説明

バイオマス固形燃料およびその製造方法

【課題】 コスト高である木や、低カロリーな稲わら・籾殻・葦等、採算性および燃料としての特性に問題のある植物性材料を用い、採算性よくかつ高カロリーの固形燃料を提供すること。
【解決手段】 鶏糞等の家畜糞尿と植物性材料とからなる混合物、さらに炭が混合されて、これらが圧縮固化されてなる固形燃料とする。植物性材料には木の皮、木の皮以外の木材、稲わらもしくは葦その他の草本類、または籾殻等を適宜用いることができる。混合物は、家畜舎の敷き料であってもよい。混合物中にはさらに米糠を混合してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマス固形燃料およびその製造方法に係り、特に、植物バイオマス(以下、「植物性材料」ともいう。)と家畜糞尿を用いた、採算性および取扱い性に優れた、実用的なバイオマス固形燃料とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木・木の皮・稲わら・籾殻・葦等を原料に用いた固形燃料は、従来から既に存在している。一方また家畜糞尿も、燃料として既に利用されている。またバイオマス固形燃料に関しては従来、技術的な提案もなされている。
【0003】
たとえば後掲各特許文献1は、余剰汚泥余剰汚泥、畜産の糞尿等の有機廃棄物を利用した石炭代替燃料の提供を目的として、畜産糞尿等に水分量の少ない木屑等の増量成分を混合し、減圧下で発酵脱臭する工程、減圧下で加熱乾燥する工程を経て混合物を脱臭乾燥し、これに廃プラスチックからなる高熱量つなぎ成分を添加し、混練、圧縮さらに成形固形化して固形燃料とする技術を開示している。これにより、効果的な脱臭乾燥が可能となり、畜産糞尿等の廃棄に要していた多大な経費の削減を図れるとしている。
【0004】
また特許文献2は、オガ粉を用いたきのこの廃培地を圧縮成形して得たペレットを加熱・炭化させてペレット炭とする技術を開示しているが、オガ粉に粘結成分として家畜糞尿を混合し、ペレット炭とすることも可能な旨が言及されている。
【0005】
また特許文献3は、大量の畜産糞尿を短時間で効率よく処理でき、かつ品質の安定した畜産糞尿利用固形燃料の提供を目的として、発酵熱または敷料や木質系チップといった調整材により含水率60%以下に調整し、所定のスラリー状とした畜産糞尿物を、摂氏100度以上の油で揚げて固形燃料とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−195910号公報「有機廃棄物を用いた固形燃料及びその製造方法」
【特許文献2】特開2001−172642号公報「ペレット炭」
【特許文献3】実用新案登録第3143479号公報「畜産糞尿を用いた固形燃料」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、上述した木・木の皮・稲わら・籾殻・葦等を原料とした固形燃料はいずれも、採算性や燃料としての実用性に問題がある。特に木は、山からの搬出コストが高く、化石燃料と比べると割高であり、採算性が悪い。また、稲わら・籾殻・葦等はカロリーが低く、これらを単独で原料として用いる燃料では、実用的でない。また、家畜糞尿を利用する燃料は、燃焼ガスのにおいの強さが大いに問題である。さらに固形化していないものはハンドリングが悪い。
【0008】
また特許文献1開示技術は、家畜糞尿を固形燃料に用いる際の脱臭技術として減圧発酵脱臭、減圧加熱乾燥の工程を設けることを提案するが、これらの工程導入は費用面も含め容易なことではない。特許文献3のフライヤー利用技術も、導入は容易ではない上、工程中における悪臭発生という問題が容易に予想される。
【0009】
また特許文献2開示技術はきのこの廃培地有効利用が主眼であり、粘結成分として家畜糞尿混合は可能性としての言及に留まるものであるため、実際に家畜糞尿を利用するに際しての脱臭技術についてはまったく検討されていない。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点を除き、コスト高である木や、低カロリーな稲わら・籾殻・葦等、採算性および燃料としての特性に問題のある植物性材料を用い、具体的には他のバイオマス燃料すなわち家畜糞尿を併せ用いることによって、採算性よくかつ高カロリーの固形燃料を提供することである。また本発明の課題は、家畜糞尿を用いる場合に問題となる燃焼の際の悪臭を低減することのできる、採算性および取扱い性に優れ、かつ実用的なバイオマス固形燃料とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は上記課題について検討した結果、植物性材料と家畜糞尿にさらに炭を併用することによって当該課題を解決できることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0012】
(1) 家畜糞尿と植物性材料とからなる混合物が圧縮固化されてなる固形燃料。
(2) 前記植物性材料には、木の皮、木の皮以外の木材、稲わらもしくは葦その他の草本類、または籾殻のうち、少なくともいずれか一つが含まれることを特徴とする、(1)に記載の固形燃料。
(3) 前記混合物は、家畜舎の敷き料であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の固形燃料。
(4) 前記混合物中にはさらに炭が混合されていることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の固形燃料。
【0013】
(5) 前記植物性材料としてか否かに関わらず、前記混合物中にはさらに米糠が混合されていることを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の固形燃料。
(6) 前記家畜糞尿は鶏糞であることを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の固形燃料。
(7) 家畜糞尿および植物性材料を原料とし、各原料を必要に応じてサイズ調整し、また各原料を必要に応じて乾燥処理し、各原料を混合して混合物とし、該混合物を圧縮固化処理して固形燃料を得る、固形燃料製造方法。
(8) 前記混合物はさらに炭が混合されてなるものであることを特徴とする、(7)に記載の固形燃料製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバイオマス固形燃料とその製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、コスト高である木や、低カロリーな稲わら・籾殻・葦等、採算性および燃料特性に問題のある植物性材料を用いて、高カロリーで燃焼効率が良く、かつ低コストで採算性が良い固形燃料を提供することができる。特に植物性材料として木を用いる場合は、コストの高い木をコストの低い家畜糞尿を混合することによって、採算性の良い固形燃料を実現することができる。また本発明によれば、家畜糞尿を用いていても、燃焼の際の悪臭を低減することができ、取扱い性にも優れ、実用的である。
【0015】
また本発明のバイオマス固形燃料とその製造方法により得られる固形燃料は、ボイラ等燃焼装置を選ばず、どのような燃焼装置にも用いることができる。
従来の木質ペレットの燃焼では、燃焼灰はペレットの形状を保持したまま残るが、これは、その後の良好な燃焼には障害となっていた。したがって従来は、木質ペレット専用のボイラーが必要であった。
【0016】
しかし、本発明による固形燃料のうち炭入りのものは高温燃焼するため、燃焼灰はパウダー状となり、その後の燃焼の障害とならず、良好な燃焼が継続される。したがって、専用のボイラーは不要であり、ストーブ、ボイラー、熱風炉などどのような燃焼装置にも用いることができる。
【0017】
なおまた、炭を混合する本発明固形燃料においては、燃焼ガスが消臭されるだけではなく、硫化水素や亜硫酸ガスなどの腐食性ガスの発生も防止ないしは低減可能である。これにより、ボイラー等の燃焼装置は通常2〜3年程度で腐食してしまうところ、本発明固形燃料を用いる場合は、耐用年数を相当伸ばすことが可能と見込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の固形燃料を主として構成する要素の一つである家畜糞尿としては、鶏、豚、牛その他畜産業の対象となるあらゆる動物における糞尿が該当する。なお本発明では家畜糞尿を主要素の一つとしているが、人の糞尿をこれに替えてあるいは併用して用いることを、排除するものではない。
【0019】
また、同じく本発明の固形燃料を主として構成する要素の一つである植物性材料としては、木・木の皮・稲わら・籾殻・葦・その他の草本類その他特に限定なく、植物性の材料であれば広く該当する。
【0020】
また植物性材料は、一種類のみを用いても、二種類以上を併用してもよい。たとえば木の皮、木の皮以外の木材、稲わらもしくは葦その他の草本類、または籾殻を用いる場合、これらを単独でも、適宜の二種以上の組合せで用いてもよい。
【0021】
本発明の固形燃料は、かかる家畜糞尿と植物性材料とからなる混合物が、適宜の方法によって圧縮固化されてなるものである。ここで混合物は、圧縮固化のなされる時点で混合されて混合物となっているものであり、混合過程がいかなるものであるかは問われない。つまり、圧縮固化工程に供される際に、混合物の形態であれば、本発明の範囲内である。たとえば、家畜舎の床上に敷かれて用いられた敷料は、家畜糞尿と植物性材料との混合物である。また、家畜糞尿と植物性材料との混合比は、本発明においては特に限定されない。
【0022】
本発明の固形燃料は、前記混合物中にさらに、炭が混合されていることを主たる構成とする。かかる構成により、においの強い家畜糞尿が混合されていても、炭が混合されていることにで燃焼の際の燃焼温度が上がり、においの少ない燃焼排ガスとなり、悪臭発生を低減することができる。
【0023】
また、炭の混合によって、低いカロリーの稲わら・籾殻・葦等の低カロリーを、炭の高カロリーによって補うことができ、燃焼効率の良い固形燃料を得ることができる。
【0024】
また、炭の混合によって、燃焼ガスが消臭されるだけではなく、硫化水素や亜硫酸ガスなどの腐食性ガスの発生も防止ないしは低減できる。これは炭の混合により燃焼温度が高温化するからである。これにより、ボイラー等の燃焼装置の耐用年数を相当伸ばすことができる。従来の固形燃料であれば2〜3年で腐食してしまうところ、本発明燃料によれば、おそらくは装置の耐用年数を7〜8年にも伸ばすことが可能と見込まれる。
【0025】
本発明で混合する炭の種類は特に限定されない。木炭、その他の植物性材料を炭化させてなる炭等を好適に用いることができる。また、植物性以外の炭すなわち動物性の材料を炭化させてなる炭も、本発明からは排除されない。また、家畜糞尿と植物性材料との混合物に対して添加混合する炭の量も、特に限定されない。
【0026】
なおまた、本発明固形燃料の原料として、混合物中にはさらに米糠を混合することとしてもよい。米糠は、植物性材料として混合しても、あるいは他の植物性材料と家畜糞尿との混合物が形成されている事後に追加的に混合することとしてもよい。なお、米糠と炭を混合させた本発明固形燃料は、肥料として用いても良好な結果を得ることができる。
【0027】
本発明固形燃料を製造するには、上述のように家畜糞尿および植物性材料を原料とし、後で固形化しやすいよう各原料を必要に応じて固形化するサイズに合わせてサイズを調整し、また各原料は高含水率であるから必要に応じて適宜の乾燥処理をし、その後各原料を混合して混合物とし、混合物を圧縮固化処理する、という手順を行う。なお炭も、圧縮固形化処理に供する前に混合する。
【0028】
サイズ調整は粉砕機を用いた粉砕処理により行えばよい。また乾燥処理も、適宜の乾燥機を用いて、各原料それぞれ固化しやすい含水率に調整すればよい。大体、各原料とも、20〜30重量%程度の含水率とすればよいが、より低い方が好ましい。
【0029】
各原料は撹拌機を用いる等して充分に混合、撹拌し、そのようにして得られた混合物を造粒機すなわちペレタイザーに投入し、圧縮固形化する。ペレタイザーによる圧縮固形化すなわちペレット化は、たとえば断面径6mm程度、長さ10〜20mm程度の棒状とする等、固形燃料として適した形状およびサイズにて行えばよい。かかる圧縮固形化により、ハンドリング性が向上する。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明がかかる実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
牛舎に敷料として用いたおが屑に牛糞が混合された使用後敷料を用い、これを粉砕機にて粉砕し、水分20〜30重量%に含水率を調整し、充分に撹拌混合して得られた混合物を、ペレタイザーにて圧縮固形化し、径6mm、長さ10mm程度の固形燃料(ペレット)とした。
【0031】
[実施例2]
鶏舎に敷料として用いたおが屑に鶏糞が混合された使用後敷料を用い、これを粉砕機にて粉砕し、水分20〜30重量%に含水率を調整し、充分に撹拌混合して得られた混合物を、ペレタイザーにて圧縮固形化し、径6mm、長さ10mm程度の固形燃料(ペレット)とした。
【0032】
実施例1、2にて得られた固形燃料はいずれも、良好に固形化していたため、保存・運搬等ハンドリングに何ら問題がなかった。また、専用のボイラーではなく一般のボイラーを用いて良好に、高火力で燃焼された。また、燃焼中の悪臭もほとんど認められず、充分な実用性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、高カロリーで燃焼効率が良く、かつ低コストで採算性が良い固形燃料を提供することができ取扱い性にも優れ、実用的である。さらに、特に専用の燃焼装置を必要とすることなく、ストーブ、ボイラー、熱風炉等に広く用いることができる。
【0034】
また炭入りの本発明固形燃料の場合は、家畜糞尿を用いていても燃焼の際の悪臭を低減することができ、しかも高温燃焼が可能なため、腐食性ガスの発生も抑えることができる。
【0035】
本発明は、新規なバイオマス燃料として、今後出てくるCO排出権取引においても有望である。特にコストの高い木の固形燃料は、従来採算性が悪かったが、低コストの家畜糞尿を混合した固形燃料とすることにより、需要が増し、間伐材等木材の消費拡大にもつながり、林業および関連分野の活性化を図ることができる。
【0036】
従来、家畜糞尿は生産過剰と供給先減少の問題があったが、本発明により燃焼ガスのにおいの問題も解決できるため、低コストであることと相俟って、相当の需要が見込める。したがって畜産および関連分野においても、多大な寄与が可能である。
【0037】
また、炭混合による本発明固形燃料は、高カロリー低コストであるため、ビニールハウスなどの暖房にも好適に使用することができ、農業分野においても大きく貢献できる。以上述べたように本発明は、多岐に亘る分野において利用価値の高い発明である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜糞尿と植物性材料とからなる混合物が圧縮固化されてなる固形燃料。
【請求項2】
前記植物性材料には、木の皮、木の皮以外の木材、稲わらもしくは葦その他の草本類、または籾殻のうち、少なくともいずれか一つが含まれることを特徴とする、請求項1に記載の固形燃料。
【請求項3】
前記混合物は、家畜舎の敷き料であることを特徴とする、請求項1または2に記載の固形燃料。
【請求項4】
前記混合物中にはさらに炭が混合されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の固形燃料。
【請求項5】
前記植物性材料としてか否かに関わらず、前記混合物中にはさらに米糠が混合されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の固形燃料。
【請求項6】
前記家畜糞尿は鶏糞であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の固形燃料。
【請求項7】
家畜糞尿および植物性材料を原料とし、各原料を必要に応じてサイズ調整し、また各原料を必要に応じて乾燥処理し、各原料を混合して混合物とし、該混合物を圧縮固化処理して固形燃料を得る、固形燃料製造方法。
【請求項8】
前記混合物はさらに炭が混合されてなるものであることを特徴とする、請求項7に記載の固形燃料製造方法。


【公開番号】特開2010−189457(P2010−189457A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32085(P2009−32085)
【出願日】平成21年2月14日(2009.2.14)
【出願人】(597104994)北進産業機械株式会社 (4)
【Fターム(参考)】