説明

バイオマスの洗浄装置及び洗浄方法

【課題】バガス等のバイオマス原料の洗浄において、ピスを含めた原料の歩留まりを下げることなく、効率的に異物を除去する装置及び方法を提供する。
【解決手段】
一方側にバイオマス及び水の投入部11が設けられ、一方側から他方側に延在してバイオマスを撹拌しつつ他方側に移行させる撹拌手段12が設けられた、実質的に水平の処理水槽16を使用するバイオマスの洗浄装置及びバイオマス洗浄方法を提供する。前記処理水槽の他方側に水及びこれに同伴するバイオマスのオーバーフロー排出口18、他方側の下方に前記処理水槽内と連通する、下窄まりの沈降分離部25が設けられ、前記沈降分離部の下端から下方に延びる排出管路が設けられる。前記沈降分離部25においてバイオマスに混入する異物を沈降分離させ、前記排出管路より前記沈降分離部25における沈降分離物を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バガス等のバイオマス原料から砂分等の異物を除去する洗浄装置及び洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バガス、麦わら、稲わら、パーム残渣等のバイオマスは、家畜飼料として利用されるほか、アルコール等の工業原料としても使用される(特許文献1)。
特にバガスには砂分等の異物が混入しており、これをアルコール等の工業原料として使用する場合、処理工程の初期において洗浄により異物を除去する必要がある。
従来、このようなバイオマス原料の洗浄は、バイオマスに水を加えて撹拌し、砂分等を含む繊維質の絡まりをほぐす撹拌洗浄工程、スラリー化したバイオマス原料の繊維質と異物をスクリーン、トロンメル等で分離する異物除去工程によって行われてきた。しかし、このようにバイオマス原料の大きさで分級する方法では、特に短繊維(ピス)が砂分等と共に除去されてしまう。アルコール発酵の原料等として使用される際には、バイオマス原料は繊維長に関らず利用可能であるため、ピスも効率的に回収できる方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−68606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする主たる課題は、バガス等のバイオマス原料の洗浄において、効率的に異物を除去し、かつ原料を高い歩留まりをもって回収する装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
実質的に水平の処理水槽の一方側にその処理水槽内へのバイオマスの投入部が設けられ、前記処理水槽内への水の投入部、並びに前記処理水槽内に一方側から他方側に延在してバイオマスを撹拌しつつ他方側に移行させる撹拌手段が設けられ、
前記処理水槽の他方側に水及びこれに同伴するバイオマスのオーバーフロー排出口を形成し、
前記処理水槽の他方側の下方に前記処理水槽内と連通する、下窄まりの沈降分離部が設けられ、前記沈降分離部の下端から下方に延びる排出管路が設けられ、前記沈降分離部においてバイオマスに混入する異物を沈降分離させ、前記排出管路より前記沈降分離部における沈降分離物を排出するようにしたことを特徴とするバイオマスの洗浄装置。
【0006】
(作用効果)
前記処理水槽内に投入されたバイオマスは、撹拌手段によって撹拌されつつ一方側から他方側に移行される。この過程で、バイオマスから砂分などの異物が分離される。
他方側に移行したバイオマスは、オーバーフロー排出口から排出される。バイオマスの一部の短繊維分(ピス)が撹拌手段による移行過程で本体から分離したとしても、オーバーフローによって排出するようにしたので、短繊維分(ピス)を異物側に移行させて廃棄することが少なくなる。
本発明においては、洗浄と異物分離とを一つの装置で行なうことにより、簡易な構成で省スペース化を図りつつ安価な装置であっても、異物分離効率に優れたものとすることを狙いとしている。
バイオマスと分離した異物は比重が重いので下方に沈降する。そこで、処理水槽の他方側の下方に前記処理水槽内と連通する下窄まりの沈降分離部において重い異物のみを集合させて排出管路から排出する。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記排出管路の上部に上部排出開閉弁及び下部に下部排出開閉弁がそれぞれ設けられ、上部排出開閉弁及び下部排出開閉弁がこの順に間欠的に開閉することにより、前記沈降分離物を排出する、請求項1記載のバイオマスの洗浄装置。
【0008】
(作用効果)
沈降分離部における沈降分離物を、適宜のサイクルで排出させ、処理水槽内の水を可能な限り抜かずに、かつ排出を確実に行なわせるために、上部排出開閉弁及び下部排出開閉弁のこの順の間欠的開閉によって、沈降分離部における異物(沈降分離物)を排出する。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記沈降分離部の下部または前記排出管路の上部排出開閉弁より上方、並びに前記排出管路の上部排出開閉弁と下部排出開閉弁との間にそれぞれ流体の注入路を連結し、上方及び下方の両方、若しくは上方または下方のいずれか一方の注入路より流体を注入する、請求項2に記載のバイオマスの洗浄装置。
【0010】
(作用効果)
繊維分の一部が沈降分離部内に入り込み滞留したり、排出管路から異物と共に排出されることがある。
そこで、沈降分離部の下部または排出管路の上部排出開閉弁より上方に流体の注入路を設け、ここから流体(たとえば水や空気)を好ましくは上向きに流出させることにより、沈降分離部に沈降した又は沈降しようとする繊維分を浮上させることにより、排出管路から異物と共に排出される割合を減少させることができる。
また、排出管路の上部排出開閉弁と下部排出開閉弁との間に流体の注入路を連結し、流体を注入することにより、上部排出開閉弁及び下部排出開閉弁を、この順で間欠的に開閉させることによって、沈降分離部における異物(沈降分離物)を排出する際に、流体の注入によって排出を確実に行なわせることができる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記撹拌手段が連続式2軸パドルミキサーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイオマスの洗浄装置。
【0012】
(作用効果)
撹拌手段を連続式2軸パドルミキサーとすることで、バイオマスの撹拌と移送を円滑に行なわせることが可能となる。その結果、異物の分離及び移送滞留時間が短くなるので、繊維質への水の浸透、それに伴う繊維質の沈降を軽減することができる。
【0013】
<請求項5記載の発明>
実質的に水平の処理水槽の一方側にその処理水槽内へのバイオマスの投入部が設けられ、前記処理水槽内への水の投入部、並びに前記処理水槽内に一方側から他方側に延在してバイオマスを撹拌しつつ他方側に移行させる撹拌手段を設けた装置を使用し、
前記撹拌手段によって、バイオマスを撹拌しつつ一方側から他方側に移行し、その過程で異物をバイオマスから分離し、
バイオマスは、前記処理水槽の他方側に形成されたオーバーフロー排出口から、水と共にオーバーフローによって排出し、
前記処理水槽の他方側の下方に前記処理水槽内と連通する、下窄まりの沈降分離部内に異物を集積させ、前記沈降分離部においてバイオマスに混入する異物を沈降分離させ、
前記沈降分離部の下端から下方に延びる排出管路が設けられ、前記搬出管路より前記沈降分離部における沈降分離物を排出することを特徴とするバイオマスの洗浄方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バガス等のバイオマス原料の洗浄において、効率的に異物を除去し、かつ原料を高い歩留まりをもって回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】バイオマス処理工程のフロー図である。
【図2】本発明に係るバイオマス洗浄装置の一例の正面図である。
【図3】本発明に係るバイオマス洗浄装置の一例の上面図である。
【図4】本発明に係るバイオマス洗浄装置の一例の断面図である。(A)図3のA−A断視図、(B)図3のB−B断視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、バイオマス処理工程の概略を示す。バガス等のバイオマスは、洗浄工程により、砂、小石等の異物と分離され、濾過工程により洗浄工程で添加された水分の多くが除去される。濾過後のバイオマスは、スクリューフィーダー、ピストンフィーダー等の輸送手段で輸送され、加水分解工程に供される。加水分解工程では、バイオマスの主成分であるセルロースの加水分解による糖化が行われる。糖化された原料は、さらに発酵によりエタノール等の有機燃料や有機酸等に加工される。本発明は、上記工程のうち、洗浄工程に係る装置及び方法に関するものである。
【0017】
本発明におけるバイオマスとは、バガス、麦わら、稲わら、パーム残渣、コーンストーバー、パーム椰子残渣、キャッサバ残渣、木片、木質廃材、ジュート、ケナフ、古紙等のソフトバイオマスを指すものとする。具体的には、表1に示す性質のバイオマスについて、特に好適に本発明を適用することができる。
【0018】
【表1】

【0019】
図2,3,4に本発明に係るバイオマス洗浄装置の一例を示す。水及びバイオマスは、バイオマス洗浄装置1の撹拌領域10に、装置始端側の投入口11から投入される。水及びバイオマスは別々に投入してもよく、また、予めスクリューミキサー等で混和してから投入してもよい。
【0020】
撹拌領域10は、パドルミキサー、リボンミキサー、ロッドミキサー等の撹拌手段を備える。特に図示例のような連続式2軸パドルミキサーの使用が、材料の撹拌と同時に搬送もでき、より迅速にバイオマスを異物より分離できるため好ましい。図示例においては、撹拌領域10に、多数のパドル13を有するパドルシャフト12が2本、材料の進行方向と平行に設置されている。各パドルシャフト12の装置始端側末端には駆動ギア14を、終端側末端にはテイルローラ15を有し、駆動ギア14の回転により、2本のパドルシャフト12全体が回転する。
【0021】
撹拌領域に投入された水及びバイオマスは、撹拌槽16内で撹拌混合されながら、装置終端側へ水平移動する。水流と撹拌作用でバイオマス中の繊維質が解されることにより、繊維質と繊維質内部に混入していた異物とが分離される。本発明に係るバイオマスの繊維質は比重が低いため水表面に浮揚する一方、異物は一般に比重が高いため、装置底部に向かって移動する。バイオマス及び繊維質は撹拌槽幅方向中央部分では、パドルにより生じた水流の影響を受けにくく、繊維質の離解が効率よく行われない傾向がある。そのため、当該部分に障壁17を設け、当該部分の水流に複雑性を与える構成とすることが好ましい(図4(A))。水表面に浮揚した繊維質は、装置終端の側部に備えたオーバーフローシュート18より、装置外に排出され、脱水工程に送られる(図4(B))。
【0022】
撹拌領域で繊維質より分離された砂分等の異物は、装置底部に沈降しながら水流に乗って比重分離領域20まで搬送される。異物は、比重分離槽25底部に向かって沈降し、貯留する。貯留した異物は、上部排出開閉弁21及び下部排出開閉弁22を開放することにより排出される。上部排出開閉弁21及び下部排出開閉弁22は、装置内の水位を保ち、異物の沈降を促進するために、連続的ではなく、間欠的にこの順に開閉することにより、比重分離槽25における沈降分離物を排出する。この上部排出開閉弁21及び下部排出開閉弁22に替えて、ロータリーバルブを用いてもよい。
【0023】
繊維質の多くは、撹拌領域終端側部よりオーバーフローにより排出されるが、一部の繊維質は繊維内部に水分が浸透することにより比重が増加し、異物と共に比重分離領域底部に沈降する。沈降した繊維質は、異物と共に排出され歩留まりを低下させ、また装置底部の抜き出し口や管路の閉塞を生じる要因となる。本発明に係る装置には、装置底部及び管路に水または空気の流体を連続的または間欠的に供給し、水流または気泡により繊維分を浮上させ排出管路から異物と共に排出される割合を減少させると共に閉塞を除去する、底部流体注入手段を設けることが好ましい。装置底部への流体の供給は、上部排出開閉弁21を閉じた状態で、流体バルブ23を開放することにより行う。また、管路への流体の供給は、上部排出開閉弁21を開き、下部排出開閉弁22を閉じた状態で、流体バルブ24を開放することにより行う。流体により閉塞を形成した繊維質は離解し、装置内部に押し戻される。さらに、繊維質の一部は流体の上昇流に乗って、装置上部の撹拌領域に達し、撹拌領域の水流に乗ってオーバーフローシュート18まで送られる。
なお、流体バルブ23,24から水を供給する場合、水は後段の濾過工程における濾液を使用してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1…バイオマス洗浄装置、10…撹拌領域、11…投入口、12…パドルシャフト、13…パドル、14…駆動ギア、15…テイルローラ、16…撹拌槽、17…障壁、18…オーバーフローシューター、20…比重分離領域、21…上部排出開閉弁,22…下部排出開閉弁、23,24…注入バルブ、25…比重分離槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に水平の処理水槽の一方側にその処理水槽内へのバイオマスの投入部が設けられ、前記処理水槽内への水の投入部、並びに前記処理水槽内に一方側から他方側に延在してバイオマスを撹拌しつつ他方側に移行させる撹拌手段が設けられ、
前記処理水槽の他方側に水及びこれに同伴するバイオマスのオーバーフロー排出口を形成し、
前記処理水槽の他方側の下方に前記処理水槽内と連通する、下窄まりの沈降分離部が設けられ、前記沈降分離部の下端から下方に延びる排出管路が設けられ、前記沈降分離部においてバイオマスに混入する異物を沈降分離させ、前記排出管路より前記沈降分離部における沈降分離物を排出するようにしたことを特徴とするバイオマスの洗浄装置。
【請求項2】
前記排出管路の上部に上部排出開閉弁及び下部に下部排出開閉弁がそれぞれ設けられ、上部排出開閉弁及び下部排出開閉弁がこの順に間欠的に開閉することにより、前記沈降分離物を排出する、請求項1記載のバイオマスの洗浄装置。
【請求項3】
前記沈降分離部の下部または前記排出管路の上部排出開閉弁より上方、並びに前記排出管路の上部排出開閉弁と下部排出開閉弁との間にそれぞれ流体の注入路を連結し、上方及び下方の両方、若しくは上方または下方のいずれか一方の注入路より流体を注入する、請求項2に記載のバイオマスの洗浄装置。
【請求項4】
前記撹拌手段が連続式2軸パドルミキサーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイオマスの洗浄装置。
【請求項5】
実質的に水平の処理水槽の一方側にその処理水槽内へのバイオマスの投入部が設けられ、前記処理水槽内への水の投入部、並びに前記処理水槽内に一方側から他方側に延在してバイオマスを撹拌しつつ他方側に移行させる撹拌手段を設けた装置を使用し、
前記撹拌手段によって、バイオマスを撹拌しつつ一方側から他方側に移行し、その過程で異物をバイオマスから分離し、
バイオマスは、前記処理水槽の他方側に形成されたオーバーフロー排出口から、水と共にオーバーフローによって排出し、
前記処理水槽の他方側の下方に前記処理水槽内と連通する、下窄まりの沈降分離部内に異物を集積させ、前記沈降分離部においてバイオマスに混入する異物を沈降分離させ、
前記沈降分離部の下端から下方に延びる排出管路が設けられ、前記排出管路より前記沈降分離部における沈降分離物を排出することを特徴とするバイオマスの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−245383(P2011−245383A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119243(P2010−119243)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】