説明

バイオディーゼル燃料の製造方法及び製造装置

【課題】 遊離脂肪酸等が種々の割合で含まれる酸価の異なる種々の油脂原料から出来る限り高効率にバイオディーゼル燃料を得ること、また、その他の副生成物の有効利用ができ、また環境汚染などを起こすことのないシステムとすることのできるバイオディーゼル燃料の製造方法を提案する。
【解決手段】 油脂原料からバイオディーゼル燃料を製造する製造方法において、油脂原料が遊離脂肪酸を設定量以上含むか否かを選別し、該原料の遊離脂肪酸が設定量未満の油脂原料であれば、アルカリ触媒法により低級アルコールでエステル交換反応させるエステル交換反応工程で処理し、該原料が遊離脂肪酸を設定量以上含む場合に、該遊離脂肪酸をエステル化するエステル化反応工程4で処理し、エステル交換反応工程及び/又はエステル化反応工程で得られる脂肪酸アルキルエステルを精製する燃料精製工程を含み、上記エステル交換反応工程の留去部で生じた遊離脂肪酸を油脂原料として再使用し、または、上記エステル化反応工程で生じるグリセリド未反応物を油脂原料として再使用することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な油脂類だけでなく、酸性油脂類及び劣化油脂類等の油脂原料を使用したバイオディーゼル燃料の製造方法及び製造装置に関するものであり、より詳細には、菜種油、ごま油、大豆油、トウモロコシ油、向日葵油、パーム油、パーム核油、椰子油、コーン油および紅花油等の植物性油脂類や未精製油、牛油、豚油、魚油等の動物性油脂類、またそれらにおける酸価の高い不良油、それらの廃油、イエログリース等の多種多様の油脂原料を使用したバイオディーゼル燃料の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、バイオディーゼル燃料は植物性油脂類や動物性油脂類をメチルエステル化させたものを含む燃料であり、硫黄分等をほとんど含まないことから黒煙などの有害排気ガスの排出が少ない。また植物由来であることから、京都議定書に示された規定上、炭酸ガスの排出がゼロカウントである。このようなことから、環境負荷の少ない軽油代替燃料として注目され、欧米では既に規格、法制度も整備され、大豆や菜種油から年間250万トン以上が生産され使用されている。
このような状況下、その供給量の確保という側面から、あらゆる脂肪酸誘導体、即ち、酸価状態の低い油脂から高い油脂に至る全ての油脂原料を効率よく使用することのできる技術が望まれている。
【0003】
ところで、油脂類のエステルの主成分はモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド等であるが、これらをアルキルアルコールとエステル交換反応させることは広く知られている。また油脂類に含まれる遊離脂肪酸とアルキルアルコールとをエステル化反応することも種々知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
エステル交換反応及びエステル化反応を利用して、油脂類からバイオディーゼル燃料油を製造する技術についても様々な検討がされてきた(例えば、特許文献1、2、3、及び4を参照)。これらの方法においては、上記エステル交換、又はエステル化の効率を高め、不純物をなるべく残存しないようにすることの工夫が試みられている。
【0004】
しかしながら、エステル交換反応において遊離脂肪酸が多く含まれていると、これらがまず触媒であるアルカリ金属と反応し、アルカリ石鹸を生成してしまう。このような鹸化は反応収率を低下させ、更に精製においてもエマルジョンの発生の原因となる。従って、アルカリ触媒下でのエステル交換反応による脂肪酸アルキルエステル燃料の製造においては、原料油中の遊離脂肪酸量を制限する必要がある。
【0005】
また、遊離脂肪酸のエステル化反応は平衡反応であることから、一方の原料であるアルキルアルコールを過剰に用いること、また副反応物として生成する水を除去することによって平衡を生成系にずらして収率を上げることが考えられている。更に反応速度を速めるために触媒が使用される。脂肪酸のエステル化反応における工業化プロセスでは通常、酸性触媒が多用され、例えば、硫酸や燐酸等は、非芳香族カルボン酸類のエステル化触媒とされている。しかしながら、このような触媒の使用では、反応溶液中に触媒が均一に溶解した状態で存在するため、生成液からの触媒の分離、回収が困難であるという問題がある。
このような問題を解決するため、従来から固体酸触媒もよく使用されている。固体酸触媒としてはスルホン酸系イオン交換樹脂やヘテロポリ酸をシリカゲルや活性炭に担持したものがある。
【0006】
遊離脂肪酸を含む油脂類を原料油とする場合のバイオディーゼル燃料化法としては、先ず上記固体酸触媒によってエステル化し、その後アルカリ触媒によってエステル交換反応を行う方法が考えられる。しかしながら、反応が全く異なる性質の2触媒系を使用するために複雑となること、脂肪酸量によって第1反応を常時コントロールする必要があること等の点から操作性に欠ける。更に、油脂原料の遊離脂肪酸量が30質量%以上であれば、複雑なプロセスプラントを必要とし、基本的な大型投資をすればある程度採算が図れるが、10〜30質量%の範囲であれば、このような投資はかえって過剰投資になる。
このため、遊離脂肪酸量が10〜30質量%の範囲にあるような原料油の場合には、遊離脂肪酸を不純物として除去し、油脂原料を脂肪酸グリセリン誘導体とした後にアルカリ触媒法を使用してエステル交換反応を実施して得ることが好ましいとされる。
遊離脂肪酸を不純物として除去する場合の方法としては、通常、弱アルカリ水溶液による洗浄方法が挙げられる。しかし、このような方法ではアルカリ廃液が生じるため、これの処理にコストがかさむという不具合がある。更に洗浄後の原料中の水分や石鹸分をエステル交換反応に先立って除去する工程が必要となり二度手間となる。
【0007】
近年これらの課題を解決する目的で、酵素を利用した生化学的プロセスによるメチルエステル化及び超臨界メタノールを利用したメチルエステル化が報告されている(例えば、特許文献5を参照)。生化学プロセスでは主にリパーゼを固定化した酵素触媒が用いられる。この反応系ではエステル化反応とエステル交換反応が同時に進行する。しかし、酵素がアルコールにより失活するため、多段階に分けてアルコール添加を行う必要があり、また変換率を98%以上とするには24時間以上の反応時間を要したり、反応後の生成物中のモノグリセリドやジグリセリドの量が1%以上とバイオディーゼル燃料の規格には適合しない。また、酵素は100サイクル連続使用可能としているが、サイクル毎に大きく変換効率が変化しており、工業生産法としては課題が多い。
【0008】
また、超臨界プロセスにおいては、同様にエステル交換反応とエステル化反応が進行するとしているが、エステル化反応は300℃以下でも10分程度で進行するがエステル交換反応は60分以上必要であり、10分間以下の時間で進行させるには350℃程度が必要である。従ってグリセリドと遊離脂肪酸の混合物を、実用的な反応温度である300℃10〜15分程度超臨界反応工程に供した場合、その変換率を制御することが困難であり、殆ど遊離脂肪酸のみがエステル化されグリセリドのエステル交換反応は起こらない。またそのエステル化も生じる水のため平衡状態となり変換率はせいぜいで98%程度ある。
【0009】
このようなことから前もってグリセリドを加水分解し油脂原料の全てを遊離脂肪酸としてから反応させることが検討されている。しかし、グリセリン共存下で超臨界反応を行うと反応が極めて複雑となり、モノグリセリド、ジグリセリドなどが副生する。変換率も極めて低くなる。また、これを防止するためにグリセリンを除去しようとすると、そのままでは、極性分離及び蒸留分離などにより極めて困難となり、水による洗浄しか方法はなく、排水の環境問題が生じる。
【0010】
更に、遊離脂肪酸を除去した原料油等をアルカリ触媒法等のエステル交換法を使用して低級アルコール等の脂肪酸エステル等をバイオディーゼル燃料として生成する場合、その生成だけでなく、グリセリン等が副生成物として生成する。グリセリンはきわめて有用な化学物質であるため、グリセリンを高純度で得ることができれば有効利用が可能であり、バイオディーゼル燃料の製造上、総製造コストの低減にもつながる。しかしながら、上記従来の製造方法にあって、グリセリンの処理に関しては単に中和してボイラー燃料とするか一部は蒸留するのみである。このため、上記の方法では未だ効率的に純度の高いグリセリンを得ることを見出してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施する形態の一例であって、処理の流れを示す製造プロセス図である。
【図2】図1におけるエステル交換反応工程の詳細に実施するための処理の流れを示す製造プロセス図である。
【図3】図1におけるエステル交換反応工程の詳細に実施するための処理の流れを示す他例となる製造プロセス図である。
【図4】図1におけるエステル化反応工程の詳細に実施するための処理の流れを示す製造プロセス図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るバイオディーゼル燃料の製造工程を示す概略図である。図1に示すように、貯留部1では油脂原料をそれぞれの酸価に応じて貯留できるようになっている。従って、油脂原料としては、植物及び動物等の油脂類、及び廃食油等を挙げることができ、具体的には、菜種油、ごま油、大豆油、トウモロコシ油、向日葵油、パーム油、パーム核油、椰子油、コーン油および紅花油等の植物油脂類、牛油、豚油、魚油等の動物油脂類、更にはその使用済みの廃食油等を原料とするものであり、本発明の製造方法にあっては、油脂原料中に遊離脂肪酸を広い濃度範囲で含む油脂類を原料とすることができる。
【0022】
尚、貯留部1では、必要により油導入口などにフィルタが装着され、油脂原料(例えば、固形分1質量%以上、水分5質量%以上、臭気物質等の不純物量2質量%以上で含む原料油等)が所定メッシュのフィルタを通過することにより、油脂原料に含まれる固形不純物が濾別される。そしてまた、油脂原料を4時間以上静置した後、原料に含まれる高比重不純物、その他のものや過剰水分などが比重差によって自然沈降させ、ドレン排出口等から排出してもよい。更に、必要により油脂原料は、熱交換器等により90〜100℃の範囲で加熱し、遠心分離器等によって更に比重分離処理してもよい。このような処理により、油脂原料は固形不純物を0.02質量%以下、水分を0.5質量%以下に抑えることができ、このような前処理工程は後段の工程での処理を容易にする。
【0023】
図1に示すプロセス選択部2では、図示しないが油脂原料中の遊離脂肪酸の濃度を測定し、遊離脂肪酸濃度が設定量未満、例えば、50質量%未満であれば、エステル交換反応工程3に油脂原料が流入される。一方、油脂原料中の遊離脂肪酸が所定量以上、例えば50質量%以上ではエステル化反応工程4がプロセス選択部2で選別される。かかる油脂原料中の遊離脂肪酸量と選別との関係は、エステル交換反応工程3及びエステル化反応工程4の性能及び能力などによって適宜に設定することができる。
【0024】
先ず、エステル交換反応工程3で処理することについて詳述する。
油脂原料にあっては、貯留部1での前段処理がされていなければ、かかるエステル交換反応工程3で、予め上記の処理をすることが望ましい。
また、油脂原料中の遊離脂肪酸の濃度が極めて少ない場合、例えば、5質量%以下、好ましくは3質量%以下であれば、留去部(留去工程)3aを省略してエステル交換反応工程3を直接実行しても良い。また、それ以上の遊離脂肪酸を含む油脂原料の場合には、以下のように前段として留去部3aを実行することが望ましい。
【0025】
エステル交換反応工程3においては、先ず、油脂原料が留去部3aの多管式熱交換器等に通され、多管式熱交換器等を通過する間に後続の減圧処理で要求される温度まで加熱され、真空脱水・脱臭塔(図示せず)内へ導入される。導入の際に原料は霧状に分散導入されるか、或いはスパイラル状に導入されるなどして気液相界面が広くなる方法が選択される。原料が真空脱水・脱臭塔内を通過する間に、更なる脱水、脱臭、及び脱酸が行われる。
即ち、10mmHg以下、確実には1mmHg以下の減圧下で、温度が50から150℃までの範囲に加熱された原料は、その油中の水、臭気物質等が速やかに気化され系外へ放出されると共に、遊離脂肪酸類が系内で所定の蒸気圧となり、これもまた殆どが系外へ放出される。尚、この場合の処理時に水分等の低沸点物質が多く残存すると、好ましい減圧下に到達させにくいため、上述したように、貯留部1での前処理工程は、本実施の系において有効に作用する。
このような処理によって、油脂原料は、例えば、水分含有量0.05質量%以下、臭気物質含有量0.01質量%以下、及び遊離脂肪酸量が3質量%以下、好ましくは1質量%以下になる。ここで生じた遊離脂肪酸は、貯留部1又はプロセス選択部2に戻されて再使用原料とされる。一方、原料は、熱交換器等によって反応温度まで冷却される。
【0026】
図2に示すようにエステル交換反応工程3は、一般的な通常の方法であり、触媒溶液の調整部11、反応混合部12、及び減圧留去部13とからなる。
エステル交換反応工程3の調整部11では、予め低級アルコールにアルカリ触媒を溶解させて調整した触媒含有アルコール溶液がバッチ調整され、触媒含有アルコール溶液は反応混合部12で油脂原料と混合される。油脂原料は、エステル交換され、その反応混合液は減圧留去部13で過剰のアルコールが減圧留去される。過剰アルコールが除かれた反応混合液は、液−液分離部14で軽液と重液に比重分離され、その軽液が抽出される。
軽液は、後段の燃料精製部5で吸着剤と混合或いは通過接触させられ、更にフィルター及び/又は比重分離操作によって処理されて、バイオディーゼル燃料となる。
【0027】
更に、エステル交換反応部3の別の態様としては、図3に示すように、触媒溶液の調整部11、反応混合部12、中和部15、及び蒸留部16とからなる中和工程を含むことが好ましい。ここで、調整部11及び反応混合部12での油脂原料は、図2に示す態様と同様な処理がなされる。
反応混合部12からのエステル交換反応された反応混合液は、中和部15において所定量の水で調節した希硫酸が加えられて中和し、中和した反応混合液には硫酸塩結晶が析出し、これが濾別される。濾液は、蒸留部16で蒸留される。蒸留された反応混合液は、燃料精製部5で比重分離操作により高比重の精製グリセリン成分を分離することができる。このため、図3に示すような中和部15、蒸留部16、及び燃料精製部5から構成して、副生成物である図1に示す様に精製グリセリンの実施的な工業利用可能なプロセスとすることが好ましい。
【0028】
図2及び図3に示す触媒溶液の調整部11は、例えば、触媒導入シュート、アルコール貯蔵タンク、アルコール計量ポンプ、冷却水ジャケットが付設された溶解撹拌槽からなっている。触媒としてのアルカリ塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩の水酸化物等を挙げることができが、特に好ましくは、水酸化カリウムである。
また、アルコールとしては低級アルコールであり、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、及びその他の低級アルコールが挙げられるが、反応面及びコスト面からメチルアルコールが望ましい。
【0029】
調整部11での触媒含有アルコール溶液の調整は、バッチ式操作によって行われ、計量して溶解撹拌槽内へアルコールが送り込まれ、次に、溶解撹拌槽内に導入されたアルコールを撹拌しながら、上記触媒をアルコールに対して所定の割合で溶解撹拌槽内へ投入され、触媒がアルコールに完全に溶解するまで撹拌される。
アルコールに触媒が溶解する時に発生する溶解熱は、冷却水ジャケット等で冷却することにより除去される。溶解撹拌槽内への触媒の供給速度は、例えば、アルコールがメチルアルコールであるときは、触媒含有アルコール溶液の温度が64℃を超えないように制御される。触媒供給速度が速過ぎると、発生した溶解熱を除去するのが間に合わなくなる。そして、溶液の温度がアルコールの沸点温度以上になると、アルコールの蒸発が激しくなる。また、溶液の局部的過熱による突沸現象が起こることになって危険である。
溶解撹拌槽への所定量の触媒の投入が終わって、触媒がアルコールに完全に溶解した後に、溶解撹拌槽から所定の触媒含有アルコール溶液タンク等に移される。一方、溶解撹拌槽では、上記した手順と同様の手順によりアルコールと触媒とを導入し、同様の溶解撹拌操作を繰り返す。
【0030】
反応混合部12には、上記触媒含有アルコール溶液タンクから所定量の触媒アルコール溶液が導入される。一方、上述の処理した油脂原料を反応混合処理部(攪拌機能を有した反応塔など)の底部から導入する。これにより上部へ流動する油脂原料と触媒含有アルコール溶液とを連続的に混合させる。
【0031】
図2及び図3に示す実施形態の製造方法のプロセスについて更に詳しく説明する。
先ず、図2に示す減圧留去部13は一般的に使用される通常の工程であり、かかる工程では、反応混合液から過剰のアルコールの除去がなされる。減圧留去においては、反応混合部12での反応容器そのものを減圧して容器を減圧留去処理装置と反応混合処理装置とに兼用しても良く、また、別容器において減圧処理をしても良い。アルコールの界面活性作用及び比重の関係からアルコールの除去により、グリセリンは生成した脂肪酸アルキルエステルとの分離が容易となり、脂肪酸アルキルエステルの収量を高める。
例えば、反応混合液中で過剰のアルコールが副生成したグリセリン量の30質量%以上を占めると、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンとの比重差による分離が困難となり、また、アルコールが5質量%程度まで存在した場合でもグリセリン層への脂肪酸アルキルエステルの溶解量が脂肪酸アルキルエステルの10質量%にも及ぶ。
【0032】
図2に示す燃料精製部5では、必要により、静置分離槽、或いは遠心分離器による強制分離を行う。また、各処理工程が連続式の場合には、遠心分離を行うと良い。この処理によって脂肪酸アルキルエステル層とグリセリン層とを分離する。目的生成物である脂肪酸アルキルエステル層は、更に吸着剤の充填されたカラムを通過させることによってアルカリ性不純物等を除去することが好ましい。充填剤としては、一般に油脂類の処理に良く用いられている活性白土が好適である。このほかに脱水用充填剤としてシリカゲルなどを用いることも出来る。
その後、充填剤の微粉末を除去するために遠心分離器処理を行う。この際、微量に残存するグリセリンも除去できる。その後、最終的にフィルター処理を必要により行う。
このようなバイオディーゼル燃料の製造にあっては、エステル転化率は90%以上、好ましくは95%以上である。また、その酸価は0.5mgKOH/g以下である。
【0033】
次に、図3に示す実施形態の製造方法のプロセスについて詳しく説明する。
図3に示す中和処理部15では、反応混合処理部12から反応混合液に送液ポンプ等により硫酸が投入される。硫酸は、反応終了後の反応混合液に投入したアルカリ塩、例えば、水酸化カリウムに対して、50〜55モル%の範囲で投入されることが好ましい。
上記範囲を下回る場合は、反応混合液は十分に中和されない、一方、上記範囲を上回る場合には、反応混合液の反応状態が不安定となり目的物質の収率が低下する。
【0034】
上記硫酸を投入する際、生成する硫酸塩1モル当量に対して、1〜20モル当量の範囲、特に好ましくは、2〜10モル当量の範囲の水で硫酸を希釈させることが好ましく、かかる希硫酸は反応混合液を攪拌させながら室温から65℃の環境下で滴下することが好ましい。
この際、反応混合液の粘度が高い場合には、その粘度調整剤として上述で添加したと同様な低級アルコール、例えば、メチルアルコール等を適宜量加えることが望ましい。これらの粘度調整剤は、反応混合溶液に対して50質量%以下の範囲で加えることが好ましい。
従って、上述の範囲の希硫酸の投入により、硫酸の中和塩、特に、アルカリ塩が水酸化カリウムであれば、硫酸塩・水和物として容易に析出して濾別されるので好ましい。
【0035】
中和された反応混合液は、グラスフィルターなどに通流させられ、上述の硫酸塩・水和物が濾別される。濾別された反応混合液は、蒸留部16へと導入される。反応混合液は減圧蒸留され、例えば、0.1〜100mmHgの範囲、及び温度50〜250℃の環境下で減圧蒸留することが好ましい。このように蒸留された反応混合液は、燃料精製部5で必要により遠心分離器などにより比重分離され、脂肪酸アルキルエステル層(軽液層:目的反応物)とグリセリン層(重液層:副反応物)に分離される。
【0036】
このようなバイオディーゼル燃料の製造にあっては、エステル転化率は90%以上、好ましくは、95%以上とすると良い。また、脂肪酸アルキルエステル層の脂肪酸アルキルエステルの純度は99%以上である。
一方、グリセリン層にあっては、その収率が90%以上で得られる。このような範囲にあれば、十分な回収率が達成されることとなる。また、グリセリン層で得られるグリセリンの純度は99%以上であり、かかる収率及び純度であれば、精製グリセリンとして利用が可能となり、システム全体のコストを低減することができる。
【0037】
次に、多量に遊離脂肪酸を含む油脂原料、又は上記の留去部3aで分離された遊離脂肪酸配送部6の遊離脂肪酸のエステル化反応工程について詳述する。
図4に示すようにエステル化反応工程4は、アルコール供給部18、第1反応部19、第2反応部20、及び蒸留部21とからなる。
エステル化反応工程4においては、アルコール供給部18からメチルアルコール等の低級アルコールを第1反応部19に流通された遊離脂肪酸と混合し、加圧及び加熱して、添加アルコールの超臨界状態で且つエステル化反応で副産物として生成する水が液体である亜臨界水状態として第1反応部19でエステル化反応を行う。また、後段の第2反応部20ではそのアルコールの超臨界状態を維持したまま、定温膨張させて降圧し、該水がより低圧の亜臨界状態またはドライスチーム状態となる条件で反応させる。そして、更に、後段の蒸留部21においては、反応液からアルコールを除去し、蒸留すると共に、燃料精製部5で該蒸留液を遠心分離して比重分離操作によって高比重物質を除去する。尚、蒸留におけるグリセリド残渣は、燃料精製部5(又は図示しないがエステル化反応工程4からでも良い)からのグリセリド残渣配送部7を介して油脂原料として再使用される。
【0038】
アルコール供給部18は、反応させるべきアルコールを前もって加熱及び加圧する装置である。ここで、反応させるべきアルコールは、炭素数が1〜5の範囲にある低級アルコールであることが望ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等であり、特に、バイオディーゼル燃料用に使用するための脂肪酸アルキルエステル組成物にあってはメチルアルコールが好ましい。また、アルコール供給部18における温度及び圧力は、加えるアルコールの種類にもよるが、好ましくは、温度が240℃〜300℃の範囲で、圧力が4MPa〜40MPaの範囲、特に温度が270〜290℃の範囲で、圧力が10〜22MPaの範囲であることが好ましい。
【0039】
上記第1反応部19及び第2反応部20は、主に流通式反応管の態様が選択され、第1反応部では、上記遊離脂肪酸を温度240℃〜300℃の範囲、及び8MPa〜40MPaの範囲、特に温度が240〜270℃の範囲で、圧力が15〜22MPaの範囲にまで昇温し、昇圧する。アルコール供給部18で昇温、昇圧したアルコールを流通式反応管内に流入して混合させ、所定の反応時間をかけて流通管内を同条件で流通する。この場合、アルコールは超臨界状態であり、水分は亜臨界状態の領域での反応条件となる。
【0040】
第1反応部19と第2反応部20は直結しており、この場合、第1反応部19から第2反応部20にかけて管径を大径にすることが好ましい。管径を大径にすることによって、反応部19からの反応液を定温膨張させて降圧して、所定の反応時間をかけて流通管内を同一条件で流通させることができる。これにより、アルコールは超臨界状態にあり、且つ水分にあってはより低圧の亜臨界状態またはドライスチーム状態の領域での反応となる。
このように反応させた後、蒸留部21では、反応終了後の反応液から過剰のアルコールを除去し、更に反応生成物を蒸留することが望ましい。そして、燃料精製部5にあっては、遠心分離処理を行い精製することが望ましい。また、上述した残存する未反応物のグリセリド残渣は、グリセリド残渣配送部7を介して油脂原料としてエステル交換反応工程で再使用する。脂肪酸アルキルエステルは、その後、最終的に上述したようなフィルター処理を行うことができる。
【0041】
このようにして得られる脂肪酸アルキルエステルにあっては、その純度が98質量%以上、好ましくは、99質量%以上であることが好ましい。かかる純度を満たさない場合は、遊離脂肪酸の酸価が0.6mgKOH/gを上回り、バイオディーゼル燃料としての規格を満たすことができなくなる。また、出発物質にもよるが、かかる組成物にあっては、その脂肪酸の炭素数は12〜22の範囲にある。
【0042】
このような製造方法等からバイオディーゼル燃料とすることにより、あらゆる酸価状態にある油脂原料から高効率に脂肪酸アルキルエステル、即ち、製品となる脂肪酸アルキルエステル中に大量の水、臭気物質、遊離脂肪酸、及びその他の不純物が残存することなく、製品としての品質低下を招くことのないバイオディーゼル燃料を得ることができ、またその製造工程システム自体は環境に優しいものとなる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明に係るバイオディーゼル燃料の製造方法及び製造装置を実施例にて説明する。
図1に示した構成の製造プロセス図に従って、かかる遊離脂肪酸を含んだ酸性油脂類からのバイオディーゼル燃料の製造を実施例で説明する。
(実施例)
油脂原料はイエローグリース(酸価18mgKOH/g:遊離脂肪酸9質量%、ヨウ素化68、引火点238℃、水分10質量%、灰分3.5質量%)を原料油1とし、パーム油の精製の際に生じる副生成物である遊離脂肪酸を原料油2として用いた。(遊離脂肪酸80質量%、モノ、ジ、トリグリセライド10質量%、水分5質量%、その他不純物5質量%、ヨウ素価50)
【0044】
(実施例1)
以下の原料を使用し、エステル交換反応工程を選択する場合の実施例を示す。
原料油1を、プロセス選択部によってエステル交換反応工程部へ導入した。反応工程部に設けられた原料油一次貯蔵タンクにメッシュ120のフィルターを通して流し込み、4時間静置した。ドレインを除去後、上澄み液を熱交換器によって95℃まで加熱しこれを遠心分離器(遠心力1000G:流量15リットル毎分)に通した(前処理工程)。
【0045】
処理後の原料油を多管式熱交換器に通過させ145℃まで加熱した。この原料油を真空脱酸塔に投入した。真空塔の絶対圧力0.8mmHg、滞留時間15分であった(留去工程)。
図2に示すように、この原料油を熱交換器によって65℃にまで冷却し反応に用いた。触媒として水酸化カリウムを用い、前もって触媒をメチルアルコール(純度99.5質量%)100重量部に対し11重量部の割合で溶解させた後に、得られた溶液を原料油と混合し、15分間反応させた。反応後反応容器内の絶対圧力を100mmHgとし65℃で約20分間攪拌した。
【0046】
得られた生成物を遠心分離器(遠心力1000G:流量15リットル毎分)に通しアルキルエステル層(軽液)とグリセリン層(重液)とに分離した。アルキルエステル層を活性白土(アルキルエステル100重量部に対し1重量部の割合)を充填したカラムを15リットル毎分の流速で通過させた。通過後のアルキルエステル層を再び遠心分離器(遠心力1000G:流速15リットル毎分)にかけ固形物分離を行った。このアルキルエステルを最終的に1ミクロンのフィルターによって濾過して最終精製物を得た。最終生成物の収率は、グリセリド誘導体ベースで99.5質量%であった。これをサンプリングし性状分析を行った(実施例1−1サンプルとする)。また、真空脱酸塔から得られた遊離脂肪酸回収率は、97質量%であった。
【0047】
収率、実質収率、純度、及び酸価について測定を行い、下記表1に示した。
脂肪酸アルキルエステルの性状分析はガスクロマトグラフによる成分分析の他はJIS規格に定められた方法または通常の方法によって行った。収率は、原料油中の脂肪酸グリセリドに対する脂肪酸アルキルエステルの収量の百分率を示している。実際には、「収率=(脂肪酸アルキルエステル量/反応に使用した原料油中の脂肪酸グリセリド量)×100」で定義される(実質収率)。また、臭気物質濃度は、ガスクロマトグラフにおいてアルコール以外の脂肪酸アルキルエステル類保持時間未満のピーク面積から求めた。この数値は純度で表される。酸価は1gのサンプルを中和するのに必要な水酸化カリウムのmgで表した。
【0048】
次ぎに、ここで副生した遊離脂肪酸を原料油2にプロセス選択部を経由して加えて原料油とした(遊離脂肪酸量83%、モノ、ジ、トリグリセライド量7%、水分量5%、その他不純物量5%、ヨウ素価50)。この原料油を、アルコール:脂肪酸=20モル:1モルの割合で反応させた。反応管は、直径50mm、長さ5000mmを第一反応管(No1)とし、直径62.5mm、長さ5000mmを第2反応管(No2)とした。それぞれの反応管の出口に圧力流量コントロールバルブを設け、圧力、流量、反応時間を調節した。反応条件は、反応温度270℃、反応圧力及び時間は、それぞれ、No1:19Mpa、10分間、No2:11Mpa、10分間、で行った。得られた反応混合物から過剰のメタノールを留去し、その後、減圧蒸留(0.8mmHg,〜200℃)、遠心分離処理をして最終生成物を得た。収率は、遊離脂肪酸ベースで99.0質量%であった。これをサンプリング試料とした(実施例1−2サンプルとする)。結果については、下記表1に示した。
また、グリセライド残渣の計量によって、その回収率は95質量%であった。ここで得られたグリセリド残渣を、プロセス選択部を経由してエステル交換反応工程に配送し、上述のエステル交換反応を行ったところ、収率は99.5質量%であった。
【0049】
以上の実施により本プロセス全体において、脂肪酸部位からの実質収率は98.9質量%である。
【0050】
(比較例)
図1に示した構成からなる製造装置の内のエステル交換反応工程を用いて行った。原料油はイエローグリース(酸価18mgKOH/g:遊離脂肪酸9質量%、ヨウ素化68、引火点238℃、水分10質量%、灰分3.5質量%)であった。
原料油を、反応工程部に設けられた原料油の一次貯蔵タンクにメッシュ120のフィルターを通して流し込み、4時間静置した。ドレインを除去後、上澄み液を熱交換器によって95℃まで加熱しこれを遠心分離器(遠心力1000G:流量15リットル毎分)に通した(前処理工程)。
【0051】
通過後の原料油を多管式熱交換器に通過させ145℃まで加熱した。この原料油を真空脱酸塔に投入した。真空塔の絶対圧力0.8mmHg、滞留時間15分であった。この原料油を熱交換器によって65℃にまで冷却し反応に用いた(留去工程)。
触媒として水酸化カリウムを用い、前もって触媒をメチルアルコール(純度99.5%)100重量部に対し11重量部の割合で溶解させた後に、得られた溶液を原料油と混合し、15分間反応させた。反応後反応容器内の絶対圧力を100mmHgとし65℃で約20分間攪拌した(エステル交換反応工程)。
得られた生成物を遠心分離器(遠心力1000G、流量15リットル毎分)に通し脂肪酸アルキルエステル層(軽液)とグリセリン層(重液)とに分離した。脂肪酸アルキルエステル層を活性白土(アルキルエステル100重量部に対し1重量部の割合)を充填したカラムを15リットル毎分の流速で通過させた。通過後の脂肪酸アルキルエステル層を再び遠心分離器(遠心力1000G:流速15リットル毎分)にかけ固形物分離を行った。この脂肪酸アルキルエステルを最終的に1ミクロンのフィルターによって濾過して最終精製物を得た。
最終生成物の収率は、グリセリド誘導体ベースで99.5質量%であった。これをサンプリングし性状分析を行った(比較例1−1)。また真空脱酸塔から得られた遊離脂肪酸は、廃棄した。結果を下記表1に示した。
【0052】
次ぎに、実施例1と同様の製造装置の内エステル化反応工程部を用いて行った。原料油としてパーム油の精製の際に生じる副生成物である遊離脂肪酸を用いた(遊離脂肪酸80質量%、モノ、ジ、トリグリセライド10質量%、水分5質量%、その他不純物5質量%、ヨウ素価50)。この原料油を、アルコール:脂肪酸=20モル:1モルの割合で反応させた。反応管は直径50mm、長さ5000mmを第一反応管(Nol)とし、直径62.5mm、長さ5000mmを第2反応管(No2)とした。それぞれの反応管の出口に圧力、流量コントロールバルブを設け、圧力、流量、反応時間を調節した。反応条件は、反応温度270℃、反応圧力及び時間はそれぞれ、No1:19Mpa、10分間、No2:11Mpa、10分間、で行った。得られた反応混合物から過剰のメタノールを留去し、その後、減圧蒸留(0.8mmHg、200℃)、遠心分離処理をして最終生成物を得た。収率は、遊離脂肪酸ベースで99.0質量%であった。これをサンプリング試料とした(比較例2−2)。結果については下記表1に示した。また、グリセライド残査は廃棄した。
【0053】
以上の実施により本プロセス全体において、脂肪酸部位からの実質収率は89.0質量%である。
【0054】
【表1】

【0055】
次ぎに、図1におけるエステル交換反応工程に適用できる中和工程を採用した、副生成物の精製グリセリンを得る方法についての実施例を示す。
(実施例2)
原料油は、実施例1と同様な前段の処理、または酸価が3mgKOH/g以下の食品工場からの廃食油を使用して以下のエステル交換反応工程を図3に基づいて行った。
原料油1000kgに対して触媒として水酸化カリウム13kgを前もってメチルアルコール(純度99.5質量%)122kgで溶解したものと混合した。反応混合処理部において温度65℃、15分間反応させた。
【0056】
水6.4kgで希釈した濃硫酸12kgを上記反応混合物に50℃以上にならないように攪拌しながら滴下した。その後50リットルのメチルアルコールで希釈した。反応混合液を約1時間静置して、硫酸カリウム水和物の結晶析出を確認した。反応槽の下部に取り付けたガラスフィルターを通じて、溶液を吸引濾過し、濾液を蒸留塔に移送した。蒸留塔を100mmHgまで減圧し、温度50℃〜100℃までの留分を初留とした。その後減圧度を10mmHgまでとし、温度100℃〜220℃までの留分を本留とした。本留を遠心分離器(遠心力1000G、流量15リットル毎分)に通し脂肪酸アルキルエステル層(軽液)とグリセリン層(重液)とに分離した。これをそれぞれサンプリングし性状分析を行った。
【0057】
上記脂肪酸アルキルエステル層、及びグリセリン層の性状分析はガスクロマトグラフによった。その結果を下記表2及び3に示した。尚、転化率は、上述の測定方法と同様であり、また、グリセリンの収率については、反応に使用した原料油量をもとに脂肪酸がステアリン酸と仮定してグリセリン原料量を計算し、これに対する精製グリセリンの量の百分率で示している。
【0058】
(実施例3)
上記した実施例2と同様の条件で行った。ただし加える水の量を硫酸カリウム1モル当量に対して10モル当量とした。結果を下記表2及び3に示した。
(実施例4)
上記した実施例2と同様の条件で行った。ただし加えるメチルアルコール量を100リットルとした。結果を下記表2及び3に示した。
【0059】
(参考比較例1)
上記した実施例2と同様の条件で行った。ただし、中和時に水を加えなかった。結果を下記表2及び3に示した。尚、ここで、参考比較例とは、前段で適宜な処理を実施したものであるが、後段のアルカリ触媒法で適切な実施をしなかった例を示すものである。
(実施例5)
上記した実施例2と同様の条件で行った。ただしメチルアルコールを加えなかった。結果を下記表2及び3に示した。
【0060】
(参考比較例2)
上記した実施例5と同様の条件で行った。但し、反応混合液から過剰なアルコール等の減圧留去処理10をせずに、遠心分離機によって脂肪酸メチルエステル層とグリセリン層とに分離し、このグリセリン層に硫酸12kgを水6.4kgに希釈して加え中和し、さらにメチルアルコール10リットルを加えて粘度を調節した。これをガラスフィルターで濾過し、濾液を実施例5の条件で蒸留して精製グリセリンを得た。結果を下記表2及び3に示した。メチルエステルは蒸留していない。
以上の結果から、軽液と重液とを分離した後に、軽液部分を中和した場合、副生成物であるグリセリンの収率が他の実施例より、若干悪くなることが見られる。また、かかる段階で、比重分離操作を行うと、グリセリン層に脂肪酸メチルエステルが溶解しているため、転化率が悪くなるものと見られる。
【0061】
(参考比較例3)
参考比較例2と同様に行った。ただし中和操作をまったく行わずに蒸留した。結果を表2及び3に示した。メチルエステルは蒸留していない。
【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
以上のことから、上記表1に示すように、遊離脂肪酸類を所定量含んだ原料油からのディーゼル燃料を製造する本発明によると、遊離脂肪酸類が本質的にあるいは製造工程上生じやすい植物油類、回収システム上加水分解を受けやすいイエローグリース類ならびに劣化の進んだ廃食油類など、これまで利用が困難であったり、殆ど利用されていない原料油脂類から高効率でアルキルエステル化が行え、これらはディーゼル車やその他ディーゼル機関の燃料として用いることが出来る。
【0065】
また、上記表2及び表3に示すように、エステル交換反応における所定の条件での中和法による精製処理では、全体のバイオディーゼル燃料製造コストを上げることなく、これまで高純度での回収が困難であった副産物的なグリセリンを高効率にかつ高純度で回収可能である。このことによって、これまで廃棄されてきたようなグリセリン廃液も容易に有効活用が可能となることで、二次汚染のような環境負荷を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法及び製造装置は、遊離脂肪酸が含まれる原料油から効率的に遊離脂肪酸を除き、後続工程であるアルキル触媒法に移行させることができ、複雑な工程を必要としない遊離脂肪酸油脂類及び劣化油脂類等からなる原料油のバイオディーゼル燃料の製造に係るものであり、またアルカリ触媒法による低級アルコールでエステル交換反応により原料油から脂肪酸エステルを生成する工程において、副生成物であるグリセリン及びグリセリン誘導体を高収率及び高純度で、その工程の流れの中で精製してその有効利用を可能とすることにより総製造コストを低減するので、その製造方法として極めて産業上利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂原料からバイオディーゼル燃料を製造する製造方法において、油脂原料が遊離脂肪酸を設定量以上含むか否かを選別し、該原料の遊離脂肪酸が設定量未満の油脂原料であれば、アルカリ触媒法により低級アルコールでエステル交換反応させるエステル交換反応工程で処理し、該原料が遊離脂肪酸を設定量以上含む場合に、該遊離脂肪酸をエステル化するエステル化反応工程で処理し、エステル交換反応工程及び/又はエステル化反応工程で得られる脂肪酸アルキルエステルを精製する燃料精製工程を含み、上記エステル交換反応工程の留去部で生じた遊離脂肪酸を油脂原料として再使用し、または、上記エステル化反応工程で生じるグリセリド未反応物を油脂原料として再使用することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のバイオディーゼル燃料の製造方法において、上記油脂原料が含む遊離脂肪酸の設定量が50質量%であるバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法において、上記エステル化反応工程は、遊離脂肪酸を主成分とする油脂原料にアルコール成分を混合し、加圧及び加熱して該アルコールの超臨界状態で且つエステル化反応で副産物として生成する水が液体である亜臨界水状態としてエステル化反応を行い、次いで該アルコールの超臨界状態を維持したまま、定温膨張させて降圧し、該水がより低圧の亜臨界状態またはドライスチーム状態となる条件で反応させることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項4】
油脂原料からバイオディーゼル燃料を製造する製造装置において、油脂原料が遊離脂肪酸を設定量以上含むか否かを選別するプロセス選択部と、アルカリ触媒法により低級アルコールでエステル交換反応させるエステル交換反応工程部と、エステル化反応工程部と、これら反応工程で得られる脂肪酸アルキルエステルを精製する燃料精製工程部とを備えると共に、該プロセス選択部で原料の遊離脂肪酸が設定量未満の油脂原料であれば、該エステル交換反応工程部へ移行せしめ、原料の遊離脂肪酸が設定量以上の油脂原料であれば、該エステル化反応工程へ移行せしめ、上記エステル交換反応工程部の留去部で生じた遊離脂肪酸を油脂原料として再使用し、上記エステル化反応工程部で生じるグリセリド未反応物を油脂原料として再使用するようになされていることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−161776(P2009−161776A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102781(P2009−102781)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【分割の表示】特願2004−175903(P2004−175903)の分割
【原出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【出願人】(504229815)株式会社CDMコンサルティング (12)
【Fターム(参考)】