バイオマス廃棄物由来の複合活性炭の製造方法及びこれを利用したメタンガス貯蔵材
【課題】竹林の包含する環境保全上の課題を解決するばかりでなく、竹由来の活性炭とバイオマス廃棄物として食品加工工場から廃棄されているカニ殻由来の複合活性炭の製造方法及びこれを利用したメタンガス貯蔵材を提供する。
【解決手段】少なくとも2種以上のバイオマス廃棄物を原料とし、アルカリ金属化合物を含浸させた後、不活性ガス流中で、昇温速度200℃/hにて500〜900℃まで昇温し、一段階で炭化及び賦活化させて複合活性炭を得る。原料のバイオマス廃棄物としてはカニ殻及び竹を使用し、得られた複合活性炭をメタンガスの貯蔵材として利用する。
【解決手段】少なくとも2種以上のバイオマス廃棄物を原料とし、アルカリ金属化合物を含浸させた後、不活性ガス流中で、昇温速度200℃/hにて500〜900℃まで昇温し、一段階で炭化及び賦活化させて複合活性炭を得る。原料のバイオマス廃棄物としてはカニ殻及び竹を使用し、得られた複合活性炭をメタンガスの貯蔵材として利用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種吸着材として使用される活性炭に関し、とくに生物由来の有機性資源であるバイオマス廃棄物を原料とした高比表面積を持つ複合活性炭の製造方法とこれを利用したメタンガス貯蔵材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ガスの主成分であるメタンは、最も簡単な構造の有機化合物の一つである。また、地球上で広く採取可能な天然のエネルギー資源であり、地中や沖合の海底に大量に存在し、石油や石炭等の他の化石燃料と比べて燃焼時のCO2排出量が少ないという性質上、地球温暖化防止を考慮した次世代のエネルギー源として有望視されている。
【0003】
わが国では、このメタンの貯蔵・運搬に際し、一般的に液化ガス(LNG)又は圧縮ガス(CNG)として取扱われ、そのために要するエネルギーや加工コストが嵩むという問題がある。そこで、本発明者らは、吸着天然ガス(ANG)に着目した。ANGとは、ガス吸着能を有する吸着材を充填させることで、ガス分子を常温かつ低圧で液体に近い状態で高密度貯蔵する技術である。
【0004】
現在、工業的に用いられている活性炭の代表的な原料には、植物系では木材、ヤシ殻、鉱物系では石炭、石油コークスなどがある。最近では、農業廃棄物、工業廃棄物、食品廃棄物などの有効利用法としてこれらを原料とする活性炭の製造が検討されている。しかしながら、一般的に最も優れた吸着性能を有するといわれるヤシ殻活性炭は、森林伐採によるヤシの減少に伴い今後の利用が困難になる惧れがある。このため、豊富な資源量と優れた吸着性能を有する活性炭の開発が嘱望されている。
【0005】
日本国内において広く生息する竹は成長が早いため他植生への侵入によって、広葉樹の成長が阻害され枯死している現状である。このため、放置された竹林は密生して荒廃するばかりでなく、周辺の里山や休耕田などに広がり環境保全上の問題となっており、伐採された竹の有効利用が嘱望されている。
【0006】
一方、カニ等の甲殻魚類の殻は、肥料、凝集剤、健康食品、化粧品などの原料として利用されているが、未だにそのまま廃棄処分されるものも多く、産業廃棄物削減、バイオマス有効利用の観点からカニ殻の新規用途開発、需要拡大が強く望まれている。そこで本発明らは、バイオマス廃棄物として水産加工工場から廃棄されているカニ殻と日本全国に広範囲に存在する竹を原料で活性炭を調製する点に着目し鋭意研究を行った。
【0007】
活性炭の製造方法としては、主にガス賦活法と薬品賦活法の二種類がある。ガス賦活法は、原料を炭化した後に二酸化炭素や水蒸気を使用して賦活を行う。まず有機物の原料に炭化処理を行い、炭化物に賦活処理を施して活性炭にする。例えば、木炭は木質バイオマスを無酸素状態で450〜650℃に熱分融(乾留)して作る。こうして得られた炭化材の内部には細孔が無数に開いた状態になっているため、細孔径も大きく吸着力も低い、この状態では吸着材としては不十分であるので、さらに賦活という操作をする。賦活は乾留して得られた木炭をさらに700℃以上の温度で水蒸気と反応(水性ガスシフト反応:一酸化炭素と水蒸気から二酸化炭素と水素を生成する反応)させる。通常800〜850℃の温度範囲で行い、この操作により炭化時にできた細孔よりもさらに小さい細孔が形成され、木炭の約10倍の吸着力を得ることができる。
【0008】
一方、薬品賦活法は、原料に対して、脱水・浸食作用のある薬品を用いることで炭化と賦活を同時に行う。また、ガス賦活と比較して活性炭の細孔径を制御しやすいため、高比表面積を有する活性炭を調製することができる。薬品賦活法では、例えば、浸食性を有する水酸化カリウム(KOH)や炭酸カリウム(K2CO3)を用いる。
【0009】
また、現在、木材以外のセルロース質物質を炭化して活性炭を製造することは広く行われている。例えば、おからを原料として活性炭を製造する方法(特許文献1参照。)。多孔質粉炭と酒類製造廃棄物を加配して混合して加熱し、多孔質炭化材を製造する技術(特許文献2参照。)。カニ殻、エビ殻等の甲殻から高比表面積を有する炭化物を得る方法が提案されている(特許文献3参照。)。また、特許文献4には、水酸化カリウムや炭酸カリウム等を用いて薬品賦活処理して得られる竹活性炭の製造方法。さらに、特許文献5にはメタンガスを活性炭で吸着貯蔵する方法が記載されている。
【0010】
【特許文献1】特公平7−39349号公報
【特許文献2】特公平7−80777号公報
【特許文献3】特公平7−88308号公報
【特許文献4】特許第3037355号公報
【特許文献5】特開2006−96673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、本発明は、竹林の包含する環境保全上の課題を解決するばかりでなく、竹由来の活性炭とバイオマス廃棄物として食品加工工場から廃棄されているカニ殻由来の複合活性炭の製造方法及びこれを利用したメタンガス貯蔵材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため本発明は、少なくとも2種以上のバイオマス廃棄物を原料とし、アルカリ金属化合物を含浸させた後、不活性ガス流中で、昇温速度200℃/hにて500〜900℃まで昇温し、一段階で炭化及び賦活化させた複合活性炭の製造方法であることを第1の特徴とし、原料のバイオマス廃棄物がカニ殻、もしくはエビ殻及び竹であることを第2の特徴とする。
【0013】
また、前記複合活性炭をメタンガスの貯蔵材として利用することを第3の特徴とし、さらに、竹とカニ殻の重量比が1:2であることを第4の特徴とし、さらに、炭化温度900℃、含浸比=1且つ3.5MPaの圧力でメタン吸着させることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
活性炭の炭化と賦活とを1段階の工程で行なうことができる。また、原料とするカニ殻と竹は容易且つ低コストで入手できると共に、大量のバイオマス廃棄物の有効活用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において出発原料として用いられる少なくとも2種以上のバイオマス廃棄物であるカニ殻と竹はそのまま粉砕して使用し、アルカリ金属化合物を用いて賦活処理する。本発明で用いるアルカリ金属化合物としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、少なくともその中から1種が選択されて使用される。
【0016】
上記した出発原料にアルカリ金属化合物を含浸させる際には、予め廃棄物を110℃で24時間乾燥させる。例えばカニ殻の場合にはミルを用いて粉砕したものを乾燥させる。次に乾燥済の廃棄物にアルカリ金属化合物と蒸留水とを加えて練り、さらに110℃で24時間程度乾燥させることによって含浸させる。
【0017】
アルカリ金属化合物の含浸率は(含浸したアルカリ金属化合物の重量)/(乾燥廃棄物の重量)で定義される。含浸率は他の反応条件等を考慮して適宜選択することが可能であり、典型的には0.5〜5.0である。本発明においては、含浸するアルカリ金属化合物の量を従来の炭化物製造方法と比較して大幅に低減させて高比表面積の吸着材を得ることが可能となった。
【0018】
上記の含浸処理の後、原料の炭化処理を行なう。ここで、本発明では炭化処理と賦活処理とが同時に進行する。炭化・賦活処理は、不活性ガス流中の高温で行なわれる。不活性ガス流としては一般的に窒素気流(流速150ml/min)が用いられ、500〜900℃まで昇温し、その温度において1時間保持して処理される。その後、窒素雰囲気下で室温まで冷却して得られた炭化物を洗浄し、高温(例えば110℃)で乾燥し活性炭(吸着材)が得られる。
【0019】
尚、本発明の複合活性炭は粉末で得られるが、キチン、キトサン、デンプン、糖蜜や高分子樹脂等の粘結剤を添加して造粒、又はゾルーゲル法によるセラミックスとの複合化などにより、高い強度を有する圧縮成形体と成すこともできる。
【0020】
また、本発明製造法で得られる活性炭の細孔分布は、炭化・賦活温度の制御によってメタンを吸着するのに最適な細孔構造に設計され、さらに2500m2/g以上の比表面積が得られる。
【0021】
以下本発明の実施の形態を下記実施例に基づいて説明するが、本発明の要旨が本実施例に限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0022】
[活性炭の調製]
竹、カニ殻を量りとり(竹:カニ殻=1:1、2:1、1:2)、炭酸カリウム(含浸比=0.5、1、2)と蒸留水を加えて混練し、110℃で24時間乾燥した。含比(IR)は炭酸カリウムの質量を混合試料の質量で除した値で定義した。乾燥後の混合試料を電気炉で、N2雰囲気下で昇温速度200℃/hで700、800、900℃まで昇温後、1時間保持した。炭化後の活性炭を5N塩酸と蒸留水で洗浄し、乾燥させた。N2吸脱着等温線を窒素ガス吸着測定装置により求め、比表面積・細孔容積・細孔分布の解析を行った。
【0023】
得られた複合活性炭を300℃、5h真空排気し前処理した後、メタン吸脱着等温線を高圧ガス吸着測定装置により298Kで測定した。複合活性炭の物性値を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
[活性炭の物性評価]
活性炭の細孔分布を図1のグラフに示す。表1と図1のグラフから明らかなように、竹:カニ殻=1:2、炭化温度900℃、含浸比=1の試料が比表面積、マイクロ孔容積、全細孔容積ともに最大値を示した。この活性炭は、原料を竹とした活性炭と比べて比表面積は約800m2/g、全細孔容積は約2.5倍も増加し、高性能な活性炭を調製することができた。
【0026】
[竹活性炭の解析(固定値:含水率=1)]
竹活性炭の細孔構造の評価、炭化・賦活温度が細孔構造に及ぼす影響を解析した。得られた吸着材を標準資料管にセットし300℃、1時間真空排気して前処理を行なった。前処理後、定容系吸着測定装置(SORPTOMATIC−1990、ファイソンズ)を用いて、竹活性炭の液体窒素温度(77K)での窒素の吸着等温線を測定した。測定した吸着等温線のデータをBET法及びt−plot法で解析して比表面積、細孔容積およびマイクロ孔容積を算出した。炭化温度の違いによる窒素吸着等温線の影響を図2のグラフに示す。グラフにおいてAdsは「吸着」を指し、Desは「脱着」を指し、PoはBET理論の飽和蒸気を指し、横軸のPoは相対圧を指す。尚、炭化・賦活温度を変化させるにあたり、含浸率を0.5とした。
【0027】
図2のグラフからに明らかなように、炭化温度の上昇とともに窒素吸着量が増加し、窒素吸脱着等温線がI+IV混合型に分類された。I+IV混合型に分類されたことから、micoporeとmesopore混合型の活性炭(吸着材)であると評価でき、図3及び図4のグラフから明らかなように、比表面積、細孔容積ともに増大し、竹活性炭の特徴としてマイクロ孔が多い活性炭であることが分かった。また、炭化・賦活温度800℃までは炭化・賦活温度の上昇に伴い、窒素吸着量は増加し、炭化・賦活温度700〜800℃間において窒素吸着量は急激に増加した。しかし、炭化・賦活温度800〜900℃では飽和窒素吸着量はわずかに増加したが、低相対圧付近における窒素吸着量は減少した。この結果から、炭化・賦活温度800〜900℃での過度の賦活により、マイクロ孔の消失およびメソ孔の生成が生じていることが分かる。
【0028】
すなわち、炭化・賦活温度800℃までは炭化・賦活温度の上昇に伴い、比表面積が増加したことが分かる。また、炭酸カリウムを含浸した場合、炭化・賦活温度の上昇に伴い比表面積および細孔容積ともに増加し、炭化・賦活温度900℃で最も高い比表面積の吸着材(活性炭)となった。このことから、高比表面積を有する吸着材を得る最適条件としては800℃と考えられる。
【0029】
[賦活剤の量が活性炭に及ぼす影響]
複合活性炭(竹とカニ殻の混合比=1:1、炭化温度P=800℃)へのアルカリ金属化合物の含浸率を変化させるにあたり、窒素流量150ml/min、炭化・賦活温度700℃、昇温速度200℃/h及び保持持間1時間の条件で調製を行なった。結果を図5及び図6のグラフに示す。尚、各グラフにおいて「IR」は「含浸率」を意味する。
【0030】
図5及び図6のグラフから分かるように、含浸率=1で最も高い比表面積及びマイクロ孔容積を有する複合活性炭(吸着材)が得られた。すなわち、このことから、高比表面積を有する吸着材を得る最適条件は含浸率=1と考えられる。
【0031】
また図7及び図8のグラフに示すように、炭化温度の上昇に伴い、比表面積が増加したことが分かる。そして、炭酸カリウムを含浸した場合、炭化・賦活温度の上昇に伴い比表面積および細孔容積ともに増加し、炭化・賦活温度900℃で最も高い比表面積の活性炭となった。このことから、高比表面積を有する吸着材を得る最適条件としては炭化温度=900℃と考えられる。
【0032】
[原料の混合比の影響]
複合活性炭の竹とカニ殻の混合比(重量比)を竹:カニ殻=2:1、1:1、1:2と変化させて、N2=吸脱着等温線と物性の評価を行った。これらの物性値を表1に、各複合活性炭のメタンの吸着等温線を図9のグラフに示す。表1及び図9のグラフから明らかなように、竹:カニ殻=1:2、炭化温度900℃、含浸比=1の活性炭が3.5MPaの圧力でメタンを最も吸着した。これは、メタンの吸着に対して比表面積、マイクロ孔容積、細孔分布が大きく関与していることを示唆している。
【0033】
以下、本発明の複合活性炭を利用したメタンガスを貯蔵材について解説する。
すなわち、活性炭の原料に竹とカニ殻を混合して用い、賦活剤としてK2CO3を作用させて高吸着能を有する複合活性炭を調製し、原料の混合比、炭化・賦活温度、含浸比の違いがメタンの吸着量及び活性炭の細孔構造におよぼす影響について検討を行った。
【0034】
[市販の活性炭及び竹活性炭との比較]
最適条件(混合比、炭化温度、含浸率)で複合活性炭を調製し、市販の各種活性炭(おがくず活性炭、ヤシ殻活性炭)、竹のみを使用した活性炭との物性を比較評価した、表2に市販の活性炭の物性評価を示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2から明らかなように、竹:カニ殻=1:2で調製した複合活性炭は、竹のみを使用した活性炭と比較して、比表面積は約800m2/g、全細孔容積は2.5倍、マイクロ孔容積は1.7倍の増加が認められ、高比表面積を有する活性炭(吸着材)が得られた。
【0037】
炭化温度の違いによるメタン吸着等温線(吸着温度:25℃)を図10のグラフに、市販の活性炭のメタン吸着等温線を図11のグラフに示す。これらのグラフから明らかなように、炭化温度の上昇に伴ってメタン吸着量が増加し、市販の各種活性炭と比較してメタン吸着量が1.5倍大きいことが分かった。
【0038】
[メタンガス吸着性能解析]
吸着材に対する比表面積が及ぼす影響とマイクロ孔容積が及ぼす影響を解析した。比表面積とメタン飽和吸着量との関係を図12のグラフに、マイクロ孔容積とメタン飽和吸着量との関係を図13のグラフに示す。比表面積及びマイクロ孔容積共に、その増加に伴いメタン吸着量も増加することが分かった。
【0039】
以下、本発明の構成をまとめると、
(1)調製条件−混合比
混合比がメタンの吸着量と細孔構造に及ぼす影響について検討した。竹:カニ殻の混合比を1:2、1:1、2:1の条件でメタンガス吸着実験を行った結果、1:2の活性炭がメタンガスを最も吸着した。また、比表面積2650m2/gという極大な値を示した。しかし、1:1と1:2では比表面積、細孔容積、細孔分布、メタン吸着量はほとんど変わらなかったことから、原料の混合比だけでは細孔構造の制御は難しいことが分かった。
(2)調製条件-炭化・賦活温度
炭化・賦活温度がメタン吸着量と細孔構造に及ぼす影響について検討した。700〜900℃の条件で調製した活性炭のメタンガス吸着実験を行った結果、900℃で調製した活性炭がメタンガスを最も吸着した。また、炭化・賦活温度は混合比、含浸率よりも細孔構造に及ぼす影響が大きいことが分かった。
(3)調製条件−含浸率
炭酸カリウムの含浸率がメタンの吸着量と細孔構造に及ぼす影響について検討した。各含浸率=0.5、1、2で調製した活性炭のメタンガス吸着実験を行った結果、含浸率=1で調製した活性炭がメタンガスを最も吸着した。また、含浸率を変えることで細孔構造が制御できることが分かった。
(4)メタンガスの吸着特性
上述のように、活性炭の調製条件を変えてメタンガスの吸着等温線を測定した結果、竹:カニ殻の混合比を1:2、炭化・賦活温度900℃、含浸比=1の条件で調製した活性炭がメタンの最大吸着量を示した。調製した活性炭の細孔構造の評価とメタン吸着等温線の測定結果より、活性炭のメタン吸着量は主にマイクロ孔容積と細孔径分布に影響されていることがわかった。しかし、この活性炭は両方の値が最大のものではなく、次点のものであった。おそらく、比表面積と細孔容積はある程度必要であるが、それに伴って細孔径分布がより重要であるということが考えられる。また、市販の活性炭との比較実験を行った結果、本研究で調製した活性炭は市販の活性炭の1.5倍近くの量のメタンガスを吸着した。
(5)市販の活性炭との比較
竹とカニ殻混合活性炭のなかで最も比表面積が高かった活性炭(混合比1:2、炭化温度900℃、含浸率1)と市販のヤシ殻活性炭と比較すると、比表面積は2.4倍、全細孔容積は5.0倍、マイクロ孔容積は3.0倍、メタン吸着量は1.5倍を示した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上、本発明によれば、バイオマス廃棄物である竹とカニ殻の有効活用が可能となる。また、竹とカニ殻との複合割合を変えることで、メタンガス以外のガス貯蔵材としての利用可能性も充分示唆されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】活性炭の細孔分布を示すグラフである。
【図2】竹活性炭の炭化温度の違いによる窒素吸脱着等温線の影響を示すグラフである。
【図3】竹活性炭の炭化温度の違いによる比表面積の影響を示すグラフである。
【図4】竹活性炭の炭化温度の違いによる細孔容積の影響を示すグラフである。
【図5】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の含水率の違いによる比表面積の影響を示すグラフである。
【図6】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の含水率の違いによる細孔容積の影響を示すグラフである。
【図7】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の炭化温度の違いによる比表面積の影響を示すグラフである。
【図8】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の炭化温度の違いによる細孔容積の影響を示すグラフである。
【図9】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)のN2吸脱着等温線を示すグラフである。
【図10】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の炭化温度の違いによるメタン吸着等温線を示すグラフである。
【図11】市販の活性炭のメタン吸着等温線を示すグラフである。
【図12】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の比表面積とメタン飽和吸着量との関係を示すグラフである。
【図13】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)のマイクロ孔容積とメタン飽和吸着量との関係を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種吸着材として使用される活性炭に関し、とくに生物由来の有機性資源であるバイオマス廃棄物を原料とした高比表面積を持つ複合活性炭の製造方法とこれを利用したメタンガス貯蔵材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ガスの主成分であるメタンは、最も簡単な構造の有機化合物の一つである。また、地球上で広く採取可能な天然のエネルギー資源であり、地中や沖合の海底に大量に存在し、石油や石炭等の他の化石燃料と比べて燃焼時のCO2排出量が少ないという性質上、地球温暖化防止を考慮した次世代のエネルギー源として有望視されている。
【0003】
わが国では、このメタンの貯蔵・運搬に際し、一般的に液化ガス(LNG)又は圧縮ガス(CNG)として取扱われ、そのために要するエネルギーや加工コストが嵩むという問題がある。そこで、本発明者らは、吸着天然ガス(ANG)に着目した。ANGとは、ガス吸着能を有する吸着材を充填させることで、ガス分子を常温かつ低圧で液体に近い状態で高密度貯蔵する技術である。
【0004】
現在、工業的に用いられている活性炭の代表的な原料には、植物系では木材、ヤシ殻、鉱物系では石炭、石油コークスなどがある。最近では、農業廃棄物、工業廃棄物、食品廃棄物などの有効利用法としてこれらを原料とする活性炭の製造が検討されている。しかしながら、一般的に最も優れた吸着性能を有するといわれるヤシ殻活性炭は、森林伐採によるヤシの減少に伴い今後の利用が困難になる惧れがある。このため、豊富な資源量と優れた吸着性能を有する活性炭の開発が嘱望されている。
【0005】
日本国内において広く生息する竹は成長が早いため他植生への侵入によって、広葉樹の成長が阻害され枯死している現状である。このため、放置された竹林は密生して荒廃するばかりでなく、周辺の里山や休耕田などに広がり環境保全上の問題となっており、伐採された竹の有効利用が嘱望されている。
【0006】
一方、カニ等の甲殻魚類の殻は、肥料、凝集剤、健康食品、化粧品などの原料として利用されているが、未だにそのまま廃棄処分されるものも多く、産業廃棄物削減、バイオマス有効利用の観点からカニ殻の新規用途開発、需要拡大が強く望まれている。そこで本発明らは、バイオマス廃棄物として水産加工工場から廃棄されているカニ殻と日本全国に広範囲に存在する竹を原料で活性炭を調製する点に着目し鋭意研究を行った。
【0007】
活性炭の製造方法としては、主にガス賦活法と薬品賦活法の二種類がある。ガス賦活法は、原料を炭化した後に二酸化炭素や水蒸気を使用して賦活を行う。まず有機物の原料に炭化処理を行い、炭化物に賦活処理を施して活性炭にする。例えば、木炭は木質バイオマスを無酸素状態で450〜650℃に熱分融(乾留)して作る。こうして得られた炭化材の内部には細孔が無数に開いた状態になっているため、細孔径も大きく吸着力も低い、この状態では吸着材としては不十分であるので、さらに賦活という操作をする。賦活は乾留して得られた木炭をさらに700℃以上の温度で水蒸気と反応(水性ガスシフト反応:一酸化炭素と水蒸気から二酸化炭素と水素を生成する反応)させる。通常800〜850℃の温度範囲で行い、この操作により炭化時にできた細孔よりもさらに小さい細孔が形成され、木炭の約10倍の吸着力を得ることができる。
【0008】
一方、薬品賦活法は、原料に対して、脱水・浸食作用のある薬品を用いることで炭化と賦活を同時に行う。また、ガス賦活と比較して活性炭の細孔径を制御しやすいため、高比表面積を有する活性炭を調製することができる。薬品賦活法では、例えば、浸食性を有する水酸化カリウム(KOH)や炭酸カリウム(K2CO3)を用いる。
【0009】
また、現在、木材以外のセルロース質物質を炭化して活性炭を製造することは広く行われている。例えば、おからを原料として活性炭を製造する方法(特許文献1参照。)。多孔質粉炭と酒類製造廃棄物を加配して混合して加熱し、多孔質炭化材を製造する技術(特許文献2参照。)。カニ殻、エビ殻等の甲殻から高比表面積を有する炭化物を得る方法が提案されている(特許文献3参照。)。また、特許文献4には、水酸化カリウムや炭酸カリウム等を用いて薬品賦活処理して得られる竹活性炭の製造方法。さらに、特許文献5にはメタンガスを活性炭で吸着貯蔵する方法が記載されている。
【0010】
【特許文献1】特公平7−39349号公報
【特許文献2】特公平7−80777号公報
【特許文献3】特公平7−88308号公報
【特許文献4】特許第3037355号公報
【特許文献5】特開2006−96673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、本発明は、竹林の包含する環境保全上の課題を解決するばかりでなく、竹由来の活性炭とバイオマス廃棄物として食品加工工場から廃棄されているカニ殻由来の複合活性炭の製造方法及びこれを利用したメタンガス貯蔵材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため本発明は、少なくとも2種以上のバイオマス廃棄物を原料とし、アルカリ金属化合物を含浸させた後、不活性ガス流中で、昇温速度200℃/hにて500〜900℃まで昇温し、一段階で炭化及び賦活化させた複合活性炭の製造方法であることを第1の特徴とし、原料のバイオマス廃棄物がカニ殻、もしくはエビ殻及び竹であることを第2の特徴とする。
【0013】
また、前記複合活性炭をメタンガスの貯蔵材として利用することを第3の特徴とし、さらに、竹とカニ殻の重量比が1:2であることを第4の特徴とし、さらに、炭化温度900℃、含浸比=1且つ3.5MPaの圧力でメタン吸着させることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
活性炭の炭化と賦活とを1段階の工程で行なうことができる。また、原料とするカニ殻と竹は容易且つ低コストで入手できると共に、大量のバイオマス廃棄物の有効活用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において出発原料として用いられる少なくとも2種以上のバイオマス廃棄物であるカニ殻と竹はそのまま粉砕して使用し、アルカリ金属化合物を用いて賦活処理する。本発明で用いるアルカリ金属化合物としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、少なくともその中から1種が選択されて使用される。
【0016】
上記した出発原料にアルカリ金属化合物を含浸させる際には、予め廃棄物を110℃で24時間乾燥させる。例えばカニ殻の場合にはミルを用いて粉砕したものを乾燥させる。次に乾燥済の廃棄物にアルカリ金属化合物と蒸留水とを加えて練り、さらに110℃で24時間程度乾燥させることによって含浸させる。
【0017】
アルカリ金属化合物の含浸率は(含浸したアルカリ金属化合物の重量)/(乾燥廃棄物の重量)で定義される。含浸率は他の反応条件等を考慮して適宜選択することが可能であり、典型的には0.5〜5.0である。本発明においては、含浸するアルカリ金属化合物の量を従来の炭化物製造方法と比較して大幅に低減させて高比表面積の吸着材を得ることが可能となった。
【0018】
上記の含浸処理の後、原料の炭化処理を行なう。ここで、本発明では炭化処理と賦活処理とが同時に進行する。炭化・賦活処理は、不活性ガス流中の高温で行なわれる。不活性ガス流としては一般的に窒素気流(流速150ml/min)が用いられ、500〜900℃まで昇温し、その温度において1時間保持して処理される。その後、窒素雰囲気下で室温まで冷却して得られた炭化物を洗浄し、高温(例えば110℃)で乾燥し活性炭(吸着材)が得られる。
【0019】
尚、本発明の複合活性炭は粉末で得られるが、キチン、キトサン、デンプン、糖蜜や高分子樹脂等の粘結剤を添加して造粒、又はゾルーゲル法によるセラミックスとの複合化などにより、高い強度を有する圧縮成形体と成すこともできる。
【0020】
また、本発明製造法で得られる活性炭の細孔分布は、炭化・賦活温度の制御によってメタンを吸着するのに最適な細孔構造に設計され、さらに2500m2/g以上の比表面積が得られる。
【0021】
以下本発明の実施の形態を下記実施例に基づいて説明するが、本発明の要旨が本実施例に限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0022】
[活性炭の調製]
竹、カニ殻を量りとり(竹:カニ殻=1:1、2:1、1:2)、炭酸カリウム(含浸比=0.5、1、2)と蒸留水を加えて混練し、110℃で24時間乾燥した。含比(IR)は炭酸カリウムの質量を混合試料の質量で除した値で定義した。乾燥後の混合試料を電気炉で、N2雰囲気下で昇温速度200℃/hで700、800、900℃まで昇温後、1時間保持した。炭化後の活性炭を5N塩酸と蒸留水で洗浄し、乾燥させた。N2吸脱着等温線を窒素ガス吸着測定装置により求め、比表面積・細孔容積・細孔分布の解析を行った。
【0023】
得られた複合活性炭を300℃、5h真空排気し前処理した後、メタン吸脱着等温線を高圧ガス吸着測定装置により298Kで測定した。複合活性炭の物性値を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
[活性炭の物性評価]
活性炭の細孔分布を図1のグラフに示す。表1と図1のグラフから明らかなように、竹:カニ殻=1:2、炭化温度900℃、含浸比=1の試料が比表面積、マイクロ孔容積、全細孔容積ともに最大値を示した。この活性炭は、原料を竹とした活性炭と比べて比表面積は約800m2/g、全細孔容積は約2.5倍も増加し、高性能な活性炭を調製することができた。
【0026】
[竹活性炭の解析(固定値:含水率=1)]
竹活性炭の細孔構造の評価、炭化・賦活温度が細孔構造に及ぼす影響を解析した。得られた吸着材を標準資料管にセットし300℃、1時間真空排気して前処理を行なった。前処理後、定容系吸着測定装置(SORPTOMATIC−1990、ファイソンズ)を用いて、竹活性炭の液体窒素温度(77K)での窒素の吸着等温線を測定した。測定した吸着等温線のデータをBET法及びt−plot法で解析して比表面積、細孔容積およびマイクロ孔容積を算出した。炭化温度の違いによる窒素吸着等温線の影響を図2のグラフに示す。グラフにおいてAdsは「吸着」を指し、Desは「脱着」を指し、PoはBET理論の飽和蒸気を指し、横軸のPoは相対圧を指す。尚、炭化・賦活温度を変化させるにあたり、含浸率を0.5とした。
【0027】
図2のグラフからに明らかなように、炭化温度の上昇とともに窒素吸着量が増加し、窒素吸脱着等温線がI+IV混合型に分類された。I+IV混合型に分類されたことから、micoporeとmesopore混合型の活性炭(吸着材)であると評価でき、図3及び図4のグラフから明らかなように、比表面積、細孔容積ともに増大し、竹活性炭の特徴としてマイクロ孔が多い活性炭であることが分かった。また、炭化・賦活温度800℃までは炭化・賦活温度の上昇に伴い、窒素吸着量は増加し、炭化・賦活温度700〜800℃間において窒素吸着量は急激に増加した。しかし、炭化・賦活温度800〜900℃では飽和窒素吸着量はわずかに増加したが、低相対圧付近における窒素吸着量は減少した。この結果から、炭化・賦活温度800〜900℃での過度の賦活により、マイクロ孔の消失およびメソ孔の生成が生じていることが分かる。
【0028】
すなわち、炭化・賦活温度800℃までは炭化・賦活温度の上昇に伴い、比表面積が増加したことが分かる。また、炭酸カリウムを含浸した場合、炭化・賦活温度の上昇に伴い比表面積および細孔容積ともに増加し、炭化・賦活温度900℃で最も高い比表面積の吸着材(活性炭)となった。このことから、高比表面積を有する吸着材を得る最適条件としては800℃と考えられる。
【0029】
[賦活剤の量が活性炭に及ぼす影響]
複合活性炭(竹とカニ殻の混合比=1:1、炭化温度P=800℃)へのアルカリ金属化合物の含浸率を変化させるにあたり、窒素流量150ml/min、炭化・賦活温度700℃、昇温速度200℃/h及び保持持間1時間の条件で調製を行なった。結果を図5及び図6のグラフに示す。尚、各グラフにおいて「IR」は「含浸率」を意味する。
【0030】
図5及び図6のグラフから分かるように、含浸率=1で最も高い比表面積及びマイクロ孔容積を有する複合活性炭(吸着材)が得られた。すなわち、このことから、高比表面積を有する吸着材を得る最適条件は含浸率=1と考えられる。
【0031】
また図7及び図8のグラフに示すように、炭化温度の上昇に伴い、比表面積が増加したことが分かる。そして、炭酸カリウムを含浸した場合、炭化・賦活温度の上昇に伴い比表面積および細孔容積ともに増加し、炭化・賦活温度900℃で最も高い比表面積の活性炭となった。このことから、高比表面積を有する吸着材を得る最適条件としては炭化温度=900℃と考えられる。
【0032】
[原料の混合比の影響]
複合活性炭の竹とカニ殻の混合比(重量比)を竹:カニ殻=2:1、1:1、1:2と変化させて、N2=吸脱着等温線と物性の評価を行った。これらの物性値を表1に、各複合活性炭のメタンの吸着等温線を図9のグラフに示す。表1及び図9のグラフから明らかなように、竹:カニ殻=1:2、炭化温度900℃、含浸比=1の活性炭が3.5MPaの圧力でメタンを最も吸着した。これは、メタンの吸着に対して比表面積、マイクロ孔容積、細孔分布が大きく関与していることを示唆している。
【0033】
以下、本発明の複合活性炭を利用したメタンガスを貯蔵材について解説する。
すなわち、活性炭の原料に竹とカニ殻を混合して用い、賦活剤としてK2CO3を作用させて高吸着能を有する複合活性炭を調製し、原料の混合比、炭化・賦活温度、含浸比の違いがメタンの吸着量及び活性炭の細孔構造におよぼす影響について検討を行った。
【0034】
[市販の活性炭及び竹活性炭との比較]
最適条件(混合比、炭化温度、含浸率)で複合活性炭を調製し、市販の各種活性炭(おがくず活性炭、ヤシ殻活性炭)、竹のみを使用した活性炭との物性を比較評価した、表2に市販の活性炭の物性評価を示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2から明らかなように、竹:カニ殻=1:2で調製した複合活性炭は、竹のみを使用した活性炭と比較して、比表面積は約800m2/g、全細孔容積は2.5倍、マイクロ孔容積は1.7倍の増加が認められ、高比表面積を有する活性炭(吸着材)が得られた。
【0037】
炭化温度の違いによるメタン吸着等温線(吸着温度:25℃)を図10のグラフに、市販の活性炭のメタン吸着等温線を図11のグラフに示す。これらのグラフから明らかなように、炭化温度の上昇に伴ってメタン吸着量が増加し、市販の各種活性炭と比較してメタン吸着量が1.5倍大きいことが分かった。
【0038】
[メタンガス吸着性能解析]
吸着材に対する比表面積が及ぼす影響とマイクロ孔容積が及ぼす影響を解析した。比表面積とメタン飽和吸着量との関係を図12のグラフに、マイクロ孔容積とメタン飽和吸着量との関係を図13のグラフに示す。比表面積及びマイクロ孔容積共に、その増加に伴いメタン吸着量も増加することが分かった。
【0039】
以下、本発明の構成をまとめると、
(1)調製条件−混合比
混合比がメタンの吸着量と細孔構造に及ぼす影響について検討した。竹:カニ殻の混合比を1:2、1:1、2:1の条件でメタンガス吸着実験を行った結果、1:2の活性炭がメタンガスを最も吸着した。また、比表面積2650m2/gという極大な値を示した。しかし、1:1と1:2では比表面積、細孔容積、細孔分布、メタン吸着量はほとんど変わらなかったことから、原料の混合比だけでは細孔構造の制御は難しいことが分かった。
(2)調製条件-炭化・賦活温度
炭化・賦活温度がメタン吸着量と細孔構造に及ぼす影響について検討した。700〜900℃の条件で調製した活性炭のメタンガス吸着実験を行った結果、900℃で調製した活性炭がメタンガスを最も吸着した。また、炭化・賦活温度は混合比、含浸率よりも細孔構造に及ぼす影響が大きいことが分かった。
(3)調製条件−含浸率
炭酸カリウムの含浸率がメタンの吸着量と細孔構造に及ぼす影響について検討した。各含浸率=0.5、1、2で調製した活性炭のメタンガス吸着実験を行った結果、含浸率=1で調製した活性炭がメタンガスを最も吸着した。また、含浸率を変えることで細孔構造が制御できることが分かった。
(4)メタンガスの吸着特性
上述のように、活性炭の調製条件を変えてメタンガスの吸着等温線を測定した結果、竹:カニ殻の混合比を1:2、炭化・賦活温度900℃、含浸比=1の条件で調製した活性炭がメタンの最大吸着量を示した。調製した活性炭の細孔構造の評価とメタン吸着等温線の測定結果より、活性炭のメタン吸着量は主にマイクロ孔容積と細孔径分布に影響されていることがわかった。しかし、この活性炭は両方の値が最大のものではなく、次点のものであった。おそらく、比表面積と細孔容積はある程度必要であるが、それに伴って細孔径分布がより重要であるということが考えられる。また、市販の活性炭との比較実験を行った結果、本研究で調製した活性炭は市販の活性炭の1.5倍近くの量のメタンガスを吸着した。
(5)市販の活性炭との比較
竹とカニ殻混合活性炭のなかで最も比表面積が高かった活性炭(混合比1:2、炭化温度900℃、含浸率1)と市販のヤシ殻活性炭と比較すると、比表面積は2.4倍、全細孔容積は5.0倍、マイクロ孔容積は3.0倍、メタン吸着量は1.5倍を示した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上、本発明によれば、バイオマス廃棄物である竹とカニ殻の有効活用が可能となる。また、竹とカニ殻との複合割合を変えることで、メタンガス以外のガス貯蔵材としての利用可能性も充分示唆されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】活性炭の細孔分布を示すグラフである。
【図2】竹活性炭の炭化温度の違いによる窒素吸脱着等温線の影響を示すグラフである。
【図3】竹活性炭の炭化温度の違いによる比表面積の影響を示すグラフである。
【図4】竹活性炭の炭化温度の違いによる細孔容積の影響を示すグラフである。
【図5】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の含水率の違いによる比表面積の影響を示すグラフである。
【図6】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の含水率の違いによる細孔容積の影響を示すグラフである。
【図7】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の炭化温度の違いによる比表面積の影響を示すグラフである。
【図8】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の炭化温度の違いによる細孔容積の影響を示すグラフである。
【図9】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)のN2吸脱着等温線を示すグラフである。
【図10】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の炭化温度の違いによるメタン吸着等温線を示すグラフである。
【図11】市販の活性炭のメタン吸着等温線を示すグラフである。
【図12】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)の比表面積とメタン飽和吸着量との関係を示すグラフである。
【図13】本発明に係る活性炭(竹とカニ殻の混合炭)のマイクロ孔容積とメタン飽和吸着量との関係を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種以上のバイオマス廃棄物を原料とし、アルカリ金属化合物を含浸させた後、不活性ガス流中で、昇温速度200℃/hにて500〜900℃まで昇温し、一段階で炭化及び賦活化させたことを特徴とする複合活性炭の製造方法。
【請求項2】
複合活性炭の原料バイオマス廃棄物がカニ殻、もしくはエビ殻及び竹であることを特徴とする請求項1記載の複合活性炭の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の製造方法により製造した複合活性炭からなるメタンガス貯蔵材。
【請求項4】
竹とカニ殻の重量比が1:2であることを特徴する請求項3記載のメタンガス貯蔵材。
【請求項5】
炭化温度900℃、含浸比=1且つ3.5MPaの圧力でメタン吸着させることを特徴とする請求項4記載のメタンガス貯蔵材。
【請求項1】
少なくとも2種以上のバイオマス廃棄物を原料とし、アルカリ金属化合物を含浸させた後、不活性ガス流中で、昇温速度200℃/hにて500〜900℃まで昇温し、一段階で炭化及び賦活化させたことを特徴とする複合活性炭の製造方法。
【請求項2】
複合活性炭の原料バイオマス廃棄物がカニ殻、もしくはエビ殻及び竹であることを特徴とする請求項1記載の複合活性炭の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の製造方法により製造した複合活性炭からなるメタンガス貯蔵材。
【請求項4】
竹とカニ殻の重量比が1:2であることを特徴する請求項3記載のメタンガス貯蔵材。
【請求項5】
炭化温度900℃、含浸比=1且つ3.5MPaの圧力でメタン吸着させることを特徴とする請求項4記載のメタンガス貯蔵材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−16693(P2011−16693A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163212(P2009−163212)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【Fターム(参考)】
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