説明

バイパス一体型流体センサ装置およびその製造方法

マイクロマシン加工の流体センサ装置およびその製造方法に関する。流体センサ装置は、バイパス流路、好ましくは、流体センサ装置に一体化されたバイパス流路を備える。これにより、装置内に導入された大量の流体のうち、限られた一部が、装置内の流路を通って、1つ以上の流体特性(例えば、密度、比重、化学的濃度が挙げられるが、これらに限定されない)が測定される。当該装置は、燃料電池の燃料混合体における燃料濃度を監視するために好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体センサ装置および当該装置の製造方法に関する。具体的には、本発明は、流体密度、比重、および化学的濃度などの特性を測定可能なマイクロマシン加工の流体センサ装置であって、流体バイパスが一体化されることにより、装置の内部における流れ容量を超える流動システムにおいても使用可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンマイクロマシン技術を使用した、共鳴流量および密度センサの製造方法および構造が、本願の出願人に譲渡された、タジガダパらの米国特許第6,477,901号、および、スパークスの米国特許第6,647,778号に開示されている。本明細書中においては、マイクロマシン加工は、基材(例えば、シリコンウエハ)をバルクエッチングすることにより、または、表面薄膜エッチングにより、微小な素子を形成する技術を意味する。後者の場合、一般的に、基材表面の犠牲層(例えば、酸化物層)に薄膜(例えば、ポリシリコンまたは金属薄膜)を蒸着し、次いで犠牲層の一部を選択的に除去することで、蒸着薄膜を得ている。タジガダパらおよびスパークスにより開示された製造方法では、ウエハボンディングおよびシリコン技術を使用して、1つ以上のシリコンチューブがウエハ上方に懸架されたマイクロ電子機械システム(MEMS)を製造している。該チューブが共鳴により振動し、これによりチューブを流れる流体の流量および密度が決定される。
【0003】
タジガダパらおよびスパークスにより開示されたタイプのセンサは、種々の用途に用いられる。これらのセンサの顕著な効果は、極めて小型に製造することができ、他と比較して微量の流体を正確に解析することができる、という点にある。しかしながら、比較的大きな流量が発生する特定の用途に対しては、流れ容量に制限がある上記の微小センサは適当ではない。タジガダパらおよびスパークスにより開示されたタイプのセンサが、センササイズを大きくすることなく、比較的大きな流量の用途に適合すれば、有利である。
【特許文献1】米国特許第6,477,901号公報
【特許文献2】米国特許第6,647,778号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、マイクロマシン加工された流体センサ装置およびその製造方法を提供する。流体センサ装置は、バイパス流路、好ましくは、該装置に一体化されたバイパス流路を備える。これにより、大量の流体が装置内に供給された場合に、流体の限られた一部が、該装置内の流路を通って、1つ以上の流体特性(例えば、密度、比重、化学的濃度が挙げられるが、これらに限定されない)が測定される。例えば、本発明は、燃料電池における水・燃料比をモニタするために使用できる。このような燃料の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、蟻酸、硫酸、ガソリン、およびその他の有機液体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、本発明の流体センサ装置は、ベースと、該ベースに設けられた流体入口および流体出口と、該ベースから伸長する自立部と、該自立部内の連続流路とを有する、マイクロマシン加工チューブを備える。前記連続流路は、前記流体入口と流体出口とに連通可能に接続され、マイクロマシン加工チューブ内に流れる流体を収容できる。前記センサ装置は、その表面に前記チューブのベースが取り付けられる基材をさらに有し、前記マイクロマシン加工チューブの自立部が前記基材の上方に、そこから間隔を隔てて懸架された状態となる。前記チューブのベースは、前記基材表面から間隔を隔てているので、それらの間に前記基材表面に垂直な方向に沿って空隙が形成される。前記基材はその表面に開口する、第1および第2の流路を有し、該第1および第2の流路は、マイクロマシン加工チューブの前記流体入口および流体出口に対して、それぞれ連通可能に接続され、これにより、前記基材の第1および第2の流路は、前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を介して連通可能に接続される。バイパス流路が、前記チューブのベースと基材の表面とにより、これらの間に形成される。前記第1および第2の流路が、前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を介して連通可能に接続されているのに加えて、前記バイパス流路を介しても連通可能に接続される。これにより、前記基材の第1の流路から基材の第2の流路へ流れる流体の第1の部分は、該バイパス流路を通って流れる一方で、同流体の第2の部分は、マイクロマシン加工チューブの連続流路を通って流れる。流体密封シール材料が、前記チューブベースと基材表面の間の空隙内に位置しており、前記基材の第1および第2の流路の開口と、マイクロマシン加工チューブの流体入口および出口とを取り囲み、基材表面に対して平行な面に沿った方向におけるバイパス流路の境界を形成する。当該センサ装置は、さらに、前記マイクロマシン加工チューブの自立部を、その共鳴周波数にて振動させる手段と、該マイクロマシン加工チューブの自立部の動きを測定する手段とを有する。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、ベースと、該ベースから伸長する自立部と、該ベースに設けられた流体入口および流体出口と、該自立部内に位置して前記流体入口を流体出口に連通可能に接続する連続流路とを有するマイクロマシン加工チューブを備えた流体センサ装置の製造方法が提供される。該方法は、表面と、該表面にて開口する第1および第2の流路とを有する基材を用い、チューブベースを前記基材表面に対して取り付けることにより、該チューブベースが前記基材表面から離間して、それらの間に前記基材表面に垂直な方向に沿って空隙を形成することを含む。前記チューブベースを前記基材表面に対して取り付ける工程の結果、該ベースと基材の表面とにより、その間にバイパス流路が形成される。さらに、前記チューブベースは、前記マイクロマシン加工チューブの自立部が前記基材上に懸架され、そこから間隔を隔てるように、取り付けられる。そして、ベースの流体入口および流体出口は、前記基材の第1および第2の流路に対してそれぞれ連通可能に接続される。これにより、前記基材の第1および第2の流路は、前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を介して連通可能に接続される。最終的に、チューブベースが基材表面に取り付けられることで、流体密封シール材料が、前記チューブベースと基材表面との間の空隙の中に配置される。該シール材は、前記基材の第1および第2の流路の開口およびマイクロマシン加工チューブの前記流体入口および出口を取り囲み、前記基材表面に対して平行な面に沿った方向にバイパス流路の境界を形成する。上記工程により、前記基材の前記第1流路を通じてセンサ装置に流入した流体は、前記第2の流路を通じてセンサ装置から流出する。該流体の第1の部分が前記バイパス流路を流れる一方、該流体の第2の部分が、ベースの流体入口、マイクロマシン加工チューブの連続流路、ベースの流体出口を順次流れる。流体が流れている間、マイクロマシン加工チューブの自立部がその共鳴周波数にて振動し、マイクロマシン加工チューブの自立部の動きが測定される。
【0007】
このように、本発明は、微小な、マイクロマシン加工された流体センサ装置および流体センサ装置の製造方法を提供するものであり、該装置自体に、バイパス流路が組み込まれていることが理解される。したがって、過度の流体が装置に流れた場合、装置外にバイパスシステムを設けることなく、装置内部で流体をバイパスさせることができる。前記チューブのベースを前記基材の表面に取り付ける際において、該ベースと基材表面とにより、これらの間にバイパス流路が形成されるため、バイパス流路を形成するための複雑な工程は要求されない。さらに、シール材料または付加的な手段を用いて、前記基材表面とチューブベースとの間隔を規定および調整することができる。これにより、バイパス流路の深さを決定することが容易となる。さらに、代替的なバイパスの構造を採用してもよく、基材のバルク内にバイパス流路を設けたり、および基材の外側にバイパス流路を設けたりすることも、本発明において採用できる。
【0008】
本発明によるセンサ装置は、種々の用途に適している。例えば、流体の密度、比重、または化学的濃度の測定などである。顕著な例としては、燃料電池システムの燃料混合体における燃料濃度の測定が挙げられる。また、センサ装置は、複数の他の流体特性、例えば、流量、pH、温度などを測定するための構成も採用できる。バイパス流路を流れる流体を、これら追加の特性を決定するために用いることができる。
【0009】
本発明の他の目的および効果は、以下に示す詳細な説明により、理解されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1および図2に、本願の出願人に譲渡されたタジガダパらの米国特許第6477901号に開示され、本発明を説明するのに適したタイプのセンサ装置10を示す。センサ装置10は、シリコンまたはその他の半導体材料、水晶、ガラス、セラミック、金属、高分子物質、複合材料などにより形成される基材12を含むものとして表されている。基材12の表面18にベース34が取り付けられ、流体入口36および流体出口38がベース34内に位置し、そして、自立部16が基材12上に懸架された状態となるように、チューブ14が、基材12により支持される。連続流路20がチューブ14内に存在し、チューブ14の流体入口36を流体出口38に対して連通可能に接続している。本発明の好適な態様によれば、チューブ14はシリコンまたはその他の半導体材料、水晶、ガラス、セラミック、金属、複合材料からマイクロマシン加工により形成される。基材12およびチューブ14は別体として製造され、その後、以下に詳細を説明するように、チューブ14が基材12の表面18に対して一体的な部材となるように取り付けられる。
【0011】
図1および図2に示すように、チューブ14は、内部を流体が流れる導管として機能するとともに、好ましくは、上記タジガダパらの特許に記載されるようにコリオリ力の原理を使用して、該流体の諸特性を確認する目的で振動させられる。なお、その特許の内容は、コリオリ力に基づくセンサの製造と操作に関するものであり、本明細書中に参照として包含される。チューブ14の自立部16は、概してU字状であるが、他の形状、より簡単な、またはより複雑な形状の両方が本発明の範囲に包含される。自立部16は、基材12の表面18に垂直な方向に沿って振動する。好ましくは、共鳴周波数またはその近傍値にて振動する。流体は、基材12の流体入口通路26を経てセンサ装置10に流入し、流体出口通路28を経てセンサ装置10から出る。図2に示すように、これら両方の通路は、エッチングまたはその他の方法により、基材12を貫通して伸長するように形成される。チューブ14が上方に動く、振動サイクルの半周期の間、流体がチューブの湾曲部を移動する際に自立部16は上方の運動量を持ち、自立部16から流出する流体は、流体出口38に最も近い自立部16の部位に対して押し上げられることにより、その鉛直方向の動きが減ずることに対して抵抗する。その結果としての力が、チューブ14の自立部16を捩る。振動周期の後半で、チューブ14が下方に動く際に、自立部16は逆方向に捩れる。この捩れる特性はコリオリ効果と呼ばれる。コリオリ効果の結果として振動の一周期の間にチューブ14の自立部16が撓む角度は、チューブ14を流れる流体の質量流量と相関性を有し、一方、流体の密度は、振動周波数と比例する。
【0012】
チューブ14は、好ましくは共鳴により駆動され、チューブ14の共鳴周波数は、その機械的設計(形状、寸法、構造、および材料)により制御される。共鳴周波数は、概して約1kHzから約100kHzの範囲である。振動振幅は、好ましくはチューブ14を振動させる手段により調整される。図1および図2に示すように、駆動電極22が基材12上のチューブ14下方に位置している。本実施形態では、チューブ14をドープされたシリコンにより形成し、チューブ14を駆動電極22に対して容量的に結合した電極として機能させることで、駆動電極22がチューブ14を容量的に(静電的に)駆動させることを可能としている。しかしながら、チューブ14を非導電材料により形成し、チューブ14を静電的に振動させるための別体の電極をチューブ14上に駆動電極22と対向させて形成してもよい。他の駆動技術としては、圧電素子をチューブ14の上面に備え、チューブ14の自立部16がチューブ14の面に対して垂直な方向に撓ませるように、チューブ14の平面に交互の力を発生させるようにすることがある。その他の例として、チューブ14の自立部16を磁気的、熱的、またはその他の駆動技術により駆動させることが挙げられる。また、図1および図2には、駆動電極22にフィードバックを提供するセンサ電極24が示されている。センサ電極24により、振動周波数が適切な回路(図示せず)により制御可能となり、チューブ14の基材12に対する相対的な撓みも測定される。センサ電極24は、チューブ14を容量的に測定するか、チューブ14の接近または動きを測定することができる、その他の適切な手段により測定する。
【0013】
図2に、キャップ30に収容されて測定パッケージが形成されたセンサ装置10を概略的に示す。キャップ30により、チューブの振動を減衰させる空気を減少させうる真空パッケージングが可能となる。種々のパッケージおよびウエハレベルにおける方法が存在し、電子装置を真空パッケージするものとして周知である。したがって、ここではその詳細な説明を省略する。このような方法には、半田または溶接による密封パッケージ、および、ガラスフリット、半田、共晶合金、接着剤、および陽極結合を使用したウエハ接合技術が含まれる。キャップ30の適切な材料としては、シリコンが挙げられるが、金属およびガラス材料を含む、種々の材料を使用可能である。ガラス材料には、ホウケイ酸ガラス(例えば、パイレックス(登録商標))が含まれる。センサ装置10に対する信号の入力および出力は、キャップ30外側の接合パッド32(1つのみを示す)を通じて行なわれる。本発明の好適な実施形態においては、キャップ30と基材12との間の接合は密封であり、基材12およびキャップ30により形成される筺体は、チューブ14が減衰なく高品質のQ値で駆動されるように、排気される。本実施形態では、好ましくはゲッター材料が筺体内に配置されて、キャビティ圧力の減圧と低い圧力の維持が補助される。密封シールパッケージの代替として、ポンプを使用して必要なときに真空引きされるようにチューブ14を収容してもよい。
【0014】
また、図2に示すように、センサ装置10は、チューブ14を流れる流体の温度を測定するためのセンサ要素48を有する。材料密度などの特性は、材料のヤング率および剛性率などと同様に、温度により変化する。温度センサ要素48をチューブ14のベース34上に設置することにより、チューブ14の温度およびその流体内容物の監視を、多くの作動条件下で適切な正確性にて行なうことができる。センサ要素48の適切な製造にあたっては、電極22,24,32およびこれらの関連する導電ランナの形成に用いられる種類の1つ以上の金属層を用いることができる。例えば、公知技術に従って、抵抗型温度センサ要素48は、プラチナ、パラジウム、またはニッケルの薄膜金属層により形成することができる。温度センサ要素48により、温度変化に起因するチューブ14の機械的特性の変化およびその中の流体特性の変化は、適切な回路(図示せず)を用いて補正される。代替的にまたは追加的に、電位をかけて、電流をチューブ14に流し、チューブ14およびその中を流れる流体をジュール熱により加熱して温度を上昇および維持させ、回路(図示せず)を適切に制御するためのフィードバックとしてセンサ要素48を使用してもよい。
【0015】
チューブ14のサイズおよび形状は、適切な流量容量を持ち、センサ装置10により評価される流体に対して適切な振動パラメータを有するように選択される。チューブ14を製造するためにマクロマシン技術が用いられるため、チューブ14のサイズは極めて小さくなり得る。例えば、長さ0.5mm、断面積が約250平方μmであるが、より小さい、またはより大きいチューブも本発明の範囲に包含される。チューブ14をそのような微小なサイズに製造することができるため、センサ装置10は、非常に微量の流体を解析処理するために使用することができる。しかしながら、センサ装置10が小さいだけでは、比較的流量の大きい流体についての特性測定が望まれる用途には適当ではない。このため、図2に示したセンサ装置10は、流路の断面積がチューブ14内の連続流路20よりも比較的大きい、内部バイパス流路40を備えるように構成される。図2および図3(図2の断面を横切るセンサ装置10の断面に相当)から明らかなように、内部バイパス流路40は、チューブ14の連続流路20と流体的に並行しており、これにより流体入口通路26を通ってセンサ装置10に流入する過度の流体が、チューブ14ではなく直接流体出口通路28に向かう。
【0016】
図2および図3では、内部バイパス流路40の全体が、基材表面18とチューブ14のベース34との間の空隙42により形成されている。一方、図2および図3に示された空隙42は、ベース34と表面18との間のシール44の高さと一致し、好ましくはこれにより高さが決定される。シール44は好ましくは連続的であって、基材12の表面18の流体入口通路26および流体出口通路28の両方の開口を包囲し、したがって、流体入口通路26および流体出口通路28がそれぞれ連通可能に接続する流体入口36および流体出口38をも包囲する。シール44の適切な材料としては、基材表面18またはチューブベース34上に蒸着された接着剤および半田、並びに、表面18とベース34の間に個々に配置され固定されるOリング、ガスケット、ワッシャ、および圧縮シールなどの個別の要素が含まれる。接着剤または半田の場合、シール44はベース34を基材12に接合させるために使用する。
【0017】
適切なバイパス機能を提供するため、内部バイパス流路40は、基材12の連続流路20よりも大きい断面積を持つことが好ましい。多くの用途に対して、内部バイパス流路40の適切な断面積を制御することは、専らシール44の種類を適切に選択することにより実現することができるが、接着剤または半田により形成されたシール44の場合には、制御された均一サイズのビーズまたはその他の粒子を利用する。チューブベース34を基材表面18に押圧し、シール44中の各ビーズがベース34と表面18の間に挟まれて両者に接触する状態となることで、空隙42(そして内部バイパス流路40の高さ)は、ビーズの直径により確保されることになる。シール44は、基材表面18の平面中における内部バイパス流路40の最外周の境界を形成するため、内部バイパス流路40の断面積は、基材表面18の通路26,28の開口に対するシール44の相対的な位置により容易に制御できる。
【0018】
内部バイパス流路40の断面積は、流体入口通路26と流体出口通路28との間の基材表面18または/および流体入口36と流体出口38との間のベース34に凹部を形成することにより、さらに拡張することができる。図4および図5に、そのような実施形態を示す。図1から図3に示した構成と同様の構成については同一の符号を用いる。図4および図5において、1つの凹部46が基材12の表面18に形成されている。凹部46は連続的であって表面18の流体入口通路26と流体出口通路28とを相互に接続している。基材12の材料に応じて、凹部46は、機械加工、モールド、型押し、エッチング、またはその他の方法により、表面18に形成される。図4から明らかなように、基材表面18に対して垂直の方向における内部バイパス流路40の深さは、基材表面18に対して垂直の方向における空隙42の幅と凹部46の深さの合計とに等しい。図5から、シール44により、基材表面18の平面における内部バイパス流路40の最外周の境界が形成されることが理解される。したがって、凹部46の(基材表面18に対して垂直な方向における)深さと(基材表面18の平面における)幅は、チューブ14の構成または製造工程を変更することなく、チューブ14を流れる流体の流量と、内部バイパス流路40を流れる流体の流量とが適切な比率を採るように選択されうる。適切な流れがチューブ14の連続流路20に生ずるように、図5に示した凹部46は流量制限器として作用する突起47を備える。これにより内部バイパス流路40内の圧力を上げている。追加的にまたは代替的に、同様の機能を発揮するように、凹部46に向けて突出する突起をシール44の一部に形成してもよい。
【0019】
最後に、図6に、本発明の一実施形態として、センサ装置10の内部バイパス流路40全体が基材12のバルク内部に位置する例を示す。上記各実施形態のように、内部バイパス流路40はチューブ14を通る連続流路20に対して流体的に並行であり、このため流体入口通路26を経てセンサ装置10内に流入する過度の流体は、チューブ14ではなく流体出口通路28に直接向けられる。本発明の上記各構成のように、センサ装置10中の内部バイパス流路40を設置することで、例えば、基材12の流体入口通路26および流体出口通路28を相互に接続して流体を運ぶバイパスチューブを設けるなど、バイパスを装置10の外側に設ける場合と比較して、よりコンパクトになる。
【0020】
基材12は、通常、金属、ガラス、またはプラスチック材料により製造され、その形状は、機械加工、型押しなどにより形成される。しかしながら、基材12を半導体材料で形成し、その形状を公知のバルクエッチングまたは表面薄膜エッチング処理により形成することも可能である。また、チューブ14を形成するために表面薄膜技術を用いてもよい。例えば、シリコンウエハ上に層状のチューブ14を蒸着させ、ウエハを基材12に接合することで、チューブ14のベース34が基材12の表面18に接合し、自立部16が基材12の表面18にエッチングされた空洞上に懸架している状態とし、ウエハを選択的エッチングにより除去する。これらおよびその他の潜在的なマイクロマシン技術は、当該技術分野において周知であり、本発明の範囲に包含される。
【0021】
図1から図6に示したセンサ装置10は、例えば、潤滑油、燃料、工業用化学薬品、尿や血液などの生体液、飲料、薬剤混合物、水などの気体および液体を含む、種々の流体を評価するために使用することができる。さらに、センサ装置10を用いて、種々の流体特性を測定できる。例えば、密度(および密度に関連する特性、例えば比重および化学的濃度を含む)、流量(質量および体積流量を含む)、化学的濃度、pH、線量、線量率が挙げられるが、これらに限定されるものではない。センサ装置10が使用される用途としては、流体試験およびモニタリング、薬剤注入および薬剤開発、気体試験、透析、血液および薬剤のモニタリング、泌尿器科などが含まれる。すなわち、潜在的に非常に小さいサイズであるため、センサ装置10は、工業用途、コンピュータ/電源、自動車、航空宇宙、燃料電池、および医療システムを含む、種々の技術分野に応用できる。具体的な例として、図7に、本発明の流体センサ装置10を含む燃料電池システム50を概略的に示す。燃料電池システムの使用は、コンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、電動車両、電動自転車、充電ステーション、テレビ、ラジオなどの用途に開発されてきている。センサ装置10は、燃料の濃度を測定するために設置される。燃料としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、蟻酸、硫酸、ガソリン、またはその他の有機液体があり、これらは混合体として、直接型メタノール燃料電池(DMFC)、固体高分子形燃料電池(プロトン交換膜(PEM)燃料電池;PEMFC)、または、改質燃料電池などの燃料電池52に供給される。当該分野では周知であるが、燃料電池システムでは、最適化のために燃料混合体中の燃料濃度を知ることが重要である。図7の燃料電池52において、メタノール−水混合体が使用される場合、混合体中のメタノール濃度を決定するために、混合体の流体密度を使用することができる。これが、燃料混合体の流量または混合比を制御するためのフィードバックとなる。
【0022】
本発明のセンサ装置10は、混合チャンバ54から燃料電池52への燃料−水混合体の搬送ライン上に設置される。図2から図4および図6を参照すると、混合体をセンサ装置10に搬送するラインは、流体入口通路26に接続され、センサ装置10から燃料電池52に混合体を搬送するラインは、流体出口通路28に接続される。本発明とともに用いて便利な、または本発明により必要とされる、上述の制御回路64が、センサ装置10に載置された、または、公知の手段により装置10に適切に連結されたチップ上に、形成されている。システム制御装置56が、センサ装置10および燃料電池52の出力を受け、貯蔵器62から混合チャンバ54へ、および混合チャンバ54からセンサ装置10へそれぞれ燃料を送るポンプ58,60を制御する。図7に示された構成は、説明のみを目的としたもので、当業者にとって、本発明のセンサ装置10は他の種々の構成およびセンサ(燃料電池システム50中の混合体の流量を測定する熱線技術を含む)とともに使用され得ることは明らかである。特に、そのような追加センサは、図5の内部バイパス流路40中のセンサ要素66で示されているように、本発明の内部バイパス流路40中に直接設置することができる。
【0023】
以上、特定の実施形態に基づいて、本発明の説明を行なったが、当業者により他の形態が採用されうることも明らかである。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限界づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る、マイクロマシン加工チューブを備えた流体センサ装置の平面図である。
【図2】同流体センサ装置の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る、チューブのベースおよび該ベースが取り付けられる基材の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る、チューブのベースおよび該ベースが取り付けられる基材の断面図である。
【図5】図4に示した基材の部分平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る、チューブのベースおよび該ベースが取り付けられる基材の断面図である。
【図7】燃料電池システムに設置された本発明の流体センサ装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、該ベースに設けられた流体入口および流体出口と、前記ベースから伸長する自立部と、該自立部内に設けられた連続流路とを有するマイクロマシン加工チューブであって、前記連続流路が、前記流体入口および流体出口とに連通可能に接続され、前記チューブ内に流れる流体を収容できるようになっている、マイクロマシン加工チューブと、
前記マイクロマシン加工チューブの自立部を、その共鳴周波数にて振動させる手段と、
前記マイクロマシン加工チューブの自立部の動きを測定する手段と、
前記マイクロマシン加工チューブのベースが取り付けられる表面と、該表面に開口する第1および第2の流路とを有する基材であって、前記マイクロマシン加工チューブのベースが、該基材の表面から間隔を隔てていることにより、該ベースと表面の間に、該基材の表面に垂直な方向の空隙が形成され、前記マイクロマシン加工チューブの自立部が該基材の上方に間隔を隔てて懸架されており、前記第1および第2の流路が、前記マイクロマシン加工チューブの前記流体入口および流体出口に対してそれぞれ連通可能に接続され、該第1および第2の流路が、前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を介して連通可能に接続されるようになっている、基材と、
前記マイクロマシン加工チューブのベースと前記基材表面とにより、これらの間に形成されるバイパス流路であって、前記基材の前記第1および第2の流路が、該バイパス流路を介して連通可能に接続され、これにより、前記基材の第1の流路から前記基材の第2の流路へ流れる流体の第1の部分は、該バイパス流路を通って流れる一方で、同流体の第2の部分は、前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を通って流れるようになっているバイパス流路と、および、
前記チューブベースと前記基材表面の間の前記空隙内に位置しており、前記基材の第1および第2の流路の開口と、前記マイクロマシン加工チューブの流体入口および出口とを取り囲むとともに、前記基材表面に対して平行な面に沿った方向における前記バイパス流路の境界を形成する流体密封シール材料と、
を備える流体センサ装置。
【請求項2】
前記バイパス流路および前記空隙は、前記シール材料によってのみ決定される、前記基材の表面に対して垂直な方向における等しい最大寸法を有する、請求項1に記載の流体センサ装置。
【請求項3】
前記マイクロマシン加工チューブのベースおよび前記基材の表面のうち、少なくとも一方に、凹部をさらに備え、前記空隙および凹部は、前記基材の表面に対して垂直な方向において最大寸法を有し、前記バイパス流路は、前記基材の表面に対して垂直な方向において、前記空隙と凹部の最大寸法の合計である、最大寸法を有する、請求項1に記載の流体センサ装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記基材の表面にのみ形成されて、該基材表面の前記第1の通路の開口から前記第2の通路の開口へ向けて伸長する、請求項3に記載の流体センサ装置。
【請求項5】
前記バイパス流路は、前記マイクロマシン加工チューブの前記自立部中の前記連続通路の最大断面流路面積よりも大きい、最大断面流路面積を有する、請求項1に記載の流体センサ装置。
【請求項6】
前記シール材料によって前記マイクロマシン加工チューブの前記ベースと前記基材の表面とが間隔を隔てられることで、前記空隙が形成される、請求項1に記載の流体センサ装置。
【請求項7】
前記シール材料は、粒子を含み、該粒子の少なくとも一部が、前記マイクロマシン加工チューブの前記ベースと、前記基材の表面の両方に接することで、これらの間の前記空隙の寸法が決定される、請求項6に記載の流体センサ装置。
【請求項8】
前記バイパス流路内に、流量制限器をさらに備える、請求項1に記載の流体センサ装置。
【請求項9】
前記バイパス流路内に、流体の特性を測定するセンサ手段をさらに備える、請求項1に記載の流体センサ装置。
【請求項10】
前記バイパス流路内の前記センサ手段により、該バイパス流路を流れる流体の流量が測定される、請求項9に記載の流体センサ装置。
【請求項11】
前記マイクロマシン加工チューブの前記自立部の共鳴周波数に基づいて、前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を流れる流体の密度、比重、および化学的濃度のうち、少なくとも一つを決定する手段をさらに備える、請求項1に記載の流体センサ装置。
【請求項12】
前記マイクロマシン加工チューブの前記連続流路を流れる燃料混合体をさらに備える、請求項11に記載の流体センサ装置。
【請求項13】
前記燃料混合体は燃料を含み、該燃料混合体中の燃料濃度が測定される、請求項12に記載の流体センサ装置。
【請求項14】
請求項13に記載の流体センサ装置を備える燃料電池システム。
【請求項15】
請求項14に記載の燃料電池システムが設置される、コンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、電動車両、電動自転車、充電器、テレビ、ラジオからなるグループの中から選択された電気製品。
【請求項16】
前記マイクロマシン加工チューブの前記連続流路内を流れる流体の温度を検出する検出手段をさらに備える、請求項1に記載の流体センサ装置。
【請求項17】
前記マイクロマシン加工チューブの前記連続流路を流れる流体の質量流量を、前記基材に対する前記マイクロマシン加工チューブの自立部の相対的な動きに基づいて決定する手段をさらに備える、請求項1に記載の流体センサ装置。
【請求項18】
前記マイクロマシン加工チューブの自立部の共鳴周波数に基づいて、前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を流れる流体の密度、比重、および化学的濃度のうち、少なくとも1つを決定する手段と、
装置内を流れる流体の温度を検出する検出手段と、
装置内を流れる流体の質量流量を決定する手段と、
をさらに備える、請求項1に記載の流体センサ装置。
【請求項19】
ベースと、前記ベースから伸長する自立部と、該ベースに設けられた流体入口および流体出口と、該流体入口と流体出口とを連通可能に接続する、前記自立部内の連続流路と、を有するマイクロマシン加工チューブを備えた流体センサ装置を製造する方法であって、
表面と、該表面に開口を有する第1および第2の流路を有する基材を供給し、
前記マイクロマシン加工チューブのベースを前記基材表面に取り付けて、該ベースを前記表面から間隔を隔てて、それらの間に前記基材表面に垂直な方向に空隙を形成し、前記ベースと前記基材表面とにより、その間にバイパス流路を形成し、前記マイクロマシン加工チューブの自立部を前記基材上に懸架して、該基材から間隔を隔てた状態とし、前記ベースの流体入口および流体出口を前記基材の前記第1および第2の通路にそれぞれ連通可能に接続し、前記基材の前記第1および第2の流路を前記マイクロマシン加工チューブの前記連続流路を介して連可能に接続させ、流体をシールするシール材料を前記マイクロマシン加工チューブのベースと前記基材表面との間の空隙内に配置し、該シールにより、前記基材の第1および第2の流路の開口および前記マイクロマシン加工チューブの流体入口および出口を包囲して、前記基材表面と平行な表面における前記バイパス流路の境界を形成する、
工程を有し、
これにより、前記基材の第1の流路を通じてセンサ装置内に流体を流入させ、同第2の流路から流出させる際に、前記流体の第1の部分は前記バイパス流路を流れ、同第2の部分は、前記ベースの流体入口、前記マイクロマシン加工チューブの前記連続流路、および、前記ベースの流体出口を順次流れるようにして、前記マイクロマシン加工チューブの前記自立部を、その共鳴周波数で振動させ、前記マイクロマシン加工チューブの前記自立部の動きを測定することを可能とする、流体センサ装置を製造する方法。
【請求項20】
前記マイクロマシン加工チューブの前記ベースを前記基材表面に取り付ける工程により、前記バイパス流路および前記空隙が、前記基材表面に垂直な方向に、前記シール材料によってのみ決定される等しい最大寸法を有するようにする、請求項19に記載の流体センサ装置を製造する方法。
【請求項21】
前記基材表面の前記第1の流路の開口から前記第2の流路の開口へ向けて伸長する凹部を基材表面に形成する工程をさらに備え、前記空隙および前記凹部は、基材表面に対して垂直な方向に最大寸法を有し、前記バイパス流路は、前記基材表面に対して垂直な方向に、前記凹部と空隙の最大寸法の合計である最大寸法を有するようにする、請求項19に記載の流体センサ装置を製造する方法。
【請求項22】
前記バイパス流路を、前記マイクロマシン加工チューブの前記自立部中に位置する前記連続流路の最大流路断面積よりも大きい最大流路断面積を得るように形成する、請求項19に記載の流体センサ装置を製造する方法。
【請求項23】
前記マイクロマシン加工チューブのベースを前記基材表面に取り付ける工程により、前記シール材料によってのみ前記マイクロマシン加工チューブのベースと前記基材表面とが隔てられ、該シール材料によってのみ、これらの間の空隙が決定される、請求項19に記載の流体センサ装置を製造する方法。
【請求項24】
前記シール材料は、粒子を含み、その少なくとも一部が、前記マイクロマシン加工チューブのベースと前記基材の表面との両方に接することで、それらの間の前記空隙が決定される、請求項23に記載の流体センサ装置を製造する方法。
【請求項25】
前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を流れる流体の密度、比重、および化学的濃度のうち、少なくとも一つを、前記マイクロマシン加工チューブの自立部の共鳴周波数に基づいて決定することを可能とする、請求項19に記載の流体センサ装置を製造する方法。
【請求項26】
前記流体は、燃料を含む燃料混合体であり、該燃料混合体中の燃料濃度を測定することを可能とする、請求項25に記載の流体センサ装置を製造する方法。
【請求項27】
請求項26に記載の流体センサ装置を、燃料電池システムに設置する工程を備える、燃料電池システムを製造する方法。
【請求項28】
請求項27に記載の燃料電池システムを、コンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、電動車両、電動自転車、充電器、テレビ、ラジオからなるグループの中から選択された電気製品に組み込む工程を備える、電気製品を製造する方法。
【請求項29】
前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を流れる流体温度を測定する手段を設ける工程を備える工程をさらに有する、請求項19に記載の流体センサ装置を製造する方法。
【請求項30】
前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を流れる流体の質量流量を、前記基材に対する前記該マイクロマシンチューブの自立部の相対的な動きに基づいて決定することを可能とする、請求項19に記載の流体センサ装置を製造する方法。
【請求項31】
前記バイパス流路を流れる流体の質量流量を決定することを可能とする、請求項19に記載の流体センサ装置を製造する方法。
【請求項32】
前記マイクロマシン加工チューブの連続流路を流れる流体の密度、比重、および化学的濃度のうち、少なくとも1つを、前記マイクロマシン加工チューブの自立部の共鳴周波数に基づいて決定する手段と、
該装置を流れる流体の温度を測定する手段と、
該装置を流れる流体の質量流量を決定する手段と、
を備える工程をさらに有する、請求項19に記載の流体センサ装置を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−529033(P2008−529033A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554075(P2007−554075)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/043581
【国際公開番号】WO2006/083386
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507255754)インテグレイテッド センシング システムズ,インク. (4)
【Fターム(参考)】