説明

バイオプリンター装置

【課題】プリント対象物の形状に係る形状データ、プリント対象物上でのスポット部の位置に係る位置データを容易に設定することができ、このデータに基づいて制御装置の表示部に、プリント対象物およびプリント対象物上でのスポット部の位置を示す画像を表示することができるバイオプリンター装置を提供する。
【解決手段】制御装置1はデータ記述言語で記述したデータファイルを読み込む機能部を有し、画像生成機能部がデータファイルに記述したプリント対象物の形状に係る形状データおよびプリント対象物上でのスポット部の位置に係る位置データに基づいて画像情報を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオプリンター装置に関し、スポッター、アレイヤー等によりマイクロアレイの各スポット部に複数の試料をスポットしてDNAチップ、プロテインチップ、セルチップ等のバイオチップ(マイクロアレイ)を作製する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロアレイはスライドガラス等の基板上にDNA等の試料をナノリットルオーダーで1500〜15000箇所程度にスポット(滴下)したものである。
この種のマイクロアレイの作製装置に係る先行技術としては、例えば特許文献1に記載したものがある。これは、マイクロタイタープレートの複数のウエルのそれぞれに異なる試料を貯留し、各試料を分注装置によって基板上の各スポット部にスポットするものであり、各スポット部に複数試料ずつ組み合わせた試料のコンビネーションを形成してマイクロアレイを作製する。
【0003】
この種のマイクロアレイの作製装置の原理を図13に例示する。ここでは、マイクロタイタープレート101の各ウエル102にそれぞれ異なる試料103を貯留しており、分注ヘッド104は複数のノズル105を備えている。
【0004】
この分注ヘッド104で同時に各ウエル102の試料103を吸引し、分注ヘッド104をスライドガラス等の基板106の上で移動させながら各スポット部107にスポットする。
【0005】
スポット部107は基板106の上にマトリックス状に設定しており、分注ヘッド104はマイクロタイタープレート101と基板106との間を移動するとともに、上下のZ方向に移動し、かつスポット部107の配列方向に沿ってX方向、Y方向に移動する。
【0006】
ところで、このようなバイオプリンター装置(スポッター、アレイヤー)の制御においては、例えばスポッターを制御して所定のスポット位置へスポットを実施する場合に、一つのスポット操作ごとに制御コマンドを画面上において一行ずつ入力するものがある。
【0007】
この制御コマンドはマイクロタイタープレートの各ウエルからの試料の採取操作と、基板上へのスポット操作とに関して、それぞれ3次元座標(X,Y,Z)を数値で入力して指定する必要がある。
【0008】
しかし、このようにスポットパターンを指定するプログラムの作成は非常に難解であり、かつ煩雑であった。このため、装置の操作者が独自のスポットパターンを最初からプログラミングしてマイクロアレイを製造することは困難であり、装置開発者が予め用意したスポットパターンを利用することが一般的であった。
【0009】
例えば、特許文献2に記載するものでは、マイクロタイタープレートのウエルの位置を示すウエル位置指定画像と、基板の表面上のスポット位置を示すスポット位置指定画像を表示し、指定されたウエル位置及びスポット位置をそれぞれ表すウエル位置指標及びスポット位置指標を対応させた指標表示画像を表示する。
【0010】
この指標表示画像は列状にウエル位置指標を表示し、その隣に列状にスポット位置指標を表示する。ウエル位置指定画像は、例えば96ウェルのマイクロタイタープレートの場合には、四角形及び円形が縦に8個、横に12個並んだ配列(合計96個)から構成されている。スポット位置指定画像は、基板上の96点のスポット位置の配列を示す。
【0011】
上述した各画像は、CPUが記録部に予め記録されている描画データ(画像データ、CGデータなど)を読み出し、メモリ上で処理を行ってビデオ部のビデオメモリ(図示せず)に伝送し、ビデオ部が表示部に応じたビデオ信号に変換して出力することで、表示部に表示される。
【特許文献1】特開2005−134166公報
【特許文献2】特開2006−71571公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、プリント対象物の基板としては、スライドガラスやシリコン基板、プラスチック板等があり、スライドガラスには窪みのないものやウェルを形成したマイクロウェルスライドがある。マイクロウェルスライドには、ウェルの数が12、24、50、570、1040、1512等の種々のものがあり、その全てに対する位置指定画像の描画データ(画像データ、CGデータなど)を予め用意し、CPUの記録部に格納することは困難であった。
【0013】
また、スポッター、アレイヤー等はスポット位置やウェル位置がグリッド状に配列してあることを前提としてスポット操作を行う。このため、スポット位置を非グリッド状に、例えば三角形状や円形状に配列することはできず、また、一つのウェルの底面に複数のスポット位置を設定することはできなかった。さらに、ウェル位置が予め定まっていないフラットなスライドガラスの上に任意のパターンでスポット位置を設定することはできず、予め想定されていないプリント対象物、例えばシャーレに直接にスポットすることはできなかった。このため、セルアレイの分野においては、スライドガラスに試薬をスポットした後に、スライドガラスをシャーレに入れてその上から細胞を播種して培養しているが、手間のかかる作業であった。
【0014】
本発明は、上記した課題を解決するものであり、プリント対象物の形状に係る形状データ、プリント対象物上でのスポット部の位置に係る位置データを容易に設定することができ、このデータに基づいて制御装置の表示部に、プリント対象物およびプリント対象物上でのスポット部の位置を示す画像を表示することができるバイオプリンター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するために、本発明のバイオプリンター装置は、プリント対象物上に設定するスポット部に試料をスポットするスポッタ装置と、スポッタ装置を制御する制御装置を備え、制御装置は、制御プログラムとして搭載する機能回路において、ファイル読み込み機能部と操作機能部を有し、ファイル読み込み機能部は、データ記述言語で記述したデータファイルを読み込んで、プリント対象物の形状に係る形状データとプリント対象物上でのスポット部の位置に係る位置データを取り込み、操作機能部は、プリント対象物の形状データとスポット部の位置データに基づいてスポッタ装置を操作することを特徴とする。
【0016】
また、制御装置は、画像表示装置を有し、制御プログラムとして搭載する機能回路において、画像生成機能部とプリント操作設定機能部を有し、画像生成機能部は、データファイルに記述したプリント対象物の形状データとスポット部の位置データに基づいてプリント対象物に対応するプリント対象物の画像およびスポット部に対応するスポットマークの画像を生成して画像表示装置に表示し、プリント操作設定機能部は、画像表示装置に表示するスポットマークから任意選択する目標スポットマークに対応するスポット部を目標スポット部に設定し、操作機能部は、スポッタ装置を操作して目標スポット部に試料をスポットすることを特徴とする。
【0017】
また、ファイル読み込み機能部は、データ記述言語で記述したデータファイルを読み込んで、試料を吸引する対象となるマイクロタイタープレートに係る形状データと、マイクロタイタープレート上でのウェルの位置に係る位置データを取り込み、プリント操作設定機能部は、マイクロタイタープレートのウェルの内から任意選択するウェルを目標ウェルに設定し、操作機能部は、マイクロタイタープレートの形状データとウェルの位置データに基づいてスポッタ装置を操作し、目標ウェルから試薬を吸引することを特徴とする。
【0018】
また、プリント操作設定機能部は、プリント操作に係る操作手順をデータ記述言語で記述するコマンドファイルに目標スポット部の位置データ、目標ウェルの位置データを書き込み、ファイル読み込み機能部は、データ記述言語で記述したコマンドファイルを読み込んでプリント操作に係るシーケンスを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記した構成により、制御装置がデータ記述言語で記述したデータファイルを読み込むファイル読み込み機能部を有するので、制御装置に予め記録していないプリント対象物であっても、プリント対象物の形状に係る形状データおよびプリント対象物上でのスポット部の位置に係る位置データをデータ記述言語を用いてデータファイルとして容易に記述することができ、このデータファイルの読み込みによって制御装置にプリント対象物の形状、プリント対象物上でのスポット部の絶対的な位置を容易に設定することができる。
【0020】
このため、制御プログラムにおいて全スポット部の位置を定義するスポットパターンを予めプログラムとして作成する必要がなくなり、所定範囲内に収まる形状であれば、任意の形状のプリント対象物上に、装置の操作者が独自のスポットパターンを煩雑な操作を伴わずに、単なるデータを記述することで容易に設定することができる。
【0021】
これにより、プリント対象物はスライドガラスのように板状のものだけでなく、ウェルの数が2、6、24といったカルチャウェルプレートやシャーレにも対応でき、各ウェルの底面に複数のスポット部を設定することができる。
【0022】
このことは、マイクロタイタープレートに関しても同様であり、制御装置に予め記録していないマイクロタイタープレートからも試料を吸引することができる。
また、スポットマークに対応する目標スポット部のプリント対象物上での位置に係る位置データ、および目標ウェルのマイクロタイタープレート上での位置データをデータ記述言語でコマンドファイルに記録することにより、バイオプリンター装置で一旦作成したプリント操作に係る操作手順をデータ記述言語で記録したコマンドファイルとして容易に出力することができる。このため、コマンドファイルの再利用、直接ファイルをエディットしての変更あるいは他のバイオプリンター装置での利用が容易に行える。この際に、コマンドファイルには試料の吸引、プリント、洗浄などのプリント操作に係るコマンドも合わせてデータ記述言語で記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態のバイオプリンター装置は、スポッター、アレイヤーであって、マイクロアレイの各スポット部に試料をスポットするバイオマイクロアレイ用スポッティング装置であり、DNAチップ、プロテインチップ、セルチップ等のバイオチップ(マイクロアレイ)を作製するものである。しかしながら以下に説明するもの以外の用途にも使用可能である。
[全体構成]
図1に示すように、本実施の形態のバイオプリンター装置は、制御用パーソナルコンピュータ(PC)からなる制御装置1と、装置本体をなすスポッタ装置2と、スポッタ装置2に駆動用空気圧を供給するコンプレッサ3からなり、制御装置1が信号ケーブル4でスポッタ装置2に接続しており、コンプレッサ3がエアーチューブ5でスポッタ装置2に接続している。
[スポッタ装置の構成]
スポッタ装置2の内部にはマイクロアレイ製作室をなすステージ部6の周囲にXYZ駆動ロボット7、排水タンク8、洗浄水タンク9が配置してある。
【0024】
本実施の形態において、ステージ部6の第1プリントエリア6a、第2プリントエリア6bは、プリント対象物となるスライドガラス10や、カルチャウェルプレート11を設置する部分であり、スライドガラス10は保持プレート12に複数枚を配置してある。ステージ部6の試料プレートエリア6cには試料を貯溜するマイクロタイタープレート13を設置している。
【0025】
図3に示すように、保持プレート12は、規格として形状が定められたマイクロタイタープレートと同様の外形を有し、ここでは4枚のスライドガラス10を定位置に着脱自在に保持しており、スライドガラス10に複数のスポット部10aを設定している。
【0026】
図4に示すように、カルチャウェルプレート11はスポット部をなす複数のウェル11aを有しており、規格として定めた形状を有し、カルチャウェルプレート11における各ウェル11aの位置は規格として定まっている。図5に示すように、マイクロタイタープレート13は複数のウェル13aを有しており、規格として定めた形状を有し、マイクロタイタープレート13における各ウェル13aの位置は規格として定まっている。
【0027】
本実施の形態では、ステージ部6の第1プリントエリア6a、第2プリントエリア6bには、プリント対象物としてスライドガラス10や、カルチャウェルプレート11を設置している。しかしながら、本発明においてはプリント対象物としてシャーレ等を採用して、シャーレへ直接にスポットすることも可能である。この場合には、シャーレをステージ部6の所定位置に設置するための治具を用いる。このようなプリント対象物としては規格外のシャーレ等を使用する場合には、後述するようにデータファイル(XMLファイル)においてその形状データおよびスポット部の位置データを記述する。
【0028】
ステージ部6には、洗浄槽15が配置してあり、洗浄槽15は洗浄部、排水部、乾燥部を有している。
XYZ駆動ロボット7は、XYZの3軸動作ロボットからなり、プリントヘッド18をステージ部6に設置したスライドガラス10、カルチャウェルプレート11、マイクロタイタープレート13等の各位置に移動させるものである。プリントヘッド18にはノズル19を設けている。
【0029】
洗浄水タンク9はノズル洗浄用の蒸留水を貯溜しており、排水タンク8は洗浄後の排水を貯溜するものである。
図2の配管経路に示すように、本実施の形態のバイオプリンター装置は、コンプレッサ3をエアー源とする加圧瓶22を備えている。加圧瓶22はスポッタ装置2の外側上部に配置してあり、加圧瓶22には蒸留水を貯溜してある。加圧瓶22は気層部がエアー源に連通し、液層部が切替弁25に連通している。切替弁25には加圧瓶22と吸引用ポンプ26が接続し、切替弁25がマイクロ電磁弁21を介してノズル19に接続している。
[スポッタ装置の動作]
スポッタ装置2では、XYZ駆動ロボット7の駆動によりその作動エリア内においてプリントヘッド18が三次元的に移動する。プリントヘッド18はステージ部6のマイクロタイタープレート13のウェル13aからノズル19を通して試料を吸引し、スライドガラス10もしくはカルチャウェルプレート11のスポット部に試料をスポットし、スライドガラス10もしくはカルチャウェルプレート11の上に試料を所定のパターンでプリントする。
(通常吸引操作)
試料を吸引する時には、切替弁25を切替操作することにより吸引用ポンプ26とノズル19とを接続し、ノズル19をマイクロタイタープレート13のウェル13aに挿入し、ウェル13aに貯溜した試料を吸引用ポンプ26の駆動によりノズル19の内部に吸い込む。
(通常吐出操作)
試料を吐出(スポット)する時には、切替弁25を切替操作することにより、蒸留水を貯溜した加圧瓶22とノズル19とを接続する。コンプレッサ3をエアー源として加圧瓶22の気層部を加圧し、加圧瓶22においてエアーの加圧力を水圧に変換して試料を吐出する駆動圧力とし、マイクロ電磁弁21の開閉操作によりノズル19を通して試料を吐出(スポット)してプリントする。
(ノズル洗浄操作)
XYZ駆動ロボット7の駆動によりプリントヘッド18を洗浄槽15へ移動させ、洗浄水タンク9から供給する蒸留水でノズル19の外部を洗浄する。さらに、蒸留水を貯溜した第1加圧瓶22とノズル19とを接続する状態で、蒸留水を通水してノズル19の内部を洗浄し、洗浄廃水は洗浄槽15から洗浄水タンク9へ排水する。
[制御装置の構成]
制御装置1は、画像表示装置31を有しており、本体に制御プログラムを搭載している。制御プログラムは制御装置1のCPU、メモリー等の電子回路上において機能回路を形成する。機能回路は種々の機能部からなり、ここでは各機能部の機能の概略を説明し、各機能部の詳細は後に説明する。
【0030】
制御装置1の機能回路は、データ記述言語で記述したデータファイル(XMLファイル)を読み込むファイル読み込み機能部を有しており、データ記述言語には種々のものがあるが、ここではXMLフォーマットに準拠している。
【0031】
画像生成機能部は、プリント対象物であるスライドガラス10、カルチャウェルプレート11等に対応するプリント対象物の画像と、スライドガラス10、カルチャウェルプレート11におけるスポット部に対応するスポットマークの画像を生成して画像表示装置31に表示し、あわせて文字データ等を画像表示装置31に表示するための画像情報を形成する。さらに、マイクロタイタープレート13に対応するマイクロタイタープレートの画像および文字データ等を画像表示装置31に表示するための画像情報を形成する。
【0032】
これらの画像情報は、メモリ等の記憶装置に予め登録したデータファイル(XMLファイル)のデータ、つまり、スライドガラス10、カルチャウェルプレート11等のプリント対象物に係る形状データ、およびプリント対象物上でのスポット部の位置に係る位置データ、マイクロタイタープレート13に係る形状データ、マイクロタイタープレート13上でのウェルの位置に係る位置データ等に基づいて形成する。
【0033】
予め登録したデータファイル(XMLファイル)には、ウェル数の異なる複数種のスライドガラス10、カルチャウェルプレート11の形状データ、およびスポット部の位置に係る位置データや、ウェル数の異なる複数種のマイクロタイタープレート13の形状データ、およびウェル13aの位置に係る位置データが記述してある。
【0034】
しかしながら、予めデータファイル(XMLファイル)に登録していないプリント対象物でも、データファイル(XMLファイル)にそのデータを記述して読み込むことで、容易に外部から入力して登録することができる。データファイル(XMLファイル)の作成は制御装置1のパーソナルコンピュータにおいても可能であるし、他のパーソナルコンピュータにおいてもデータ記述言語(XMLフォーマット)で記述することで可能である。この際に、データ記述言語で記述することにより、制御装置1に予め記録していないプリント対象物であっても、プリント対象物の形状に係る形状データおよびプリント対象物上でのスポット部の位置に係る位置データを容易に記述することができ、このデータファイル(XMLファイル)の読み込みによって制御装置1にプリント対象物の形状、プリント対象物上でのスポット部の位置を容易に設定することができる。
【0035】
このため、制御プログラムにおいてプリント対象物上の全スポット部の位置を定義するスポットパターンを予めプログラムとして作成していなくても、所定範囲内に収まる形状であれば、任意の形状のプリント対象物上に、装置の操作者が独自のスポットパターンを煩雑な操作を伴わずに、単なるデータを記述することで容易に設定することができる。データファイル(XMLファイル)の読み込みはオンラインによるダウンロードでも可能であるし、記録媒体からの読み込みも可能である。
【0036】
プリント操作設定機能部は、画像表示装置31に表示したプリント対象物の画像等の画像情報においてスポットマークの内から任意選択する目標スポットマークに対応するスポット部を目標スポット部として設定し、プリント操作に係る操作手順をデータ記述言語で記述するコマンドファイル(XMLファイル)に目標スポット部の位置データを書き込む。また、マイクロタイタープレート13において選択するウェル13aを目標ウェルに設定し、目標ウェルの位置データをコマンドファイル(XMLファイル)に書き込む。また、ファイル読み込み機能部は、コマンドファイル(XMLファイル)を読み込んでプリント操作に係るシーケンスを生成する。
【0037】
スポッタ装置2を操作する操作機能部は、データファイル(XMLファイル)に記述したスライドガラス10、カルチャウェルプレート11、マイクロタイタープレート13等の形状データおよびスポット部の各位置データ、ウェル13aの各位置データに基づいてスポッタ装置2のXYZ駆動ロボット7等を操作し、マイクロタイタープレート13の目標ウェルをなすウェル13aから試料を吸引し、プリントパターンのスポットマークに対応するプリント対象物、例えばスライドガラス10上での目標スポット部に試料をスポットする。
【0038】
ここで、データファイル(XMLファイル)およびコマンドファイル(XMLファイル)を以下に例示する。
(例1.データファイル(XMLファイル))
スポット位置を絶対位置で記述した例であり、左位置=300、上位置=300の位置に設置した横幅1400、縦長さ1400のスポット対象物に円形8点のスポット部を設定する場合を示す。
<stage>
<shapes>
<rectangle name=””leftx=”300”topy=”300”width=”1400”height=”1400”/>
</shapes>
<grids>
<grid name=”1”x=”1000”y=”500”>
<grid name=”2”x=”646”y=”646”>
<grid name=”3”x=”1353”y=”646”>
<grid name=”4”x=”500”y=”1000”>
<grid name=”5”x=”1000”y=”1500”>
<grid name=”6”x=”646”y=”1353”>
<grid name=”7”x=”1353”y=”1353”>
<grid name=”8”x=”1000”y=”1500”>
</grids>
</stage>
(例2.データファイル(XMLファイル))
横幅25500、高さ76200のスポット対象物を2個設置し、各スポット対象物の配列スポットエリアの4隅(top,left,right,bottom)の絶対位置と、エリア内にスポット部を配列(20,52)で設定する場合を示す。
<stage>
<shapes>
<rectangle name=””leftx=”5500”topy=”4900”width=”25500”height=”76200”/>
<rectangle name=””leftx=”36300”topy=”4900”width=”25500”height=”76200”/>
</shapes>
<grids>
<grid name=””gridwidth=”20”gridheight=”52”leftx=”7500”topy=”6600”rightx=”28400”
bottomy=”62700”>
<grid name=””gridwidth=”20”gridheight=”52”leftx=”38300”topy=”6600”rightx=”59200”bottomy=”62700” >
</grids>
</stage>
(例3.コマンドファイル(XMLファイル))
洗浄操作、吸引操作、3点のスポット操作を記述する例を示す。
<commands>
<wash time=”10”/>
<sip locationx=”30000”locationy=”35000”/>
<printabs absx=”1090”absy=”10080”/>
<printabs absx=”2190”absy=”10080”/>
<printabs absx=”1090”absy=”11180”/>
</commands>
[制御装置の動作]
制御装置1の電源をONして制御プログラムを起動すると、画像表示装置31に図6に示す操作画面が表示される。操作画面はメイン画面とサブ画面で構成される。
【0039】
メイン画面は自動プリント画面、手動プリント画面、ステージ構成画面からなり、図7に示すように、それぞれに自動プリントタグ51、手動プリントタグ52、ステージ構成タグ55が設定してある。
(自動プリント)
自動プリントタグ51を選択して表示する自動プリント画面は、ユニットの現在の状態を示し、初期化、洗浄、プリントの各コマンドを実行するためのボタンが、初期化ボタン56、洗浄ボタン58、開始/再開ボタン59として設定してある。
【0040】
初期化ボタン56を選択して初期化コマンドを実行すると、図6に示すように、コマンドおよび画面が全て初期化される。
図6に示すように、メニューバーからファイル選択を実行し、予め登録したコマンドファイル(XMLファイル)の中から選択したコマンドファイル(XMLファイル)を開くことにより、図7に示すように、選択したファイル名を実施ファイル名欄61に表示し、選択したコマンドファイル(XMLファイル)を読み込んでシーケンスを生成し、その詳細を実行範囲欄62および実行経過欄63に表示する。
【0041】
開始/再開ボタン59を選択してプリントコマンドを実行すると実行経過欄63に表示したシーケンスを順次に実行する。このとき、中断ボタン64を選択すると実行工程を一時中断し、開始/再開ボタン59を選択すると中断したシーケンスを再開する。
(ステージ構成)
ステージ構成タグ55を選択して表示するステージ構成画面では、図8に示すように、ステージ部6の構成を画像として表示する。プリントエリア1の参照ボタン65を選択して、ウェル数の異なる複数種のカルチャウェルプレート11やスライドガラス10に係る形状データ、およびスポット部の位置に係る位置データを記載したデータファイル(XMLファイル)の中から第1プリントエリア6aに設置するプリント対象物のデータファイル(XMLファイル)を指定する。この選択画面に表示するデータファイル(XMLファイル)には操作者が入力するデータファイル(XMLファイル)も含まれる。
【0042】
次に、プリントエリア2の参照ボタン66を選択して、同様に第2プリントエリア6bに設置するプリント対象物のデータファイル(XMLファイル)を指定する。
次に、MTP配置エリアの参照ボタン67を選択して、ウェル数の異なる複数種のマイクロタイタープレート13に係る形状データ、およびウェル13aの位置に係る位置データを記載したデータファイル(XMLファイル)の中から試料プレートエリア6cに設置するマイクロタイタープレート13のデータファイル(XMLファイル)を指定する。
【0043】
ファイル読み込み機能部が上記の指定したデータファイル(XMLファイル)を読み込み、画像生成機能部は、上記の指定したデータファイル(XMLファイル)に記述したプリント対象物に係る形状データ、およびプリント対象物上でのスポット部の位置に係る位置データ、マイクロタイタープレート13に係る形状データ、マイクロタイタープレート13上でのウェルの位置に係る位置データ等に基づいて、プリント対象物であるスライドガラス10、カルチャウェルプレート11等に対応するプリント対象物の画像と、スライドガラス10、カルチャウェルプレート11におけるスポット部に対応するスポットマークの画像、文字データ等を画像表示装置31に表示するための画像情報を形成し、さらに、マイクロタイタープレート13に対応するマイクロタイタープレートの画像、文字データ等を画像表示装置31に表示するための画像情報を形成し、その画像を表示する。
【0044】
ここでは、第1プリントエリア6aと第2プリントエリア6bの双方にスライドガラス10を設置する場合を例示している。
(手動プリント)
手動プリントタグ52を選択して表示する手動プリント画面では、図9に示すように、ステージ部6に配置したスライドガラス10、カルチャウェルプレート11、マイクロタイタープレート13のそれぞれの画像を表示する。ここでは、第1プリントエリア6aと第2プリントエリア6bの双方にスライドガラス10を設置する場合を例示している。
【0045】
画面拡大ボタン68を選択すると、図10に示すように画面がズームアップする。さらに画面拡大ボタン68を選択すると、図11に示すように画面がズームアップする。
図11に示すように、画像表示装置31に表示した画像情報において、スポットする試料をマイクロタイタープレート13のウェル13aの中から目標ウェルとして選択指定するために、マイクロタイタープレート13上での目標ウェルの位置をサブ画面の吸引位置設定画面73においてXY座標として設定すると、プリント操作設定機能部は、目標ウェルの位置データをデータ記述言語でコマンドファイル(XMLファイル)に書き込み、プリント座標画面74に表示する。
【0046】
次に、スライドガラス10に対応するプリント対象物70の画像上においてポインタを移動させ、スポット部10aに対応するスポットマーク71の内から目標スポットマーク72を任意選択すると、プリント操作設定機能部は、選択した目標スポットマーク72に対応する目標スポット部をなすスポット部10aのXYZ座標の位置データをデータ記述言語でコマンドファイル(XMLファイル)に書き込み、プリント座標画面74に表示する。
【0047】
上述した操作を繰り返して所望のプリントパターンを設定する。この際に、例えば2回目の操作時に1回目の操作時と異なる目標ウェルを選択し、かつ1回目の操作時と同じスポットマーク71を目標スポットマーク72として選択することで、同一のスポット部10aに複数の試料を重ねてスポットするプリントパターンを設定できる。
【0048】
スポッタ装置2を操作する操作機能部は、スライドガラス10、カルチャウェルプレート11、マイクロタイタープレート13の形状データに基づいてスポッタ装置を操作し、マイクロタイタープレート13の目標ウェルから試料を吸引し、目標スポットマーク72に対応する目標スポット部をなすスポット部10aに試料をスポットする。
【0049】
ところで、本発明は、図12において、6ウェルのカルチャウェルプレートとして例示するように、カルチャウェルプレート11の同一ウェル11aの底面に複数のスポット部11bを設定することも可能である。
【0050】
また、先の実施の形態では、データファイル(XMLファイル)には、プリント対象物およびマイクロタイタープレートの位置は、プリントエリア内および試料プレートエリア内での位置を記述するものであったが、スポッタ装置のXYZ駆動ロボット7の作動範囲内の絶対位置で記述してもよい。
【0051】
また、先の実施の形態では、データファイル(XMLファイル)にスポット対象物の形状とスポット部の位置を設定したが、これに加えて移動禁止領域(プリント対象物上にある凸状壁体などの障害物のある領域)や動作付帯条件(プリント対象物あるいはスポット部毎の吐出圧力、時間等の吐出条件やノズル高さ)を記載してもよい。
【0052】
操作機能部は、プリント対象物の形状データ、スポット部の位置データに基づいてスポット装置を操作するが、移動禁止領域データがあればその領域ではノズルが障害物に当たらないようにノズルを上昇させて三次元的に障害物を避けるように操作し、動作付帯条件データがあれば個別の条件でスポットするよう操作を行う。
【0053】
さらに洗浄槽、排水タンク等スポット装置上にある部品の形状データについてもデータファイル(XMLファイル)に設定し、これらのデータからスポッタ装置上の部品配置を認識させてスポッタ動作を行わせることで、プリントエリア、部品を装置の規模や操作環境に応じて配置を変更させた場合においても、柔軟に対応することが可能となる。
【0054】
また、先の実施の形態では、スポッタ装置はスポット対象物とは非接触でスポットする形態であるが、ノズルがスポット対象物と接触してスポットする接触型であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態におけるバイオプリンター装置を示す模式図
【図2】同バイオプリンター装置の要部を示す模式図
【図3】同実施の形態におけるスライドガラスを示す模式図
【図4】同実施の形態におけるカルチャウェルプレートを示す模式図
【図5】同実施の形態におけるマイクロタイタープレートを示す模式図
【図6】制御装置の画像表示装置に表示する操作画面
【図7】制御装置の画像表示装置に表示する操作画面
【図8】制御装置の画像表示装置に表示する操作画面
【図9】制御装置の画像表示装置に表示する操作画面
【図10】制御装置の画像表示装置に表示する操作画面
【図11】制御装置の画像表示装置に表示する操作画面
【図12】他の実施の形態におけるカルチャウェルプレートを示す模式図
【図13】他の従来のスポット手順を示す模式図
【符号の説明】
【0056】
1 制御装置
2 スポッタ装置
3 コンプレッサ
4 信号ケーブル
5 エアーチューブ
6 ステージ部
6a 第1プリントエリア
6b 第2プリントエリア
6c 試料プレートエリア
7 XYZ駆動ロボット
8 排水タンク
9 洗浄水タンク
10 スライドガラス
10a スポット部
11 カルチャウェルプレート
11a ウェル
11b スポット部
12 保持プレート
13 マイクロタイタープレート
13a ウェル
15 洗浄槽
18 プリントヘッド
19 ノズル
21 マイクロ電磁弁
22 加圧瓶
25 切替弁
26 吸引用ポンプ
31 画像表示装置
51 自動プリントタグ
52 手動プリントタグ
55 ステージ構成タグ
56 初期化ボタン
58 洗浄ボタン
59 開始/再開ボタン
61 実施ファイル名欄
62 実行範囲欄
63 実行経過欄
64 中断ボタン
65、66、67 参照ボタン
68 画面拡大ボタン
70 仮想プリント対象物
71 仮想スポット部
72 スポットマーク
73 吸引位置設定画面
74 プリント座標画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント対象物上に設定するスポット部に試料をスポットするスポッタ装置と、スポッタ装置を制御する制御装置を備え、
制御装置は、制御プログラムとして搭載する機能回路において、ファイル読み込み機能部と操作機能部を有し、
ファイル読み込み機能部は、データ記述言語で記述したデータファイルを読み込んで、プリント対象物の形状に係る形状データとプリント対象物上でのスポット部の位置に係る位置データを取り込み、
操作機能部は、プリント対象物の形状データとスポット部の位置データに基づいてスポッタ装置を操作することを特徴とするバイオプリンター装置。
【請求項2】
制御装置は、画像表示装置を有し、制御プログラムとして搭載する機能回路において、画像生成機能部とプリント操作設定機能部を有し、
画像生成機能部は、データファイルに記述したプリント対象物の形状データとスポット部の位置データに基づいてプリント対象物に対応するプリント対象物の画像およびスポット部に対応するスポットマークの画像を生成して画像表示装置に表示し、
プリント操作設定機能部は、画像表示装置に表示するスポットマークから任意選択する目標スポットマークに対応するスポット部を目標スポット部に設定し、
操作機能部は、スポッタ装置を操作して目標スポット部に試料をスポットすることを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンター装置。
【請求項3】
ファイル読み込み機能部は、データ記述言語で記述したデータファイルを読み込んで、試料を吸引する対象となるマイクロタイタープレートに係る形状データと、マイクロタイタープレート上でのウェルの位置に係る位置データを取り込み、
プリント操作設定機能部は、マイクロタイタープレートのウェルの内から任意選択するウェルを目標ウェルに設定し、
操作機能部は、マイクロタイタープレートの形状データとウェルの位置データに基づいてスポッタ装置を操作し、目標ウェルから試薬を吸引することを特徴とする請求項2に記載のバイオプリンター装置。
【請求項4】
プリント操作設定機能部は、プリント操作に係る操作手順をデータ記述言語で記述するコマンドファイルに目標スポット部の位置データ、目標ウェルの位置データを書き込み、 ファイル読み込み機能部は、データ記述言語で記述したコマンドファイルを読み込んでプリント操作に係るシーケンスを生成することを特徴とする請求項3に記載のバイオプリンター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−47613(P2009−47613A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215346(P2007−215346)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(597076200)クボタコンプス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】