンプルが注入されても良い。サンプルは好ましくは高pHから低pHに注入される。このプロセスは通常、十分な事前集中を生み出す注入が一旦記録されると終了される。これは時間のかかるプロセスであり、また貴重な試薬を消費する。
【0084】
このプロセスは、関心のあるpH範囲をカバーする本発明の勾配注入を使うことによって大幅に加速される。このようにして、最適pHが、数分で行うことができる単一の注入から決定される。例えば、(1)サンプルが、10ミリモル(mM)の酢酸ナトリウム緩衝液中に10マイクログラム/ミリリッター(μg/mL)で準備される;(2)サンプルはまた10mMの酢酸ナトリウム緩衝液中に10μg/mLで、pH3.8に準備される;(3)高pHサンプルに対して低pHサンプルの線形勾配が準備される。pHは勾配に沿って変化する。勾配は好ましくは高pHから低pHに注入される。注入された勾配のpHがリガンドのpIを通過した時に応答の増加が観測された。このポイントは、事前集中が始まるpH閾値を同定する。2つの緩衝溶液の比は、勾配中に全てのポイントにおいて知られており、よって各ポイントでの期待されたpHは容易に計算される。もし大きな事前集中効果が望ましければ(例えば、もし大量のリガンドが固定化されるべきであれば)pHをこの閾値pHより下に下げることが望ましくても良い。しかしながら、多くの場合、少量のリガンドが固定化されなければならず、この場合には、pHをそれ程更に下げる必要はない。
【0085】
そのようなpH勾配は、酸と塩基溶液のいかなる混合物からなっていても良く、そのような溶液のpHは、酸−塩基平衡からの従来の方程式から計算されても良い。このpH勾配注入方法は科学者により高い分解能をもったより高品質のデータを、ほんの一部分の時間で提供するので、理想的pHはもっと厳密に定義される。これは、リガンドを成功裏に固定化することができる非常に狭いpH範囲だけが存在する場合に、特に重要である。これは酸性のリガンドでしばしばそうである。
【0086】
再生/複合体安定性勾配
一旦アナライトが固定化されたリガンドに結合すると、次のアナライトサンプルに進む前にアナライト結合容量を回復するために、それは取り除かれなければならない。この親和性捕獲された物質の除去は再生と呼ばれ、それはリアルタイムBIAの最も困難な側面の一つである。多くの場合、親和性複合体はお互いに非常に強く結合しており、粗い再生溶液の使用を必要とする。これらの溶液は、結合相互作用力を克服する好意的でない条件を作り出すことによって親和性複合体を解離する。酸と塩基が通常効果的であるが、非水成溶剤、グアニジン−HCI、尿素のようなカオトロピック試薬を相当量含んだ他の水溶液も採用される。成功裏に使用されてきた試薬および試薬混合物のリストは長大である。通常再生の最適化は、多数の溶液が評価される試行錯誤のアプローチを要求する。多くの場合、このプロセスは、最適化するのに仮に何週ではなくとも何日も要求し得る。いくつかの場合には、アナライト結合容量を維持する効果的な再生溶液を見つけることは不可能である。前述したプロセスは、異なる試薬の多数の注入を、試薬勾配で置き換えることによって本発明に従って加速され得る。
【0087】
例えば、リン酸が相互作用を再生するのにしばしば成功裏に適用されるが、実効的濃度は一つの相互作用から次へと大きく変化する。ゴールは、変性による固定化されたリガンドへのダメージを制限するために最も低い濃度を使用することである。時間の節約への関心から、多くの研究者は評価されるべきサンプルの数を減らす誘惑に駆られる。これは残念ながら方法の開発に負のインパクトを与える。そこで本発明では、変化する勾配をもつ単一の注入が使われる。本勾配方法を使った例として、勾配は純水から100%0.1Mリン酸まで変化する。この勾配はそれから、アナライト被覆されたセンシング表面上に低濃度から高濃度へ注入される。アナライト−リガンド複合体が解離し始める勾配濃度が、解離により応答が減少し始める時の勾配注入中のポイントとして同定される。このポイントにおけるリン酸の実際の濃度がそれから計算されても良い。これは、再生が効果的になる閾値濃度を表す。しかしながら、勾配は、表面の完全な再生が起こるまで進行することが許容されても良い。表面の完全な再生は、応答の更なる減少が観測されない応答中のプラトーとして観測される。加えて、勾配注入中の総応答低下は、再生実験に先立つアナライト結合応答に近似的に等しいものであるべきである。理想的な応答曲線が図22に示されている。これらの再生勾配は、二つ以上の試薬の混合物からなっていても良く、いかなる勾配形態を有していても良い。ほとんどの場合には、線形勾配が好適である。
【0088】
再生条件を決定することに加えて、そのような試薬勾配は、様々な環境条件に対する親和性複合体の安定性を調べるのに使われることができる。例えば、塩分(例えば、塩化ナトリウム)の増加する濃度を含んだ溶液への露出における複合体の安定性を決定することが関心事であっても良い。塩分勾配は、例えば、10mMNaClから1MNaClまでの、あらゆる望ましい範囲に渡って準備されることができる。理想的には溶液のpHは、10mMの緩衝された塩分を最も低い塩分濃度として使うことによって一定に保たれるであろう。前と同じく、勾配がアナライト被覆された表面上に注入され、応答が記録された。この場合には、勾配注入中に大きなバルク屈折率変化も測定可能であり、被覆されていないセンシング表面から参照曲線を引くことを要求する。あらゆる試薬または試薬の混合物の変化する濃度の、行われた親和性複合体上への効果は、多数の複数系列的注入を実行することとは反対に、勾配を使ってより迅速に決定されても良い。様々な既知の試薬が、そのような研究のために考えられることができる。更には、試薬の親和性複合体の形成上への効果も同様に、何等かの添加物の勾配を含んだアナライト注入を作り出すことによってテストされても良い。理想的にはアナライト濃度は一定に保たれるであろう。
【0089】
濃度範囲ファインダーのためのアナライト勾配
リガンドが成功裏に固定化された後に、結合活動を確認するように表面上にアナライトを注入する必要がある。もし相互作用についての近似的親和性が未知であれば、最初のアナライトの注入にはアナライトのマイクロモル濃度が通常推薦される。これは、中程度の親和性結合相互作用が検出可能であることを確かとし、それによりあらゆる偽陰性テストを排除する。残念ながら、いくつかの場合には、表面はあまりにも速く飽和されるので、会合フェーズ曲線が会合レートを決定するのに十分な情報を有していない。表面を再生する前に少なくとも5%まで複合体が解離することを許容することによって、解離レート定数を決定することが依然可能である。しかしながら、もし実際に相互作用の実際の親和性が非常に高ければ、表面の再生は非常に困難であり得て、再生の最適化が要求されるであろう。通常相互作用表面はこのプロセスによって損傷され、最適化実験が完了される前にいくつかのセンサーを消費することが一般である。再生実験が要求される前に親和性および/または動力学的パラメータの推定を得ることが望ましい。こ れは、アナライト勾配注入を利用することによって達成することができる。
【0090】
ゼロアナライトで始まりアナライトのマイクロモル濃度まで上がる勾配が準備される。勾配は低濃度から高濃度へリガンド被覆された表面上に注入される。濃度の指数的増加をもった勾配プロファイルが理想的であるが、他の勾配プロファイルを使うこともできる。アナライトの結合が検出可能となる閾値濃度がそれから、参照曲線を引いた後のベースラインノイズの標準偏差の少なくとも3倍である応答の増加として同定される。1〜2RUの結合応答は通常有意である。アナライトで飽和された時の表面の結合容量は普通50RUを超える。注入はオプションで終了されても良く、それにより表面が飽和されることを防ぐ。このテストによって表面容量の2〜4%だけが消費されるので、再生無しで次のアナライト注入を進めることが可能である。しかしながら、この「濃度範囲ファインダー」実験は、アナライト結合応答が検出可能となる濃度を同定し、それは容易に略親和性に関連する。好ましい実施形態では、オンおよびオフレートの粗い推定を得るように、質量輸送制限項をもった1:1動力学モデルがフィットされる。この情報があると、手頃な時間で表面を飽和するのに要求されるアナライト濃度を推定することは些細なことである。通常、2分間の接触時間後に表面を飽和することが可能なアナライト濃度は、その会合フェーズが、濃度の幅広い範囲をカバーする動力学的結合曲線の完全な組から決定された「本当の」会合レート定数の理に適った近似のために十分な情報を有しているので、動力学的分析のために好適である。これの代わりに、この情報はアナライト勾配注入の濃度上限を決定するのに使われることができる。好ましい実施形態では、アナライト勾配の形状は、「範囲ファインダー」テストが数桁に及ぶ濃度範囲をカバーするように選ばれる。ピコモル(pM)から高マイクロモル(μM)までの指数的に増加するアナライト濃度に及ぶ勾配注入は、可能な親和性範囲の大多数をカバーし、再生無しの相互作用の完全な動力学的分析を提供するのに十分な情報を含むであろう。図16の勾配は、それが線形フェーズの続いたゆっくりした指数的上昇フェーズによって特徴付けられているので、この応用に理想的である。この勾配プロファイルは、結果として得られる結合相互作用曲線の情報内容を最大化する。
【0091】
ここで言及された様々な組成の勾配は、この明細書に記載されたものを含んだ、あらゆる好適な手段によって形成されることができる。
【0092】
上に引用した文献は、ここに引用により組み込まれる。
【0093】
よって、本発明は、目的を実行するのに良く適応されており、上述した結果と利点やここに生来のものを達成する。発明の好ましい実施形態がこの開示の目的のために記載されたが、パーツの構成と配置およびステップの実行における変更が当業者によって行われることができ、それらの変更は、それらが添付された時に請求項によって規定されるこの発明の精神内に包含される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、それでセンシング領域に対して流体のフローを注入するところの流体工学的システムおよび方法に関する。より特定には、発明は単一注入濃度勾配を提供することと使うことに関し、勾配形成手段はバイオセンシングシステム中に一体化されている。応用の一つの特定の分野は、生体分子的リガンドおよびアナライトを使ったマイクロ流体工学的バイオセンシングである。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサーのような分析機器は、生体分子的相互作用の進行をリアルタイムで記録する手段として良く確立されている。バイオセンサーは、生体分子間の相互作用を検出するのに種々の形質導入技術を採用する。そのような器具使用は、サンプルをセンシング領域に配送するためにマイクロ流体工学的チャネルを要求し、ポンプとバルブが、制御された再現可能なやり方でサンプルをチャネルを通して動かすために好まれる手段である。
【0003】
マイクロ流体工学技術への最近の関心は、そのようなセンシング応用のための流体ストリームの洗練された制御についての大きくなりつつある必要のために起こってきている。一体化されたマイクロ流体工学的カードと呼ばれる、数々の先行するシステムは、結合されたときに内部通路とバルブやポンプのような活性コンポーネンツを形成するチャネルや構造を有する一連の実質的に平面状の基板からなっている。多くの進歩にも拘わらず、これらのシステムは滅多に、活性コンポーネンツが流体工学的カードに一体化されていない従来のフロー注入分析流体工学的システムほど強健ではない。しかし、これらの非一体化システムは、典型的には比較的大きなデッドボリュームを有する。
【0004】
検出されるべき生体分子的相互作用の進行を記録することが可能ないくつかのトランスデューサーがある。一つの例は、石英結晶マイクロバランスである。石英結晶の表面への分子の結合は、結合イベントの定量化を許容する基本共鳴周波数を変化させる。他の技術には、光散乱、反射型干渉分光法、エリプソメトリー、蛍光分光法、熱量測定法、エバネッセントフィールドに基づいた光学的検出が含まれる。表面プラズモン共鳴(SPR)として知られる特に効果的なエバネッセントフィールドに基づいた技術は、例えば金被覆された光学的基板からの反射の際の光の振る舞いを活用する。
【0005】
SPRは、テストすべき物質が位置しているセンシング表面に近い薄膜の屈折率の変化のリアルタイム監視を可能とする光学的技術である(典型的な物質タイプは、センシング表面に付着したリガンド、流体緩衝液、およびリガンドと結合してテストされるべき流動する/流れる物質中含まれた流体アナライト(例えば、可溶性または不溶性のコロイド溶液)を含む)。表面において作り出されたエバネッセントフィールドは表面から指数的に衰退し、表面から約300ナノメーター(nm)でその最大強度の1/3まで落ちる。このためSPR技術は表面屈折率変化に敏感である。
【0006】
SPR活性センシング領域へのサンプルの配送は、活性センシング領域を覆うフローチャネルを作り出すことによって可能とされる。各フローチャネルは、SPR活性センシング領域上での緩衝液またはサンプルの流れを許容する入口と出口を有する。薄膜センシング表面は、生体分子(「リガンド」)が被覆上に恒久的に固定化されることを可能とする重合体被覆を有するように誘導体化される。固定化された生体分子は通常、サンプル中に含まれた別の生体分子(「アナライト」)についての結合特異性を有する。この結合の強度は、単純に結合レート定数割る解離レート定数である、親和性定数によって与えられる。SPRに基づいたバイオセンサーは、結合および解離イベントの進行をリアルタイムで記録するので、これらの定数を測定することが可能である。
【0007】
特に注目すべきは、そのような相互作用の動力学的分析である。測定すべき重要な定数には、流れているサンプルとセンシングエリア上に固定化されたリガンド中のアナライトの間の会合と解離が含まれる。他のファクター(例えば、サンプルの質量輸送特性)も知ることが重要である。これらは、その上に混合物の反応性内容物と相互作用するように受容体化学物質(リガンド)が位置しているところのセンシングエリア上に、一つ以上の化合物(アナライト)を含んだ液体混合物を流すことによって決定される。サンプルの異なる濃度(例えば、混合物中の一つ以上のアナライトの異なる量)を使うことは、そのような特性が正確に測定されることを可能にするのに重要である。
【0008】
これらの既知のタイプのシステムから複数の濃度情報を達成するための異なるやり方がある。一つの従来のやり方は、各々が異なる濃度を有する、溶液の異なる注入可能な容積を使うことである。一つの溶液がセンシングエリアに跨って流され、データが収集される。センシングエリアはそれから、前のサンプルの内容物を取り除くようにセンシングエリア上に「洗浄」流体を流すことによって再生される。つまり、アナライトが固定化されたリガンドに結合されるときには通常、別のアナライト注入を実行するために、相互作用は反転され(「再生され」)なければならない。しかしながら、表面を再生することは、固定化されたリガンドのいくらかを損傷することができ、それにより後続のテストのための減少された表面容量に結果としてなる。
【0009】
WO2004/109284に開示されているように、異なる濃度を持った溶液の順次注入された容積を再生無しで使うことができる。このステップ注入アプローチでは、アナライトは低濃度で第一の容積に注入され、それから表面が飽和するまで別の容積へのより高い濃度が続く等々である。このようにして、再生を使うことなく異なる濃度での結合を表すデータを得ることが可能である。これらの異なる濃度はまた、それ自体内に変動する濃度を有する混合物から得ることもできる。WO2004/109295、US2003/0143565、および“Nonregeneration protocol for surface plasmon resonance: Study of high affinity interaction with high density biosensors.”Tang, Y., Mernaugh, R. and Zeng, X. (2006), Anal. Chem., 78, 1841-1848も参照。
【0010】
“Analyte gradient-surface plasmon resonance: A one-step method for determing kinetic rates and macromolecular binding affinities.” Shank-Retzlaff, M.L. and Sligar, S.G. (2000), Anal. Chem., 72, 4212-4220によると、その中にインライン勾配マーカーの働きによって濃度勾配が存在するところのサンプルを連続的に注入することによって、表面の再生は避けることができる。望ましい動力学的定数を決定するようにデータを処理するために使われる動力学的モデルは、単一注入中の変化するアナライト濃度を取り入れるように変形される。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、濃度の範囲を達成するのに複数の離散容積または注入を要求すること無く、相互作用の動力学的分析を容易にする濃度の勾配を、フローセルに直ぐに隣接してまたはフローセル内に提供する方法を含む。この勾配は好ましくは、フローセル入口に直接隣接してまたは典型的には注入ポイントにおけるサンプル/緩衝液分散の領域であるものの中で、フローセルのフローチャネル中に形成される。また本発明の新規な側面に含まれるものには、望ましい勾配を得る勾配生成装置と方法があるが、本発明の様々な実施形態は既存の流体工学的システムを使って実装することができる。勾配は、再現可能であるタイプのものであっても良く、またはそうではないものであっても良い。どちらにしても、しかし、本発明は勾配が決定されて動力学的分析に使われることを可能とする。
【0012】
述べられたように、キャリア流体中の成分の変動する濃度を有する連続的な勾配流体は、フローセルに接続されたサンプル保持チャネルの少なくとも一部内でそれに沿ってかまたは、フローセル自体の内部に作り出される。連続的勾配流体は、連続的注入で、フローセルまたはフローセルのセンシング領域中に直接注入される。本発明のより広範な側面を制限することなく、様々なコンポーネンツと勾配がここに含まれる。本発明のアナライト勾配方法は、濃度勾配のアナライトとその中に第一の液体の第一の部分が配置されているフローセル内の一つ以上のセンシング領域上に固定化されたアナライト結合種の間の結合相互作用を特徴付けることができる。この方法は、第一の液体の第二の部分中に連続的アナライト濃度勾配が生成されるように、第一の液体の第一の部分と近接する第一の液体の第二の部分と、一つ以上のアナライトを含んだ液体サンプルを混合することからなる。このアナライト勾配は、フローセルを通して低アナライト濃度から高アナライト濃度へ流される。
【0013】
更には、この発明は複数成分勾配を提供することができる。例えば、もしこれらの勾配がお互いに向けて親和性を有する2つの分子(AとB)のためのものであれば、勾配中のあらゆるポイントにおける2つの反応物の比は変化する。一旦作り出されると、2つの成分は結合平衡に近づくことが許容され、複合化されていない成分Bの濃度はバイオセンサー濃度分析物中で決定される。好ましい実施形態では、質量輸送が制限された濃度分析物が勾配に沿ったBの濃度を明らかにするのに使われても良く、これはそれからAの濃度と、フィットされた親和性モデルの関数としてプロットされる。この方法における利点は、単一注入が相互作用についての親和性定数を明らかにするのに使われることができることである(従来の親和性分析物は、複数の濃度と数時間を完了するのに要することができ、それは試薬安定性が乏しいと可能ではないかも知れない)。
【0014】
本発明の別の側面では、バイオセンサー内の勾配注入方法は、勾配成分溶液の間にバルク屈折率差が存在するように勾配を構成する溶液の少なくとも一つの組成を調整することによって決定された勾配プロファイルを提供する。勾配はそれから一つ以上のセンシング表面上に注入される。方法は更に、勾配注入中の全ての時間においてセンシング表面にある各勾配成分溶液の相対的比率を決定するために、勾配注入中のバルク屈折率変化へのバイオセンサーの応答を記録することを含む。
【0015】
本発明の様々な実施形態で以下の一つ以上を達成することができる。再生は要求されない。ここで単一注入は、幅広い濃度範囲に渡ってアナライトの固定化されたリガンドへの結合を達成し、よって非線形曲線フィッティングを使って動力学的定数を決定することに付随するエラーを低下させる。複数のサンプルを準備する必要はない。勾配プロファイルが濃度は非常に大きな範囲に渡って変動することを確かにするので、飽和する濃度の事前知識への依存はより決定的に重要ではない。この方法は、単一注入用量応答曲線を作成するのに採用されても良い。
【0016】
従って前述から、本発明の全般的な目的は、バイオセンサー内で単一注入勾配を提供するまたは使用するための新規で改良された方法と装置を提供することである。本発明のその他の更なる目的、特徴、定義、および利点は、添付された図面との関係で好ましい実施形態の以下の記載が読まれた時に、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、それと共に本発明が実装され得るところの従来技術のバイオセンサーのブロック表現である。
【図2A】図2Aは、例えば、図1のフローセル中に緩衝液とサンプルのフローを入力するのに使われた従来技術のサンプルループとサンプルループバルブの概略図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに描かれたサンプルループで使われることができるような従来技術の緩衝液/サンプルインターフェースを表す。
【図3A】図3Aは、本発明の一実施形態を実装するように適応された図2Aのコンポーネンツの概略図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに示された構成を使って本発明によって提供された単一注入濃度勾配を表す。
【図3C】図3Cは、図3Bに示されたサンプルの濃度勾配を表すグラフである。
【図4】図4は、図3Cの濃度勾配の連続的注入に対応するシミュレーションのためのSPR型バイオセンサーについての屈折率の変化を表すグラフである。
【図5】図5は、注入された蔗糖勾配についての変化するバルク屈折率に応答した(屈折単位の)曲線を示す。
【図6】図6は、図5に示された応答の正規化されたグラフである。
【図7】図7は、図6の正規化された曲線と実質的に一致するようにフィットされたシグモイドモデル曲線を示す。
【図8】図8は、(1)抗インターロイキン2抗体で被覆された表面上のインターロイキン2のシグモイド勾配注入についての実験的に得られた結合応答曲線と、(2)フィットされたモデル曲線、の両方を示す。
【図9】図9は、線形濃度勾配を表すグラフである。
【図10】図10は、指数的濃度勾配を表すグラフである。
【図11】図11は、別の指数的濃度勾配を示すグラフである。
【図12】図12は、例えば、本発明の一実装においてシグモイド勾配から線形勾配を達成するのに使われ得る、フローセルと隣接する勾配発生器を表すブロック図である。
【図13】図13は、それで指数的勾配を得るところの実装に関するブロック図である。
【図14】図14は、それで本発明のための様々な勾配を得るところのマイクロミキサーの概略図である。
【図15】図15は、本発明を使ったシミュレーションからの3つの勾配プロファイルを示す。
【図16】図16は、図15の勾配の指数的テール部分が最初に使われて注入されるような、図15の実質的に線形な曲線の変換を示すグラフである。
【図17】図17は、4つのシミュレーション:単一濃度サンプル、線形勾配、指数的勾配、シグモイド勾配、についての応答曲線のグラフである。
【図18】図18は、より複雑な勾配プロファイルを描く。
【図19】図19は、期待された最大バルク屈折率応答を使うことによって正規化された図18の勾配である。
【図20】図20は、そこから親和性定数が単一注入から決定されたところのシミュレーションされた応答(および一致するフィットされたモデル曲線)である。
【図21】図21は、そこからリガンドをもった抑制剤の相互作用の正しい動力学的値が単一注入から得られたところのシミュレーションされた応答(および一致するフィットされたモデル曲線)である。
【図22】図22は、そこでアナライト−リガンド複合体の解離が始まるところの濃度を決定するのに使われたもののような、リン酸の勾配についての理想的応答曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
それと共に本発明を使うことができるところのあらゆるタイプの従来のバイオセンサー2が図1に表されている。そのようなバイオセンサー2は、一つ以上のフローセル4を含み、そこには、その上に固定化され、それと共に一つ以上のタイプの分子(アナライトと呼ばれる)が既知のやり方で結合反応(例えば、会合するや解離する)を形成することができるところの、一つ以上のタイプの分子(リガンドまたはアナライト結合種と呼ばれる)を有する一つ以上のセンシングエリアがある。
【0019】
アナライトを含んだサンプルは、フローセル入口に直接接続する好適な流体フローコンポーネンツ6を通してそのようなフローセルに入力される。流体フローコンポーネンツ6は、フローセルの入口に直接接続された細長いサンプル保持チャネルを提供する。このサンプル保持チャネルは、フローセルに隣接し、それは勾配がフローセル中に直接通信されることができるように本発明の一側面に従って勾配が作り出されるところである。サンプル保持チャネルは好ましくは、使用されるサンプルの容積よりも小さくない(または等価的に、以上の)容積を有する。発明の別の側面では、勾配はフローセル自体内に作り出されることができる。
【0020】
一つ以上の流体ソース8は、サンプルまたはサンプルの成分を流体フローコンポーネンツ6に提供する(一般のサンプルは典型的には、一つ以上のアナライトと、アナライトを運ぶ一つ以上のリガンドを含み、もし複数のアナライトサンプルが使われれば、そのようなキャリア流体は、サンプル緩衝液または他のアナライト含有液体を含んでいる)。従来型のソースは、注射器および他の手動注入器や、例えばオートサンプラーのような自動化されたソースを含む。流体ソース8はまた、既知の機能と組成の一つ以上のタイプの緩衝液(アナライトをもたない非反応性の液体)も提供する。
【0021】
流体、典型的にはバイオセンサーに対する液体は、一つの流体がチャンネルまたはフローセル中に以前あった別の流体を部分的に置き換え、それにより勾配が形成されることを引き起こすように、コンポーネンツ6のサンプル保持チャネル中に(またはフローセル自体内に)装填される。望まれる特定の勾配または全体システム内での系列化に依存して、緩衝液が最初に装填されサンプルがそれに続くか、その逆であることができる。しかしながら、一般的にサンプルは、勾配サンプルの低濃度端から高濃度端へセンシングエリアに跨って流される。
【0022】
サンプルがフローセル4に入力された時に、アナライトとリガンドの物質間の会合および解離反応が、例えばSPR型のバイオセンサー中の屈折率を変え、バイオセンサーがどのようなタイプであれ、図1に示された一つ以上のシステム10を規定する好適なコンポーネンツ中で、これらの反応が感知され、データが収集され、分析がなされる。
【0023】
特定の例として、SPRバイオセンサーの一つのタイプは、当該技術で既知の通り、レーザー、ポラライザー、プリズム、金スライド、およびフォトダイオード検出器を含む。フォトダイオード検出器は、サンプルフロー中のアナライトと金スライド上のリガンドの間の会合および解離反応によって影響された金スライドの屈折率に応答する。検出器からのデータ信号は格納することができるが、当該技術で既知の通り、データは最終的にはシステム10の数値処理コンポーネンツで使われる(例えば、好適なアルゴリズム的および制御ソフトウェアでプログラムされたマイクロプロセッサーに基づいた回路)。
【0024】
一般に、本発明の好ましい実施形態は、それと共に単一注入で一つ以上のアナライトの異なる濃度が提供でき、会合、解離および好ましくは質量輸送のデータが収集される、バイオセンサーのあらゆる好適なタイプを使って実装することができる。いくつかの分析的側面も本発明に含まれているが、そのようなバイオセンサーで既に使われている数値処理技術への付加物としてである。
【0025】
図2Aを参照すると、本発明のために適応されることができる流体フローコンポーネンツ6の一実装は、6ポート2ポジションサンプルループバルブ14のような、従来のフロー注入分析インジェクターバルブの2つのポートの間に接続された従来のサンプルループ12を含む。従来の使用では、ポンプ(図示されないが流体ソース8の一タイプを構成している)によって緩衝液が供給され、ポンプからバルブ14の緩衝液入力ポート中に流れ、回転バルブがその「装填」位置にある時にバルブ14の別のポートから接続導管15を通してフローセル4中へ直接流れ出る。装填位置にある時、サンプル(つまり、アナライトを含んだ流体)は、例えば、注射器を使って手動で、またはオートサンプラーを使って自動的に、装填されても良い(そのような注射器、オートサンプラー、または他のサンプル装填コンポーネントは、図1の流体ソース8の一部である)。最適な再現性のためにはオートサンプラーが好ましい、装填は、図2にラベル付けされている「装填ループ」または「注入ポート」を通して、サンプルループ12中に起こる。このバルブ設定でのサンプルループ12からのフローは、バルブ14の「ループ廃物」ポートを通して出る。
【0026】
図1および2Aに示されるフロー注入システムは、当該技術で既知の従来の注入と本発明の勾配注入を行うのに使われることができる。従来の注入を行う際には、サンプルがサンプルループ中の既に含まれている緩衝液と混合するのを防ぐのに空気バブルを使っても良い。従来のフロー注入では、バルブ14のポートとポートへの接続は、バルブ14が「注入」に切り替えられた時にループ中に一方向に装填されたサンプルが反対方向に流れ、それによりサンプルループ12の内容物がフローセル中に流れるように、配置されている。これは、部分的に満たされたループ中に含まれたサンプルが、遅延なくフローセルに入ることを許容する。これは図2Bに表されており、そこではサンプルループ12(図2Aから明らかなようにバルブ14の緩衝液入口ポートをサンプルループに接続する、バルブ14の以前の「注入」状態中のような)中に以前あった緩衝液16が、その装填状態にあるバルブ14で装填されたサンプル20からの空気バブル18によって分離される。装填方向は図2Bで右にであり、注入方向は図2Bで左にである。
【0027】
図3は、本発明の一つのアプローチを使って作り出された勾配を示す。このアプローチでは、バルブ14のサンプル入力(「装填ループ」)およびサンプル出力(「ループ廃物」)ポートは、勾配が低濃度から高濃度へフローセル中に流れることを確かにするために、逆転されている。これは図3Aに示され、そこでは「装填ループ」および「ループ廃物」機能は、図2Aに示された従来の向きから逆転されている。だから同じサンプルループ12とサンプルループバルブ14が使われ、バルブ14のこれら2つのポートから/へのフローだけが変えられる。6ポート2ポジションバルブ14は依然として注入状態とサンプル装填状態の間で回転するが、図3Aに示されるようにサンプル装填ポートとループ廃物ポートを再配置することにより、ループに最初に入るサンプルが、また最初に出る(ファーストイン、ファーストアウト)。
【0028】
本発明のこの例を続けると、前に図2の従来の装填と注入においてそうであったように、サンプルループ12中に緩衝液がある(もしそうでなければ、バルブ14をその注入状態に切り替え、それからサンプルループ12中に緩衝液を流すことによって、それはサンプルループ中に入れることができる)。サンプルループ12中の緩衝液のこの部分は、導管15およびフローセル4中の緩衝液の一部と近接している。本発明では、しかし、バルブ14がその装填状態に入れられた時に、サンプルはサンプルループ12のより低い端の中に流される(図3Aに見られる「より低い」)。例えば、空気バブルが最初流体ソース8の注射器の中に吸引され、サンプルが続く;装填および注入に際してサンプルの先頭または先端となるものにおける、終端バブルは要求されない。サンプルはそれから、注射器からバルブ14の新たな装填ループポートを通してサンプルループ中に装填される。サンプルの先端をサンプルループ中に既にある緩衝液から分離する終端バブルは無いので、混合はそれらの流体が一緒になるサンプルループ中の縦方向容積に沿って起こる。これは、前述したこれまでの従来技術とは反対に、サンプルをファーストイン、ファーストアウトのやり方で装填する。つまり、本発明では、サンプルループ中に装填されたサンプルの第一の部分はまた、フローセル中に注入されたサンプルの第一の部分でもある。これは図3Bに描かれており、そこではサンプル22の先頭部分が緩衝液24のテール部分との混合に強制されるのにつれて、濃度勾配が形成されている。このやり方で作り出された勾配のプロファイルは、最適化された時には常にシグモイドである。しかしながら、第二の成分が注入されるレートを変えることで、曲線の傾きを変える。加えて、勾配プロファイル全体を変えるように各サンプルの相対的容積を変えても良い。シグモイド曲線は生物科学では一般的であり、通常は4パラメータロジスティック方程式を使ってモデル化される。図3Bでは、先端(サンプルのファーストイン部分)においては比較的僅かなサンプルしかないが、濃度はサンプルの主体(ラストイン部分)に向けて増加する。よって、これは、本発明がサンプルループ内部の少なくとも二つの流体の間の濃度勾配を能動的に成形する一つのやり方である。図3Bは、インターフェースの長さに沿って緩衝液とサンプルの相対的量を描くように描かれたものであることに注意すべきである;しかしながら、実際には、これらの量は断面エリアを跨いで混ぜられる。つまり、実際には、サンプルの緩衝液に対する比は、インターフェースされたまたは分散された領域の微分長セグメント内にあるが、液体は混合され、これらのセグメント中にはっきりとした緩衝液/サンプル分離ラインは無い。
【0029】
分散されたサンプル/緩衝液インターフェースの長さに沿った濃度の変化は、図3Cのグラフによって表されている(グラフの0距離点が、図3Bで向けられているようなサンプルループセクションの左端に対応する;XNポイントが、100%サンプルが始まるところのサンプルループ12中のポイントに対応する)。このグラフは、シグモイド勾配を示す。シグモイド濃度勾配は、既知のシグモイド4パラメータロジスティック表現によって良く特徴付けられる。装填注射器中に吸引された空気バブルの存在は、その空気バブルは図3の例においてループ内のサンプルのテール端にあるようになるのだが、サンプルのテール端における注入駆動緩衝液の混合を防止する。もしそのような混合が起これば、それはより複雑な勾配プロファイルに結果としてなるであろう。
【0030】
好ましくは、濃度勾配は、手頃な時間でフローセルのセンシング表面の飽和を確かなものとするように選択される。図3の例で一旦望ましい勾配が確立されると、バルブ14はその注入状態に切り替えられ、サンプルループ12の内容物がそれから従来のやり方でフローセル4中に注入される。例えば、緩衝液の別の部分は、緩衝液のこの追加の部分がサンプルの勾配をサンプルループ12から導管15を通してフローセル中に押し出すように、図3Aのバルブ14の緩衝液入力ポートを通して、サンプルのラストイン端に対抗して流される。好ましくは、注入は、勾配サンプル流体がサンプルループからフローセル中に可能な限り短い導管15を通して直接流れている、単一の連続的注入で起こる。異なる濃度についての結合反応をマスクしないようにするため、勾配は、サンプルの最低濃度端が最初に入り最高濃度端が最後に入るように、フローセル中に注入されるべきである。これは、例えば図3Bに示された勾配で起こる。
【0031】
図3を参照して上述されたシグモイドプロファイルを決定するのに、記載されたようにサンプル勾配が作成された。詳しくは、勾配を形成するのに高インデックス溶液(即ち、水の中の蔗糖)が採用された。図4は、検出された応答とフィットされた曲線を示す。図4では、曲線26は、図3を参照して上述されたようにして得られた水の中の蔗糖のシグモイド勾配で装填されたループを注入することから得られる屈折率応答曲線である。曲線28はフィットされた表現である。フィットされた曲線28は、実際の曲線の良い近似であり(図4で見える誤差は、実際のデータ曲線端26a、26bに対する曲線端28a、28bにおいてのみ起きている)、よって曲線のための表現がシグモイド勾配動力学的注入中の注入されたアナライトの変化している濃度を記載するのに使われても良い。だから、変化している濃度を、数学的に規定して、アナライト/リガンド反応の動力学的特性を決定するための既知の処理アルゴリズム中に挿入することができる。
【0032】
動力学的定数を決定するためのアルゴリズムの一つのタイプの例は、以下の微分方程式の組によって与えられる従来の2区画相互作用モデルである。これらの方程式は数値積分によって、または解析的な厳密解を見つけて、それから最適パラメータ値を見つけるように非線形曲線フィッティングを施すことによって、解かれる。
【0033】
A=Conc
A0=0
dA/dt=kt*(Conc−A)−(ka*A*B−kd*AB)
B0=Rmax
dB/dt=−(ka*A*B−kd*AB)
AB0=0
dAB/dt=(ka*A*B−kd*AB)
総応答:
AB+RI
ここで、A=表面におけるアナライト濃度
B=リガンド濃度
ka=会合レート定数
kd=解離レート定数
Conc=注入されたアナライト濃度
AB=A+Bから形成された複合体
kt=質量輸送定数
Rmax=最大アナライト結合応答
RI=バルク屈折率応答
表面におけるアナライトの濃度(A)が、質量輸送定数ktによって支配されていることに注意。もしktが大きければ、AはConcの良い近似である。勾配注入をする時には、Aも時間に対して変化している。よってこの変化は、単純にAに、勾配プロファイルとよって全ての時間(t)におけるアナライト濃度を記述する或る関数Gを掛けることによって、含められても良い。
【0034】
A=G*Conc
図3Bでは、勾配はシグモイドであり、それは以下の4パラメータロジスティック関数によって記述される。
【0035】
G=Rhi−((Rhi−Rlo)/(1+(t/A)^B))
ここで、Rhi,Rlo、A&Bは全てフィットされたパラメータである。
【0036】
更なる詳細では、本発明に従って準備された勾配に沿ったアナライトの濃度は、もし勾配注入応答が動力学的分析のために使われるものであるならば、決定されるべきものである。最大アナライト濃度のみが知られており、勾配関数(即ち、注入中の全ての時間におけるアナライト濃度を規定する厳密な関数)も知られている良く定義された勾配形成手段が採用されない限り、勾配に沿ったアナライト濃度は未知のままである。動力学的/親和性モデルフィッティング中に勾配に沿ったアナライト濃度を未知のパラメータとしてフィッティングすることは、理に適った結果を生み出し得るが、もし勾配に沿ったアナライト濃度を明白に決定することができれば、それが好ましい。このために、勾配の両成分の間にバルク屈折率オフセットを生じさせるような成分をサンプルに追加することによりアナライト勾配を明らかにすることが可能である。すると、勾配が作られるにつれて様々な割合で混合される時に、各成分の相対的比率をバルク屈折率応答から決定し得る。実効的には、相補的であるアナライト勾配と蔗糖勾配(例えば)の両方が同じ勾配サンプル中に準備される。その代わりに、もし勾配形成および注入が非常に再現可能であると仮定することができるならば、蔗糖勾配注入は、アナライト注入とは別に準備されて注入されても良い。特定の勾配形成および注入条件の組について一旦勾配がこのように規定されると、その規定は格納されて将来の実験で使われても良い。もしアナライト勾配形成および注入に顕著な変動性が期待されるのであれば、バルクインデックス勾配がアナライト勾配に追加されるべきである。蔗糖は、飲料/ソフトドリンク業界において使われているbrix(蔗糖濃度)値テーブルから既知の屈折率の標準が容易に準備されるので、便利な添加剤である。しかしながら、多くの種類の他の物質を採用しても良い;例には、親水性ポリマー、カーボハイドレート、グリコール、および水混和性溶剤が含まれる。
【0037】
従って、本発明は、バイオセンサー(例えば、光学的バイオセンサーのような)と共に使用するための勾配注入方法を含む。この方法では、勾配成分溶液の間にバルク屈折率差が存在するように、勾配を構成する溶液の少なくとも一つの組成を調整することによって、勾配プロファイルが決定される。この勾配は、一つ以上のセンシング表面上に注入される。勾配注入中のバルク屈折率変化へのバイオセンサーの応答は、勾配注入中の全ての時間においてセンシング表面にある各勾配成分溶液の相対的比率を決定するために記録される。
【0038】
一実装では、バルク屈折率の勾配は、アナライト濃度中に相補的な勾配を有し、勾配は二つ以上のセンシング表面上に注入され、アナライト勾配組成は、アナライトについての親和性結合リガンドを有していないセンシング表面上に記録されたバルク屈折率応答から推測される。より詳細には、バルク屈折率の勾配は、その全体の組成が第一および第二のセンシング表面上に注入される、一つ以上のアナライト中に相補的な勾配を有することができる。第一のセンシング表面は勾配中に含まれた一つ以上のアナライトについての親和性を有する捕獲物質で被覆されており、第一のセンシング表面からの応答はアナライトの捕獲物質への結合から結果として得られるバルク屈折率変化および表面屈折率変化の両方からの貢献を表す。第二のセンシング表面は親和性捕獲物質で被覆されておらず、第二のセンシング表面からのバイオセンサー応答はアナライト結合無しのバルク屈折率変化を表し、注入中のアナライト勾配組成を推測するのに使われる。一つ以上のアナライトの第一の表面への結合による応答は、第一のセンシング表面からの応答から第二のセンシング表面の応答を引く、または割る、ことによって解決される。例えば、第二のチャネルからのバルク屈折率応答は、より高い屈折率勾配成分の100%純粋溶液についての最大の期待された応答によって応答を割り、それから勾配のプロファイルを注入時間の関数として好適にモデル化する回帰曲線フィッティング手順を使って方程式をフィッティングし、それから勾配注入中の時間の関数としてのアナライト濃度を推定するために、この勾配関数を勾配を準備するのに使われた開始アナライト濃度に掛けることによって、相補的アナライト勾配の濃度を推測するのに使われる。更により特定には、アナライト勾配は、高屈折率物質中の勾配と相補的だが反対であり、勾配関数がGであると、勾配注入中の時間の関数としてのアナライト濃度を推定するのに1−Gが開始アナライト濃度に掛けられる。
【0039】
別の実装では、勾配は単一のセンシング表面上に注入され、アナライトの固定化されたリガンドへの結合の個別の貢献とバルク屈折率変動は、予め規定された数学的モデルの非線形回帰曲線フィッティングを採用することによって注入時間の関数としての単一の応答曲線から解決される。
【0040】
勾配成分溶液のバルク屈折率は、その溶液の屈折率を変えるがアナライトの固定化されたリガンドへの結合とは顕著に干渉しない物質または試薬の追加によって調整されても良い。非限定的な例には、糖分、ポリサッカライド、グリコール、ハイドロゲル、塩分、親水性ポリマー、および水混和性溶剤が含まれる。
【0041】
次に、センシング表面上に固定化された抗IL−2抗体とのIL−2の相互作用の動力学的分析に適用された発明の応用が記載される。蔗糖勾配が準備されて注入され、その勾配は、実際のアナライト勾配注入のために使われるべきであるものと同じ勾配準備および注入パラメータを使った既知の屈折率のものである。光学的バイオセンサーは、勾配に沿った変化するバルク屈折率に応答して、図5に示されるような典型的なシグモイド応答曲線30を与える。曲線は、図6に示されるように0から1.0の限界をもった曲線32を生み出すようにy−正規化されている。シグモイドモデル[即ちG=Rhi−((Rhi−Rlo)/(1+(t/A)^B))]は、図7に曲線34によって示されるようにこの曲線32にフィットされている。全てのパラメータは、Rhi=1.016、Rlo=−0.2271、A=77.75およびB=0.009097を与えるモデルフィットから得られている。よって、関数Gはここでは勾配注入についての厳密な勾配プロファイルを規定し、同じやり方で準備されて注入されたアナライト勾配中のアナライトの濃度を規定するのに使われる。先に規定されたような2区画モデルがそれからフィットされる。その代わりに、センシング表面においてアナライトの非定常状態濃度がある時には質量輸送限定はそれ程顕著ではないので、単純なモデルをフィットしても良い。従って、単純なモデルは以下のように書くことができる。
【0042】
A(溶液)=Conc*G
G=1.016−((1.016+0.2271)/
(1+(t/77.75)^0.0091))
A[0]=0
B[0]=Rmax
dB/dt=−(ka*A*B−kd*AB)
AB[0]=0
dAB/dt=(ka*A*B−kd*AB)
総応答:
AB+RI
図8に示す指数的結合応答曲線は、抗IL−2抗体(即ち、リガンド)で被覆された表面上のインターロイキン2(IL−2)のシグモイド勾配の注入についてのものである。勾配容積は125μLであり、25μL/分で注入された。結合されたIL−2がそれからおよそ400秒の間解離することを許容された(即ち、指数的衰退フェーズ)。グラフは、実際のIL−2結合曲線36とフィットされたモデル曲線38を含む。動力学的定数は、ka=3.2×105M−1s−1、kd=1.6×10−3s−1、KD=5nMであった(KDは解離親和性定数=kd/ka)。これらの値は、複数固定濃度注入を採用する従来の動力学的分析によって決定された相互作用定数と一致している。
【0043】
別の実施形態では、注入フローレートは、勾配が注入されるにつれて「その場で」変化させられても良い。これは、注入された勾配自体は連続的勾配であるとしても、勾配中にステッププロファイルを引き起こす。
【0044】
一般に、サンプル注入方法を変形することによって幅広い種類の勾配プロファイルを生成し得る。この発明の範囲内である他の勾配を制限しない例が、図9〜11に示されている。図9は、サンプルの線形的に増加する濃度を描いている。図10と11は、サンプルの二つの異なる指数的に増加する勾配を描いている。
【0045】
図12は、線形勾配を得る一つの方法を提供するのに使われることができるコンポーネンツを描いている。これは、それにより連続的勾配流体の選択された部分を使うことができる本発明の別の側面の一例である。これは、単一の連続的注入中に濃度の勾配のためのテストイベント全体が得られるように、そのような選択的注入が依然として単一の連続的注入で行われるので、ステップまたはセグメント化された注入ではない。
【0046】
図12の描写では、図3を参照して記載されたように前に記載されたシグモイド勾配がサンプルループ中に形成される。図3Cでは、ポイントXAとXBの間のような実質的に線形な領域があることに注意。この勾配を本発明のこの実装に従って隣接する勾配生成器42からフローセル40中に注入するには、注入は最初、ポイント0からポイントXAまでの勾配サンプルの部分が除去される(即ち、この非線形部分は廃物に流れる)ように、廃物1ポート44が開かれ廃物2ポート46が閉じられて進められ、それから実質的に線形なXAからXBの部分がフローセル40のセンシング領域48上を流れるように、ポート44が閉じられポート46が開かれる。ポート制御はそれから、ポート44、46の状態を逆転させて、勾配の残りを廃物に流す(ポイントXBの後の残りの非線形な部分)。
【0047】
図13を参照すると、以下に更に記載されるように閉じられたミキサー50を使うことによって指数的勾配を得ることができる。そのようなミキサー50は、もし本発明のために使われれば、実効的にサンプルループ実施形態の導管15があるところに、即ち、フローセル中への直接入力のために、置かれる。これらの二つを直列にすることは、二つの異なる指数的勾配を得るのに使うことができる。また、もしミキサーから追加されるよりも多くの液体を引き出すことによって勾配形成中に勾配メーカーの混合チェンバー内部の容積がインクリメント的に減少されるならば、線形勾配を得ても良い。もし入力フローレートの出力フローレートに対する比が0.588であれば、アナライト中の非常に線形な勾配が存在する。多くの場合、もし比が0.5であれば十分に線形な勾配が作成される。このように形成された線形勾配は、勾配の最後の15%に渡って線形性から実質的にずれるので、このセグメントは通常廃棄される。
【0048】
上で言及された2区画モデルでの使用のために、例えば、線形勾配はアナライトの濃度が線形的に変化し、以下のように記述し得ることを仮定する:
A=C*t
ここで、Cは秒当りの濃度のインクリメント的な増加であり、
tはフローの時間(秒)である。
【0049】
指数的濃度勾配は、それから混合されるサンプルを閉じた容積中に注入することによって作り出すことができる。始めに閉じた容積中のサンプルの濃度は0であるが、一旦注入が始まると、サンプルは閉じた容積中の液体を置き換える。置き換えられた液体はフローセルに流れる。よって、本発明のこの実装のステップは:液体サンプルを混合チェンバー中に流すことと、液体サンプルと混合チェンバー中の他の液体が均質に混合され、スムーズな指数的アナライト勾配として特徴付けられる増加するアナライト勾配としてフローセルに出力されるように、混合チェンバーを動作させることとを含む。注入が進むにつれて、フローセル中に流れる置き換えられた液体中のアナライトの濃度は以下のように記述され得る。
【0050】
サンプル保持チャネルの他のタイプでの混合を使うことができる。例えば、サンプル保持チャネルは、サンプル装填注射器またはサンプル注入プローブまたは注入針の円筒を含むことができる。そこから種々の勾配を得ることができる別のタイプが、次に記載される。
【0051】
フロー注入分析(FIA)システムと一体化した勾配を準備する手段
勾配注入を行うことへの商業的に実現可能なアプローチとなるためには、低い容積が使われることが必要不可欠である。上に引用したShank-RetzlaffとSligarは、標準的勾配生成器を使って18ミリリッター(mL)の勾配溶液を準備し、それから勾配生成器からの出力が、SPR検出器によって調べられたフローセル中に直ちにポンプで送り込まれた。この18mLの容積は、商業的に有用なシステムにとって一般的に受け入れ可能であろうものよりも100倍大きな領域中にある。従って、低容積の勾配を準備する手段と従来の低容積流体取り扱いシステムとの一体化が要求される。また、システムは、高品質低容積フロー注入分析システムとも一体化されるべきである。
【0052】
従って、現発明の別の好ましい実施形態では、勾配は、ミニアチュア混合容器から液体を追加し、取り除く、二重ルーメンサンプルプローブを採用することによって準備される。入力/出力フローレートは、勾配プロファイルを成形するように適切に選ばれる。生体分子相互作用分析のために好適なバイオセンサーは、低サンプル容積を処理するように最適化される。液体の低容積の吸引と分取のために精密な注射器ポンプが採用される。
【0053】
本発明のこの実施形態の勾配作成は、革新的なマイクロ混合チェンバーと組み合わされた従来のオートサンプラー流体工学的構成を使って行われる。従来の勾配メーカーは、チェンバーの底に置かれた回転する磁石攪拌器を採用することによって混合を達成する。これらの商業的に入手可能な磁石攪拌器の大きなスケールは、低容積勾配の生成には好適ではない。安定した勾配を作成するのに要求される容積が50mLを超える商業的に入手可能な勾配生成器を使って勾配を作り出すことが可能である。生体分子相互作用分析では、0.5mLの容積は非常に大きいと考えられる。これは、試薬のコストとマイクロ流体工学的サンプル配送システムの使用による。
【0054】
図14に示されたこの本発明の一実施形態では、ミキサー52が、あらゆる好適なタイプのミニアチュアバイブレータ56(例えば、ミニアチュア非対称モーター、ピエゾ結晶、アコースティック/ソニック)を使うことによって混合チェンバー54中の液体を混合する。混合は、いかなる他の能動的混合手段を要求することもなく、良く混合された液体が出力ストリーム中に流れることを許容する、乱流混合を引き起こすバッフルのような構造をミキサーの内部に形成することによって達成することもできる。もし混合が十分でなければ、勾配は歪みによって苦しめられる;ただし、これらの歪みは多くの勾配プロファイルを生成するのに活用されても良い。バッフル配置は、不完全な混合によって特徴付けられるミキサー中の勾配プロファイルを変化させるように好適に選ばれても良い。ミニアチュアミキサー52は、オートサンプラーシステムのサンプル保持区画の内部または近傍に位置していても良い。
【0055】
図14では、勾配作成装置はまた、ロボットアーム(オートサンプラーシステムのロボットアームのような)上に搭載された二重ルーメンプローブ58からなる。ルーメン58aは入力ストリームに接続され、ルーメン58bは出力ストリームに接続される。各ストリームは、液体を分取または吸引可能な精密なポンプによって接続される/作り出される。ロボットアームとポンプは、オートサンプラーに隣接するサンプルラック上の離散した位置からのサンプルの分取および吸引のための一般的なオートサンプラー構成の一部であることができる。
【0056】
図14に描かれ上述した設備を使って本発明に従って勾配を生成するには、液体成分Aおよび液体成分Bのそれぞれによって満たされた2つのサンプル小ビンがサンプルラック中に装填される。オートサンプラーはそれから成分Aの規定された容積を吸引し、それをミキサー52の混合チェンバー54中に置く。プローブ58のチャネル/ルーメンはそれから、オートサンプラーの/に隣接する洗浄ステーションにおいて洗浄液で濯がれる。図14の特定の例に示されるように、どちらのルーメンも入力または出力であることができるが、オートサンプラーはそれから、ミキサー中の成分Aの容積と等しい成分Bの容積をルーメン58a中に吸引するようにプローブ58を動かすよう操作される。二重ルーメンプローブ58の先端58cはそれから、成分Aの既知の容積を有する混合チェンバー54の底に位置させられる。線形勾配を生成するには、成分Bが、規定されたフローレートでルーメン58aを介して混合チェンバー54中に追加されると共に、混合された液体(即ち、勾配)が、入力フローレートの2倍のフローレートでルーメン58bを介して同時に取り除かれる。混合チェンバー54内部の液体の総容積は、混合チェンバー54中に残存する液体がなくなるまで時間をかけて減少する。成分B中の線形勾配は、ルーメン58bの出力から回復される。最初のBの濃度はゼロであり、最後のBの濃度は100%である。
【0057】
出力ストリームは、分析のための一つ以上のセンシング領域上に直ちに向けられても良く、それにより勾配生成と分析が同時に行われる。勾配を保持チャネル中に格納して、勾配が或る後の時間に注入されることを許容することも可能である。サンプルをセンシング領域上に向けながら保持チャネルからのフローを逆転し、それにより逆の勾配に表面を晒すことも可能である。成分Bをミキサー中に置き、プローブから成分Aを追加することによって逆の勾配プロファイルを作成することも可能である。ミキサー入力/出力フローレートを変えることによって非線形勾配を生成しても良い。例えば、入力および出力フローレートをマッチさせる(即ち、入力フローレート=出力フローレート)ことによりミキサー内部の容積を一定に保持することで、指数的に衰退する勾配を作成しても良い。入力フローレートに対して出力フローレートを下げることによって、凹状勾配を作成しても良い。別の実施形態では、相対的入力/出力フローをその場で変えることによって複数の勾配を作成することも可能である。例えば、勾配は、指数的領域が続いた線形領域を有することができる。
【0058】
この勾配作成装置によって作成された成分B中の勾配のプロファイルは、以下の方程式によって予測することができる。
【0059】
B(t)=Bmax−(Bmax*e^(−Fin*t/V)
ここで、Bmax=成分Bの最大濃度
Fin =入力フローレート
V =時間t=V0+(Fout−Fin)*tにおけるミキサー中の容積で、
ここで、V0=t=0におけるミキサー中の容積で、
Fout=出力フローレート
図15は、上記方程式を使ってシミュレーションされた3つの勾配プロファイルを示す。図15では:(1)200μLのミキサー容積を使って37マイクロリッター/分(μL/分)の等しい入力および出力フローレートから結果として得られた凸状勾配曲線62;(2)37μL/分の入力フローレートと、74μL/分の出力フローレートと、200μLのミキサー容積から結果として得られた凹状勾配曲線64;(3)37μL/分の入力フローレートと、63μL/分の出力フローレートと、200μLのミキサー容積から結果として得られた線形勾配曲線66(この曲線66は85%まで近似的に線形であることに注意)。
【0060】
図15に示す線形勾配については、出力フローレートが入力フローレートよりも高いので、混合チェンバー中の液体の容積は減少する。この勾配はおよそ80%まで非常に線形であり、それから凸状になる。この勾配プロファイルは従って、異なる勾配プロファイルをもった2つの区別されたセグメントがあるマルチフェーズのものと考えられるべきである。この場合マルチフェーズの勾配プロファイルを作成するのにフローレートの変化は要求されなかった。成分B中のこの勾配は、指数的上昇フェーズ66aが線形領域66bの前にフローセルに入るように、図16に示されるように変換された時に特に有用である。これは、勾配が親和性および動力学的分析物でしばしば要求されるような幅広い濃度範囲をカバーすることを許容する。変換は単に成分を反対にすることを要求し、そこでは成分Bがミキサー中に置かれ成分Aが追加されて勾配を形成する。加えて、表面が低濃度から高濃度へと成分Bに晒されるように、勾配はそれから逆の順番でセンシング表面上に注入される。
【0061】
上述したのは、好ましくはフロー注入分析システムに一体化された、2成分液体勾配を生成する手段の実装である。混合区画は、第一の液体が混合区画中に置かれ、第二の液体が選択された既知のフローレートで追加されると共に、混合された液体勾配が選択された既知のフローレートでミキサーから取り除かれる時に、混合された液体が均質であることを確かにする。混合区画中に置かれた容積と、第二の液体ストリームのフローレートと、混合された液体の出力ストリームは、望ましい勾配プロファイルを生み出すように調整される。特定の実装では、混合区画の容積は1mLより少なく、装置は流体工学的オートサンプラーのサンプリング区画中に置かれている。上述した実装では、第二の液体ストリームと混合された液体の出力ストリームは、混合区画中に位置していても良い二重ルーメン液体プローブによって提供されており、そこでは各プローブルーメンは制御されたポンプ手段と流体接触している。
【0062】
選択可能なフローレートに関しては、勾配生成手段を実装するミキサーの好ましい実装は、それぞれの勾配を達成するように一つ以上の以下のフローレート関係を可能とする。上述したミキサーはこれを達成する。もし混合された液体の出力ストリームのフローレートが、追加された第二の液体ストリームのフローレートに等しければ、混合された液体の出力ストリームは、第一の液体中に第二の液体の指数的勾配を有する。もし混合された液体の出力ストリームのフローレートが、追加された第二の液体ストリームのフローレートの約2倍であれば、混合された液体の出力ストリームは、第一の液体中に第二の液体の線形的に増加する勾配を有する。もし混合された液体の出力ストリームのフローレートが、追加された第二の液体ストリームのフローレートの2倍よりも大きければ、混合された液体の出力ストリームは、第一の液体中に第二の液体の凹状勾配を有する。もし混合された液体の出力ストリームのフローレートが、追加された第二の液体ストリームのフローレートの2倍よりも小さければ、混合された液体の出力ストリームは、第一の液体中に第二の液体の凸状勾配を有する。もし混合された液体の出力ストリームのフローレートおよび/または追加された第二の液体ストリームのフローレートが間欠的に変えられれば、混合された液体の出力ストリームは、異なる勾配プロファイルによって特徴付けられた二つ以上のセグメントをもった、第一の液体中の第二の液体の複合勾配である。
【0063】
混合された液体の出力ストリームのフローレートが、追加された第二の液体ストリームのフローレートの「約2倍」であるという言及は、xと2xの名目上のフローレートを提供する商業的に入手可能な装置に基づいている。倍化された(2x)フローレートは線形性を近似するだけであるのに対し、1/2.73(前述した「第二の液体ストリーム」の入力フロー)と1−(1/2.73)(前述した「混合された液体の出力ストリーム」の出力フロー)のフローレート関係で、本発明では向上された線形性を得ることができる。この関係は、図15の線形勾配について上に示されている(37μL/分の入力フローレートと、63μL/分の出力フローレート)。63/37=1.7というこの出力/入力関係は、本発明のこの側面に関してここで使われた「約2倍」という用語に含まれている。そのような特定の場合には、約2倍よりも大きいことは、例えば図15の凹状曲線64について示されたように、入力フローの倍の出力フローを含むことができる。
【0064】
一定濃度と、線形、指数的、およびシグモイド勾配についてのシミュレーション結合応答曲線が図17に示されている。曲線68は、アナライト濃度が25ナノモル(nM)である通常の固定濃度注入である。曲線70は、同じ相互作用であるが濃度がゼロで始まり最終濃度が25nMに近づくまでスムーズに衰退する指数的勾配に従って増えるものについてである。曲線72は、濃度がゼロで始まり注入の最後において25nMである線形濃度勾配から結果として得られる。曲線74は、図8で実験的に決定されたものと同様のシグモイド形濃度勾配から結果として得られる。
【0065】
まとめると、どのようにアナライト勾配が決定され得るかについて3つのアプローチがある。
【0066】
1.もし勾配が非常に再現可能であれば、その数学的な形は一定であり、一旦規定されるとこれはサンプル緩衝液と流動する緩衝液の間にバルク屈折率差が存在しない全ての将来の勾配注入について使われ得る。フローレートの変動、サンプル容積およびループ容積は、モデル化されても良く、これらのパラメータはモデルフィッティングの時に入れられても定数として入れられても良い。よって、再現可能なアナライト勾配は、単純な数学的関数によって記述されることができ、この関数は、変化するアナライト濃度をその中に取り入れるように動力学的評価アルゴリズム中に組み込まれる。これは、先に記載された勾配メーカーによって作成された全ての勾配に適用される。
【0067】
2.もし規定された関数が適用されることを仮定できない複合勾配が何らかの手段によって準備されれば、その関数を規定するのにバルクインデックス勾配が上述したように採用されるべきである。この手順は、条件の特定の組(即ち、サンプル容積、ループ容積、フローレート、サンプル装填フローレート等)の下で勾配関数を規定することを許容する。この勾配関数はそれから、動力学的/親和性モデルフィットで適用される。一旦規定されるとこの関数は、同一条件が適用されることを仮定して、全ての将来の勾配注入で適用されることを仮定されても良い。
【0068】
3.もし勾配プロファイルが非常に複雑であれば、または正確に再現されていなければ、アナライト勾配でもってバルク屈折率勾配が生成されるべきである。通常、モデルをフィッティングする際の煩雑さを避けるように、サンプルのバルク屈折率と流動する緩衝液のそれをできるだけ近くにマッチさせることが薦められる。しかしながら、これらの煩雑さは、バルクインデックス変化が極めて高くない限り重要ではない。例えば、サンプル緩衝液のバルク屈折率が流動する緩衝液のそれよりも僅かに高い(例えば、100μ屈折率単位と等価である〜100RU)ことを単に確かにすることが可能である。すると、勾配が注入された時に、勾配プロファイルが参照チャネル応答中に存在し(低い非特定の結合を仮定して)、活性センシングチャネル(リガンドで被覆された)での応答は、結合相互作用とバルク屈折率勾配の両方の生成物となる。結合応答は、活性チャネル応答から参照応答を引くことによって決定される。勾配プロファイルは参照チャネルから決定され、これは注入中のアナライトの変化する濃度を推定するのに使われる。先に議論した4パラメータロジスティック表現が適切であり得る。複雑な多項式を含んだ、他の非線形モデルがフィットされても良い。もし勾配プロファイルに正確にフィットする好適な表現が見つけられなければ、単純に勾配自体を使うことが可能である。例えば、アナライトサンプル(即ち、成分B)に対して0.13%重量当り重量(w/w)の最終濃度まで蔗糖を追加しなさい。0.13%(w/w)の蔗糖を含んだ溶液は、100RUのバルク屈折率応答を与える。図18に示すような複雑なプロファイルを与える複合勾配を準備しなさい。もし勾配が、蔗糖の最大濃度に近づくことが許容されるように準備されれば、最大の期待された応答は100RUである。その時に、成分B(即ち、アナライト)の濃度もまた100%であることが仮定されている。従って、勾配は、図19に示されたような時間の関数としての単位勾配プロファイル(即ち、存在する成分Bの比率)を与えるように、期待された最大バルク屈折率応答で割ることによって正規化されることができる。時間tにおけるアナライトの濃度がそれから、最大アナライト濃度(即ち、成分B中のアナライト濃度)にその時間点における対応する比率を掛けることによって得られる。ポイント間の補間がオプションで採用されても良い。よって、そのような場合には、本発明の方法は、フローセルの第一のセンシング表面上にアナライト結合種をもったアナライトを結合すること、それにより結合反応を形成し、フローセルの第二のセンシング表面上にアナライト濃度勾配を流し続け、そこでは第二のセンシング表面はアナライト結合種を含んでいない;サンプル液体と第二の液体の間にバルク屈折率差を作り出すことと、その上のアナライト濃度勾配のフローに対する第二のセンシング表面の応答からバルク屈折率差に対する参照応答を検出することを含んだ、アナライト勾配のプロファイルを経験的に決定すること、そこでは参照応答はバルク屈折率の勾配を含んでいる;バルク屈折率の勾配をアナライト勾配として記録すること;変化するアナライト濃度を取り入れるために、アナライト勾配としてのバルク屈折率の勾配を少なくとも一つの動力学的評価アルゴリズムに組み込むこと、を含むことができる。
【0069】
本発明はまた、一つより多くのアナライトを有するサンプルとの使用も包含する。最も単純には、異なるアナライトを有する別の流体内に一つのアナライト流体があることができ、その流体の一つはキャリア流体と呼ばれることができる。そのような他の流体は、2つの流体を混合することが二重勾配を形成するように、結合されていないアナライト結合種を含み、そこではアナライトの濃度と結合されていないアナライト結合種の濃度の両方が連続的な勾配を形成する。例えば、もしこれらの勾配が、お互いに向けて親和性を有する2つの分子(AとB)についてのものであれば、勾配中のあらゆるポイントにおける2つの反応物の比は変化する。一旦作り出されると、2成分勾配は注入されても良い。もし勾配が直ちに注入されると、結果として得られる相互作用曲線は動力学的情報を有し、MotulskyとMahanによって導出され(”The Kinetics of Competitive Radioligand Binding Predicted by the Law of Mass Action”, Molecular Pharmacology, 25:1-9 (1983)参照)、後にKarlssonによって変形され(”Real-Time Competitive Kinetic Analysis of Interactions between Low-Molecular-Weight Ligands in Solution and Surface-Immobilized Receptors”, Analytical Biochemistry 221: 142-151 (1994)参照)、Nieba, Krebber, Pluckthunによって更に変形された(”Competition BIAcore for Measuring True Affinities: Large Differences from Values Determined from binding Kinetics”, Analytical Biochemistry 234: 155-165 (1996)参照)、競合的動力学モデルを使って分析されても良い。これらのモデルは、会合レート定数と解離レート定数を返す。もし勾配成分が、注入される前に定常状態複合体を形成することを許容されていれば、相互作用についての親和性定数を生み出すように、結果として得られる結合曲線が調べられても良い。
【0070】
アナライト勾配を使った生体分子相互作用分析(BIA)の更なる応用
競合的溶液フェーズ親和性
溶液フェーズ親和性モデルの競合的2成分勾配は、競合剤/抑制剤が存在する中で観測された結合レート中の変化を分析することによって素早く分析することができる。上に引用されたNieba他の文献は、アナライトが自由リガンド(または競合剤)の異なる濃度と共に混合される一連の従来の結合相互作用曲線についての観測されたレート定数の決定に基づいた競合的親和性アプローチを報告した。このモデルは、前述したKarlssonとMotulsky/Mahanのモデルに基づいている。Nieba他の方法では、2成分勾配は、注入される前に平衡に達することを許容されている。単純な1:1相互作用モデルの微分方程式は上述された。複合体形成の変化のレートが記載された主要な微分方程式はこれである。
【0071】
dAB/dt=(ka*A*B−kd*AB)
ここで、A=アナライト濃度
B=リガンド濃度
ka=会合レート定数
kd=解離レート定数
AB=A+Bから形成された複合体
バイオセンサーは、AB形成がバイオセンサー応答Rであるように複合体形成を測定する。会合フェーズについての微分方程式の積分形は従って、
Rt=(r0/kobs)(1−e^(−kobst))
ここで、r0=ka*A*Rmax
Rmaxは飽和における最大アナライト結合応答
kobsは観測されたレート定数=ka*A+kd
このモデルでは、サンプル中の競合剤の存在のために表面結合されたリガンドへの結合の抑制は、観測されたレート定数(kobs)の削減を引き起こす。これは、競合剤が不在の時に同じアナライト濃度について記録された観測されたレート定数(kobs0)と比較されても良い。本発明の実施形態は、注入が進行するにつれての抑制剤の濃度中の勾配を取り入れるようにこのモデルを適応させる。モデルが抑制剤勾配を取り入れるように適応された時に、KDと共にkobs0を推定するのに十分な情報が単一勾配曲線中にある。これは、単一の結合応答曲線から親和性定数が決定されることを可能とする。これはKarlssonへの米国特許第5,753,518号やKarlsson他への米国特許第6,143,574号と対照的である。ここに開示された本発明は、抑制剤−アナライト相互作用についてのKDが、アナライト−リガンド相互作用についてのkobs0と共に、全て2成分勾配結合応答曲線から決定されることを許容する。更には、この勾配相互作用曲線の解離フェーズが、アナライト−リガンド相互作用についての解離レート定数(kd)を決定するのに使われても良い。kobs0とkdの両方が既知であるので、アナライト−リガンド相互作用についての会合レート定数(ka)が以下:ka=kobs0−kd)/Aから計算できるということも現在構想されている。よって変形されたモデルは、アナライト−リガンド相互作用についての固体フェーズ動力学的定数と抑制剤−アナライト相互作用についての溶液フェーズ親和性定数を返すために、2成分勾配についての単一の応答曲線にフィットされても良い。もし抑制剤が異なる種ではなく単にバルク溶液中に存在する更なるリガンド分子であれば、この方法は、固体フェーズ動力学的定数の比から計算されたKDが溶液フェーズ定常状態KDを近似すべきであるという便利な自己一貫性チェックを提供する。従って、本発明の目的である2成分勾配注入方法は、再生の無い、動力学的および親和性定数を決定するための速くて情報が豊富な方法を提供する。この情報は、非勾配方法を使って単一の結合相互作用曲線から得ることは出来ない。
【0072】
下の例では、抑制剤濃度中の線形勾配が仮定されている。
【0073】
Increment=I/InjectTime
ここで、Iは最大抑制剤濃度
InjectTimeは秒での注入の長さ
Incrementは各秒の抑制剤濃度中の変化
Is=Increment*t
ここで、Isはあらゆる時間tにおける抑制剤の濃度
W=(B0+Is+KD)/2
ここで、B0は自由リガンド濃度
KDは抑制剤についての親和性定数
抑制の結果としての観測されたレート定数中の変化はすると以下によって与えられる
kobs0=(kobs0/B0)*(B0−W+((W^2)−Is*B)^0.5)
ここで、kobs0は抑制剤の不在における観測されたレート定数。
【0074】
そして、結合応答曲線の会合フェーズは、時間(t)に対する会合フェーズについての以下の表現とフィットされる:
会合=BASELINE+(r0/kobs)*(1−e^(−1*kobs*t))
オプションで、解離フェーズが固定化されたリガンドをもったアナライト相互作用についてのkdを確認するのに使われても良い。よって、解離フェーズは以下のように記述される:
YatSTOP
=(r0/kobs)*(1−e^(−1*kobs*InjectTime))
解離=YatSTOP*e^(−1*kd*(t−InjectTime))
シミュレーション
上のモデルを使って、シミュレーションは、各パラメータが実験的に期待され得るであろう典型的な値を与えられた期待された曲線を生み出す。以下のシミュレーションでは、
I=1.000000*10^−8M
B0=1.000000*10^−8M
KD=1.000000*10^−7M
kobs0=0.01s
BASELINE=0.0RU
r0=1.0
kd=0.001s−1
会合フェーズと解離フェーズの両方が300秒であった。シミュレーションの結果として得られる応答が図20に示されている。Nieba他と対照的に、上述した本モデルを使ったシミュレーションは、抑制剤が存在してない実験的に決定されたkobs0は要求されないことを示す。ここで記載された発明の実施形態では、kobs0の実験的な決定はオプションである。IとBが既知であるので、KDとkobs0は、このモデルを実際の曲線にフィッティングする時の唯一のフィットされたパラメータである。図20に示されたシミュレーションされたデータセットでは、モデルがシミュレーションされた曲線(曲線78)にフィットされ(曲線76)、KDとkobs0が未知数としてフィットされ、正しい値が成功裡に返された。従って、本発明は、この単一注入勾配方法を含み、そこではKDは単一の注入から決定され得る。
【0075】
競合的動力学モデル
競合的動力学モデルは、MotulskyとMahanからとKarlssonからの先の引用文献によって記載されたように導出され適用された。このモデルでは、固定化されたリガンド結合サイトについての2つのアナライト種の間の競合が、複雑な結合相互作用曲線に結果としてなる。相互作用は、分析の直前に混合される。この方法の特定の利点は、アナライト種の一つが非常に低い分子重量を有しても良く(即ち、抑制剤に指名され)、従って非常に低い(検出不能でさえある)結合応答を生じさせるが、それでも固定化されたリガンドと相互作用する時のその動力学的結合定数は、結果として得られる大きなアナライト結合応答の抑制から依然決定され得ることである。これは上で議論した競合的親和性アプローチと同様であるが、動力学的定数が決定されることを許容する。従って、データから動力学的定数を抽出するために、定常状態が発展するのを待つ必要はない。上に引用したKarlssonによって適用されたモデルは、アナライトの固定された濃度の存在の中で複数の異なる抑制剤濃度を表す複数の結合応答曲線を要求する。曲線はそれから、抑制剤−リガンド相互作用についての動力学的定数を返すモデルにフィットされる。大きなアナライトの固定化されたリガンドとの相互作用についての動力学的定数は、予め決定されそれから定数としてフィットされるのが最も良く、それによりモデルから推定される抑制剤動力学的定数の信頼性を向上させる。
【0076】
本発明の好ましい実施形態は、単一の競合的結合相互作用曲線が、溶液中のアナライトとの抑制剤の相互作用の動力学を単一の結合相互作用曲線から決定することを可能とするのに十分な動力学的情報を有するような、MotulskyとMahanとKarlssonの競合的動力学モデルの本発明の勾配注入方法への適応を含む。これは再び、表面を再生する必要を回避する。
【0077】
本発明の新しいモデルは、抑制剤が、無視できる結合応答を生じさせる低分子重量の分子であることを仮定し、従ってそれは結合応答には貢献をしないことが仮定される。しかしながら、もしその質量がかなりであれば、先の引用文件中でKarlssonによって記載されるように、モデルはこれを取り入れるように調整されても良い。
【0078】
Increment=I/InjectTime
ここで、Iは最大抑制剤濃度
InjectTimeは秒での注入の長さ
Incrementは各秒の抑制剤濃度中の変化
Ig=Increment*t
ここで、Igはあらゆる時間tにおける抑制剤の濃度
方程式は複雑であるので、項、即ち上で引用した彼らの論文でMotulsky他によって使われた表記法中の4つの項(KA、KB、KFおよびKS)、を指定して記述するのが最も良い。これらは親和性および動力学的定数と混同されるべきではない。
【0079】
KA=ka*A+kd
KB=ka’*Ig+kd’
ここでka’とkd’は、抑制剤−リガンド相互作用についての動力学的定数。
【0080】
S=SQRT((KA−KB)^2+4*ka*kd*A*Ig)
KF=0.5*(KA+KB+S)
KS=0.5*(KA+KB−S)
DIFF=KF−KS
Q=Bmax*ka*A/DIFF
そして、時間の関数としての勾配注入の会合フェーズは、以下の方程式によって記述される:
ASSOCIATION=Q*(k4*DIFF/(KF*KS)+
((kd’−KF)/KF)*e^(−KF*t)−
((k4−KS)/KS)*e^(−KS*t))
ここでk4は第二の相互作用のkdである。
【0081】
シミュレーション
上のモデルを使うことで、以下のシミュレーションされた期待された結合応答曲線が作成された。解離フェーズは、結合相互作用曲線のこの部分がモデルによって要求されないので、省略された。以下の定数が採用された。
【0082】
ka=1000000.0M−1s−1
A=5.0*10^−8M
kd=0.001s−1
ka’=1000000.0M−1s−1
I=1.0*10^−8M
kd’=0.001s−1
Bmax=100.0RU
図21を参照すると、シミュレーションで得られた曲線80がモデル曲線82にフィットされて示され、ここでka’とkd’は未知のパラメータとしてフィットされている。モデルは成功裏に正しい動力学的値を返した。従って、リガンドとの抑制剤の相互作用についての動力学的定数を得るには、単一の結合会合フェーズ曲線で十分であることが期待される。本質的ではないが、アナライト相互作用についての動力学的定数(即ち、kaとkd)は、予め決定され、モデル中に定数として入れられるべきである。いくつかの場合には、抑制剤は実際には固定化されたリガンドと同じ分子であっても良い。モデルは従って、動力学的定数の単一の組にまで簡素化されることができる。もし別々の動力学的定数がそのような自由リガンド抑制剤について維持されれば、単一の結合相互作用曲線中の溶液フェーズと固体フェーズ動力学のいかなる変動をも決定することが可能である。他の勾配方法と共通して、この方法も表面再生を回避することを許容する。勾配抑制曲線の複雑な形状は情報が豊富であり、単一の曲線で、抑制剤濃度の範囲をカバーする曲線の組を置き換えることを許容する。
【0083】
制御された固定化(即ち、制御された事前集中)についてのpH勾配
未知の親和性相互作用の動力学的分析にアプローチする時に、動力学的分析の前にいくつかのパイロット実験を行うことが有用である。多くの場合、これらの相互作用の等電点は未知である。等電点(pI)は生体分子の実効電荷がゼロであるpHである。表面上へのリガンドの静電荷事前集中は、通常リガンド固定化のために必要であり、これはリガンドが正に荷電されていることを要求する。リガンドは通常それを低pH緩衝液中に溶解することによって正に荷電されたものとなる。正に荷電されたリガンドの事前集中は、それが電気陰性センシング表面に晒された時に起こる。静電場の中性化を防ぐために、総塩分濃度は低くなくてはならない。しかしながら、好ましい共有結合反応(即ち、表面結合されたN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを介したアミン結合)は中性のpHで最も良く進行する。従って、最適pHは、リガンドの事前集中が効果的となる中性のpHに最も近いものである。このpHは通常一連の注入によって経験的に決定される。最適pHを決定するには、pHが変動する一連の緩衝液中にリガンドを準備する必要がある。例えば、0.2pH単位のインクリメントで3pH単位の範囲をカバーする一連の15個のサンプルが注入されても良い。サンプルは好ましくは高pHから低pHに注入される。このプロセスは通常、十分な事前集中を生み出す注入が一旦記録されると終了される。これは時間のかかるプロセスであり、また貴重な試薬を消費する。
【0084】
このプロセスは、関心のあるpH範囲をカバーする本発明の勾配注入を使うことによって大幅に加速される。このようにして、最適pHが、数分で行うことができる単一の注入から決定される。例えば、(1)サンプルが、10ミリモル(mM)の酢酸ナトリウム緩衝液中に10マイクログラム/ミリリッター(μg/mL)で準備される;(2)サンプルはまた10mMの酢酸ナトリウム緩衝液中に10μg/mLで、pH3.8に準備される;(3)高pHサンプルに対して低pHサンプルの線形勾配が準備される。pHは勾配に沿って変化する。勾配は好ましくは高pHから低pHに注入される。注入された勾配のpHがリガンドのpIを通過した時に応答の増加が観測された。このポイントは、事前集中が始まるpH閾値を同定する。2つの緩衝溶液の比は、勾配中に全てのポイントにおいて知られており、よって各ポイントでの期待されたpHは容易に計算される。もし大きな事前集中効果が望ましければ(例えば、もし大量のリガンドが固定化されるべきであれば)pHをこの閾値pHより下に下げることが望ましくても良い。しかしながら、多くの場合、少量のリガンドが固定化されなければならず、この場合には、pHをそれ程更に下げる必要はない。
【0085】
そのようなpH勾配は、酸と塩基溶液のいかなる混合物からなっていても良く、そのような溶液のpHは、酸−塩基平衡からの従来の方程式から計算されても良い。このpH勾配注入方法は科学者により高い分解能をもったより高品質のデータを、ほんの一部分の時間で提供するので、理想的pHはもっと厳密に定義される。これは、リガンドを成功裏に固定化することができる非常に狭いpH範囲だけが存在する場合に、特に重要である。これは酸性のリガンドでしばしばそうである。
【0086】
再生/複合体安定性勾配
一旦アナライトが固定化されたリガンドに結合すると、次のアナライトサンプルに進む前にアナライト結合容量を回復するために、それは取り除かれなければならない。この親和性捕獲された物質の除去は再生と呼ばれ、それはリアルタイムBIAの最も困難な側面の一つである。多くの場合、親和性複合体はお互いに非常に強く結合しており、粗い再生溶液の使用を必要とする。これらの溶液は、結合相互作用力を克服する好意的でない条件を作り出すことによって親和性複合体を解離する。酸と塩基が通常効果的であるが、非水成溶剤、グアニジン−HCI、尿素のようなカオトロピック試薬を相当量含んだ他の水溶液も採用される。成功裏に使用されてきた試薬および試薬混合物のリストは長大である。通常再生の最適化は、多数の溶液が評価される試行錯誤のアプローチを要求する。多くの場合、このプロセスは、最適化するのに仮に何週ではなくとも何日も要求し得る。いくつかの場合には、アナライト結合容量を維持する効果的な再生溶液を見つけることは不可能である。前述したプロセスは、異なる試薬の多数の注入を、試薬勾配で置き換えることによって本発明に従って加速され得る。
【0087】
例えば、リン酸が相互作用を再生するのにしばしば成功裏に適用されるが、実効的濃度は一つの相互作用から次へと大きく変化する。ゴールは、変性による固定化されたリガンドへのダメージを制限するために最も低い濃度を使用することである。時間の節約への関心から、多くの研究者は評価されるべきサンプルの数を減らす誘惑に駆られる。これは残念ながら方法の開発に負のインパクトを与える。そこで本発明では、変化する勾配をもつ単一の注入が使われる。本勾配方法を使った例として、勾配は純水から100%0.1Mリン酸まで変化する。この勾配はそれから、アナライト被覆されたセンシング表面上に低濃度から高濃度へ注入される。アナライト−リガンド複合体が解離し始める勾配濃度が、解離により応答が減少し始める時の勾配注入中のポイントとして同定される。このポイントにおけるリン酸の実際の濃度がそれから計算されても良い。これは、再生が効果的になる閾値濃度を表す。しかしながら、勾配は、表面の完全な再生が起こるまで進行することが許容されても良い。表面の完全な再生は、応答の更なる減少が観測されない応答中のプラトーとして観測される。加えて、勾配注入中の総応答低下は、再生実験に先立つアナライト結合応答に近似的に等しいものであるべきである。理想的な応答曲線が図22に示されている。これらの再生勾配は、二つ以上の試薬の混合物からなっていても良く、いかなる勾配形態を有していても良い。ほとんどの場合には、線形勾配が好適である。
【0088】
再生条件を決定することに加えて、そのような試薬勾配は、様々な環境条件に対する親和性複合体の安定性を調べるのに使われることができる。例えば、塩分(例えば、塩化ナトリウム)の増加する濃度を含んだ溶液への露出における複合体の安定性を決定することが関心事であっても良い。塩分勾配は、例えば、10mMNaClから1MNaClまでの、あらゆる望ましい範囲に渡って準備されることができる。理想的には溶液のpHは、10mMの緩衝された塩分を最も低い塩分濃度として使うことによって一定に保たれるであろう。前と同じく、勾配がアナライト被覆された表面上に注入され、応答が記録された。この場合には、勾配注入中に大きなバルク屈折率変化も測定可能であり、被覆されていないセンシング表面から参照曲線を引くことを要求する。あらゆる試薬または試薬の混合物の変化する濃度の、行われた親和性複合体上への効果は、多数の複数系列的注入を実行することとは反対に、勾配を使ってより迅速に決定されても良い。様々な既知の試薬が、そのような研究のために考えられることができる。更には、試薬の親和性複合体の形成上への効果も同様に、何等かの添加物の勾配を含んだアナライト注入を作り出すことによってテストされても良い。理想的にはアナライト濃度は一定に保たれるであろう。
【0089】
濃度範囲ファインダーのためのアナライト勾配
リガンドが成功裏に固定化された後に、結合活動を確認するように表面上にアナライトを注入する必要がある。もし相互作用についての近似的親和性が未知であれば、最初のアナライトの注入にはアナライトのマイクロモル濃度が通常推薦される。これは、中程度の親和性結合相互作用が検出可能であることを確かとし、それによりあらゆる偽陰性テストを排除する。残念ながら、いくつかの場合には、表面はあまりにも速く飽和されるので、会合フェーズ曲線が会合レートを決定するのに十分な情報を有していない。表面を再生する前に少なくとも5%まで複合体が解離することを許容することによって、解離レート定数を決定することが依然可能である。しかしながら、もし実際に相互作用の実際の親和性が非常に高ければ、表面の再生は非常に困難であり得て、再生の最適化が要求されるであろう。通常相互作用表面はこのプロセスによって損傷され、最適化実験が完了される前にいくつかのセンサーを消費することが一般である。再生実験が要求される前に親和性および/または動力学的パラメータの推定を得ることが望ましい。こ れは、アナライト勾配注入を利用することによって達成することができる。
【0090】
ゼロアナライトで始まりアナライトのマイクロモル濃度まで上がる勾配が準備される。勾配は低濃度から高濃度へリガンド被覆された表面上に注入される。濃度の指数的増加をもった勾配プロファイルが理想的であるが、他の勾配プロファイルを使うこともできる。アナライトの結合が検出可能となる閾値濃度がそれから、参照曲線を引いた後のベースラインノイズの標準偏差の少なくとも3倍である応答の増加として同定される。1〜2RUの結合応答は通常有意である。アナライトで飽和された時の表面の結合容量は普通50RUを超える。注入はオプションで終了されても良く、それにより表面が飽和されることを防ぐ。このテストによって表面容量の2〜4%だけが消費されるので、再生無しで次のアナライト注入を進めることが可能である。しかしながら、この「濃度範囲ファインダー」実験は、アナライト結合応答が検出可能となる濃度を同定し、それは容易に略親和性に関連する。好ましい実施形態では、オンおよびオフレートの粗い推定を得るように、質量輸送制限項をもった1:1動力学モデルがフィットされる。この情報があると、手頃な時間で表面を飽和するのに要求されるアナライト濃度を推定することは些細なことである。通常、2分間の接触時間後に表面を飽和することが可能なアナライト濃度は、その会合フェーズが、濃度の幅広い範囲をカバーする動力学的結合曲線の完全な組から決定された「本当の」会合レート定数の理に適った近似のために十分な情報を有しているので、動力学的分析のために好適である。これの代わりに、この情報はアナライト勾配注入の濃度上限を決定するのに使われることができる。好ましい実施形態では、アナライト勾配の形状は、「範囲ファインダー」テストが数桁に及ぶ濃度範囲をカバーするように選ばれる。ピコモル(pM)から高マイクロモル(μM)までの指数的に増加するアナライト濃度に及ぶ勾配注入は、可能な親和性範囲の大多数をカバーし、再生無しの相互作用の完全な動力学的分析を提供するのに十分な情報を含むであろう。図16の勾配は、それが線形フェーズの続いたゆっくりした指数的上昇フェーズによって特徴付けられているので、この応用に理想的である。この勾配プロファイルは、結果として得られる結合相互作用曲線の情報内容を最大化する。
【0091】
ここで言及された様々な組成の勾配は、この明細書に記載されたものを含んだ、あらゆる好適な手段によって形成されることができる。
【0092】
上に引用した文献は、ここに引用により組み込まれる。
【0093】
よって、本発明は、目的を実行するのに良く適応されており、上述した結果と利点やここに生来のものを達成する。発明の好ましい実施形態がこの開示の目的のために記載されたが、パーツの構成と配置およびステップの実行における変更が当業者によって行われることができ、それらの変更は、それらが添付された時に請求項によって規定されるこの発明の精神内に包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配成分溶液の間にバルク屈折率差が存在するように勾配を構成する溶液の少なくとも一つの組成を調整し、それから前記勾配を一つ以上のセンシング表面上に注入し、勾配注入中の全ての時間においてセンシング表面にある各勾配成分溶液の相対的比率を決定するために勾配注入中のバルク屈折率変化へのバイオセンサー応答を記録することにより、勾配プロファイルが決定される、光学的バイオセンサー内での勾配注入方法。
【請求項2】
バルク屈折率中の前記勾配はまたアナライト濃度中に相補的勾配も有し、勾配は二つ以上のセンシング表面上に注入され、アナライト勾配組成は、前記アナライトについての親和性結合リガンドを有していないセンシング表面上で記録されたバルク屈折率応答から推測される、請求項1の勾配注入方法。
【請求項3】
前記勾配は単一のセンシング表面上に注入され、アナライトの固定化されたリガンドへの結合の個別の貢献とバルク屈折率変動は、予め規定された数学的モデルの非線形回帰曲線フィッティングを採用することによって注入時間の関数としての単一の応答曲線から解決される、請求項2の勾配注入方法。
【請求項4】
勾配成分溶液のバルク屈折率は、糖分、ポリサッカライド、グリコール、ハイドロゲル、塩分、親水性ポリマー、および水混和性溶剤を含むがそれらに限られない、その溶液の屈折率を変えるがアナライトの固定化されたリガンドへの結合とは顕著に干渉しない物質または試薬の追加によって調整される、請求項2の勾配注入方法。
【請求項5】
一つ以上のアナライト中に相補的勾配も有するバルク屈折率中の勾配が第一および第二のセンシング表面上に注入され、前記第一のセンシング表面は勾配中に含まれた一つ以上のアナライトについての親和性を有する捕獲物質で被覆されており、前記第一のセンシング表面からの応答はアナライトの前記捕捉物質への結合から結果として得られるバルク屈折率変化および表面屈折率変化の両方からの貢献を表し、前記第二のセンシング表面は前記親和性捕捉物質で被覆されておらず、前記第二のセンシング表面からのバイオセンサー応答はアナライト結合無しのバルク屈折率変化を表し、注入中のアナライト勾配組成を推測するのに使われ、一つ以上のアナライトの前記第一の表面への結合による応答は、前記第一のセンシング表面からの応答から前記第二のセンシング表面の応答を引く、または割る、ことによって解決される、請求項1〜4の勾配注入方法。
【請求項6】
前記第二のチャネルからのバルク屈折率応答は、より高い屈折率勾配成分の100%純粋溶液についての最大の期待された応答によって応答を割り、それから勾配のプロファイルを注入時間の関数として好適にモデル化する回帰曲線フィッティング手順を使って方程式をフィッティングし、それから勾配注入中の時間の関数としてのアナライト濃度を推定するために、この勾配関数を勾配を準備するのに使われた開始アナライト濃度に掛けることによって、相補的アナライト勾配の濃度を推測するのに使われる、請求項5の勾配注入方法。
【請求項7】
前記アナライト勾配は、前記高屈折率物質中の勾配と相補的だが反対であり、前記勾配関数がGであると、勾配注入中の時間の関数としてのアナライト濃度を推定するのに1−Gが前記開始アナライト濃度に掛けられる、請求項6の勾配注入方法。
【請求項8】
フローセル、フローセルに接続されたサンプルループ、およびサンプルループに接続されたサンプルループバルブを含んだバイオセンサー内のアナライト勾配を提供する方法であって、方法は、サンプルループの少なくとも一部に沿ってキャリア流体中にアナライトの変動する濃度を有する連続的勾配流体を、サンプルループの内部に作り出すことからなる、請求項1〜5の勾配注入方法。
【請求項9】
キャリア流体は緩衝液である、請求項8に規定された方法。
【請求項10】
キャリア流体は、最初に言及されたアナライトとは異なる第二のアナライトを有する流体である、請求項8に規定された方法。
【請求項11】
連続的勾配流体をサンプルループからフローセル中に直接、単一の連続的注入で、注入することから更になる、請求項8に規定された方法。
【請求項12】
単一の連続的注入中に濃度の勾配のためのテストイベント全体が得られるように、連続的勾配流体の選択された一部をフローセル中に直接、単一の連続的注入で、注入することから更になる、請求項8に規定された方法。
【請求項13】
連続的勾配流体を作り出すことが、キャリア流体中にアナライトの略シグモイド勾配を規定するように、サンプルループバルブを使って、アナライトとキャリア流体をサンプルループ中に装填することを含み、
連続的勾配流体の選択された一部を注入することが、
その第一の部分がアナライトの非線形勾配を有するところの連続的勾配流体の第一の部分を廃物に流すことと、
その第二の部分がアナライトの実質的に線形な勾配を有するところの連続的勾配流体の第二の部分を直接サンプルループからフローセル中に流すこととを含む、
請求項12に規定された方法。
【請求項14】
センシングエリアと、それを通して緩衝液がフローセルの少なくとも一部中に流された入口を含んだフローセルを含んだバイオセンサー内でアナライト勾配を提供する方法であって、
アナライト濃度の勾配を有するアナライト/緩衝液混合物がフローセル内部に形成されるように、入口においてアナライトを緩衝液中に分散させることと、
アナライト/緩衝液混合物のいかなる部分もの廃物への予備的流れ無しに、バイオセンサーの単一テストイベント中にアナライト濃度の勾配がフローセルのセンシングエリアに跨って流れるように、分散されたアナライト/緩衝液混合物をフローセル中に意図的に連続的に注入することと、
を含む方法。
【請求項15】
フローセルと、フローセルに接続されたサンプルループを含んだバイオセンサー内でアナライト勾配を提供する方法であって、サンプルループ内部で少なくとも二つの流体間の濃度勾配を能動的に成形すること、を含む方法。
【請求項16】
濃度勾配を能動的に成形することが、第二の流体が第一の流体との混合物中にその縦方向容積に沿って強制されて縦方向容積内に第一の流体中の第二の流体の異なる濃度が形成されるように、第一の流体をサンプルループ中に装填し、第二の流体をサンプルループ中に装填することを含む、請求項15に規定された方法。
【請求項17】
濃度勾配を能動的に成形することが、
第一の濃度勾配を有する第一濃度流体を形成することと、
第一の濃度勾配とは異なる第二の濃度勾配を有する第二濃度流体を形成することと、
第三濃度流体がサンプルループ内部に形成されるように第一濃度流体および第二濃度流体をサンプルループ中に装填し、第三濃度流体が第一および第二の濃度勾配とは異なる第三の濃度勾配を有することと、
を含む、請求項15に規定された方法。
【請求項18】
第一濃度流体を形成することが、キャリア流体の第一の部分中にアナライトの第一の部分の第一の指数的濃度勾配を有する第一の混合物を形成するように、アナライトの第一の量とキャリア流体の第一の量を混合することを含み、
第二濃度流体を形成することが、キャリア流体の第二の部分中にアナライトの第二の部分の第二の指数的濃度勾配を有する第二の混合物を形成するように、アナライトの第二の量とキャリア流体の第二の量を混合し、第二の指数的濃度が第一の指数的濃度と相補的であることを含み、
第一濃度流体および第二濃度流体を装填することが、第三濃度流体が組み合わされた相補的な第一および第二の指数的勾配から結果として得られるキャリア流体中のアナライトの線形濃度勾配を有するように、第一の混合物と第二の混合物をサンプルループ中で組み合わせて第三濃度流体を形成することを含む、
請求項17に規定された方法。
【請求項19】
その中に配置された第一の液体の第一の部分を有するフローセル内の一つ以上のセンシング領域上に固定化されたアナライト結合種の間の結合相互作用の特徴付けのためのアナライト勾配方法であって、
第一の液体の第二の部分中に連続的アナライト濃度勾配が生成されるように、第一の液体の第一の部分と近接する第一の液体の第二の部分と、一つ以上のアナライトを含んだ液体サンプルを混合することと、
このアナライト勾配を、フローセルを通して低アナライト濃度から高アナライト濃度へ流すことと、
を含む方法。
【請求項20】
フローセル内の一つ以上のセンシング領域上に固定化されたアナライト結合種の間の結合相互作用の特徴付けのためのアナライト勾配方法であって、
細長いサンプル保持チャネルからフローセル中への直接通信のために連続的アナライト濃度勾配が生成されるように、フローセルの入口に接続された細長いサンプル保持チャネル中の第二の液体と、一つ以上のアナライトを含んだ液体サンプルを混合することと、
このアナライト濃度勾配を、フローセルを通して低アナライト濃度から高アナライト濃度へ流すことと、
を含む方法。
【請求項21】
前記混合することが二重勾配を形成するように、第二の液体が非結合アナライト結合種を含み、アナライトの濃度と非結合アナライト結合種の濃度の両方が連続的勾配を形成する、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項22】
液体サンプルを混合することが、装填された液体サンプルによる第二の液体の結果として得られる置き換えは部分的であり、それにより勾配が形成されることを引き起こすように、以前に第二の液体で満たされた細長いサンプル保持チャネル中に液体サンプルを装填することを含む、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項23】
第二の液体で満たされたサンプル保持チャネルの容積が、液体サンプルの容積以上である、請求項22に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項24】
液体サンプルを混合することが、装填された第二の液体による液体サンプルの結果として得られる置き換えが勾配が形成されることを引き起こすように、以前に液体サンプルで満たされた細長いサンプル保持チャネル中に第二の液体を装填することを含む、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項25】
細長いサンプル保持チャネル中で混合することが、サンプル装填注射器の円筒を使うことを含む、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項26】
細長いサンプル保持チャネル中で混合することが、サンプル注入プローブまたは注入針の円筒を使うことを含む、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項27】
細長いサンプル保持チャネル中で混合することが、フロー注入分析インジェクターバルブに取り付けられたサンプル注入ループを使うことを含む、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項28】
細長いサンプル保持チャネルが、サンプルループバルブと、サンプルループバルブに接続されたサンプルループと、サンプルループとフローセルの入口の間に接続された導管を含み、
液体サンプルを第二の液体と混合することが、第二の液体がフローセルと流体接触するように導管を第二の液体で満たすことと、液体サンプルをサンプルループ中に装填することと、サンプル流体をサンプルループから導管中に流し、それによりフローセルを通してフローが継続するにつれて第二の液体をフローセル中に置き換えてアナライト濃度勾配を形成することとを含む、
請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項29】
細長いサンプル保持チャネルが、フローセルの入口に接続された混合チェンバーを含み、第二の液体は混合チェンバー中に配置され、
液体サンプルを第二の液体と混合することが、液体サンプルを混合チェンバー中に流すことと、液体サンプルと第二の液体が均質に混合され、スムーズな指数的に衰退するアナライト勾配として特徴付けられる増加するアナライト勾配としてフローセルに出力されるように、混合チェンバーを動作させることとを含む、
請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項30】
アナライト濃度勾配をフローセルを通して低アナライト濃度から高アナライト濃度へ流すことが、アナライトをフローセルのセンシング表面上のアナライト結合種に結合し、それにより結合反応を形成することと、
結合反応をセンシングし、結合進行曲線を作り出すことと、
結合反応についての複数の動力学的および親和性定数の少なくとも一つを決定するために結合進行曲線を分析することとを含む、
請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項31】
アナライト勾配は再現可能であり、
方法が、再現可能なアナライト勾配を単純な数学的関数によって記述し、変化するアナライト濃度をその中に取り入れるように、この関数を動力学的評価アルゴリズム中に組み込むことを更に含む、
請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項32】
アナライト濃度勾配をフローセルを通して低アナライト濃度から高アナライト濃度へ流すことが、アナライトをフローセルの第一のセンシング表面上のアナライト結合種に結合し、それにより結合反応を形成することと、フローセルの第二のセンシング表面上でアナライト濃度勾配を流すことを継続し、第二のセンシング表面はアナライト結合種を含まないことと、
サンプル液体と第二の液体の間のバルク屈折率差を作り出し、その上でのアナライト濃度勾配の流れに対する第二のセンシング表面の応答からバルク屈折率差に対する参照応答を検出し、参照応答はバルク屈折率の勾配を含むことを含んだ、アナライト勾配のプロファイルを経験的に決定することと、
バルク屈折率の勾配をアナライト勾配として記録することと、
変化するアナライト濃度を取り入れるために、アナライト勾配としてのバルク屈折率の勾配を、少なくとも一つの動力学的評価アルゴリズムに組み込むこととを含む、
請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項33】
濃度勾配を有する混合物を形成し、バイオセンサーシステムの従来のコンポーネンツを使ってバイオセンサーシステムのフローセル中に混合物を注入する方法であって、従来のコンポーネンツは、6ポート2ポジションバルブと、バルブの二つのポートに接続されたサンプルループと、バルブの別のポートとフローセルの入口の間に接続された導管を含み、バルブは更に、従来の緩衝液入力ポートと、従来のサンプル装填ポートと、従来のループ廃物ポートを含み、
緩衝液の第一の部分をサンプルループ中に装填することと、
緩衝液の第二の部分を緩衝液入力ポートを通して導管とフローセルの中に装填することと、
サンプルがサンプルループからのファーストインファーストアウトフローのためにサンプルループ中に装填されるように、サンプルをループ廃物ポートを通してサンプルループ中に装填し、サンプルを装填することは、サンプルの最も低い濃度をサンプルのファーストイン部分の先端にしてサンプルの連続的勾配をサンプルループ中に形成するように、サンプルのファーストイン部分を緩衝液の第二の部分中に強制することを含むことと、
サンプルの勾配をフローセル中に注入することであって、
バルブの位置を注入位置に変えることと、
緩衝液の第三の部分がサンプルの勾配をサンプルループから導管を通してフローセル中に押し出すように、緩衝液の第三の部分を緩衝液入力ポートを通してサンプルのラストイン端に対抗して流すこととを含むことと、
を含む方法。
【請求項34】
サンプルのファーストイン部分を緩衝液の第二の部分中に強制することが、連続的なシグモイド勾配を形成する、請求項33に規定された方法。
【請求項35】
フロー注入分析システムに一体化された、2成分液体勾配を生成する手段であって、混合区画が混合された液体が均質であることを確かにし、第一の液体がミキサー中に置かれ、第二の液体が既知のフローレートで追加されるとともに、混合液体勾配が既知のフローレートでミキサーから取り除かれ、ミキサー中に置かれた容積と前記第二の液体ストリームと前記混合液体出力ストリームのフローレートが調整されて望ましい勾配プロファイルを生み出すもの。
【請求項36】
ミキサー容積が1mlより小さく、流体工学的オートサンプラーのサンプリング区画中に位置している、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項37】
前記第二の液体ストリームと前記混合液体出力ストリームが、前記ミキサー区画中に位置し得る二重ルーメン液体プローブによって提供され、各プローブルーメンが制御されたポンプ手段と液体接触している、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項38】
前記混合液体出力ストリームが、前記第一の液体中の前記第二の液体の線形的に増加する勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートが、前記追加された第二の液体ストリームのフローレートの約2倍である、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項39】
前記混合液体出力ストリームが、前記第一の液体中の前記第二の液体の指数的勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートが、前記追加された第二の液体ストリームのフローレートに等しい、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項40】
前記混合液体出力ストリームが、前記第一の液体中の前記第二の液体の凹状勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートが、前記追加された第二の液体ストリームのフローレートの2倍より大きい、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項41】
前記混合液体出力ストリームが、前記第一の液体中の前記第二の液体の凸状勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートが、前記追加された第二の液体ストリームのフローレートの2倍より小さい、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項42】
前記混合液体出力ストリームが、異なる勾配プロファイルによって特徴付けられた二つ以上のセグメントからなる二つ以上をもった、前記第一の液体中の前記第二の液体の複合勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートおよび/または前記追加された第二の液体ストリームのフローレートが間欠的に変えられた、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項43】
前記混合液体出力ストリームが、前記第一の液体中の前記第二の液体の凹状の増加する勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートが、前記追加された第二の液体ストリームのフローレートの2倍より大きい、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項1】
勾配成分溶液の間にバルク屈折率差が存在するように勾配を構成する溶液の少なくとも一つの組成を調整し、それから前記勾配を一つ以上のセンシング表面上に注入し、勾配注入中の全ての時間においてセンシング表面にある各勾配成分溶液の相対的比率を決定するために勾配注入中のバルク屈折率変化へのバイオセンサー応答を記録することにより、勾配プロファイルが決定される、光学的バイオセンサー内での勾配注入方法。
【請求項2】
バルク屈折率中の前記勾配はまたアナライト濃度中に相補的勾配も有し、勾配は二つ以上のセンシング表面上に注入され、アナライト勾配組成は、前記アナライトについての親和性結合リガンドを有していないセンシング表面上で記録されたバルク屈折率応答から推測される、請求項1の勾配注入方法。
【請求項3】
前記勾配は単一のセンシング表面上に注入され、アナライトの固定化されたリガンドへの結合の個別の貢献とバルク屈折率変動は、予め規定された数学的モデルの非線形回帰曲線フィッティングを採用することによって注入時間の関数としての単一の応答曲線から解決される、請求項2の勾配注入方法。
【請求項4】
勾配成分溶液のバルク屈折率は、糖分、ポリサッカライド、グリコール、ハイドロゲル、塩分、親水性ポリマー、および水混和性溶剤を含むがそれらに限られない、その溶液の屈折率を変えるがアナライトの固定化されたリガンドへの結合とは顕著に干渉しない物質または試薬の追加によって調整される、請求項2の勾配注入方法。
【請求項5】
一つ以上のアナライト中に相補的勾配も有するバルク屈折率中の勾配が第一および第二のセンシング表面上に注入され、前記第一のセンシング表面は勾配中に含まれた一つ以上のアナライトについての親和性を有する捕獲物質で被覆されており、前記第一のセンシング表面からの応答はアナライトの前記捕捉物質への結合から結果として得られるバルク屈折率変化および表面屈折率変化の両方からの貢献を表し、前記第二のセンシング表面は前記親和性捕捉物質で被覆されておらず、前記第二のセンシング表面からのバイオセンサー応答はアナライト結合無しのバルク屈折率変化を表し、注入中のアナライト勾配組成を推測するのに使われ、一つ以上のアナライトの前記第一の表面への結合による応答は、前記第一のセンシング表面からの応答から前記第二のセンシング表面の応答を引く、または割る、ことによって解決される、請求項1〜4の勾配注入方法。
【請求項6】
前記第二のチャネルからのバルク屈折率応答は、より高い屈折率勾配成分の100%純粋溶液についての最大の期待された応答によって応答を割り、それから勾配のプロファイルを注入時間の関数として好適にモデル化する回帰曲線フィッティング手順を使って方程式をフィッティングし、それから勾配注入中の時間の関数としてのアナライト濃度を推定するために、この勾配関数を勾配を準備するのに使われた開始アナライト濃度に掛けることによって、相補的アナライト勾配の濃度を推測するのに使われる、請求項5の勾配注入方法。
【請求項7】
前記アナライト勾配は、前記高屈折率物質中の勾配と相補的だが反対であり、前記勾配関数がGであると、勾配注入中の時間の関数としてのアナライト濃度を推定するのに1−Gが前記開始アナライト濃度に掛けられる、請求項6の勾配注入方法。
【請求項8】
フローセル、フローセルに接続されたサンプルループ、およびサンプルループに接続されたサンプルループバルブを含んだバイオセンサー内のアナライト勾配を提供する方法であって、方法は、サンプルループの少なくとも一部に沿ってキャリア流体中にアナライトの変動する濃度を有する連続的勾配流体を、サンプルループの内部に作り出すことからなる、請求項1〜5の勾配注入方法。
【請求項9】
キャリア流体は緩衝液である、請求項8に規定された方法。
【請求項10】
キャリア流体は、最初に言及されたアナライトとは異なる第二のアナライトを有する流体である、請求項8に規定された方法。
【請求項11】
連続的勾配流体をサンプルループからフローセル中に直接、単一の連続的注入で、注入することから更になる、請求項8に規定された方法。
【請求項12】
単一の連続的注入中に濃度の勾配のためのテストイベント全体が得られるように、連続的勾配流体の選択された一部をフローセル中に直接、単一の連続的注入で、注入することから更になる、請求項8に規定された方法。
【請求項13】
連続的勾配流体を作り出すことが、キャリア流体中にアナライトの略シグモイド勾配を規定するように、サンプルループバルブを使って、アナライトとキャリア流体をサンプルループ中に装填することを含み、
連続的勾配流体の選択された一部を注入することが、
その第一の部分がアナライトの非線形勾配を有するところの連続的勾配流体の第一の部分を廃物に流すことと、
その第二の部分がアナライトの実質的に線形な勾配を有するところの連続的勾配流体の第二の部分を直接サンプルループからフローセル中に流すこととを含む、
請求項12に規定された方法。
【請求項14】
センシングエリアと、それを通して緩衝液がフローセルの少なくとも一部中に流された入口を含んだフローセルを含んだバイオセンサー内でアナライト勾配を提供する方法であって、
アナライト濃度の勾配を有するアナライト/緩衝液混合物がフローセル内部に形成されるように、入口においてアナライトを緩衝液中に分散させることと、
アナライト/緩衝液混合物のいかなる部分もの廃物への予備的流れ無しに、バイオセンサーの単一テストイベント中にアナライト濃度の勾配がフローセルのセンシングエリアに跨って流れるように、分散されたアナライト/緩衝液混合物をフローセル中に意図的に連続的に注入することと、
を含む方法。
【請求項15】
フローセルと、フローセルに接続されたサンプルループを含んだバイオセンサー内でアナライト勾配を提供する方法であって、サンプルループ内部で少なくとも二つの流体間の濃度勾配を能動的に成形すること、を含む方法。
【請求項16】
濃度勾配を能動的に成形することが、第二の流体が第一の流体との混合物中にその縦方向容積に沿って強制されて縦方向容積内に第一の流体中の第二の流体の異なる濃度が形成されるように、第一の流体をサンプルループ中に装填し、第二の流体をサンプルループ中に装填することを含む、請求項15に規定された方法。
【請求項17】
濃度勾配を能動的に成形することが、
第一の濃度勾配を有する第一濃度流体を形成することと、
第一の濃度勾配とは異なる第二の濃度勾配を有する第二濃度流体を形成することと、
第三濃度流体がサンプルループ内部に形成されるように第一濃度流体および第二濃度流体をサンプルループ中に装填し、第三濃度流体が第一および第二の濃度勾配とは異なる第三の濃度勾配を有することと、
を含む、請求項15に規定された方法。
【請求項18】
第一濃度流体を形成することが、キャリア流体の第一の部分中にアナライトの第一の部分の第一の指数的濃度勾配を有する第一の混合物を形成するように、アナライトの第一の量とキャリア流体の第一の量を混合することを含み、
第二濃度流体を形成することが、キャリア流体の第二の部分中にアナライトの第二の部分の第二の指数的濃度勾配を有する第二の混合物を形成するように、アナライトの第二の量とキャリア流体の第二の量を混合し、第二の指数的濃度が第一の指数的濃度と相補的であることを含み、
第一濃度流体および第二濃度流体を装填することが、第三濃度流体が組み合わされた相補的な第一および第二の指数的勾配から結果として得られるキャリア流体中のアナライトの線形濃度勾配を有するように、第一の混合物と第二の混合物をサンプルループ中で組み合わせて第三濃度流体を形成することを含む、
請求項17に規定された方法。
【請求項19】
その中に配置された第一の液体の第一の部分を有するフローセル内の一つ以上のセンシング領域上に固定化されたアナライト結合種の間の結合相互作用の特徴付けのためのアナライト勾配方法であって、
第一の液体の第二の部分中に連続的アナライト濃度勾配が生成されるように、第一の液体の第一の部分と近接する第一の液体の第二の部分と、一つ以上のアナライトを含んだ液体サンプルを混合することと、
このアナライト勾配を、フローセルを通して低アナライト濃度から高アナライト濃度へ流すことと、
を含む方法。
【請求項20】
フローセル内の一つ以上のセンシング領域上に固定化されたアナライト結合種の間の結合相互作用の特徴付けのためのアナライト勾配方法であって、
細長いサンプル保持チャネルからフローセル中への直接通信のために連続的アナライト濃度勾配が生成されるように、フローセルの入口に接続された細長いサンプル保持チャネル中の第二の液体と、一つ以上のアナライトを含んだ液体サンプルを混合することと、
このアナライト濃度勾配を、フローセルを通して低アナライト濃度から高アナライト濃度へ流すことと、
を含む方法。
【請求項21】
前記混合することが二重勾配を形成するように、第二の液体が非結合アナライト結合種を含み、アナライトの濃度と非結合アナライト結合種の濃度の両方が連続的勾配を形成する、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項22】
液体サンプルを混合することが、装填された液体サンプルによる第二の液体の結果として得られる置き換えは部分的であり、それにより勾配が形成されることを引き起こすように、以前に第二の液体で満たされた細長いサンプル保持チャネル中に液体サンプルを装填することを含む、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項23】
第二の液体で満たされたサンプル保持チャネルの容積が、液体サンプルの容積以上である、請求項22に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項24】
液体サンプルを混合することが、装填された第二の液体による液体サンプルの結果として得られる置き換えが勾配が形成されることを引き起こすように、以前に液体サンプルで満たされた細長いサンプル保持チャネル中に第二の液体を装填することを含む、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項25】
細長いサンプル保持チャネル中で混合することが、サンプル装填注射器の円筒を使うことを含む、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項26】
細長いサンプル保持チャネル中で混合することが、サンプル注入プローブまたは注入針の円筒を使うことを含む、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項27】
細長いサンプル保持チャネル中で混合することが、フロー注入分析インジェクターバルブに取り付けられたサンプル注入ループを使うことを含む、請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項28】
細長いサンプル保持チャネルが、サンプルループバルブと、サンプルループバルブに接続されたサンプルループと、サンプルループとフローセルの入口の間に接続された導管を含み、
液体サンプルを第二の液体と混合することが、第二の液体がフローセルと流体接触するように導管を第二の液体で満たすことと、液体サンプルをサンプルループ中に装填することと、サンプル流体をサンプルループから導管中に流し、それによりフローセルを通してフローが継続するにつれて第二の液体をフローセル中に置き換えてアナライト濃度勾配を形成することとを含む、
請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項29】
細長いサンプル保持チャネルが、フローセルの入口に接続された混合チェンバーを含み、第二の液体は混合チェンバー中に配置され、
液体サンプルを第二の液体と混合することが、液体サンプルを混合チェンバー中に流すことと、液体サンプルと第二の液体が均質に混合され、スムーズな指数的に衰退するアナライト勾配として特徴付けられる増加するアナライト勾配としてフローセルに出力されるように、混合チェンバーを動作させることとを含む、
請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項30】
アナライト濃度勾配をフローセルを通して低アナライト濃度から高アナライト濃度へ流すことが、アナライトをフローセルのセンシング表面上のアナライト結合種に結合し、それにより結合反応を形成することと、
結合反応をセンシングし、結合進行曲線を作り出すことと、
結合反応についての複数の動力学的および親和性定数の少なくとも一つを決定するために結合進行曲線を分析することとを含む、
請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項31】
アナライト勾配は再現可能であり、
方法が、再現可能なアナライト勾配を単純な数学的関数によって記述し、変化するアナライト濃度をその中に取り入れるように、この関数を動力学的評価アルゴリズム中に組み込むことを更に含む、
請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項32】
アナライト濃度勾配をフローセルを通して低アナライト濃度から高アナライト濃度へ流すことが、アナライトをフローセルの第一のセンシング表面上のアナライト結合種に結合し、それにより結合反応を形成することと、フローセルの第二のセンシング表面上でアナライト濃度勾配を流すことを継続し、第二のセンシング表面はアナライト結合種を含まないことと、
サンプル液体と第二の液体の間のバルク屈折率差を作り出し、その上でのアナライト濃度勾配の流れに対する第二のセンシング表面の応答からバルク屈折率差に対する参照応答を検出し、参照応答はバルク屈折率の勾配を含むことを含んだ、アナライト勾配のプロファイルを経験的に決定することと、
バルク屈折率の勾配をアナライト勾配として記録することと、
変化するアナライト濃度を取り入れるために、アナライト勾配としてのバルク屈折率の勾配を、少なくとも一つの動力学的評価アルゴリズムに組み込むこととを含む、
請求項20に規定されたアナライト勾配方法。
【請求項33】
濃度勾配を有する混合物を形成し、バイオセンサーシステムの従来のコンポーネンツを使ってバイオセンサーシステムのフローセル中に混合物を注入する方法であって、従来のコンポーネンツは、6ポート2ポジションバルブと、バルブの二つのポートに接続されたサンプルループと、バルブの別のポートとフローセルの入口の間に接続された導管を含み、バルブは更に、従来の緩衝液入力ポートと、従来のサンプル装填ポートと、従来のループ廃物ポートを含み、
緩衝液の第一の部分をサンプルループ中に装填することと、
緩衝液の第二の部分を緩衝液入力ポートを通して導管とフローセルの中に装填することと、
サンプルがサンプルループからのファーストインファーストアウトフローのためにサンプルループ中に装填されるように、サンプルをループ廃物ポートを通してサンプルループ中に装填し、サンプルを装填することは、サンプルの最も低い濃度をサンプルのファーストイン部分の先端にしてサンプルの連続的勾配をサンプルループ中に形成するように、サンプルのファーストイン部分を緩衝液の第二の部分中に強制することを含むことと、
サンプルの勾配をフローセル中に注入することであって、
バルブの位置を注入位置に変えることと、
緩衝液の第三の部分がサンプルの勾配をサンプルループから導管を通してフローセル中に押し出すように、緩衝液の第三の部分を緩衝液入力ポートを通してサンプルのラストイン端に対抗して流すこととを含むことと、
を含む方法。
【請求項34】
サンプルのファーストイン部分を緩衝液の第二の部分中に強制することが、連続的なシグモイド勾配を形成する、請求項33に規定された方法。
【請求項35】
フロー注入分析システムに一体化された、2成分液体勾配を生成する手段であって、混合区画が混合された液体が均質であることを確かにし、第一の液体がミキサー中に置かれ、第二の液体が既知のフローレートで追加されるとともに、混合液体勾配が既知のフローレートでミキサーから取り除かれ、ミキサー中に置かれた容積と前記第二の液体ストリームと前記混合液体出力ストリームのフローレートが調整されて望ましい勾配プロファイルを生み出すもの。
【請求項36】
ミキサー容積が1mlより小さく、流体工学的オートサンプラーのサンプリング区画中に位置している、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項37】
前記第二の液体ストリームと前記混合液体出力ストリームが、前記ミキサー区画中に位置し得る二重ルーメン液体プローブによって提供され、各プローブルーメンが制御されたポンプ手段と液体接触している、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項38】
前記混合液体出力ストリームが、前記第一の液体中の前記第二の液体の線形的に増加する勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートが、前記追加された第二の液体ストリームのフローレートの約2倍である、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項39】
前記混合液体出力ストリームが、前記第一の液体中の前記第二の液体の指数的勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートが、前記追加された第二の液体ストリームのフローレートに等しい、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項40】
前記混合液体出力ストリームが、前記第一の液体中の前記第二の液体の凹状勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートが、前記追加された第二の液体ストリームのフローレートの2倍より大きい、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項41】
前記混合液体出力ストリームが、前記第一の液体中の前記第二の液体の凸状勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートが、前記追加された第二の液体ストリームのフローレートの2倍より小さい、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項42】
前記混合液体出力ストリームが、異なる勾配プロファイルによって特徴付けられた二つ以上のセグメントからなる二つ以上をもった、前記第一の液体中の前記第二の液体の複合勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートおよび/または前記追加された第二の液体ストリームのフローレートが間欠的に変えられた、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【請求項43】
前記混合液体出力ストリームが、前記第一の液体中の前記第二の液体の凹状の増加する勾配であるように、前記混合液体出力ストリームのフローレートが、前記追加された第二の液体ストリームのフローレートの2倍より大きい、請求項35の2成分液体勾配を生成する手段。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2010−537194(P2010−537194A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521835(P2010−521835)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/000547
【国際公開番号】WO2009/025680
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510048026)ノーマディックス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/000547
【国際公開番号】WO2009/025680
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510048026)ノーマディックス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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