説明

バイオマーカーとしてのマイクロRNAを用いた婦人科がんの診断・治療選択

【課題】特定のマイクロRNA(miRNA)を婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法、該miRNAを用いた婦人科がんの判定方法、および婦人科がんの判定キット等を提供する。
【解決手段】特定の塩基配列を有するマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAを、バイオマーカーとして使用する、婦人科がんの判定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、婦人科がんにおけるマイクロRNA(microRNA;miRNA)の発現プロファイルとその用途に関する。より詳細には、特定のマイクロRNAを婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法、婦人科がんの判定方法、婦人科がんの判定キット等に関する。
【背景技術】
【0002】
婦人科がんとは、子宮頸部、子宮体部、卵巣、卵管、腟、外陰部に発生するがんであり、女性の悪性腫瘍の4分の1を超える割合を占める。主なものとして、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんが挙げられる(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0003】
近年、がんに関する基礎および臨床的研究が飛躍的に進み、がんは遺伝子の異常に起因する疾患であることが明らかとなった。その結果、がんの病態に関連する様々な遺伝子や蛋白を分子標的にした治療が試みられている。また、子宮がんの早期発見を目的としたがん検診が普及し、早期治療により子宮頸がんの死亡率は低下している。しかし、一方では、初婚年齢の上昇や妊娠回数の減少による女性ホルモン刺激の増大、食事の欧米化といった生活様式の変化、あるいは、性活動の若年化によるパピローマウイルス感染の増大に伴い、子宮体がん、卵巣がんや若年者子宮頸がんについては、その罹患率及び死亡率が上昇している(非特許文献2参照)。特に子宮体がんはその罹患率や死亡率のみならず、疾患の若年齢化も進行している(非特許文献3参照)。
【0004】
婦人科がんの診断は、一般的に各種画像検査(超音波検査、CT、MRI、PET等)を施行し、更に内診や子宮鏡などで進展を評価する。術前に細胞診及び組織診ができない卵巣がんを除く子宮頸がん及び子宮体がんでは、術前の生検で病理組織学的診断を付ける。病期は、病変の進展と病理組織学的診断により決定される。卵巣がんの病期は、開腹手術で摘出された卵巣の病理組織学的診断が得られるまで、決定できない。また、画像検査による病変の進展と病理学的診断が乖離していることがあり(非特許文献4参照)、卵巣腫瘍に際しては、常に悪性の可能性を念頭に置く必要がある。このように、婦人科がんの場合、画像診断では、がんの質的診断が不可能であり、良性疾患との鑑別が困難な場面も多々ある。また、確定診断として用いられる細胞診・組織診による病理学的診断については、基本的なヘマトキシリンエオジン(HE)染色に各種免疫染色を組み合わせて用いたとしても、進行度・進達度の判断に困難な場合がある上、予後の予測まではできないのが現状である。発症・予後の予測に関しては、いくつかの因子が報告されてはいるものの(特許文献4、5、6参照)、現在のところ感度と特異性の双方を十分に持つバイオマーカーは存在しない。
【0005】
一方、婦人科がんの治療方針は、主に病期と病理組織学的所見により決定される。良性腫瘍に対しては、根治可能な一期的摘出術か、小病変で臨床症状がなければ経過観察が行われる。一方、悪性腫瘍に対しては手術、抗がん剤による化学療法、放射線治療を単独もしくは併用して施行する。子宮頸がんと子宮体がんでは、手術で子宮を摘出せざるを得ないこともあるが、これは若年の未産婦においては妊孕力を喪失するため重大な問題となる(非特許文献5参照)。卵巣がんは自覚症状が乏しく、進行が早いため、発見される時にはすでに進行していることが多い。また、有効なスクリーニング法が確立しておらず(非特許文献6参照)、細胞の採取ができないためにがん検診もできないので、早期発見は極めて困難である。さらに、たとえ早期に発見された場合でも、隣接臓器である子宮を合併切除することが原則である。卵巣がんはあらゆる年齢で発症し、特に若年者の治療においては妊孕力を喪失するため、子宮頸がん・子宮体がんと同様に重大な問題となる(非特許文献7参照)。いずれのがんにおいても、進行がんでは術後に化学療法が施行される場合が多いが、骨髄抑制による免疫力の低下、消化器症状に よる脱水、電解質異常など副作用が強いことが問題となっている。さらに、治療効果と予後に個人差が認められ、これらはがん組織における遺伝子変異とその発現量の異常に起因していると考えられている(非特許文献8参照)。
【0006】
前述のとおり、生活様式の変化により、婦人科がんの増加が予測されるため、それらの発症予測や発症診断についてのバイオマーカーの開発が期待されている。子宮頸がんの治療後の経過観察で用いられているバイオマーカーとして、Ca19−9やCa125などが知られているものの、その陽性率はおよそ30%と低く、これまで、婦人科がんに関する有用なバイオマーカーの報告はなされていない(特許文献2及び3参照)。
【0007】
ところで、マイクロRNAは、細胞内に存在し、タンパクへの翻訳がなされない、長さ22塩基程度の1本鎖RNAである(非特許文献9参照)。1993年に線虫C.elegansにおいて、その後、2001年には脊椎動物でも発見され、種を越えて保存されている。現在、ヒトゲノム上には1000種類近くのマイクロRNAの存在が予測され、これまでに700種類以上のマイクロRNAがクローニングされている。また、マイクロRNAは、ゲノム上のタンパク翻訳領域の30%に対し遺伝子制御を行っていると推測されており(非特許文献10参照)、それ故、マイクロRNAの機能破綻は各種の疾患を引き起こす可能性がある。しかしながら、現在までに、その生物学的役割が明らかになったものはごく僅かに過ぎず、今後の解析が待たれている。婦人科がんに関するマイクロRNAの報告として、がん細胞株を用いたものは散見されるが(非特許文献11、12参照)、患者臨床検体を用いての報告は現在までわずかに存在するのみである(非特許文献13参照)。非特許文献13には、様々なステージとグレードの子宮体がん組織と、子宮内膜正常組織との間の、mRNAとマイクロRNAの発現を比較し、発現量が有意に異なる90種のmRNAと13種のマイクロRNAを同定したと記載されている。13種のマイクロRNAのうち、miR-185、miR-106a、miR-181a、miR-210、miR-423、miR-103、miR-107、miR-let7cの8種のマイクロRNAは、子宮体がんにおいて発現が増加し、miR-let7i、miR-221、miR-30c、miR-152、miR-193の5種のマイクロRNAは、子宮体がんにおいて発現が低下したと記載されている。しかし、上記の13種のマイクロRNAを子宮体がんの診断に用い得ることは非特許文献13には記載されておらず、また、非特許文献13において同定された上記の13種のマイクロRNAは、本件マイクロRNAとは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2002−527723号公報
【特許文献2】特表2003−512010号公報
【特許文献3】特開2002−22746号公報
【特許文献4】特開2005−532314号公報
【特許文献5】米国特許第6855350号公報
【特許文献6】米国特許第7045292号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Whitcomb BP. Gynecologic Malignancies. Surg Clin North Am. 2008; 88: 301-317.
【非特許文献2】植田政嗣 子宮頸部癌の診断法−最近のトピックス−医学検査2003;522:179-186.
【非特許文献3】植田政嗣 子宮体部癌の診断法−最近のトピックス−医学検査 2003; 52:691-700.
【非特許文献4】Ayhan A, Guven S, Guven ES, Kucukali T. Is there a correlation between tumor marker panel and tumor size and histopathology in well staged patients with borderline ovarian tumors? Acta Obstet Gynecol Scand. 2007; 86: 484-490.
【非特許文献5】Amant F, Van Calsteren K, Vergote I, Ottevanger N. Gynecologic oncology in pregnancy. Crit Rev Oncol Hematol. 2008. [Epub ahead of print]
【非特許文献6】Jacobs IJ, Menon U. Progress and challenges in screening forearly detection of ovarian cancer. Mol Cell Proteomics. 2004; 3: 355-366.
【非特許文献7】Chan JK, Tian C, Monk BJ, Herzog T, Kapp DS, Bell J, Young RC; Gynecologic Oncology Group. Prognostic factors for high-risk early-stage epithelial ovarian cancer: a Gynecologic Oncology Group study. Cancer. 2008; 112: 2202-2010.
【非特許文献8】Marsh S. Cancer pharmacogenetics. Methods Mol Biol. 2008; 448: 437-446.
【非特許文献9】Barbarotto E, Schmittgen TD, Calin GA. microRNAs and cancer:profile, profile, profile. Int J Cancer. 2008; 122(5): 969-977.
【非特許文献10】Zeng Y, Yi R, Cullen BR. miRNAs and small interfering RNAscan inhibit mRNA expression by similar mechanisms. Proc Nat Acad Sci. 2003; 100:9779-9784.
【非特許文献11】Jiang J, Lee EJ, Gusev Y, Schmittgen TD. Real-time expression profiling of microRNA precursors in human cancer cell lines. Nucleic Acids Res. 2005; 28: 5394-5403.
【非特許文献12】Tsuda N, Kawano K, Efferson CL, Ioannides CG. Synthetic microRNA and double-stranded RNA targeting the 3'-untranslated region of HER-2/neumRNA inhibit HER-2 protein expression in ovarian cancer cells. Int J Oncol. 2005; 27: 1299-1306.
【非特許文献13】Boren T, Xiong Y, Hakam A, Wenham R, Apte S, Wei Z, KamathS, Chen DT, Dressman H, Lancaster JM. MicroRNAs and their target messenger RNAsassociated with endometrial carcinogenesis. Gynecol Oncol. 2008. [Epub ahead ofprint]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、特定のマイクロRNAを婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法、婦人科がんの判定方法、婦人科がんの判定キット等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述したように、非特許文献13には、子宮体がんとの関連が示唆される13種のマイクロRNAが開示されている。しかし、非特許文献13において同定された上記の13種のマイクロRNAは、本件マイクロRNAとは異なる上、上記の13種のマイクロRNAを子宮体がんの診断に用い得ることは非特許文献13には記載されていない。また、非特許文献で解析の対象となったマイクロRNAは335種と十分ではなかった。このような状況下で、本発明者らは、子宮体がん組織と子宮体ポリープ(子宮体良性腫瘍)組織との間で、723種のマイクロRNAを対比し、特定のマイクロRNAが子宮体がん組織において異常発現していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、(1)miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAを婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法や、(2)miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584が、それぞれ配列番号1〜27、50〜63に示されるヌクレオチド配列において1又は2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする上記(1)に記載の方法に関する。
【0013】
また本発明は、(3)以下の工程を備えたことを特徴とする婦人科がんの判定方法:(A)婦人科検体組織中又は被検体の血液中のRNAを抽出する工程:(B)抽出したRNA中の、miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584から選択される1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定する工程:(C)コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の正常被検体の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:や、(4)miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584が、それぞれ配列番号1〜27、50〜63に示されるヌクレオチド配列において1又は2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする上記(3)に記載の婦人科がんの判定方法や、(5)抽出したRNA中の、miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、 miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-885-5p及びmiR-888からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して増加している場合に婦人科がんであると評価することを特徴とする上記(3)又は(4)に記載の婦人科がんの判定方法や、(6)抽出したRNA中の、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して低下している場合に婦人科がんであると評価することを特徴とする上記(3)又は(4)に記載の婦人科がんの判定方法に関する。
【0014】
さらに本発明は、(7)miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定することができる、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを含んでいることを特徴とする婦人科がんの判定キットや、(8)miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブを備えたことを特徴とする婦人科がんの判定キットや、(9)miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584が、それぞれ配列番号1〜27、50〜63に示されるヌクレオチド配列において1又は2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする上記(7)又は(8)に記載の判定キットに関する。
【0015】
さらにまた本発明は、(10)以下の工程を含むことを特徴とする婦人科がん治療薬のスクリーニング方法:(A)婦人科がんに罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:(B)前記非ヒト動物における婦人科がん組織中又は血液中の、miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定する工程:(C)コントロールとしての、被検物質を未投与の場合におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:や、(11)miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584が、それぞれ配列番号1〜27、50〜63に示されるヌクレオチド配列において1又は2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする上記(10)に記載のスクリーニング方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の婦人科がんの判定方法や、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法によると、迅速かつ正確に婦人科がんを判定することができる。また、本発明の婦人科がんの判定キットや、婦人科がんの判定に使用する方法によると、婦人科がんであるかどうかを迅速かつ正確に判定することができる。さらに、本発明の婦人科がん治療薬のスクリーニング方法によると、婦人科がん治療薬を効率的にスクリーニングすることができる。特に、被検体が婦人科がんに罹患している場合に、被検体の血液中の濃度も変化するマイクロRNAの場合は、採取が極めて容易な血液サンプルを利用することができるため、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法や、婦人科がんの判定方法等における迅速性や簡便性が特に優れている。なお、本件マイクロRNA等についてさらに研究が進めば、婦人科がんの発症・進展・予後予測や治療が可能となることで、現在の婦人科がん臨床のさまざまな問題点を解決する突破口となることが期待できる。また、マイクロRNAの発現は腫瘍組織特異的であることが知られており、婦人科原発不明がんの原発部位の特定にも有用となる可能性がある。さらに治療に際しては、薬剤や放射線治療への抵抗性が診断できれば、患者個人ごとに有効な治療法を選択する個別化治療にまで発展させ得る可能性を含んでいる。正確な診断や予後の予測は、余計な検査や患者の必要以上の通院を減らすことが期待でき、医療経済効果も大きいと予想される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】マイクロRNAの発現プロファイル解析のサンプルの概要をまとめた図である。
【図2】サンプル由来のトータルRNAについて行なった、UVを用いた品質検査の結果を示す図である。
【図3】サンプル由来のトータルRNAについて行なった、Bio-Analyzer RNA6000を用いた品質検査の結果を示す図である。
【図4】子宮体がん組織で発現が増加するマイクロRNA(miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*及びmiR-193b*)の、各サンプルにおけるそれらのマイクロRNAの相対的発現量を示す図である。なお、各パネルの棒グラフは、それぞれ左からpolyp;cancer(1);cancer(2);cancer(3)の各サンプルにおける相対発現量を示す。
【図5】子宮体がん組織で発現が低下するマイクロRNA(miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-337-3p、miR-337-5p及びmiR-127-3p)の、各サンプルにおけるそれらのマイクロRNAの相対的発現量を示す図である。なお、各パネルの棒グラフは、それぞれ左からpolyp;cancer(1);cancer(2);cancer(3)の各サンプルにおける相対発現量を示す。
【図6】子宮体の非がん組織あるいはがん組織における、let-7 familyの相対的発現量を示す図である。なお、各パネルの棒グラフは、それぞれ左からpolyp;cancer(1);cancer(2);cancer(3)の各サンプルにおける相対発現量を示す。
【図7】子宮体の非がん組織あるいはがん組織における、miR-17-92 clusterの相対的発現量を示す図である。なお、各パネルの棒グラフは、それぞれ左からpolyp;cancer(1);cancer(2);cancer(3)の各サンプルにおける相対発現量を示す。
【図8】子宮体の非がん組織あるいはがん組織における、miR-15及びmiR-16の相対的発現量を示す図である。なお、各パネルの棒グラフは、それぞれ左からpolyp;cancer(1);cancer(2);cancer(3)の各サンプルにおける相対発現量を示す。
【図9】マイクロRNAの発現プロファイル解析のサンプルの概要をまとめた図である。
【図10】サンプル由来のトータルRNAについて行なった、UVおよびBio-Analyzer RNA6000を用いた品質検査の結果を示す図である。
【図11】子宮体がん組織で発現が増加するマイクロRNA(miR-135a*、miR-137、miR-138、miR-203、miR-205及びmiR-488)の、各サンプルにおけるそれらのマイクロRNAの相対的発現量を示す図である。なお、各パネルの棒グラフは、それぞれ左から“42(normal)”(子宮内膜正常組織)、“06-072(G1Ib)”、“05-034(G1Ib)”、“04-010(G3IIIc)”、“06-082(G3IIIc)”の各サンプルにおける相対発現量を示す。
【図12】子宮体がん組織で発現が増加するマイクロRNA(miR-489、miR-629*、miR-643、miR-885-5p及びmiR-888)の、各サンプルにおけるそれらのマイクロRNAの相対的発現量を示す図である。なお、各パネルの棒グラフは、それぞれ左から“42(normal)”(子宮内膜正常組織)、“06-072(G1Ib)”、“05-034(G1Ib)”、“04-010(G3IIIc)”、“06-082(G3IIIc)”の各サンプルにおける相対発現量を示す。
【図13】子宮体がん組織で発現が低下するマイクロRNA(miR-34c-5p、miR-127-3p、miR-299-5p、miR-323-3p、miR-337-5p、miR-376b、miR-411、miR-424及びmiR-432)の、各サンプルにおけるそれらのマイクロRNAの相対的発現量を示す図である。なお、各パネルの棒グラフは、それぞれ左から“42(normal)”(子宮内膜正常組織)、“06-072(G1Ib)”、“05-034(G1Ib)”、“04-010(G3IIIc)”、“06-082(G3IIIc)”の各サンプルにおける相対発現量を示す。
【図14】子宮体がん組織で発現が低下するマイクロRNA(miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584)の、各サンプルにおけるそれらのマイクロRNAの相対的発現量を示す図である。なお、各パネルの棒グラフは、それぞれ左から“42(normal)”(子宮内膜正常組織)、“06-072(G1Ib)”、“05-034(G1Ib)”、“04-010(G3IIIc)”、“06-082(G3IIIc)”の各サンプルにおける相対発現量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法としては、miR-592(マイクロRNA-592)、miR-629*(マイクロRNA-629*)、miR-517a(マイクロRNA-517a)、miR-205(マイクロRNA-205)、miR-184(マイクロRNA-184)、miR-509-5p(マイクロRNA-509-5p)、miR-135a*(マイクロRNA-135a*)、miR-137(マイクロRNA-137)、miR-602(マイクロRNA-602)、miR-186*(マイクロRNA-186*)、miR-181a-2*(マイクロRNA-181a-2*)、miR-193b*(マイクロRNA-193b*)、miR-377*(マイクロRNA-377*)、miR-449b(マイクロRNA-449b)、miR-449a(マイクロRNA-449a)、miR-369-3p(マイクロRNA-369-3p)、miR-323-3p(マイクロRNA-323-3p)、miR-329(マイクロRNA-329)、miR-299-5p(マイクロRNA-299-5p)、miR-34b(マイクロRNA-34b)、miR-411(マイクロRNA-411)、miR-34c-5p(マイクロRNA-34c-5p)、miR-376b(マイクロRNA-376b)、miR-885-5p(マイクロRNA-885-5p)、miR-337-3p(マイクロRNA-337-3p)、miR-337-5p(マイクロRNA-337-5p)、miR-127-3p(マイクロRNA-127-3p)、miR-138(マイクロRNA-138)、miR-203(マイクロRNA-203)、miR-488(マイクロRNA-488)、miR-489(マイクロRNA-489)、miR-643(マイクロRNA-643)、miR-888(マイクロRNA-888)、miR-424(マイクロRNA-424)、miR-432(マイクロRNA-432)、miR-433(マイクロRNA-433)、miR-450a(マイクロRNA-450a)、miR-503(マイクロRNA-503)、miR-542-3p(マイクロRNA-542-3p)、miR-542-5p(マイクロRNA-542-5p)、及び、miR-584(マイクロRNA-584)からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNA(以下、「本件マイクロRNA」ともいう。)を、子宮体がん等の婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法である限り特に制限はされず、具体的には、本発明の婦人科がんの判定方法や、本発明の婦人科がんの判定に使用する方法や、本発明の婦人科がん治療薬のスクリーニング方法を例示することができる。
【0019】
上記の婦人科がんとは、子宮頸部、子宮体部、卵巣、膣、外陰部に発生するがんを意味する。これらの婦人科がんの中でも、子宮頸部や子宮体部のがんを好適に例示することができ、中でも子宮体部のがんをより好適に例示することができる。上記がんの種類としては、初発でも再発でも特に制限されないが、初発のがんをさらに好適に例示することができる。
【0020】
本件マイクロRNAの由来となる生物としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。ヒト由来の本件マイクロRNAであるmiR-592(配列番号1)、miR-629*(配列番号2)、miR-517a(配列番号3)、miR-205(配列番号4)、miR-184(配列番号5)、miR-509-5p(配列番号6)、miR-135a*(配列番号7)、miR-137(配列番号8)、miR-602(配列番号9)、miR-186*(配列番号10)、miR-181a-2*(配列番号11)、miR-193b*(配列番号12)、miR-377*(配列番号13)、miR-449b(配列番号14)、miR-449a(配列番号15)、miR-369-3p(配列番号16)、miR-323-3p(配列番号17)、miR-329(配列番号18)、miR-299-5p(配列番号19)、miR-34b(配列番号20)、miR-411(配列番号21)、miR-34c-5p(配列番号22)、miR-376b(配列番号23)、miR-885-5p(配列番号24)、miR-337-3p(配列番号25)、miR-337-5p(配列番号26)、miR-127-3p(配列番号27)、miR-138(配列番号50)、miR-203(配列番号51)、miR-488(配列番号52)、miR-489(配列番号53)、miR-643(配列番号54)、miR-888(配列番号55)、miR-424(配列番号56)、miR-432(配列番号57)、miR-433(配列番号58)、miR-450a(配列番号59)、miR-503(配列番号60)、miR-542-3p(配列番号61)、miR-542-5p(配列番号62)及びmiR-584(配列番号63)の各ヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1〜27、50〜63に示される。マイクロRNAの配列は特に哺乳動物間では保存性が高く、上記の本件マイクロRNAはヒト以外の哺乳動物においてもヒトと同様の発現プロファイルを示すと考えられる。なお、例えばマウス由来の本件マイクロRNAであるmiR-592(配列番号45)、miR-449b(配列番号46)、miR-369-3p(配列番号47)、miR-329(配列番号48)及びmiR-411(配列番号49)の各ヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号45〜49に示される。
【0021】
また、本件マイクロRNAには、配列番号1〜27、50〜63に示されるヌクレオチド配列において1又は2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAが便宜上含まれる。上記の「1又は2個以上」としては、1〜5個が好ましく、1〜3個がより好ましく、1〜2個が特に好ましく、1個がさらに好ましい。なお、上記の欠失等されたヌクレオチド配列からなるRNAが、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するかどうかは、例えば後述のマイクロアレイ法や定量PCR法により容易に確認することができる。なお、ヒト以外の上記の各生物からの本件マイクロRNAの配列は、GenBank等のデータベースに登録されている情報に基づいて確認又は特定することができる。
【0022】
本発明の婦人科がんの判定方法としては、(A)婦人科検体組織中又は被検体の血液中のRNAを抽出する工程:(B)抽出したRNA中の、本件マイクロRNA量を測定する工程:(C)コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の正常被検体の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を備えている限り特に制限されないが、抽出したRNA中の、miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-885-5p及びmiR-888からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して増加している場合に子宮体がん等の婦人科がんであると評価し、及び/又は、抽出したRNA中の、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して低下している場合に子宮体がん等の婦人科がんであると評価する方法を好適に例示することができる。なお、上記工程(A)において婦人科検体組織を用いた場合は、上記工程(C)におけるコントロールとして、検体組織と同種の正常組織を用い、上記工程(A)において被検体の血液を用いた場合は、上記工程(C)におけるコントロールとして、被検体と同種の正常被検体の血液を用いる。また、本明細書におけるマイクロRNAの発現量としては、サンプル間のばらつきを補正するために適切な内部標準遺伝子で補正した相対発現量を用いることがより正確な判定を行なう観点から好ましい。内部標準遺伝子としては特に制限されないが、RNU48、RNU6b、snRNA(核内低分子RNA)、及び、snoRNA(核小体低分子RNA)からなる群から選ばれる1種又は2種以上の遺伝子を例示することができる。
【0023】
上記(A)工程におけるRNAを抽出する方法としては、婦人科検体組織中又は被検体の血液中から、マイクロRNAを含むRNAを抽出する方法である限り特に制限されず、例えば、mirVana miRNA Isolation Kit(Applied Biosystems社製)を添付のプロトコールにしたがって用いることによって、マイクロRNAを含むトータルRNAを抽出する方法を好適に例示することができる。上記の婦人科検体組織としては、婦人科がんの判定の対象となる生物由来の、子宮頸部、子宮体部、卵巣、膣、外陰部から選択される組織である限り特に制限されず、上記生物としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。
【0024】
上記(B)工程における本件マイクロRNAの発現量を測定する方法としては、マイクロRNAを含むRNA中の本件マイクロRNA量を同定し得る方法である限り特に制限されず、例えば本発明の子宮体がん等の婦人科がんの判定キット、すなわち、本件マイクロRNAの発現量を測定することができる、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを含んでいる婦人科がんの判定キットや、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットを備えた婦人科がんの判定キットや、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブとを備えた婦人科がんの判定キットを用いる方法や;本発明の子宮体がん等の婦人科がんの判定に使用する方法、すなわち、本件マイクロRNAの発現量を測定することができる、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを婦人科がんの判定に使用するマイクロアレイ法や、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットを婦人科がんの判定に使用する定量PCR法や、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブとを、婦人科がんの判定に使用する定量PCR法(蛍光プローブ法);を好適に例示することができる。
【0025】
上記のマイクロアレイ法としては、本件マイクロRNAの発現量を測定することが可能である限り特に制限されないが、組織から抽出したRNAをラベル(好ましくは蛍光ラベル)で標識し、そのRNAを、同定対象とするマイクロRNAに相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド(好ましくはDNA)又はその一部からなるプローブが固定されたマイクロアレイに接触させてハイブリダイゼーションを行った後、マイクロアレイを洗浄して、マイクロアレイ上に残ったマイクロRNAの発現量を測定する方法を例示することができる。
【0026】
上記の核酸配列のヌクレオチドの種類としては、本発明における所定のマイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限されないが、安定性が高いことからDNAであることが好ましい。また、上記のポリヌクレオチドの一部の長さとしては、本発明における所定のマイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限されないが、ハイブリダイゼーションの安定性を確保する観点から、10〜100merであることが好ましく、10〜40merであることがより好ましい。なお、上記のポリヌクレオチド又はその一部は、当該技術分野において周知の方法を用いて化学合成等することにより得ることができる。
【0027】
上記のポリヌクレオチド又はその一部を固定するアレイとしては特に制限されないが、ガラス基板やシリコン基板等を好適に例示することができ、ガラス基板をより好適に例示することができる。上記のポリヌクレオチド又はその一部をアレイに固定する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0028】
また、本発明のマイクロアレイを含んでいる婦人科がんの判定キットには、前述のマイクロアレイの他に、例えばRNAのラベル化反応に用いる試薬、ハイブリダイゼーション反応に用いる試薬、洗浄に用いる試薬、組織からのRNA抽出に用いる試薬等の、マイクロアレイ法に用いる試薬などの任意の要素をさらに含んでいてもよい。
【0029】
そして、マイクロアレイ法としては、Agilent Human miRNA V2 (Agilent Technologies社製)をAgilent Technologies社のmiRNA Microarray protocol Version 1.5に記載の方法に従って用い、DNA Microarray Scanner (Agilent Technologies社製)でマイクロRNAの発現量を測定する方法をより具体的に例示することができる。上記のポリヌクレオチド又はその一部からなるプローブが固定されたマイクロアレイは、測定対象とする本件マイクロRNAの配列情報に基づいてポリヌクレオチドを合成し、それを市販のアレイに固定するなどして作製することができる。
【0030】
上記の定量PCR法としては、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットを用いる方法であり、かつ、本件マイクロRNAの発現量を測定することが可能である限り特に制限されず、アガロース電気泳動法、SYBRグリーン法、蛍光プローブ法等の通常の定量PCR法を用いることができるが、定量の精度や信頼性の点で、蛍光プローブ法が最も好ましい。
【0031】
定量PCR法におけるプライマーセットとは、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマー(ポリヌクレオチド)の組合せを意味する。上記プライマーとしては、本件マイクロRNAの配列を増幅し得る限り特に制限されないが、本発明における所定のマイクロRNAの配列の5’側の一部の配列からなるプライマー(フォワードプライマー)と、そのマイクロRNAの配列の3’側の一部の配列に相補的な配列からなるプライマー(リバースプライマー)とからなるプライマーセットを例示することができる。ここで、5’側とは、成熟型マイクロRNAの配列において比較した場合に、リバースプライマーに対応する配列よりも、5’側であることを意味し、3’側とは、成熟型マイクロRNAの配列において比較した場合に、フォワードプライマーに対応する配列よりも、3’側であることを意味する。
【0032】
マイクロRNAの5’側の配列として、好ましくは、そのマイクロRNAの配列の中央の核酸よりも5’側の配列を例示することができ、マイクロRNAの3’側の配列として、好ましくは、そのマイクロRNAの配列の中央の核酸よりも3’側の配列を例示することができる。また、それぞれのプライマーの長さとしては、マイクロRNAを増幅し得る限り特に制限されないが、7〜10merのポリヌクレオチドであることが好ましい。なお、上記プライマーであるポリヌクレオチドのヌクレオチドの種類としては、安定性が高いことからDNAであることが好ましい
【0033】
上記の蛍光プローブとしては、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含んでいる限り特に制限されず、TaqMan(登録商標)プローブ法(FRET原理を利用したものも含む)や、サイクリングプローブ法に用いうる蛍光プローブを好適に例示することができ、特にTaqMan(登録商標)プローブ法(FRET原理を利用したものも含む)に用いうる蛍光プローブをより好適に例示することができる。TaqMan(登録商標)プローブ法(FRET原理を利用したものを除く)や、サイクリングプローブ法に用いうる蛍光プローブとしては、5’側に蛍光色素を標識し、3’側に消光物質を標識した蛍光プローブを例示することができ、FRET原理を利用した蛍光プローブとしては、5’側と3’側に、それぞれドナー色素とアクセプター色素を標識した蛍光プローブを例示することができる。上記の蛍光色素、消光物質、ドナー色素、アクセプター色素等は、市販のものを適宜使用することができる。
【0034】
上記の蛍光プローブにおける核酸配列のヌクレオチドの種類としては、本件マイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り、特に制限されないが、安定性が高いことからDNAであることが好ましい。また、上記のポリヌクレオチドの一部の長さとしては、本発明における所定のマイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り、特に制限されないが、ハイブリダイゼーションの安定性を確保する観点から、10mer以上であることが好ましく、15mer以上であることがより好ましく、対象とするマイクロRNAの全長のヌクレオチド数から1〜3mer少ないヌクレオチド数であることがさらに好ましい。
【0035】
上記プライマーセットや、上記の蛍光プローブは、その配列情報に基づき当該技術分野において周知の方法を用いて化学合成等することにより得ることができる。上記のプライマーセットや蛍光プローブを用いた定量PCRの具体的な方法としては、TaqMan(登録商標)マイクロRNA Assays(Applied Biosystems社製)を、添付のプロトコールにしたがって使用する方法を好適に例示することができる。また、プライマーセットと蛍光プローブとを備えた本発明の婦人科がんの判定キットには、前述のプライマーセットの他に、例えばポリメラーゼ等の定量PCR反応に用いる試薬などの任意の要素をさらに含んでいてもよい。
【0036】
上記(C)工程のコントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織(例えば検体組織が婦人科検体組織である場合は、非がんである婦人科組織)又は被検体と同種の正常被検体の血液(例えば被検体がヒトである場合は、婦人科がん患者ではないヒトの血液)におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する方法におけるコントロールとしては、より正確な評価が可能となることから、検体組織と同一個体の非がん組織(非がん部位)であることが好ましい。なお、コントロールとしての検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の正常被検体の血液は、検体組織又は被検体の血液を採取する際にかならずしも採取する必要はなく、非がん組織中又は正常被検体の血液中の本件マイクロRNAの発現量についてあらかじめ検量線を作成し、それとの比較・評価を行なってもよい。上記の非がん組織としては、ポリープ等の良性腫瘍組織や、正常組織を好適に例示することができる。
【0037】
このように検体組織中又は被検体の血液中のRNAに含まれるマイクロRNAの発現量に基づいて、その検体組織又はその被検体が婦人科がんであるかどうか(その検体組織が婦人科がんであるか、又は、その被検体が婦人科がんに罹患しているかどうか)を判定することができる。前記のように、本件マイクロRNAのうち、miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-885-5p及びmiR-888については、コントロールと比較してその発現量が増加している場合に婦人科がんであると判定することができ、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584については、コントロールと比較してその発現量が低下している場合に婦人科がんであると判定することができる。
【0038】
本件マイクロRNAの中でも、miR-137、miR-138、miR-203、miR-205、miR-488、miR-489、miR-643、miR-885-5p、miR-888は、がん組織における平均発現量が非がん組織における発現量の5倍以上と、発現量の差が大きいため、婦人科がんであるかどうかをより正確に判定することが可能である点で好ましい。また、2種類以上の本件マイクロRNAの発現量を測定してコントロールと比較・評価することにより、子宮体がん等の婦人科がんであるかどうかをより正確に判定することが可能となる点で好ましい。なお、本発明者らの別発明に関するPCT出願であるPCT/JP2009/002629(バイオマーカーとしてのマイクロRNAを用いた頭頸部腫瘍の診断・治療選択)では、被検体が頭頸部腫瘍に罹患している場合に、被検体の血液中の濃度も変化するマイクロRNA(例えばmiR-196aなど)が実際に見い出された。婦人科がん組織において発現が増加又は低下する本件マイクロRNAの中にも、被検体が婦人科がんに罹患している場合に被検体の血液中の濃度も変化するマイクロRNAが存在する可能性はきわめて高いと考えられる。本件マイクロRNAの中でも、被検体が婦人科がんに罹患している場合に、被検体の血液中の濃度も変化するマイクロRNAは、採取が極めて容易な血液サンプルを利用することができるため、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法や、婦人科がんの判定方法等における迅速性や簡便性が特に優れている点で、極めて好ましい。本件マイクロRNAの中で、被検体が婦人科がんに罹患している場合に被検体の血液中の濃度も変化するものがいずれであるかは、婦人科がんに罹患している被検体の血液中の本件マイクロRNA濃度と、婦人科がんに罹患していない正常被検体の血液中の本件マイクロRNA濃度を比較することによって、容易に見い出すことができる。
【0039】
婦人科がんであると判定する場合の本件マイクロRNAの発現量の増加の程度としては、例えば、コントロールに対する割合として好ましくは100%以上、より好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上の増加であることを挙げることができ、婦人科がんであると判定する場合の本件マイクロRNAの発現量の低下の程度としては、例えば、コントロールに対する割合として好ましくは50%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは90%以上の低下であることを挙げることができる。
【0040】
また、本発明の婦人科がんの判定方法は、上記(A)〜(C)工程に加えて、さらに(D)抽出したRNA中のlet-7 family、miR-17-92 cluster、miR-15、及びmiR-16からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定し、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織における前記マイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を含むことができる。上記let-7 familyとしては、let-7a、let-7b、let-7c、let-7d、let-7e、let-7f、let-7g、let-7iを好適に例示することができ、上記miR-17-92 clusterとしては、miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-19b、miR-20a、miR-92aを好適に例示することができ、上記miR-15としては、miR-15a、miR-15bを好適に例示することができる。ヒト由来の上記各マイクロRNA(let-7a(配列番号28)、let-7b(配列番号29)、let-7c(配列番号30)、let-7d(配列番号31)、let-7e(配列番号32)、let-7f(配列番号33)、let-7g(配列番号34)、let-7i(配列番号35)、miR-17(配列番号36)、miR-18a(配列番号37)、miR-19a(配列番号38、miR-19b((配列番号39)、miR-20a(配列番号40)、miR-92a(配列番号41)、miR-15a(配列番号42)、miR-15b(配列番号43)、miR-16(配列番号44))としては、それぞれ配列番号28〜44に示されるヌクレオチド配列からなるRNAを特に好適に例示することができる。
【0041】
この(D)工程における各マイクロRNA(let-7 family、miR-17-92 cluster、miR-15、及びmiR-16)は、婦人科がん以外のがんにおいて異常発現が認められるため、(B)工程の同定・評価の結果、検体組織が婦人科がんであると判定された場合に、さらに(D)工程におけるマイクロRNAの異常発現が認められるときは、婦人科がん以外のがん巣が存在すると判定することができる。なお、マイクロRNAlet-7 familyは肺がん組織で、miR-15及びmiR-16は慢性リンパ性白血病あるいは膵臓がん組織で発現が減少することが知られており、miR-17-92 clusterはB細胞リンパ腫あるいは肺がん組織で発現が増加することが知られている。
【0042】
本発明の婦人科がん治療薬のスクリーニング方法としては、(a)婦人科がんに罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:(b)前記非ヒト動物における婦人科がん組織中又は血液中の、本件マイクロRNAの発現量を測定する工程:(c)コントロールとしての、被検物質を未投与の場合におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を含んでいる限り特に制限されず、上記非ヒト動物の種類としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の非ヒト哺乳動物を好適に例示することができ、中でもマウス、ラットをより好適に例示することができる。また、婦人科がんに罹患した非ヒト動物としては、婦人科がんを自然に罹患した非ヒト動物であってもよいし、発がん物質で婦人科がんを誘導した非ヒト動物であってもよい。
【0043】
上記(b)工程における本件マイクロRNAの発現量を測定する方法としては、前述の本件マイクロRNAの発現量を測定する方法を用いればよく、また、上記(c)工程において比較・評価する方法としては、本件マイクロRNAのうち、miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-885-5p及びmiR-888については、コントロールと比較して低下している場合に、その被検物質が婦人科がん治療薬である可能性が高いと判定することができ、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584については、コントロールと比較して増加している場合に、その被検物質が婦人科がん治療薬である可能性が高いと判定することができる。マイクロRNAは、mRNAに結合するなどして、その遺伝子の発現を抑制するなどの性質が報告されているため、婦人科がん組織における上記マイクロRNAの異常発現を正常化方向にシフトさせるような被検物質は、婦人科がん治療薬として用いうる可能性が高いと考えられる。
【0044】
なお、(c)工程に代えて、(d)コントロールとしての、婦人科がん組織と同種の非がん組織又は婦人科がん被検体の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を採用することができる。(d)工程において比較・評価する方法としては、本件マイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して有意差がない場合に、その被検物質が婦人科がん治療薬である可能性が高いと判定することができる。
【0045】
本件マイクロRNAの中でも、miR-137、miR-138、miR-203、miR-205、miR-488、miR-489、miR-643、miR-885-5p、miR-888は、がん組織における平均発現量が非がん組織における発現量の5倍以上と、発現量の差が大きいため、婦人科がん治療薬である可能性をより正確に判定することが可能である点で好ましい。また、上述のマイクロRNAを2種類以上、婦人科がんのバイオマーカーとして併用すると、婦人科がん治療薬である可能性をより正確に判定することが可能となる点で好ましい。
【0046】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
[サンプル組織の採取1]
慶應義塾大学医学部の倫理委員会の承認のもと、慶應義塾大学病院の婦人科外来を受診した患者を選定し、サンプル提供の依頼対象者とした。その上で、その対象者からインフォームド・コンセントを得た後、4人の各対象者から、4種類のサンプル組織(図1の“sample ID 1-4”)を採取した。これら4種類のサンプル組織における組織の種類(図1の“tissues”の項目)としては、子宮内膜ポリープ(endometrial polyp)と子宮体がん(endometrial cancer)の2種類であり、組織の状態(図1の“samples”の項目)としては、ポリープ(polyp)、がん(cancer)の2種類であった。
【0048】
採取したこれらの組織のそれぞれの一部を、RNAlater(登録商標)(Applied Biosystems社製)が分注されたチューブに入れて冷凍保存し、組織内のRNAを安定化した。なお、各サンプルの組織の状態(がん、ポリープ等)は、採取した組織の他の一部について病理学検査を実施し、確定診断を行った。
【実施例2】
【0049】
[サンプル組織からのRNAの抽出及びその質的評価1]
後述のマイクロアレイに用いるため、実施例1で冷凍保存した各組織からRNAを抽出した。具体的には、mirVana miRNA Isolation Kit(Applied Biosystems社製)を添付のプロトコールにしたがって用いて、前述の各組織から、マイクロRNAを含むトータルRNAを抽出した。
【0050】
次に、後述のマイクロアレイで十分な精度が得られることを確認するために、抽出したRNAの質的評価を行った。具体的には、得られたRNAの濃度を蒸留水にて約30ng/μLに調整し、分光光度計にてOD260/280(OD260の計測値をOD280の計測値で割った数値)等を計測及び算出した。その結果を図2に示す。図2に示されているように、OD260/280はいずれも約1.6〜2.0の範囲内に入っており、タンパク質やフェノールの混入の少ない、質の良いRNAであることが分かった。また、抽出したトータルRNAのRIN(RNA Integrity Number)を、Bio-Analyzer RNA6000(Agilent Technologies社製)にて計測し、RNAの分解の程度を調べた。その結果を図3に示す。図3に示されているように、各サンプルのRINは十分に高いレベルを保持しており、質の良いRNAであることが分かった。
【実施例3】
【0051】
[各組織におけるマイクロRNAの発現解析1]
Agilent Human miRNA V2 (Agilent Technologies社製)を用いて、ヒトのマイクロRNA723種につき網羅的解析を行った。前述のAgilent Human miRNA V2のマイクロアレイは、miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-337-3p、miR-337-5p及びmiR-127-3p用のプローブとして、それぞれ配列番号1〜23、25〜27に示されるヌクレオチド配列に相補的なDNA配列を有している。解析の方法は、Agilent Technologies社のmiRNA Microarray protocol Version 1.5に記載の方法にしたがった。具体的には、以下のような方法で解析を行った。なお、試薬の量は1サンプル用の分量で記載する。
【0052】
まず、実施例2で得られたトータルRNAを約25ng/μLになるように、DNase/RNaseフリーの水で希釈し、その希釈液のRNA濃度を測定した。次に、10×CIP Buffer(GEヘルスケア社製)0.7μLと、16U/μLのCIP(GEヘルスケア社製)0.7μLを混合して得られたCIPマスターミックス1.4μLを調製した。前述のRNA希釈液から、トータルRNA量が100ngとなる量を1.5mLチューブに分取し、前述のCIPマスターミックス1.4μLを添加し、さらにDNase/RNaseフリーの水で7μLにメスアップした。この後、37℃で30分間インキュベーションして、トータルRNAの脱リン酸化反応を行った。
【0053】
脱リン酸化反応したサンプル溶液にDMSO(Sigma社製)を5μL添加して混合し、100℃で約5分間インキュベートしてトータルRNAの熱変性を行った。その後、直ちに氷水にて2分間冷却した。
【0054】
次に、ライゲーションを行なった。具体的には、2μLの10×T4 RNA Ligase Buffer(GEヘルスケア社製)、2μLの0.1%BSA(GEヘルスケア社製)、15U/μLに調整した1μLのT4 RNA Ligase(GEヘルスケア社製)、3μLのCyanine 3-Cytidine(Agilent Technologies社製)を別の1.5mLチューブ中で混合し、ライゲーションマスターミックスを調製した。このライゲーションマスターミックス8μLを、熱変性を行なった後冷却した前述のサンプルに添加し、16℃にて2分間インキュベーションした。
【0055】
次いで、サンプルの精製を行った。具体的には、MicroBioSpin6(BioRad社製)を添付のプロトコールにしたがって利用して、前述のサンプルから、Cyanine 3-Cytidineで蛍光標識したサンプルRNAを精製した。
【0056】
Agilent Human miRNA V2 (Agilent Technologies社製)オリゴDNAマイクロアレイを用いて前述のサンプルRNAのマイクロRNAプロファイル解析を行った。Agilent Technologies社のプロトコールに従って、55℃で20時間以上RNAサンプルのハイブリダイゼーション反応を行なった。次いで、ハイブリダイゼーション後のマイクロアレイを、Agilent Technologies社のプロトコールにしたがって、洗浄バッファー1で室温5分間、洗浄バッファー2で37℃5分間洗浄した。マイクロアレイを洗浄バッファー2から引き上げて、DNA Microarray Scanner(Agilent Technologies社製)を用いてスキャニングを行なった。
【0057】
723種類のマイクロRNAのうち、子宮体の非がん組織(ポリープ:polyp)と、子宮体がん組織(cancer 1-3)とを比較して、発現量(シグナル強度)に大きな差が見られる複数のマイクロRNAを見出した。各サンプルにおけるそれらのマイクロRNAのシグナル強度を図4及び5に示す。図4には、子宮体がん組織で発現が増加するマイクロRNA(miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、及びmiR-193b*)を示し、図5は、子宮体がん組織で発現が低下するマイクロRNA(miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-337-3p、miR-337-5p及びmiR-127-3p)を示す。これらのマイクロRNAは、子宮体がん組織において、非がん組織とは異なる発現(異常発現)していることから、これらのマイクロRNAは、子宮体がん組織等の婦人科がん組織のマーカーとして用いることができる。
【0058】
なお、他のがんにおいて異常発現することが知られるlet-7 family(let-7a、let-7b、let-7c、let-7d、let-7e、let-7f、let-7g、let-7i)、miR-17-92 cluster(miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-19b、miR-20a、miR-92a)、miR-15(miR-15a、miR-15b)及びmiR-16についての発現を各サンプルにて確認したが、子宮体がんにおいては特に異常発現は見られなかった(図6、図7、図8)。
【実施例4】
【0059】
[サンプル組織の採取2]
慶應義塾大学医学部の倫理委員会の承認のもと、慶應義塾大学病院の婦人科外来を受診した患者を選定し、サンプル提供の依頼対象者とした。その上で、その対象者からインフォームド・コンセントを得た後、5人の各対象者から、5種類のサンプル組織(図9のsample ID“42”、“06-072”、“05-034”、“04-010”、“06-082”)を採取した。これら5種類のサンプル組織における組織の種類(図9の“samples”の項目)としては、子宮内膜(endometrium)と子宮体がん(endometrial cancer)の2種類であり、がんのグレード(図9の“grade”の項目)としては、G1及びG3の2種類であり、がんの進行期(図9の“進行期”の項目)としては、Ib及びIIIcの2種類であった。
【0060】
採取したこれらの組織のそれぞれの一部を、RNAlater(登録商標)(Applied Biosystems社製)が分注されたチューブに入れて冷凍保存し、組織内のRNAを安定化した。なお、各サンプルの組織の状態(がん等)は、採取した組織の他の一部について病理学検査を実施し、確定診断を行った。
【実施例5】
【0061】
[サンプル組織からのRNAの抽出及びその質的評価2]
後述のリアルタイムPCRに用いるため、実施例4で冷凍保存した各組織からRNAを抽出した。具体的には、mirVana miRNA Isolation Kit(Applied Biosystems社製)を添付のプロトコールにしたがって用いて、前述の各組織から、マイクロRNAを含むトータルRNAを抽出した。
【0062】
次に、後述のリアルタイムPCRで十分な精度が得られることを確認するために、抽出したRNAの質的評価を行った。具体的には、得られたRNAの濃度を蒸留水にて約30ng/μLに調整し、分光光度計にてOD260/280(OD260の計測値をOD280の計測値で割った数値)等を計測及び算出した。その結果を図10に示す。図10に示されているように、OD260/280はいずれも約1.6〜2.2の範囲内に入っており、タンパク質やフェノールの混入の少ない、質の良いRNAであることが分かった。また、抽出したトータルRNAのRIN(RNA Integrity Number)を、Bio-Analyzer RNA6000(Agilent Technologies社製)にて計測し、RNAの分解の程度を調べた。その結果を図10に示す。図10に示されているように、各サンプルのRINは十分に高いレベルを保持しており、質の良いRNAであることが分かった。
【実施例6】
【0063】
[各組織におけるマイクロRNAの発現解析2]
前述の実施例5で抽出した各RNA及びTaqMan(登録商標)MicroRNA Assays(Applied Biosystems社製)を用いて、リアルタイムPCR法により、ヒトのマイクロRNAにつき網羅的解析を行った。定量の方法は、添付のプロトコールに記載の方法にしたがった。各RNAサンプルについて、miR-135a*、miR-137、miR-138、miR-203、miR-205及びmiR-488を定量した結果を図11に、miR-489、miR-629*、miR-643、miR-885-5p及びmiR-888を定量した結果を図12に、miR-34c-5p、miR-127-3p、miR-299-5p、miR-323-3p、miR-337-5p、miR-376b、miR-411、miR-424及びmiR-432を定量した結果を図13に、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584を定量した結果を図14にそれぞれ示す。図11〜12に示されるように、miR-135a*、miR-137、miR-138、miR-203、miR-205、miR-488、miR-489、miR-629*、miR-643、miR-885-5p及びmiR-888についてはそれぞれ、子宮内膜正常組織(normal)における発現と比較して子宮体がん組織における発現の増加が確認でき、図13〜14に示されるように、miR-34c-5p、miR-127-3p、miR-299-5p、miR-323-3p、miR-337-5p、miR-376b、miR-411、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584についてはそれぞれ、子宮内膜正常組織(normal)における発現と比較して子宮体がん組織における発現の低下が確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAを婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法。
【請求項2】
miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584が、それぞれ配列番号1〜27、50〜63に示されるヌクレオチド配列において1又は2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の工程を備えたことを特徴とする婦人科がんの判定方法:
(A)婦人科検体組織中又は被検体の血液中のRNAを抽出する工程:
(B)抽出したRNA中の、miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584から選択される1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定する工程:
(C)コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の正常被検体の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:
【請求項4】
miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584が、それぞれ配列番号1〜27、50〜63に示されるヌクレオチド配列において1又は2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする請求項3に記載の婦人科がんの判定方法。
【請求項5】
抽出したRNA中の、miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-885-5p及びmiR-888からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して増加している場合に婦人科がんであると評価することを特徴とする請求項3又は4に記載の婦人科がんの判定方法。
【請求項6】
抽出したRNA中の、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して低下している場合に婦人科がんであると評価することを特徴とする請求項3又は4に記載の婦人科がんの判定方法。
【請求項7】
miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定することができる、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを含んでいることを特徴とする婦人科がんの判定キット。
【請求項8】
miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、前記マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブを備えたことを特徴とする婦人科がんの判定キット。
【請求項9】
miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584が、それぞれ配列番号1〜27、50〜63に示されるヌクレオチド配列において1又は2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする請求項7又は8に記載の判定キット。
【請求項10】
以下の工程を含むことを特徴とする婦人科がん治療薬のスクリーニング方法:
(A)婦人科がんに罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:
(B)前記非ヒト動物における婦人科がん組織中又は血液中の、miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定する工程:
(C)コントロールとしての、被検物質を未投与の場合におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:
【請求項11】
miR-592、miR-629*、miR-517a、miR-205、miR-184、miR-509-5p、miR-135a*、miR-137、miR-602、miR-186*、miR-181a-2*、miR-193b*、miR-377*、miR-449b、miR-449a、miR-369-3p、miR-323-3p、miR-329、miR-299-5p、miR-34b、miR-411、miR-34c-5p、miR-376b、miR-885-5p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-127-3p、miR-138、miR-203、miR-488、miR-489、miR-643、miR-888、miR-424、miR-432、miR-433、miR-450a、miR-503、miR-542-3p、miR-542-5p及びmiR-584が、それぞれ配列番号1〜27、50〜63に示されるヌクレオチド配列において1又は2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする請求項10に記載のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−154843(P2010−154843A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150986(P2009−150986)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】