バケットマット及びその製造方法
【課題】大量の雨水や雪水をマット内にとどめ置くバケットマットに最適であり、しかも吸音性及び意匠性に優れており、尚かつ優れた吸放出性、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有するバケットマット及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】熱成形性繊維を含む繊維基材10又は20と、前記繊維基材10又は20の裏面側に設けられ、多数の貫通孔18を有する樹脂バッキング17とを備えており、前記繊維基材10又は20及び樹脂バッキング17に吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11A及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11B、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cが含まれている。
【解決手段】熱成形性繊維を含む繊維基材10又は20と、前記繊維基材10又は20の裏面側に設けられ、多数の貫通孔18を有する樹脂バッキング17とを備えており、前記繊維基材10又は20及び樹脂バッキング17に吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11A及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11B、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cが含まれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒冷地用の自動車フロアマットとして多用されており、雨や雪に濡れた靴のままで車内に踏み込んでも、雨水や雪水をマット内にとどめ置くことができるバケットマットに関する。詳細には、吸音性及び意匠性に優れており、しかも優れた吸放出性、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有するバケットマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地用の自動車フロアマットとして多用されているバケットマットとしては、図11に示すように、バケット状に樹脂成形されたものがある。ところが、このマット1は、雨水や雪水をマット内にとどめ置いて自動車床面を濡らさないようにするという機能は有しているものの、樹脂の地肌のままおかれており、高級感がなく、高級乗用車などには不向きであった。
【0003】
そこで、図12に示すように、バケットマット1の底面部分にタフティングマット2を接着したものも上市されているが、マットの周囲は同じく樹脂の地肌が露出しており、安物という感を呈していた。
【0004】
また、タフティングマット自体をバケット状に成形したものもあったが、成形し難く手間がかかる上、形状保持性という点で問題があった。
【0005】
本発明者は、このような事情に鑑み、製造が容易であり、しかも形状保持性、意匠性に優れたバケットマットを提供している(特許文献1参照)。
【0006】
このバケットマットにあっては、図13に示すように、熱成形性繊維を含む糸条によって構成された織物をバケット形状に設けた型内にセットして、所定の熱と圧力とを加えるだけ製造できるので手間がかからず、その形状は織物を構成する糸状に含まれる熱成形された熱成形性繊維によって確実に保持されており、しかも織物の持つ優れた意匠性を備えているとの効果を奏するものである。
【0007】
ところが、図13に示すバケットマットにあっては、製造に手間がかからず、形状保持性及び意匠性に優れるという利点を有してはいるものの、雨水や雪水が掛かって濡れる度毎に、取り外して乾燥させる必要があり、濡れたままに放置すれば、該敷物が細菌の温床となり、悪臭の発生原因ともなっていた。
【0008】
従来、このような事情を考慮した吸水量10g/g以上の高吸水性繊維からなる吸水性不織布層の少なくとも片面に伸度50%以上の伸縮性不織布層が積層され、部分的に一体化されたことを特徴とする敷物も提案されており(例えば特許文献2参照)、この敷物を上述したバケットマットに適用することも考えられる。ところが、この敷物にあっては、吸水量が飽和に達すると、吸水効果がなくなり取り替えなければならず、踏みつけられる等の圧力が加わると、吸水した水が逆戻りする現象が発生するといった問題があった。
【0009】
そこで提案されたのが、水を速やかに吸水して保持すると共に、一旦吸収した水を放出することができる機能を備えた敷物である。このような敷物としては、吸水性樹脂分散体(D)中のポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(P)とを反応させてなるウレタン樹脂からなるフロアーマット用バッキング材及びそれを用いたものであり、吸水性に優れ、多湿な環境によって引き起こされる不快感を防止できる効果を奏するものがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平07−137568号公報
【特許文献2】特開平6−57610号公報
【特許文献3】特開2000−325217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記マットは、吸放湿性、調湿性、吸水性に優れるバッキング材を用いたものであるが、該マットの表面層を構成するタフティングなどを施した繊維基材や織物には、吸水性や放湿性などの考慮がなされておらず、大量の雨水や雪水をマット内にとどめ置くことが求められるバケットマットには不向きであった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、大量の雨水や雪水をマット内にとどめ置くバケットマットに最適であり、しかも吸音性及び意匠性に優れており、尚かつ優れた吸放出性、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有するバケットマット及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1〜6に記載の発明は、熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に設けられ、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えており、前記繊維基材及び樹脂バッキングがバケット形状に熱成形されたバケットマットであって、
前記繊維基材及び樹脂バッキングに吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束が含まれていることを特徴とするバケットマットをその要旨とした。
【0014】
また、請求項7〜9に記載の発明は、熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に設けられ、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えており、前記繊維基材及び樹脂バッキングがバケット形状に熱成形されたバケットマットの製造方法であって、
吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を準備し、
次いで、前記親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を前記繊維基材及び樹脂バッキングに含有させ、
次いで、当該マットのバケット形状に対応する雄型と雌型とを備え、
前記雌型内面の底部には前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成するための針が設けられている成形型を準備し、
次いで、前記成形型の雌型を加熱すると共に該雌型内に前記樹脂バッキングを配置し、
次いで、前記雌型内に配置した樹脂バッキング上に繊維基材を積層し、
次いで、前記雄型で繊維基材側を押圧することで、前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキングを圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形することを特徴とするバケットマットの製造方法をその要旨とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバケットマット(以下、単にマットという)にあっては、繊維基材及び樹脂バッキングに吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束が含まれていることから、雨水や雪水で該マットが濡れた場合でも、速やかに吸水され、該マット表面の濡れは速やかに解消される。また、一旦吸水された水は効果的に放出され、取り替えなどを必要としない。
【0016】
また、本発明のマットにあっては、繊維基材及び樹脂バッキングにフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束が含まれていることから、上記吸排水性に加え、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果に優れる。
【0017】
また、本発明のマットにあっては、熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に設けられ、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えていることから、製造に手間がかからず、多数の貫通孔を通じて該マットの厚み方向に通気が確保されており、前記多数の貫通孔内を音が通過するときに効果的に吸音され、優れた吸音性が発揮されるようになっている。
【0018】
また、本発明のマットにあっては、樹脂バッキングにモノフィラメント束が所定間隔毎にタフティングされ、該樹脂バッキングの非圧着面側に前記モノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出している形態を採ることもできる。この場合、例えば自動車床面にカットパイルカーペットが敷設されていても、該マット裏面の樹脂バッキングの非圧着面側に突出するモノフィラメント束のカットされたループのカット端が、自動車床面を捉えて、該マットのズレを確実に防止するようになる。
【0019】
さらに、樹脂バッキングの多数の貫通孔毎にモノフィラメント束がタフティングされ、該樹脂バッキングの非圧着面側の前記多数の貫通孔から前記モノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出している形態とすることもできる。この場合、前述のズレ防止効果に加え、樹脂バッキングの多数の貫通孔内にモノフィラメント束が存在するので、前記多数の貫通孔内を音が通過するときに多数の貫通孔内のモノフィラメントと衝突を繰り返すことになり、より効果的な吸音がなされるようになる。
【0020】
また、本発明のマットにあっては、樹脂バッキングの非圧着面側にモノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出していると共にズレ防止用突起が突出している形態を採ることもできる。この場合、樹脂バッキングの非圧着面側に突出するモノフィラメント束のカットされたループのカット端とズレ防止用突起とが自動車床面を捉え、該マットのズレをより確実に防止するようになる。特にこの形態の場合、自動車床面に先端がカットされたパイルカーペットが敷設されていても、フェルトが敷設されていても、いずれの場合も確実に該マットのズレを防止することができるという利点がある。
【0021】
本発明のマットの製造方法にあっては、親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を前記繊維基材及び樹脂バッキングに含有させ、次いで、当該マットのバケット形状に対応する雄型と雌型とを備え、前記雌型内面の底部に前記バッキング層に多数の貫通孔を形成するための針が設けられている成形型を用いて、該成形型の雌型内に前記樹脂バッキング、繊維基材の順に配置し、前記雄型で繊維基材側を押圧することで、前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキングを圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形するようにしたことから、雨水や雪水をマット内にとどめ置くことができるバケットマットであって、吸音性及び意匠性に優れており、しかも優れた吸放出性、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有するバケットマットを簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のマットを示す斜視図。
【図2】本発明のマットを示す断面図。
【図3】本発明のマットの要部拡大断面図。
【図4】本発明のマットを構成する親水性吸排水繊維束と親水性消臭繊維束とを含む繊維基材を示す模式図。
【図5】図4に示す繊維基材に含まれる親水性吸排水繊維束を示す模式図。
【図6】図4に示す繊維基材に含まれる親水性消臭繊維束を示す模式図。
【図7】本発明のマットを構成する親水性吸排水消臭繊維束を含む繊維基材を示す模式図。
【図8】図7に示す繊維基材に含まれる親水性吸排水消臭繊維束を示す模式図。
【図9】本発明のマットの製造に使用する雄型と雌型とを備えた成形型を示す断面図。
【図10a】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、雌型を加熱する工程を示す断面図。
【図10b】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、雌型内に樹脂バッキングを配置する工程を示す断面図。
【図10c】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、雌型内の樹脂バッキング上に繊維基材を積層する工程を示す断面図。
【図10d】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、雄型で繊維基材側を押圧することで、前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキングを圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形する工程を示す断面図。
【図10e】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、成形型内の空気を吸引する工程を示す断面図。
【図10f】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、雌型を冷却する工程を示す断面図。
【図11】従来のバケットマットを示す斜視図。
【図12】従来の別のバケットマットを示す斜視図。
【図13】従来のさらに別のバケットマットを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のマット及びその製造方法を説明する。本発明のマットは、寒冷地用の自動車フロアマットとして多用されるものであり、バケット形状に熱成形されていて、雨や雪に濡れた靴のままで車内に踏み込んでも、雨水や雪水を該マット内にとどめ置くことができるものである。このマットは、図1〜図3に示すように、熱成形性繊維を含む繊維基材10又は20と、前記繊維基材10又は20の裏面側に設けられ、多数の貫通孔18を有する樹脂バッキング17とを備えており、前記繊維基材10又は20及び樹脂バッキング17に吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11A及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11B、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cが含まれていることを特徴とするものである。
【0024】
まず、図4〜図8に示す親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11Bを含有する繊維基材10、並びに親水性吸排水消臭繊維束11Cを含有する繊維基材20の好ましい形態について説明する。親水性吸排水繊維束11Aとしては、例えば図5に示すように、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0025】
吸排水性繊維12としては、親水性繊維の表面に吸排水性ポリマーをバインダーを介して付着させたもの、或いは親水性繊維の繊維内部に吸排水性ポリマーを含ませたものを挙げることができ、親水性繊維としては、例えば木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維を挙げることができる。
【0026】
吸排水性ポリマーとしては、特に限定されないが、取り扱い性が良好であり、かつ吸排水性の制御が容易であることから、吸水性に優れると共に一旦吸水した後、温度変化に伴って吸水率が変化して排水する機能を持つ感温吸排水性ポリマーが好ましい。感温吸排水性ポリマーとしては、感温点が10−45℃の温度領域にあるものがより好ましく、感温点が35℃のものがさらに好ましい。図5及び図8の例では、感温点が35℃の感温吸排水性ポリマーを吸排水性ポリマーとして用いた。
【0027】
このような感温吸排水性ポリマーとしては、イソプロピルアクリルアミド構造を含むポリマーの他に、アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト、アクリル酸ステアリンアクリレート共重合体などのポリマーを挙げることができる。
【0028】
鞘部を構成する繊維には、吸排水性繊維のベースとした親水性繊維と同じく、木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維などの親水性繊維を用いることができる。
【0029】
尚、親水性吸排水繊維束は、芯部を構成する吸排水性繊維の含有割合によっては、該吸排水性繊維中の感温吸排水性ポリマーが吸水により膨潤し、親水性吸排水繊維束自体の繊維強度を低下する恐れがあるが、吸水時の親水性吸排水繊維束の繊維強度の低下を抑えるため、繊維束中にポリエステルなどの熱接着性繊維を混入させても良い。
【0030】
親水性消臭繊維束11Bとしては、例えば図6に示すように、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維13を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0031】
消臭繊維としては、親水性繊維の表面にフタロシアニン化合物をバインダーを介して付着させたもの、或いは親水性繊維の繊維内部にフタロシアニン化合物を含ませたものを挙げることができ、親水性繊維としては、例えば木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維を挙げることができる。
【0032】
フタロシアニン化合物としては、下記化学式1で表されるものであり、式中のMは、鉄、マンガン、チタン、バナジウム、ニッケル、銅、タングステンから選択される金属である。
【化1】
【0033】
鞘部を構成する繊維には、吸排水性繊維のベースとした親水性繊維と同じく、木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維などの親水性繊維を用いることができる。
【0034】
親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束を含む繊維基材の好ましい形態としては、例えば図4に示すように、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを構成繊維とする不織布、織物、編物、紙などの形態を採ることができ、この繊維基材10を単独で使用するほかに、繊維基材10に不織布、織物、編物、紙、プラスチックネットなどの補強シートを積層し、部分接着あるいは絡合処理などにより一体化した複合体の形態を採ることもできる。
【0035】
繊維基材10のさらに好ましい形態としては、例えば吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを含み、さらに熱成形性繊維を含む繊維ウェブを形成し、この繊維ウェブを水流絡合やニードルパンチなどの絡合処理を行ない、さらに加熱処理をすることで得られる不織布からなるもの、或いは前記繊維ウェブの一方面側にプラスチックネットからなる補強シートを積層し、水流絡合やニードルパンチなどの絡合処理を行ない、さらに加熱処理をすることで得られる複合シートからなるものを挙げることができる。
【0036】
また繊維基材10は、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bの他に、例えばポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などを熱成形性繊維を含んでいる。このため、繊維基材10は、加熱により熱成形性繊維が軟化して成形性を示すと共にこれに圧力が加わることで、該繊維基材10がバケット形状に固定されるようになっているのである。
【0037】
次に、吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束について説明する。親水性吸排水消臭繊維束11Cとしては、例えば図8に示すように、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12とフタロシアニン化合物を含む消臭繊維13とを芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0038】
親水性吸排水消臭繊維束11Cにおける吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維13、親水性繊維14については、親水性吸排水繊維束11Aの芯部を構成する吸排水性繊維12、親水性消臭繊維束11Bの芯部を構成する消臭繊維13、親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11Bの鞘部を構成する親水性繊維と同じであるため、ここでの説明は割愛する。
【0039】
尚、親水性吸排水消臭繊維束11Cにおける吸排水性繊維12及び消臭繊維13の量は任意であり、本発明の敷物の用途や使用状態において、要求される吸排水性及び消臭性の大小に応じて適宜決定すると良い。
【0040】
親水性吸排水消臭繊維束を含む繊維基材20の好ましい形態としては、例えば図7に示すように、親水性吸排水消臭繊維束11Cを構成繊維とする不織布、織物、編物、紙などの形態を採ることができ、この繊維基材20を単独で使用するほかに、繊維基材20に不織布、織物、編物、紙、プラスチックネットなどの補強シートを積層し、部分接着あるいは絡合処理などにより一体化した複合体の形態を採ることもできる。
【0041】
上述した繊維基材10又は20は、例えば図1〜図3に示すように、パイル糸15を所定のボリュームとなるように打ち込んだ形態を採ることもできる。繊維基材10又は20に打ち込まれるパイル糸15には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系の合成繊維が好適に使用される。また、パイル糸15には、上述の親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を含ませることができる。図示の例では、パイル糸15には、親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11B又は親水性吸排水消臭繊維束11Cが含まれており、これを打ち込んだ繊維基材10又は20の表面層は、意匠性に優れると共に優れた吸放出性、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有するものとなる。
【0042】
パイル糸15を打ち込んだ繊維基材10又は20裏面には、パイル糸の抜け止め層16を設けるのが望ましい。抜け止め層としては、蜘蛛の巣状の透孔性接着シートからなるものを挙げることができる。この透孔性接着シートには、接着時の熱およびまたは圧力で薄膜化されて成るもの、ホットメルト樹脂などの接着樹脂中に発泡剤を入れて混練、シート化したものなどを用いることができる。図3に示す例では、この透孔性接着シート16aをパイル糸15を打ち込んだ基布10又は20裏面に配置し熱プレスすることで、該透孔性接着シート16aが薄膜(フィルム)状となって基布10又は20内部に浸透し、パイル糸15の抜けを止めるようになっている。
【0043】
親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11B又は親水性吸排水消臭繊維束11Cを含む繊維基材10又は20にあっては、図3中矢印で示すように、該マット表面の水がパイル糸15間またはその構成繊維間を通してパイル糸15基部の繊維基材10又は20内まで浸透し、該繊維基材10又は20に含まれる吸排水性繊維12の吸排水性ポリマーに吸水されるようになっている。また、繊維基材10又は20には、上述したように吸排水性繊維12とともにフタロシアニン化合物を含む消臭繊維13が含まれていることから、吸排水性繊維12中の吸排水性ポリマーの吸水に伴って、これに隣り合う消臭繊維13中のフタロシアニン化合物も水と接触し、該フタロシアニン化合物の持つ消臭効果、さらには抗アレルゲン効果及び抗菌効果がより活性化され、効果的に敷物の消臭、抗アレルゲン及び抗菌がなされるようになっている。
【0044】
繊維基材10又は20中の吸水した吸排水性繊維12に含まれる吸排水性ポリマーは、所定の湿度又は温度となったとき(図示の場合感温点が35°Cの感温吸排水性ポリマーを吸排水性ポリマーとして用いたので、感温点35℃となったとき)、図3中点線で示すように一旦吸収した水を放出するようになっている。
【0045】
次に、親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を含有する樹脂バッキングの好ましい形態について説明する。樹脂バッキングは、該マットの補強および保形、すべり止めを行う目的で形成されるものである。図3に示す例において、樹脂バッキング17は連続気泡構造となっており、その裏面側にはズレ止め用の多数のスパイク19が形成されている。
【0046】
樹脂バッキングを構成する樹脂としては、例えばスチレンーブタンジエンースチレン共重合体、アクリルニトリルーブタジエン系共重合体、ウレタン樹脂等の高分子、スチレンーブタンジエンゴム、アクリルニトリルーブタンジエンゴム、ブタンジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴム高分子、またはこれらを複数種混合したものなどを例示することができる。また、上記樹脂には必要に応じて充填剤や増粘剤を加えてもよい。
【0047】
充填剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アンチモンなどが例示できる。増粘剤としては、例えばポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、ポリビニルアルコール、カゼイン、発酵多糖類などが挙げられるが、好ましくは低分子量のポリアクリル酸ソーダである。
【0048】
また、樹脂バッキング17は、表裏に貫通する多数の貫通孔18を有している。これら多数の貫通孔18を通して該マットの繊維基材10又は20に空気が出入りするようになっており、この結果、優れた吸音性をもたらすようになっている。
【0049】
また樹脂バッキング17には、図3に示すように上述の親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11B又は親水性吸排水消臭繊維束11Cが含まれている。樹脂バッキング17が親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11B、又は親水性吸排水消臭繊維束11Cを含有する形態としては、樹脂バッキング17を構成する樹脂中に親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11B、又は親水性吸排水消臭繊維束11Cを分散させ、独立気泡構造となるように発泡成形することで、繊維束11A、11B又は11Cと水分との接触効率を高めたものを挙げることができる。この場合、分散剤としては、例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダなどを例示できる。発泡剤としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、Nーオクタデシルスルホコハク酸モノアミドジナトリウムなどを挙げることができる。
【0050】
樹脂バッキング17に上述の親水性吸排水繊維束11A又は親水性吸排水消臭繊維束11Cが含まれていることから、表裏に貫通する多数の貫通孔18を通して、また発泡成形により形成された連続気泡構造(図示しない)を通して、該マットの水分が吸水されるようになっている。また、繊維基材10又は20の多数の貫通孔18及び連続気泡構造(図示しない)を通して空気が出入りする過程で、繊維基材10又は20に含まれる吸排水性繊維12中の吸排水性ポリマーに一旦吸収された水の放出が促されるようになっている。また、樹脂バッキング17中の親水性消臭繊維束11B又は親水性吸排水消臭繊維束11Cによって、該マットの表裏に渡って優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果が発揮されるようになっている。
【0051】
また、図1〜図3に示す形態では、樹脂バッキング17は多数の貫通孔18毎にモノフィラメント束21がタフティングされ、該樹脂バッキング17の非圧着面側の多数の貫通孔18内から前記モノフィラメント束21のカットされたループのカット端21aが突出している。このため、例えば自動車床面にカットパイルカーペットが敷設されていても、該マット30裏面の樹脂バッキング17の非圧着面側に突出するモノフィラメント束21のカットされたループのカット端21aが、自動車床面を捉えて、該マット30のズレを確実に防止するようになる。また、このような形態とすることで、樹脂バッキング17の多数の貫通孔18内を音が通過するときに、モノフィラメント束21と衝突を繰り返すことになり、貫通孔18による吸音効果と相俟ってより効果的な吸音がなされるようになっている。
【0052】
尚、フィラメント束21は、樹脂バッキング17の多数の貫通孔18毎にタフティングする場合の他、貫通孔18とは関係なく樹脂バッキング17の非圧着面側に所定間隔毎にタフティングして、該樹脂バッキング17の非圧着面側に前記モノフィラメント束21のカットされたループのカット端21aが突出している形態として、マット30のズレを防止するようにしてもよい。
【0053】
また図3に示す形態では、樹脂バッキング17の非圧着面側にはモノフィラメント束21のカットされたループのカット端21a突出していると共にズレ防止用突起19が突出しており、これらモノフィラメント束21のカット端21aとズレ防止用突起19とが自動車床面を捉え、該マット30のズレをより確実に防止するようになっている。特にこの形態の場合、自動車床面に先端がカットパイルカーペットが敷設されていても、フェルトが敷設されていても、いずれの場合も確実に該マットのズレを防止することができるという利点がある。
【0054】
樹脂バッキング17にタフティングされるモノフィラメント束21を構成するモノフィラメントとしては、ナイロンモノフィラメントやポリエステルモノフィラメントが好ましく、200〜400デニールの太さに束ねたものが好ましい。
【0055】
また、図1〜図3に示すように樹脂バッキング17にモノフィラメント束21をタフティングして、該樹脂バッキング17の非圧着面側にモノフィラメント束21のカットされたループのカット端21aを突出させる場合、加工時にタフティングされたモノフィラメント束21が樹脂バッキング17から抜け落ちるのを防止するため、樹脂バッキング17の圧着面側には抜け止め層16bを設けるのが望ましい。
【0056】
モノフィラメント束21の抜け止め層としては、蜘蛛の巣状の透孔性接着シートからなるものを挙げることができる。この透孔性接着シートには、接着時の熱およびまたは圧力で薄膜化されて成るもの、ホットメルト樹脂などの接着樹脂中に発泡剤を入れて混練、シート化したものなどを用いることができる。図3に示す例では、この透孔性接着シート16bを樹脂バッキング17の圧着面側に配置し熱プレスすることで、該透孔性接着シート16bが薄膜(フィルム)状となってモノフィラメント束21の抜けを止めるようになっている。また、薄膜(フィルム)状となった透孔性接着シート16bは、同時にモノフィラメント束21の根本を固める役割をすることから、これにより該モノフィラメント束21の樹脂バッキング17の非圧着面側に突出するカット端21aに腰が強くなり、該マットのズレ防止効果はより高まるようになる。
【0057】
尚、図1〜図3に示すマット30にあっては、繊維基材10又は20と樹脂バッキング17との間に撥水層22が介在されており、該マット30の繊維基材10又は20側からの水が樹脂バッキング17側へと透過し難くなっている。撥水層22を透過して樹脂バッキング17側へと浸透した水は、樹脂バッキング17で吸水され、自動車床面のカーペットを濡らさないようになっている。
【0058】
次に、上記構成を有するマットの製造方法(以下、単に方法という)について説明する。本発明の方法は、熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に設けられ、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えており、前記繊維基材及び樹脂バッキングがバケット形状に熱成形されたバケットマットを製造する方法に関し、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を準備し、
次いで、前記親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を前記繊維基材及び樹脂バッキングに含有させ、
次いで、当該マットのバケット形状に対応する雄型と雌型とを備え、
前記雌型内面の底部には前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成するための針が設けられている成形型を準備し、
次いで、前記成形型の雌型を加熱すると共に該雌型内に前記樹脂バッキングを配置し、
次いで、前記雌型内に配置した樹脂バッキング上に繊維基材を積層し、
次いで、前記雄型で繊維基材側を押圧することで、前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキングを圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形することを特徴とするものである。
【0059】
尚、本発明の方法を説明するに当たり、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を準備し、前記親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を前記繊維基材及び樹脂バッキングに含有させる工程は、本明細書の段落0024〜段落0050において詳述したので、ここでの説明は割愛する。
【0060】
本発明の方法では、図9に示すように、当該マットのバケット形状に対応する雄型32と雌型33とを備える成形型31を用いている。この成形型31の雌型33内面の底部には樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成するための針34が設けられている。また、成形型31の雌型33には、ズレ防止用突起を形成するための多数の空気抜き孔35が設けられている。
【0061】
この成形型は、レール上を移動可能に設けられており、その移動経路には、雌型を加熱する加熱ゾーン、成形型内の空気を脱気する脱気ゾーン、雌型を冷却する冷却ゾーン、製造後のマットを取り出す取り外しゾーンが設けられており、各ゾーンにおけるマットの製造工程を図10a〜図10fに示した。以下、図10a〜図10fに従って本発明の方法を説明する。
【0062】
まず、図10a〜図10dに示す工程を説明する。図10a〜図10dに示す工程は加熱ゾーンにおいて行われるようになっている。図10aは、雌型33を雌型33下部に配置したバーナー36で加熱する工程を示している。雌型33内には、図10bに示すように樹脂バッキング17が配置されるようになっている。雌型33内に配置される樹脂バッキング17は、予めシート状に樹脂成形され、所定の大きさに裁断されたものであり、後の工程で行う繊維基材10又は20への圧着に備えて半ゲル化させる必要がある。このため、図10aに示す工程では、予め雌型33を加熱しておくのである。
【0063】
次いで、図10bに示すように、加熱された雌型33内に樹脂バッキング17を配置し、さらに図10cに示すように、樹脂バッキング17上に繊維基材10又は20を積層するのである。
【0064】
次いで、図10dに示すように、雄型32を雌型33方向に下降させ、雄型32で繊維基材10又は20側を押圧するのである。これにより、樹脂バッキング17は雌型33と接触することで加熱されて半ゲル化し、同時に樹脂バッキング17には雌型33内面の底部に設けた針34によって多数の貫通孔18が形成される。また、同時に雌型33からの熱と雄型32から押圧力とによって、半ゲル化した樹脂バッキング17の一部が繊維基材10又は20へと浸透し、これら樹脂バッキング17と繊維基材10又は20とが圧着されるのである。
【0065】
次いで、成形型31は、脱気ゾーンへと移動し、図10eに示す工程が行われる。図10eに示す工程では、雌型33の下側に真空ポンプと繋がる脱気装置37が配置され、この脱気装置37によって雌型33に設けた空気抜き孔35を通して成形型31内の空気が真空引きされるようになっている。この結果、雌型33内の半ゲル化した樹脂バッキング17が空気抜き孔35を通して伝わる真空圧で該空気抜き孔35内に吸い込まれ、該樹脂バッキング17の非圧着面側に多数のズレ防止用突起19が形成されるのである。
【0066】
次いで、成形型31は、冷却ゾーンへと移動し、図10fに示す工程が行われる。図10fに示す工程では、雌型33の下側にシャワー38が配置され、雌型33を介して雌型33内の樹脂バッキング17が冷やされ、この結果、半ゲル化し繊維基材10又は20へと浸透した樹脂バッキング17の一部が固化し、雌型33内面の底部に設けた針34によって形成された多数の貫通孔18の形状が固定され、さらに真空圧で該空気抜き孔35内に吸い込まれて形成された多数のズレ防止用突起19の形状が固定されるのである。
【0067】
次いで、成形型は、取り外しゾーンへと移動して、完成したマットが成形型内から取り出されるのである。
【0068】
尚、本発明のマット及び方法は、上述した例に限定されるものではなく、例えば静電気を空中放電させる放電紙やカーボン繊維、金属繊維などの導電性繊維など含ませることで、人がマットに触れたとき、瞬時に静電気を除去する静電気除去性能を付与するなど、特許請求の範囲に記載の範囲で自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0069】
10又は20・・・基布
11A・・・親水性吸排水繊維束
11B・・・親水性消臭繊維束
11C・・・親水性吸排水消臭繊維束
12・・・吸排水性繊維
13・・・消臭繊維
14・・・親水性繊維
15・・・パイル糸
17・・・樹脂バッキング
18・・・貫通孔
21・・・モノフィラメント束
21a・・・カット端
31・・・成形型
32・・・雄型
33・・・雌型
34・・・針
35・・・空気抜き孔
36・・・バーナー
37・・・脱気装置
38・・・シャワー
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒冷地用の自動車フロアマットとして多用されており、雨や雪に濡れた靴のままで車内に踏み込んでも、雨水や雪水をマット内にとどめ置くことができるバケットマットに関する。詳細には、吸音性及び意匠性に優れており、しかも優れた吸放出性、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有するバケットマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地用の自動車フロアマットとして多用されているバケットマットとしては、図11に示すように、バケット状に樹脂成形されたものがある。ところが、このマット1は、雨水や雪水をマット内にとどめ置いて自動車床面を濡らさないようにするという機能は有しているものの、樹脂の地肌のままおかれており、高級感がなく、高級乗用車などには不向きであった。
【0003】
そこで、図12に示すように、バケットマット1の底面部分にタフティングマット2を接着したものも上市されているが、マットの周囲は同じく樹脂の地肌が露出しており、安物という感を呈していた。
【0004】
また、タフティングマット自体をバケット状に成形したものもあったが、成形し難く手間がかかる上、形状保持性という点で問題があった。
【0005】
本発明者は、このような事情に鑑み、製造が容易であり、しかも形状保持性、意匠性に優れたバケットマットを提供している(特許文献1参照)。
【0006】
このバケットマットにあっては、図13に示すように、熱成形性繊維を含む糸条によって構成された織物をバケット形状に設けた型内にセットして、所定の熱と圧力とを加えるだけ製造できるので手間がかからず、その形状は織物を構成する糸状に含まれる熱成形された熱成形性繊維によって確実に保持されており、しかも織物の持つ優れた意匠性を備えているとの効果を奏するものである。
【0007】
ところが、図13に示すバケットマットにあっては、製造に手間がかからず、形状保持性及び意匠性に優れるという利点を有してはいるものの、雨水や雪水が掛かって濡れる度毎に、取り外して乾燥させる必要があり、濡れたままに放置すれば、該敷物が細菌の温床となり、悪臭の発生原因ともなっていた。
【0008】
従来、このような事情を考慮した吸水量10g/g以上の高吸水性繊維からなる吸水性不織布層の少なくとも片面に伸度50%以上の伸縮性不織布層が積層され、部分的に一体化されたことを特徴とする敷物も提案されており(例えば特許文献2参照)、この敷物を上述したバケットマットに適用することも考えられる。ところが、この敷物にあっては、吸水量が飽和に達すると、吸水効果がなくなり取り替えなければならず、踏みつけられる等の圧力が加わると、吸水した水が逆戻りする現象が発生するといった問題があった。
【0009】
そこで提案されたのが、水を速やかに吸水して保持すると共に、一旦吸収した水を放出することができる機能を備えた敷物である。このような敷物としては、吸水性樹脂分散体(D)中のポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(P)とを反応させてなるウレタン樹脂からなるフロアーマット用バッキング材及びそれを用いたものであり、吸水性に優れ、多湿な環境によって引き起こされる不快感を防止できる効果を奏するものがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平07−137568号公報
【特許文献2】特開平6−57610号公報
【特許文献3】特開2000−325217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記マットは、吸放湿性、調湿性、吸水性に優れるバッキング材を用いたものであるが、該マットの表面層を構成するタフティングなどを施した繊維基材や織物には、吸水性や放湿性などの考慮がなされておらず、大量の雨水や雪水をマット内にとどめ置くことが求められるバケットマットには不向きであった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、大量の雨水や雪水をマット内にとどめ置くバケットマットに最適であり、しかも吸音性及び意匠性に優れており、尚かつ優れた吸放出性、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有するバケットマット及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1〜6に記載の発明は、熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に設けられ、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えており、前記繊維基材及び樹脂バッキングがバケット形状に熱成形されたバケットマットであって、
前記繊維基材及び樹脂バッキングに吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束が含まれていることを特徴とするバケットマットをその要旨とした。
【0014】
また、請求項7〜9に記載の発明は、熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に設けられ、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えており、前記繊維基材及び樹脂バッキングがバケット形状に熱成形されたバケットマットの製造方法であって、
吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を準備し、
次いで、前記親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を前記繊維基材及び樹脂バッキングに含有させ、
次いで、当該マットのバケット形状に対応する雄型と雌型とを備え、
前記雌型内面の底部には前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成するための針が設けられている成形型を準備し、
次いで、前記成形型の雌型を加熱すると共に該雌型内に前記樹脂バッキングを配置し、
次いで、前記雌型内に配置した樹脂バッキング上に繊維基材を積層し、
次いで、前記雄型で繊維基材側を押圧することで、前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキングを圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形することを特徴とするバケットマットの製造方法をその要旨とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバケットマット(以下、単にマットという)にあっては、繊維基材及び樹脂バッキングに吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束が含まれていることから、雨水や雪水で該マットが濡れた場合でも、速やかに吸水され、該マット表面の濡れは速やかに解消される。また、一旦吸水された水は効果的に放出され、取り替えなどを必要としない。
【0016】
また、本発明のマットにあっては、繊維基材及び樹脂バッキングにフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束が含まれていることから、上記吸排水性に加え、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果に優れる。
【0017】
また、本発明のマットにあっては、熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に設けられ、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えていることから、製造に手間がかからず、多数の貫通孔を通じて該マットの厚み方向に通気が確保されており、前記多数の貫通孔内を音が通過するときに効果的に吸音され、優れた吸音性が発揮されるようになっている。
【0018】
また、本発明のマットにあっては、樹脂バッキングにモノフィラメント束が所定間隔毎にタフティングされ、該樹脂バッキングの非圧着面側に前記モノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出している形態を採ることもできる。この場合、例えば自動車床面にカットパイルカーペットが敷設されていても、該マット裏面の樹脂バッキングの非圧着面側に突出するモノフィラメント束のカットされたループのカット端が、自動車床面を捉えて、該マットのズレを確実に防止するようになる。
【0019】
さらに、樹脂バッキングの多数の貫通孔毎にモノフィラメント束がタフティングされ、該樹脂バッキングの非圧着面側の前記多数の貫通孔から前記モノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出している形態とすることもできる。この場合、前述のズレ防止効果に加え、樹脂バッキングの多数の貫通孔内にモノフィラメント束が存在するので、前記多数の貫通孔内を音が通過するときに多数の貫通孔内のモノフィラメントと衝突を繰り返すことになり、より効果的な吸音がなされるようになる。
【0020】
また、本発明のマットにあっては、樹脂バッキングの非圧着面側にモノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出していると共にズレ防止用突起が突出している形態を採ることもできる。この場合、樹脂バッキングの非圧着面側に突出するモノフィラメント束のカットされたループのカット端とズレ防止用突起とが自動車床面を捉え、該マットのズレをより確実に防止するようになる。特にこの形態の場合、自動車床面に先端がカットされたパイルカーペットが敷設されていても、フェルトが敷設されていても、いずれの場合も確実に該マットのズレを防止することができるという利点がある。
【0021】
本発明のマットの製造方法にあっては、親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を前記繊維基材及び樹脂バッキングに含有させ、次いで、当該マットのバケット形状に対応する雄型と雌型とを備え、前記雌型内面の底部に前記バッキング層に多数の貫通孔を形成するための針が設けられている成形型を用いて、該成形型の雌型内に前記樹脂バッキング、繊維基材の順に配置し、前記雄型で繊維基材側を押圧することで、前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキングを圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形するようにしたことから、雨水や雪水をマット内にとどめ置くことができるバケットマットであって、吸音性及び意匠性に優れており、しかも優れた吸放出性、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有するバケットマットを簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のマットを示す斜視図。
【図2】本発明のマットを示す断面図。
【図3】本発明のマットの要部拡大断面図。
【図4】本発明のマットを構成する親水性吸排水繊維束と親水性消臭繊維束とを含む繊維基材を示す模式図。
【図5】図4に示す繊維基材に含まれる親水性吸排水繊維束を示す模式図。
【図6】図4に示す繊維基材に含まれる親水性消臭繊維束を示す模式図。
【図7】本発明のマットを構成する親水性吸排水消臭繊維束を含む繊維基材を示す模式図。
【図8】図7に示す繊維基材に含まれる親水性吸排水消臭繊維束を示す模式図。
【図9】本発明のマットの製造に使用する雄型と雌型とを備えた成形型を示す断面図。
【図10a】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、雌型を加熱する工程を示す断面図。
【図10b】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、雌型内に樹脂バッキングを配置する工程を示す断面図。
【図10c】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、雌型内の樹脂バッキング上に繊維基材を積層する工程を示す断面図。
【図10d】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、雄型で繊維基材側を押圧することで、前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキングを圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形する工程を示す断面図。
【図10e】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、成形型内の空気を吸引する工程を示す断面図。
【図10f】図9に示す成形型を用いて本発明のマットを製造する過程を示し、雌型を冷却する工程を示す断面図。
【図11】従来のバケットマットを示す斜視図。
【図12】従来の別のバケットマットを示す斜視図。
【図13】従来のさらに別のバケットマットを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のマット及びその製造方法を説明する。本発明のマットは、寒冷地用の自動車フロアマットとして多用されるものであり、バケット形状に熱成形されていて、雨や雪に濡れた靴のままで車内に踏み込んでも、雨水や雪水を該マット内にとどめ置くことができるものである。このマットは、図1〜図3に示すように、熱成形性繊維を含む繊維基材10又は20と、前記繊維基材10又は20の裏面側に設けられ、多数の貫通孔18を有する樹脂バッキング17とを備えており、前記繊維基材10又は20及び樹脂バッキング17に吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11A及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11B、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cが含まれていることを特徴とするものである。
【0024】
まず、図4〜図8に示す親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11Bを含有する繊維基材10、並びに親水性吸排水消臭繊維束11Cを含有する繊維基材20の好ましい形態について説明する。親水性吸排水繊維束11Aとしては、例えば図5に示すように、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0025】
吸排水性繊維12としては、親水性繊維の表面に吸排水性ポリマーをバインダーを介して付着させたもの、或いは親水性繊維の繊維内部に吸排水性ポリマーを含ませたものを挙げることができ、親水性繊維としては、例えば木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維を挙げることができる。
【0026】
吸排水性ポリマーとしては、特に限定されないが、取り扱い性が良好であり、かつ吸排水性の制御が容易であることから、吸水性に優れると共に一旦吸水した後、温度変化に伴って吸水率が変化して排水する機能を持つ感温吸排水性ポリマーが好ましい。感温吸排水性ポリマーとしては、感温点が10−45℃の温度領域にあるものがより好ましく、感温点が35℃のものがさらに好ましい。図5及び図8の例では、感温点が35℃の感温吸排水性ポリマーを吸排水性ポリマーとして用いた。
【0027】
このような感温吸排水性ポリマーとしては、イソプロピルアクリルアミド構造を含むポリマーの他に、アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト、アクリル酸ステアリンアクリレート共重合体などのポリマーを挙げることができる。
【0028】
鞘部を構成する繊維には、吸排水性繊維のベースとした親水性繊維と同じく、木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維などの親水性繊維を用いることができる。
【0029】
尚、親水性吸排水繊維束は、芯部を構成する吸排水性繊維の含有割合によっては、該吸排水性繊維中の感温吸排水性ポリマーが吸水により膨潤し、親水性吸排水繊維束自体の繊維強度を低下する恐れがあるが、吸水時の親水性吸排水繊維束の繊維強度の低下を抑えるため、繊維束中にポリエステルなどの熱接着性繊維を混入させても良い。
【0030】
親水性消臭繊維束11Bとしては、例えば図6に示すように、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維13を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0031】
消臭繊維としては、親水性繊維の表面にフタロシアニン化合物をバインダーを介して付着させたもの、或いは親水性繊維の繊維内部にフタロシアニン化合物を含ませたものを挙げることができ、親水性繊維としては、例えば木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維を挙げることができる。
【0032】
フタロシアニン化合物としては、下記化学式1で表されるものであり、式中のMは、鉄、マンガン、チタン、バナジウム、ニッケル、銅、タングステンから選択される金属である。
【化1】
【0033】
鞘部を構成する繊維には、吸排水性繊維のベースとした親水性繊維と同じく、木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維などの親水性繊維を用いることができる。
【0034】
親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束を含む繊維基材の好ましい形態としては、例えば図4に示すように、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを構成繊維とする不織布、織物、編物、紙などの形態を採ることができ、この繊維基材10を単独で使用するほかに、繊維基材10に不織布、織物、編物、紙、プラスチックネットなどの補強シートを積層し、部分接着あるいは絡合処理などにより一体化した複合体の形態を採ることもできる。
【0035】
繊維基材10のさらに好ましい形態としては、例えば吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを含み、さらに熱成形性繊維を含む繊維ウェブを形成し、この繊維ウェブを水流絡合やニードルパンチなどの絡合処理を行ない、さらに加熱処理をすることで得られる不織布からなるもの、或いは前記繊維ウェブの一方面側にプラスチックネットからなる補強シートを積層し、水流絡合やニードルパンチなどの絡合処理を行ない、さらに加熱処理をすることで得られる複合シートからなるものを挙げることができる。
【0036】
また繊維基材10は、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bの他に、例えばポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などを熱成形性繊維を含んでいる。このため、繊維基材10は、加熱により熱成形性繊維が軟化して成形性を示すと共にこれに圧力が加わることで、該繊維基材10がバケット形状に固定されるようになっているのである。
【0037】
次に、吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束について説明する。親水性吸排水消臭繊維束11Cとしては、例えば図8に示すように、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12とフタロシアニン化合物を含む消臭繊維13とを芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0038】
親水性吸排水消臭繊維束11Cにおける吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維13、親水性繊維14については、親水性吸排水繊維束11Aの芯部を構成する吸排水性繊維12、親水性消臭繊維束11Bの芯部を構成する消臭繊維13、親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11Bの鞘部を構成する親水性繊維と同じであるため、ここでの説明は割愛する。
【0039】
尚、親水性吸排水消臭繊維束11Cにおける吸排水性繊維12及び消臭繊維13の量は任意であり、本発明の敷物の用途や使用状態において、要求される吸排水性及び消臭性の大小に応じて適宜決定すると良い。
【0040】
親水性吸排水消臭繊維束を含む繊維基材20の好ましい形態としては、例えば図7に示すように、親水性吸排水消臭繊維束11Cを構成繊維とする不織布、織物、編物、紙などの形態を採ることができ、この繊維基材20を単独で使用するほかに、繊維基材20に不織布、織物、編物、紙、プラスチックネットなどの補強シートを積層し、部分接着あるいは絡合処理などにより一体化した複合体の形態を採ることもできる。
【0041】
上述した繊維基材10又は20は、例えば図1〜図3に示すように、パイル糸15を所定のボリュームとなるように打ち込んだ形態を採ることもできる。繊維基材10又は20に打ち込まれるパイル糸15には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系の合成繊維が好適に使用される。また、パイル糸15には、上述の親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を含ませることができる。図示の例では、パイル糸15には、親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11B又は親水性吸排水消臭繊維束11Cが含まれており、これを打ち込んだ繊維基材10又は20の表面層は、意匠性に優れると共に優れた吸放出性、消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有するものとなる。
【0042】
パイル糸15を打ち込んだ繊維基材10又は20裏面には、パイル糸の抜け止め層16を設けるのが望ましい。抜け止め層としては、蜘蛛の巣状の透孔性接着シートからなるものを挙げることができる。この透孔性接着シートには、接着時の熱およびまたは圧力で薄膜化されて成るもの、ホットメルト樹脂などの接着樹脂中に発泡剤を入れて混練、シート化したものなどを用いることができる。図3に示す例では、この透孔性接着シート16aをパイル糸15を打ち込んだ基布10又は20裏面に配置し熱プレスすることで、該透孔性接着シート16aが薄膜(フィルム)状となって基布10又は20内部に浸透し、パイル糸15の抜けを止めるようになっている。
【0043】
親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11B又は親水性吸排水消臭繊維束11Cを含む繊維基材10又は20にあっては、図3中矢印で示すように、該マット表面の水がパイル糸15間またはその構成繊維間を通してパイル糸15基部の繊維基材10又は20内まで浸透し、該繊維基材10又は20に含まれる吸排水性繊維12の吸排水性ポリマーに吸水されるようになっている。また、繊維基材10又は20には、上述したように吸排水性繊維12とともにフタロシアニン化合物を含む消臭繊維13が含まれていることから、吸排水性繊維12中の吸排水性ポリマーの吸水に伴って、これに隣り合う消臭繊維13中のフタロシアニン化合物も水と接触し、該フタロシアニン化合物の持つ消臭効果、さらには抗アレルゲン効果及び抗菌効果がより活性化され、効果的に敷物の消臭、抗アレルゲン及び抗菌がなされるようになっている。
【0044】
繊維基材10又は20中の吸水した吸排水性繊維12に含まれる吸排水性ポリマーは、所定の湿度又は温度となったとき(図示の場合感温点が35°Cの感温吸排水性ポリマーを吸排水性ポリマーとして用いたので、感温点35℃となったとき)、図3中点線で示すように一旦吸収した水を放出するようになっている。
【0045】
次に、親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を含有する樹脂バッキングの好ましい形態について説明する。樹脂バッキングは、該マットの補強および保形、すべり止めを行う目的で形成されるものである。図3に示す例において、樹脂バッキング17は連続気泡構造となっており、その裏面側にはズレ止め用の多数のスパイク19が形成されている。
【0046】
樹脂バッキングを構成する樹脂としては、例えばスチレンーブタンジエンースチレン共重合体、アクリルニトリルーブタジエン系共重合体、ウレタン樹脂等の高分子、スチレンーブタンジエンゴム、アクリルニトリルーブタンジエンゴム、ブタンジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴム高分子、またはこれらを複数種混合したものなどを例示することができる。また、上記樹脂には必要に応じて充填剤や増粘剤を加えてもよい。
【0047】
充填剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アンチモンなどが例示できる。増粘剤としては、例えばポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、ポリビニルアルコール、カゼイン、発酵多糖類などが挙げられるが、好ましくは低分子量のポリアクリル酸ソーダである。
【0048】
また、樹脂バッキング17は、表裏に貫通する多数の貫通孔18を有している。これら多数の貫通孔18を通して該マットの繊維基材10又は20に空気が出入りするようになっており、この結果、優れた吸音性をもたらすようになっている。
【0049】
また樹脂バッキング17には、図3に示すように上述の親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11B又は親水性吸排水消臭繊維束11Cが含まれている。樹脂バッキング17が親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11B、又は親水性吸排水消臭繊維束11Cを含有する形態としては、樹脂バッキング17を構成する樹脂中に親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11B、又は親水性吸排水消臭繊維束11Cを分散させ、独立気泡構造となるように発泡成形することで、繊維束11A、11B又は11Cと水分との接触効率を高めたものを挙げることができる。この場合、分散剤としては、例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダなどを例示できる。発泡剤としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、Nーオクタデシルスルホコハク酸モノアミドジナトリウムなどを挙げることができる。
【0050】
樹脂バッキング17に上述の親水性吸排水繊維束11A又は親水性吸排水消臭繊維束11Cが含まれていることから、表裏に貫通する多数の貫通孔18を通して、また発泡成形により形成された連続気泡構造(図示しない)を通して、該マットの水分が吸水されるようになっている。また、繊維基材10又は20の多数の貫通孔18及び連続気泡構造(図示しない)を通して空気が出入りする過程で、繊維基材10又は20に含まれる吸排水性繊維12中の吸排水性ポリマーに一旦吸収された水の放出が促されるようになっている。また、樹脂バッキング17中の親水性消臭繊維束11B又は親水性吸排水消臭繊維束11Cによって、該マットの表裏に渡って優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果が発揮されるようになっている。
【0051】
また、図1〜図3に示す形態では、樹脂バッキング17は多数の貫通孔18毎にモノフィラメント束21がタフティングされ、該樹脂バッキング17の非圧着面側の多数の貫通孔18内から前記モノフィラメント束21のカットされたループのカット端21aが突出している。このため、例えば自動車床面にカットパイルカーペットが敷設されていても、該マット30裏面の樹脂バッキング17の非圧着面側に突出するモノフィラメント束21のカットされたループのカット端21aが、自動車床面を捉えて、該マット30のズレを確実に防止するようになる。また、このような形態とすることで、樹脂バッキング17の多数の貫通孔18内を音が通過するときに、モノフィラメント束21と衝突を繰り返すことになり、貫通孔18による吸音効果と相俟ってより効果的な吸音がなされるようになっている。
【0052】
尚、フィラメント束21は、樹脂バッキング17の多数の貫通孔18毎にタフティングする場合の他、貫通孔18とは関係なく樹脂バッキング17の非圧着面側に所定間隔毎にタフティングして、該樹脂バッキング17の非圧着面側に前記モノフィラメント束21のカットされたループのカット端21aが突出している形態として、マット30のズレを防止するようにしてもよい。
【0053】
また図3に示す形態では、樹脂バッキング17の非圧着面側にはモノフィラメント束21のカットされたループのカット端21a突出していると共にズレ防止用突起19が突出しており、これらモノフィラメント束21のカット端21aとズレ防止用突起19とが自動車床面を捉え、該マット30のズレをより確実に防止するようになっている。特にこの形態の場合、自動車床面に先端がカットパイルカーペットが敷設されていても、フェルトが敷設されていても、いずれの場合も確実に該マットのズレを防止することができるという利点がある。
【0054】
樹脂バッキング17にタフティングされるモノフィラメント束21を構成するモノフィラメントとしては、ナイロンモノフィラメントやポリエステルモノフィラメントが好ましく、200〜400デニールの太さに束ねたものが好ましい。
【0055】
また、図1〜図3に示すように樹脂バッキング17にモノフィラメント束21をタフティングして、該樹脂バッキング17の非圧着面側にモノフィラメント束21のカットされたループのカット端21aを突出させる場合、加工時にタフティングされたモノフィラメント束21が樹脂バッキング17から抜け落ちるのを防止するため、樹脂バッキング17の圧着面側には抜け止め層16bを設けるのが望ましい。
【0056】
モノフィラメント束21の抜け止め層としては、蜘蛛の巣状の透孔性接着シートからなるものを挙げることができる。この透孔性接着シートには、接着時の熱およびまたは圧力で薄膜化されて成るもの、ホットメルト樹脂などの接着樹脂中に発泡剤を入れて混練、シート化したものなどを用いることができる。図3に示す例では、この透孔性接着シート16bを樹脂バッキング17の圧着面側に配置し熱プレスすることで、該透孔性接着シート16bが薄膜(フィルム)状となってモノフィラメント束21の抜けを止めるようになっている。また、薄膜(フィルム)状となった透孔性接着シート16bは、同時にモノフィラメント束21の根本を固める役割をすることから、これにより該モノフィラメント束21の樹脂バッキング17の非圧着面側に突出するカット端21aに腰が強くなり、該マットのズレ防止効果はより高まるようになる。
【0057】
尚、図1〜図3に示すマット30にあっては、繊維基材10又は20と樹脂バッキング17との間に撥水層22が介在されており、該マット30の繊維基材10又は20側からの水が樹脂バッキング17側へと透過し難くなっている。撥水層22を透過して樹脂バッキング17側へと浸透した水は、樹脂バッキング17で吸水され、自動車床面のカーペットを濡らさないようになっている。
【0058】
次に、上記構成を有するマットの製造方法(以下、単に方法という)について説明する。本発明の方法は、熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に設けられ、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えており、前記繊維基材及び樹脂バッキングがバケット形状に熱成形されたバケットマットを製造する方法に関し、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を準備し、
次いで、前記親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を前記繊維基材及び樹脂バッキングに含有させ、
次いで、当該マットのバケット形状に対応する雄型と雌型とを備え、
前記雌型内面の底部には前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成するための針が設けられている成形型を準備し、
次いで、前記成形型の雌型を加熱すると共に該雌型内に前記樹脂バッキングを配置し、
次いで、前記雌型内に配置した樹脂バッキング上に繊維基材を積層し、
次いで、前記雄型で繊維基材側を押圧することで、前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキングを圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形することを特徴とするものである。
【0059】
尚、本発明の方法を説明するに当たり、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を準備し、前記親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を前記繊維基材及び樹脂バッキングに含有させる工程は、本明細書の段落0024〜段落0050において詳述したので、ここでの説明は割愛する。
【0060】
本発明の方法では、図9に示すように、当該マットのバケット形状に対応する雄型32と雌型33とを備える成形型31を用いている。この成形型31の雌型33内面の底部には樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成するための針34が設けられている。また、成形型31の雌型33には、ズレ防止用突起を形成するための多数の空気抜き孔35が設けられている。
【0061】
この成形型は、レール上を移動可能に設けられており、その移動経路には、雌型を加熱する加熱ゾーン、成形型内の空気を脱気する脱気ゾーン、雌型を冷却する冷却ゾーン、製造後のマットを取り出す取り外しゾーンが設けられており、各ゾーンにおけるマットの製造工程を図10a〜図10fに示した。以下、図10a〜図10fに従って本発明の方法を説明する。
【0062】
まず、図10a〜図10dに示す工程を説明する。図10a〜図10dに示す工程は加熱ゾーンにおいて行われるようになっている。図10aは、雌型33を雌型33下部に配置したバーナー36で加熱する工程を示している。雌型33内には、図10bに示すように樹脂バッキング17が配置されるようになっている。雌型33内に配置される樹脂バッキング17は、予めシート状に樹脂成形され、所定の大きさに裁断されたものであり、後の工程で行う繊維基材10又は20への圧着に備えて半ゲル化させる必要がある。このため、図10aに示す工程では、予め雌型33を加熱しておくのである。
【0063】
次いで、図10bに示すように、加熱された雌型33内に樹脂バッキング17を配置し、さらに図10cに示すように、樹脂バッキング17上に繊維基材10又は20を積層するのである。
【0064】
次いで、図10dに示すように、雄型32を雌型33方向に下降させ、雄型32で繊維基材10又は20側を押圧するのである。これにより、樹脂バッキング17は雌型33と接触することで加熱されて半ゲル化し、同時に樹脂バッキング17には雌型33内面の底部に設けた針34によって多数の貫通孔18が形成される。また、同時に雌型33からの熱と雄型32から押圧力とによって、半ゲル化した樹脂バッキング17の一部が繊維基材10又は20へと浸透し、これら樹脂バッキング17と繊維基材10又は20とが圧着されるのである。
【0065】
次いで、成形型31は、脱気ゾーンへと移動し、図10eに示す工程が行われる。図10eに示す工程では、雌型33の下側に真空ポンプと繋がる脱気装置37が配置され、この脱気装置37によって雌型33に設けた空気抜き孔35を通して成形型31内の空気が真空引きされるようになっている。この結果、雌型33内の半ゲル化した樹脂バッキング17が空気抜き孔35を通して伝わる真空圧で該空気抜き孔35内に吸い込まれ、該樹脂バッキング17の非圧着面側に多数のズレ防止用突起19が形成されるのである。
【0066】
次いで、成形型31は、冷却ゾーンへと移動し、図10fに示す工程が行われる。図10fに示す工程では、雌型33の下側にシャワー38が配置され、雌型33を介して雌型33内の樹脂バッキング17が冷やされ、この結果、半ゲル化し繊維基材10又は20へと浸透した樹脂バッキング17の一部が固化し、雌型33内面の底部に設けた針34によって形成された多数の貫通孔18の形状が固定され、さらに真空圧で該空気抜き孔35内に吸い込まれて形成された多数のズレ防止用突起19の形状が固定されるのである。
【0067】
次いで、成形型は、取り外しゾーンへと移動して、完成したマットが成形型内から取り出されるのである。
【0068】
尚、本発明のマット及び方法は、上述した例に限定されるものではなく、例えば静電気を空中放電させる放電紙やカーボン繊維、金属繊維などの導電性繊維など含ませることで、人がマットに触れたとき、瞬時に静電気を除去する静電気除去性能を付与するなど、特許請求の範囲に記載の範囲で自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0069】
10又は20・・・基布
11A・・・親水性吸排水繊維束
11B・・・親水性消臭繊維束
11C・・・親水性吸排水消臭繊維束
12・・・吸排水性繊維
13・・・消臭繊維
14・・・親水性繊維
15・・・パイル糸
17・・・樹脂バッキング
18・・・貫通孔
21・・・モノフィラメント束
21a・・・カット端
31・・・成形型
32・・・雄型
33・・・雌型
34・・・針
35・・・空気抜き孔
36・・・バーナー
37・・・脱気装置
38・・・シャワー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に圧着され、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えており、前記繊維基材及び樹脂バッキングがバケット形状に熱成形されたバケットマットであって、
前記繊維基材及び樹脂バッキングに吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束が含まれていることを特徴とするバケットマット。
【請求項2】
吸排水性ポリマーが感温吸排水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のバケットマット。
【請求項3】
吸排水性ポリマーの感温点が10−45℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバケットマット。
【請求項4】
樹脂バッキングにはモノフィラメント束が所定間隔毎にタフティングされ、該樹脂バッキングの非圧着面側に前記モノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバケットマット。
【請求項5】
樹脂バッキングの多数の貫通孔毎にモノフィラメント束がタフティングされ、該樹脂バッキングの非圧着面側の前記多数の貫通孔から前記モノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバケットマット。
【請求項6】
樹脂バッキングの非圧着面側にはモノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出していると共にズレ防止用突起が突出していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバケットマット。
【請求項7】
熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に設けられ、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えており、前記繊維基材及び樹脂バッキングがバケット形状に熱成形されたバケットマットの製造方法であって、
吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を準備し、
次いで、前記親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を前記繊維基材及び樹脂バッキングに含有させ、
次いで、当該マットのバケット形状に対応する雄型と雌型とを備え、
前記雌型内面の底部には前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成するための針が設けられている成形型を準備し、
次いで、前記成形型の雌型を加熱すると共に該雌型内に前記樹脂バッキングを配置し、
次いで、前記雌型内に配置した樹脂バッキング上に繊維基材を積層し、
次いで、前記雄型で繊維基材側を押圧することで、前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキングを圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形することを特徴とするバケットマットの製造方法。
【請求項8】
樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキング層を圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形した後、雌型を冷却することを特徴とする請求項7に記載のバケットマットの製造方法。
【請求項9】
雌型には、ズレ防止用突起を形成するための多数の空気抜き孔が設けられており、雄型で繊維基材側を押圧するときに前記空気抜き孔を通して成形型内の空気を真空引きすることで、樹脂バッキングの非圧着面側に多数のズレ防止用突起を形成することを特徴とする請求項7又は8に記載のバケットマットの製造方法。
【請求項1】
熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に圧着され、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えており、前記繊維基材及び樹脂バッキングがバケット形状に熱成形されたバケットマットであって、
前記繊維基材及び樹脂バッキングに吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束が含まれていることを特徴とするバケットマット。
【請求項2】
吸排水性ポリマーが感温吸排水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のバケットマット。
【請求項3】
吸排水性ポリマーの感温点が10−45℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバケットマット。
【請求項4】
樹脂バッキングにはモノフィラメント束が所定間隔毎にタフティングされ、該樹脂バッキングの非圧着面側に前記モノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバケットマット。
【請求項5】
樹脂バッキングの多数の貫通孔毎にモノフィラメント束がタフティングされ、該樹脂バッキングの非圧着面側の前記多数の貫通孔から前記モノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバケットマット。
【請求項6】
樹脂バッキングの非圧着面側にはモノフィラメント束のカットされたループのカット端が突出していると共にズレ防止用突起が突出していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバケットマット。
【請求項7】
熱成形性繊維を含む繊維基材と、前記繊維基材の裏面側に設けられ、多数の貫通孔を有する樹脂バッキングとを備えており、前記繊維基材及び樹脂バッキングがバケット形状に熱成形されたバケットマットの製造方法であって、
吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束及びフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束、又は吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を準備し、
次いで、前記親水性吸排水繊維束及び親水性消臭繊維束、又は親水性吸排水消臭繊維束を前記繊維基材及び樹脂バッキングに含有させ、
次いで、当該マットのバケット形状に対応する雄型と雌型とを備え、
前記雌型内面の底部には前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成するための針が設けられている成形型を準備し、
次いで、前記成形型の雌型を加熱すると共に該雌型内に前記樹脂バッキングを配置し、
次いで、前記雌型内に配置した樹脂バッキング上に繊維基材を積層し、
次いで、前記雄型で繊維基材側を押圧することで、前記樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキングを圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形することを特徴とするバケットマットの製造方法。
【請求項8】
樹脂バッキングに多数の貫通孔を形成し、同時に前記繊維基材の裏面側に樹脂バッキング層を圧着する共にこれら繊維基材及び樹脂バッキングをバケット形状に熱成形した後、雌型を冷却することを特徴とする請求項7に記載のバケットマットの製造方法。
【請求項9】
雌型には、ズレ防止用突起を形成するための多数の空気抜き孔が設けられており、雄型で繊維基材側を押圧するときに前記空気抜き孔を通して成形型内の空気を真空引きすることで、樹脂バッキングの非圧着面側に多数のズレ防止用突起を形成することを特徴とする請求項7又は8に記載のバケットマットの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図10e】
【図10f】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図10e】
【図10f】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−25183(P2012−25183A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162610(P2010−162610)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】
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