バイオ光学スキャニング較正方法
方法(188)、装置(10)、および組成物(30)は、インビボで非破壊的に組織の選択された分子構造を検出するバイオ光学スキャナーを較正する。装置(10)は、プロセッサー、メモリー、およびスキャナーを備え得る。スキャナーは、光を非破壊的に組織上にインビボで向け、次いで、検出器内へ戻る鏡およびレンズのシステムを通る放射応答の戻りを受容する。スキャナーを制御し、その出力を処理するソフトウェアは、組織の放射応答を模倣する合成材料(30)を使用して較正され得る。較正は、バックグラウンド蛍光および弾性散乱を考慮し得、目的のラマン散乱応答を実質的に有さない皮膚組織材料を模倣する。ドーパント(125c)は、組織内の選択された分子構造を模倣するためにホワイトスキャン材料のマトリクス(125b)に添加され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(1.発明の分野)
本発明は光の強度の光学的測定、さらに具体的には、ラマン散乱の検出器の較正のための新規のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.背景技術)
材料、特性、システムなどを表す特徴的信号を発生させ、検出し、観察し、追跡し、特性を決定し、処理し、操作し、表現し、またいろいろな方法で取扱うための光学的及び電子的機構が開発されてきた。工学の世界では、多くの物理原則が予測通りで再現可能に、またこれらの物理法則及び技術を使った計画及びスキームに従って機能する。このため、時の経過とともに、物理システムの性能及び挙動の数学的解析や予測は、高度な技術及び信頼性のある科学へと発展してきた。
【0003】
機械的及び電子的装置、ならびに、光学システム、放射(例えば、レーダ、光など)及び音響(例えば、超音波スキャン、ソナーなど)が、多くの種類のシステムをモニターするのに有用であることが示されている。試験又はモニターされる多くのシステム、ならびに、設計及び制御される種々のシステムは、物理現象とそれら物理現象の数学的表現及びコンピュータの処理能力とを組み合わせた技術に依存している。これに加えて、物理挙動を検出するためのさまざまなシステム、これらの挙動の信号への変換、それら処理のための信号のコンピュータへの送信、及び人間が取り扱う技術分野の多くを、設計、解析、構築、観察及びその他のやり方でさらに分かりやすくし有用にすることができる。
【0004】
生物科学において、計測器使用は、診断及び治療の双方で非常に有用であることが示されている。心電図、脳波図などは心臓、神経システムなどの動作を特徴付ける微弱な電磁信号を記録する。同様に、超音波画像、x線及び同種装置は、特定の生物学的プロセスの洞察及び忠実な画像を提供する。同様に、CTスキャン又はコンピュータ断層撮影技術は、生物学的なシステム及びプロセスをさらに高度に画像化する能力を提供している。
【0005】
同じく、化学の分野でも、クロマトグラフ、スペクトル分析などといったデバイスを含む、多くの計測装置を含む技術からの恩恵を受けている。このような知識をそれぞれ得て、生物体、プロセスなどの理解及び制御に適用するには、このようなタスクに使用される計測装置の信頼できる較正が継続して必要となる。
【0006】
例えば、近年、生体組織中の特定の化学組成物を測定するためのシステムが開発されている。このような装置の有用な例が、1999年2月23日発行の、Bernsteinらによる特許文献1の中で開示されている、この特許は斑状カロチノイド・レベルの測定の方法及びシステムを対象としており、参考として本明細書に組み込まれる。同じく、他の組織(tissue)の非侵襲的測定に対しても特許が発行されている。この研究は、2001年3月20日発行のGellermannらによる特許文献2に記載されたもので、カロチノイド及び生体組織中の関連化学物質に非侵襲的測定の方法及び装置を対象としている。この特許も参考として本明細書に組み込まれる。ほぼ同じ科学者のチームによる後続の研究結果が、米国特許出願第10/040,883号、2003年7月10日に公開の特許文献3に示されている。この出願は、斑状色素のラマン画像化のための方法及び装置を対象としており、参考として本明細書に組み込まれる。この研究又はこの研究全体は、なかんずく、生きた皮膚などの組織中のカロチノイド又は類似の化合物のレベルの定量を提供する。非侵襲的で、迅速、高精度、及び安全なカロチノイド・レベル測定のための、特定の方法及び装置が開示されている。これらの測定値を、がんリスクに関する診断情報、又は、カロチノイド又は他の抗酸化剤化合物が診断情報を提供し得る状態のためのマーカーとして使用することができる。このように、この研究の多くは早期診断情報と、これによる予防又は治療とを対象としている。
【0007】
一般に、これらのプロセスは、共鳴ラマン分光法を用いて、類似の物質及び組織の中のカロチノイド・レベルを測定する。特定の実施形態において、目的の組織の部分にレーザ光が当てられる。これにより散乱された光のごく一部は、ラマン散乱のプロセスによって、非弾性的に散乱され、目的の特定の分子にエネルギーを吸収され、入射レーザ光とは異なる周波数で再放射される。ラマン信号は、収集され、濾光され、測定され得る。次に、得られた信号を分析し、照射源の光の弾性散乱(例えば、反射)、及びバックグラウンド蛍光を除去することによって、ラマン散乱信号として識別された特性ピークを際立たせることができる。
【0008】
特定の実施形態において、レーザ光源は、各種のレンズ、ビームスプリッターなどを含むプローブ・システムに通される。これによりレーザ源からのコヒーレント光をこれら一連のレンズ及びビームスプリッタを通して鏡面に導き、これを通して被験体(例えば、皮膚、斑紋など)の上に照射し、応答放射を生成することができる。応答放射はプローブ中を反対に向かい、典型的にはビームスプリッタ、又は、部分的に銀メッキされた鏡に反射されて検出器に導かれる。
【0009】
一つの実施形態では、電荷結合素子のようなスペクトル選別の可能なシステムが、強度及び周波数(波長の逆数)によって放射(例えば、光波、光子など)を検出する。これにより、波長と強度とを処理し、周波数又は波長のスペクトルに沿って発生している放射の量を数値化することができる。
【0010】
このように、コヒーレント光を組織に当てたときの応答を、特定の照射源に応答して検出器に到達するエネルギーの量又は光子の数などによって特徴付けることができる。このような装置に十分な精度があれば、放射エネルギー中の、個別光子レベルの量子変動にいたるまで、おそらく測定可能と考えられる。
【0011】
このような装置を実現するためには、スキャナー(例えば、被験体を照射し、その応答を回収して処理するためのシステム)を信頼できるように較正でき、プロセッサ又はコンピュータがスキャナから受信したデータを操作又は他のやり方で処理するための、方法及び装置が必要である。このような計測装置を、実験的装置又は実験的興味レベルから、医療及び診断分野又は実市場に展開しようとするためには、いくつか必要な事項がある。
【0012】
例えば、被検組織はその種類及び生物体の違いによって異なる。例えば、植物の組織はその特徴的な挙動を示すので、特定の条件の下で特定の範疇の植物に対しある特定の平均値、又は正常値又は値の範囲を設定することができる。同様に、動物や人間の組織を侵襲的又は非侵襲的に分析して、組織の特定の特質を、当該組織の照射に対する放射応答及びラマン散乱に相関付けることができる。平均値が、母集団の属性の対象特性となる。
【0013】
とはいっても、電子的な構成要素の間のバラツキは無視できない。このため、電子部品及び光部品のどのような組み合わせにも、特定の「内在特性」が存在することになる。スキャナの作動において、測定値や計算値を解釈するためには、対象装置の電気的及び電子的なアーチファクト(例えば、誤差、不整合、偏差、バイアスなど)に対する特性設定をする必要がある。通常、一つの装置によるアウトプットを同じ別の装置でもで再現できるようにするためには、任意の2つの装置間の差異を何らかの形で較正(例えば、測定、補償、倍率設定、正規化など)する必要がある。すなわち、2台であれ100台であれ同一設計の装置は、同一の対象を評価したときには、同一の値又はほぼ同一の値の検出パラメータを生成できる必要がある。つまり、同一設計の、2台又は100台の異なる機械によってスキャンされたある個人の皮膚は、ある程度の合理的再現性(精度)及び確度(正確な事実の反映)を持つ、ほぼ同一のアウトプット値を提供すべきである。
【0014】
このように、同一サンプルのスキャンに対し、ある容認可能なバラツキの範囲内で、各機械からのアウトプットが同じ値となるように、機械間の差異を読み取るための、個別スキャナを較正する装置と方法とが必要となる。さらに、短時間及び長時間の間に、予想通り、予想外、予測通り、予測外の何らかの状態で温度、湿度、化学雰囲気、物理特性のような条件が変化するので、機械自体の作動における時間的(時間推移)変動を除去するため、機械を較正することが必要になる。
【0015】
すなわち、ある日時に作動されたスキャン装置は、別の日又は別の時間においても、前回日時と同一の条件にある実質的に同一な被験体を測定した場合には、ほぼ同じアウトプットを生成できる必要がある。つまり、ある特定の装置から得られたアウトプットの日によるバラツキ及び時間によるバラツキを較正する必要がある。すなわち、装置のアウトプットに影響を与える可能性のある物理条件、化学条件、温度、外部条件などの予測できない変化をおり込むようなやり方でスキャナを較正する方法と装置とが必要である。このように、スキャナに対する現場較正のための方法及び装置は、この面の技術を進展させるものとなろう。
【0016】
可能な範囲内で、スキャン装置から受信した信号を処理するプロセスを確立し、ハードウエアの調整を不要にすることは、当該技術を進展させることになろう。すなわち、例えば、較正プロセスで各種の条件をモニター又は検出できる範囲であれば、スキャン装置に関連する一切の性能パラメータ、物理特性、又は他の制御パラメータを実際に修正したり変更したりせずに、単に、このような装置からのアウトプット信号を処理してこれら信号の値を補正することができる。このように、スキャナから得られた信号データの信号処理又はコンピュータ処理を開発し、上述の較正のすべての利点を提供することは当該技術を進展させることになろう。
【0017】
生体材料はもともと大きく変化するものである。そこで、適切に識別された母集団に対する統計的に有意なサンプルを役立たせることができる。しかし、サンプルの持ち運びが問題になることがある。例えば、2つの異なる大陸にあって2つの異なる母集団をスキャンする2つの異なる機械を、それら装置の読み取りを同一とするために、どのように正規化又は較正するのであろうか。生体材料から採取された較正サンプルは、もともと問題が多い。生体組織というものは、インビボかそうでないかのいずれかである。いずれの場合にも、生体材料の取り扱いにおいて、サンプル量、サンプルの再現性、サンプルの制御および観察可能な特性を維持するのはほとんど不可能である。さらに、生体材料、有機体、生体組織又は他の物質の複製は非常に困難である。加えて、多くの環境の中で条件変動を正確に制御することはできない。生体の中で同一な条件、遺伝的特徴などを整えることは、較正サンプルを生成するための実用的な手段ではない。
【0018】
一方で、電子カウント、電流、電圧、光子カウントなど、物理データの複雑なセットを生成することは可能であろう。しかし他方では、このような詳細データを収集することは不可能となろう。実際問題として、そういった収集及び分析は非常に複雑で法外な費用がかかることが多い。
【特許文献1】米国特許第5,873,831号明細書
【特許文献2】米国特許第6,205,354号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0130579号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
このように、スキャナを較正するサンプルを提供するために必要なものは、予測可能な標準のセットによって生成、製造、又は他の方法で作成でき、再現性を持って制御可能な何らかの処理法を具えた合成材料である。すなわち、必要なのは、スキャナに照射されても長期間にわたって一貫した放射応答を生成し維持することに信頼が置ける合成材料、又は合成材料のシステムである。これにより、このような合成材料を、世界中に持ち運んで検証できる較正標準として用いることができる。
【0020】
さらに、製作工場においても、機械仕上がり性能の機械間変動を較正するために使用できる、安定的で、繰り返し使え、再現性があり、簡単に製造できる合成サンプルを持つことはすこぶる有益であろう。加えて、ある種の測定現場用の較正装置及び方法は、特に信頼性のある合成材料をサンプルとして用いている場合には、個別スキャン装置及び関連するプロセッサのアウトプット中の日毎の又は時間毎の変動を較正する点において、当該技術を大幅に進展させることになろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(本発明の要約及び目的)
前記の必要性に基づいて、バイオ光学スキャン・システムを較正するための各種装置及び方法のシステムを本明細書に開示する。さらに、バイオ光学スキャナに必要な各種の較正機能を実施するための合成材料を、発見し、考案し、評価し、また他の方法で利用できるようにした。例えば、信頼性のある放射応答を得るために、繰り返し可能な構造と位置とで、確実な較正材料をスキャナに提供する機構を開発した。さらに、工場及び現場での較正作業のための各種の組成を開発した。例えば、レーザ照射に対して放射応答をほとんど返さないダーク・キャップによって、機械の電気的及び電子的アーチファクトを除去するための機構を提供する。同様に、生体組織のスペクトル応答の形状及び値を模擬しながら、簡単な非生物化学組成として再生可能なホワイトスキャン・サンプルを開発した。
【0022】
さらに、目的の特定分子構造の合成模擬物質を生成するため、材料のマトリクスをドープ処理するための材料を発見し開発した。例えば、生体組織内に存在するカロチノイド及び他の化学組成物は、ある特徴を持つ炭素結合構造を含むと考えられる。類似の結合構造を含み、照射に対して、生体分子成分の放射応答(例えば、ラマン散乱など)と類似の放射応答を示す合成材料を発見した。
【0023】
これによって、スキャン・システムを繰り返し較正するための較正サンプルとして合成材料を利用するシステム及び方法を開発した。さらに、これら開発し、発見した各種の組成及び装置を実行し、スキャナのアウトプットを処理するための一連の計算及び数学的処理によって、放射強度のスペクトル曲線中の望ましくない又は目的の外の特性を正規化又は別方法で削除し、実行は成功であった。このように、機械間の、及び単一の機械内での時間による変動を分離し、より改善された信号対ノイズ比及びはるかに明瞭なラマン応答を得た。これにより、適切な較正装置及び方法によるバイオ光学スキャナの正確で再現可能な利用を提供する。
【0024】
本発明の前述の目的及び特質ならびに他の目的及び特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を添付の図面と関連させることにより、さらに十分明らかになろう。これらの図面は本発明の典型的な実施形態を示すだけのものであり、従って、本発明の範囲を限定するものと見なさないことを明確にした上で、添付の図面を使い、さらなる具体性及び詳細内容をもって本発明を説明することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(図示された実施形態の詳細な説明)
本明細書の図に一般化して記載され例示されている本発明の構成要素を、さまざまな異なった構成に改作、設計できることは容易に理解できるであろう。従って、図1から19までに表した、以下の本発明のシステム及び方法の実施形態のさらに詳細な説明は、本発明の特許請求の範囲を限定する意図のものでなく、現在説明している、本発明の特定の実施形態を表すだけのものである。
【0026】
図面を参照することによって、本発明によるさまざまな実施形態の最良の理解が得られよう。なお、全図を通して同じ番号で指定されているものは同じ部分である。
【0027】
図1を参照すると、本発明による装置10には、電源、レーザ光源のような光源、及び検出器などのスキャン機構を含めることができる。検出器は、バックグラウンド蛍光、弾性散乱光(光源光の反射)、及び入射照射ビームとは異なる波長で検出器に戻るラマン散乱光を含む信号を受信することができる。
【0028】
一般に、スキャン・機構は、ハウジング12の中に収納され、ハウジングには、照射ビーム及び戻ってくる検出ビームを通すためのバレル13が貫いている。通常、バレル13は、バレル13とハウジング12との間に、半径方向に特定幅の逃げ又はクリアランスを備えている。
【0029】
バレル13に装着されたウインドウ14は、照射ビームを外部方向に被験体に向け通過させ、戻ってくる「放射応答」をウインドウ14に逆方向に通過させ検出器に受光させる。例えば、電荷結合素子(CCD)又は電荷注入素子(CID)を、幅広い周波数(及び対応する波長)の光を検出できるセンサ・アレイに構成することができる。これにより、周波数の定義域(domain)又は相当する波長の定義域に強度のヒストグラム又はスペクトルを表示することができる。
【0030】
本発明による装置10の一つの実施形態において、架台(rest)16は、ウインドウ14の下側に、外向きにすなわちウインドウの前側に設けられている。支持架(support)18を装置10のハウジング12内から延ばして架台16を支えることができる。これにより、手、腕、又は被験体の他の身体部をウインドウ14の前の架台16に置くことができる。
【0031】
本発明による装置10及び方法の現在考えられている一つの実施形態では、ユーザは手を架台16の上に置き、手のひらの皮膚をウインドウ14に向ける。このようにして、ビアの法則に従う距離の影響を、ウインドウ14の位置により繰り返し可能に制御する。
【0032】
シールド20はいくつかの機能特徴を提供することができる。例えば、一つの実施形態において、シールド20は、装置10からウインドウ14を通る光ビームの出力に応答して輝く半透明物質で形成される。何もないスペースを通過する光には、ビーム自体を外部に見えるようにする機構はない。従って、安全の問題として、シールド20によってレーザ光を阻止し散乱させることができる。また、ユーザはシールド20の照射による光点が見えるので、装置10の電源が入れられ作動しているのに気付くことができる。
【0033】
さまざまな実施形態において、シールド20を、透明に、半透明に、模様付きに、又は別法で単に光をランダムに拡散するようにすることができる。このような実施形態において、ユーザ又は操作者は、ウインドウ14とシールド20との間に光がある証拠として、シールド20上の光点だけしか見ることができない。現在考えられている一つの実施形態では、不透明か半透明かあるいは透明かどうかに関わらず、拡散面はシールド20上に形成される。
【0034】
さらに別の実施形態において、十分な散乱を得るために、例えば、リンネルのような材料の拡散層を透明又は半透明のポリカーボネートの層内に埋め込むことができる。別の実施形態において、アクリル又は他の透過型ポリマーのような簡単なプラスチックの片面又は両面を、まだら模様又はでこぼこ面にして使い、シールド20が、ウインドウ14からの光の正透過又は反射を生じないようにすることができる。
【0035】
ダーク・キャップ22又はダーク・サンプル22のような一連の付属具によって、装置10の種々の機能特徴を保全することができる。ダーク・サンプル22は、ウインドウ14から受けた照射に対して装置10にほとんどビームを返さない。従って、ウインドウ14を通してダーク・キャップ22を照射した後で装置10に検出される応答又は放射応答は、ほとんど被験体からの放射(例えば、光)に対応するものでない。
【0036】
結果として、ウインドウ14を通したダーク・キャップ22への照射は、装置10のバックグラウンド異常(例えば、電気的又は電子的アーチファクト)を表す装置10の信号をもたらすことになる。換言すれば、ダーク・キャップ22を照射するビームに応答して装置10中に逆受信される信号は、装置10自体の電気的又は電子的アーチファクト(例えば、誤差、バックグラウンドノイズなど)が直接的にもたらす装置10への偽の寄与を表す信号となる。
【0037】
精度サンプル(precision sample)24を、現場用較正キャップ24とも呼ばれるフィルム・キャップ24として具現化できる。キャップ24を、ウインドウ14に対し、低い値あるいは高い値のポジションにセットすることができる。すなわち、精度サンプル24は、装置10中へ戻る信号の比較的に高い値及び装置10へ戻る信号の比較的に低い値を代表する。その各々は、精度キャップ24中の材料サンプルから直接的にも得られる。
【0038】
すなわち、精度キャップ24を、180度離れた2つの向きのどちらかにセットし、信号(例えば、ビーム)に曝して、材料に、高い又は低い放射応答を生成させることができる。照射及び放射応答の双方は、ウインドウ14を通って、装置10から、またその中へとそれぞれ伝搬される。
【0039】
直接的な結果として、精度サンプル24中の特定の材料から、高いあるいは低い値の放射応答が、ウインドウ14を通って装置10中に逆伝送されることになる。高い値及び低い値は、各種材料の放射応答から、ウインドウ14との距離から、又はこれら双方によって得ることができる
装着されたキャップ26は、繰り返し安定的に支持架18に装着できる機構を具えており、ウインドウ14に対し、試験サンプルをばね装着できる。同様に、二重キャップ28又は試験ブロック28は、その両端にばね装着され各々が高い又は低い値を生成するサンプルを具えており、ウインドウ14とシールド20との間にセットできる形状とサイズとにされている。二重キャップ・システム28は、目的のサンプルをウインドウ14に押し当て、これに対して繰り返し位置合わせができるばね装着機構を具えている。
【0040】
マスタサンプル30は主として製作工場(以下工場)での較正に使用される。特定の実施形態において、マスタサンプル30を使用現場(以下現場)での較正に使うことができる。マスタサンプル30は、一時的にウインドウ14に接着させ、手のような身体部分のスキャンを合成的に模写することができる成型可能な材料を含む。例えば、マスタサンプル30は、ウインドウ14に付着するパテ様の材料として配置され、中性のバックグラウンド(ホワイトスキャン)結果と、比較的低い濃度の目的の分子組成物の結果と、比較的高い濃度の目的の分子組成物の結果とを生成するように、あるいはそう見えるよう構成されている。目的の分子組成物は、所望の目的の分子成分の濃度の比較値に準じて、サンプル30のパテ内に分布されている。
【0041】
引き続き図1を全般に参照しながら、図2A−2Cを参照すると、キャップ22、24には一般に位置合わせマーク32を含めることができる。ダーク・キャップ22については位置合わせは特に重要ではない。しかしながら、精度サンプル24については、少なくともその特定の実施形態に関しては、位置設定は重要な変数であり、基準指標32又は位置合わせマーク32を、精度サンプル24の正確な位置合わせを行うための助力とすることができる。
【0042】
とはいっても、ダーク・キャップ22についても、スリーブ34をバレル13にぴったり嵌め合わせ、肩(shoulder)36をそのウインドウ14に位置合わせする。すなわち、肩36は、バレル13の面15と合わさる位置合わせ面36を提供する。通常、面15とウインドウ14とを、実質的に相互に同一平面上にあるようにすることができる。
【0043】
シム38又はスペーサ38は、バレル13とスリーブ34との間のグリップ又ははめ留めを提供する。実際的やり方として、シム38をバレル13に接触させてスリーブ34をある程度歪ませることができる。これにより、バレル34、シム38、又はその双方のたわみによって、ダーク・キャップ22の面15に対するぴったりしたはめ合いを保持し、バレル13に対するガタツキを少なくする弾力的な力を与える。
【0044】
作動において、ダーク・キャップ22は、ブラック・サンプル40を含む。例示した実施形態において、ブラック・サンプル40は、単純な、凹形の暗黒色の面40である。特定の実施形態において、光トラップ、平行にされた、黒の、光トラップ又は黒布などを、ブラック・サンプル40として使うことができる。ブラック・サンプル40の傾斜した表面及び黒色の材料は、ウインドウ14から放出される照射をウインドウ14外に分散させ、放射応答がウインドウ14を通って装置10に実質的に返送されないようにする。
【0045】
従って、ダーク・キャップ22は、ウインドウ14から進んできた信号を、吸収、屈折及び別法で分散させ、装置10の電気的及び電子的アーチファクト以外の何ものも反射していない「ダーク」な読み取りを装置10に提供する。ダーク・キャップ22への照射に応答して装置10に検出又は記録された読み取り又は一切の信号は、実際は、装置10に固有のバックグラウンド効果及び誤差効果によるアーチファクトだけである。そこで、ダーク・キャップ22を使って、バックグラウンド信号を表示させ、それをスキャンの読み取りから際し引いて、装置10の電気的及び電子的アーチファクトを分離することができる。
【0046】
ブラック・サンプル40を構成する凹面40の反対側の凸面41は頂点42にいたる。凸面41をダーク・サンプル41として機能させることができる。しかしながら、通常、製造工程において、内側(凹面)40にはシャープな頂点42を容易に形成できるが、凸面41には高精度で点を形成することができず、これをダーク面41として使った場合、その頂点41は、一般にダーク・キャップ22の適切な動作を防げる。
【0047】
図2Cを参照すると、ウインドウ14を通し光のビームをシールド20に照射して光点43を得ることができる。シールド20のどちらの主要表面においても光点43又は明領域43を見ることができる。シールド20が半透明又は透明な場合、装置10に対し、ほぼ、どの有効角度からも光点43を見ることができる。しかしながら、シールド20が不透明な場合には、通常、シールド20の装置10に向いた面が見える位置だけから光点43が見えることになる。
【0048】
さりながら、本発明による装置及び方法の一つの実施形態において、シールド20を複数の層44で形成することができる。一つの実施形態において、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどのような、半透明材料の単一の層44aをシールド20のバルク材料として利用することができる。光点43からのビームの反射又は正透過一切を散乱させる拡散機能を備えるために、シールド20の面44d、44e自体を、模様付き又別法で処理した透明な材料とすることができる。
【0049】
現在考えられている一つの実施形態では、層44aは、層44cとともに、その間の拡散材料44bを挟み込んでいる。例えば、ポリカーボネートは、ほとんど破断しない。従って、ポリカーボネートの2つの層44a、44cに、層44bを組み込んで一体に成型、又は層44a、44cの間にリンネルの層44bを入れて積層することができる。図示された実施形態において、層44a、44cの中間にある層44bは、一切の実質的な正反射光の通過を排除する大きな散乱効果を提供することができる。
【0050】
実際的処置として、誤っても人体組織の損傷、特に眼の損傷がないように、装置10内のレーザ出力を十分に低く選定することができる。そうであっても、シールド20は、装置10の電源が入って作動していることの警告と、眼を曝し過ぎても緩やかな強度にまで保護してくれることとの両面で役立つ。拡散性の高いシールド20は、ウインドウ14から光点43に当たる光の一切の正透過及び反射を大幅に阻害する。中間拡散層44bの有無に関わらず、層44d、44eの表面には、散乱機構として凹凸や模様を付けることができる。
【0051】
引き続き図1−3を参照しながら図3A−3Dを参照すると、精度キャップ24には、キャップ24をバレル13に対して円周上に方向付けるための基準指標32又は位置合わせマーク32を具えることができる。精度キャップ24、又はさらに厳密にはそれに内蔵されているサンプル材料50は、設置の向きに影響される。バレル13に対し精度キャップ24を回転させて、光ビームによるサンプル材料50の照射に応答して装置10によって検出される放射応答の読み取りを変化させることができる。
【0052】
通常、精度キャップ24の両端には2つのスリーブ34が具えられ、その各々がシム38とともにバレル13とぴったりとはまり合うようになっている。肩36は、バレル13の面15に対してキャップ24を位置合わせするのに利用される。
【0053】
図示された実施形態において、ダストカバー46は、スリーブ34に対してその内側にはまり込み、キズ付き、ごみ堆積などから保護している。特定の実施形態において、ダストカバー46を、アーム48によって精度キャップ24につなぐことができ、アーム48を、精度キャップ24の基本構造と一体に成型することができる。
【0054】
精度キャップ24の一部として形成されている脚(foot)52又は脚(feet)52は、架台16にぴったりはまるように形成されている。これにより、脚52は、ウインドウ14に対するサンプル材料50の位置合わせの維持を助けている。脚52は、キャップ24を適正な方向に向ける機能を持つ。一方、基準指標32は、キャップ24の配置が、バレル13に対し所望の位置に合っていることを確実にする。
【0055】
現在考えられている一つの実施形態では、開口部54には、装置10に固定するつなぎ紐55を通す。例えば、精度サンプル24が装置10から持ち去られたり、取り違えられたりしないように、つなぎ紐55を支持架18にくくりつけることができる。
【0056】
サンプル材料50を、ウインドウ14からの光ビームの照射結果による放射応答の高い値及び低い値をそれぞれ提供するように構成することができる。サンプル24の両端には、サンプル50を取り囲むスリーブ34が具わっている。一つのサンプル50は比較的に低い読み取りを提供し、他のサンプル50は比較的に高い読み取りを提供する。
【0057】
一つの実施形態において、サンプル50の一つのコーナーが切り取られ、肩36に対応する隙間が形成される。これにより、サンプル50は、肩36に形作られた単一の方向にしか位置付けることができない。こうして、サンプル50は、精度キャップ24の構造と正確に位置合わせされ、精度キャップは、脚52により架台16に対して方向付けられ、ウインドウ14に対し正確に方向付けされることになる。
【0058】
特定光による照射に対する放射応答として、カロチノイドがラマン散乱原理に従った光を返すことが知られている。例えば、波長473ナノメータ台の光は、カロチノイド内の特定の炭素結合を励起する。ある種の配向性高分子フィルム中に、類似の炭素結合、及び特に炭素二重結合が存在することが判明している。このように、特定種類の高分子フィルムでサンプル50を形成し、473ナノメータ前後の波長のような適切な周波数の光で炭素結合を励起すると510ナノメータ波長のラマン散乱が生じる。
【0059】
このように、サンプル50を、天然に存在するか又は生体の組織材料でなく、比較的安定で、非消耗性の合成材料で形成することができる。例えば、Gellermannらが開発したような従来技術の装置(2001年3月20にGellermannらに発行された米国特許第6,205,354B1号を参照。この特許を参考のため本明細書に組み込む)は、本体から切り取られた生体組織に依存していた。死体の砕いた組織から試験用の材料を得ることができる。これに比較して、合成材料から形成され適切な応答を提供するサンプル50は、はるかに良好な再現性と、はるかに高い均一性と、均一なサンプル50のほぼ無制限の供給とを提供できよう。
【0060】
図3Bを参照すると、精度サンプル24又は精度サンプル・キャップ24を、装置10のバレル13にぴったりはめることができる。スリーブ34をバレル13の周りに受けるために、ハウジング12を外すことができる。現在考えられている一つの実施形態では、サンプル50は、装置10のウインドウ14に対してぴったり位置調整される。脚52は架台16又はプレート16にはめ込まれて、キャップ・デバイス24を方向付ける。キャップ24を逆向きにし、ウインドウ14に対する高い値のサンプル50を低い値のサンプル50と交換することができる。
【0061】
図3Cを参照すると、本発明による精度キャップ24の実施形態の一つの変形において、低い値のサンプル50aを、オフセット距離55をおいてサンプル・キャップ24構造の中にセットすることができる。すなわち、50a、50bを形成しているフィルムの材料は、その配向性高分子繊維の回転や配向に敏感に影響されるだけでなく、ある程度Bierの法則に支配される。サンプル50aのウインドウ14からの距離55又はオフセット55は、ウインドウ14からの光ビームに対するサンプル50aの放射応答に影響を与えることになる。
【0062】
これにより、オフセット55を選定し計算して、サンプル50aの放射応答の所定の低減度を得ることができる。同様に、高い値のサンプル50bをウインドウ14と同一の面位置に保持するか、又は異なるオフセット55に位置させることができる。このように、実際は一つの放射応答値しか持たない一つの材料から、単に、低い値のサンプル50aを高い方の値のサンプル50bよりも深い又は大きなオフセット距離55に配置することによって、実際上、異なる放射応答を生成するようにして使うことができる。
【0063】
図3Dを参照すると、ダーク・キャップ22は、ウインドウ14に対向して配置され、ウインドウ14からのビームに対し角度の付いた凹形面40を曝している。これにより、ビームは、放射応答としてウインドウ14を通り戻ることなく散乱する。このように、ダーク・キャップ22の放射応答は、ほぼゼロレスポンスとなり、結果として、装置10の電気的及び電子的アーチファクト(例えば、誤差、ノイズなど)に対応するバックグラウンド値のデータを生成する。
【0064】
図4−7を参照すると、装着キャップ26又は自己装着キャップ26には、支持架18に合うサイズにしたマウント56を含めることができる。接合用ブラケット58はマウント56に対して閉じる。操作者は、ハンドル59をマウント56に向けて動かし、戻り止め57をかみ合わせ、ブラケット58のマウント56に対する閉状態をしっかりと保持する。
【0065】
自己装着キャップ26は、バレル13の面15に向け、マウント56上をスライド可能なスリーブ34を含む。かくして、肩36によりサンプル50はウインドウ14に対し位置合わせされ、適正で再現可能な放射応答を実現する。通常、支持架18は、マウント56とブラケット58との間に形成される開口部60によって受けられる。こうして、受け部62が十分ウインドウ14に近接し、スリーブ34及び肩36が、ウインドウ14及びバレル13の面15に対し適切に配置されるような位置にマウント56を調整することができる。
【0066】
現在考えられている一つの実施形態では、受け部62は、その中を通りハンドル66で位置決めできるプランジャー64を受ける。ハンドル66を後に引き、スリーブ34と受け部62との間のばね68を圧縮することができる。プランジャー64は、受け部62とプランジャー64との間で作動する戻り止め(図示せず)により留められる。これにより、スリーブ34及び肩36は、それらが支えるサンプル50とともに、ウインドウ14から効果的に引き下げられる。このような位置にしておいて、図6に示すように、装置10の支持架18を開口部60内に通し、スリーブ34をバレル13近縁に配置することができる。
【0067】
ハンドル66を、バレル13及びこれに含まれるウインドウ14に向けて押し、戻り止めを乗り越えると、ばね68は、スリーブ34、肩36、及びそれに含まれるサンプル50をウインドウ14に向けて押し付ける。肩36は面15に対して位置合わせされる。肩36と面15との位置合わせにより、サンプル50はウインドウ14に対向して位置付けされる。
【0068】
現在考えられている一つの実施形態では、スペーサ72は、スリーブ34の横断又は半径方向にこれを通り抜けて終端74まで延びている。サンプル50を露出できるように、スペーサ72には穴が開いている。しかしながら、図5に示すように、スペーサ72が占める厚さ76、又は立ち幅76によって、サンプル50aは、バレル13のウインドウ14から距離76だけ遠く間隔をあけられている。ウインドウ14からの照射に対するサンプル50の放射応答を、十分に低減させるオフセット76を計算、試験して、放射応答の「低い値」を得る。
【0069】
スペーサ72の挿入口穴78を、出口穴79よりも大きくすることができる。そこで、端部74の断面をスペーサ72の大きさより小さくすることができる。これにより、スリーブ34内でスペーサの位置を調整して、サンプル50を露出している開口部の安定した位置決めをすることができる。ハンドル66を、バレル13及び囲まれたウインドウ14の方に押すことによって、受け部62を通りプランジャー64を前進させる。プランジャー64は、スリーブ34、肩36、及びサンプル50をウインドウ14に向けて前進させる。同様に、スペーサ72は、肩36を、ウインドウ14からより遠くの位置に置き、それ自体72が肩36の機能を果たす。
【0070】
このような環境において、ばね68は、スリーブ34及び肩36を、内包されるサンプル50とともに、可能な程度において面13及びウインドウ14に押し当てる。こうして、ウインドウ14に対するサンプル50の繰り返し位置合わせが成就される。一方、スペーサ72は、ウインドウ14に対するサンプル50位置の距離の差の効果によって、サンプル50から第二又はより低い放射応答を提供する。
【0071】
図8−9を参照すると、二重キャップ28又は二重端キャップ28には、対向する両端からのスライド82a、82bを収納するフレーム80を含めることができる。スライド82a、82bは、それぞれのスリーブ34a、34bを搭載している。各スリーブ34a、34bは、必要に応じ、適切なスペーサ72によって、それぞれのサンプル50a、50bにオフセットを与えることができる。作動において、ばね68はスライド82を押し離している。
【0072】
フレーム80の壁を抜けるスロット86中で作動するハンドル84は、スライド82に固定され、スライド82を引き込む。すなわち、例えば、ユーザは、ハンドル84、又はプレート88を具えたハンドル84、又は親指プレート88を具えたハンドル84を一緒に引いて、それぞれのスリーブ34a、34bとともにスライド82a、82bを引き込むことができる。このようなやり方で、装置28又はキャップ・システム28の有効長さ89を、ウインドウ14又は面15とシールド20との間で低減し容易に合わせることができる。
【0073】
これにより、フレーム80を、ウインドウ14の下の架台16又はデッキ16に具合よく設置する。ユーザがハンドル84を放すと、ばね68はそれぞれのスライド82及び対応するスリーブ34を押し離す。一つのスリーブ34a、34bはシールド20に接し、反対側のスリーブ34a、34bはバレル13を囲み、その側の肩36を、面15と内包されるウインドウ14とに位置合わせすることになる。このように、ウインドウ14に対し肩36をきちんと合わせることにより、サンプル50を、装置10からウインドウ14を通して受ける照射に応答して、ウインドウ14を通して所定の較正用放射応答を返すために適切な位置に設定することができる。
【0074】
図10を参照すると、マスタサンプル30には、中性サンプル90、低い値のサンプル92、及び高い値のサンプル94を含めることができる。これら3つのサンプル90、92、94を適切に表示されたケース96中に保持することにより、工場の較正で、機械間の動作状況バラツキをほとんどなくすことができる標準のセットを提供する。すなわち、マスタサンプル30又はサンプルセット30は、生産された各々の装置10が、同一のサンプル材料に対しほぼ等しい読み取りを提示することを保証するための較正標準を提供する。
【0075】
マスタサンプル30を、面15及びウインドウ14に直接固着することができる。通常、ウインドウ14は、カラー(collar)98又は他の内部の位置合わせ機構のような何らかの機構で、バレル13又はその内部に固定される。これにより、ウインドウ14それ自体が、サンプル30の実際の位置を決定する。
【0076】
サンプル30は、透明部分や半透明部分が生じないよう十分に厚くすべきである。同様に、サンプル30でウインドウを完全に覆って、周辺光が生じないようにすべきである。同じ理由で、周辺光を適切に排除し、試験被験体の距離合わせのため、被験体の手、腕又は他の身体部分を、同様にウインドウ14に直接接触するようにおくことができる。
【0077】
本出願人は、マスタサンプル30を、ポリマー組成により効果的に形成できることを発見した。現在考えられている一つの実施形態では、ダウ・コーニング(Dow Corning)3179ダイラタント複合材として知られる材料が、人体組織の特定の特質を非常に効果的に模擬するため大いに有効であることを発見した。一般に、ホウ酸で架橋されたシリコーンオイルは、ヒトの皮膚から検出されるものとの対比において、類似した反射度又は弾性光散乱、及び類似の蛍光を生成するために非常に効果的であることを発見した。
【0078】
現在考えられている一つの実施形態では、マスタサンプル・セット30に、特に中性サンプル90又はホワイトスキャン・サンプル90には、ジメチルシロキサンを含有させることができる。これは、ホウ酸を持つ末端水酸基ポリマー類である。さらに、水晶、及び市販の増粘剤としてのシリカを組成に加えることができる。この増粘剤は、製造者がチクソトロル(thixotrol)STという商品名を付けている。
【0079】
含有させる他のシリコーン組成物には、ポリジメチルシロキサン、及び微量のデカメチルシクロペンタシロキサンが含まれる。類似量のグリセリン及び二酸化チタンをこれらの成分に添加することができる。
【0080】
現在考えられている一つの実施形態では、マスタサンプル30、特に中性サンプル90を形成するマトリクスは、約65パーセントのジメチルシロキサン、17パーセントのシリカ、9パーセントの増粘剤、4パーセントのポリジメチルシロキサン、1パーセントのデカメチルシクロペンタシロキサン、1パーセントのグリセリン、及び1パーセントの二酸化チタンを含有する。中性サンプル90を形成するマトリクスは、粘弾性材料として特徴付けることができる。すなわち、材料90は、高速度のひずみ(例えば、衝撃)に対しては弾力的に応答し、比較して非常に低速度の応力及びひずみ(例えば、それ自体の重量)に対しては液体として応答する。
【0081】
中性サンプル90中にドーピング剤又はドーパントを混ぜて、低い値のサンプル材料92及び高い値のサンプル材料94を生成することができる。天然材料又は生物学的供給源からの「有機」材料は、効果的であることが分かっている。例えば、高い値のカロチノイドを含有する食品を砕いて(例えば、粉砕する、すりつぶすなど)マトリクス90に混合することができる。トマト、にんじん、野菜類、果物類、及び適切なカロチノイド量を含有する類似食品を、マトリクス90の中に混合又は溶解して、サンプル92、94を生成することができる。
【0082】
また、本出願人らは、カロチノイドの炭素結合の作用を示す合成材料をすりつぶし、又は挽いて、又は他の方法で砕いて、マトリクス90の中に分散し、低い値のサンプル92及び高い値のサンプル94を生成できることを発見した。例えば、ホワイトスキャン・サンプル90、低い値のサンプル92、及び高い値のサンプル94を含むマスタサンプル30を使い工場較正を行って、装置10の機械間バラツキを除去することができる。
【0083】
すなわち、ミクロ粉砕した又は微細に砕いた、カロチノイドによく似た放射応答特性を持つ合成材料の種々の濃度のものを、高い値のサンプル94及び低い値のサンプル92として、非常に安定で繰り返し使え再現性のあるサンプルとして利用することができる。マトリクス90中のこのような合成ドーパントの濃度を調整して、低い値又は「低」材料92を適切な低さの値とし、高い値又は「高」材料94を適切な高さの値とすることができる。
【0084】
ポリビニールアルコールから作ったある種の材料が、このドーピング機能を行う働きをすることを発見した。例えば、オリゴマーと呼ばれる長いポリマーからKタイプの偏光フィルム材料を形成する。このような材料は偏光フィルタとして使用される。これらを偏光フィルムとして基材の上に形成することができる。これらの材料は、ポリビニレン及びポリビニルアルコールの配向性ブロックセグメントを包含する分子レベル配向性のポリビニルアルコールから形成される。具体的には、このようなKタイプの高分子材料は、ポリビニルアルコール/ポリビニレンブロック共重合体材料を含み、ポリビニレン・ブロックはポリビニレンアルコールのシートの分子脱水によって形成される。
【0085】
これより、このシートは、ポリビニルアルコール/ポリビニレン・ブロック共重合体材料の長さの異なる光偏光分子の均一な分布を形成する。この長さは、共重合体のポリビニレン・ブロックの共役な繰り返しビニレンユニットの、2から24までの範囲の大数nによって定まる長さである。
【0086】
各ポリビニレン・ブロックの集中は、200から700ナノメータの範囲の波長を吸収する傾向があり、大体において比較的一定である。これら材料のフィルムは、スペクトル二色比すなわちR(D)によって識別される。二色比は、ポリビニレン・ブロックの長さnの増大とともに増大する。このように、ポリビニレン・ブロックの集中及び分子の配向度により、少なくとも約45台の光学的二色比が得られる。このような材料はさまざまなメーカーによって生産されていて、米国特許第5,666,223号に開示されており、この特許を参考として本明細書に組み込む。
【0087】
本出願人は、このような材料を非常に微細な粉砕サイズに砕くことにより、ダイラタント複合材のマトリクス90内にうまく分布させることのできるドーパントが得られ、適切な低い値の材料92及び高い値の材料94を作成できることを発見した。ドーパントは、CAB/Kタイプ材料の処理表面を砕いて得ることができる。Kタイプ材料自体を挽いて、削って又は他の方法で粉砕してドーパントとして利用することができる。現在考えられている一つの実施形態では、不純物を防止するための閉じた面を持つ、400グリットのエメリー研磨紙を使って、ドーパント材料を一体固体シート形状から粉末に挽いた。粉末は長方形の結晶を形成しているように見える。この粉末を、化学分野で公知の200番ふるいを通して分級すると適切に機能する。100番又は50番ふるいのような、これより大きな粒子でも使えるが、サイズ及び分布の均一性により結果の均一性が向上するようである。
【0088】
ヒト被験体のサンプルを幅広く試験することで、低い値及び高い値のサンプル92、94の値を確かにすることができる。しかる後、マトリクス90に適切な量のドーパントを添加して、インビボのヒト組織に対応して、放射応答の比較的高い及び比較的低い範囲を代表する適切な低い値の材料92及び適切な高い値の材料94を得ることができる。
【0089】
マスタサンプル30は、合成材料から再現性を持って合成でき、非常に安定した結果が得られるので、高い有用性を提供する。放射(例えば、光)が、試験及び較正の基となる材料中の分子結合に影響を与え得る程度において、マトリクス90を成型し異なった粒子にして暴露することができる。すなわち、マトリクス90を成型可能なプラスチック又は粘弾性的な材料とし、これを成型又は混練して、選定した量のドーパントをくまなく均等に分散させることができる。
【0090】
同様に、連続した又は長期の放射を受けた結果としてドーパント材料が化学構造を変え得る程度において、マスタサンプル30を混練して、ドーパントを再分散させ、装置10のウインドウ14からの照射に対して、連続的で、ほぼ一定値の放射応答を得ることができる。
【0091】
図11A−11Dを参照すると、こういったフィルム材料を、精度キャップ24中の日毎の較正材料として直接利用することができる。本出願人らは、ヒトの個体又は組織のサンプルをスキャンすることは、安全、倍率設定など幾多の問題、及び、広範囲すぎて制御不可能な装置10の動作状態の変動をもたらすことに気付いた。合成材料により日常較正を行い、さまざまな条件の変動を分析する方がもっと適切である。例えば、温度、湿度、電子的ドリフトなどにより装置10の構成要素の動作が変化する可能性がある。従って、各々のスキャン作業開始時に、又は一つのスキャン作業内であっても、長時間経過後には装置10を較正するのが適切であろう。
【0092】
装置10の較正に使用する精度キャップ24をこの装置10にひもでつないでおく。後に、機械の経年、条件の変化などに応じて、装置10を再較正し、スキャンから得られた数値が、予測可能で一貫性があり再現可能な仕方で出力できるようにすることができる。
【0093】
一つの実施形態において、精度キャップ24の中に設けられるサンプル50を円偏光素子として機能させることができる。円偏光素子は、リニア偏光素子を4分の1波長遅延素子と組み合わせたものである。無偏光の光は、リニア偏光素子を通過して一方向に方向付けされる。次にそれが4分の1波長遅延素子を通って円偏光される。すなわち、らせん状に「回転」することになる。表面に当たると反射され、反射した面かららせん状で逆方向に戻る。戻る光は、当初の偏光素子を逆通過する能力を制限されている。ビームは、偏光素子の伝送軸に対し90度の差のある新しい指向方向のリニア偏光を受け、相互に直角に方向付けされた2つの偏光素子と同様な効果を持つ障害に出会ったことになる。
【0094】
入射光に対して放射応答を提供する材料を保護するために、保護塗料を塗布することができる。特定の実施形態において、サンプル50のフィルムには、酢酸酪酸セルロース(CAB)の支持シートの間のサンドイッチ構成の中に配列、延伸されたポリビニルアルコール(PVA)の薄いシートを含めることができる。
【0095】
図11Aを参照すると、光を、垂直配向性の波104として、入射軸102(例えば、軸102a、102b)に沿って当てることができる。図示したような方向性を持つ配向性フィルム110に当たった結果、垂直波は出射軸106に沿って通過することができる。かくて、通過波108は、入射波104と同じ方向性を持つシート110を通過する。なお、フィルム110を通過できる波104の配向は、実際には、フィルム110を形成するポリマー又はオリゴマーの連鎖の実際方向と直行している。
【0096】
同様に、入射軸102bに沿って水平に方向付けられた波112が、垂直に方向付けられたフィルム110に接近した場合には、波はフィルム110に吸収されるか、反射されて軸116bに沿って進行する反射波114になる。方向付けされていないビーム101は、たぶん、あらゆる方向の配向性を持つ光101を含むことになろう。ビーム101が垂直に方向付けられたフィルム110上に当たると、垂直成分の波104は通過波108として通過し、水平成分の波112は吸収されるか、反射波114として反射される。
【0097】
図11Bを参照すると、軸102bに沿って当たった水平波112は、水平に指向されたフィルム120に当たった後、退去軸106bに沿った通過波118になる。しかしながら、ビーム101が垂直偏光フィルム110によって効果的に「分割」されるのと同様に、入射経路102aに沿って水平偏光フィルム120に当たるビーム101又はその垂直成分波104は、フィルムによって垂直成分を吸収されるか、経路116aに沿った反射波122として反射されることになり、これに対しては違った放射応答が生成されることになろう。実際的問題として、フィルム120がコヒーレント光の入射光線101に対してきっちりと法線方向に指向されていれば、経路102aと116aとは同一経路となろう。他の事象については他の反射法則が適用される。
【0098】
図11Cを参照すると、現在考えられている一つの実施形態では、3M Companyから入手可能なKNCP35円偏光フィルタとして知られるフィルムは、部分的に配向され、これにより4分の1波長偏光素子として動作するポリビニルアルコール(PVA)層124aを具えている。その後ろに光学的に透明な酢酸酪酸セルロース(CAB)の層124b、さらにその後方に、配向性を得るために10倍伸長された、ホウ酸架橋のポリビニルアルコール及びポリビニレンの別の層124cを配置することができる。
【0099】
第一方向に伸長されたプラスチックは、長い分子のリニア配向方向と直行する方向に配向された光を通過させる。スキャン装置10からの光ビーム101が二色フィルタを通過する際には、光の偏光は制御されない。しかしながら、サンプル50として機能するフィルム110、120は、偏光に大きく影響される。
【0100】
これらにより、精度キャップ24は各装置10によって異なった挙動をすることになる。現在考えられている一つの実施形態では、装置10のウインドウ14から発する光ビーム101の偏光又は偏りがどうであれ、そのまま許容することになる。とはいっても、日常較正プロセスに使用する精度キャップ24中のサンプルフィルム50の配向性は、再現性がなければならない。
【0101】
従って、材料50を方向付けすることができ、その指向方向はキャップ・システム24に対して固定されこれに沿って配向されることになる。同じ様に、キャップ24は、ウインドウ14下側のデッキ16又は架台16上に脚52で配向されることになる。一部の実施形態において、図11Cのフィルムを基材上に積層することができる。例えば、ベース124dを、ガラス又は類似材料で形成することができる。別の実施形態においては、ベース124dは使われない。ベースでなく、間にある光学的透明層124bに構造上CAB基材の役割を持たせることができる。
【0102】
特定の実施形態において、高及び低フィルム・サンプル50を、ただ一つのフィルム組成で作成し、異なる位置に配置して、比較的に高い、及び低い放射応答(例えば、読み取り)を得ることができる。他の実施形態において、高い値及び低い値のサンプルに対し異なったフィルムを使うことができる。例えば、HRタイプとして知られるフィルムは、放射応答の比較的に低い値を提供することができる。このようなフィルムは、炭素原子の二重結合の特定なセットを持つポリビニルアルコール/ポリビニレンである。また、この材料は、しばしばヨウ素でドープされて赤外分光法に用いられる。
【0103】
これに対して、3M Companyから入手可能なKNCP35及び他の類似構成の「Kベース」フィルムとして知られるフィルムは、装置10のウインドウ14からのビーム101による照射に曝されたときに、比較的に高い放射応答値を提供する。KNCP35タイプのフィルムは、前述した、円偏光のサンドイッチHRタイプのフィルムとして作用する。
【0104】
較正のためのスキャナ出力(強度、スコアなど)の低い値は、HRタイプのフィルム110、120を使って得ることができる。このようなフィルムには、ベース124dの有無に関わらず、図11Cに示すようなPVA124a、CAB124b、及びKタイプフィルム124cが含まれる。これに対し、較正のためのスキャナ出力の高い値は、図11Dのような、Kタイプ・フィルムを光学的に透明なCABのシールド層に接合したフィルム110、120から得ることができよう。
【0105】
図12を参照すると、本出願人らは、非組織材料125aは、装置10のウインドウ14からのビーム101に曝されると、比較的透明で明確な形状126aをとることを観察した。交差部分の領域127aは、他の領域127c、127bの内側にある127b、127cとして、もしくは図のようにオフセットに位置付けされることがある。ウインドウ14から進んでくるビーム101の照射領域を表している光源エンベロープ127bの面積又はサイズよりも、交差部分127aがかなり小さくなることがある。同様に、交差部分の面積127aが、検出器エンベロープ127cの面積127cよりもかなり小さくなり、これとずれることがある。
【0106】
すなわち、光源に照射されている領域、光源エンベロープ127bと、装置10内の検出器に「読み取られる」領域、検出器エンベロープ127cとがずれることがある。従って、面積127aは、サンプル、較正材料30などの真の放射応答を表すためには不十分になることがある。
【0107】
これに対し、ヒトの皮膚及びドープされないマトリクス125b(マスタサンプル・セット30中の中性材料90)はブルーミング応答127bを生じる。他の多くの材料で見られる澄んで明確なエンベロープ127b、127cでなく、人間の皮膚、及び、ドープされない、マスタサンプル30中の中性サンプル90又はホワイトスキャン・サンプル90のマトリクス125bはブルーミング形状126bを生ずる。このブルーミング形状126bは、大きく拡がった形状126bにおいて、放射応答、反射、散乱などの面積が拡大したことによるものと考えられる。ブルーミング形状126b又は効果126bは、光源エンベロープ127bと検出器エンベロープ127cとの間にはるかに良好な交差部分127aをもたらす。
【0108】
このように、ドープしないマトリクス125b(例えば、材料90)は、カロチノイドや類似の炭素結合を含有する他の材料によるラマン散乱が除かれた、人間の皮膚の挙動を比較的正確に表現する。ドープなしのマトリクス125bを較正サンプルとして使用することにより、皮膚の弾性散乱部分及び蛍光を反映する曲線126eを実現することができる。
【0109】
これに対し、天然材料、又は、カロチノイドや他の目的の分子構造体の挙動を模擬するための適切な炭素結合構造を持つ合成材料などの、ドーパント剤125cは、ラマン応答として識別される曲線126cを提供する。このように、ピーク、特に、典型的には510ナノメータ波長において見られる最も高いピークは、装置10のウインドウ14から試験サンプル30、50を照射する光によるドーパント125cに対する照射からもたらされたものである。
【0110】
本出願人らは、ドーパント125cをマトリクス125b中に混合することにより、人間の皮膚を信頼性と再現性を持って実質的に模擬できるマスタサンプル30を作成できることを発見した。マスタサンプル30を照射し、読み取って(例えば、スキャン)取得された、波長の関数としての強度曲線140は、対象の皮膚に予測される全スペクトル・プロフィール140を提供する。ドープされないマトリクス125bで構成される中性サンプル90は、照射光の弾性散乱及び皮膚の自然蛍光の影響を識別し、これにより、これら影響を排除できる曲線126eを提供する。他方、マスタサンプル30の低い値のサンプル92及び高い値のサンプル94の中の異なる濃度のドーピングは、比べて異なる曲線140、及び特にこれに寄与するラマン応答の曲線126cを提供する。
【0111】
引き続き図1〜12を全般的に参照しながら、図13〜15を参照すると、波長軸132を定義域とし、強度軸134を値域(range)として図示したあるチャートは、473ナノメータの波長136及び510ナノメータの波長138を概略的に示している。473ナノメータの波長136は、放射応答の曲線140中の固有のアーチファクトであって、そこにほぼ集中する弾性散乱ピーク142である。一方、曲線140の蛍光応答144を表す大きなドーム144は、特徴的な510ナノメータ波長138の両側に張り出している。
【0112】
一般に、弾性曲線142に示される弾性散乱は、ウインドウ14から投射されたビーム101の入射周波数を持つ反射光と考えられる。周波数と波長とは逆数であり置き換えが可能なので、その双方をデータ取得の定義域にして説明することができる。曲線140の蛍光部分144は、吸収された光の周波数と異なった周波数の光の再放射であり、通常、岩石や人間の皮膚など、特定の材料の表面からのものである。
【0113】
比較的小さな発端のピーク146、148は、特徴的な510ナノメータ波長138におけるラマン散乱を表している。これより大きくて見分けの付くピーク150は、510ナノメータ波長138周りのラマン応答を表している。
【0114】
図14を参照すると、曲線140のラマン散乱部分146、148、150は、ある程度バックグラウンド・ノイズ152に影響されることがある。それはあっても、元の放射応答曲線140を修正し、弾性散乱部分142及び蛍光部分144を除去することによって、ラマン散乱曲線146、148、150の信号対ノイズ比は大幅に改善される。通常、対象とする領域(region)を510ナノメータ波長領域周辺、対象域の下限154の約450ナノメータから、上限156の約550ナノメータまでとする。
【0115】
ホワイトフィールド(white field)正規化を実施して、図14の曲線140を得ることができる。これはホワイトスキャン曲線140(ドープなし中性サンプル90によるスキャンに基づく)を活性スキャン曲線140(ドープされた又は活性材料サンプルのスキャンに基づく)と対比して行うことができる。そこで、ホワイトスキャンを使って弾性散乱部分142及び蛍光部分144の影響を排除することができる。ホワイトスキャン曲線140を活性スキャン曲線から差し引くか又はこれにより除算することができる。多くの数の小さな差異が必要となるので減算は厄介となろう。ホワイトスキャンで活性スキャンを除算することで2つの曲線140中の共通な影響が正規化除去され、図14に示すように、ピーク146、148、150が浮き彫りにされる。
【0116】
図14の全体曲線151は、ほぼ平らな又は一定のベースライン曲線158を示しているが、常にこうなるとは限らない。すなわち、ベースライン曲線がゼロでない勾配を持つことがある。といっても、例示概略図の中では、必要により、誇張したり最小化したりすることがある。
【0117】
ホワイトフィールド正規化スキャン又はホワイトスキャンは、装置10の制御パラメータを調整(例えば、較正)し、これらの装置10が、所定の較正被験体30のスキャンに対して同一な出力を生成することを保証するための役割を果たすことができる。中性サンプル90又はホワイトスキャン・サンプル90のドープなしマトリクス125bを持つことにより、活性材料(例えば、ドープ材、活性化材など)からの実質データを正規化するためのホワイトスキャンを実施する能力が持てる。ホワイトスキャンを、ダークキャップ22を使って行われるダークスキャンとほとんど同程度に用いることができる。ホワイトスキャンを使って、被験体の弾性散乱142及び蛍光144応答(放射応答)をはじめ、装置10の光学システムの光学的アーチファクトを取り去ることができる。これは、スキャナ10の電気的及び電子的影響に起因する、電気的及び電子的アーチファクト(例えば、誤差、不整合、バックグラウンド、ノイズなど)に対応する。
【0118】
本出願人らは、ダイラタント複合材を、中性サンプル90(例えば、ドープなしマトリクス125b)として利用でき、ダークキャップ(例えば、ダーク・スキャン)が電気的アーチファクトに対して行うのと同様に、この複合材は、光学的なアーチファクト及びバックグラウンド放射応答に対し、かなりの抑制及び正規化作用を行うことを見出した。これらの効果を曲線140から除去することにより、得られたラマン散乱曲線151の信号対ノイズ比を向上することができる。この点において、ホワイトスキャンを「フィルタリング」機構と見なすことができよう。
【0119】
例えば、曲線140の弾性応答部分142及び蛍光部分144は、は、ウインドウ14からの光ビーム101に対する被験体(人、サンプルなど)の全体的な放射応答の一部を表している。ドープなしのマトリクス125bで形成されるホワイトスキャン・サンプル90又は中性サンプル90は、正規化して除去することになる2つの部分142、144を提示する。これにより、ホワイトスキャンからの曲線140を基準合わせして(チャート中の値域の値を合わせ調整する)、活性スキャン(ドープされたサンプル92、94などを使う)から得た曲線140にぴったり合わせてから除算する。
【0120】
2つの曲線140を相互に1点ずつ(又は他の任意な適切な方法で)除算することができる。2つの曲線の差を求めることもできなくはないが、かなり多数の値の間での小さな差異によって、信号対ノイズ比はかなりの制限を受けることになろう。ホワイトフィールド正規化又はフラットフィールド(flat field)正規化は、通常、初めに2つの曲線を同一の値域にぴったりと合わせ、次に除算して、点(定義域の一切の位置における値域の値)の相対的な大きさがほぼ等しい新しい正規化曲線を得る。この除算は、合理的な範囲で一貫性のある結果をもたらす。通常、これにより信号対ノイズ比の大幅な向上が得られ、活性材料(例えば、サンプル92、94)とホワイト・サンプル90との間の違いが浮き彫りになる。
【0121】
このように、ホワイトフィールド正規化、又は中性サンプル90を使ったホワイトスキャンは、ダークスキャンではまだ除去されていない、バックグラウンド、電子的、他の波長、強度、光の収差、ノイズなどの影響を計算除去するための曲線126eを効果的に提供する。ダークスキャンによる、曲線140中の電気的及び電子的アーチファクトの削減と合わせ、天然の被験体のスキャンを用いることもできる。
【0122】
マスタサンプル30の合成サンプル90、92、94には、生体の持つバラツキ、腐食しやすさなどがない。そうでありながら、ダイラタント複合材は、シリコーン自体は他面では光学的に透明にできるという事実にもかかわらず、皮膚とほぼ同様な蛍光及び反射率を備えている。
【0123】
マスタサンプル30の中性サンプル90を形成しているドープなしマトリクス125bは、実際には固体(solidus)ソリダスな有機材料(例えば、食材、栄養素の結晶など)を効率的に吸収し、また、液状材料も吸収する。一部の実施形態において、中性サンプル90を形成しているダイラタント複合材は、実際は少量の水を含有している。アルコール、アセトン、又は四塩化炭素などのような他の溶剤を使って、材料をダイラタント複合材に取り入れることができる。
【0124】
ベース材料90又は中性サンプル90は、皮膚を模擬しているが、対応するドーパント125cがないので実質上「カロチノイド模擬」はしていない。本出願人らは、200番メッシュふるいを100パーセント通る固体粒子サイズが満足できるものであることを発見した。マトリクス125b(中性サンプル90)全体に均等にブレンドされた十分に均一な粒子が、低い値のサンプル92及び高い値のサンプル94の均一な結果を与えるようである。
【0125】
同様に、ホワイトフィールド補正、又は「ホワイトスキャン」補正をしない場合、サンプルに過大な不均一性が生じることも重要である。固体結晶は幾分信頼性に欠け、ブルーミング効果126bをもたらさないことが分かった。液体は、一般に、適当な結果を得るためには十分な均一性及び不透過度に欠けることが分かった。手の均一性をベースに、手を使っていく台かの機械を較正することができる。多数の機械を手を使って較正するやり方は、手の利用可能性及び均一性によって制限される。液体中に懸濁された材料の一サンプルも概して信頼性を示さなかった。不透明な材料とともにドーパント125cを使うことによって適切な懸濁液を得ることができる。
【0126】
そういったことはあるが、ダイラタント複合材の粘弾性材料は、適切な不透過性、放射応答、弾性を示し、粘着性及びドーパント125cを均一に懸濁させ、分布させる能力を示した。この材料は、放射応答140の反射部分142及び蛍光部分144をほぼ皮膚のものと同じに模擬する並外れた能力を示した。
【0127】
中性サンプル90として又はドープサンプル92、94として、ダイラタント複合材をスキャンするにあっての一つの注意点は、曲線140中のラマン散乱ピーク150に関する。主ピーク150は炭素二重結合に関連するように見える。ピーク148は、一重炭素結合からのラマン散乱によりもたらされたものと思われる。同様に、ピーク146は、メチル基に付着している一重炭素結合からのラマン散乱からきたように見える。すべてのピーク146、148、150がそのままぴったりと整合はしそうにない。値は相対的なものであるが、関係はない。
【0128】
任意の適切な基準を取って較正を実施することができる。例えば、弾性応答142と蛍光応答144とを除去した曲線140のベース値をゼロに設定することができる。一方で、ラマン散乱ピーク150の最大値を1の値に設定することができる。同様に、ベースラインをゼロに設定し、最大値を100にすることもできよう。現在考えられている一つの実施形態では、ラマン散乱ピーク150の最大値を6万を超える値又は寄与値にし、例えば67,000に設定することができる。同様に、低い値を、スケールの限度に応じて適切な値に設定することができる。
【0129】
実際上は、被験者に対する実際の範囲は、単に、約67,000の最大強度値に基づいて、部分的には、特定レベルのレーザ出力における光子カウントを概算した任意のスケールにより決められた。このような尺度上での人間の皮膚のスキャンの実際の値は、低いものは20,000あたりから高いものは50,000台の間の範囲にわたることになろう。もちろん、これらは人によって異なる。しかしながら、現在考えられている一つの実施形態における任意の強度スケールはあったとしても、ゼロから67,000までの範囲は適切である。これにより、数学、信号処理及び他の技術で知られているような任意の適切な間隔で簡単に目盛りし、マップすることが可能となろう。
【0130】
例えば、この範囲をゼロから1、マイナス1から1、ゼロから10、1から10、1から100などなどにスケールすることができる。いうなれば、尺度というものは常にいくらかは任意なものである。事実上、常に値を目盛ることができる。
【0131】
ドーパント125cを適切なドーパントなしマトリクス125bに添加して、標準化された「合成組織」として適当な範囲を表すのに適した妥当なマスタサンプル30を作成することができる。本出願人らは、較正のための標準を開発し、ウインドウ14からのビーム101による照射に対する被験体の放射応答に依存する出力を標準化することができた。このような較正材料、構造体、及び方法が出現するまでは、装置からの数字の出力は単に無原則な数値であり、十分に解釈のできる値を提供しなかった。
【0132】
図15A−15Dを参照すると、電子的及び電気的アーチファクト、反射又は弾性光部分142、及び蛍光144を補正された放射応答の曲線140は、残ったデータ曲線160で特徴付けられている。適切な数値手法によって、データ曲線160をベースライン曲線158に当てはめることができる。双方の曲線140、160の形状及び次数を適切な次数とすることができる。3次のベースライン曲線158が適切な当てはまりを示した。これより高い次数及び低い次数の使用もうまくできたが、高い次数は、数学的アーチファクトとして変則的なピークを生成することがある。より低い次数は、ピーク150を基調曲線160と対比するためには、粗すぎる当てはめを生成する可能性がある。
【0133】
ベースライン曲線158を形成する際には、目的のカロチノイドピーク150又はラマン散乱ピーク150の影響を含めないようにすべきである。ピーク150を検討から外すための境界点162a、162bを選定することができる。すなわち、境界点162a、162bによってピーク150を区切り、その内側にある点は、ベースライン158の曲線当てはめには含めない。同様にして、極値164a、164bを選定することができる。通常、中間点166a、166bは、それぞれの内側の境界162とそれぞれの外側の境界164との間のサンプリング周期に含まれる。通常、ピーク150の各々の側の境界162と164との間には約20個の点が含まれている。ベースライン曲線は、すべての点162、164、166にわたって当てはめられる。しかる後、ピーク150の最高値の強度をその下のベースライン158と対比することができる。
【0134】
図15B〜15Dを参照すると、実際の曲線160は、前に述べたダークスキャン、ホワイトスキャン及び適切な正規化によって補正され、データ中の望ましくないアーチファクト及び効果が除去されている。当てはめられたベースライン曲線158、それらが当てはめられた曲線160は、低い値のサンプル92、実際の手(インビボ被験体)、及び高い値のサンプル94の実際のスキャンを表している。
【0135】
較正において、一つの曲線を、これに沿って機械を較正するための基準とすることができる。これに対して、別の曲線を実際データ曲線とすることができる。これら曲線の間でマップを実行、さらに具体的に言えば、曲線のピークを合わせて、曲線どうしをほぼ整列させることができる。加えて、ピーク域150を最も正確にマップできよう。
【0136】
較正調整を、曲線の勾配及び切片を補正し、基準曲線の勾配及び切片に合わせる工程と考えることができる。すなわち、線形曲線当てはめを想定すると、勾配の補正により回転が得られ、切片の補正によって平行移動が得られる。実際の装置10において、パラメータを調整し、最も興味のあるピーク域150の下に横たわるベースライン曲線158に対する、係数及び信号減算、又は「勾配及び切片」を調整することができる。
【0137】
較正により少なくとも2つの目的が成就される。標準参照物質により、グローバルな機械間の一貫性(機械間整合性)が提供される。このことには、将来現場の較正で頼ることのできる、機械のためのベースライン158が含まれる。これにより、装置10に対する標準化されたセッティング方法が設定され、標準マスタサンプル30によって、どの個別装置10に対しても適切なベースライン曲線158を提供することができよう。
【0138】
装置10には、識別可能な機械固有の、60有余になんなんとする個別パラメータが確認されている。従って、工場較正では、どの2つの機械も同一のマスタサンプル30を同一に読み取ることできるようにパラメータをセットする。同様に、現場で装置10が再現性を持って使えるように、装置10の他の制御パラメータを調整する。かくして、装置10に割り当てられた、装置に固有のダーク・キャップ22及び精度キャップ24を使って工場で較正をすることにより、必要に応じ現場で装置10を、元の仕様に照らして較正をすることを保証できよう。
【0139】
ダーク・キャップ22は、非光学的ノイズ又はバックグラウンドを取り去る方法を提供する。同様に、ホワイトスキャン材料90又は中性サンプル90をスキャンして、蛍光バックグラウンド、反射光を取り出し、検出器(例えば、CCDなど)からの出力中のピクセルごとの偏差を正規化することができる。低い値のサンプル92を用いて低い値(例えば、一つの実施形態において約21,500)を設定できる。高い値のサンプル94を用いて高いレベルの値(例えば、約67、000)を設定できる
本発明による装置及び方法の一つの実施形態において、装置10に接続された又はそれに内蔵された、ノートパソコン、PDAのようなコンピュータ、又は他のプロセッサは、すべての較正計算を提供できるので、工場出荷後、又は工場以外でハードウエアを再設定する必要はない。例えば、装置10が工場で較正されたならば、制御、照射、及び被験体からの放射応答の検出は、すべて装置と一体になったソフトウエア中の較正ファクターに従って処理することができる。従って、装置10に内蔵された、又は外部から接続されたCPU又はプロセッサは、装置10を動作させるために必要なすべての処理を簡単に実施することができる。このように、較正は、実際にパラメータを操作するよりは、パラメータを計算処理する工程の多い作業となる。
【0140】
本発明による装置及び方法の一つの実施形態において、一つの被験体に対し、何回ものスキャン又は照射、及び放射応答の読み取りを行うことができる。例えば、現在考えられている一つの実施形態では、約300ミリ秒の持続時間(検出器による読み取りの収集時間)のスキャンを175回行うことができる。
【0141】
約1分以内に、およそ300ミリ秒の収集データで表わされた175ほどものスキャン、映像、写真などを取得することができる。本出願人らは、概してこのような一連のスキャンを3回行うことが効果的であることを見出した。各々が約300ミリ秒持続時間の175回のショート・スキャンを表す、これら3回の一連スキャンの処理結果の平均が、効果的で、再現性及び信頼性があることが分かった。
【0142】
300ミリ秒より大幅に長くしたスキャン期間は、装置10のセンサを飽和させることがある。スキャン時間を200ミリ秒より短くすると、検出量を大きくしても、得られる放射応答曲線140の信号対ノイズ比が悪化する傾向がある。
【0143】
本出願人らは、特定の「曲線スムージングアルゴリズム」を使用すると効果があることを見出した。例えば、サビツキー−ゴーレイ法とも呼ばれる手法は、ピークをこわさないで曲線をスムージングしてくれる。このように、熟練した操作者は、ピーク域150を観測し、境界点162a、162bを選定することができよう。実際上は、多くの手間による作業が最も効果的であろう。もちろん現在の数値解析手法を使って特定の自動処理をすることができる。しかし、主ピーク150の両側境界点162a、162bを設定するには、手作業による吟味が適切であることが分かった。しかる後、ベースライン曲線158を当てはめることができる。
【0144】
ピーク150に多項式を当てはめることができる。例えば、3次及び4次の多項式が適切であることが判明している。このように、曲線部分150中の最高値の読み取りの最高値ピクセルを極大として設定することができ、これから、これに対応するベースライン値を差し引く。
【0145】
対応するベースライン曲線値の上の、このピーク150の極大値を乗算することによって、個別の機械を個々に調整することができる。例えば、工場精度キャップ124を適切な調整ファクターによって適合させ、装置10の検出器の放射応答からの読み取りを、キャップ24に尺度合わせして、標準と整合させることができる。装置10が長期に使われるにつれ、時間ごと又は場所ごとにバラツキ状態が発生しよう。機械のウオームアップをすることで、ある程度の量のバラツキは低減される。
【0146】
現場較正は、キャップ24の読み取りとして最初に設定された値と、同一のキャップ24に対しそれが繋索されている装置10から得られた現時点の日毎の読み取りとを対比した比率を表す。
【0147】
図16を参照すると、式168は尺度のマッピングを表している。すでに尺度設定されているものも含め他の装置10を較正できる、特定のスタンダードを構築することができる。試験所のユニット又は他のデバイスをスタンダードとして設定することができる。システム又は装置10が提供する数値カウント(範囲、強度、出力など)は、実際は、検出強度の反映であり、特定の周波数及び波長で検出器に衝突する光子の数の関数である。実験段階の初期の装置は、十分な感度を持ち、ほとんど一個一個の光子カウントを提示した。このように、ゼロから67,000までの尺度における1カウントは、スキャンの結果として検出器にぶつかる光子の1カウントに近いものであった。
【0148】
装置10は、強度の測定が正確で再現性があるならば、あらゆる個別光子の到達に対応した記録するほどの感度は必要がない。各装置10は、所定のサンプル(例えば、マスタサンプル30、生体被験体など)を読み取り、検出した光の強度に対し同一の値を識別するスコア又は数値を出力する必要がある。よって、工場において各装置10を較正し、スタンダードに整合させる必要がある。合成マスタサンプル・セット30の構築は、このようなスタンダードを提供するものである。このスタンダード又はマスタサンプル30は、生物学的プロセス及び劣化の予測困難性に影響されないので、人間や植物材料のような生物サンプルから採取されたデータよりも信頼性がある。
【0149】
図16において、皮膚カロチノイド・スコアSCSは、装置10の出力として得られた読み取りに対応するスコア又は数値である。較正において、これはマスタサンプル30の読み取りから出力された所定値である。これは値域(縦)軸に表される。定義域軸は、同一のスタンダード(例えば、マスタサンプル30)を使った較正において、機械10によって得られたラマン散乱強度に対応する値を表す。
【0150】
低及び高サンプル92、94に対し行われたスキャンに対応するピーク高さ150によって、線を定義することができる。高サンプル94は、所定の高い値(例えば一つの実施形態において67,000)として読み取られなければならならず、低サンプル92は、所定の低い値(例えば一つの実施形態において21,500)として読み取られなければならない。前に説明したように他の数値の尺度を使うことができ、前記所定数は一つの例として挙げたものである。
【0151】
機械10に対する較正結果として得られた何らかのピーク高さ150を、図16の直線、すなわち較正対象の機械の値域を標準試験(例えば、標準装置)において同じサンプルから得られた標準値のセットにマッピングして得られた線によって調整することができる。マップが作成され、工場較正に使う線形のマッピング式が得られる。係数(勾配Mを表す)及び信号減算(切片Bに該当する)を使って、較正対象スキャナからのどのインプット読み出し値(独立変数x)に対しても、標準読み出し値(従属変数yに対応)を求めることができる。
【0152】
このように、較正された機械10により行われたスキャンの結果得られた何らかのピーク高さ150を、標準値に換算する。この式は必要な2点だけで的確に定まる。というのは、ラマン散乱は線形の効果だからである。従って、機械の較正尺度をマップするために、これより高次の項は必要ない。
【0153】
実施において、皮膚被験体172は、通常、人の手のひらである。一方、ユーザの血清174(例えば、血流)中の分子構造の含有量を相関させることができる。皮膚被験体172の読み取りを、同一被験体の血清174内の栄養素成分(目的の分子構造)を体外評価によって測定した値にマップ又は相関付ける。
【0154】
従前は、カロチノイド含有量に対するラマンスキャン分光法の研究開発者は、死体からの破砕組織176に頼ってきた。そのスライド177をセットし固定するやり方は、本来的に現場較正に対するサンプルの供給及び再現性の欠如を免れない。照射にさらされるので、工場サンプル自体も深刻な再現性問題を抱えている。照射は、時としてカロチノイドの化学構造に影響を与える。従って、機械10評価のための工場サンプル自体が問題となり得る。さらに、こういったサンプル源から、再現性があり安定的なサンプルを得る望みがあるとは考えられない。
【0155】
こういったことから、本出願人らは、合成材料、有機材料などの懸濁液178で満たされたキュベットを用いた。ウインドウ14からのサンプルの距離が問題となる。不透明な懸濁液178を用いることが、この問題を解決する助力となる。
【0156】
実際には、ダイラタント複合材のマトリクス180(例えば、マスタサンプル30の中性サンプル90、又はドープなしのマトリクス125b)は必要な不透明性を具えており、技術的には液体である。この粘弾性材料は、ゆっくりではあるが、小さな力で流動する。
【0157】
前述したフィルム110、120のようなフィルム182、及び、入射ビーム101に応じて応答123又は放射応答123を提供する、材料124積層システムの使用は、安定的で、予測可能であり、非常に有用であることが判明した。その上に、これらのオリゴマー・フィルム182は、その配向性性質(例えば、偏光機能)によって、工場で整合されたシステムを現場で較正するための最適の材料となっている。
【0158】
例えば、装置10は、配向性のない光の、又は制御されない配向性を持つ光のビーム101を提供するので、これから発する光に特定の配向性を確実に与えるためには、装置10をもっと複雑にすることになろう。しかしながら、実際問題として、フィルム182サンプルに当たる光ビーム101に対する放射応答123から計算される応答曲線140中の目的のピーク150は必要がない。フィルム182の特定のサンプル50が機械10に合わされその整合が持続している限り、フィルム・サンプル50(例えば、182)の偏光効果は、再現性を持つものであり、較正ができ又は較正に対応することができる。
【0159】
ダイラタント複合材マトリクス180を、マスタサンプル30として、装置10のあらゆる操作者に配布したらどうかとの考え方もあろう。おそらくそうすることは可能であろう。しかしながら、そういった配布のためには、多量の材料、重量、及び幾多の管理及び保護に対する問題が生じる。例えば、マスタサンプル30の取り扱いによって、汚染、読み取りの変動などが生じる。これに対し、合成フィルム182は、十分に安定で、保護された、堅実な較正サンプルを代表している。
【0160】
他の材料184も使用することができる。ではあるが、不透明な材料、又は少なくとも十分に硬く、配置距離の効果に応答する材料が望ましい。例えば、前に説明したように、フィルム材料182で形成されたサンプル50を異なる距離で用い、あたかも、配置距離が被験体分子構造の濃度の差異の代りとなるようにして、異なった放射応答を表させることができる。
【0161】
図17を参照すると、較正プロセス188を、装置均一性制御プロセス190、及び条件均一性制御プロセス192として考えることができる。装置均一性管理プロセス190は、工場での適切な較正により成就される必要な機械間均一性の管理である。これに対し、条件均一性管理プロセス192は、単一の機械に対する、日毎又は測定時毎の均一性管理である。
【0162】
前に述べたように、ダークスキャン194を実施した後、装置10に関連する制御パラメータのバックグラウンド調整195を行い、装置に関連するCPUによって、そのCPUが装置10に内蔵されているか外部のものかに関わらず、ソフトウエア処理を行う。同様に、ビーム101によって中性サンプル90を照射し、それからの放射応答123を収集してホワイトスキャン196を得る。これにより、得られたデータ曲線140を用いて、データ曲線140の弾性及び蛍光部分に対して調整197を加えることができる。
【0163】
工場サンプル・スキャン198を、低い値のサンプル92又は高い値のサンプル94のいずれかを使って実施し、その後に、それぞれ、他方の高い値のサンプル94又は低い値のサンプル92のスキャン199を使って実施することができる。これら2つの、必要によりさらに多くの、データ点に基づいて、較正調整200を行うことができる。そこで、この較正調整によって、装置10内のパラメータとその影響を受ける読み取りとを調整する。装置10及びデータ処理法を調整して、これらからの出力が、同一のマスタサンプル30を用いた他の機械と比較して、曲線140、ベースライン158から出ている特性ピーク150の標準値と整合するようにする。
【0164】
精度キャップ24を使って、工場で条件均一性較正192を実施することができ、このキャップは、装置10の動作寿命の間これに繋索して置かれることになる。現場における条件均一性試験192を、ダークスキャン202から開始することができ、又は、当初実施のダークスキャン194に依存することもできる。そうであっても、条件均一性較正192を行うとした所定スキャン作業期間に生じた装置10及びその環境中のいろいろな条件バラツキを調整するため、通常、ダークスキャン202から現場の条件均一性較正192を開始する。ダークスキャン202に続いて、バックグラウンド調整203を実施し、データ曲線140から、装置10の電気的及び電子的な動作中のアーチファクト及び他の不整合を補正除外する。
【0165】
しかる後、キャップ24又は精度キャップ24中に内蔵されたサンプル50の現場サンプル・スキャン204が実施され、次に別のサンプルのスキャン205が行われる。すなわち、高い値及び低い値のサンプル50のスキャン204、205が、いずれか妥当な順序で実施されることになる。実際上は、本明細書における、精度キャップ24に関するすべての言及には、ばね装着キャップ26、二重端キャップ28などの別の実施形態の使用が含まれる。精度キャップ24又は他のキャップ26、28のいずれにおいても、それぞれ異なる値のサンプル50を、両端に又は別の試みにより使用することができる。
【0166】
しかしながら、ばね装着キャップ26の一つ実施形態は、入射ビーム101に対する応答123又は放射応答123の変化を、距離に依存するよう特に設計された。同様に、距離によって、あるいはサンプルの濃度値によって、サンプル50を高い動作値と低い動作値との間で変化させることができる。少なくとも2回のスキャン204、205の後で、較正調整206を実施し、目的の特性ピーク150を表す出力数の値を調整することができる。
【0167】
図18を参照すると、マスタサンプル30を作成するためのプロセス210には、材料212を選定する工程を含めることができる。これには、マトリクス125bに適切な材料、及び適切なドーパント125cの選定が含まれる。同様にして、複数のマトリクス125b、又は単一のマトリクス125bのための複数の構成物質を選定することができる。同じく、マトリクス125b中に混合分散、又は懸濁させるための一つ以上のドーパント125cを選定することができる。
【0168】
適切な試験及び他の評価を含めた材料の選定212の後、所要に応じマトリクス125bの調合214を行うことができる。これは、マトリクス125bの再現性あるバッチを納入できる供給者にやらせることができる。
【0169】
ドーパントの調製216には、例えば、適切な目的の化学構造又は分子構造の配合217aを含めることができる。同様に、適切な形態での、こういったドーパント125cの形成217bが必要となろう。例えば、現在考えられている一つの実施形態では、オリゴマー偏光種のKタイプフィルムを粉砕、切断、又は切磨して微細粉にすることができる。一つの実施形態において、汚染防止のため閉じた面を持つ400グリットのエメリー紙を使って、200メッシュ化学処理ふるいをほぼ通過する粉体を削り出す。
【0170】
このように、このような粒子状物質の形成には、粒子の機械的構造、サイズなどを含めることができる。結局のところ、サイズ決定217cは、均一性確保のために非常に重要なものとなる。大きすぎる粒子サイズは、異常な結果をもたらすことがある。同様に、小さすぎる粒子は、コスト効果や制御性に欠けることになろう。
【0171】
結論としては、マトリクス125b中のドーパント125の分布218によって、マスタサンプルの全セットが得られる。すなわち、中性サンプル90は、一つの実施形態においてドープなしのマトリクス125を含むが、これに換えて、何らかの目的のバックグラウンドドーパントを持つ各種マトリクス125bを中性サンプルに含めることができる。同様に、低及び高サンプル92、94は、通常、計算され試験されたさまざまな濃度のドーパント125を含み、特に、予期される測定結果の上限から下限に近い、適切な幅広い範囲の値を提供する。例えば、ゼロから67,000までの尺度では20,000を示す低い値、及びゼロから67,000までの尺度では約60,000を示す高い値の組成物94が適切であることが分かった。このような尺度で、ヒト被験体をスキャンし、その典型的な読み取りは、20,000から50,000までに入ることが判明している。とはいっても、この範囲の上側や下側の外れ値が存在する可能性はある。
【0172】
図19を参照すると、現場での較正プロセス224において、本発明による装置10及び方法を実施することができる。スキャナ電源を「作動」又は「オン」の位置に作動して226プロセス224を開始することができる。同様に、通常は、スキャンプロセスの選択228が必要となろう。すなわち、スキャナ電源オン226とはある程度別個に、スキャナに連結されたコントローラの起動232を行うことができる。上記のように、プロセッサ(CPU)を装置10に内蔵することも、あるいは装置から分離することもできる。このように、コントローラの電源オン232又は電源投入232により、適切な時間をおいて、判断(decision)234が行われる。
【0173】
電源投入232の後、約1時間半位の、ある程度の順応時間が必要なことがある。その後、通常、スキャナ10はウオームアップされて動作準備が整う。ユーザは、そこで、例えば、スキャンの実施、以前のスキャンのデータ曲線140のアップロード、サポート・プログラムの呼び出し、レポートの読み出し又は出力、又は作動の中止などの間での選択をすることができる。オプションの決定後、判断234により、スキャンの選択228、又は何らかの他の作業236のいずれかの選択がなされる。
【0174】
スキャンを選択228したならば、操作者は装置10を制御するためのソフトウエアをロード230することができる。スキャン作業の開始、ウオームアップ、較正プロセス、以前のスキャンからの情報又は一般情報の取り出し、新しいスキャン作業を始めずに追加のスキャンを実施、結果の出力などを含む、いくつかのプロセスを実施することができる。これにより、ユーザは作業を検索238し、適切な作業を選定することができる。
【0175】
スキャンを実施する場合には、較正プロセスにおいて、最初にダークスキャン240を行うことができる。この特定のスキャン作業の条件の下での、特定の装置10の較正246を支持するために、精度サンプル24(例えば、キャップ、ばね装着キャップ、二重端キャップなど)によった基準スキャン242及びその後に第二基準スキャン244が行われる。一つ以上の実物被験体を使って品質管理チェック248を実施し、読み取りが予期する範囲内で作動していることを検証することができる。
【0176】
一つの実施形態において、証明番号250の入力を使って、装置10の管理を行うことができる。証明番号250は、有効な特許、ライセンスなどによる装置10の使用の制御を支援する。被験体に関連する個体群統計の入力252には、スキャン操作者、被験体又はその双方のため役立つような情報の追跡が含まれる。例えとして、データが多数の被験体から匿名で収集される場合、これにより、目的の分子構造体(例えば、カロチノイド、抗酸化物、栄養素、アミノ酸、及び他の目的の分子など)の摂取、血清レベル174と皮膚レベル172との間の関係を特徴付けるための別の助力を得ることができる。
【0177】
被験体の手を、通常、デッキ16又は架台16にのせて、ウインドウ14の前に位置付ける254。前に記載したように、被験体のスキャン256を、数分にわたって「数百回スキャン」で実施し、適切で統計的に有意なサンプルを取得することができる。そこで、データの処理258を実施して、出力曲線140を生成し、前記のようにベースラインのピーク150の値を識別することができる。
【0178】
判断260により、当面の作業のスキャンが完了したかどうかが判定される。完了していない場合、新しい被験体を識別する別の証明番号の入力250によって、作業を継続することができる。そうでなければ、判断262により、新しい作業を開始するかどうかが判定される。例えば、操作者の交代、被験体の群の変更、又は動作時間が長くなった後で較正が妥当などの理由で、作業を中止することができる。新しい作業を実施しない場合、装置は、作動を終了264することができる。
【0179】
新しい作業が行われる場合、判断266により、使用時間、スキャンの回数、又は装置10の使用を制御するための他のパラメータの有効期限が過ぎていないかどうかの判定が行われる。判断266により、期限が過ぎていないと判定されると、新しい作業を開始することができ、ダークスキャン240及び他のスキャン242、244が行われて較正246が完了する。他方、判断266により、有効期間又は最大スキャン回数又は他の制御パラメータが、期限切れとされた場合、判断268により、現在スキャンされているデータをサーバにアップロードするかどうかが判定される。アップロードをしない場合、通常、システムは無効270にされることになる。
【0180】
これに対し、曲線140からのデータをアップロードする場合、アップロード・プロセス272が実施される。同様に、アップロード272の際には、全体プロセスには、通常、新規のスキャン、期限延長などに対する認可のダウンロードが含まれる。同じく、オプションのステップに、作動ソフトウエアのアップグレードのダウンロード274を含めることができる。このように、個別の操作者に対して、コントローラ・ソフトウエア、較正スキームなどの定期的更新をすることができる。
【0181】
当業者には、記載された本発明の基本的特質から逸脱せずに、図1−19の説明概略図に対しさまざまな変更を容易に加えることができるのは自明であろう。このように、添付の図1−19の説明は、単なる例示を意図したものであり、添付の特許請求の範囲で請求する本発明に呼応した特定の現在好ましいの実施形態の概略図を図示しただけのものである。
【0182】
上記の必要性に基づいて、組織の選択された分子構造を、インビボで非破壊的に検出するバイオ光学スキャナを、較正するための装置と方法とを開示する。システムを、スキャナに連結されたプロセッサとメモリとを含むコンピュータに頼ることができる。スキャナは、インビボの組織に光を非破壊的に導く照射装置(例えば、光源、レーザなど)を具える。光は、蛍光、反射又は弾性散乱、及びラマン種の散乱として検出器に戻る。検出器を電荷結合素子、又は光に対する組織の放射応答の強度を検出する他の機構とすることができる。スキャナは、コンピュータ・インタフェースを介しコンピュータと交信することができる。
【0183】
特定の実施形態において、較正器具は組織の放射応答を模擬するため選択された模擬材料を含むサンプルを包含する。スキャナに対する較正パラメータを決定するためには、光を照射装置から模擬材料上に導き、それからの第一放射応答を検出することが必要である。光の状態、光に対する第一放射応答、及び較正パラメータに対応する、プロセッサへの入力によって較正ができる。照射装置からの光への曝露結果によるインビボ組織様の第二放射応答を、再現性をもって検出するための入力処理が行われる。
【0184】
本方法には、放射応答から補正除去することになるスキャナの電気的アーチファクト及び光学的アーチファクトに起因する誤差に対応する曲線の選定を含め、較正パラメータを決定する工程を含めることができる。また、本方法に、濾光パラメータを選定する工程を含め、放射応答から弾性散乱をフィルタ除去することができる。
【0185】
バックグラウンド蛍光に対応する曲線を選定して、この特質を放射応答から補正除外することができる。目的のラマン散乱応答が存在しない放射応答部分に対応する曲線を点で区切って、目的のラマン散乱応答を分離することができる。
【0186】
通常、照射装置からの光は、レーザのようなコヒーレント光であり、放射応答は、選択された組織の分子構造、すなわち、カロチノイド物質、抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などといった、目的の成分に対応する強度である。カロチノイドに対応するラマン散乱応答が効果的であることは判明している。さらに、非動物組織材料で、相互に異なる明確な読み取りを提供する「模擬材料」を使って較正スキャンを行うことができる。また、一種類の材料を、検出器から、2つの異なるはっきり区別できる距離に配置することにより、異なる強度を実現することができる。
【0187】
効果のあることが判明したサンプルには、さまざまな、ポリマー、偏光フィルタに使用される長鎖及びオリゴマーのような合成材料が含まれる。例えば、3M Company製のKタイプ・フィルム及びHRタイプ・フィルムが試験に使われた。他のサンプルには、異なる濃度のドーパントの選定された量を含有する可撓マトリクスが含まれる。ドーパントを、固体パウダー、又は植物材料、植物誘導体などの天然材料とすることができる。およそ200番のふるいを通過するサイズの粉体化フィルムが良好なドーパントを形成することが判明した。
【0188】
2つの濃度のドーパントにドープされたダイラタント複合材は、天然材料又は合成材料を受容できる。効果的合成材料は、カロチノイド中の類似結合に対応する炭素−炭素結合を含有するようである。
【0189】
較正パラメータの算定に補正曲線の計算を含め、これを試験(較正)材料の放射応答に対応するデータ曲線と組み合わせて「カロチノイド」タイプの応答を分離することができる。補正曲線には、弾性散乱光、蛍光、及びスキャナのバックグラウンドアーチファクトの、少なくとも一つに対応するデータを含めることができる。
【0190】
較正のため、機械には、目的の光がほとんど検出器に戻らず、スキャナの電気的アーチファクトを表すダーク・データを収集するための「ダーク・キャップ」が用意される。照射装置からの光の強度、較正に使用される模擬材料の応答、及び異なる濃度のドーパントを含有するサンプル間の放射応答の相関度に従って調整を行うことができる。ドーパントに対する放射応答について、サンプルとインビボ組織との間の相関が取られる。
【0191】
一つの実施形態において、操作者は、フィードバック制御ループでスキャナを作動し、被験体の組織内のカロチノイドの初期レベルを検出することができる。そこで被験体は、その後の期間に、ある処方計画に従って栄養サプリメントを摂取することができる。後のスキャナ検査で、栄養サプリメント投与に対応する組織中のカロチノイドの経過レベルを検出する。
【0192】
プロセッサとメモリとを具えたコンピュータに連結されたスキャナの較正では、弾性散乱、蛍光、及びスキャナの電気的、光学的アーチファクトから、カロチノイドのラマン応答を分離することができる。第一合成材料をスキャンし、スキャナの光学的アーチファクト、反射光、及び目的でない波長の再放射光(例えば、蛍光)に起因する組織の放射応答の部分を表す「ホワイトスキャン」を得ることができる。適切な合成材料として、もともとはDow Chemical社によって配合設計されダイラタント複合材として知られる粘弾性材料がある。バックグラウンド放射効果の「ホワイトスキャン」を実施するための中性サンプルとしての機能に加え、このダイラタント複合材をさまざまな濃度にドープすることができる。
【0193】
本発明によるシステム及び方法の一つの実施形態において、バイオ光学型のスキャナは、スキャナからの光照射に対する組織の放射応答から、非破壊的にインビボで、選定された組織の分子構造を検出する。本較正システムには、スキャナの電気的アーチファクトに対応し、光による照射に対する放射応答をほとんど含まないダーク応答を返すダーク・サンプルを含めることができる。ホワイト・サンプルは、光を照射されると、目的の特徴のラマン散乱を欠いた、光に対する組織の放射応答にほぼ対応するホワイト応答を返す第一合成材料を含む。
【0194】
高い値のサンプルを、ドーパント処理された第一合成材料で形成し、光を照射されると、光に対する組織の放射応答の比較的に高い値にほぼ匹敵する高い応答値を返すようにすることができる。低い値のサンプルを、ドーパント処理された第一合成材料で形成し、光を照射されると、光に対する組織の放射応答の比較的に低い値にほぼ匹敵する高い応答値を返すようにすることができる。ダーク、ホワイト、高及び低サンプルは、各々、数学的に組み合わせて、スキャナ、制御コンピュータ又はその双方を較正するためのパラメータを生成し、光に応答して、インビボ組織内の分子含有量に対応する出力の再現性ある値を提供するように選定、処方、形成される。
【0195】
基礎合成材料(例えば、マトリクス)は、光学的に不透明で、粘弾性のシリコーン・ベースの複合材である。これには、主要成分として、ジメチルシロキサン、結晶シリカ、増粘剤、及びポリジメチルシロキサンを含有させることができる。比較的に少量のデカメチルシクロペンタシロキサン、グリセリン、及び二酸化チタン、及び少量の水が存在することができる。シリコーン鎖は、ホウ酸架橋の末端水酸基ポリマーである。
【0196】
ドーパントを天然材料(例えば、植物、野菜、食材由来のカロチノイド)又は合成材料とすることができる。カロチノイドに見られる特徴的分子結合に相応する分子結合構造を持つ合成材料が目的に適っているようである。一つのドーパントは、特徴的炭素−炭素二重結合を含む炭素結合の連鎖を含有することを発見した。微細に粉砕した固体としてドーパントをシリコーン・ベースのマトリクスに懸濁させ、皮膚のラマン散乱及び他の放射応答特性を模擬する。
【0197】
バイオ光学型のスキャナを較正するための装置には、ダークスキャン構造体と、異なったレベルでドープさせた合成材料による標準セットの工場用較正具と、偏光フィルムの現場用較正具と、ダークスキャン構造体、工場用較正具などのハードウェア、及び現場用較正具のスキャンに対応してデータを受信し処理するコンピュータ可読媒体中の実行可能ソフトウエアとを含めることができる。コンピュータは、実行可能ソフトウエアを起動するようプログラムされ、スキャナを較正し、スキャナ制御を操作し、被験体組織の非破壊的スキャンにより採取したデータに基づき、選定された分子構造体の量に対応する数値を出力する。
【0198】
本発明を、その基本的特質から逸脱することなく、他の特定の形態に具現することができる。記載した実施形態は、あらゆる点において、単なる例示と見なすべきものであって、制限的なものでない。従って、本発明の範囲は、上記の記載によるのでなく、添付の特許請求の範囲によって示される。請求内容と同等な意味及び範囲内のすべての変更は、特許請求の範囲の中に包含されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】図1は、較正プロセスにおけるスキャン・サンプルを構成するいくつかの機構を含む、本発明による装置の一つの実施形態の斜視図である。
【図2A】図2Aは、本発明による、較正で使用されるダーク・キャップの凸面側の斜視図である。
【図2B】図2Bは、図2Aのダーク・キャップの凸面側の斜視図である。
【図2C】図2Cは、レーザの「オン」状態を識別し、レーザ・エネルギーを乱反射させコヒーレント光の正透過又は反射を除去するためのシールドの一つの実施形態の斜視図である。
【図3A】図3Aは、本発明による装置及び方法の中で用いるための、合成較正材料の複数サンプルを含む精度キャップの一つの実施形態の斜視図である。
【図3B】図3Bは、本発明による、スキャナの較正のために位置合わせされた精度キャップの右側立面図である。
【図3C】図3Cは、本発明による精度キャップの別の実施形態の側方立面断面図であり、高い値の材料を使って低い値のサンプルを作成するためのオフセット使用を例示している。
【図3D】図3Dは、本発明による較正用装置のバレル及びウインドウに取り付けられたダーク・キャップの側方立面断面図である。
【図4】図4は、閉位置にあるバネ装着較正装置の斜視図である。
【図5】図5は、図4の較正装置の斜視図であって、開状態の装着ブラケットと、対応する凹部と、単一のサンプルから、較正のため低減された値の読み取りを得るためのスペーサの使用とを示す。
【図6】図6は、図4の較正装置の背面斜視図であって、スリーブを引き込んだ引き位置にあるプランジャーと、較正機構の据付過程において適切にスキャナのバレルからサンプルが取り外された状態を示している。
【図7】図7は、本発明による図4−6の装置の背面斜視図であって、プランジャー及びハンドルが展開位置にあり、スリーブ及びサンプルをスキャナのウインドウ及びバレルに向けてセットしている状態を示す。
【図8】図8は、本発明による、スキャナの較正のため両端を使うサンプル・システムの一つの実施形態の斜視図である。
【図9】図9は、本発明による両端使用の二重サンプル較正装置の部分切り取り斜視図であって、較正作業においてこの装置を使用のためにスキャナ中で位置設定をするためのスライド機構及び引き込みハンドルを示している。
【図10】図10は、スキャナのプローブのウインドウ及びバレル部分を、組織の放射応答を模写した合成模擬材料を用いたマスタサンプル・システム及びスキャナの較正時のそのサンプル取付けとともに示した斜視図である。
【図11A】図11Aは、垂直な配向性を持つフィルム材料の斜視図であり、これに対応する作動配向性を持つ光波が描かれている。
【図11B】図11Bは、水平な配向性を持つフィルム材料の斜視図であり、これに対応する作動配向性を持つ光波が描かれている。
【図11C】図11Cは、本発明による較正装置において有用な典型的配向性高分子フィルムの積層材であって、典型的な低い値の較正サンプルの一つの実施形態の概略図である。
【図11D】図11Dは、本発明による較正装置及び方法において使用するための高い値サンプルとして特に有用な、配向性で偏光タイプの高分子フィルムの一つの実施形態の概略図である。
【図12】図12は、ドープなし合成マトリクス材料、ドーパント、及びこれらによるマスタサンプルを含む、本発明による装置及び方法の作動に有用な合成材料及び他の非生体組織材料と、これら材料の選別された放射応答特性との間の関係を示す概略図である。
【図13】図13は、被験体の弾性放射応答、蛍光放射応答、及びラマン放射応答効果の結果を、放射応答の強度曲線の形を波長の関数として概略的に描いたチャートである。
【図14】図14は、弾性散乱及び蛍光だけでなく、本発明による装置及び方法中の、ダークスキャンされた電子的アーチファクトを正規化し低減した後のラマン散乱効果を概略的に描いたチャートである。
【図15A】図15Aは、本発明により、基礎データに整合させて当てはめ、その上にラマン散乱ピークを投影することのできるベースライン曲線の当てはめを選定する方法を概略的に描いたチャートである。
【図15B】図15Bは、較正プロセスに必要な、特性ピーク判定のためのベースライン曲線の当てはめを含め、合成マスタサンプルからの、正規化され処理された実際のスキャンキャンデータを描いたチャートである。
【図15C】図15Cは、本発明の装置及び方法による組織の実際のスキャンの特性ピークの値を確かめるために、処理及び正規化の後、ベースライン曲線に当てはめて実データを描いたチャートである。
【図15D】図15Dは、本発明による、フィルムタイプ較正サンプルのスキャンに基づいて、処理及び正規化の後、多項式ベースライン曲線に当てはめて実データを描いたチャートである。
【図16】図16は、スキャン又は別法によって評価して、生データ、放射応答、又は較正曲線を得ることのできるさまざまな組成材料及びフォーマットを、個別スキャン結果の較正をスキャン結果に対する特定の標準尺度に沿って基準化するためのチャート略図とともに描いた概略図である。
【図17】図17は、本発明によるスキャナ及び較正システムに対し、合成サンプル又は他のマスタサンプルを用いて、装置間の均一性、及び時間経過による条件変動に対する均一性を確保する較正プロセスの一つの実施形態の概略ブロック図である。
【図18】図18は、本発明による、天然材料ドーパント、ならびに完全合成のマトリクス及びドーパント材料に適用可能な、スキャナ較正のためのマスタサンプルの配合及び使用のプロセスの概略ブロック図である。
【図19】図19は、本発明による、現場でのスキャナの作動及び較正方法ならびに較正装置及び方法の概略ブロック図である。
【技術分野】
【0001】
(背景)
(1.発明の分野)
本発明は光の強度の光学的測定、さらに具体的には、ラマン散乱の検出器の較正のための新規のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.背景技術)
材料、特性、システムなどを表す特徴的信号を発生させ、検出し、観察し、追跡し、特性を決定し、処理し、操作し、表現し、またいろいろな方法で取扱うための光学的及び電子的機構が開発されてきた。工学の世界では、多くの物理原則が予測通りで再現可能に、またこれらの物理法則及び技術を使った計画及びスキームに従って機能する。このため、時の経過とともに、物理システムの性能及び挙動の数学的解析や予測は、高度な技術及び信頼性のある科学へと発展してきた。
【0003】
機械的及び電子的装置、ならびに、光学システム、放射(例えば、レーダ、光など)及び音響(例えば、超音波スキャン、ソナーなど)が、多くの種類のシステムをモニターするのに有用であることが示されている。試験又はモニターされる多くのシステム、ならびに、設計及び制御される種々のシステムは、物理現象とそれら物理現象の数学的表現及びコンピュータの処理能力とを組み合わせた技術に依存している。これに加えて、物理挙動を検出するためのさまざまなシステム、これらの挙動の信号への変換、それら処理のための信号のコンピュータへの送信、及び人間が取り扱う技術分野の多くを、設計、解析、構築、観察及びその他のやり方でさらに分かりやすくし有用にすることができる。
【0004】
生物科学において、計測器使用は、診断及び治療の双方で非常に有用であることが示されている。心電図、脳波図などは心臓、神経システムなどの動作を特徴付ける微弱な電磁信号を記録する。同様に、超音波画像、x線及び同種装置は、特定の生物学的プロセスの洞察及び忠実な画像を提供する。同様に、CTスキャン又はコンピュータ断層撮影技術は、生物学的なシステム及びプロセスをさらに高度に画像化する能力を提供している。
【0005】
同じく、化学の分野でも、クロマトグラフ、スペクトル分析などといったデバイスを含む、多くの計測装置を含む技術からの恩恵を受けている。このような知識をそれぞれ得て、生物体、プロセスなどの理解及び制御に適用するには、このようなタスクに使用される計測装置の信頼できる較正が継続して必要となる。
【0006】
例えば、近年、生体組織中の特定の化学組成物を測定するためのシステムが開発されている。このような装置の有用な例が、1999年2月23日発行の、Bernsteinらによる特許文献1の中で開示されている、この特許は斑状カロチノイド・レベルの測定の方法及びシステムを対象としており、参考として本明細書に組み込まれる。同じく、他の組織(tissue)の非侵襲的測定に対しても特許が発行されている。この研究は、2001年3月20日発行のGellermannらによる特許文献2に記載されたもので、カロチノイド及び生体組織中の関連化学物質に非侵襲的測定の方法及び装置を対象としている。この特許も参考として本明細書に組み込まれる。ほぼ同じ科学者のチームによる後続の研究結果が、米国特許出願第10/040,883号、2003年7月10日に公開の特許文献3に示されている。この出願は、斑状色素のラマン画像化のための方法及び装置を対象としており、参考として本明細書に組み込まれる。この研究又はこの研究全体は、なかんずく、生きた皮膚などの組織中のカロチノイド又は類似の化合物のレベルの定量を提供する。非侵襲的で、迅速、高精度、及び安全なカロチノイド・レベル測定のための、特定の方法及び装置が開示されている。これらの測定値を、がんリスクに関する診断情報、又は、カロチノイド又は他の抗酸化剤化合物が診断情報を提供し得る状態のためのマーカーとして使用することができる。このように、この研究の多くは早期診断情報と、これによる予防又は治療とを対象としている。
【0007】
一般に、これらのプロセスは、共鳴ラマン分光法を用いて、類似の物質及び組織の中のカロチノイド・レベルを測定する。特定の実施形態において、目的の組織の部分にレーザ光が当てられる。これにより散乱された光のごく一部は、ラマン散乱のプロセスによって、非弾性的に散乱され、目的の特定の分子にエネルギーを吸収され、入射レーザ光とは異なる周波数で再放射される。ラマン信号は、収集され、濾光され、測定され得る。次に、得られた信号を分析し、照射源の光の弾性散乱(例えば、反射)、及びバックグラウンド蛍光を除去することによって、ラマン散乱信号として識別された特性ピークを際立たせることができる。
【0008】
特定の実施形態において、レーザ光源は、各種のレンズ、ビームスプリッターなどを含むプローブ・システムに通される。これによりレーザ源からのコヒーレント光をこれら一連のレンズ及びビームスプリッタを通して鏡面に導き、これを通して被験体(例えば、皮膚、斑紋など)の上に照射し、応答放射を生成することができる。応答放射はプローブ中を反対に向かい、典型的にはビームスプリッタ、又は、部分的に銀メッキされた鏡に反射されて検出器に導かれる。
【0009】
一つの実施形態では、電荷結合素子のようなスペクトル選別の可能なシステムが、強度及び周波数(波長の逆数)によって放射(例えば、光波、光子など)を検出する。これにより、波長と強度とを処理し、周波数又は波長のスペクトルに沿って発生している放射の量を数値化することができる。
【0010】
このように、コヒーレント光を組織に当てたときの応答を、特定の照射源に応答して検出器に到達するエネルギーの量又は光子の数などによって特徴付けることができる。このような装置に十分な精度があれば、放射エネルギー中の、個別光子レベルの量子変動にいたるまで、おそらく測定可能と考えられる。
【0011】
このような装置を実現するためには、スキャナー(例えば、被験体を照射し、その応答を回収して処理するためのシステム)を信頼できるように較正でき、プロセッサ又はコンピュータがスキャナから受信したデータを操作又は他のやり方で処理するための、方法及び装置が必要である。このような計測装置を、実験的装置又は実験的興味レベルから、医療及び診断分野又は実市場に展開しようとするためには、いくつか必要な事項がある。
【0012】
例えば、被検組織はその種類及び生物体の違いによって異なる。例えば、植物の組織はその特徴的な挙動を示すので、特定の条件の下で特定の範疇の植物に対しある特定の平均値、又は正常値又は値の範囲を設定することができる。同様に、動物や人間の組織を侵襲的又は非侵襲的に分析して、組織の特定の特質を、当該組織の照射に対する放射応答及びラマン散乱に相関付けることができる。平均値が、母集団の属性の対象特性となる。
【0013】
とはいっても、電子的な構成要素の間のバラツキは無視できない。このため、電子部品及び光部品のどのような組み合わせにも、特定の「内在特性」が存在することになる。スキャナの作動において、測定値や計算値を解釈するためには、対象装置の電気的及び電子的なアーチファクト(例えば、誤差、不整合、偏差、バイアスなど)に対する特性設定をする必要がある。通常、一つの装置によるアウトプットを同じ別の装置でもで再現できるようにするためには、任意の2つの装置間の差異を何らかの形で較正(例えば、測定、補償、倍率設定、正規化など)する必要がある。すなわち、2台であれ100台であれ同一設計の装置は、同一の対象を評価したときには、同一の値又はほぼ同一の値の検出パラメータを生成できる必要がある。つまり、同一設計の、2台又は100台の異なる機械によってスキャンされたある個人の皮膚は、ある程度の合理的再現性(精度)及び確度(正確な事実の反映)を持つ、ほぼ同一のアウトプット値を提供すべきである。
【0014】
このように、同一サンプルのスキャンに対し、ある容認可能なバラツキの範囲内で、各機械からのアウトプットが同じ値となるように、機械間の差異を読み取るための、個別スキャナを較正する装置と方法とが必要となる。さらに、短時間及び長時間の間に、予想通り、予想外、予測通り、予測外の何らかの状態で温度、湿度、化学雰囲気、物理特性のような条件が変化するので、機械自体の作動における時間的(時間推移)変動を除去するため、機械を較正することが必要になる。
【0015】
すなわち、ある日時に作動されたスキャン装置は、別の日又は別の時間においても、前回日時と同一の条件にある実質的に同一な被験体を測定した場合には、ほぼ同じアウトプットを生成できる必要がある。つまり、ある特定の装置から得られたアウトプットの日によるバラツキ及び時間によるバラツキを較正する必要がある。すなわち、装置のアウトプットに影響を与える可能性のある物理条件、化学条件、温度、外部条件などの予測できない変化をおり込むようなやり方でスキャナを較正する方法と装置とが必要である。このように、スキャナに対する現場較正のための方法及び装置は、この面の技術を進展させるものとなろう。
【0016】
可能な範囲内で、スキャン装置から受信した信号を処理するプロセスを確立し、ハードウエアの調整を不要にすることは、当該技術を進展させることになろう。すなわち、例えば、較正プロセスで各種の条件をモニター又は検出できる範囲であれば、スキャン装置に関連する一切の性能パラメータ、物理特性、又は他の制御パラメータを実際に修正したり変更したりせずに、単に、このような装置からのアウトプット信号を処理してこれら信号の値を補正することができる。このように、スキャナから得られた信号データの信号処理又はコンピュータ処理を開発し、上述の較正のすべての利点を提供することは当該技術を進展させることになろう。
【0017】
生体材料はもともと大きく変化するものである。そこで、適切に識別された母集団に対する統計的に有意なサンプルを役立たせることができる。しかし、サンプルの持ち運びが問題になることがある。例えば、2つの異なる大陸にあって2つの異なる母集団をスキャンする2つの異なる機械を、それら装置の読み取りを同一とするために、どのように正規化又は較正するのであろうか。生体材料から採取された較正サンプルは、もともと問題が多い。生体組織というものは、インビボかそうでないかのいずれかである。いずれの場合にも、生体材料の取り扱いにおいて、サンプル量、サンプルの再現性、サンプルの制御および観察可能な特性を維持するのはほとんど不可能である。さらに、生体材料、有機体、生体組織又は他の物質の複製は非常に困難である。加えて、多くの環境の中で条件変動を正確に制御することはできない。生体の中で同一な条件、遺伝的特徴などを整えることは、較正サンプルを生成するための実用的な手段ではない。
【0018】
一方で、電子カウント、電流、電圧、光子カウントなど、物理データの複雑なセットを生成することは可能であろう。しかし他方では、このような詳細データを収集することは不可能となろう。実際問題として、そういった収集及び分析は非常に複雑で法外な費用がかかることが多い。
【特許文献1】米国特許第5,873,831号明細書
【特許文献2】米国特許第6,205,354号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0130579号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
このように、スキャナを較正するサンプルを提供するために必要なものは、予測可能な標準のセットによって生成、製造、又は他の方法で作成でき、再現性を持って制御可能な何らかの処理法を具えた合成材料である。すなわち、必要なのは、スキャナに照射されても長期間にわたって一貫した放射応答を生成し維持することに信頼が置ける合成材料、又は合成材料のシステムである。これにより、このような合成材料を、世界中に持ち運んで検証できる較正標準として用いることができる。
【0020】
さらに、製作工場においても、機械仕上がり性能の機械間変動を較正するために使用できる、安定的で、繰り返し使え、再現性があり、簡単に製造できる合成サンプルを持つことはすこぶる有益であろう。加えて、ある種の測定現場用の較正装置及び方法は、特に信頼性のある合成材料をサンプルとして用いている場合には、個別スキャン装置及び関連するプロセッサのアウトプット中の日毎の又は時間毎の変動を較正する点において、当該技術を大幅に進展させることになろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(本発明の要約及び目的)
前記の必要性に基づいて、バイオ光学スキャン・システムを較正するための各種装置及び方法のシステムを本明細書に開示する。さらに、バイオ光学スキャナに必要な各種の較正機能を実施するための合成材料を、発見し、考案し、評価し、また他の方法で利用できるようにした。例えば、信頼性のある放射応答を得るために、繰り返し可能な構造と位置とで、確実な較正材料をスキャナに提供する機構を開発した。さらに、工場及び現場での較正作業のための各種の組成を開発した。例えば、レーザ照射に対して放射応答をほとんど返さないダーク・キャップによって、機械の電気的及び電子的アーチファクトを除去するための機構を提供する。同様に、生体組織のスペクトル応答の形状及び値を模擬しながら、簡単な非生物化学組成として再生可能なホワイトスキャン・サンプルを開発した。
【0022】
さらに、目的の特定分子構造の合成模擬物質を生成するため、材料のマトリクスをドープ処理するための材料を発見し開発した。例えば、生体組織内に存在するカロチノイド及び他の化学組成物は、ある特徴を持つ炭素結合構造を含むと考えられる。類似の結合構造を含み、照射に対して、生体分子成分の放射応答(例えば、ラマン散乱など)と類似の放射応答を示す合成材料を発見した。
【0023】
これによって、スキャン・システムを繰り返し較正するための較正サンプルとして合成材料を利用するシステム及び方法を開発した。さらに、これら開発し、発見した各種の組成及び装置を実行し、スキャナのアウトプットを処理するための一連の計算及び数学的処理によって、放射強度のスペクトル曲線中の望ましくない又は目的の外の特性を正規化又は別方法で削除し、実行は成功であった。このように、機械間の、及び単一の機械内での時間による変動を分離し、より改善された信号対ノイズ比及びはるかに明瞭なラマン応答を得た。これにより、適切な較正装置及び方法によるバイオ光学スキャナの正確で再現可能な利用を提供する。
【0024】
本発明の前述の目的及び特質ならびに他の目的及び特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を添付の図面と関連させることにより、さらに十分明らかになろう。これらの図面は本発明の典型的な実施形態を示すだけのものであり、従って、本発明の範囲を限定するものと見なさないことを明確にした上で、添付の図面を使い、さらなる具体性及び詳細内容をもって本発明を説明することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(図示された実施形態の詳細な説明)
本明細書の図に一般化して記載され例示されている本発明の構成要素を、さまざまな異なった構成に改作、設計できることは容易に理解できるであろう。従って、図1から19までに表した、以下の本発明のシステム及び方法の実施形態のさらに詳細な説明は、本発明の特許請求の範囲を限定する意図のものでなく、現在説明している、本発明の特定の実施形態を表すだけのものである。
【0026】
図面を参照することによって、本発明によるさまざまな実施形態の最良の理解が得られよう。なお、全図を通して同じ番号で指定されているものは同じ部分である。
【0027】
図1を参照すると、本発明による装置10には、電源、レーザ光源のような光源、及び検出器などのスキャン機構を含めることができる。検出器は、バックグラウンド蛍光、弾性散乱光(光源光の反射)、及び入射照射ビームとは異なる波長で検出器に戻るラマン散乱光を含む信号を受信することができる。
【0028】
一般に、スキャン・機構は、ハウジング12の中に収納され、ハウジングには、照射ビーム及び戻ってくる検出ビームを通すためのバレル13が貫いている。通常、バレル13は、バレル13とハウジング12との間に、半径方向に特定幅の逃げ又はクリアランスを備えている。
【0029】
バレル13に装着されたウインドウ14は、照射ビームを外部方向に被験体に向け通過させ、戻ってくる「放射応答」をウインドウ14に逆方向に通過させ検出器に受光させる。例えば、電荷結合素子(CCD)又は電荷注入素子(CID)を、幅広い周波数(及び対応する波長)の光を検出できるセンサ・アレイに構成することができる。これにより、周波数の定義域(domain)又は相当する波長の定義域に強度のヒストグラム又はスペクトルを表示することができる。
【0030】
本発明による装置10の一つの実施形態において、架台(rest)16は、ウインドウ14の下側に、外向きにすなわちウインドウの前側に設けられている。支持架(support)18を装置10のハウジング12内から延ばして架台16を支えることができる。これにより、手、腕、又は被験体の他の身体部をウインドウ14の前の架台16に置くことができる。
【0031】
本発明による装置10及び方法の現在考えられている一つの実施形態では、ユーザは手を架台16の上に置き、手のひらの皮膚をウインドウ14に向ける。このようにして、ビアの法則に従う距離の影響を、ウインドウ14の位置により繰り返し可能に制御する。
【0032】
シールド20はいくつかの機能特徴を提供することができる。例えば、一つの実施形態において、シールド20は、装置10からウインドウ14を通る光ビームの出力に応答して輝く半透明物質で形成される。何もないスペースを通過する光には、ビーム自体を外部に見えるようにする機構はない。従って、安全の問題として、シールド20によってレーザ光を阻止し散乱させることができる。また、ユーザはシールド20の照射による光点が見えるので、装置10の電源が入れられ作動しているのに気付くことができる。
【0033】
さまざまな実施形態において、シールド20を、透明に、半透明に、模様付きに、又は別法で単に光をランダムに拡散するようにすることができる。このような実施形態において、ユーザ又は操作者は、ウインドウ14とシールド20との間に光がある証拠として、シールド20上の光点だけしか見ることができない。現在考えられている一つの実施形態では、不透明か半透明かあるいは透明かどうかに関わらず、拡散面はシールド20上に形成される。
【0034】
さらに別の実施形態において、十分な散乱を得るために、例えば、リンネルのような材料の拡散層を透明又は半透明のポリカーボネートの層内に埋め込むことができる。別の実施形態において、アクリル又は他の透過型ポリマーのような簡単なプラスチックの片面又は両面を、まだら模様又はでこぼこ面にして使い、シールド20が、ウインドウ14からの光の正透過又は反射を生じないようにすることができる。
【0035】
ダーク・キャップ22又はダーク・サンプル22のような一連の付属具によって、装置10の種々の機能特徴を保全することができる。ダーク・サンプル22は、ウインドウ14から受けた照射に対して装置10にほとんどビームを返さない。従って、ウインドウ14を通してダーク・キャップ22を照射した後で装置10に検出される応答又は放射応答は、ほとんど被験体からの放射(例えば、光)に対応するものでない。
【0036】
結果として、ウインドウ14を通したダーク・キャップ22への照射は、装置10のバックグラウンド異常(例えば、電気的又は電子的アーチファクト)を表す装置10の信号をもたらすことになる。換言すれば、ダーク・キャップ22を照射するビームに応答して装置10中に逆受信される信号は、装置10自体の電気的又は電子的アーチファクト(例えば、誤差、バックグラウンドノイズなど)が直接的にもたらす装置10への偽の寄与を表す信号となる。
【0037】
精度サンプル(precision sample)24を、現場用較正キャップ24とも呼ばれるフィルム・キャップ24として具現化できる。キャップ24を、ウインドウ14に対し、低い値あるいは高い値のポジションにセットすることができる。すなわち、精度サンプル24は、装置10中へ戻る信号の比較的に高い値及び装置10へ戻る信号の比較的に低い値を代表する。その各々は、精度キャップ24中の材料サンプルから直接的にも得られる。
【0038】
すなわち、精度キャップ24を、180度離れた2つの向きのどちらかにセットし、信号(例えば、ビーム)に曝して、材料に、高い又は低い放射応答を生成させることができる。照射及び放射応答の双方は、ウインドウ14を通って、装置10から、またその中へとそれぞれ伝搬される。
【0039】
直接的な結果として、精度サンプル24中の特定の材料から、高いあるいは低い値の放射応答が、ウインドウ14を通って装置10中に逆伝送されることになる。高い値及び低い値は、各種材料の放射応答から、ウインドウ14との距離から、又はこれら双方によって得ることができる
装着されたキャップ26は、繰り返し安定的に支持架18に装着できる機構を具えており、ウインドウ14に対し、試験サンプルをばね装着できる。同様に、二重キャップ28又は試験ブロック28は、その両端にばね装着され各々が高い又は低い値を生成するサンプルを具えており、ウインドウ14とシールド20との間にセットできる形状とサイズとにされている。二重キャップ・システム28は、目的のサンプルをウインドウ14に押し当て、これに対して繰り返し位置合わせができるばね装着機構を具えている。
【0040】
マスタサンプル30は主として製作工場(以下工場)での較正に使用される。特定の実施形態において、マスタサンプル30を使用現場(以下現場)での較正に使うことができる。マスタサンプル30は、一時的にウインドウ14に接着させ、手のような身体部分のスキャンを合成的に模写することができる成型可能な材料を含む。例えば、マスタサンプル30は、ウインドウ14に付着するパテ様の材料として配置され、中性のバックグラウンド(ホワイトスキャン)結果と、比較的低い濃度の目的の分子組成物の結果と、比較的高い濃度の目的の分子組成物の結果とを生成するように、あるいはそう見えるよう構成されている。目的の分子組成物は、所望の目的の分子成分の濃度の比較値に準じて、サンプル30のパテ内に分布されている。
【0041】
引き続き図1を全般に参照しながら、図2A−2Cを参照すると、キャップ22、24には一般に位置合わせマーク32を含めることができる。ダーク・キャップ22については位置合わせは特に重要ではない。しかしながら、精度サンプル24については、少なくともその特定の実施形態に関しては、位置設定は重要な変数であり、基準指標32又は位置合わせマーク32を、精度サンプル24の正確な位置合わせを行うための助力とすることができる。
【0042】
とはいっても、ダーク・キャップ22についても、スリーブ34をバレル13にぴったり嵌め合わせ、肩(shoulder)36をそのウインドウ14に位置合わせする。すなわち、肩36は、バレル13の面15と合わさる位置合わせ面36を提供する。通常、面15とウインドウ14とを、実質的に相互に同一平面上にあるようにすることができる。
【0043】
シム38又はスペーサ38は、バレル13とスリーブ34との間のグリップ又ははめ留めを提供する。実際的やり方として、シム38をバレル13に接触させてスリーブ34をある程度歪ませることができる。これにより、バレル34、シム38、又はその双方のたわみによって、ダーク・キャップ22の面15に対するぴったりしたはめ合いを保持し、バレル13に対するガタツキを少なくする弾力的な力を与える。
【0044】
作動において、ダーク・キャップ22は、ブラック・サンプル40を含む。例示した実施形態において、ブラック・サンプル40は、単純な、凹形の暗黒色の面40である。特定の実施形態において、光トラップ、平行にされた、黒の、光トラップ又は黒布などを、ブラック・サンプル40として使うことができる。ブラック・サンプル40の傾斜した表面及び黒色の材料は、ウインドウ14から放出される照射をウインドウ14外に分散させ、放射応答がウインドウ14を通って装置10に実質的に返送されないようにする。
【0045】
従って、ダーク・キャップ22は、ウインドウ14から進んできた信号を、吸収、屈折及び別法で分散させ、装置10の電気的及び電子的アーチファクト以外の何ものも反射していない「ダーク」な読み取りを装置10に提供する。ダーク・キャップ22への照射に応答して装置10に検出又は記録された読み取り又は一切の信号は、実際は、装置10に固有のバックグラウンド効果及び誤差効果によるアーチファクトだけである。そこで、ダーク・キャップ22を使って、バックグラウンド信号を表示させ、それをスキャンの読み取りから際し引いて、装置10の電気的及び電子的アーチファクトを分離することができる。
【0046】
ブラック・サンプル40を構成する凹面40の反対側の凸面41は頂点42にいたる。凸面41をダーク・サンプル41として機能させることができる。しかしながら、通常、製造工程において、内側(凹面)40にはシャープな頂点42を容易に形成できるが、凸面41には高精度で点を形成することができず、これをダーク面41として使った場合、その頂点41は、一般にダーク・キャップ22の適切な動作を防げる。
【0047】
図2Cを参照すると、ウインドウ14を通し光のビームをシールド20に照射して光点43を得ることができる。シールド20のどちらの主要表面においても光点43又は明領域43を見ることができる。シールド20が半透明又は透明な場合、装置10に対し、ほぼ、どの有効角度からも光点43を見ることができる。しかしながら、シールド20が不透明な場合には、通常、シールド20の装置10に向いた面が見える位置だけから光点43が見えることになる。
【0048】
さりながら、本発明による装置及び方法の一つの実施形態において、シールド20を複数の層44で形成することができる。一つの実施形態において、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどのような、半透明材料の単一の層44aをシールド20のバルク材料として利用することができる。光点43からのビームの反射又は正透過一切を散乱させる拡散機能を備えるために、シールド20の面44d、44e自体を、模様付き又別法で処理した透明な材料とすることができる。
【0049】
現在考えられている一つの実施形態では、層44aは、層44cとともに、その間の拡散材料44bを挟み込んでいる。例えば、ポリカーボネートは、ほとんど破断しない。従って、ポリカーボネートの2つの層44a、44cに、層44bを組み込んで一体に成型、又は層44a、44cの間にリンネルの層44bを入れて積層することができる。図示された実施形態において、層44a、44cの中間にある層44bは、一切の実質的な正反射光の通過を排除する大きな散乱効果を提供することができる。
【0050】
実際的処置として、誤っても人体組織の損傷、特に眼の損傷がないように、装置10内のレーザ出力を十分に低く選定することができる。そうであっても、シールド20は、装置10の電源が入って作動していることの警告と、眼を曝し過ぎても緩やかな強度にまで保護してくれることとの両面で役立つ。拡散性の高いシールド20は、ウインドウ14から光点43に当たる光の一切の正透過及び反射を大幅に阻害する。中間拡散層44bの有無に関わらず、層44d、44eの表面には、散乱機構として凹凸や模様を付けることができる。
【0051】
引き続き図1−3を参照しながら図3A−3Dを参照すると、精度キャップ24には、キャップ24をバレル13に対して円周上に方向付けるための基準指標32又は位置合わせマーク32を具えることができる。精度キャップ24、又はさらに厳密にはそれに内蔵されているサンプル材料50は、設置の向きに影響される。バレル13に対し精度キャップ24を回転させて、光ビームによるサンプル材料50の照射に応答して装置10によって検出される放射応答の読み取りを変化させることができる。
【0052】
通常、精度キャップ24の両端には2つのスリーブ34が具えられ、その各々がシム38とともにバレル13とぴったりとはまり合うようになっている。肩36は、バレル13の面15に対してキャップ24を位置合わせするのに利用される。
【0053】
図示された実施形態において、ダストカバー46は、スリーブ34に対してその内側にはまり込み、キズ付き、ごみ堆積などから保護している。特定の実施形態において、ダストカバー46を、アーム48によって精度キャップ24につなぐことができ、アーム48を、精度キャップ24の基本構造と一体に成型することができる。
【0054】
精度キャップ24の一部として形成されている脚(foot)52又は脚(feet)52は、架台16にぴったりはまるように形成されている。これにより、脚52は、ウインドウ14に対するサンプル材料50の位置合わせの維持を助けている。脚52は、キャップ24を適正な方向に向ける機能を持つ。一方、基準指標32は、キャップ24の配置が、バレル13に対し所望の位置に合っていることを確実にする。
【0055】
現在考えられている一つの実施形態では、開口部54には、装置10に固定するつなぎ紐55を通す。例えば、精度サンプル24が装置10から持ち去られたり、取り違えられたりしないように、つなぎ紐55を支持架18にくくりつけることができる。
【0056】
サンプル材料50を、ウインドウ14からの光ビームの照射結果による放射応答の高い値及び低い値をそれぞれ提供するように構成することができる。サンプル24の両端には、サンプル50を取り囲むスリーブ34が具わっている。一つのサンプル50は比較的に低い読み取りを提供し、他のサンプル50は比較的に高い読み取りを提供する。
【0057】
一つの実施形態において、サンプル50の一つのコーナーが切り取られ、肩36に対応する隙間が形成される。これにより、サンプル50は、肩36に形作られた単一の方向にしか位置付けることができない。こうして、サンプル50は、精度キャップ24の構造と正確に位置合わせされ、精度キャップは、脚52により架台16に対して方向付けられ、ウインドウ14に対し正確に方向付けされることになる。
【0058】
特定光による照射に対する放射応答として、カロチノイドがラマン散乱原理に従った光を返すことが知られている。例えば、波長473ナノメータ台の光は、カロチノイド内の特定の炭素結合を励起する。ある種の配向性高分子フィルム中に、類似の炭素結合、及び特に炭素二重結合が存在することが判明している。このように、特定種類の高分子フィルムでサンプル50を形成し、473ナノメータ前後の波長のような適切な周波数の光で炭素結合を励起すると510ナノメータ波長のラマン散乱が生じる。
【0059】
このように、サンプル50を、天然に存在するか又は生体の組織材料でなく、比較的安定で、非消耗性の合成材料で形成することができる。例えば、Gellermannらが開発したような従来技術の装置(2001年3月20にGellermannらに発行された米国特許第6,205,354B1号を参照。この特許を参考のため本明細書に組み込む)は、本体から切り取られた生体組織に依存していた。死体の砕いた組織から試験用の材料を得ることができる。これに比較して、合成材料から形成され適切な応答を提供するサンプル50は、はるかに良好な再現性と、はるかに高い均一性と、均一なサンプル50のほぼ無制限の供給とを提供できよう。
【0060】
図3Bを参照すると、精度サンプル24又は精度サンプル・キャップ24を、装置10のバレル13にぴったりはめることができる。スリーブ34をバレル13の周りに受けるために、ハウジング12を外すことができる。現在考えられている一つの実施形態では、サンプル50は、装置10のウインドウ14に対してぴったり位置調整される。脚52は架台16又はプレート16にはめ込まれて、キャップ・デバイス24を方向付ける。キャップ24を逆向きにし、ウインドウ14に対する高い値のサンプル50を低い値のサンプル50と交換することができる。
【0061】
図3Cを参照すると、本発明による精度キャップ24の実施形態の一つの変形において、低い値のサンプル50aを、オフセット距離55をおいてサンプル・キャップ24構造の中にセットすることができる。すなわち、50a、50bを形成しているフィルムの材料は、その配向性高分子繊維の回転や配向に敏感に影響されるだけでなく、ある程度Bierの法則に支配される。サンプル50aのウインドウ14からの距離55又はオフセット55は、ウインドウ14からの光ビームに対するサンプル50aの放射応答に影響を与えることになる。
【0062】
これにより、オフセット55を選定し計算して、サンプル50aの放射応答の所定の低減度を得ることができる。同様に、高い値のサンプル50bをウインドウ14と同一の面位置に保持するか、又は異なるオフセット55に位置させることができる。このように、実際は一つの放射応答値しか持たない一つの材料から、単に、低い値のサンプル50aを高い方の値のサンプル50bよりも深い又は大きなオフセット距離55に配置することによって、実際上、異なる放射応答を生成するようにして使うことができる。
【0063】
図3Dを参照すると、ダーク・キャップ22は、ウインドウ14に対向して配置され、ウインドウ14からのビームに対し角度の付いた凹形面40を曝している。これにより、ビームは、放射応答としてウインドウ14を通り戻ることなく散乱する。このように、ダーク・キャップ22の放射応答は、ほぼゼロレスポンスとなり、結果として、装置10の電気的及び電子的アーチファクト(例えば、誤差、ノイズなど)に対応するバックグラウンド値のデータを生成する。
【0064】
図4−7を参照すると、装着キャップ26又は自己装着キャップ26には、支持架18に合うサイズにしたマウント56を含めることができる。接合用ブラケット58はマウント56に対して閉じる。操作者は、ハンドル59をマウント56に向けて動かし、戻り止め57をかみ合わせ、ブラケット58のマウント56に対する閉状態をしっかりと保持する。
【0065】
自己装着キャップ26は、バレル13の面15に向け、マウント56上をスライド可能なスリーブ34を含む。かくして、肩36によりサンプル50はウインドウ14に対し位置合わせされ、適正で再現可能な放射応答を実現する。通常、支持架18は、マウント56とブラケット58との間に形成される開口部60によって受けられる。こうして、受け部62が十分ウインドウ14に近接し、スリーブ34及び肩36が、ウインドウ14及びバレル13の面15に対し適切に配置されるような位置にマウント56を調整することができる。
【0066】
現在考えられている一つの実施形態では、受け部62は、その中を通りハンドル66で位置決めできるプランジャー64を受ける。ハンドル66を後に引き、スリーブ34と受け部62との間のばね68を圧縮することができる。プランジャー64は、受け部62とプランジャー64との間で作動する戻り止め(図示せず)により留められる。これにより、スリーブ34及び肩36は、それらが支えるサンプル50とともに、ウインドウ14から効果的に引き下げられる。このような位置にしておいて、図6に示すように、装置10の支持架18を開口部60内に通し、スリーブ34をバレル13近縁に配置することができる。
【0067】
ハンドル66を、バレル13及びこれに含まれるウインドウ14に向けて押し、戻り止めを乗り越えると、ばね68は、スリーブ34、肩36、及びそれに含まれるサンプル50をウインドウ14に向けて押し付ける。肩36は面15に対して位置合わせされる。肩36と面15との位置合わせにより、サンプル50はウインドウ14に対向して位置付けされる。
【0068】
現在考えられている一つの実施形態では、スペーサ72は、スリーブ34の横断又は半径方向にこれを通り抜けて終端74まで延びている。サンプル50を露出できるように、スペーサ72には穴が開いている。しかしながら、図5に示すように、スペーサ72が占める厚さ76、又は立ち幅76によって、サンプル50aは、バレル13のウインドウ14から距離76だけ遠く間隔をあけられている。ウインドウ14からの照射に対するサンプル50の放射応答を、十分に低減させるオフセット76を計算、試験して、放射応答の「低い値」を得る。
【0069】
スペーサ72の挿入口穴78を、出口穴79よりも大きくすることができる。そこで、端部74の断面をスペーサ72の大きさより小さくすることができる。これにより、スリーブ34内でスペーサの位置を調整して、サンプル50を露出している開口部の安定した位置決めをすることができる。ハンドル66を、バレル13及び囲まれたウインドウ14の方に押すことによって、受け部62を通りプランジャー64を前進させる。プランジャー64は、スリーブ34、肩36、及びサンプル50をウインドウ14に向けて前進させる。同様に、スペーサ72は、肩36を、ウインドウ14からより遠くの位置に置き、それ自体72が肩36の機能を果たす。
【0070】
このような環境において、ばね68は、スリーブ34及び肩36を、内包されるサンプル50とともに、可能な程度において面13及びウインドウ14に押し当てる。こうして、ウインドウ14に対するサンプル50の繰り返し位置合わせが成就される。一方、スペーサ72は、ウインドウ14に対するサンプル50位置の距離の差の効果によって、サンプル50から第二又はより低い放射応答を提供する。
【0071】
図8−9を参照すると、二重キャップ28又は二重端キャップ28には、対向する両端からのスライド82a、82bを収納するフレーム80を含めることができる。スライド82a、82bは、それぞれのスリーブ34a、34bを搭載している。各スリーブ34a、34bは、必要に応じ、適切なスペーサ72によって、それぞれのサンプル50a、50bにオフセットを与えることができる。作動において、ばね68はスライド82を押し離している。
【0072】
フレーム80の壁を抜けるスロット86中で作動するハンドル84は、スライド82に固定され、スライド82を引き込む。すなわち、例えば、ユーザは、ハンドル84、又はプレート88を具えたハンドル84、又は親指プレート88を具えたハンドル84を一緒に引いて、それぞれのスリーブ34a、34bとともにスライド82a、82bを引き込むことができる。このようなやり方で、装置28又はキャップ・システム28の有効長さ89を、ウインドウ14又は面15とシールド20との間で低減し容易に合わせることができる。
【0073】
これにより、フレーム80を、ウインドウ14の下の架台16又はデッキ16に具合よく設置する。ユーザがハンドル84を放すと、ばね68はそれぞれのスライド82及び対応するスリーブ34を押し離す。一つのスリーブ34a、34bはシールド20に接し、反対側のスリーブ34a、34bはバレル13を囲み、その側の肩36を、面15と内包されるウインドウ14とに位置合わせすることになる。このように、ウインドウ14に対し肩36をきちんと合わせることにより、サンプル50を、装置10からウインドウ14を通して受ける照射に応答して、ウインドウ14を通して所定の較正用放射応答を返すために適切な位置に設定することができる。
【0074】
図10を参照すると、マスタサンプル30には、中性サンプル90、低い値のサンプル92、及び高い値のサンプル94を含めることができる。これら3つのサンプル90、92、94を適切に表示されたケース96中に保持することにより、工場の較正で、機械間の動作状況バラツキをほとんどなくすことができる標準のセットを提供する。すなわち、マスタサンプル30又はサンプルセット30は、生産された各々の装置10が、同一のサンプル材料に対しほぼ等しい読み取りを提示することを保証するための較正標準を提供する。
【0075】
マスタサンプル30を、面15及びウインドウ14に直接固着することができる。通常、ウインドウ14は、カラー(collar)98又は他の内部の位置合わせ機構のような何らかの機構で、バレル13又はその内部に固定される。これにより、ウインドウ14それ自体が、サンプル30の実際の位置を決定する。
【0076】
サンプル30は、透明部分や半透明部分が生じないよう十分に厚くすべきである。同様に、サンプル30でウインドウを完全に覆って、周辺光が生じないようにすべきである。同じ理由で、周辺光を適切に排除し、試験被験体の距離合わせのため、被験体の手、腕又は他の身体部分を、同様にウインドウ14に直接接触するようにおくことができる。
【0077】
本出願人は、マスタサンプル30を、ポリマー組成により効果的に形成できることを発見した。現在考えられている一つの実施形態では、ダウ・コーニング(Dow Corning)3179ダイラタント複合材として知られる材料が、人体組織の特定の特質を非常に効果的に模擬するため大いに有効であることを発見した。一般に、ホウ酸で架橋されたシリコーンオイルは、ヒトの皮膚から検出されるものとの対比において、類似した反射度又は弾性光散乱、及び類似の蛍光を生成するために非常に効果的であることを発見した。
【0078】
現在考えられている一つの実施形態では、マスタサンプル・セット30に、特に中性サンプル90又はホワイトスキャン・サンプル90には、ジメチルシロキサンを含有させることができる。これは、ホウ酸を持つ末端水酸基ポリマー類である。さらに、水晶、及び市販の増粘剤としてのシリカを組成に加えることができる。この増粘剤は、製造者がチクソトロル(thixotrol)STという商品名を付けている。
【0079】
含有させる他のシリコーン組成物には、ポリジメチルシロキサン、及び微量のデカメチルシクロペンタシロキサンが含まれる。類似量のグリセリン及び二酸化チタンをこれらの成分に添加することができる。
【0080】
現在考えられている一つの実施形態では、マスタサンプル30、特に中性サンプル90を形成するマトリクスは、約65パーセントのジメチルシロキサン、17パーセントのシリカ、9パーセントの増粘剤、4パーセントのポリジメチルシロキサン、1パーセントのデカメチルシクロペンタシロキサン、1パーセントのグリセリン、及び1パーセントの二酸化チタンを含有する。中性サンプル90を形成するマトリクスは、粘弾性材料として特徴付けることができる。すなわち、材料90は、高速度のひずみ(例えば、衝撃)に対しては弾力的に応答し、比較して非常に低速度の応力及びひずみ(例えば、それ自体の重量)に対しては液体として応答する。
【0081】
中性サンプル90中にドーピング剤又はドーパントを混ぜて、低い値のサンプル材料92及び高い値のサンプル材料94を生成することができる。天然材料又は生物学的供給源からの「有機」材料は、効果的であることが分かっている。例えば、高い値のカロチノイドを含有する食品を砕いて(例えば、粉砕する、すりつぶすなど)マトリクス90に混合することができる。トマト、にんじん、野菜類、果物類、及び適切なカロチノイド量を含有する類似食品を、マトリクス90の中に混合又は溶解して、サンプル92、94を生成することができる。
【0082】
また、本出願人らは、カロチノイドの炭素結合の作用を示す合成材料をすりつぶし、又は挽いて、又は他の方法で砕いて、マトリクス90の中に分散し、低い値のサンプル92及び高い値のサンプル94を生成できることを発見した。例えば、ホワイトスキャン・サンプル90、低い値のサンプル92、及び高い値のサンプル94を含むマスタサンプル30を使い工場較正を行って、装置10の機械間バラツキを除去することができる。
【0083】
すなわち、ミクロ粉砕した又は微細に砕いた、カロチノイドによく似た放射応答特性を持つ合成材料の種々の濃度のものを、高い値のサンプル94及び低い値のサンプル92として、非常に安定で繰り返し使え再現性のあるサンプルとして利用することができる。マトリクス90中のこのような合成ドーパントの濃度を調整して、低い値又は「低」材料92を適切な低さの値とし、高い値又は「高」材料94を適切な高さの値とすることができる。
【0084】
ポリビニールアルコールから作ったある種の材料が、このドーピング機能を行う働きをすることを発見した。例えば、オリゴマーと呼ばれる長いポリマーからKタイプの偏光フィルム材料を形成する。このような材料は偏光フィルタとして使用される。これらを偏光フィルムとして基材の上に形成することができる。これらの材料は、ポリビニレン及びポリビニルアルコールの配向性ブロックセグメントを包含する分子レベル配向性のポリビニルアルコールから形成される。具体的には、このようなKタイプの高分子材料は、ポリビニルアルコール/ポリビニレンブロック共重合体材料を含み、ポリビニレン・ブロックはポリビニレンアルコールのシートの分子脱水によって形成される。
【0085】
これより、このシートは、ポリビニルアルコール/ポリビニレン・ブロック共重合体材料の長さの異なる光偏光分子の均一な分布を形成する。この長さは、共重合体のポリビニレン・ブロックの共役な繰り返しビニレンユニットの、2から24までの範囲の大数nによって定まる長さである。
【0086】
各ポリビニレン・ブロックの集中は、200から700ナノメータの範囲の波長を吸収する傾向があり、大体において比較的一定である。これら材料のフィルムは、スペクトル二色比すなわちR(D)によって識別される。二色比は、ポリビニレン・ブロックの長さnの増大とともに増大する。このように、ポリビニレン・ブロックの集中及び分子の配向度により、少なくとも約45台の光学的二色比が得られる。このような材料はさまざまなメーカーによって生産されていて、米国特許第5,666,223号に開示されており、この特許を参考として本明細書に組み込む。
【0087】
本出願人は、このような材料を非常に微細な粉砕サイズに砕くことにより、ダイラタント複合材のマトリクス90内にうまく分布させることのできるドーパントが得られ、適切な低い値の材料92及び高い値の材料94を作成できることを発見した。ドーパントは、CAB/Kタイプ材料の処理表面を砕いて得ることができる。Kタイプ材料自体を挽いて、削って又は他の方法で粉砕してドーパントとして利用することができる。現在考えられている一つの実施形態では、不純物を防止するための閉じた面を持つ、400グリットのエメリー研磨紙を使って、ドーパント材料を一体固体シート形状から粉末に挽いた。粉末は長方形の結晶を形成しているように見える。この粉末を、化学分野で公知の200番ふるいを通して分級すると適切に機能する。100番又は50番ふるいのような、これより大きな粒子でも使えるが、サイズ及び分布の均一性により結果の均一性が向上するようである。
【0088】
ヒト被験体のサンプルを幅広く試験することで、低い値及び高い値のサンプル92、94の値を確かにすることができる。しかる後、マトリクス90に適切な量のドーパントを添加して、インビボのヒト組織に対応して、放射応答の比較的高い及び比較的低い範囲を代表する適切な低い値の材料92及び適切な高い値の材料94を得ることができる。
【0089】
マスタサンプル30は、合成材料から再現性を持って合成でき、非常に安定した結果が得られるので、高い有用性を提供する。放射(例えば、光)が、試験及び較正の基となる材料中の分子結合に影響を与え得る程度において、マトリクス90を成型し異なった粒子にして暴露することができる。すなわち、マトリクス90を成型可能なプラスチック又は粘弾性的な材料とし、これを成型又は混練して、選定した量のドーパントをくまなく均等に分散させることができる。
【0090】
同様に、連続した又は長期の放射を受けた結果としてドーパント材料が化学構造を変え得る程度において、マスタサンプル30を混練して、ドーパントを再分散させ、装置10のウインドウ14からの照射に対して、連続的で、ほぼ一定値の放射応答を得ることができる。
【0091】
図11A−11Dを参照すると、こういったフィルム材料を、精度キャップ24中の日毎の較正材料として直接利用することができる。本出願人らは、ヒトの個体又は組織のサンプルをスキャンすることは、安全、倍率設定など幾多の問題、及び、広範囲すぎて制御不可能な装置10の動作状態の変動をもたらすことに気付いた。合成材料により日常較正を行い、さまざまな条件の変動を分析する方がもっと適切である。例えば、温度、湿度、電子的ドリフトなどにより装置10の構成要素の動作が変化する可能性がある。従って、各々のスキャン作業開始時に、又は一つのスキャン作業内であっても、長時間経過後には装置10を較正するのが適切であろう。
【0092】
装置10の較正に使用する精度キャップ24をこの装置10にひもでつないでおく。後に、機械の経年、条件の変化などに応じて、装置10を再較正し、スキャンから得られた数値が、予測可能で一貫性があり再現可能な仕方で出力できるようにすることができる。
【0093】
一つの実施形態において、精度キャップ24の中に設けられるサンプル50を円偏光素子として機能させることができる。円偏光素子は、リニア偏光素子を4分の1波長遅延素子と組み合わせたものである。無偏光の光は、リニア偏光素子を通過して一方向に方向付けされる。次にそれが4分の1波長遅延素子を通って円偏光される。すなわち、らせん状に「回転」することになる。表面に当たると反射され、反射した面かららせん状で逆方向に戻る。戻る光は、当初の偏光素子を逆通過する能力を制限されている。ビームは、偏光素子の伝送軸に対し90度の差のある新しい指向方向のリニア偏光を受け、相互に直角に方向付けされた2つの偏光素子と同様な効果を持つ障害に出会ったことになる。
【0094】
入射光に対して放射応答を提供する材料を保護するために、保護塗料を塗布することができる。特定の実施形態において、サンプル50のフィルムには、酢酸酪酸セルロース(CAB)の支持シートの間のサンドイッチ構成の中に配列、延伸されたポリビニルアルコール(PVA)の薄いシートを含めることができる。
【0095】
図11Aを参照すると、光を、垂直配向性の波104として、入射軸102(例えば、軸102a、102b)に沿って当てることができる。図示したような方向性を持つ配向性フィルム110に当たった結果、垂直波は出射軸106に沿って通過することができる。かくて、通過波108は、入射波104と同じ方向性を持つシート110を通過する。なお、フィルム110を通過できる波104の配向は、実際には、フィルム110を形成するポリマー又はオリゴマーの連鎖の実際方向と直行している。
【0096】
同様に、入射軸102bに沿って水平に方向付けられた波112が、垂直に方向付けられたフィルム110に接近した場合には、波はフィルム110に吸収されるか、反射されて軸116bに沿って進行する反射波114になる。方向付けされていないビーム101は、たぶん、あらゆる方向の配向性を持つ光101を含むことになろう。ビーム101が垂直に方向付けられたフィルム110上に当たると、垂直成分の波104は通過波108として通過し、水平成分の波112は吸収されるか、反射波114として反射される。
【0097】
図11Bを参照すると、軸102bに沿って当たった水平波112は、水平に指向されたフィルム120に当たった後、退去軸106bに沿った通過波118になる。しかしながら、ビーム101が垂直偏光フィルム110によって効果的に「分割」されるのと同様に、入射経路102aに沿って水平偏光フィルム120に当たるビーム101又はその垂直成分波104は、フィルムによって垂直成分を吸収されるか、経路116aに沿った反射波122として反射されることになり、これに対しては違った放射応答が生成されることになろう。実際的問題として、フィルム120がコヒーレント光の入射光線101に対してきっちりと法線方向に指向されていれば、経路102aと116aとは同一経路となろう。他の事象については他の反射法則が適用される。
【0098】
図11Cを参照すると、現在考えられている一つの実施形態では、3M Companyから入手可能なKNCP35円偏光フィルタとして知られるフィルムは、部分的に配向され、これにより4分の1波長偏光素子として動作するポリビニルアルコール(PVA)層124aを具えている。その後ろに光学的に透明な酢酸酪酸セルロース(CAB)の層124b、さらにその後方に、配向性を得るために10倍伸長された、ホウ酸架橋のポリビニルアルコール及びポリビニレンの別の層124cを配置することができる。
【0099】
第一方向に伸長されたプラスチックは、長い分子のリニア配向方向と直行する方向に配向された光を通過させる。スキャン装置10からの光ビーム101が二色フィルタを通過する際には、光の偏光は制御されない。しかしながら、サンプル50として機能するフィルム110、120は、偏光に大きく影響される。
【0100】
これらにより、精度キャップ24は各装置10によって異なった挙動をすることになる。現在考えられている一つの実施形態では、装置10のウインドウ14から発する光ビーム101の偏光又は偏りがどうであれ、そのまま許容することになる。とはいっても、日常較正プロセスに使用する精度キャップ24中のサンプルフィルム50の配向性は、再現性がなければならない。
【0101】
従って、材料50を方向付けすることができ、その指向方向はキャップ・システム24に対して固定されこれに沿って配向されることになる。同じ様に、キャップ24は、ウインドウ14下側のデッキ16又は架台16上に脚52で配向されることになる。一部の実施形態において、図11Cのフィルムを基材上に積層することができる。例えば、ベース124dを、ガラス又は類似材料で形成することができる。別の実施形態においては、ベース124dは使われない。ベースでなく、間にある光学的透明層124bに構造上CAB基材の役割を持たせることができる。
【0102】
特定の実施形態において、高及び低フィルム・サンプル50を、ただ一つのフィルム組成で作成し、異なる位置に配置して、比較的に高い、及び低い放射応答(例えば、読み取り)を得ることができる。他の実施形態において、高い値及び低い値のサンプルに対し異なったフィルムを使うことができる。例えば、HRタイプとして知られるフィルムは、放射応答の比較的に低い値を提供することができる。このようなフィルムは、炭素原子の二重結合の特定なセットを持つポリビニルアルコール/ポリビニレンである。また、この材料は、しばしばヨウ素でドープされて赤外分光法に用いられる。
【0103】
これに対して、3M Companyから入手可能なKNCP35及び他の類似構成の「Kベース」フィルムとして知られるフィルムは、装置10のウインドウ14からのビーム101による照射に曝されたときに、比較的に高い放射応答値を提供する。KNCP35タイプのフィルムは、前述した、円偏光のサンドイッチHRタイプのフィルムとして作用する。
【0104】
較正のためのスキャナ出力(強度、スコアなど)の低い値は、HRタイプのフィルム110、120を使って得ることができる。このようなフィルムには、ベース124dの有無に関わらず、図11Cに示すようなPVA124a、CAB124b、及びKタイプフィルム124cが含まれる。これに対し、較正のためのスキャナ出力の高い値は、図11Dのような、Kタイプ・フィルムを光学的に透明なCABのシールド層に接合したフィルム110、120から得ることができよう。
【0105】
図12を参照すると、本出願人らは、非組織材料125aは、装置10のウインドウ14からのビーム101に曝されると、比較的透明で明確な形状126aをとることを観察した。交差部分の領域127aは、他の領域127c、127bの内側にある127b、127cとして、もしくは図のようにオフセットに位置付けされることがある。ウインドウ14から進んでくるビーム101の照射領域を表している光源エンベロープ127bの面積又はサイズよりも、交差部分127aがかなり小さくなることがある。同様に、交差部分の面積127aが、検出器エンベロープ127cの面積127cよりもかなり小さくなり、これとずれることがある。
【0106】
すなわち、光源に照射されている領域、光源エンベロープ127bと、装置10内の検出器に「読み取られる」領域、検出器エンベロープ127cとがずれることがある。従って、面積127aは、サンプル、較正材料30などの真の放射応答を表すためには不十分になることがある。
【0107】
これに対し、ヒトの皮膚及びドープされないマトリクス125b(マスタサンプル・セット30中の中性材料90)はブルーミング応答127bを生じる。他の多くの材料で見られる澄んで明確なエンベロープ127b、127cでなく、人間の皮膚、及び、ドープされない、マスタサンプル30中の中性サンプル90又はホワイトスキャン・サンプル90のマトリクス125bはブルーミング形状126bを生ずる。このブルーミング形状126bは、大きく拡がった形状126bにおいて、放射応答、反射、散乱などの面積が拡大したことによるものと考えられる。ブルーミング形状126b又は効果126bは、光源エンベロープ127bと検出器エンベロープ127cとの間にはるかに良好な交差部分127aをもたらす。
【0108】
このように、ドープしないマトリクス125b(例えば、材料90)は、カロチノイドや類似の炭素結合を含有する他の材料によるラマン散乱が除かれた、人間の皮膚の挙動を比較的正確に表現する。ドープなしのマトリクス125bを較正サンプルとして使用することにより、皮膚の弾性散乱部分及び蛍光を反映する曲線126eを実現することができる。
【0109】
これに対し、天然材料、又は、カロチノイドや他の目的の分子構造体の挙動を模擬するための適切な炭素結合構造を持つ合成材料などの、ドーパント剤125cは、ラマン応答として識別される曲線126cを提供する。このように、ピーク、特に、典型的には510ナノメータ波長において見られる最も高いピークは、装置10のウインドウ14から試験サンプル30、50を照射する光によるドーパント125cに対する照射からもたらされたものである。
【0110】
本出願人らは、ドーパント125cをマトリクス125b中に混合することにより、人間の皮膚を信頼性と再現性を持って実質的に模擬できるマスタサンプル30を作成できることを発見した。マスタサンプル30を照射し、読み取って(例えば、スキャン)取得された、波長の関数としての強度曲線140は、対象の皮膚に予測される全スペクトル・プロフィール140を提供する。ドープされないマトリクス125bで構成される中性サンプル90は、照射光の弾性散乱及び皮膚の自然蛍光の影響を識別し、これにより、これら影響を排除できる曲線126eを提供する。他方、マスタサンプル30の低い値のサンプル92及び高い値のサンプル94の中の異なる濃度のドーピングは、比べて異なる曲線140、及び特にこれに寄与するラマン応答の曲線126cを提供する。
【0111】
引き続き図1〜12を全般的に参照しながら、図13〜15を参照すると、波長軸132を定義域とし、強度軸134を値域(range)として図示したあるチャートは、473ナノメータの波長136及び510ナノメータの波長138を概略的に示している。473ナノメータの波長136は、放射応答の曲線140中の固有のアーチファクトであって、そこにほぼ集中する弾性散乱ピーク142である。一方、曲線140の蛍光応答144を表す大きなドーム144は、特徴的な510ナノメータ波長138の両側に張り出している。
【0112】
一般に、弾性曲線142に示される弾性散乱は、ウインドウ14から投射されたビーム101の入射周波数を持つ反射光と考えられる。周波数と波長とは逆数であり置き換えが可能なので、その双方をデータ取得の定義域にして説明することができる。曲線140の蛍光部分144は、吸収された光の周波数と異なった周波数の光の再放射であり、通常、岩石や人間の皮膚など、特定の材料の表面からのものである。
【0113】
比較的小さな発端のピーク146、148は、特徴的な510ナノメータ波長138におけるラマン散乱を表している。これより大きくて見分けの付くピーク150は、510ナノメータ波長138周りのラマン応答を表している。
【0114】
図14を参照すると、曲線140のラマン散乱部分146、148、150は、ある程度バックグラウンド・ノイズ152に影響されることがある。それはあっても、元の放射応答曲線140を修正し、弾性散乱部分142及び蛍光部分144を除去することによって、ラマン散乱曲線146、148、150の信号対ノイズ比は大幅に改善される。通常、対象とする領域(region)を510ナノメータ波長領域周辺、対象域の下限154の約450ナノメータから、上限156の約550ナノメータまでとする。
【0115】
ホワイトフィールド(white field)正規化を実施して、図14の曲線140を得ることができる。これはホワイトスキャン曲線140(ドープなし中性サンプル90によるスキャンに基づく)を活性スキャン曲線140(ドープされた又は活性材料サンプルのスキャンに基づく)と対比して行うことができる。そこで、ホワイトスキャンを使って弾性散乱部分142及び蛍光部分144の影響を排除することができる。ホワイトスキャン曲線140を活性スキャン曲線から差し引くか又はこれにより除算することができる。多くの数の小さな差異が必要となるので減算は厄介となろう。ホワイトスキャンで活性スキャンを除算することで2つの曲線140中の共通な影響が正規化除去され、図14に示すように、ピーク146、148、150が浮き彫りにされる。
【0116】
図14の全体曲線151は、ほぼ平らな又は一定のベースライン曲線158を示しているが、常にこうなるとは限らない。すなわち、ベースライン曲線がゼロでない勾配を持つことがある。といっても、例示概略図の中では、必要により、誇張したり最小化したりすることがある。
【0117】
ホワイトフィールド正規化スキャン又はホワイトスキャンは、装置10の制御パラメータを調整(例えば、較正)し、これらの装置10が、所定の較正被験体30のスキャンに対して同一な出力を生成することを保証するための役割を果たすことができる。中性サンプル90又はホワイトスキャン・サンプル90のドープなしマトリクス125bを持つことにより、活性材料(例えば、ドープ材、活性化材など)からの実質データを正規化するためのホワイトスキャンを実施する能力が持てる。ホワイトスキャンを、ダークキャップ22を使って行われるダークスキャンとほとんど同程度に用いることができる。ホワイトスキャンを使って、被験体の弾性散乱142及び蛍光144応答(放射応答)をはじめ、装置10の光学システムの光学的アーチファクトを取り去ることができる。これは、スキャナ10の電気的及び電子的影響に起因する、電気的及び電子的アーチファクト(例えば、誤差、不整合、バックグラウンド、ノイズなど)に対応する。
【0118】
本出願人らは、ダイラタント複合材を、中性サンプル90(例えば、ドープなしマトリクス125b)として利用でき、ダークキャップ(例えば、ダーク・スキャン)が電気的アーチファクトに対して行うのと同様に、この複合材は、光学的なアーチファクト及びバックグラウンド放射応答に対し、かなりの抑制及び正規化作用を行うことを見出した。これらの効果を曲線140から除去することにより、得られたラマン散乱曲線151の信号対ノイズ比を向上することができる。この点において、ホワイトスキャンを「フィルタリング」機構と見なすことができよう。
【0119】
例えば、曲線140の弾性応答部分142及び蛍光部分144は、は、ウインドウ14からの光ビーム101に対する被験体(人、サンプルなど)の全体的な放射応答の一部を表している。ドープなしのマトリクス125bで形成されるホワイトスキャン・サンプル90又は中性サンプル90は、正規化して除去することになる2つの部分142、144を提示する。これにより、ホワイトスキャンからの曲線140を基準合わせして(チャート中の値域の値を合わせ調整する)、活性スキャン(ドープされたサンプル92、94などを使う)から得た曲線140にぴったり合わせてから除算する。
【0120】
2つの曲線140を相互に1点ずつ(又は他の任意な適切な方法で)除算することができる。2つの曲線の差を求めることもできなくはないが、かなり多数の値の間での小さな差異によって、信号対ノイズ比はかなりの制限を受けることになろう。ホワイトフィールド正規化又はフラットフィールド(flat field)正規化は、通常、初めに2つの曲線を同一の値域にぴったりと合わせ、次に除算して、点(定義域の一切の位置における値域の値)の相対的な大きさがほぼ等しい新しい正規化曲線を得る。この除算は、合理的な範囲で一貫性のある結果をもたらす。通常、これにより信号対ノイズ比の大幅な向上が得られ、活性材料(例えば、サンプル92、94)とホワイト・サンプル90との間の違いが浮き彫りになる。
【0121】
このように、ホワイトフィールド正規化、又は中性サンプル90を使ったホワイトスキャンは、ダークスキャンではまだ除去されていない、バックグラウンド、電子的、他の波長、強度、光の収差、ノイズなどの影響を計算除去するための曲線126eを効果的に提供する。ダークスキャンによる、曲線140中の電気的及び電子的アーチファクトの削減と合わせ、天然の被験体のスキャンを用いることもできる。
【0122】
マスタサンプル30の合成サンプル90、92、94には、生体の持つバラツキ、腐食しやすさなどがない。そうでありながら、ダイラタント複合材は、シリコーン自体は他面では光学的に透明にできるという事実にもかかわらず、皮膚とほぼ同様な蛍光及び反射率を備えている。
【0123】
マスタサンプル30の中性サンプル90を形成しているドープなしマトリクス125bは、実際には固体(solidus)ソリダスな有機材料(例えば、食材、栄養素の結晶など)を効率的に吸収し、また、液状材料も吸収する。一部の実施形態において、中性サンプル90を形成しているダイラタント複合材は、実際は少量の水を含有している。アルコール、アセトン、又は四塩化炭素などのような他の溶剤を使って、材料をダイラタント複合材に取り入れることができる。
【0124】
ベース材料90又は中性サンプル90は、皮膚を模擬しているが、対応するドーパント125cがないので実質上「カロチノイド模擬」はしていない。本出願人らは、200番メッシュふるいを100パーセント通る固体粒子サイズが満足できるものであることを発見した。マトリクス125b(中性サンプル90)全体に均等にブレンドされた十分に均一な粒子が、低い値のサンプル92及び高い値のサンプル94の均一な結果を与えるようである。
【0125】
同様に、ホワイトフィールド補正、又は「ホワイトスキャン」補正をしない場合、サンプルに過大な不均一性が生じることも重要である。固体結晶は幾分信頼性に欠け、ブルーミング効果126bをもたらさないことが分かった。液体は、一般に、適当な結果を得るためには十分な均一性及び不透過度に欠けることが分かった。手の均一性をベースに、手を使っていく台かの機械を較正することができる。多数の機械を手を使って較正するやり方は、手の利用可能性及び均一性によって制限される。液体中に懸濁された材料の一サンプルも概して信頼性を示さなかった。不透明な材料とともにドーパント125cを使うことによって適切な懸濁液を得ることができる。
【0126】
そういったことはあるが、ダイラタント複合材の粘弾性材料は、適切な不透過性、放射応答、弾性を示し、粘着性及びドーパント125cを均一に懸濁させ、分布させる能力を示した。この材料は、放射応答140の反射部分142及び蛍光部分144をほぼ皮膚のものと同じに模擬する並外れた能力を示した。
【0127】
中性サンプル90として又はドープサンプル92、94として、ダイラタント複合材をスキャンするにあっての一つの注意点は、曲線140中のラマン散乱ピーク150に関する。主ピーク150は炭素二重結合に関連するように見える。ピーク148は、一重炭素結合からのラマン散乱によりもたらされたものと思われる。同様に、ピーク146は、メチル基に付着している一重炭素結合からのラマン散乱からきたように見える。すべてのピーク146、148、150がそのままぴったりと整合はしそうにない。値は相対的なものであるが、関係はない。
【0128】
任意の適切な基準を取って較正を実施することができる。例えば、弾性応答142と蛍光応答144とを除去した曲線140のベース値をゼロに設定することができる。一方で、ラマン散乱ピーク150の最大値を1の値に設定することができる。同様に、ベースラインをゼロに設定し、最大値を100にすることもできよう。現在考えられている一つの実施形態では、ラマン散乱ピーク150の最大値を6万を超える値又は寄与値にし、例えば67,000に設定することができる。同様に、低い値を、スケールの限度に応じて適切な値に設定することができる。
【0129】
実際上は、被験者に対する実際の範囲は、単に、約67,000の最大強度値に基づいて、部分的には、特定レベルのレーザ出力における光子カウントを概算した任意のスケールにより決められた。このような尺度上での人間の皮膚のスキャンの実際の値は、低いものは20,000あたりから高いものは50,000台の間の範囲にわたることになろう。もちろん、これらは人によって異なる。しかしながら、現在考えられている一つの実施形態における任意の強度スケールはあったとしても、ゼロから67,000までの範囲は適切である。これにより、数学、信号処理及び他の技術で知られているような任意の適切な間隔で簡単に目盛りし、マップすることが可能となろう。
【0130】
例えば、この範囲をゼロから1、マイナス1から1、ゼロから10、1から10、1から100などなどにスケールすることができる。いうなれば、尺度というものは常にいくらかは任意なものである。事実上、常に値を目盛ることができる。
【0131】
ドーパント125cを適切なドーパントなしマトリクス125bに添加して、標準化された「合成組織」として適当な範囲を表すのに適した妥当なマスタサンプル30を作成することができる。本出願人らは、較正のための標準を開発し、ウインドウ14からのビーム101による照射に対する被験体の放射応答に依存する出力を標準化することができた。このような較正材料、構造体、及び方法が出現するまでは、装置からの数字の出力は単に無原則な数値であり、十分に解釈のできる値を提供しなかった。
【0132】
図15A−15Dを参照すると、電子的及び電気的アーチファクト、反射又は弾性光部分142、及び蛍光144を補正された放射応答の曲線140は、残ったデータ曲線160で特徴付けられている。適切な数値手法によって、データ曲線160をベースライン曲線158に当てはめることができる。双方の曲線140、160の形状及び次数を適切な次数とすることができる。3次のベースライン曲線158が適切な当てはまりを示した。これより高い次数及び低い次数の使用もうまくできたが、高い次数は、数学的アーチファクトとして変則的なピークを生成することがある。より低い次数は、ピーク150を基調曲線160と対比するためには、粗すぎる当てはめを生成する可能性がある。
【0133】
ベースライン曲線158を形成する際には、目的のカロチノイドピーク150又はラマン散乱ピーク150の影響を含めないようにすべきである。ピーク150を検討から外すための境界点162a、162bを選定することができる。すなわち、境界点162a、162bによってピーク150を区切り、その内側にある点は、ベースライン158の曲線当てはめには含めない。同様にして、極値164a、164bを選定することができる。通常、中間点166a、166bは、それぞれの内側の境界162とそれぞれの外側の境界164との間のサンプリング周期に含まれる。通常、ピーク150の各々の側の境界162と164との間には約20個の点が含まれている。ベースライン曲線は、すべての点162、164、166にわたって当てはめられる。しかる後、ピーク150の最高値の強度をその下のベースライン158と対比することができる。
【0134】
図15B〜15Dを参照すると、実際の曲線160は、前に述べたダークスキャン、ホワイトスキャン及び適切な正規化によって補正され、データ中の望ましくないアーチファクト及び効果が除去されている。当てはめられたベースライン曲線158、それらが当てはめられた曲線160は、低い値のサンプル92、実際の手(インビボ被験体)、及び高い値のサンプル94の実際のスキャンを表している。
【0135】
較正において、一つの曲線を、これに沿って機械を較正するための基準とすることができる。これに対して、別の曲線を実際データ曲線とすることができる。これら曲線の間でマップを実行、さらに具体的に言えば、曲線のピークを合わせて、曲線どうしをほぼ整列させることができる。加えて、ピーク域150を最も正確にマップできよう。
【0136】
較正調整を、曲線の勾配及び切片を補正し、基準曲線の勾配及び切片に合わせる工程と考えることができる。すなわち、線形曲線当てはめを想定すると、勾配の補正により回転が得られ、切片の補正によって平行移動が得られる。実際の装置10において、パラメータを調整し、最も興味のあるピーク域150の下に横たわるベースライン曲線158に対する、係数及び信号減算、又は「勾配及び切片」を調整することができる。
【0137】
較正により少なくとも2つの目的が成就される。標準参照物質により、グローバルな機械間の一貫性(機械間整合性)が提供される。このことには、将来現場の較正で頼ることのできる、機械のためのベースライン158が含まれる。これにより、装置10に対する標準化されたセッティング方法が設定され、標準マスタサンプル30によって、どの個別装置10に対しても適切なベースライン曲線158を提供することができよう。
【0138】
装置10には、識別可能な機械固有の、60有余になんなんとする個別パラメータが確認されている。従って、工場較正では、どの2つの機械も同一のマスタサンプル30を同一に読み取ることできるようにパラメータをセットする。同様に、現場で装置10が再現性を持って使えるように、装置10の他の制御パラメータを調整する。かくして、装置10に割り当てられた、装置に固有のダーク・キャップ22及び精度キャップ24を使って工場で較正をすることにより、必要に応じ現場で装置10を、元の仕様に照らして較正をすることを保証できよう。
【0139】
ダーク・キャップ22は、非光学的ノイズ又はバックグラウンドを取り去る方法を提供する。同様に、ホワイトスキャン材料90又は中性サンプル90をスキャンして、蛍光バックグラウンド、反射光を取り出し、検出器(例えば、CCDなど)からの出力中のピクセルごとの偏差を正規化することができる。低い値のサンプル92を用いて低い値(例えば、一つの実施形態において約21,500)を設定できる。高い値のサンプル94を用いて高いレベルの値(例えば、約67、000)を設定できる
本発明による装置及び方法の一つの実施形態において、装置10に接続された又はそれに内蔵された、ノートパソコン、PDAのようなコンピュータ、又は他のプロセッサは、すべての較正計算を提供できるので、工場出荷後、又は工場以外でハードウエアを再設定する必要はない。例えば、装置10が工場で較正されたならば、制御、照射、及び被験体からの放射応答の検出は、すべて装置と一体になったソフトウエア中の較正ファクターに従って処理することができる。従って、装置10に内蔵された、又は外部から接続されたCPU又はプロセッサは、装置10を動作させるために必要なすべての処理を簡単に実施することができる。このように、較正は、実際にパラメータを操作するよりは、パラメータを計算処理する工程の多い作業となる。
【0140】
本発明による装置及び方法の一つの実施形態において、一つの被験体に対し、何回ものスキャン又は照射、及び放射応答の読み取りを行うことができる。例えば、現在考えられている一つの実施形態では、約300ミリ秒の持続時間(検出器による読み取りの収集時間)のスキャンを175回行うことができる。
【0141】
約1分以内に、およそ300ミリ秒の収集データで表わされた175ほどものスキャン、映像、写真などを取得することができる。本出願人らは、概してこのような一連のスキャンを3回行うことが効果的であることを見出した。各々が約300ミリ秒持続時間の175回のショート・スキャンを表す、これら3回の一連スキャンの処理結果の平均が、効果的で、再現性及び信頼性があることが分かった。
【0142】
300ミリ秒より大幅に長くしたスキャン期間は、装置10のセンサを飽和させることがある。スキャン時間を200ミリ秒より短くすると、検出量を大きくしても、得られる放射応答曲線140の信号対ノイズ比が悪化する傾向がある。
【0143】
本出願人らは、特定の「曲線スムージングアルゴリズム」を使用すると効果があることを見出した。例えば、サビツキー−ゴーレイ法とも呼ばれる手法は、ピークをこわさないで曲線をスムージングしてくれる。このように、熟練した操作者は、ピーク域150を観測し、境界点162a、162bを選定することができよう。実際上は、多くの手間による作業が最も効果的であろう。もちろん現在の数値解析手法を使って特定の自動処理をすることができる。しかし、主ピーク150の両側境界点162a、162bを設定するには、手作業による吟味が適切であることが分かった。しかる後、ベースライン曲線158を当てはめることができる。
【0144】
ピーク150に多項式を当てはめることができる。例えば、3次及び4次の多項式が適切であることが判明している。このように、曲線部分150中の最高値の読み取りの最高値ピクセルを極大として設定することができ、これから、これに対応するベースライン値を差し引く。
【0145】
対応するベースライン曲線値の上の、このピーク150の極大値を乗算することによって、個別の機械を個々に調整することができる。例えば、工場精度キャップ124を適切な調整ファクターによって適合させ、装置10の検出器の放射応答からの読み取りを、キャップ24に尺度合わせして、標準と整合させることができる。装置10が長期に使われるにつれ、時間ごと又は場所ごとにバラツキ状態が発生しよう。機械のウオームアップをすることで、ある程度の量のバラツキは低減される。
【0146】
現場較正は、キャップ24の読み取りとして最初に設定された値と、同一のキャップ24に対しそれが繋索されている装置10から得られた現時点の日毎の読み取りとを対比した比率を表す。
【0147】
図16を参照すると、式168は尺度のマッピングを表している。すでに尺度設定されているものも含め他の装置10を較正できる、特定のスタンダードを構築することができる。試験所のユニット又は他のデバイスをスタンダードとして設定することができる。システム又は装置10が提供する数値カウント(範囲、強度、出力など)は、実際は、検出強度の反映であり、特定の周波数及び波長で検出器に衝突する光子の数の関数である。実験段階の初期の装置は、十分な感度を持ち、ほとんど一個一個の光子カウントを提示した。このように、ゼロから67,000までの尺度における1カウントは、スキャンの結果として検出器にぶつかる光子の1カウントに近いものであった。
【0148】
装置10は、強度の測定が正確で再現性があるならば、あらゆる個別光子の到達に対応した記録するほどの感度は必要がない。各装置10は、所定のサンプル(例えば、マスタサンプル30、生体被験体など)を読み取り、検出した光の強度に対し同一の値を識別するスコア又は数値を出力する必要がある。よって、工場において各装置10を較正し、スタンダードに整合させる必要がある。合成マスタサンプル・セット30の構築は、このようなスタンダードを提供するものである。このスタンダード又はマスタサンプル30は、生物学的プロセス及び劣化の予測困難性に影響されないので、人間や植物材料のような生物サンプルから採取されたデータよりも信頼性がある。
【0149】
図16において、皮膚カロチノイド・スコアSCSは、装置10の出力として得られた読み取りに対応するスコア又は数値である。較正において、これはマスタサンプル30の読み取りから出力された所定値である。これは値域(縦)軸に表される。定義域軸は、同一のスタンダード(例えば、マスタサンプル30)を使った較正において、機械10によって得られたラマン散乱強度に対応する値を表す。
【0150】
低及び高サンプル92、94に対し行われたスキャンに対応するピーク高さ150によって、線を定義することができる。高サンプル94は、所定の高い値(例えば一つの実施形態において67,000)として読み取られなければならならず、低サンプル92は、所定の低い値(例えば一つの実施形態において21,500)として読み取られなければならない。前に説明したように他の数値の尺度を使うことができ、前記所定数は一つの例として挙げたものである。
【0151】
機械10に対する較正結果として得られた何らかのピーク高さ150を、図16の直線、すなわち較正対象の機械の値域を標準試験(例えば、標準装置)において同じサンプルから得られた標準値のセットにマッピングして得られた線によって調整することができる。マップが作成され、工場較正に使う線形のマッピング式が得られる。係数(勾配Mを表す)及び信号減算(切片Bに該当する)を使って、較正対象スキャナからのどのインプット読み出し値(独立変数x)に対しても、標準読み出し値(従属変数yに対応)を求めることができる。
【0152】
このように、較正された機械10により行われたスキャンの結果得られた何らかのピーク高さ150を、標準値に換算する。この式は必要な2点だけで的確に定まる。というのは、ラマン散乱は線形の効果だからである。従って、機械の較正尺度をマップするために、これより高次の項は必要ない。
【0153】
実施において、皮膚被験体172は、通常、人の手のひらである。一方、ユーザの血清174(例えば、血流)中の分子構造の含有量を相関させることができる。皮膚被験体172の読み取りを、同一被験体の血清174内の栄養素成分(目的の分子構造)を体外評価によって測定した値にマップ又は相関付ける。
【0154】
従前は、カロチノイド含有量に対するラマンスキャン分光法の研究開発者は、死体からの破砕組織176に頼ってきた。そのスライド177をセットし固定するやり方は、本来的に現場較正に対するサンプルの供給及び再現性の欠如を免れない。照射にさらされるので、工場サンプル自体も深刻な再現性問題を抱えている。照射は、時としてカロチノイドの化学構造に影響を与える。従って、機械10評価のための工場サンプル自体が問題となり得る。さらに、こういったサンプル源から、再現性があり安定的なサンプルを得る望みがあるとは考えられない。
【0155】
こういったことから、本出願人らは、合成材料、有機材料などの懸濁液178で満たされたキュベットを用いた。ウインドウ14からのサンプルの距離が問題となる。不透明な懸濁液178を用いることが、この問題を解決する助力となる。
【0156】
実際には、ダイラタント複合材のマトリクス180(例えば、マスタサンプル30の中性サンプル90、又はドープなしのマトリクス125b)は必要な不透明性を具えており、技術的には液体である。この粘弾性材料は、ゆっくりではあるが、小さな力で流動する。
【0157】
前述したフィルム110、120のようなフィルム182、及び、入射ビーム101に応じて応答123又は放射応答123を提供する、材料124積層システムの使用は、安定的で、予測可能であり、非常に有用であることが判明した。その上に、これらのオリゴマー・フィルム182は、その配向性性質(例えば、偏光機能)によって、工場で整合されたシステムを現場で較正するための最適の材料となっている。
【0158】
例えば、装置10は、配向性のない光の、又は制御されない配向性を持つ光のビーム101を提供するので、これから発する光に特定の配向性を確実に与えるためには、装置10をもっと複雑にすることになろう。しかしながら、実際問題として、フィルム182サンプルに当たる光ビーム101に対する放射応答123から計算される応答曲線140中の目的のピーク150は必要がない。フィルム182の特定のサンプル50が機械10に合わされその整合が持続している限り、フィルム・サンプル50(例えば、182)の偏光効果は、再現性を持つものであり、較正ができ又は較正に対応することができる。
【0159】
ダイラタント複合材マトリクス180を、マスタサンプル30として、装置10のあらゆる操作者に配布したらどうかとの考え方もあろう。おそらくそうすることは可能であろう。しかしながら、そういった配布のためには、多量の材料、重量、及び幾多の管理及び保護に対する問題が生じる。例えば、マスタサンプル30の取り扱いによって、汚染、読み取りの変動などが生じる。これに対し、合成フィルム182は、十分に安定で、保護された、堅実な較正サンプルを代表している。
【0160】
他の材料184も使用することができる。ではあるが、不透明な材料、又は少なくとも十分に硬く、配置距離の効果に応答する材料が望ましい。例えば、前に説明したように、フィルム材料182で形成されたサンプル50を異なる距離で用い、あたかも、配置距離が被験体分子構造の濃度の差異の代りとなるようにして、異なった放射応答を表させることができる。
【0161】
図17を参照すると、較正プロセス188を、装置均一性制御プロセス190、及び条件均一性制御プロセス192として考えることができる。装置均一性管理プロセス190は、工場での適切な較正により成就される必要な機械間均一性の管理である。これに対し、条件均一性管理プロセス192は、単一の機械に対する、日毎又は測定時毎の均一性管理である。
【0162】
前に述べたように、ダークスキャン194を実施した後、装置10に関連する制御パラメータのバックグラウンド調整195を行い、装置に関連するCPUによって、そのCPUが装置10に内蔵されているか外部のものかに関わらず、ソフトウエア処理を行う。同様に、ビーム101によって中性サンプル90を照射し、それからの放射応答123を収集してホワイトスキャン196を得る。これにより、得られたデータ曲線140を用いて、データ曲線140の弾性及び蛍光部分に対して調整197を加えることができる。
【0163】
工場サンプル・スキャン198を、低い値のサンプル92又は高い値のサンプル94のいずれかを使って実施し、その後に、それぞれ、他方の高い値のサンプル94又は低い値のサンプル92のスキャン199を使って実施することができる。これら2つの、必要によりさらに多くの、データ点に基づいて、較正調整200を行うことができる。そこで、この較正調整によって、装置10内のパラメータとその影響を受ける読み取りとを調整する。装置10及びデータ処理法を調整して、これらからの出力が、同一のマスタサンプル30を用いた他の機械と比較して、曲線140、ベースライン158から出ている特性ピーク150の標準値と整合するようにする。
【0164】
精度キャップ24を使って、工場で条件均一性較正192を実施することができ、このキャップは、装置10の動作寿命の間これに繋索して置かれることになる。現場における条件均一性試験192を、ダークスキャン202から開始することができ、又は、当初実施のダークスキャン194に依存することもできる。そうであっても、条件均一性較正192を行うとした所定スキャン作業期間に生じた装置10及びその環境中のいろいろな条件バラツキを調整するため、通常、ダークスキャン202から現場の条件均一性較正192を開始する。ダークスキャン202に続いて、バックグラウンド調整203を実施し、データ曲線140から、装置10の電気的及び電子的な動作中のアーチファクト及び他の不整合を補正除外する。
【0165】
しかる後、キャップ24又は精度キャップ24中に内蔵されたサンプル50の現場サンプル・スキャン204が実施され、次に別のサンプルのスキャン205が行われる。すなわち、高い値及び低い値のサンプル50のスキャン204、205が、いずれか妥当な順序で実施されることになる。実際上は、本明細書における、精度キャップ24に関するすべての言及には、ばね装着キャップ26、二重端キャップ28などの別の実施形態の使用が含まれる。精度キャップ24又は他のキャップ26、28のいずれにおいても、それぞれ異なる値のサンプル50を、両端に又は別の試みにより使用することができる。
【0166】
しかしながら、ばね装着キャップ26の一つ実施形態は、入射ビーム101に対する応答123又は放射応答123の変化を、距離に依存するよう特に設計された。同様に、距離によって、あるいはサンプルの濃度値によって、サンプル50を高い動作値と低い動作値との間で変化させることができる。少なくとも2回のスキャン204、205の後で、較正調整206を実施し、目的の特性ピーク150を表す出力数の値を調整することができる。
【0167】
図18を参照すると、マスタサンプル30を作成するためのプロセス210には、材料212を選定する工程を含めることができる。これには、マトリクス125bに適切な材料、及び適切なドーパント125cの選定が含まれる。同様にして、複数のマトリクス125b、又は単一のマトリクス125bのための複数の構成物質を選定することができる。同じく、マトリクス125b中に混合分散、又は懸濁させるための一つ以上のドーパント125cを選定することができる。
【0168】
適切な試験及び他の評価を含めた材料の選定212の後、所要に応じマトリクス125bの調合214を行うことができる。これは、マトリクス125bの再現性あるバッチを納入できる供給者にやらせることができる。
【0169】
ドーパントの調製216には、例えば、適切な目的の化学構造又は分子構造の配合217aを含めることができる。同様に、適切な形態での、こういったドーパント125cの形成217bが必要となろう。例えば、現在考えられている一つの実施形態では、オリゴマー偏光種のKタイプフィルムを粉砕、切断、又は切磨して微細粉にすることができる。一つの実施形態において、汚染防止のため閉じた面を持つ400グリットのエメリー紙を使って、200メッシュ化学処理ふるいをほぼ通過する粉体を削り出す。
【0170】
このように、このような粒子状物質の形成には、粒子の機械的構造、サイズなどを含めることができる。結局のところ、サイズ決定217cは、均一性確保のために非常に重要なものとなる。大きすぎる粒子サイズは、異常な結果をもたらすことがある。同様に、小さすぎる粒子は、コスト効果や制御性に欠けることになろう。
【0171】
結論としては、マトリクス125b中のドーパント125の分布218によって、マスタサンプルの全セットが得られる。すなわち、中性サンプル90は、一つの実施形態においてドープなしのマトリクス125を含むが、これに換えて、何らかの目的のバックグラウンドドーパントを持つ各種マトリクス125bを中性サンプルに含めることができる。同様に、低及び高サンプル92、94は、通常、計算され試験されたさまざまな濃度のドーパント125を含み、特に、予期される測定結果の上限から下限に近い、適切な幅広い範囲の値を提供する。例えば、ゼロから67,000までの尺度では20,000を示す低い値、及びゼロから67,000までの尺度では約60,000を示す高い値の組成物94が適切であることが分かった。このような尺度で、ヒト被験体をスキャンし、その典型的な読み取りは、20,000から50,000までに入ることが判明している。とはいっても、この範囲の上側や下側の外れ値が存在する可能性はある。
【0172】
図19を参照すると、現場での較正プロセス224において、本発明による装置10及び方法を実施することができる。スキャナ電源を「作動」又は「オン」の位置に作動して226プロセス224を開始することができる。同様に、通常は、スキャンプロセスの選択228が必要となろう。すなわち、スキャナ電源オン226とはある程度別個に、スキャナに連結されたコントローラの起動232を行うことができる。上記のように、プロセッサ(CPU)を装置10に内蔵することも、あるいは装置から分離することもできる。このように、コントローラの電源オン232又は電源投入232により、適切な時間をおいて、判断(decision)234が行われる。
【0173】
電源投入232の後、約1時間半位の、ある程度の順応時間が必要なことがある。その後、通常、スキャナ10はウオームアップされて動作準備が整う。ユーザは、そこで、例えば、スキャンの実施、以前のスキャンのデータ曲線140のアップロード、サポート・プログラムの呼び出し、レポートの読み出し又は出力、又は作動の中止などの間での選択をすることができる。オプションの決定後、判断234により、スキャンの選択228、又は何らかの他の作業236のいずれかの選択がなされる。
【0174】
スキャンを選択228したならば、操作者は装置10を制御するためのソフトウエアをロード230することができる。スキャン作業の開始、ウオームアップ、較正プロセス、以前のスキャンからの情報又は一般情報の取り出し、新しいスキャン作業を始めずに追加のスキャンを実施、結果の出力などを含む、いくつかのプロセスを実施することができる。これにより、ユーザは作業を検索238し、適切な作業を選定することができる。
【0175】
スキャンを実施する場合には、較正プロセスにおいて、最初にダークスキャン240を行うことができる。この特定のスキャン作業の条件の下での、特定の装置10の較正246を支持するために、精度サンプル24(例えば、キャップ、ばね装着キャップ、二重端キャップなど)によった基準スキャン242及びその後に第二基準スキャン244が行われる。一つ以上の実物被験体を使って品質管理チェック248を実施し、読み取りが予期する範囲内で作動していることを検証することができる。
【0176】
一つの実施形態において、証明番号250の入力を使って、装置10の管理を行うことができる。証明番号250は、有効な特許、ライセンスなどによる装置10の使用の制御を支援する。被験体に関連する個体群統計の入力252には、スキャン操作者、被験体又はその双方のため役立つような情報の追跡が含まれる。例えとして、データが多数の被験体から匿名で収集される場合、これにより、目的の分子構造体(例えば、カロチノイド、抗酸化物、栄養素、アミノ酸、及び他の目的の分子など)の摂取、血清レベル174と皮膚レベル172との間の関係を特徴付けるための別の助力を得ることができる。
【0177】
被験体の手を、通常、デッキ16又は架台16にのせて、ウインドウ14の前に位置付ける254。前に記載したように、被験体のスキャン256を、数分にわたって「数百回スキャン」で実施し、適切で統計的に有意なサンプルを取得することができる。そこで、データの処理258を実施して、出力曲線140を生成し、前記のようにベースラインのピーク150の値を識別することができる。
【0178】
判断260により、当面の作業のスキャンが完了したかどうかが判定される。完了していない場合、新しい被験体を識別する別の証明番号の入力250によって、作業を継続することができる。そうでなければ、判断262により、新しい作業を開始するかどうかが判定される。例えば、操作者の交代、被験体の群の変更、又は動作時間が長くなった後で較正が妥当などの理由で、作業を中止することができる。新しい作業を実施しない場合、装置は、作動を終了264することができる。
【0179】
新しい作業が行われる場合、判断266により、使用時間、スキャンの回数、又は装置10の使用を制御するための他のパラメータの有効期限が過ぎていないかどうかの判定が行われる。判断266により、期限が過ぎていないと判定されると、新しい作業を開始することができ、ダークスキャン240及び他のスキャン242、244が行われて較正246が完了する。他方、判断266により、有効期間又は最大スキャン回数又は他の制御パラメータが、期限切れとされた場合、判断268により、現在スキャンされているデータをサーバにアップロードするかどうかが判定される。アップロードをしない場合、通常、システムは無効270にされることになる。
【0180】
これに対し、曲線140からのデータをアップロードする場合、アップロード・プロセス272が実施される。同様に、アップロード272の際には、全体プロセスには、通常、新規のスキャン、期限延長などに対する認可のダウンロードが含まれる。同じく、オプションのステップに、作動ソフトウエアのアップグレードのダウンロード274を含めることができる。このように、個別の操作者に対して、コントローラ・ソフトウエア、較正スキームなどの定期的更新をすることができる。
【0181】
当業者には、記載された本発明の基本的特質から逸脱せずに、図1−19の説明概略図に対しさまざまな変更を容易に加えることができるのは自明であろう。このように、添付の図1−19の説明は、単なる例示を意図したものであり、添付の特許請求の範囲で請求する本発明に呼応した特定の現在好ましいの実施形態の概略図を図示しただけのものである。
【0182】
上記の必要性に基づいて、組織の選択された分子構造を、インビボで非破壊的に検出するバイオ光学スキャナを、較正するための装置と方法とを開示する。システムを、スキャナに連結されたプロセッサとメモリとを含むコンピュータに頼ることができる。スキャナは、インビボの組織に光を非破壊的に導く照射装置(例えば、光源、レーザなど)を具える。光は、蛍光、反射又は弾性散乱、及びラマン種の散乱として検出器に戻る。検出器を電荷結合素子、又は光に対する組織の放射応答の強度を検出する他の機構とすることができる。スキャナは、コンピュータ・インタフェースを介しコンピュータと交信することができる。
【0183】
特定の実施形態において、較正器具は組織の放射応答を模擬するため選択された模擬材料を含むサンプルを包含する。スキャナに対する較正パラメータを決定するためには、光を照射装置から模擬材料上に導き、それからの第一放射応答を検出することが必要である。光の状態、光に対する第一放射応答、及び較正パラメータに対応する、プロセッサへの入力によって較正ができる。照射装置からの光への曝露結果によるインビボ組織様の第二放射応答を、再現性をもって検出するための入力処理が行われる。
【0184】
本方法には、放射応答から補正除去することになるスキャナの電気的アーチファクト及び光学的アーチファクトに起因する誤差に対応する曲線の選定を含め、較正パラメータを決定する工程を含めることができる。また、本方法に、濾光パラメータを選定する工程を含め、放射応答から弾性散乱をフィルタ除去することができる。
【0185】
バックグラウンド蛍光に対応する曲線を選定して、この特質を放射応答から補正除外することができる。目的のラマン散乱応答が存在しない放射応答部分に対応する曲線を点で区切って、目的のラマン散乱応答を分離することができる。
【0186】
通常、照射装置からの光は、レーザのようなコヒーレント光であり、放射応答は、選択された組織の分子構造、すなわち、カロチノイド物質、抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などといった、目的の成分に対応する強度である。カロチノイドに対応するラマン散乱応答が効果的であることは判明している。さらに、非動物組織材料で、相互に異なる明確な読み取りを提供する「模擬材料」を使って較正スキャンを行うことができる。また、一種類の材料を、検出器から、2つの異なるはっきり区別できる距離に配置することにより、異なる強度を実現することができる。
【0187】
効果のあることが判明したサンプルには、さまざまな、ポリマー、偏光フィルタに使用される長鎖及びオリゴマーのような合成材料が含まれる。例えば、3M Company製のKタイプ・フィルム及びHRタイプ・フィルムが試験に使われた。他のサンプルには、異なる濃度のドーパントの選定された量を含有する可撓マトリクスが含まれる。ドーパントを、固体パウダー、又は植物材料、植物誘導体などの天然材料とすることができる。およそ200番のふるいを通過するサイズの粉体化フィルムが良好なドーパントを形成することが判明した。
【0188】
2つの濃度のドーパントにドープされたダイラタント複合材は、天然材料又は合成材料を受容できる。効果的合成材料は、カロチノイド中の類似結合に対応する炭素−炭素結合を含有するようである。
【0189】
較正パラメータの算定に補正曲線の計算を含め、これを試験(較正)材料の放射応答に対応するデータ曲線と組み合わせて「カロチノイド」タイプの応答を分離することができる。補正曲線には、弾性散乱光、蛍光、及びスキャナのバックグラウンドアーチファクトの、少なくとも一つに対応するデータを含めることができる。
【0190】
較正のため、機械には、目的の光がほとんど検出器に戻らず、スキャナの電気的アーチファクトを表すダーク・データを収集するための「ダーク・キャップ」が用意される。照射装置からの光の強度、較正に使用される模擬材料の応答、及び異なる濃度のドーパントを含有するサンプル間の放射応答の相関度に従って調整を行うことができる。ドーパントに対する放射応答について、サンプルとインビボ組織との間の相関が取られる。
【0191】
一つの実施形態において、操作者は、フィードバック制御ループでスキャナを作動し、被験体の組織内のカロチノイドの初期レベルを検出することができる。そこで被験体は、その後の期間に、ある処方計画に従って栄養サプリメントを摂取することができる。後のスキャナ検査で、栄養サプリメント投与に対応する組織中のカロチノイドの経過レベルを検出する。
【0192】
プロセッサとメモリとを具えたコンピュータに連結されたスキャナの較正では、弾性散乱、蛍光、及びスキャナの電気的、光学的アーチファクトから、カロチノイドのラマン応答を分離することができる。第一合成材料をスキャンし、スキャナの光学的アーチファクト、反射光、及び目的でない波長の再放射光(例えば、蛍光)に起因する組織の放射応答の部分を表す「ホワイトスキャン」を得ることができる。適切な合成材料として、もともとはDow Chemical社によって配合設計されダイラタント複合材として知られる粘弾性材料がある。バックグラウンド放射効果の「ホワイトスキャン」を実施するための中性サンプルとしての機能に加え、このダイラタント複合材をさまざまな濃度にドープすることができる。
【0193】
本発明によるシステム及び方法の一つの実施形態において、バイオ光学型のスキャナは、スキャナからの光照射に対する組織の放射応答から、非破壊的にインビボで、選定された組織の分子構造を検出する。本較正システムには、スキャナの電気的アーチファクトに対応し、光による照射に対する放射応答をほとんど含まないダーク応答を返すダーク・サンプルを含めることができる。ホワイト・サンプルは、光を照射されると、目的の特徴のラマン散乱を欠いた、光に対する組織の放射応答にほぼ対応するホワイト応答を返す第一合成材料を含む。
【0194】
高い値のサンプルを、ドーパント処理された第一合成材料で形成し、光を照射されると、光に対する組織の放射応答の比較的に高い値にほぼ匹敵する高い応答値を返すようにすることができる。低い値のサンプルを、ドーパント処理された第一合成材料で形成し、光を照射されると、光に対する組織の放射応答の比較的に低い値にほぼ匹敵する高い応答値を返すようにすることができる。ダーク、ホワイト、高及び低サンプルは、各々、数学的に組み合わせて、スキャナ、制御コンピュータ又はその双方を較正するためのパラメータを生成し、光に応答して、インビボ組織内の分子含有量に対応する出力の再現性ある値を提供するように選定、処方、形成される。
【0195】
基礎合成材料(例えば、マトリクス)は、光学的に不透明で、粘弾性のシリコーン・ベースの複合材である。これには、主要成分として、ジメチルシロキサン、結晶シリカ、増粘剤、及びポリジメチルシロキサンを含有させることができる。比較的に少量のデカメチルシクロペンタシロキサン、グリセリン、及び二酸化チタン、及び少量の水が存在することができる。シリコーン鎖は、ホウ酸架橋の末端水酸基ポリマーである。
【0196】
ドーパントを天然材料(例えば、植物、野菜、食材由来のカロチノイド)又は合成材料とすることができる。カロチノイドに見られる特徴的分子結合に相応する分子結合構造を持つ合成材料が目的に適っているようである。一つのドーパントは、特徴的炭素−炭素二重結合を含む炭素結合の連鎖を含有することを発見した。微細に粉砕した固体としてドーパントをシリコーン・ベースのマトリクスに懸濁させ、皮膚のラマン散乱及び他の放射応答特性を模擬する。
【0197】
バイオ光学型のスキャナを較正するための装置には、ダークスキャン構造体と、異なったレベルでドープさせた合成材料による標準セットの工場用較正具と、偏光フィルムの現場用較正具と、ダークスキャン構造体、工場用較正具などのハードウェア、及び現場用較正具のスキャンに対応してデータを受信し処理するコンピュータ可読媒体中の実行可能ソフトウエアとを含めることができる。コンピュータは、実行可能ソフトウエアを起動するようプログラムされ、スキャナを較正し、スキャナ制御を操作し、被験体組織の非破壊的スキャンにより採取したデータに基づき、選定された分子構造体の量に対応する数値を出力する。
【0198】
本発明を、その基本的特質から逸脱することなく、他の特定の形態に具現することができる。記載した実施形態は、あらゆる点において、単なる例示と見なすべきものであって、制限的なものでない。従って、本発明の範囲は、上記の記載によるのでなく、添付の特許請求の範囲によって示される。請求内容と同等な意味及び範囲内のすべての変更は、特許請求の範囲の中に包含されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】図1は、較正プロセスにおけるスキャン・サンプルを構成するいくつかの機構を含む、本発明による装置の一つの実施形態の斜視図である。
【図2A】図2Aは、本発明による、較正で使用されるダーク・キャップの凸面側の斜視図である。
【図2B】図2Bは、図2Aのダーク・キャップの凸面側の斜視図である。
【図2C】図2Cは、レーザの「オン」状態を識別し、レーザ・エネルギーを乱反射させコヒーレント光の正透過又は反射を除去するためのシールドの一つの実施形態の斜視図である。
【図3A】図3Aは、本発明による装置及び方法の中で用いるための、合成較正材料の複数サンプルを含む精度キャップの一つの実施形態の斜視図である。
【図3B】図3Bは、本発明による、スキャナの較正のために位置合わせされた精度キャップの右側立面図である。
【図3C】図3Cは、本発明による精度キャップの別の実施形態の側方立面断面図であり、高い値の材料を使って低い値のサンプルを作成するためのオフセット使用を例示している。
【図3D】図3Dは、本発明による較正用装置のバレル及びウインドウに取り付けられたダーク・キャップの側方立面断面図である。
【図4】図4は、閉位置にあるバネ装着較正装置の斜視図である。
【図5】図5は、図4の較正装置の斜視図であって、開状態の装着ブラケットと、対応する凹部と、単一のサンプルから、較正のため低減された値の読み取りを得るためのスペーサの使用とを示す。
【図6】図6は、図4の較正装置の背面斜視図であって、スリーブを引き込んだ引き位置にあるプランジャーと、較正機構の据付過程において適切にスキャナのバレルからサンプルが取り外された状態を示している。
【図7】図7は、本発明による図4−6の装置の背面斜視図であって、プランジャー及びハンドルが展開位置にあり、スリーブ及びサンプルをスキャナのウインドウ及びバレルに向けてセットしている状態を示す。
【図8】図8は、本発明による、スキャナの較正のため両端を使うサンプル・システムの一つの実施形態の斜視図である。
【図9】図9は、本発明による両端使用の二重サンプル較正装置の部分切り取り斜視図であって、較正作業においてこの装置を使用のためにスキャナ中で位置設定をするためのスライド機構及び引き込みハンドルを示している。
【図10】図10は、スキャナのプローブのウインドウ及びバレル部分を、組織の放射応答を模写した合成模擬材料を用いたマスタサンプル・システム及びスキャナの較正時のそのサンプル取付けとともに示した斜視図である。
【図11A】図11Aは、垂直な配向性を持つフィルム材料の斜視図であり、これに対応する作動配向性を持つ光波が描かれている。
【図11B】図11Bは、水平な配向性を持つフィルム材料の斜視図であり、これに対応する作動配向性を持つ光波が描かれている。
【図11C】図11Cは、本発明による較正装置において有用な典型的配向性高分子フィルムの積層材であって、典型的な低い値の較正サンプルの一つの実施形態の概略図である。
【図11D】図11Dは、本発明による較正装置及び方法において使用するための高い値サンプルとして特に有用な、配向性で偏光タイプの高分子フィルムの一つの実施形態の概略図である。
【図12】図12は、ドープなし合成マトリクス材料、ドーパント、及びこれらによるマスタサンプルを含む、本発明による装置及び方法の作動に有用な合成材料及び他の非生体組織材料と、これら材料の選別された放射応答特性との間の関係を示す概略図である。
【図13】図13は、被験体の弾性放射応答、蛍光放射応答、及びラマン放射応答効果の結果を、放射応答の強度曲線の形を波長の関数として概略的に描いたチャートである。
【図14】図14は、弾性散乱及び蛍光だけでなく、本発明による装置及び方法中の、ダークスキャンされた電子的アーチファクトを正規化し低減した後のラマン散乱効果を概略的に描いたチャートである。
【図15A】図15Aは、本発明により、基礎データに整合させて当てはめ、その上にラマン散乱ピークを投影することのできるベースライン曲線の当てはめを選定する方法を概略的に描いたチャートである。
【図15B】図15Bは、較正プロセスに必要な、特性ピーク判定のためのベースライン曲線の当てはめを含め、合成マスタサンプルからの、正規化され処理された実際のスキャンキャンデータを描いたチャートである。
【図15C】図15Cは、本発明の装置及び方法による組織の実際のスキャンの特性ピークの値を確かめるために、処理及び正規化の後、ベースライン曲線に当てはめて実データを描いたチャートである。
【図15D】図15Dは、本発明による、フィルムタイプ較正サンプルのスキャンに基づいて、処理及び正規化の後、多項式ベースライン曲線に当てはめて実データを描いたチャートである。
【図16】図16は、スキャン又は別法によって評価して、生データ、放射応答、又は較正曲線を得ることのできるさまざまな組成材料及びフォーマットを、個別スキャン結果の較正をスキャン結果に対する特定の標準尺度に沿って基準化するためのチャート略図とともに描いた概略図である。
【図17】図17は、本発明によるスキャナ及び較正システムに対し、合成サンプル又は他のマスタサンプルを用いて、装置間の均一性、及び時間経過による条件変動に対する均一性を確保する較正プロセスの一つの実施形態の概略ブロック図である。
【図18】図18は、本発明による、天然材料ドーパント、ならびに完全合成のマトリクス及びドーパント材料に適用可能な、スキャナ較正のためのマスタサンプルの配合及び使用のプロセスの概略ブロック図である。
【図19】図19は、本発明による、現場でのスキャナの作動及び較正方法ならびに較正装置及び方法の概略ブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビボで非破壊的に、組織の選択された分子構造を検出するためのバイオ光学スキャナーを較正するための方法であって、該方法が、以下:
プロセッサーおよびメモリを備えるコンピューターを提供する工程;
インビボで組織に非破壊的に光を向けるための照明器を備えるスキャナー、光に対する組織の放射応答の強度を検出するための検出器、および該コンピューターと連通するコンピューターインターフェースを提供する工程;
該組織の放射応答を模倣するように選択された模倣材料を含むサンプルを含む較正器具を提供する工程;
該照明器から該模倣材料上に光を向け、それに対する第1の放射応答を検出することによって、該スキャナーについての較正パラメーターを決定する工程;
該光の状態、該光に対する第1の放射応答、および該較正パラメーターに対応する入力を該プロセッサーに提供する工程;および
該照明器に対するインビボでの組織の第2の放射応答を繰り返し検出するために該入力を処理する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、較正パラメーターを決定する工程が、前記第1の放射応答および前記第2の放射応答のうちの少なくとも1つから、補正されるべき前記スキャナーの電気的アーチファクトおよび光学的アーチファクトのうちの少なくとも1つに帰する誤差に対応する曲線を選択する工程を包含する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、較正パラメーターを決定する工程が、前記第1の放射応答および前記第2の放射応答のうちの少なくとも1つから、弾性散乱をフィルターにより除くためにフィルタリングパラメーターを選択する工程を包含する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、較正パラメーターを決定する工程が、前記第1の放射応答および前記第2の放射応答のうちの少なくとも1つから、補正されるべきバックグラウンド蛍光に対応する曲線を選択する工程を包含する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、較正パラメーターを決定する工程が、目的のラマン散乱応答を分離するために、前記第2の放射応答を用いて操作するように、目的にラマン散乱応答が存在しない前記放射応答の少なくとも一部に対応する曲線を規定するための点を選択する工程を包含する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記光がコヒーレントであり、前記照明器がレーザーを備え、そして前記第2の放射応答が前記組織の選択された分子構造に対応する強度を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記第1の放射応答が、カロチノイドに対応するラマン散乱応答である、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記模倣材料が、互いに異なる別個の読み値を提供するように構築された、非動物組織材料の第1のサンプルおよび第2のサンプルを含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記第1のサンプルおよび第2のサンプルが、実質的に同じ材料であり、該第1のサンプルおよび第2のサンプルが、検出器から2つの異なる別個の距離で配置されている、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記第1のサンプルおよび第2のサンプルが、ポリマーを含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記ポリマーが、合成材料を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記合成材料が、オリゴマーを含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記オリゴマーが、KタイプフィルムおよびHRタイプフィルムから選択される、方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法であって、前記第1のサンプルおよび第2のサンプルが、それぞれ、該第1のサンプル中の第1の選択された量のドーパントおよび該第2のサンプル中の第2の選択された量のドーパントを含むマトリクスを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記ドーパントが、前記マトリクスとは別個のポリマーを含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記ドーパントが、ポリマーの粒子を含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記粒子が、約100番ふるいを通る大きさである、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記粒子が、約200番ふるいを通る大きさである、方法。
【請求項19】
請求項8に記載の方法であって、前記第1のサンプルおよび第2のサンプルが、それぞれ、第1の値の濃度のドーパントおよび第2の値のドーパントをドープされたダイラタント化合物のマトリクスを含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記ドーパントが、天然に存在する材料である、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記ドーパントが、合成材料である、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記合成材料が、カロチノイドにおける類似の結合に対応する炭素−炭素結合を含むポリマーである、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、較正パラメーターを決定する工程が、前記第2の放射応答におけるカロチノイド応答部分を分離するために、補正曲線を計算して、該第2の放射応答に対応するデータ曲線と組み合わせる工程を包含する、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記補正曲線が、弾性散乱光、蛍光、および前記スキャナーのバックグラウンドアーチファクトのうちの少なく1つに対応するデータを含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、ここで:
該方法が、さらに、目的の光が前記検出器に実質的に戻らないダークスキャンからダークデータを収集する工程を包含し、該ダークデータが、前記スキャナーの補正電気的アーチファクトに組み込まれ;そして
前記補正曲線が、前記照明器からの光の強度、前記模倣材料の第1の応答における変動、前記第1の放射応答および第2の放射応答と該検出器によって受容される光との相関、ならびにインビボでの前記サンプルと組織との間の相関のうちの少なくとも1つについての調節に対応するデータを含む、
方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、ここで、前記補正曲線が、前記第2の放射応答から除去されるための調節に対応するデータ、ならびに前記スキャナーの電気的アーチファクトおよび光学的アーチファクト、電気的散乱光、および蛍光のうちの少なくとも1つに対応するデータを含む、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、さらに、以下:
組織中のカロチノイドの初期レベルを被験体において検出するために、フィードバック制御ループにおいて前記スキャナーを作動させる工程;
一定期間にわたって該被験体に栄養補助剤を投与する工程;および
栄養補助剤の投与に対応する組織のカロチノイドのその後のレベルを検出するために該スキャナーを作動させる工程、
を包含する、方法。
【請求項28】
インビボで非破壊的に被験体を試験するために作動する組織のカロチノイド含有量の検出器を較正するための方法であって、該方法が、以下:
インビボで組織に非破壊的に光を向けるための照明器を備えるスキャナー、該光に対する組織中のカロチノイドの放射応答の強度を検出するための検出器、およびコンピューターインターフェースを提供する工程;
コンピューターを提供する工程であって、該コンピューターが、プロセッサおよびメモリーを備え、該コンピューターインターフェースに作動可能に連結されて、該スキャナーからのデータを処理し、弾性散乱、蛍光ならびに該スキャナーの電気的アーチファクトおよび光学的アーチファクトのうちの少なく1つから該カロチノイドのラマン応答を分離する、工程;
該組織の放射応答を実質的に模倣するように選択された第1の合成材料、第2の合成材料および第3の合成材料を含む較正器具を提供する工程;
該照明器からの光を該第1の合成材料上に向けて、該スキャナーの電気的アーチファクト、該スキャナーの光学的アーチファクト、反射光、および目的ではない波長の放射光のうちの少なくとも1つに帰する組織の放射応答の部分を表すホワイトスキャンを提供する工程;
該照明器からの光を該第2の合成材料上に向けて、組織中のより高い値のカロチノイドを模倣するために、比較的高い数の化学結合に対応する高い値のスキャンを提供する、工程;
該照明器からの光を該第3の合成材料上に向けて、組織中のより低い値のカロチノイドを模倣するために、比較的低い数の化学結合に対応する低い値のスキャンを提供する、工程;
該ホワイトスキャン、高い値のスキャン、および低い値のスキャンに対応する入力を該プロセッサに提供する、工程;および
該照明器からの光に対するインビボでの組織の第2の放射応答を繰り返し定量化するために該入力を処理する工程、
を包含する、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、制御されない変動、間違った変動、および前記スキャナーの電気的アーチファクトの少なくとも1つに帰する組織の放射応答の一部を表すダークスキャンを提供するように選択されたダークサンプル上に、光を向ける工程を包含する、方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、前記放射応答の蛍光部分および弾性部分を除去するために、ホワイトスキャン、および組織の放射応答のホワイトフィールド正規化を行う工程を包含する、方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法であって、前記第1の合成材料が、ダイラタント化合物を含む、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記第2の合成材料が、第1の濃度の第1のドーパントをドープされたダイラタント化合物を含む、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記第3の合成材料が、第2の濃度の第2のドーパントをドープされたダイラタント化合物を含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、前記第1のドーパントおよび第2のドーパントが、異なっており、別個である、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法であって、前記第1のドーパントおよび第2のドーパントのうちの少なくとも1つが、天然に存在するポリマーである、方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法であって、前記第1のポリマーおよび第2のポリマーのうちの少なくとも1つが、合成ポリマーである、方法。
【請求項37】
請求項29に記載の方法であって、第4の合成材料をスキャンし、そして前記プロセッサの処理を調節して、インビボでの組織に対応する前記第2の放射応答に対応する個々のスキャナーの出力における時間における変動について補正する工程を包含する、方法。
【請求項38】
非破壊的なインビボの組織のカロチノイド含有量の検出器を較正するための方法であって、該方法が、以下:
インビボで組織上に非破壊的に光を向けるための照明器を備えるスキャナー、該光に対する該組織の放射応答の強度を検出するための検出器、およびコンピューターインターフェースを提供する、工程;
コンピューターを提供する工程であって、該コンピューターが、プロセッサおよびメモリーを備え、該コンピューターインターフェースに作動可能に連結されて、該スキャナーからのデータを処理する、工程;
該組織の放射応答を実質的に模倣するように選択された合成材料を含む較正器具を提供する工程;
該照明器からの光を該合成材料上に向けて、それに対する第1の放射応答を検出する工程;
該照明器の状態および該光に対する第1の放射応答に対応する入力を該プロセッサに提供する工程;および
該照明器からの光に曝露されたインビボの組織に対応する第2の放射応答を繰り返し定量化するために該入力を処理する工程、
を包含する、方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、前記第2の放射応答を所定の作動範囲内に低下させるように選択された期間の間、前記組織を前記光に曝露することによって、該組織を漂白する工程をさらに包含する、方法。
【請求項40】
請求項38に記載の方法であって、血清カロチノイド含有量を、前記光に対する前記組織の第2の放射応答に相関させる工程をさらに包含する、方法。
【請求項1】
インビボで非破壊的に、組織の選択された分子構造を検出するためのバイオ光学スキャナーを較正するための方法であって、該方法が、以下:
プロセッサーおよびメモリを備えるコンピューターを提供する工程;
インビボで組織に非破壊的に光を向けるための照明器を備えるスキャナー、光に対する組織の放射応答の強度を検出するための検出器、および該コンピューターと連通するコンピューターインターフェースを提供する工程;
該組織の放射応答を模倣するように選択された模倣材料を含むサンプルを含む較正器具を提供する工程;
該照明器から該模倣材料上に光を向け、それに対する第1の放射応答を検出することによって、該スキャナーについての較正パラメーターを決定する工程;
該光の状態、該光に対する第1の放射応答、および該較正パラメーターに対応する入力を該プロセッサーに提供する工程;および
該照明器に対するインビボでの組織の第2の放射応答を繰り返し検出するために該入力を処理する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、較正パラメーターを決定する工程が、前記第1の放射応答および前記第2の放射応答のうちの少なくとも1つから、補正されるべき前記スキャナーの電気的アーチファクトおよび光学的アーチファクトのうちの少なくとも1つに帰する誤差に対応する曲線を選択する工程を包含する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、較正パラメーターを決定する工程が、前記第1の放射応答および前記第2の放射応答のうちの少なくとも1つから、弾性散乱をフィルターにより除くためにフィルタリングパラメーターを選択する工程を包含する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、較正パラメーターを決定する工程が、前記第1の放射応答および前記第2の放射応答のうちの少なくとも1つから、補正されるべきバックグラウンド蛍光に対応する曲線を選択する工程を包含する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、較正パラメーターを決定する工程が、目的のラマン散乱応答を分離するために、前記第2の放射応答を用いて操作するように、目的にラマン散乱応答が存在しない前記放射応答の少なくとも一部に対応する曲線を規定するための点を選択する工程を包含する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記光がコヒーレントであり、前記照明器がレーザーを備え、そして前記第2の放射応答が前記組織の選択された分子構造に対応する強度を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記第1の放射応答が、カロチノイドに対応するラマン散乱応答である、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記模倣材料が、互いに異なる別個の読み値を提供するように構築された、非動物組織材料の第1のサンプルおよび第2のサンプルを含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記第1のサンプルおよび第2のサンプルが、実質的に同じ材料であり、該第1のサンプルおよび第2のサンプルが、検出器から2つの異なる別個の距離で配置されている、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記第1のサンプルおよび第2のサンプルが、ポリマーを含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記ポリマーが、合成材料を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記合成材料が、オリゴマーを含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記オリゴマーが、KタイプフィルムおよびHRタイプフィルムから選択される、方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法であって、前記第1のサンプルおよび第2のサンプルが、それぞれ、該第1のサンプル中の第1の選択された量のドーパントおよび該第2のサンプル中の第2の選択された量のドーパントを含むマトリクスを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記ドーパントが、前記マトリクスとは別個のポリマーを含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記ドーパントが、ポリマーの粒子を含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記粒子が、約100番ふるいを通る大きさである、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記粒子が、約200番ふるいを通る大きさである、方法。
【請求項19】
請求項8に記載の方法であって、前記第1のサンプルおよび第2のサンプルが、それぞれ、第1の値の濃度のドーパントおよび第2の値のドーパントをドープされたダイラタント化合物のマトリクスを含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記ドーパントが、天然に存在する材料である、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記ドーパントが、合成材料である、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記合成材料が、カロチノイドにおける類似の結合に対応する炭素−炭素結合を含むポリマーである、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、較正パラメーターを決定する工程が、前記第2の放射応答におけるカロチノイド応答部分を分離するために、補正曲線を計算して、該第2の放射応答に対応するデータ曲線と組み合わせる工程を包含する、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記補正曲線が、弾性散乱光、蛍光、および前記スキャナーのバックグラウンドアーチファクトのうちの少なく1つに対応するデータを含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、ここで:
該方法が、さらに、目的の光が前記検出器に実質的に戻らないダークスキャンからダークデータを収集する工程を包含し、該ダークデータが、前記スキャナーの補正電気的アーチファクトに組み込まれ;そして
前記補正曲線が、前記照明器からの光の強度、前記模倣材料の第1の応答における変動、前記第1の放射応答および第2の放射応答と該検出器によって受容される光との相関、ならびにインビボでの前記サンプルと組織との間の相関のうちの少なくとも1つについての調節に対応するデータを含む、
方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、ここで、前記補正曲線が、前記第2の放射応答から除去されるための調節に対応するデータ、ならびに前記スキャナーの電気的アーチファクトおよび光学的アーチファクト、電気的散乱光、および蛍光のうちの少なくとも1つに対応するデータを含む、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、さらに、以下:
組織中のカロチノイドの初期レベルを被験体において検出するために、フィードバック制御ループにおいて前記スキャナーを作動させる工程;
一定期間にわたって該被験体に栄養補助剤を投与する工程;および
栄養補助剤の投与に対応する組織のカロチノイドのその後のレベルを検出するために該スキャナーを作動させる工程、
を包含する、方法。
【請求項28】
インビボで非破壊的に被験体を試験するために作動する組織のカロチノイド含有量の検出器を較正するための方法であって、該方法が、以下:
インビボで組織に非破壊的に光を向けるための照明器を備えるスキャナー、該光に対する組織中のカロチノイドの放射応答の強度を検出するための検出器、およびコンピューターインターフェースを提供する工程;
コンピューターを提供する工程であって、該コンピューターが、プロセッサおよびメモリーを備え、該コンピューターインターフェースに作動可能に連結されて、該スキャナーからのデータを処理し、弾性散乱、蛍光ならびに該スキャナーの電気的アーチファクトおよび光学的アーチファクトのうちの少なく1つから該カロチノイドのラマン応答を分離する、工程;
該組織の放射応答を実質的に模倣するように選択された第1の合成材料、第2の合成材料および第3の合成材料を含む較正器具を提供する工程;
該照明器からの光を該第1の合成材料上に向けて、該スキャナーの電気的アーチファクト、該スキャナーの光学的アーチファクト、反射光、および目的ではない波長の放射光のうちの少なくとも1つに帰する組織の放射応答の部分を表すホワイトスキャンを提供する工程;
該照明器からの光を該第2の合成材料上に向けて、組織中のより高い値のカロチノイドを模倣するために、比較的高い数の化学結合に対応する高い値のスキャンを提供する、工程;
該照明器からの光を該第3の合成材料上に向けて、組織中のより低い値のカロチノイドを模倣するために、比較的低い数の化学結合に対応する低い値のスキャンを提供する、工程;
該ホワイトスキャン、高い値のスキャン、および低い値のスキャンに対応する入力を該プロセッサに提供する、工程;および
該照明器からの光に対するインビボでの組織の第2の放射応答を繰り返し定量化するために該入力を処理する工程、
を包含する、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、制御されない変動、間違った変動、および前記スキャナーの電気的アーチファクトの少なくとも1つに帰する組織の放射応答の一部を表すダークスキャンを提供するように選択されたダークサンプル上に、光を向ける工程を包含する、方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、前記放射応答の蛍光部分および弾性部分を除去するために、ホワイトスキャン、および組織の放射応答のホワイトフィールド正規化を行う工程を包含する、方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法であって、前記第1の合成材料が、ダイラタント化合物を含む、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記第2の合成材料が、第1の濃度の第1のドーパントをドープされたダイラタント化合物を含む、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記第3の合成材料が、第2の濃度の第2のドーパントをドープされたダイラタント化合物を含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、前記第1のドーパントおよび第2のドーパントが、異なっており、別個である、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法であって、前記第1のドーパントおよび第2のドーパントのうちの少なくとも1つが、天然に存在するポリマーである、方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法であって、前記第1のポリマーおよび第2のポリマーのうちの少なくとも1つが、合成ポリマーである、方法。
【請求項37】
請求項29に記載の方法であって、第4の合成材料をスキャンし、そして前記プロセッサの処理を調節して、インビボでの組織に対応する前記第2の放射応答に対応する個々のスキャナーの出力における時間における変動について補正する工程を包含する、方法。
【請求項38】
非破壊的なインビボの組織のカロチノイド含有量の検出器を較正するための方法であって、該方法が、以下:
インビボで組織上に非破壊的に光を向けるための照明器を備えるスキャナー、該光に対する該組織の放射応答の強度を検出するための検出器、およびコンピューターインターフェースを提供する、工程;
コンピューターを提供する工程であって、該コンピューターが、プロセッサおよびメモリーを備え、該コンピューターインターフェースに作動可能に連結されて、該スキャナーからのデータを処理する、工程;
該組織の放射応答を実質的に模倣するように選択された合成材料を含む較正器具を提供する工程;
該照明器からの光を該合成材料上に向けて、それに対する第1の放射応答を検出する工程;
該照明器の状態および該光に対する第1の放射応答に対応する入力を該プロセッサに提供する工程;および
該照明器からの光に曝露されたインビボの組織に対応する第2の放射応答を繰り返し定量化するために該入力を処理する工程、
を包含する、方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、前記第2の放射応答を所定の作動範囲内に低下させるように選択された期間の間、前記組織を前記光に曝露することによって、該組織を漂白する工程をさらに包含する、方法。
【請求項40】
請求項38に記載の方法であって、血清カロチノイド含有量を、前記光に対する前記組織の第2の放射応答に相関させる工程をさらに包含する、方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2007−527529(P2007−527529A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554121(P2006−554121)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/003839
【国際公開番号】WO2005/081795
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(504403286)ニュースキン インターナショナル インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】NuSkin International,Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/003839
【国際公開番号】WO2005/081795
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(504403286)ニュースキン インターナショナル インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】NuSkin International,Inc.
【Fターム(参考)】
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