説明

バイオマスからメタンおよび/またはメタンハイドレートを生成する方法

本発明によりバイオマスからメタンを生成する方法が供される。この際、次の工程段階、すなわちa)最適な乾質率を調整しながらバイオマスからバイオマスパルプ状物を調製する段階、b)バイオマスパルプ状物に圧力を加える段階、c)バイオマスパルプ状物の固形有機成分の液化のために、バイオマスパルプ状物を加圧下に加熱する段階、d)このように加圧されかつ加熱されたバイオマスパルプ状物をさらに、少なくともこの混合物特有の臨界温度まで加熱する段階、e)加圧及び高められた温度下に、その際に析出した固体を残りの液相から分離する段階、及びf)反応器を用いて加圧及び高められた温度下に、この残りの液相の少なくとも一部をメタン富化ガスにガス化する段階が設けられる。このようにして、著しく高い効率を示す方法が成し遂げられる。というのも触媒によるガス化を妨げる物質、特に塩の大部分を超臨界条件下での析出によって混合物から分離することができるからである。このようにして触媒によるガス化についてメタンの高い収率と高い反応速度を触媒の長い耐用年数と同時に達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマスからメタンおよび/またはメタンハイドレートを生成する方法に関する。
【0002】
「バイオマス」という用語は植物性または動物性の物質のことと理解することができる。例えば木材、堆肥、液肥、わら、草本、藻類、下水汚泥および屠殺廃棄物を挙げることができる。
【0003】
しかしながら、本方法は有機物を含む他の材料、例えばプラスチック廃棄物、廃水、ごみ、スクラップタイヤ、古紙、廃油、有機溶剤、化石バイオマス(泥炭、石炭、石油)にも適していなければならない。
【0004】
連邦エネルギー庁(BFE、スイス)より先頃委託されたヴェーデンスヴィル大学の研究論文、Scheurer, K.; Baier, U.、「Biogene Gueter in der Schweiz. Massen− und Energiefluesse. Hochschule Waedenswil, im Auftrag des BFE, Programm Biomasse, Schlussbericht, Februar 2001」(非特許文献1)では、液状肥料の十分に利用されていない大きなエネルギーポテンシャルが指摘されている。農場肥料産出量(堆肥+液状肥料)全体は1988/99年で2.283百万tTS(乾質基準)であり、これは37PJのエネルギー含有量に相当する。農場肥料4’700tTSの発酵によって1998年にはおよそ48TJのエネルギーがバイオガスの形で供給されたが、これは農場肥料におけるエネルギーポテンシャル全体の約0.1%にすぎない。この発酵の際には加えてより大量の発酵不可能な固形分が生じる。木質のバイオマスは事実上発酵され得ない。
【0005】
以下、「水熱」という用語は加圧及び高められた温度下の水性系、典型的には、水の臨界点(374℃、221バール)付近またはそれを超える水性系を表す。臨界付近および超臨界の水は、化学反応を行うための興味深い反応媒体となる。特にこの媒体は、バイオマスから液状およびガス状の生成物への加水分解および転化に好適である。加圧下での超臨界状態への液状系の転移は真の相転移ではないため、バイオマス中に含有される水に蒸発エンタルピーを費やす必要はない。これは気相プロセス(例えば含水性バイオマスの常圧ガス化)と逆である。従って水熱プロセスは潜在的に高い熱効率を有する。
【0006】
バイオマスからメタンへの転化のための最も有利な反応は、例えば木材については次の化学量論を用いて記述することができる:
CH1.520.64(s) + 0.3 HO(g) → 0.53 CH(g) + 0.47 CO(g) (1)
標準状態(低い水の分圧)ではバイオマスと水との反応は式(1)のとおりには進行しないかもしくは完全には進行せず、副産物、例えばタールまたは固定炭素(コークス)が生じる。反応(1)が完全に進行するように反応条件を選択することに成功した場合には高い熱効率を期待することができる。というのも反応(1)が易発熱性であるからである。理論的に最大限に可能な効率は、(木材の低発熱量Hに対して)95%である。商業的プロセスについての出願人により実施されたシステム分析から、達成可能な効率が木材については70−80%の範囲内であることがわかった。このことは“Vogel, F.およびF. Hildebrand、「Catalytic Hydrothermal Gasification of Woody Biomass at High Feed Concentrations」Chem. Eng. Trans. 2、2002年、771−777頁”(非特許文献2)に詳しく記載されている。これは木材からメタンに転化する他の方法の効率より顕著に高い。
【0007】
しかしながら、要約するとバイオマスからのメタン生成のための現在公知の方法は、達成可能な効率に関して理論的な期待値に及ばず、従ってこれらの方法は目下のところ経済的に使用することができない。
【非特許文献1】Scheurer, K.; Baier, U.、「Biogene Gueter in der Schweiz. Massen− und Energiefluesse. Hochschule Waedenswil, im Auftrag des BFE, Programm Biomasse, Schlussbericht, Februar 2001」
【非特許文献2】Vogel, F.およびF. Hildebrand、「Catalytic Hydrothermal Gasification of Woody Biomass at High Feed Concentrations」Chem. Eng. Trans. 2、2002年、771−777頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の課題は、経済的な使用のための要件を満たす高い効率を水熱条件下で達成することができる、バイオマスからメタンを生成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は本発明によれば特許請求項1に記載の措置によって解決される。本発明の有利な態様は他の請求項に記載されている。
【0010】
本発明によるバイオマスからメタンを生成する方法は次の工程段階を含む:
a)バイオマスからバイオマスパルプ状物を最適な乾質率の調整下に調製する工程段階、
b)バイオマスパルプ状物に圧力を加える工程段階、
c)バイオマスパルプ状物の固形有機成分の液化のためにバイオマスパルプを加圧下に加熱する工程段階、
d)このように加圧されかつ加熱されたバイオマスパルプを、さらに少なくともその混合物の特有の臨界温度まで加熱する工程段階、
e)加圧及び高められた温度下に、その際に析出した固体を液相から分離する工程段階、
及び
f)触媒反応器を用いて、加圧及び高められた温度下に、液相の少なくとも一部をメタン富化ガスにガス化する工程段階。
【0011】
このようにして、著しく高い効率を示す方法が成し遂げられる。というのも触媒によるガス化を妨げる物質、特に塩の大部分を超臨界条件下での析出によって混合物から分離することができるからである。このようにして触媒によるガス化についてメタンの高い収率と高い反応率が触媒の長い耐用年数と同時に達成されうる。
【0012】
本発明の第1の態様では、触媒によるガス化後に、加圧されたメタン富化ガスを残りの液相から分離することができる。加圧されたメタン富化ガスを続いて冷却することにより固体のメタンハイドレートが生成し、このメタンハイドレートは次にその他のガス成分、特にCOおよび/または一酸化炭素並びに水素から分離することができる。このようにして生成されたメタンハイドレートはこの場合には8CH×46HOに近似の組成を有する。従ってこのメタンは低コストで約−15℃および1バールで容易に固体の形で貯蔵かつ輸送することができる。メタンは有利に水和物格子中に格納されているため、上記工程段階は、メタンをCO並びに残りのガス成分、例えば一酸化炭素、水素もしくは高級炭化水素から分離することにも有利に利用することができる。メタンを純粋なガスとして得るためにメタンハイドレートを加熱することができ、これによりそれの分解によってCHおよびHOが得られる。
【0013】
本発明の第2の態様においては、加圧されたメタン富化ガス中の触媒によるガス化により発生したメタンガスを、好ましくは圧力の利用下に、洗浄塔法、膜分離法もしくは吸着装置法を用いてその他のガス成分、特にCOおよび/または一酸化炭素および/または水素から分離することができる。この工程段階では、メタンは、適当な装置(例えば洗浄塔、膜分離装置、吸着装置)で、気相の他の成分、好ましくはCOおよび一酸化炭素から分離することができ、この際、このメタンを、高圧(200〜400バール)で利用することができる。このことによって、有利なことに、メタンを例えばガスボンベに詰める時や、ガスタンクステーションに燃料として供給する際、または天然ガス網に供給する際の圧縮段階を無しで済ませることができる。圧縮ガスを燃料として直接ガスタービンプロセスに使用することも考えられる。
【0014】
このように次の利点がさらに明らかである。
【0015】
i)工程段階a)の際に、バイオマスを、好ましくは所望の乾質率に調節しながら湿式粉砕することによって状態調節することができる。この際、乾質分の割合は、とりわけ水の供給または除去によって5〜50質量%、好ましくはおおよそ15〜30質量%の範囲内に調整することができる;
【0016】
ii)ポンプ移送性を改善するためにバイオマスに他の添加剤、例えばデンプンまたは廃油を添加することができる;
【0017】
iii)工程段階b)の際には、状態調節されたバイオマスパルプ状物を、200〜400バールの範囲内の高圧するが、その際に、このバイオマスパルプ状物は、処理方法に応じて連続的または断続的に運ぶことができる。これには常用の押出機、高圧偏心スクリューポンプ、ピストンダイアフラムポンプおよび/または固形物ポンプを使用することができる。引き続きバイオマスパルプ状物は加圧下に約200〜350℃に加熱され、その結果、バイオマスパルプ状物の固形有機成分が十分に液化される;
【0018】
iv)ステップiii)による利点に沿ったより良好な加熱および液化のために、静的混合要素および/または触媒、例えば炭酸カリウム、炭素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムまたは酸化亜鉛も同様に使用することができる。また、酸(例えば硫酸)の添加も液化の改善のために考えられる。
【0019】
v)工程段階d)の際、温度が有利に各々の場合の混合物の臨界温度(例えば純水では221バールで374℃)を上回る。混合物の臨界点を上回ることによって塩および他の無機物質の溶解性の著しい低下が達成される。
【0020】
vi) その際に、このより高い温度水準は、好ましくは、次のようにして、すなわち
− 外部から熱を供給することによって、例えば、戻された生成ガスが供給されるバーナー/触媒バーナーを備えた熱交換器を介して外部から熱を供給することによってか
あるいは
− バイオマスパルプ状物の有機成分の部分酸化が行なわれるように、低温のあるいは幾分加熱したバイオマスパルプ状物に、適当な酸化剤、例えば酸素、空気、過酸化水素、硝酸アンモニウムおよびその他の硝酸塩を添加することによって(
上記酸化反応は発熱性であり、バイオマスパルプ状物を所望の温度にするのに十分な熱を好ましくは発生させる。)、
あるいは
− はじめの両方の方法を組み合わせることによって、
達成することができる。
【0021】
vii)集められた析出物(特に、大部分の塩の析出物)並びに残りの固形物をプロセスから連続的または定期的に効率よく排出することができる。
【0022】
viii)固形物、例えば上記の塩は、触媒によるガス化の前に、使用された反応器中で超臨界条件下で析出、分離および回収される。元素N、PおよびKが豊富な塩は、例えば、農業で使用可能な肥料の製造のための基礎材料として極めて適している。従ってこの点でも、生態系の物質循環が閉鎖するであろう。
【0023】
ix)触媒によるガス化の際には、主として二酸化炭素、メタンおよび水素へのガス化が行なわれるように反応器に触媒が装填される。その際、痕跡量の一酸化炭素並びに高級炭化水素、例えばエタン、プロパンが生成されうる。
好ましくは、触媒は高いニッケル含量を有し、例えばルテニウム、モリブデン、クロムおよび/または銅の1種またはそれ以上の元素を含有するラネー(登録商標)ニッケルである。
【0024】
x)反応器は好ましくは流動層反応器、モノリシック反応器、壁形反応器または管状反応器として構成され、その際、付属の管または管束が触媒で被覆される。別の選択肢として、触媒被覆された金属薄板が反応器の管に充填されていてもよい。固定層反応器も同様に可能であるが、閉塞の危険が比較的高いためにあまり有利ではない。
【0025】
次に本発明をバイオマス(例えば木材または液肥の固形物)からのガス化についての図面に基づき詳説する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、バイオマスからの触媒による水熱ガス化についての基本フローチャートを示す。この場合には、酸素の添加によるオートサーマル式の操作方法またはアロサーマル式の変法(酸素添加なし、外部からの熱の供給あり)が可能である。400℃〜500℃の温度への過熱は、最後に挙げた選択肢の場合には、生成ガスの一部の燃焼および間接的な熱交換によって実現される。
【0027】
次の工程段階が行われる:
ステップ1:約20℃および1バールでTM含量5〜50質量%(TM=乾質)を調整しながらバイオマスを収容するための緩衝用容器を形成する。
【0028】
ステップ2:40℃および1バールで混合物を湿式粉砕する。
【0029】
ステップ3:この湿式粉砕した混合物を80℃および300バールで圧縮する。
【0030】
ステップ4:300℃および300バールで予熱(加水分解)する。
【0031】
ステップ5:場合により、酸素(または他の酸化剤)を添加する。
【0032】
ステップ6:その際に存在する約450℃および300バールという条件下に、混合物の超臨界温度下に部分酸化を実施する。
【0033】
ステップ7:塩の分離、冷却および約300℃での塩水の排出を実施し、それにより比較的低い塩濃度が得られる。その際、熱回収のために廃熱を再び先行の予熱段階(ステップ4)に戻すことができる。
【0034】
ステップ8:約420℃および約300バールで、目的のメタン富化生成ガスへとガス化およびメタン化する。
【0035】
ステップ9:今やメタン豊富となったこのガス混合物を依然として約300バールで約10℃に冷却する。その際、この場合にもこの段階で生じる廃熱の大部分を再び先行の予熱段階(ステップ4)に戻すことができる、
ステップ10:固体のガスハイドレートを、加圧下の残りの気相および液相から約10℃および300バールで析出および分離する。残りの気相および液相を1バールに減圧し、気相を液相から分離する。
【0036】
ステップ11:約−15℃にさらに冷却し、および周囲圧力へさらに減圧することによって固体のメタンハイドレートを取得する。
【0037】
さらに図2による実施例のためには次の工程段階が必要である。
【0038】
ステップ9 今やメタン豊富となった上記ガス混合物を依然として約300バールで約50℃に冷却する。その際、この場合にもこの段階で生じる廃熱の大部分を再び先行の予熱段階(ステップ4)に戻すことができる。
【0039】
ステップ12 50℃および約300バールで気液分離を実施する。この際、十分にきれいな水が回収される。及び
ステップ13 例えば約30℃および280バールで高圧洗浄することによってガス分離を行う。この際、メタンCHが別のガス成分、例えばCOおよび水素から分離、捕集される。
【0040】
つまりこの工程全体で固体のメタンハイドレートがバイオマスから5〜50質量%のTM含量(TM=乾質)で得られる。最初にバイオマスは湿式粉砕され、そしてスラッジポンプを用いて約300バールで反応器内に送られる。その際、この懸濁液が約300℃に予熱され、これにより生体高分子(セルロース、リグニン、タンパク質)の加水分解および分解が起こる。触媒による目的のガス化およびメタン化の前に酸素流(または他の酸化剤)が供給される。そのことによって有機成分の部分酸化が行なわれ、これにより400〜500℃の所望の反応温度に達するのに十分な放熱が起こる(オートサーマル式の操作方法)。超臨界領域(純水については300バールで約402℃)に入る際に、ほとんどの塩が固形物として析出する。そのことによって触媒床からの塩の分離を達成することができる。加水分解されたバイオマス成分をCH、COおよび副産物Hへと触媒により改質した後に、この水−ガス混合物を加圧下に冷却し、放出された熱の一部は未だガス化されていない材料の予熱に使用される。300バールで約10℃の冷却温度は、メタンハイドレートの生成が起こるが、残りの水が凍らないように選択されている。分離器では、固体のメタンハイドレートを残りの液相および気相から分離することができる。周囲圧力で準安定のメタンハイドレートを得るためには、この化合物は減圧前に少なくとも約−15℃に冷却しなければならない。好ましくは、メタンハイドレートは前もって残りの保留水から分離する。
【0041】
図2に示された方法は、図1に示された方法とは先ず工程段階9以降が異なる。冷却が25〜50℃の温度までしか行なわれない。この範囲ではメタンハイドレートは生じず、ガスは水性相中に溶解された状態で存在する。固体のメタンハイドレートの生成の代わりに、ステップ12では、液状およびガス状の相からの分離が依然として約300バールの高圧の利用下に、かつ続いてのステップ13で二酸化炭素からの分離が高圧洗浄器で行なわれる。このことによって、この方法の場合には、メタンはガス状の加圧されたガスとして存在する。
【0042】
ステップ13の代わりに、ガスを減圧し及び公知の分離方法(圧力スイング吸着、ガス洗浄)を用いてCH/HおよびCOに分離することも可能である。しかしながら、その場合にはメタンガスを、高圧の状態で使用することはできない。
【0043】
この手順に基づいて本発明による方法を用いて従来技術に対する多数の利点が次のとおり達成される:
・バイオマスの反応が水中で及び水と行なわれる。湿ったあるいは濡れたバイオマスを乾かす必要がない。そのことによって本方法のより高いエネルギー効率を達成することができる。
【0044】
・バイオマスは、第1の工程段階で状態調節される。即ち、好ましくは
湿式粉砕によって、細化されかつ所望の乾質率(TM)に調節される。それによりポンプ移送可能なパルプ状物が生じる。ポンプ性能の改善のために、バイオマスに他の添加剤(例えばデンプン、廃油)を添加することができる。所望の乾質率は5〜80質量%、好ましくは約15〜40質量%である。この方法は、有機乾質率が約20質量%以上である場合に特に経済的に行われる。
【0045】
・状態調節されたバイオマスパルプ状物は第2の工程段階で高圧(200〜400バール)にされ、そして連続的または断続的に運ぶことができる。輸送装置としては、特に、押出機、高圧偏心スクリューポンプ、ピストンダイアフラムポンプおよび固形物ポンプが適当である。
【0046】
・第3の工程段階でバイオマスパルプ状物は加圧下に200〜350℃に加熱される。その際に、固形有機バイオマス成分が殆ど液化される。より良好な加熱および液化のためには、この工程段階は静的混合要素および/または触媒(例えば酸化亜鉛)を含むことができる。
【0047】
・第4の工程段階では、この加熱されかつ液化された加圧バイオマスパルプ状物は適当な装置(例えばサイクロン、MODAR分離器、フィルタ)で迅速になおより高い温度レベル、好ましくは各々の場合の混合物の臨界温度の範囲またはそれ以上にされる。ここでは、374℃および221バールでの水の臨界温度をその拠り所とする。これは直接第4の工程段階(または先行の工程段階1〜3の1つ)に、(例えば戻された生成ガスが供給されるバーナー/触媒バーナーによって)外部から熱を供給することによってか、または適当な酸化剤(例えば酸素、空気、過酸化水素、硝酸アンモニウムおよびその他の硝酸塩)を添加することによって行なうことができる。それによって、殆どの塩およびその他の固形物が析出し、そしてこれらを捕集することができる。変法としてこの集められた析出物は、連続的または定期的にプロセスから排出することができる。触媒ガス化反応器のに水熱条件下に塩として固形物を分離および回収すること、並びに水熱条件下にバイオマスを部分酸化するために塩タイプの酸化剤(硝酸塩、例えば硝酸アンモニウム)を場合により添加することは、本方法の実施及び効率をかなり改善する。排出された固形物は、出発物質の性質如何で窒素塩、リン塩およびカリウム塩を非常に豊富に含み、従って肥料として農業で再使用することに極めて適している。
【0048】
・第5の工程段階では、今やほとんどの固形物が除かれた高温のバイオマス流は、適当な触媒が装入された反応器中に達し、そこでメタン、二酸化炭素、水素および痕跡量の一酸化炭素並びに高級炭化水素(エタン、プロパン)へのガス化が行なわれる。この際、触媒は、好ましくは、高いニッケル含量を有し(例えばラネー(登録商標)ニッケル)、そしてルテニウム、クロムおよび/または銅も含んでいることができる。活性金属としてのNi、RuまたはRhを基礎とする他の触媒も同じく使用可能である。反応器は好ましくは流動層反応器、モノリシック反応器または(触媒で被覆された管または管束を備えた)壁形反応器として構成される。しかし、触媒被覆された金属薄板が入れられた管を用いることもできる。
【0049】
・第6の工程段階(A)では生成物流が前記の第1のフローチャートに従って加圧(200−400バール)下に約50℃に冷却され、そして適当な装置中で0〜20℃に後冷却される。その際、固体の水−メタン包接化合物(またはメタンハイドレート)が形成する。この白色の固体はおよその組成として8CH×46HOを有する。従ってメタンを低コストで約−15℃および1atmで固体として輸送することができる。この工程段階は、メタンをCOおよびその他のガス成分から分離するのにも同様に使用することができる。
【0050】
以上説明したバイオマスからのメタンハイドレートの製造と、メタンの分離を簡単にするためのメタンハイドレートの生成は高い効率を有する。
【0051】
・前記の第6の工程段階(A)とは別の選択肢として前記の第2のフローチャートに従って第6の工程段階(B)を選択することができ、その場合には生成物流は約50℃に冷却され、気相は加圧下に液相から分離される。適当な装置(例えば洗浄塔、膜分離装置、吸着装置)で、メタンを気相の他の成分から分離することができ、そしてこの際は、このメタンを高圧(約200〜400バール)で使用することができる。このことによって、メタンをガスボンベに詰める際や、ガスタンクステーションに燃料として供給する際、あるいは天然ガス供給網に供給する際の圧縮段階が不要となる。圧縮ガスを燃料として直接ガスタービンプロセスに使用することも考えられる。
【0052】
これらに基づいて、この第2の方法に従い、天然ガスタンクステーションにおよび/または天然ガス網への供給に、ボトル詰めにまたはガスタービンでの燃料としての使用に適した圧力でバイオマスからメタンを供することで、経済性が非常に高い有用性が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の態様に従う、触媒作用によるバイオマスの水熱ガス化法の基本フローチャートを示す。
【図2】本発明の第2の態様に従う、触媒作用によるバイオマスの水熱ガス化法の基本フローチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程段階、すなわち
a)所望の乾質率に調整しながらバイオマスからバイオマスパルプ状物を調製する段階、
b)バイオマスパルプ状物に圧力を加える段階、
c)バイオマスパルプ状物の固形有機成分の液化のために、バイオマスパルプ状物を加圧下に加熱する段階、
d)このように加圧されかつ加熱されたバイオマスパルプ状物を、さらに少なくともこの混合物の特有の臨界温度まで加熱する段階、
e)加圧及び高められた温度下に、その際に析出する固体を液相から分離する段階、
及び
f)反応器を用いて加圧及び高められた温度下に、前記残りの液相の少なくとも一部をメタン富化ガスにガス化する段階、
を含むバイオマスからメタンを生成する方法。
【請求項2】
加圧されたメタン富化ガスを残りの液相から分離することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メタン富化ガスを加圧下に冷却し、これにより形成する固体のメタンハイドレートをその他のガス成分、特にCOおよび/または一酸化炭素及び水素から、及び好ましくは残りの水から分離することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
加圧されたメタン豊化ガス中のガス化で生じたメタンを、好ましくは圧力の利用下に、洗浄塔法、膜分離法もしくは吸着装置法を用いてその他のガス成分、特にCOおよび/または一酸化炭素および/または水素から分離することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
段階a)の際に、バイオマスを湿式粉砕によって細化し及び水の供給または除去を行って、乾質率5〜80質量%、好ましくは15〜40質量%に調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
バイオマスパルプ状物のポンプ移送性の改善のために他の添加剤、特にデンプンまたは廃油が添加されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
段階b)の際にバイオマスパルプ状物を200〜400バールの範囲に加圧することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
バイオマスパルプ状物を段階b)後に加圧下に200〜400℃、好ましくは250〜350℃に加熱することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
より良好な加熱および液化のために静的混合要素および/または触媒、例えば酸化亜鉛を使用することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
段階d)の際に、より高い温度レベルが、少なくともその混合物の特有の臨界温度であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
より高い温度レベルを
− 外部から熱を供給することによって、例えば、戻された生成ガスが供給されるバーナー/触媒バーナーを備えた熱交換器を介して外部から熱を供給することによってか
あるいは
− 適当な酸化剤、例えば酸素、空気、過酸化水素、硝酸アンモニウムおよびその他の硝酸塩を添加して、バイオマスパルプ状物を部分的に酸化することによって
達成することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
塩およびその他の固形物を析出させそしてこれを捕集し、この際、この捕集した沈殿物を連続的または定期的にガス化前にプロセスから排出することを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
段階f)の際に、所望の生成ガス組成をより迅速に調整するために触媒を使用することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
触媒が活性金属としてニッケル、ルテニウムまたはロジウムを含有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
触媒反応器が好ましくは流動層反応器、モノリシック反応器、壁形反応器または管状反応器として構成され、その際、付属の管または管束が触媒で被覆されているか、あるいは管内に積み重ねられた触媒被覆された板を使用することを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
触媒によるガス化を超臨界条件下に実施することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−509759(P2009−509759A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533877(P2008−533877)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005837
【国際公開番号】WO2007/038996
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(501494414)パウル・シェラー・インスティトゥート (19)
【Fターム(参考)】