説明

バイオマス処理方法

【課題】 バイオマスを効率良く発酵処理しつつ、植物を利用せずともエネルギを回収することができ、またバイオマス処理後の廃液中に含まれる有機物の濃度を低下させることのできる、新しいバイオマス処理方法を提供すること。
【解決手段】 バイオマス処理方法に関し、バイオマスを、水素生成菌による水素発酵処理をして水素を回収する。さらに、水素発酵処理後に発生する発酵液をメタン菌によるメタン発酵処理をしてメタンを回収する。この場合において、発酵液には少なくとも有機酸が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス処理に関するものである。さらに詳しくは、バイオマスを効率良く発酵処理しつつ、植物を利用せずともエネルギを回収することができ、またバイオマス処理後の廃液中に含まれる有機物の濃度を低下させることのできる、新しいバイオマス処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品製造過程から莫大な量の生ゴミ(バイオマス)が排出されているが、かかる生ゴミを処理するには、生ゴミ処理機を用いることが良く知られている。このような生ゴミ処理機には、好気性細菌叢が具備されており、この好気性細菌叢に生ゴミを投入して、分解処理されている。
【0003】
しかしながら、投入された生ゴミは、その重量の少なくとも1割、またはそれ以上が処理できずに未成熟の残存物として残存するという問題がある。また、例えば、このような未成熟の残存物を堆肥として利用する際には、このままでは堆肥として使用することができないため、さらに2ヶ月ほど発酵させる必要がある。また、せっかく作成した堆肥も、農家や園芸家との連携が取れず、引き取り手がない状態となると、無駄となり、いわゆる第二次の産業廃棄物となってしまう。
【0004】
また、微生物として、例えば、水素生成菌を用いることで、バイオマスを従来よりも効率良く処理する方法も、本発明者によって提案されている(例えば、特許文献1)。さらに、有機性廃棄物である生ゴミ(バイオマス)から水素生成菌、メタン生成菌および水素生産能を有する植物を用いることで、水素を効率良く生産する水素生産方法も提案されている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−157595号公報(要約、段落番号0035〜0039参照)
【特許文献2】特開2003−250519号公報(要約、段落番号0054〜0065参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている処理方法は、バイオマスを効率良く処理することができると共に、クリーンエネルギとしての水素を回収可能な方法であり、実用化に向けての研究開発が盛んに行われている。しかしながら、水素を回収した後の廃液である発酵液(培養液)は、水素生成菌体や副生成物としての酢酸や酪酸等の種々の有機物を高濃度に含んでいる。かかる有機物を高濃度に含む発酵液は、そのままの状態では下水道や河川に放流することができない。そのため、一般の曝気式廃水処理法を使って、この発酵液を処理する等、何等かの対策を取る必要がある。
【0007】
また、特許文献2に開示されている水素生産方法は、水素生成菌による水素発酵およびメタン発酵菌によるメタン発酵等による分解物を、水素生産能を有する植物の水素原料として与えて水素を生産している。このため、水素生成菌およびメタン発酵菌の他に、育成方法(栽培方法)等が煩雑な植物の利用を必要としており、手間が掛かる。
【0008】
また、近年、環境保全や資源の有効活用(リサイクル)が注目されていることから、バイオマスのうち、食品関連廃棄物および/または生活関連廃棄物をより効率良く処理する必要がある。また、かかる食品関連廃棄物および/または生活関連廃棄物からなるバイオマスを微生物処理した後に発生する発酵液中の高濃度有機物を、有効にリサイクルすると共に、下水道や河川に安心して発酵液(廃液)を放流できるように浄化する方法が要望されている。しかしながら、現時点ではそのような報告等はなされていない。
【0009】
そこで、この出願の発明は、以上のような背景から為されたものであって、従来の問題を解消して、バイオマスを効率良く発酵処理しつつ、植物を利用せずともエネルギを回収することができ、またバイオマス処理後の廃液中に含まれる有機物の濃度を低下させることのできる、新しいバイオマス処理方法を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、バイオマスを、Clostridium beijerinkii AM21B株、Clostridium sp.No.2株、Clostridium sp.X53株のうちの少なくとも1つを含む水素生成菌により水素発酵処理をして水素を回収し、さらに水素発酵処理後に発生する発酵液をメタン菌によるメタン発酵処理をしてメタンを回収すると共に、発酵液には少なくとも有機酸が含まれているものである。
【0011】
このように構成した場合には、バイオマスを水素生成菌に作用させることで、発酵処理、すなわち水素発酵処理を行わせることができ、この水素発酵処理により水素を生産することができる。特に、Clostridium beijerinkii AM21B株、Clostridium sp.No.2株、Clostridium sp.X53株のうちの少なくとも1つを含む水素生成菌により水素発酵処理を行うため、他の手法、他の水素生成菌を用いて水素発酵処理を行う場合と比較して、水素生産量を多くすることができる。
【0012】
また、水素発酵処理後に発生する廃液である発酵液を、水素生成菌とは異なる発酵処理能力を有するメタン菌を用いてメタン発酵処理を行わせることができ、このメタン発酵処理によりメタンを生産することができる。この場合、水素発酵後の発酵液を用いてメタン発酵を行うため、バイオマス処理後の廃液中に含まれる有機物の濃度を低下させることが可能となる。そのため、メタン発酵後に、発酵液(廃液)を下水道や河川に安心して放流することも可能となる。
【0013】
また、発酵液には、有機酸が含まれているため、かかる有機酸の存在により、メタン菌によるメタン発酵処理を、効率良く行うことができる。さらに、水素生産能を有する植物を利用しなくて済むため、育成方法(栽培方法)等に手間が掛かることがなく、一層コストを削減することが可能となる。
【0014】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、バイオマスは、食品関連廃棄物および/または生活関連廃棄物が含まれているものである。そのため、資源の有効活用を図ることができると共に、食品関連廃棄物および/または生活関連廃棄物が廃棄物として投棄されるのを防げるので、環境保全を図ることもできる。
【0015】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、水素発酵処理により回収された水素は、圧縮処理により液体状に設けられるものである。このように構成した場合には、水素を運搬、貯蔵することが容易となる。また、圧縮処理を施すだけで済むため、運搬、貯蔵に際して、コストを低減することができる。
【0016】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、水素発酵処理により回収された水素は、カーボンナノチューブによって吸蔵されるものである。このように構成した場合には、重量比で非常に多くの水素を、該カーボンナノチューブによって吸蔵させることができる。このため、容器等に圧縮する場合よりも、より多くの水素を貯蔵可能となる。また、圧縮等しないため、爆発の危険を防止することもできる。
【0017】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、水素発酵処理により回収された水素は、水素吸蔵合金によって吸蔵されるものである。このように構成した場合には、重量比で多くの水素を、該カーボンナノチューブによって吸蔵させることができる。このため、容器等に圧縮する場合よりも、より多くの水素を貯蔵可能となる。また、圧縮等しないため、爆発の危険を防止することもできる。
【0018】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、メタン発酵処理により回収されたメタンは、圧縮処理により液体状に設けられるものである。このように構成した場合には、メタンを運搬、貯蔵することが容易となる。また、圧縮処理を施すだけで済むため、運搬、貯蔵に際して、コストを低減することができる。
【0019】
さらに、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、メタン菌として、Methanobacterium属、Methanococcus属、Methanosarcina属、Methanosaeta属、Methanohalophillus属に属する細菌のうちの少なくとも1つを用いてメタン発酵処理を行うものである。
【0020】
このように構成した場合には、優れた性質を備えるメタン菌を用いてメタン発酵を行うことになり、メタン生産量を多くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、バイオマスを効率良く発酵処理することができる。また、植物を利用せずともエネルギを回収することができる。さらに、バイオマス処理後の廃液中に含まれる有機物の濃度を低下させることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係るバイオマス処理方法について、詳しく説明する。しかしながら、この出願の発明は、以下の実施の形態によって、限定されるものではない。
【0023】
この出願の発明のバイオマス処理方法は、食品関連廃棄物や生活関連廃棄物等のバイオマスを水素生成菌に作用させることで、発酵処理、すなわち水素発酵処理を行う(第1のステップ)。この水素発酵処理により水素が生産され、効率良くこの水素を回収することができると共に、バイオマスを効率良く分解処理することができる。
【0024】
さらに、引き続いて、水素発酵処理後に発生する廃液である発酵液を、水素生成菌とは異なる発酵処理能力を有する微生物、すなわちメタン菌を用いてメタン発酵処理を行う(第2のステップ)。このとき、第1のステップである水素発酵処理によって発生した発酵液は、無処理のままで次の発酵処理である第2のステップのメタン発酵処理に導入しても良い。もちろん、このメタン発酵において不要な有機酸等を除去するため、ろ過処理等の適当な処理を行っても良い。そして、この出願の発明のバイオマス処理方法は、このようなメタン発酵処理によって生産されるメタンをも効率良く回収することができる。
【0025】
このような特徴を有する、この出願の発明のバイオマス処理方法は、動物性廃棄物や植物性廃棄物等をはじめとするバイオマスを効率良く発酵、分解処理しつつ、生育(栽培)が煩雑な、水素生産能を有する植物を利用せずとも種々のエネルギ(水素およびメタン)を回収することができる。このように、水素生産能を有する植物を利用しなくて済むため、育成方法(栽培方法)等に手間が掛かることがなく、一層コストを削減することが可能となる。さらに、水素発酵処理後の発酵液(廃液)中に含まれる高濃度の有機物の濃度をも低下させることができる。そのため、メタン発酵後に、発酵液(廃液)を下水道や河川に安心して放流することも可能となる。
【0026】
この出願の発明のバイオマス処理方法におけるバイオマスは、上記のとおり、食品関連廃棄物または生活関連廃棄物、もしくは、その両方が少なくとも含まれていることが環境保全や資源の有効活用(リサイクル)等の観点から好ましい。このように、食品関連廃棄物および/または生活関連廃棄物がバイオマスに含まれている場合、現状では無駄に捨てられている資源の有効活用を図ることができる。また、食品関連廃棄物および/または生活関連廃棄物が廃棄物として投棄されるのを防げるので、環境保全を図ることもできる。
【0027】
また、この食品関連廃棄物、生活関連廃棄物について、より詳しく例示すると、鶏肉や豚肉、魚屑等の動物性廃棄物、オカラ、フスマ、ヌカ、水を加えて練った生地を含む廃棄するパンやパスタ、野菜や果実の汁や絞り粕等の植物性廃棄物、さらには、醤油や焼酎等の絞り粕等が挙げられる。もちろん、これら廃棄物(生ゴミ)は、家庭から排出される程度の量でも、レストラン等の事業所から排出される量でも良く、この出願の発明のバイオマス処理方法は、十分に対応することができる。
【0028】
また、発酵液には、少なくとも有機酸が含まれていることで、メタン菌によるメタン発酵処理が効率良く行われる。この有機酸は、第2のステップであるメタン発酵処理におけるメタン発酵に有用な有機酸(つまり、発酵気質に相当)である。具体的には、酢酸、酪酸、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、レブリン酸等、各種の有機酸を例示することができ、これら少なくとも1種以上が有機酸として発酵液中に含まれていることが好ましい。なお、この発酵液には、水素生成菌の菌体等が含まれていても、メタン発酵処理に対して支障を与えることはほとんどないため、問題はないと考えられる。また、有機酸は、水素発酵によって生じる有機酸を用いても良いが、メタン発酵に必要な量が不足する場合には、新たに有機酸を投入するようにしても良い。
【0029】
この出願の発明のバイオマス処理方法にて回収される水素は、炭素を含まなく、燃焼させても二酸化炭素を精製しないため、環境に優しいエネルギ(クリーンエネルギ)であると共に、エネルギ変換効率が高いという特徴を有している。特に、使用(燃焼)後のその副産物は水であることから、従来の石油等の化石燃料と比べて環境に優しい。また、水素は、石油の3倍程度と、石油に比べて大きな燃焼エネルギを有している。水素生成菌は、かかる環境面および効率面で優れる水素を、効率良く生産することができる。また、水素発酵処理後に発生する発酵液(廃液)から生産されるメタンは、その活用範囲が広く、各種の装置等のエネルギ源として利用することができる。メタン菌は、このメタンを効率良く生産することができる。
【0030】
なお、回収されるエネルギ、水素およびメタンの形態は、気体や液体、もしくは固体であっても良い。さらに、エネルギ(燃料)として利用し易い形態に適宜に形態を加工、変更することもできる。例えば、気体として回収したエネルギ(水素ガス、メタンガス)に圧縮処理等を施して、液体状にする等も可能である。この場合、水素およびメタンを運搬、貯蔵することが容易となる。また、圧縮処理を施すだけで済むため、運搬、貯蔵に際して、コストを低減することができる。
【0031】
また、水素は、カーボンナノチューブに吸着させることによって、貯蔵するようにしても良い。かかるカーボンナノチューブを用いる場合、重量比で非常に多くの水素を、該カーボンナノチューブによって吸蔵させることができる。このため、容器等に圧縮する場合よりも、より多くの水素を貯蔵可能となる。また、圧縮等しないため、爆発の危険を防止することもできる。かかるカーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nanotubes; SWNT)、グラファイトナノファイバ(Graphite Nanofibers;GNF)が好適である。なお、この場合、低温/加圧下において、水素吸着させても良いし、常温/大気圧下において、水素吸着させても良い。また、かかるカーボンナノチューブは、後述するメタン発酵により生成されるメタンを原料として、生成するようにしても良い。また、生成されたカーボンナノチューブに、K,Li等のアルカリ金属を加えるようにしても良い。
【0032】
さらに、水素は、水素吸蔵合金に吸着させることによって、貯蔵するようにしても良い。かかる水素吸蔵合金を用いる場合、重量比で多くの水素を、該カーボンナノチューブによって吸蔵させることができる。このため、容器等に圧縮する場合よりも、より多くの水素を貯蔵可能となる。また、圧縮等しないため、爆発の危険を防止することもできる。かかる水素吸蔵合金としては、例えばMgH2 といったMg系合金、FeTiH2 といったTi系合金、Ti-V-Mn,Ti-V-CrといったV系合金等がある。
【0033】
さらに、この出願の発明のバイオマス処理方法における水素生成菌には、例えば、Clostridium beijerinkii AM21B 株(Journal of Fermentation and Bioengineering 73:244-245, 1992参照)、Clostridium sp.No.2株(Canadian Journal of Microbiology 40:228-233, 1994参照)、Clostridium sp.X53株(Journal of Fermentation and Bioengineering 81:178-180, 1996参照)等の本発明者によって分離されたクロストリジウム属(Clostridium)に属する水素生成菌がある。しかしながら、水素生成菌は、バイオマスを効率良く処理しつつ、水素を生産するものであれば、各種の水素生成菌を利用することができ、上述の水素生成菌に限定されるものではない。
【0034】
かかる水素生成菌を用いる場合、水素生成において優れた性質を備える水素生成菌を用いて水素発酵を行うことになり、他の手法により水素発酵処理を行う場合と比較して、水素生産量を多くすることができる。
【0035】
また、メタン菌には、例えば、メタノバクテリウム(Methanobacterium)属、メタノコッカス(Methanococcus)属、メタノザルチナ(Methanosarcina)属、メタノシータ(Methanosaeta)属、メタノハロフィルス(Methanohalophillus)属に属する細菌等がある。しかしながら、メタン菌は、バイオマスや水素発酵処理後の発酵液を処理しつつ、効率良くメタンを生産することができるものであれば、上述のメタン菌に限定されるものではなく、各種のメタン菌を利用することができる。
【0036】
かかるメタン菌を用いる場合、メタン生成において優れた性質を備えるメタン菌を用いてメタン発酵を行うことになり、メタン生産量を多くすることができる。
【0037】
そして、以上のような特徴を有するこの出願の発明について、さらに詳細、かつ具体的に説明する。勿論、この出願の発明は、以下の例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
I.水素発酵処理
(1)水素生成菌の前培養
300mlの三角フラスコに0.1%のブドウ糖を加えたPY培地100mlに水素生成菌を接種し、37℃の嫌気性グローブボックス(米国ホーマー社製、形式1024)内で一晩培養した。なお、PY培地の組成は、1Lの水で、10g peptone、5g yeast extract、500mg L-cystein HCl、8mg CaCl、8mg MgSO4 、40mg KH2 PO4 、400mg NaHCO3 、80mg NaClであり、炭素源は含まない。
【0039】
(2)水素発酵方法
3000mlの三角フラスコに水素発生源の澱粉またはブドウ糖を7.5g含むPY培地1400mlと水素生成菌の前培養菌液100mlを加え、ガスの排出口、pHコントローラ(東京理科機製、形式FC-10)の差込口、pH調整用NaOH液流入口等をつけたゴム栓をした後、嫌気性グローブボックスの外に出した。37℃の恒温水槽内で保温し、マグネティクスターラで攪拌をした。
【0040】
(3)水素の捕集と定量方法
発生した気体(ガス)は、10% NaOH液に通して二酸化炭素、その他のNaOH液溶解性ガスを除いたガスを水上置換法でメスシリンダに集め定量した。高速ガスクロマトグラフィによる分析と燃焼試験の爆発音から水素ガスであることを確認した。
【0041】
そして、この水素発酵処理にて発生した発酵液(廃液)を、次のメタン発酵処理に用いた。このとき、この発酵液(廃液)は、無処理のものでも良いし、また、ろ過処理等の各種処理を行ったものでも良い。
【0042】
II.メタン発酵処理
(1)メタン発酵処理装置
メタン発酵処理は、UASB(upflow anaerobic sludge blanket)法で行った。実験に使用した処理装置は、水深930mmで内容量10Lの円筒状で底部に緩やかに攪拌できる攪拌装置が付属されている。この処理装置の下部には、流入口が設けられていて、また上部には越流堰が設けられていて、発生ガスは処理装置の上部から取り出せる構造になっている。
【0043】
メタン発酵処理する前記の発酵液(廃液)は、定量ポンプで流入口へ送り込んでいる。また、越流堰から流出した液を処理水(最終廃液)として採取した。発生ガスは、ガス計量機にて計量した。また、メタン発酵処理装置には、ウォータジャケットを設け、35℃に保温した。
【0044】
(2)実験条件
生活廃水処理施設の返送汚泥7.6Lをメタン発酵装置に投入し、定量ポンプで流入口から水素発酵後の発酵液(廃液)を流入させメタン発酵処理を開始した。発酵液(廃液)の流入量は、0.3L/日、または1L/日に設定し、1日に2回、1回あたり2時間定量ポンプを稼動させて間欠流入させた。処理開始後約5ヶ月間連続して処理を行った。この間、15日経過した時点でガス発生量がほぼ安定したことを確認したので、この時点からほぼ毎日ガス発生量を測定した。また、3ヶ月経過した時点からほぼ1週間おきに処理水(最終廃液)を採取して分析を行った。
【0045】
(3)分析項目と分析方法
メタン発酵処理の効果を判定するために、水素発酵処理後の発酵液(廃液)と、メタン発酵処理後の処理水(最終廃液)における、生化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、全有機性炭素(TOC)、無機性炭素(IC)、ケルダール窒素(kje-N)、全りん(T-P)、蒸発残留物(TS)、強熱減量(VM)、溶解性物質(DM)、浮遊物質(SS)、有機性浮遊物質(VSS)、アルカリ度、pHおよび有機酸をそれぞれ測定した。これらの測定は、従来の下水試験方法にしたがって行った。CODは、酸性条件下で、100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量を求めた。また、TOCおよびICの測定には、TOC計5000A(株式会社島津製作所)を、有機酸の測定には、ガスクロマトグラフィGC-14B(株式会社島津製作所)を使用した。
【0046】
なお、河川放流の基準値は、BODが120、SSが150mg/L以下であり、下水放流の基準値は、BODが600、SSが600mg/L以下である。
【0047】
実施例1:バイオマス(スターチ)から水素とメタンの回収
(1)スターチ(澱粉)の水素発酵処理
澱粉を7.5g含むPY培地1400mlと水素生成菌(Clostridium beijerinkii AM21B 株)の前培養菌液100mlを3000mlの三角フラスコに加え、37℃の恒温水槽内で培養を開始した。保温を開始して2時間から3時間経過したころから発泡が観察され、7時間から8時間頃に発生するガス量は最高に達した。10数時間でガスの発生は収束した。発生した水素ガスは、総計で3750mlであった。水素発酵後の培養液である発酵液(廃液)は、そのまま無処理でメタン発酵槽に注入した。
【0048】
(2)スターチの発酵液からのメタン発酵処理
内容量10Lの円筒状のUASB法のメタン発酵処理装置に、水素発酵後の発酵液(廃液)を流入させて処理を開始した。流入量は、0.3L/日に設定し、1日に2回、1回あたり2時間定量ポンプを稼動させて間欠流入させた。したがって、滞留時間は33日となった。
【0049】
メタン発酵後の処理水(最終廃液)のTOCは約360mg/L、BODは530mg/L、CODは490mg/Lであった。それぞれの除去率は、それぞれ95%、97%と90%であった(表1参照)。メタンガスの発生量は、1日あたり1.54Lであった。この澱粉を用いた水素発酵後の発酵液(廃液)は、嫌気性生物分解しやすいことが確認できた。
【0050】
(3)水質の性状
上記(1)の水素発酵処理で発生した発酵液(廃液)の水質性状と、(2)のメタン発酵処理で発生した処理水(最終廃液)との水質性状をそれぞれ比較して表1に示す。表1に示す通り、水素発酵処理で発生した発酵液(廃液)にメタン発酵処理を行うことで、上記の通り水素ガスおよびメタンガスを回収できると共に、TOCやBOD、COD等を効果的に除去することもできることを確認した。このため、最終廃液は、下水放流の基準値を下回るため、処理の手間を減らすことができた。
【表1】

【0051】
実施例2:バイオマス(ブドウ糖)から水素とメタンの回収
(1)ブドウ糖の水素発酵処理
PY培地をイオン交換水で5倍に希釈した希釈PY培地にブドウ糖7.5gを溶かした培養液1400mlと水素生成菌(Clostridium beijerinkii AM21B株)の前培養菌液100mlを3000mlの三角フラスコに加え、37℃の恒温水槽内で培養を開始した。保温を開始して2時間経過した頃から泡が発生し、7時間頃に発生するガス量は最高に達し、10数時間でガスの発生は終息した。発生した水素ガスは、総計で5750mlであった。水素発酵後の発酵液(廃液)は、そのまま無処理でメタン発酵槽に注入した。
【0052】
(2)ブドウ糖の発酵液からのメタン発酵処理
水素発酵後の発酵液(廃液)の注入量は、1L/日に設定し、1日に2回、1回あたり2時間定量ポンプを稼動させて間欠流入させた。したがって、滞留時間は10日であった。
【0053】
メタン発酵後の処理水(最終廃液)のTOCは、48mg/L、BODは10mg/L、CODは71mg/Lであった。それぞれの除去率は、それぞれ99%、99%以上と98%であった。メタンガスの発生量は、1日あたり4.85Lであった。希釈したPY培地を用いた水素発酵後の発酵液(廃液)は、嫌気性生物分解し易いことを確認することができた。
【0054】
(3)水素の性状
上記(1)の水素発酵処理で発生した発酵液(廃液)の水質性状と、上記(2)のメタン発酵処理で発生した処理水(最終廃液)の水質性状をそれぞれ比較して表2に示す。表2に示す通り、水素発酵処理で発生した発酵液(廃液)にメタン発酵処理を行うことで、上記の通り水素ガスおよびメタンガスを回収できると共に、TOCやBOD、COD等を効果的に除去することもできることを確認した。このため、最終廃液は、河川放流の基準値および下水放流の基準値共に下回るため、最終廃液の処理の手間を減らすことができた。
【0055】
【表2】

【0056】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について、図1から図3に基づいて説明する。図1は、本実施の形態に用いられる水素生成装置10の構成を示す側断面図である。この図において、水素生成装置10は、反応容器11を有している。反応容器11には、水素生成用の材料を投入するための材料投入口12aが設けられている。なお、図示はしていないが、投入する材料が固形物の場合、材料投入口12aの部分に粉砕器が設けられる。また、本実施の形態では、上方に開口する材料投入口12aが、径の大きな配管状部材12の上端に形成されている。この配管状部材12は、反応容器11の上端面に接続されている。有機材料は、配管状部材12から反応容器11の内部に投入可能としている。
【0057】
なお、材料投入口12aは、反応容器11の内部に材料を投入した後に、蓋(不図示)によって閉塞されるものでも良い。このように構成すれば、外部から雑菌が進入するのを防止可能となる。
【0058】
また、反応容器11の側面部分の上方側には、後述するような、水素生成のための微生物(本実施の形態では、クロストリジウム属の微生物;以下、微生物Aと略記する。)を投入するための微生物供給管路13の一端が接続されている。微生物供給管路13の他端は、後述する微生物前培養槽20に接続されているので、反応容器11の内部に適量の培養液を供給することが可能である。なお、以下の説明においては、微生物Aの増殖が為された後の培養液を、増殖済み培養液として説明する。また、培養液タンク21に存在する培養液、または微生物Aの増殖が為される前の、微生物前培養槽20の中の培養液を、増殖用培養液として説明する。
【0059】
この微生物供給管路13の所定位置には、調整弁14が設けられている。この調整弁14の開閉、および開放量が制御されることにより、後述する微生物前培養槽20から反応容器11への培養液の供給量、および供給を行うか否かが調整/制御可能となる。
【0060】
なお、調整弁14は、微生物供給管路13の内部に設けられる構成とはせずに、微生物前培養槽20において微生物供給管路13との境界部分、および反応容器11と微生物供給管路13との境界部分に設ける構成としても良い。
【0061】
反応容器11には、この内部を陰圧に設定可能なように、真空ポンプ等の吸引手段(不図示)が接続されている。また、反応容器11の内部には、第1の攪拌手段としてのフィン15が設けられている。フィン15は、反応容器11の内部に投入された有機材料を攪拌し、反応促進の役割を果たすものである。かかるフィン15の一例としては、上下左右に均等に攪拌可能とするために、例えば2枚羽根からなるフィン15において、そのうちの一枚の羽根を、中心線から斜め上方に傾斜するように設け、もう一枚の羽根を、中心線から斜め下方に傾斜するように設けている。
【0062】
しかしながら、反応容器11の内部を良好に攪拌できれば、フィン15は、いかなる形状であっても良い。また、フィン15は、本実施の形態では、ステンレス製となっているが、全体が磁性材料またはセラミック等の多孔質の吸着性部材を用いても良い。このような多孔質の部材とすると、反応容器11に入れられる有機材料中に水銀等の金属やコピー用トナーが混じっているときに、それらを拡散させず補足することが可能となる。なお、フィン15で攪拌する以外に、例えば反応容器11の全体を揺動したり、反応容器11の全体を回転させることによって、攪拌を行っても良い。
【0063】
また、反応容器11には、上述のフィン15に直結するモータ16が設けられていて、このモータ16の駆動により、攪拌が為される。また、反応容器11の外部には、該反応容器11の内部での反応の様子を監視する監視装置17が設けられている。この監視装置17により、反応時間と反応進行時の温度やpHの監視がされ、また反応時間が常に算出される。また、監視装置17は、ブザーあるいはランプ等の報知手段を用いて、外部に反応が収束したことを外部に伝達可能となっている。
【0064】
この監視装置17は、制御手段としての機能をも果たす。すなわち、後述する微生物供給管路13および培養液供給管路22の調整弁14,23は、上述の監視装置17に接続されている。そして、この監視装置17での調整弁14,23の開放制御により、後述する培養液タンク21から微生物前培養槽20への培養液の供給、および反応容器11の内部への微生物Aを含んだ培養液の供給が制御される。
【0065】
なお、監視装置17に、制御手段としての機能を兼用させる構成とはせずに、制御手段に対応する制御装置を別途設けるようにしても良い。
【0066】
また、微生物供給管路13の他端側には、微生物前培養手段としての微生物前培養槽20が接続されている。この微生物前培養槽20は、増殖用培養液の中で、微生物Aを増殖させるものである。また、この微生物前培養槽20は、微生物Aの増殖が為された、増殖済み培養液において、該微生物Aが生存している状態を維持するものである。そのために、この微生物前培養槽20では、温度調整手段(不図示)が設けられている。この温度調節手段の作用によって、微生物前培養槽20が増殖に最適な温度に保たれる。
【0067】
なお、増殖に対して最も望ましい温度としては、37度前後があるが、後述する反応容器11の内部における反応進行と同様に、25度から45度の範囲であれば、十分に微生物Aを増殖可能となっている。また、増殖可能であれば、この範囲以外の温度であっても良い。また、温度調整手段としては、電熱ヒータ、加熱ボイラ等、種々のものを用いることが可能である。
【0068】
この微生物前培養槽20には、培養液供給管路22の一端側が接続されている。また、該培養液供給管路22の他端側は、培養液備蓄手段としての培養液タンク21に接続されている。培養液タンク21には、微生物Aの培養に適した増殖用培養液が蓄えられる。そして、この培養液タンク21からは、微生物前培養槽20から反応容器11の内部に微生物Aを供給した後に、該微生物前培養槽20に新たな増殖用培養液を供給可能となっている。
【0069】
なお、この培養液供給管路22にも、調整弁23が設けられている。そして、この調整弁23が監視装置17で制御されることで、調整弁23の開閉が制御され、また開放時には適切な開放量に制御される。なお、この調整弁23も、微生物前培養槽20と培養液供給管路22との境界部分、または培養液タンク21と培養液供給管路22との境界部分に設けるようにしても良い。
【0070】
また、反応容器11の上端面には、水素取出管路24の一端が接続されている。水素取出管路24は、比重の軽い水素を反応容器11から外部に排出するためのものである。この水素取出管路24の他端は、外部に設けられた不図示の水素吸蔵合金やガスボンベ等の水素貯留部(不図示)に蓄えられる。このような構成により、微生物Aを用いて有機材料から水素が生成されると共に、生成された水素は、水素貯留部内に蓄えられる。
【0071】
以上のような水素生成装置10を用いて水素を生成する方法を、図2に基づいて以下に説明する。
【0072】
まず、反応容器11の内部に、有機材料を投入する(ステップS1;有機材料投入工程に対応)。投入される有機材料は、例えばジャガイモ等のでんぷん質材料と、キャベツに代表される青物野菜類とを混ぜたもの、とうもろこしの芯に代表される穀物類、ホタテの廃棄物の一つであるウロ、あるいは家畜の内臓等である。しかしながら、上述の有機材料は、例示に過ぎず、この他に植物性廃棄物等の植物性有機材料、あるいは動物性廃棄物等の動物性有機材料を用いることも可能である。
【0073】
また、でんぷん質材料を分解させる場合、単体で反応を進行させても良いが、でんぷん質材料と青物野菜類、あるいはホタテのウロ等の様に、成分の異なる異質な有機材料を混合すれば、これら青物野菜類あるいはホタテのウロが酵素の代わりになり、反応が促進する結果となる。このように、同種の材料ではなく、種類が異なる異質な材料を組み合わせることは、反応促進上好ましい。
【0074】
ここで、この投入の工程に先立って、微生物前培養槽20では、予め微生物Aを培養しておく必要がある(ステップS2;微生物前培養工程)。そのため、まず微生物前培養槽20に増殖用培養液を蓄えておき、この増殖用培養液中に微生物Aの菌株を添加する。そして、この微生物前培養槽20を、所定温度(25度から45度の範囲内であり、好ましくは37度)に設定する。また、この温度を保ったまま、一定時間放置する。培養に必要な放置時間としては、12時間から24時間の間であれば、十分微生物Aが増殖し、好ましいものとなる。しかしながら、これ以外の放置時間であっても、微生物Aの増殖が十分に為されるものであれば、どのような放置時間であっても良い。
【0075】
これらの有機材料を投入した後、または事前、または同時に、嫌気性細菌であるクロストリジウム属の微生物(微生物A)を、微生物前培養槽20から微生物供給管路13を介して、反応容器11の中に、増殖済み培養液に含まれた状態で投入する(ステップS3)。このクロストリジウム属の微生物(微生物A)には、例えば、クロストリジウム バイジェリンキー(Clostridium beijerinkii )AM21B株(文献;Journal of Fermentation and Bioengineering 73:244-245,1992)や、クロストリジウム sp(Clostridium sp.)No.2株(文献;Canadian Journal of Microbiology 40:228-233,1994)、あるいはクロストリジウム sp(Clostridium sp.)X53株(文献;Journal of Fermentation and Bioengineering 81:178-180,1996)等がある。しかしながら、クロストリジウム属の微生物(微生物A)は、これには限定されず、その他にも種々の菌株が適用可能である。また、クロストリジウム属以外の水素を生成する微生物(例;第1の実施の形態におけるクロストリジウム属以外の微生物)を、微生物Aとして用いても良い。
【0076】
そして、上述の放置時間が経過し、微生物Aが十分に増殖された後の増殖済み培養液は、反応容器11の内部に投入される(ステップS3;供給実行工程および供給量制御工程に対応)。それによって、微生物Aによる有機材料の分解反応が開始される。
【0077】
ここで、培養液を反応容器11の内部に供給する場合には、監視装置17による制御によって、微生物前培養槽20の中にある増殖済み培養液の全てを反応容器11の中に供給せずに、所定の量だけ増殖済み培養液を微生物前培養槽20の中に残すようにしておく(この部分がステップS3において供給量制御工程に対応する。)。
【0078】
そして、反応容器11に増殖済み培養液を供給した分だけ、新たに増殖用培養液を培養液タンク21から微生物前培養槽20に供給する(ステップS4;増殖用培養液供給工程に対応)。このように、増殖済み培養液を微生物前培養槽20の中に残した状態で、増殖用培養液を供給する。すると、微生物前培養槽20では、新たに微生物前培養槽20に微生物Aの菌株を供給しなくても、微生物Aの培養を開始することができる。
【0079】
なお、ステップS4における微生物前培養槽20への増殖用培養液の供給は、増殖済み培養液を反応容器11の内部に供給した直後に行わずに、所定の時間経過した後に行うようにしても良い。また、上述の説明では、ステップS1を行った後に、ステップS2〜S4を実行するようにしているが、各ステップS2〜S4の夫々を実行した後、または同時にステップS1を実行するようにしても良い。
【0080】
ここで、反応容器11の内部での温度が、25度から45度までの範囲であれば、微生物Aによる有機材料の分解反応は進行する。しかし、微生物Aの増殖および水素の発生量を考慮すると、好ましくは30度から42度までに調整するのが良い。また、上述のクロストリジウム属の微生物(微生物A)を投入した後に、反応容器11の内部をポンプ等で吸引して若干陰圧(負圧)にしても構わない。この場合、反応がより促進されるものとなる。さらに、反応容器11の内部のpHを調整しても良く、この場合、pHは4.0から8.0とする方が望ましい。
【0081】
また、図2のフローチャートに示すように、反応容器11の内部の温度を所定の温度に調整しながら、モータ16を作動させてフィン15を反応容器11の内部で回転駆動させ、微生物Aと有機材料の撹拌を行うようにするのが好ましい(ステップS5)。それにより、反応容器11内でまんべんなく有機材料の分解反応が進行し、局所的に水素が生成されて蓄積された状態となったとしても、部分的な過飽和状態を作り出すことがなくなる。すなわち、分解反応を有機材料の全体に亘って良好に進行させることが可能となる。
【0082】
有機材料の分解による反応で生成された水素は、水素取出管路24から排出されて(ステップS6)、外部に設けられた水素吸蔵合金やガスボンベ等の水素貯留部に貯留される。また、すぐに水素を燃焼室に導いて、エネルギとして燃焼させても構わない。さらには、水素を燃料電池に供給して、発電に利用しても良い。
【0083】
また、図2のフローチャートに示すように、有機材料を分解し、水素を生成している間中、監視装置17によって、水素を生成するための分解反応が収束したか否かを検知するようにしても良い(ステップS7)。この場合、有機材料の分解反応は、未だ終了していない状態である。そして、分解反応が収束せずに、継続している場合(ステップS7において、Noの場合)には、ステップS5に戻り、混合/攪拌を継続する。
【0084】
また、監視装置17が分解反応の収束に至ったと判断した場合(ステップS7において、Yesの場合)には、監視装置17は、続いて有機材料がなくなるまで分解が進行したか(すなわち、有機材料の分解が終了したか)否かを検出する(ステップS8)。そして、有機材料の分解が終了していない場合(ステップS8において、Noの場合)には、有機材料の分解に必要な微生物Aが足りないこととなる。そのため、微生物Aを投入する(ステップS9)。そして、ステップS9における微生物投入後、ステップS5に戻り、混合/攪拌を継続する。
【0085】
また、ステップS8において、監視装置17が有機材料の分解終了に至ったと判断した場合(Yesの場合)には、有機材料の分解反応を終了させる。すなわち、監視装置17が分解終了を検知した場合、フィン15の撹拌動作を停止させる。そして、例えばブザーやランプ、或いは表示手段によって反応が収束したことを外部に知らせる。
【0086】
そして、反応容器11の内部における有機材料の分解反応が終了した場合(図3において示される反応収束点に到達した場合)には、該反応容器11の内部において分解されずに残っている有機材料(一次排出物)を取り出す(ステップS10)。以上のようにして、水素生成のための工程が終了する。
【0087】
また、有機材料の分解反応を継続する場合には、上述のステップS1からの手順を、同様に繰り返す。その場合にも、上述したように、微生物前培養槽20の内部に増殖済み培養液を残した状態としておく。それによって、増殖用培養液を微生物前培養槽20の内部に供給するだけで、微生物Aを微生物前培養槽20に供給することなく、繰り返し何度でも微生物Aを培養できる。そして、新たに微生物Aを多量に含む状態となった増殖済み培養液を、反応容器11の内部に供給することで、即座に新たな分解反応を開始することができる。
【0088】
なお、上述の水素生成方法においては、必要に応じて、増殖済み培養液を、随時、反応容器11の内部に投入するようにしても良い。また、増殖が十分にされていない状態であって、微生物前培養槽20の内部にある増殖用培養液を、必要に応じて、随時、反応容器11の内部に投入するようにしても良い。このようにすることで、有機材料の分解反応を一層促進させることができる。
【0089】
ここで、反応時間と水素発生量につき、知見として得られた関係について、その一例を図3に示す。図3の横軸は反応時間、縦軸は水素発生量である。選択する有機物によって異なるが、反応を始めてから、約2〜4時間で急速に水素発生量が多くなり、約5〜8時間で水素発生量がピークに達し、その後、緩やかに水素発生量が減少する。
【0090】
この関係より、監視装置17で何をどの程度の量入れたのかを検知したり、予め設定することにより、一定の基準まで水素発生量が減少すると予想される反応終了時点(反応収束点)で自動的にフィン15の撹拌動作を停止させることが可能となる。そして、反応収束点に至った場合、水素発生のための有機材料の分解反応が、反応収束点に到達したと判断される。現在反応容器11の内部に存在する有機材料を取り出して、この有機材料を用いた水素発生のための分解反応を終了させる。
【0091】
このような構成の水素生成装置10、および水素生成方法によれば、微生物前培養槽20において微生物Aが十分に培養された後に、反応容器11に培養液が供給される。このように、微生物前培養槽20で微生物Aを十分に培養した後に、それを供給しているので、該微生物Aの供給の度に、菌株を反応容器11に投入する必要がなくなる。それによって、一度菌株を購入すれば、その菌株を繰り返し何度でも用いることができる。したがって、有機材料の分解反応を経済的に行うことができる。
【0092】
特に、微生物前培養槽20においては、増殖済み培養液を反応容器11の内部に供給する際に、監視装置17によって、一定量だけ微生物前培養槽20の中に残すように制御している。そのため、培養液タンク21から新たな増殖用培養液を微生物前培養槽20の内部に供給するだけで、即座に微生物Aの培養を開始することができる。そのため、繰り返し何度でも微生物Aの培養を図ることができる。また、次の有機材料の投入に備えて、該微生物Aを増殖し、新たな投入のための十分な準備を図ることができる。
【0093】
また、微生物前培養槽20を設けることで、有機材料の分解反応の中途段階においても、必要に応じて随時、微生物Aの増殖が十分に為された増殖済み培養液あるいは微生物Aを多量に含んだ状態の増殖用培養液を反応容器11の内部に供給可能となる。そのため、有機材料の分解反応の進行状況、あるいは環境変化に対応させて、該有機材料の分解反応の最適化を図ることができる。それによって、単位時間当たりの水素発生量を増加させることができる。
【0094】
また、監視装置17は、微生物Aによる有機材料の分解反応開始からの反応時間と、反応進行時の温度と、pHの検出結果とに基づいて、有機材料の反応終了を検知する。そのため、監視装置17は、有機材料の分解反応の進行状況を常に把握した状態となる。
【0095】
そして、この分解反応の進行状況の把握に基づいて、反応容器11の内部での有機材料の分解反応が終了したと判断された場合には、例えばブザーやランプといった報知手段により、新たな有機材料の投入時間となったことを報知させることができる。それにより、新たな有機材料を投入すると共に、監視装置17での制御に基づいて増殖済み培養液を供給すれば、水素生成のための新たな有機材料の分解反応を即座に開始させることができる。
【0096】
また、微生物前培養槽20の内部では、温度調節手段を用いて増殖用培養液または増殖済み培養液を、増殖に適した温度に調整することができ、調整後にはこの温度を保つことができる。このように、増殖用培養液または増殖済み培養液を適切な温度へ調整し、また調整された状態を保つことにより、微生物Aは増殖用培養液中においては一層早く増殖される。また、既に増殖が為された増殖済み培養液中においては、微生物Aの増殖が最適に為された状態を保つことができる。
【0097】
また、このような温度調整を行うことで、反応容器11には、有機材料の分解に最適な状態の増殖済み培養液を供給することができる。それによって、単位時間当たりの水素発生量を増加させることも可能となる。
【0098】
さらに、反応容器11の内部には、フィン15が設けられている。このフィン15が、反応容器11の内部で、有機材料の攪拌を行うことにより、該有機材料の分解反応を促進させることができる。それによって、単位時間当たりの水素発生量を増加させることができる。
【0099】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態について、図4および図5に基づいて説明する。なお、本実施の形態においては、上述の第2の実施の形態で述べたものと同一の構成については、同一の符号を用いて説明する。
【0100】
本実施の形態においては、上述の第2の実施の形態で述べた水素生成装置10に、滅菌機構31を付加したものである。以下、この滅菌機構31を加えた水素生成装置30の詳細について述べる。なお、以下に説明する滅菌機構31は、配管状部材32と、煮沸部33と、水投入配管35と、加熱機構36と、圧力調整機構とから構成されている。しかしながら、滅菌機構31であるためには、最低限、有機材料を煮沸することで滅菌処理を行う煮沸部33を具備するものであれば良い。
【0101】
図4に示すように、滅菌機構31は、上述の第2の実施の形態における配管状部材12の中途部位に設けられている。この滅菌機構31には、上述の第2の実施の形態で述べたのと同様な、材料投入口32aが設けられている。この材料投入口32aは、配管状部材32の一端(上端)に、開口して形成されている。
【0102】
また、配管状部材32は、その他端が煮沸部33に接続されている。煮沸部33は、その内部に投入される有機材料を所定量蓄えることを可能とする空間部33aを有している。そのため、材料投入口32を介して投入された有機材料は、一時的に煮沸部33の空間部33aに存在する。
【0103】
また、煮沸部33は、接続管34を介して反応容器11に接続されている。接続管34には、その煮沸部33側の開口部分に、不図示の開閉蓋が設けられている。この開閉蓋が開くことで、滅菌処理が終了した有機材料を、反応容器11側に供給可能となる。なお、開閉蓋が閉じている状態で、有機材料の投入が為され、後述する水投入口35aから水を投入して該有機材料の煮沸を行うことも可能である。
【0104】
煮沸部33には、液体投入手段としての水投入配管35の他端側が接続されている。水投入配管35の一端側は、水投入口35aとなっていて、煮沸部33の空間部33aに十分な量の水を供給可能としている。また、煮沸部33には、加熱機構36が設けられている。加熱機構36は、空間部33aに有機材料および水が供給された状態で、該有機材料および水を加熱(煮沸)する機構である。かかる加熱により、空間部33aに存在する有機材料の滅菌処理が為される。
【0105】
なお、水投入配管35(水投入口35a)は、必ずしも設ける必要はなく、単に煮沸部33を加熱機構36で加熱するようにしても良い。また、水の代わりに、熱湯や他の液体、または水蒸気等を供給するようにしても良い。
【0106】
煮沸部33には、圧力調整機構37が設けられている。この圧力調整機構37は、加熱機構36による空間部の加熱時に、該空間部の圧力を適正に保つためのものである。加熱機構36と共に、圧力調整機構37が設けられることにより、空間部の内部を、滅菌処理に適した温度および圧力に調整することが可能となる。
【0107】
以上のような水素生成装置30を用いて水素を生成する方法を、図5を用いて以下に説明する。
【0108】
本実施の形態においては、反応容器11の内部に有機材料を投入するのに先立って、該有機材料の滅菌処理を行う(滅菌処理工程に対応)。この滅菌処理を行うに際しては、まず、材料投入口32aから、有機材料を煮沸部33の空間部33aに投入する(ステップS11)。また、この有機材料の投入の後に、水投入口35から所定量の水を、空間部33aに投入する(ステップS12)。それによって、この空間部33aには、有機材料と水とが混じった状態となる。なお、ステップS12を、ステップS11の前に行ったり、同時に行うようにすることもできる。
【0109】
この状態で、加熱機構36を作動させて、空間部33aに存在する、水と混合した状態の有機材料を加熱する(ステップS13)。この場合、加熱機構36は、有機材料を略80度程度まで加熱するのが好ましい。しかしながら、滅菌処理を良好に行える温度であれば、加熱温度は80度程度には限られるものではなく、例えば80度以上の温度、または80度程度以下の65度程度以上としても良い。
【0110】
また、上述のように、好ましい温度として80度程度までの加熱に伴って水が蒸発して蒸気となり、空間部33aにおける圧力が上昇する。この圧力の上昇に際して、圧力調整機構37を作動させて、該空間部33aにおける圧力が適正な圧力となるように調整する。適正な圧力としては、1.2〜1.3気圧とするのが好ましい。しかしながら、空間部33aにおける圧力も1.2〜1.3気圧に限られるものではなく、例えば1.2〜1.3気圧以上の圧力、またはこれより低い圧力としても良い。
【0111】
かかる温度、および圧力の条件を、所定時間維持する。この所定時間としては、5〜20分程度とするのが好ましい。このように、適正な温度、圧力の条件下で、所定時間だけ、空間部33aに存在する有機材料を煮沸すると、該有機材料が含んでいる雑菌等が死滅し、滅菌処理が施されたこととなる。
【0112】
このような滅菌処理を経た後に、接続管34を介して、有機材料を反応容器11の内部に供給する。なお、この有機材料の供給は、図2におけるステップS1に対応するものである。
【0113】
なお、有機材料を反応容器11の内部に供給した以降の処理手順については、上述の第2の実施の形態で述べた手順(図2参照)と同様である。すなわち、本実施の形態においても、新たに反応容器11に微生物Aを供給する場合に、微生物前培養槽20の内部に増殖済み培養液を残した状態としておく。それによって、増殖用培養液を微生物前培養槽20の内部に供給するだけで、微生物Aを微生物前培養槽20に供給しなくても、繰り返し何度でも微生物Aを培養できる。
【0114】
次に、微生物Aを多量に含む状態の増殖済み培養液を、反応容器11の内部に供給する。それによって、有機材料の分解反応が開始され、水素が生成されることとなる。
【0115】
このような構成の水素生成装置30によれば、滅菌処理を行った後に、反応容器11に有機材料を供給するため、反応容器11に供給される有機材料は、他の雑菌が付着していない状態とすることができる。かかる状態で増殖済み培養液を供給した場合、該増殖済み培養液に含まれている、水素生成のための微生物A(本実施の形態では、クロストリジウム属の微生物)が、他の細菌の影響を受けずに、効率的に有機材料を分解することができる。
【0116】
このように、水素生成のための微生物Aが、効率的に有機材料を分解できるので、単位時間当たりの水素発生量を増加させることができる。また、本実施の形態のような、煮沸による滅菌処理を行うことで、煮沸部33の空間部33aも、滅菌処理が為された状態となる。したがって、有機材料を繰り返し反応容器11に供給する場合でも、該煮沸部33の空間部33aで雑菌が繁殖せず、清潔度を保つことができる。
【0117】
また、滅菌機構31は、有機材料が投入される煮沸部33と、この煮沸部33に投入された有機材料を加熱する加熱機構36を備えている。このため、煮沸部33に投入された有機材料が、加熱機構36によって加熱されることで、有機材料に含まれている雑菌を死滅させることができる。すなわち、一般に雑菌は80度以上に加熱(煮沸)した場合には、ほぼ死滅する状態となる。そのため、かかる構成により、確実な滅菌処理を行うことができる。また、確実な滅菌処理を行うことによって、反応容器11の内部に投入された有機材料から生成される、単位時間当たりの水素発生量を増加させることもできる。
【0118】
加えて、滅菌機構31は、煮沸部33に水を投入するための水投入口35aも具備している。そのため、滅菌処理時には、煮沸部33の内部に、有機材料と共に水等の液体が投入される。この状態で、加熱機構31を作動させると、煮沸部33の内部では、流動性の高い液体が熱せられる。それによって、有機材料を満遍なく加熱することができ、有機材料の確実な滅菌処理を行うことができる。また、確実な滅菌処理を行うことで、反応容器11の内部に投入された有機材料から生成される、単位時間当たりの水素発生量を増加させることができる。
【0119】
なお、本実施の形態では、第2の実施の形態で述べた、繰り返し微生物Aを供給するための機構(微生物前培養槽20および培養液タンク21)に加えて、滅菌機構31を設ける構成としているが、かかる繰り返し微生物Aを供給するための機構を除いた状態で、滅菌機構31を設ける構成としても良い。この場合にも、上述したような、水素生成量の増加、および清潔度の維持といった作用を奏させることができる。
【0120】
(第4の実施の形態)
以下、本発明の第4の実施の形態について、図6および図7に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、上述の第3の実施の形態で述べた構成に加えて、メタン生成機構41を備えた、水素生成装置40に関するものである。以下、上述の第2の実施の形態、および第3の実施の形態で述べたのと、同一の構成については、同一の符号を用いて説明する。また、本実施の形態では、メタン生成機構41以外にも、後述するように、固体排出物を処理するための固形物最終処理槽44を具備した構成について説明する。
【0121】
図6に示すように、反応容器11の下端側には、排出配管42を介して、固液分離手段としての固液分離槽43が接続されている。固液分離槽43は、反応容器11で分解反応が終了した後の一次排出物を、固体排出物と液体排出物とに分離するものである。すなわち、反応容器11において、有機材料の分解反応が進行すると、水素を生成すると共に、水や他のガス(二酸化炭素等)も生成される。また、上述の第3の実施の形態で述べた滅菌機構31に設けられている水投入口35aから投入された水は、反応容器11の内部にも存在する。
【0122】
このため、固液分離槽43では、水(液体)と混合した状態にある、水素生成終了後の一次排出物が、固体と液体とに分離される。なお、固体と液体とを分離する手法としては、フィルタを用いて分離する等、種々の手法を適用することが可能である。
【0123】
固液分離槽43には、固形物用配管45を介して、固形物最終処理手段としての固形物最終処理槽44が接続されている。固形物最終処理槽44は、一次排出物の固液分離が為された後の固体排出物を、水と二酸化炭素とに分離するものである。かかる固体排出物排出物は、固形物最終処理槽44において、所定の微生物を用いて、水と二酸化炭素とに分解される。
【0124】
用いる微生物としては、特願2001−167101号の特許出願で開示されるような、Bacillus amyloliquefaciens 148(受託番号;FERM P−18349)、Bacillus amyloliquefaciens 2414(受託番号;FERM P−18347)、Bacillus subtilis 237(受託番号;FERM P−18350)、菌株4.Bacillus licheniformis 136(受託番号;FERM P−18346)、菌株5.Bacillus licheniformis 2530(受託番号;FERM P−18348)が好適である。
【0125】
かかる微生物を用いた場合には、固体排出物を水と二酸化炭素とに良好に分解することが可能となる。しかしながら、固形物最終処理槽44で用いられる処理用微生物は、上述の菌株1〜5には限られず、上述の固体排出物を良好に水と二酸化炭素とに分解できるものであれば、どのような微生物を用いても良い。なお、以下の説明においては、これら菌株1〜5を含め、水と二酸化炭素とに分離する微生物を、微生物Bとして説明する。
【0126】
固形物最終処理槽44には、その内部に第3の攪拌手段としてのフィン46が設けられている。このフィン46により、固形物最終処理槽44の中における固体排出物は攪拌される。それによって、該固体排出物の水および二酸化炭素等への分解反応が促進される。なお、固形物最終処理槽44には、該フィン46を回転駆動させるためのモータ47が設けられている。
【0127】
また、固液分離槽43には、固形物最終処理槽44の他に、液体用配管48を介して、メタン発酵手段としてのメタン発酵槽49が接続されている。このメタン発酵槽49は、一次排出物の固液分離が為された後の液体排出物から、メタンを生成するものである。かかるメタン生成のために、メタン発酵槽49には、メタン菌を内部に予め投入した状態にしておく。それによって、液体排出物がメタン菌によって分解され、メタンガスを生成可能となる。なお、メタン菌としては、上述の第1の実施の形態で説明したメタン菌を用いることが可能である。
【0128】
このメタン発酵槽49には、その内部に第2の攪拌手段としてのフィン50が設けられている。フィン50は、該メタン発酵槽49に設けられているモータ51により回転駆動させられる。それによって、メタン発酵槽49の内部をフィン50で攪拌し、メタン発酵のための反応促進を図ることが可能となる。
【0129】
また、メタン発酵槽49の上端部には、メタン取出管路52の一端が接続されている。このメタン取出管路52は、その他端が不図示のメタン備蓄部に接続されている。それによって、メタン発酵槽49の内部で生成されるメタンを、取り出すことが可能となる。
【0130】
以上のような水素生成装置40を用いて水素を生成する方法を、図7に基づいて以下に説明する。
【0131】
図7に示すフローは、反応容器11において、有機材料から水素を生成した後に生じる一次排出物に対して、メタン生成のためのメタン発酵処理と、水と二酸化炭素とに分解する最終処理とを施す工程を示すものである。すなわち、図7に示すフローは、上述の第2の実施の形態における、ステップS10の後に為される処理工程を示すものである。
【0132】
まず、一次排出物は、排出配管42を介して固液分離槽43に導入される(ステップS21)。この固液分離槽43では、例えばフィルタの通過により、一次排出物を固体排出物と液体排出物とに分離する(ステップS22;固液分離工程に対応)。このうち、固体排出物は、固形物用配管45を介して固形物最終処理槽44に導入される(ステップS23)。また、液体排出物は、液体用配管48を介してメタン発酵槽49に導入される(ステップS24)。
【0133】
このうち、固形物最終処理槽45には、予め微生物Bが供給されている。このため、固体排出物は、微生物Bによって水と二酸化炭素に分解される(ステップS25;固形物最終処理工程に対応)。なお、固形物最終処理槽45の内部における固体排出物は、フィン46の駆動によって攪拌される。この攪拌によって、固体排出物は、分解反応が促進される。
【0134】
なお、固形物最終処理槽44で固体排出物の分解反応を進行させた場合、該固体排出物が水と二酸化炭素とに分解されることで、該固体排出物はほとんどなくなり、魚の骨等の、ごく一部が残るのみである。そして、残ったものである残渣は、二次排出物として排出される(ステップS26)。以上のようにして、固体排出物の最終処理のための分解反応が終了する。
【0135】
また、メタン発酵槽49にも、予めメタン菌が供給されている。それにより、液体排出物はメタン菌によって分解され、メタンを生成することが可能となる(ステップS27;メタン発酵工程に対応)。なお、メタンを生成する場合にも、メタン発酵槽49の内部にある液体排出物が攪拌される。以上の固形物最終処理槽44およびメタン発酵槽49の内部における分解処理を所定時間行ない、夫々十分に分解反応が進行したと判断されると、該反応を中断する。なお、メタン発酵槽49でも分解されない残渣も、二次排出物として排出される。以上のようにして、メタン生成のための分解反応も終了する。
【0136】
なお、上述の説明では、各ステップS23〜S28を、この順番通りに実行するようにしている。しかしながら、ステップS23の後に、ステップS25とステップS26が順次実行され、またステップS24の後に、ステップS27とステップS28が順次実行される条件を満たしさえすれば、各ステップS23〜S28の実行順序は、どのように行っても良い。
【0137】
このような構成の水素生成装置40によれば、水素生成に際して生じる一次排出物を用いて、メタンの生成を行うことができる。すなわち、水素生成のための分解反応終了後の一次排出物は、固液分離槽43によって固体排出物と液体排出物とに分離される。このうち、液体排出物を用いると、メタン発酵槽49の内部でのメタン菌の作用によって、メタンを生成することができる。そのため、有機材料を用いて一層効率的に燃料を生成することが可能となり、有機材料の有効活用を図ることができる。
【0138】
すなわち、本実施の形態の水素生成装置40によれば、反応容器11の内部で有機材料から水素を生成することができるのみならず、メタン発酵槽49の内部でメタンをも生成することが可能となる。
【0139】
また、固形物最終処理槽44では、一次排出物が分離された後の固体排出物を、良好に水と二酸化炭素とに、ほとんど完全に分解することが可能となる。このように、固形物最終処理槽44を設けることで、投入された固体排出物に関して、排出物(ゴミ)をほとんど生じさせず、理想的な状態で処理することができる。
【0140】
また、水素生成装置40は、上述のメタン発酵槽49に加えて、固形物最終処理槽44をも具備しているので、上述の菌株1〜5の微生物Bによって、固体排出物を水と二酸化炭素とに分解することができる。そして、この分解によって、該固形物最終処理槽44からは、ほとんど排出物(ゴミ)が生じない。そのため、本実施の形態の水素生成装置40では、生ゴミ処理装置としても、理想的なものである。
【0141】
また、上述のような、有機材料を水と二酸化炭素とに分解する微生物Bは、固形物最終処理槽44の内部で繰り返し何度でも利用することができる。そのため、固体排出物の処理に際して、新たな微生物Bを投入する必要がなく、ほとんどコストは掛からない。
【0142】
さらに、本実施の形態では、固形物最終処理槽44、およびメタン発酵槽49のいずれにも、フィン46,50が設けられている。そのため、これらフィン46,50を駆動させることによって、固形物最終処理槽44での固体排出物の分解反応、およびメタン発酵槽49の内部でのメタン発酵を促進することができる。それによって、効率的な固体排出物の最終処理と、効率的なメタン発酵とを行うことができる。
【0143】
以上、本発明の第1〜第4の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形実施可能である。
【0144】
上述の第1の実施の形態においては、食品関連廃棄物および/または生活関連廃棄物が含まれるバイオマスを用いて水素を生成する方法について説明している。しかしながら、水素を生成するための原料としては、かかる食品関連廃棄物および/または生活関連廃棄物が含まれるバイオマスに限られるものではない。例えば、廃棄物以外のエネルギ作物を用いる農業系資源、エネルギ植林を用いる林業系資源、畜産系資源、水産系資源等の、種々のバイオマスを用いて、水素を発生させるようにしても良い。
【0145】
また、上述の第1の実施の形態においても、上述の第2〜第4の実施の形態で述べたような、第1の攪拌手段、制御手段、培養液備蓄手段、微生物前培養手段、第1の攪拌手段、滅菌機構、固液分離手段、第2の攪拌手段、固形物最終処理手段、第3の攪拌手段、液体投入手段等、種々の手段を設けるようにしても良い。
【0146】
また、上述の第2〜第4の実施の形態では、フィン15は、反応容器11の内部に設けられているが、フィン15を省略する構成を採用しても良い。同様に、第4の実施の形態では、固形物最終処理槽44にフィン46、およびメタン発酵槽49にフィン50が、夫々設けられているが、フィン46、およびフィン50についても、夫々省略する構成を採用しても良い。
【0147】
また、上述の第2〜第4の実施の形態では、反応容器11の分解反応の終了は、分解開始からの反応時間と、反応進行時の温度と、pHの検出結果とに基づいて検知されている。しかしながら、分解反応の終了は、これに限られず、他の方法によって検知されても良い。また、例えば一定量の有機材料を反応容器11の内部に投入した場合には、定められた時間が経過した場合に、反応が終了したものと判断しても良い。
【0148】
また、上述の第2〜第4の実施の形態では、微生物前培養槽20に温度調整手段を設けたものが説明されているが、例えば外部雰囲気が適温に保たれる場合等には、かかる温度調整手段を省略する構成を採用しても良い。
【0149】
また、上述の第2〜第4の実施の形態において、上述の第1の実施の形態で述べたように、カーボンナノチューブを用いて水素を吸蔵するようにしても良い。同様に、上述の第2〜第4の実施の形態において、上述の第1の実施の形態で述べたように、圧縮処理によりメタンを貯蔵するようにしても良い。
【0150】
また、上述の第3および第4の実施の形態では、滅菌機構31は、煮沸部33と、加熱機構36を具備する構成として説明されているが、かかる構成ではなく、例えばマイクロウエーブ波を有機材料に照射する等の手段によって、該有機材料の滅菌処理を行う構成を採用しても良い。また、上述の第3および第4の実施の形態では、滅菌機構31に、水投入口35を設けるものが説明されているが、有機材料を煮沸せずに、該有機材料を単純に加熱する構成を採用しても良い。
【0151】
さらに、上述の第4の実施の形態では、上述の第3の実施の形態で述べた滅菌機構31に加えて、メタン生成機構41をも具備する構成が説明されている。しかしながら、滅菌機構31を具備せずに、メタン生成機構41を具備する構成を採用しても良い。また、メタン生成機構41を備える一方、固形物最終処理槽44(固形物最終処理手段)を省略する構成を採用しても良い。さらに、メタン生成機構41を備えずに、固形物最終処理槽44(固形物最終処理手段)のみを備える構成を採用しても良い。
【0152】
また、上述の第4の実施の形態においては、固形物最終処理槽44またはメタン発酵槽49の内部を、分解反応または発酵に適切な圧力と、温度に調整する構成を採用しても良い。
【0153】
また、上述の各実施の形態では、微生物前培養手段として微生物前培養槽20について述べているが、微生物前培養手段は微生物前培養槽20に限られるものではなく、増殖用培養液を供給した状態で微生物Aを前培養可能なもの(例えば、微生物前培養タンク等)であれば、どのようなものであっても良い。また、培養液備蓄手段としての培養液タンク21も、増殖用培養液を蓄えることが可能なもの(例えば、培養液備蓄槽等)であれば、どのようなものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明のバイオマス処理方法は、燃料電池等のエネルギ分野において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の第2の実施の形態に係る水素生成装置の構成を示す側断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る水素生成方法を示すフローチャートである。
【図3】図1の水素生成装置を用いて、有機材料とクロストリジウム属の微生物を反応させた場合の反応時間と水素発生量の関係の一例を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る水素生成装置の構成を示す側断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る水素生成方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る水素/メタン生成装置を示す側断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る水素生成方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0156】
10,30,40…水素生成装置
11…反応容器
12,32…配管状部材
12a,32a…材料投入口
13…微生物供給管路
14,23…調整弁
15…フィン(第1の攪拌手段の一部)
16…モータ(第1の攪拌手段の一部)
17…監視装置(制御手段)
20…微生物前培養槽(微生物前培養手段の一形態)
21…培養液タンク(培養液備蓄手段の一形態)
22…培養液供給管路
24…水素取出管路
31…滅菌機構
33…煮沸部
33a…空間部
35…水投入配管(液体投入手段の一形態)
35a…水投入口
36…加熱機構
37…圧力調整機構
41…メタン生成機構
43…固液分離槽(固液分離手段の一形態)
44…固形物最終処理槽(固形物最終処理手段の一形態)
46…フィン(第2の攪拌手段の一部)
47…モータ(第2の攪拌手段の一部)
49…メタン発酵槽(メタン発酵手段)
50…フィン(第3の攪拌手段の一部)
51…モータ(第3の攪拌手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを、Clostridium beijerinkii AM21B株、Clostridium sp.No.2株、Clostridium sp.X53株のうちの少なくとも1つを含む水素生成菌により水素発酵処理をして水素を回収し、さらに水素発酵処理後に発生する発酵液をメタン菌によるメタン発酵処理をしてメタンを回収すると共に、上記発酵液には少なくとも有機酸が含まれていることを特徴とするバイオマス処理方法。
【請求項2】
前記バイオマスには、食品関連廃棄物および/または生活関連廃棄物が含まれていることを特徴とする請求項1記載のバイオマス処理方法。
【請求項3】
前記水素発酵処理により回収された前記水素は、圧縮処理により液体状に設けられることを特徴とする請求項1または2記載のバイオマス処理方法。
【請求項4】
前記水素発酵処理により回収された前記水素は、カーボンナノチューブによって吸蔵されることを特徴とする請求項1または2記載のバイオマス処理方法。
【請求項5】
前記水素発酵処理により回収された前記水素は、水素吸蔵合金によって吸蔵されることを特徴とする請求項1または2記載のバイオマス処理方法。
【請求項6】
前記メタン発酵処理により回収された前記メタンは、圧縮処理により液体状に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のバイオマス処理方法。
【請求項7】
前記メタン菌として、Methanobacterium属、Methanococcus属、Methanosarcina属、Methanosaeta属、Methanohalophillus属に属する細菌のうちの少なくとも1つを用いて前記メタン発酵処理を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のバイオマス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−130511(P2007−130511A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180524(P2004−180524)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【特許番号】特許第3617528号(P3617528)
【特許公報発行日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(504232321)有限会社エムアイシー (2)
【出願人】(301035851)株式会社フレイン・エナジー (11)
【Fターム(参考)】