説明

バイオレット顔料の製造方法

【課題】 分散性に優れたバイオレット顔料、さらに詳しくは、インキや塗料に用いた場合、その印刷物や塗装物が優れた光沢、着色力および鮮明性を有するバイオレット顔料を提供する。
【解決手段】 C.I.ピグメントバイオレット23の水スラリーを噴霧乾燥することを特徴とするバイオレット顔料の製造方法に関し、好ましくは、特定の構造式で示される有機色素誘導体、アントラキノン誘導体およびトリアジン誘導体から選ばれる有機化合物0.1%〜30%を含む、さらに好ましくは、前記の有機化合物が、上記特定の構造式で示される有機色素誘導体で、当該有機色素残基がC.I.ピグメントバイオレット23残基で表されるバイオレット顔料の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性に優れたバイオレット顔料の製造方法に関する。さらに詳しくは、インキや塗料に用いた場合、その印刷物や塗装物が優れた光沢、着色力および鮮明性を有するバイオレット顔料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオレット顔料に止まらず全ての顔料に対して、製造コストの低減ならびにインキや塗料に用いた場合にその流動特性や保存安定性、さらには印刷物や塗装物の光沢、着色力および鮮明性などに関する品質向上が求められている。
【0003】
一般に各種コーティング組成中に高光沢、高着色力を発揮する実用上有用な顔料は微細な粒子からなっている。従来、塗料、グラビアインキ等のビヒクル中で微細な一次粒子の凝集体である顔料を分散する場合において、粒子の凝集をほぐすためには長時間強い力をかけて分散することや、分散を促進する分散剤の添加による方法などが知られている。例えば、ボールミルやサンドミルによって長い時間をかけて分散したり、顔料誘導体を添加する方法(特許文献1参照)、分散樹脂を添加する方法(特許文献2参照)などである。
【0004】
しかしながら、いずれの方法においても十分に満足されてはいなかった。一方、顔料の粉体粒子を調整してグラビアインキの分散性を向上する方法として、粗粉砕粒子を用いる方法(特許文献3参照)、顔料湿潤ケーキの乾燥凝集を低減するため乾燥温度を調整する方法(特許文献4参照)、顆粒状粒子とする方法(特許文献5、6参照)、ポリマー共存下で粒子を調整する方法(特許文献7参照)が提案されているが、分散性は不十分であり、また添加剤により用途により使用が制限される場合もある。さらに顔料誘導体を添加して顆粒状粒子とする方法(特許文献7参照)が提案されており、フタロシアニン系顔料のインクジェット記録用水性インクの例示はあるが、バイオレット系顔料のグラビアインキ、オフセットインキ、塗料、プラスチック着色、インクジェットインキ、カラーフィルター、カラートナー等についての例示はない。また、グラビアインキにおいて、銅フタロシアニン系顔料においては粉砕粒子と顆粒状粒子に濃度、着色力、光沢等の効果に差はあまりみられず、顆粒状粒子とする効果が不十分であった。
【特許文献1】特開昭59−96175 号公報
【特許文献2】特開昭57−74330 号公報
【特許文献3】特開昭64−45475 号公報
【特許文献4】特開昭57−53568 号公報
【特許文献5】特開平5−57102 号公報
【特許文献6】特開平5−184901 号公報
【特許文献6】特開2001−81349 号公報
【特許文献7】特開2006−152103 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、顔料粒体の粒子が微細でかつ均一な粒子径に整粒され、ビヒクルに対して分散性が極めて良好なC.I.ピグメントバイオレット23の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、グラビアインキ、塗料等のビヒクル中に発色用の粉体の粒子が分散した場合、展色物に優れた光沢、着色力および鮮明性を有するバイオレット顔料の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、C.I.ピグメントバイオレット23の水スラリーを噴霧乾燥することを特徴とするバイオレット顔料の製造方法に関し、好ましくは、下記一般式(1)で示される有機色素誘導体、下記一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体および下記一般式(3)で示されるトリアジン誘導体から選ばれる有機化合物0.1%〜30%を含む、さらに好ましくは、前記の前記の有機化合物が、一般式(1)で示される有機色素誘導体で、Pを付した有機色素残基がC.I.ピグメントバイオレット23残基で表されるバイオレット顔料の製造方法に関する。
【0007】
P−{ X−(Y)l }m (1)
(式中、Pは有機色素残基を表す。Xは直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−SO2NR−、−NRCO−、−NRSO2−(ここでRは、水素原子、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を表す)、炭素の数が1〜12個の直鎖または枝分かれしたアルキレン基で示される2価の結合基、2価あるいは3価の結合基に成り得るアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン残基あるいはトリアジン残基、またはこれらの結合基を2個以上組み合わせた結合基を表す。Yはニトロ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフタルイミドメチル基、−NR、−SO・M/n、または、−COO・M/nを表し、RとRはそれぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはRとRとで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表し、Mは水素イオン、1〜3価の金属イオン、または少なくとも1つがアルキル基で置換されているアンモニウムイオンを表し、nはMの価数を表す。lは1または2の整数を表し、mは1〜4の整数を表す。)
Q−{ X−(Y)l }m (2)
(式中、Qはアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいアントラキノン残基を表す。Xは直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−SO2NR−、−NRCO−、−NRSO2−(ここでRは、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基を表す)、炭素の数が1〜12個の直鎖または枝分かれしたアルキレン基で示される2価の結合基、2価あるいは3価の結合基に成り得るアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン残基あるいはトリアジン残基、またはこれらの結合基を2個以上組み合わせた結合基を表す。Yはニトロ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフタルイミドメチル基、−NR、−SO・M/n、または−COO・M/nを表し、RとRはそれぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはRとRとで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表し、Mは水素イオン、1〜3価の金属イオンまたは少なくとも1つがアルキル基で置換されているアンモニウムイオンを表し、nはMの価数を表す。lは1または2の整数を表し、mは1〜4の整数を表す。)
【0008】
式(3)
【化2】

(式中、Rはトリアジン残基を表す。XからXはそれぞれ独立に直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−SO2NR−、−NRCO−、−NRSO2−(ここでRは、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基を表す)、炭素の数が1〜12個の直鎖または枝分かれしたアルキレン基で示される2価の結合基、2価あるいは3価の結合基に成り得るアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン残基、またはこれらの結合基を2個以上組み合わせた結合基を表す。Yはニトロ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフタルイミドメチル基、−NR、−SO・M/n、または−COO・M/nを表し、RとRはそれぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはRとRとで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表し、Mは水素イオン、1〜3価の金属イオンまたは少なくとも1つがアルキル基で置換されているアンモニウムイオンを表し、nはMの価数を表す。YとYは、それぞれ独立にYと同じであるか、または、アルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、または置換されていてもよいフェニル基を表す。lからlは、それぞれ独立しており1または2の整数を表す。)
【発明の効果】
【0009】
グラビアインキにおいて、C.I.ピグメントバイオレット23のバイオレット系顔料は粉砕粒子と顆粒状粒子との比較で、濃度、着色力、光沢等に顕著な差が認められ、従来技術では想定できない効果を示した。即ち、C.I.ピグメントバイオレット23の粉砕粒子に比べ、顆粒状粒子では粒度分布の中央値はほとんど変わらずに、粗大粒子あるいは過粉砕粒子がほとんどないシャープな粒子分布を示し、かつ粒子が球状中空であるためこの製法から得られたバイオレット顔料をグラビアインキ、塗料等のビヒクル中にビヒクル中に分散して使用した場合、少量のエネルギーでより微細な粒子まで分散でき、展色物に優れた光沢、着色力および鮮明性を与える効果がある。また、銅フタロシアニン系顔料に比べC.I.ピグメントバイオレット23の効果が顕著なのは、C.I.ピグメントバイオレット23では顔料の一次粒子が細かいため、乾燥、粉砕粉砕凝集が強く作用し、分散性が悪いのに対し顆粒状粒子では乾燥、粉砕凝集の作用が弱まるためと推察される。この乾燥粉砕凝集の違いは粉砕粒子と顆粒状粒子の比表面積の差が大きいことから推察できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いるC.I.ピクメントバイオレット23は平均一次粒子が400nm以下、好ましくは200nm以下に調整された顔料形態を用いる。このような顔料形態とするには例えば粗製顔料を無機塩、有機溶剤の存在下で摩砕するソルベントソルトミリング法や、粗製顔料の硫酸溶解液、あるいは硫酸塩を大量の水に添加して顔料粒子を析出させるアシッドペースティング法、粗製顔料を乾式粉砕した後有機溶剤で微細粒子をほぐし結晶成長させるソルベント法等が用いられるが、粒子の形状が揃うソルベントソルトミリング法が好ましい。この顔料形態のC.I.ピクメントバイオレット23は不純物除去のため濾過水洗を行った後、水に分散し、水スラリーとして噴霧乾燥を行う。本発明の水スラリー濃度としては、生産効率からできるだけ高い濃度が好ましいが、スラリー粘度が高いと、定量的な供給が困難となるため5〜30%が好ましく、さらに好ましくは10〜20%である。
【0011】
噴霧乾燥方法としては回転円盤による遠心噴霧によるアトマイザー方式、加圧ノズルを用いるタービン式噴霧方式、二流体ノズルによる噴霧方式があるが、アトマイザー方式が乾燥顔料の平均粒子が細かく、粒度分布幅が小さいため好ましい。この様な噴霧乾燥機としてNIRO製スプレードライヤー等がある。乾燥条件は水スラリーの入り口温度は通常200〜350℃、出口温度は100〜200℃の範囲で、水スラリーの供給量、アトマイザー回転数、入り口温度、出口温度を変えることにより粒子の大きさを調整することができる。
【0012】
本発明に用いられる一般式(1)で示される有機色素誘導体を形成する有機色素は、例えば、フタロシアニン系色素、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の色素であるが、ジオキサジン系色素、フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、アントラキノン系色素が好ましく、C.I.ピクメントバイオレット23と色相近似で樹脂吸着効果の高いジオキサジン系色素がもっとも好ましい。
【0013】
一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体を形成するアントラキノンは、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基またはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基または塩素等のハロゲン等の置換基を有していてもよいアントラキノンである。一般式(3)で示されるトリアジン誘導体を形成するトリアジンは、1,3,5−トリアジンである。
【0014】
本発明の一般式(1)で示される有機色素誘導体、一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体および一般式(3)で示されるトリアジン誘導体は、上記の有機色素、アントラキノンおよびトリアジンに特定の置換基を導入した有機化合物であって、置換基は、例えば、フタルイミドメチル基、4−ニトロフタルイミドメチル基、4−クロロフタルイミドメチル基、テトラクロロフタルイミドメチル基、(4,6−ビス(フタルイミドメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン)−2−イルアミノメチル基、カルバモイル基、スルファモイル基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジメチルアミノプロピルアミノ基、ジエチルアミノプロピルアミノ基、ジエチルアミノエチルアミノ基、ジブチルアミノプロピルアミノ基、ピペリジノメチル基、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジブチルアミノメチル基、(4,6−ビス(ジエチルアミノプロピルアミノ)−1,3,5−トリアジン)−2−イル基、(4,6−ビス(ジエチルアミノプロピルアミノ)−1,3,5−トリアジン)−2−イルアミノ基、(4−(ジエチルアミノプロピルアミノ)−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン)−2−イルアミノ基、ジメチルアミノプロピルアミノスルホニル基、ジエチルアミノプロピルアミノスルホニル基、ジブチルアミノプロピルアミノスルホニル基、モルホリノエチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノプロピルアミノカルボニル基、4−(ジエチルアミノプロピルアミノカルボニル)フェニルアミノカルボニル基、ジメチルアミノメチルカルボニルアミノメチル基、ジエチルアミノプロピルアミノメチルカルボニルアミノメチル基、ジブチルアミノプロピルアミノメチルカルボニルアミノメチル基、スルホン酸基、ナトリウムスルホナト基、カルシウムスルホナト基、ストロンチウムスルホナト基、バリウムスルホナト基、アルミニウムスルホナト基、4−(アルミニウムスルホナト)フェニルカルバモイルメチル基、ドデシルアンモニオスルホナト基、オクタデシルアンモニオスルホナト基、トリメチルオクタデシルアンモニオスルホナト基、ジメチルジデシルアンモニオスルホナト基、カルボン酸基、2−アルミニウムカルボキシラト−5−ニトロベンズアミドメチル基、などである。
【0015】
また、一般式(3)で示されるトリアジン誘導体においては、必須の形成要素である上記の置換基に加えて、例えば、水酸基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、4−ニトロフェニルアミノ基、4−ベンズアミノフェニルアミノ基、4−アミノフェノキシ基などの置換基が挙げられる。
【0016】
本発明の一般式(1)で示される有機色素誘導体、一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体および一般式(3)で示されるトリアジン誘導体は、例えば、特公昭39−28884、特開昭51−18736、54−62227、56−32549、56−81371、56−118462、56−166266、59−96175、60−88185、60−98525、63−305173、特開平03−26767、11−199796に記載の方法で製造できる。
【0017】
本発明の一般式(1)で示される有機色素誘導体、一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体および一般式(3)で示されるトリアジン誘導体の具体例を化合物番号を付して以下に示す。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
本発明の一般式(1)で示される有機色素誘導体、一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体および一般式(3)で示されるトリアジン誘導体から選ばれる有機化合物は、C.I.ピグメントバイオレット23に対して0.1%〜30%を含むことが好ましい。0.1%未満の場合では添加した効果が得られ難く、30%以上の場合では添加した分の効果が得られないばかりか、得られた顔料組成物の物性と有機顔料単独の物性との差異が大きくなりインキや塗料に用いられたときに実用上の品質に問題が起きることがある。
【0022】
本発明の一般式(1)で示される有機色素誘導体、一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体および下記一般式(3)で示されるトリアジン誘導体から選ばれる有機化合物はC.I.ピグメントバイオレット23を顔料形態とする時に添加してもよく、また水スラリーとして混合してもよい、さらには噴霧乾燥後に粉体として混合してもよい。また必要に応じてロジン、樹脂、界面活性剤等をC.I.ピグメントバイオレット23に加えてもよい。
【0023】
本発明による方法で製造されたC.I.ピグメントバイオレット23の用途はグラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、塗料、インクジェットインキ、プラスチック着色、カラーフィルター、カラートナー等に用いることができるが、グラビアインキ、フレキソインキが特に顕著な効果を示す。例えばグラビアインキを作成する場合、使用するビヒクルは特に限定されるものではなく、補助剤や体質顔料を含んでいてもよい。一つの例として、グラビアインキ用ビヒクルとしては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、ライムロジン、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ギルソナイト、ダンマル、セラックなどの樹脂混合物、または上記樹脂の混合物または上記の樹脂を水溶化した水溶性樹脂、またはエマルション樹脂と、炭化水素、アルコール、ケトン、エーテルアルコール、エーテル、エステル、水などの溶剤からなるものである場合が挙げられ、特にグラビアインキではセルロース系、ウレタン樹脂系、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂系に効果が顕著で、高濃度、高着色力、高光沢で鮮明な品質が得られる。
【0024】
ビヒクルにC.I.ピグメントバイオレット23を混合または分散する場合、分散機としてディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ニーダー、フラッシャー、ロールミル、サンドミル、アトライター等を使用することにより良好な混合または分散を行うことができる。
【0025】
以下、実施例および従来法による比較例を挙げて本発明を詳しく説明する。但し、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」とは重量部を表し、「%」は重量%を表す。
【0026】
[実施例1]
C.I.ピグメントバイオレット23の粗製顔料(住友化学製ファーストバイオレット3Rベース)100部、塩化ナトリウム800部、ジエチレングリコール160部を1000容量部の双腕型ニーダーに仕込み、90℃で稠密な塊状(ドウ)に保持しながら5時間混練した。得られた混練組成物を70℃の水5000部に取り出し、1時間保温攪拌後、濾過、水洗後して顔料形態のウェットケーキとした。このウェットケーキ15部(固形分換算)を水85部に添加しホモミキサーで分散し固形分濃度15%の水ペーストとした。C.I.ピグメントバイオレット23の水ペーストを噴霧乾燥機(NIRO製MOBILE MINER)を用い、回転数25000rpm、入り口温度230℃、出口温度105℃となる様に吐出量を調整しC.I.ピグメントバイオレット23の乾燥粉末を得た。C.I.ピグメントバイオレット23顔料の平均一次粒子は50nm、比表面積87m/gで粉末粒子の粒子径D50は10μm、99%粒子径D99は44μmの中空球形粒子であった。
このC.I.ピグメントバイオレット23を用いたウレタンインキにおいて分散性は良好で高い濃度、着色力、光沢を示した。
【0027】
[実施例2]
実施例1において、C.I.ピグメントバイオレット23のウェットケーキ14.25部(固形分換算、95%)と誘導体として前記の化合物(1)0.75部(固形分換算、5%)を水85部に添加しホモミキサーで分散し固形分濃度15%の水ペーストとした以外は実施例1と同様に噴霧乾燥しC.I.ピグメントバイオレット23の乾燥粉末を得た。
このC.I.ピグメントバイオレット23を用いたウレタンインキにおいて分散性は良好で高い濃度、着色力、光沢を示した。
【0028】
[実施例3、4]
実施例2において誘導体を化合物(2)、(3)に変更したことを除き同様に噴霧乾燥しC.I.ピグメントバイオレット23の乾燥粉末を得た。
[実施例5]
実施例1において、噴霧乾燥したC.I.ピグメントバイオレット23の乾燥粉末95部に化合物(1)のウェットケーキを100℃で15時間箱型乾燥機で乾燥し、ハンマーミル粉砕した粉砕粉末5部を混合しC.I.ピグメントバイオレット23の乾燥粉末を得た。
このC.I.ピグメントバイオレット23を用いたウレタンインキにおいて分散性は良好で高い濃度、着色力、光沢を示した。
【0029】
[実施例6]
C.I.ピグメントバイオレット23の粗製顔料(住友化学製ファーストバイオレット3Rベース)95部、前期の化合物(4)5部、塩化ナトリウム800部、ジエチレングリコール160部を1000容量部の双腕型ニーダーに仕込み、90℃で稠密な塊状(ドウ)に保持しながら5時間混練した。得られた混練組成物を70℃の水5000部に取り出し、1時間保温攪拌後、濾過、水洗後して顔料形態のウェットケーキとした。以下実施例1と同様の操作を行いC.I.ピグメントバイオレット23の乾燥粉末を得た。C.I.ピグメントバイオレット23顔料の平均一次粒子は45nm、比表面積90m/gで粉末粒子の粒子径D50は11μm、99%粒子径D99は40μmの中空球形粒子であった。このC.I.ピグメントバイオレット23を用いたウレタンインキにおいて分散性は良好で高い濃度、着色力、光沢を示した。
【0030】
[比較例1]
C.I.ピグメントバイオレット23の粗製顔料(住友化学製ファーストバイオレット3Rベース)100部、塩化ナトリウム800部、ジエチレングリコール160部を1000容量部の双腕型ニーダーに仕込み、90℃で稠密な塊状(ドウ)に保持しながら5時間混練した。得られた混練組成物を70℃の水5000部に取り出し、1時間保温攪拌後、濾過、水洗後して顔料形態のウェットケーキとした。このウェットケーキを100℃で15時間箱型乾燥機で乾燥し、ハンマーミル粉砕によりC.I.ピグメントバイオレット23の乾燥粉末を得た。C.I.ピグメントバイオレット23粉末粒子の平均一次粒子は50nm、比表面積83m/gで粉末粒子の粒子径D50は11μm、99%粒子径D99は78μmの塊状粒子であった。
このC.I.ピグメントバイオレット23を用いたウレタンインキにおいて分散性は劣り、低い濃度、着色力、光沢であった。
[比較例2]
比較例1において、C.I.ピグメントバイオレット23のウェットケーキ14.25部(固形分換算)に誘導体として前記の化合物(1)0.75部(固形分換算)を水85部に添加しホモミキサーで分散し固形分濃度15%の水ペーストとした後濾過し、100℃で15時間箱型乾燥機で乾燥し、ハンマーミル粉砕によりC.I.ピグメントバイオレット23の乾燥粉末を得た。このC.I.ピグメントバイオレット23を用いたウレタンインキにおいて分散性は劣り、低い濃度、着色力、光沢であった。
【0031】
[参考例1]
実施例1において、C.I.ピグメントバイオレット23の粗製顔料をC.I.ピグメントブルー15:3(珠海東洋製T99クルード)に変えた以外は同様の操作を行いC.I.ピグメントブルー15:3の乾燥粉末を得た。比表面積は71m/gであった。
[参考例2]
比較例1において、C.I.ピグメントバイオレット23の粗製顔料をC.I.ピグメントブルー15:3(珠海東洋製T99クルード)に変えた以外は同様の操作を行いC.I.ピグメントブルー15:3の乾燥粉末を得た。比表面積は69m/gであった。
参考例1と参考例2の比表面積にほとんど差はなく、C.I.ピグメントブルー15:3はC.I.ピグメントバイオレット23に比べて乾燥粉砕凝集が弱いことが推察された。
【0032】
(評価方法)
一次粒子径はTEM写真(日立製H−7650型透過型電子顕微鏡)での長径の平均、粉体の粒子径はレーザ式粒体粒度分布測定装置(HELOE&RODOS製Helos Particle Analyzer)、粉体形状はSEM写真(JEOL製JSM−6700F)、比表面積は比表面積測定装置(Mountech製Macsorb HM 1208型)により測定した。
【0033】
分散性:C.I.ピグメントバイオレット23の乾燥粉末6重量部をウレタン樹脂ワニス48部、MEK 23部、エステル、アルコール系溶剤23部に添加し、プレミックスとしてハイスピードミキサーを用い、2500rpm、10分間撹拌後、45μmの篩残分を測定。値が小さい程分散性良好である。
濃度:225mlマヨネーズビンにC.I.ピグメントバイオレット23の乾燥粉末6重量部、ウレタン樹脂ワニス48部、MEK 23部、エステル、アルコール系溶剤23部、1.2mmφガラスビーズ100gを計量しペイントコンディショナーで60分間分散してウレタンインキを調整した。インキをトリアセテートフィルムに#6バーコーターで展色し目視で濃度を評価。○は濃度大、×は濃度小である。
着色力: :濃度測定に用いたウレタンインキ2gをウレタン白インキ20gと混合して淡色インキを調整した。インキをトリアセテートフィルムに#6バーコーターで展色し測色計(日本電色工業製SE2000)で測定。標準品を比較例1とし、L値より各実施例、比較例2の相対着色力を求めた。値が大きい程高着色力である。
光沢:上記ウレタンインキの展色物を光沢:計(日本電色工業製VG2000)で60゜光沢を測定。値が大きい程高光沢である。
【0034】
【表1】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントバイオレット23の水スラリーを噴霧乾燥することを特徴とするバイオレット顔料の製造方法。
【請求項2】
前記のC.I.ピグメントバイオレット23の水スラリーが、C.I.ピグメントバイオレット23に対して、下記一般式(1)で示される有機色素誘導体、下記一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体および下記一般式(3)で示されるトリアジン誘導体から選ばれる有機化合物0.1%〜30%を含むことを特徴とする請求項1記載のバイオレット顔料の製造方法。
P−{ X−(Y)l }m 式(1)
(式中、Pは有機色素残基を表す。Xは直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−SO2NR−、−NRCO−、−NRSO2−(ここでRは、水素原子、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を表す)、炭素の数が1〜12個の直鎖または枝分かれしたアルキレン基で示される2価の結合基、2価あるいは3価の結合基に成り得るアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン残基あるいはトリアジン残基、またはこれらの結合基を2個以上組み合わせた結合基を表す。Yはニトロ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフタルイミドメチル基、−NR、−SO・M/n、または、−COO・M/nを表し、RとRはそれぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはRとRとで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表し、Mは水素イオン、1〜3価の金属イオン、または少なくとも1つがアルキル基で置換されているアンモニウムイオンを表し、nはMの価数を表す。lは1または2の整数を表し、mは1〜4の整数を表す。)
Q−{ X−(Y)l }m 式(2)
(式中、Qはアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいアントラキノン残基を表す。Xは直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−SO2NR−、−NRCO−、−NRSO2−(ここでRは、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基を表す)、炭素の数が1〜12個の直鎖または枝分かれしたアルキレン基で示される2価の結合基、2価あるいは3価の結合基に成り得るアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン残基あるいはトリアジン残基、またはこれらの結合基を2個以上組み合わせた結合基を表す。Yはニトロ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフタルイミドメチル基、−NR、−SO・M/n、または−COO・M/nを表し、RとRはそれぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはRとRとで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表し、Mは水素イオン、1〜3価の金属イオンまたは少なくとも1つがアルキル基で置換されているアンモニウムイオンを表し、nはMの価数を表す。lは1または2の整数を表し、mは1〜4の整数を表す。)
式(3)
【化1】

(式中、Rはトリアジン残基を表す。XからXはそれぞれ独立に直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−SO2NR−、−NRCO−、−NRSO2−(ここでRは、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基を表す)、炭素の数が1〜12個の直鎖または枝分かれしたアルキレン基で示される2価の結合基、2価あるいは3価の結合基に成り得るアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン残基、またはこれらの結合基を2個以上組み合わせた結合基を表す。Yはニトロ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフタルイミドメチル基、−NR、−SO・M/n、または−COO・M/nを表し、RとRはそれぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはRとRとで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表し、Mは水素イオン、1〜3価の金属イオンまたは少なくとも1つがアルキル基で置換されているアンモニウムイオンを表し、nはMの価数を表す。YとYは、それぞれ独立にYと同じであるか、または、アルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、または置換されていてもよいフェニル基を表す。lからlは、それぞれ独立しており1または2の整数を表す。)
【請求項3】
前記の有機化合物が、一般式(1)で示される有機色素誘導体で、Pを付した有機色素残基がC.I.ピグメントバイオレット23残基で表される請求項2記載のバイオレット顔料の製造方法。





【公開番号】特開2009−29858(P2009−29858A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192732(P2007−192732)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】