説明

バスバーの接合構造および接合方法

【課題】 バスバーの端部を回路基板の被接合部位に強固に、かつウィスカが生じないように半田付けする。
【解決手段】 回路基板1上に間隔をおいて配設されるバスバー3の端部に、回路基板1の被接合部位2に対して面接触しうる接合部32が折り曲げにより形成され、その折り曲げ個所Aに、接合部32とそれよりも基端側の部分(脚部31)との間の曲がり角度を一定の角度に保持する補強部33が一体に形成されており、接合部32が被接合部位2に面接触した状態で半田付けされる。接合部32の先端縁は、角の無い形状とすることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板上に間隔をおいて配設されるバスバーを上記回路基板に接合する構造、およびその接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動油圧パワーステアリングに備える電動油圧ユニットでは、電動モータとオイルポンプとの対面部間に、制御部ハウジングが設けられていて、この制御部ハウジングの内部に、電動モータの駆動を制御する駆動回路もしくは制御回路の回路基板が設けられるとともに、上記の回路基板と間隔をおいて、バッテリーから電動モータに至る電源ラインを形成するバスバーが、絶縁性の支持フレームに支持された状態で配設されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記のように、回路基板上に間隔をおいてバスバーが配設されているものでは、バスバーを回路基板の所要の部位に接続する場合、バスバーの端部を回路基板のスルーホールに挿入して接続するほかに、バスバーの端部に回路基板側に延出する脚部を形成し、さらにこの脚部の先端を折曲して接合部を形成し、この接合部を回路基板の被接合部位に面接触させた状態で半田付けすることが行われている。これは、接合部と被接合部位との接触面積が大になって、接合強度が大きくなるほか、バスバーでの大電流による発生熱を回路基板側に放熱するのに役立つからである(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−334616号公報
【特許文献2】特開2007−124862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バスバーの脚部を折曲して接合部を形成し、この接合部を被接合部位に半田付けする場合、接合部は、被接合部位に全面的に面接触していることが望ましいが、曲げ加工により形成した接合部では、スプリングバックにより脚部に対して正確に直角にはなりにくく、また、接合部と脚部との曲がり角度が90度より小さな角度になると、接合部を被接合部位に当接させた場合、接合部の先端が浮いた状態となって被接合部位との間に隙間ができ、強固な半田付けができないという問題がある。
【0005】
そのため、従来は、図4に示すように、接合部22は脚部21に対して90度よりやや大きい鈍角に曲げ加工しておいて、この接合部22の先端をまず回路基板23の導電パターン等の被接合部位24に当接させ、この接合部22が被接合部位24に面接触するよう、バスバー20を回路基板23側に押し付け、その状態で半田付けを行うようにしていた。
【0006】
しかしながら、上記の方法では、バスバー20に加える力が、バスバー20各部の柔軟性のために接合部22に有効に作用するとは限らず、接合部22と被接合部位24との間に隙間が残り、そのため、強固に半田付けできないことがあった。
【0007】
また、その半田付け個所では、脚部21と接合部22との折り曲げ個所等に内部応力が生じる。この内部応力は、鉛を含まない、いわゆる鉛フリーの半田付けでは、ウィスカの発生を促進することになるので、好ましくない。
【0008】
本発明は、上記のようなバスバーの接合部の半田付け個所における問題に鑑み、面接触により強固に半田付けが行えるようにするとともに、応力集中を緩和し、ウィスカの発生のような不具合が生じないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、回路基板上に間隔をおいて配設されるバスバーを上記回路基板の被接合部位に半田付けにより接合する構造であって、バスバーの端部に、上記被接合部位に対して面接触しうる接合部が折り曲げにより形成されるとともに、その折り曲げ個所に、上記接合部とそれよりも基端側の部分との間の曲がり角度を一定の角度に保持する補強部が一体に形成され、上記接合部が上記被接合部位に面接触した状態で半田付けされることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の第2は、回路基板上に間隔をおいて配設されるバスバーを上記回路基板の被接合部位に半田付けにより接合する方法であって、バスバーの端部には、予め上記被接合部位に面接触しうる接合部を折り曲げにより形成するとともに、その折り曲げ個所に、上記接合部とそれよりも基端側の部分との間の曲がり角度を一定の角度に保持する補強部を形成しておき、上記接合部を、上記被接合部位と平行となる姿勢で上記被接合部位に接触させ、上記接合部が上記被接合部位に面接触した状態で半田付けを行うことを特徴とするものである。
【0011】
上記構成によれば、バスバーにおいて、接合部とそれよりも基端側の部分との間の曲がり角度は、補強部により一定に保たれる。そのため、接合部を、被接合部位と平行となる姿勢に保って被接合部位に近接させ接触させることができ、このように接触させることで、接合部の全面を被接合部位に面接触させることができる。そのため、接合部と被接合部位との間に隙間がない状態で半田付けを行うことができ、大きな接合強度が得られる。
【0012】
また、この場合、従来のように、接合部を被接合部位に強く押し付ける必要がないから、内部応力がほとんど発生せず、したがって、ウィスカの発生を抑制もしくは防止しうる。
【0013】
上記の構成において、上記補強部は、上記折り曲げ個所の幅方向左右の側縁部分を上記折り曲げ個所の内側に折曲して三角形の斜板状に成形したものであり、上記折り曲げ個所の幅方向両側にそれぞれ設けられていることが望ましい。また、上記接合部の先端縁は、角の無い形状とされていることが望ましい。
【0014】
今もし、半田付け個所で、接合部と被接合部位との接触面の形状が、90度もしくは鋭角の角部を有する形状であると、その角部に内部応力が集中するおそれがあるが、上記したように、折り曲げ個所の幅方向両側に補強部があると、接合部と被接合部位との接触面の形状は、折り曲げ個所の側では、直角の角部が取れた形となり、内部応力が集中しにくくなり、ウィスカの発生が抑制もしくは防止される。
【0015】
また、上記したように、接合部の先端縁が角の無い形状とされていると、接合部の先端側でも、内部応力の集中がなく、ウィスカの発生が抑制もしくは防止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接合部と被接合部位との全面的な面接触により強固な半田付けができるとともに、半田付け個所での内部応力の集中が緩和され、ウィスカの発生を抑制もしくは防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の最良の実施の形態を、図1および図2を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るバスバーの接合構造の斜視図、図2は、同バスバーの接合構造の側面図で、いずれも半田付け前の状態を示している。
【0018】
図1および図2において、符号1は回路基板、2は、回路基板1上の被接合部位としての導体パターン、3はバスバー、4は、このバスバー3を支持する絶縁性の支持フレームである。
【0019】
回路基板1上には、間隔をおいてバスバー3が、支持フレーム4に支持された状態で配設されている。
【0020】
バスバー3の支持フレーム4から突出している端部には、回路基板1の側へ延出する脚部31が形成され、さらに、この脚部31の先端を、脚部31に対して所定角度(図示の例では90度)折り曲げることで、回路基板1の導体パターンへ2の接合部32が形成されている。
【0021】
接合部32の脚部31に対する折り曲げ個所Aには、補強部33が設けられている。該補強部33は、接合部32とそれよりも基端側の部分である脚部31との間の曲がり角度を一定の角度(具体的には90度)に保持するためのものである。本実施形態では、補強部33は、折り曲げ個所Aの幅方向左右の側縁部分を折り曲げ個所Aの内側へ、側縁に近い部分ほどより内側になるよう折曲して、三角形の斜板状に成形したものであり、折り曲げ個所Aの幅方向両側にそれぞれ設けられている。
【0022】
また、接合部32の先端縁の幅方向左右両側部分は、角を有しないよう、円弧状に形成されている。図1において、符号32aは、接合部32の先端の円弧状部分を示している。
【0023】
バスバー3は、上記のように構成されたものであり、次に、図2を参照して、バスバー3の接合部32を回路基板1の導体パターン2に半田付けにより接合する方法を説明する。
【0024】
半田付けに際しては、バスバー3を、その接合部32が導体パターン2と平行となる姿勢に保って回路基板1側に移動させることで、接合部32を導体パターン2に近接させ接触させる。この場合、バスバー3においては、接合部32と脚部31との間の曲がり角度は、補強部33により一定に保たれ、スプリングバック等で曲がり角度が変化するようなことがないので、回路基板1に対してバスバー3の姿勢を調整することにより、接合部32を導体パターン2と平行にすることができる。
【0025】
接合部32は、導体パターン2と平行の姿勢のままで導体パターン2に接触することで、接合部32と導体パターン2とは全面的に面接触することになる。そして、この状態で半付けを行うことで、接合部32は導体パターン2に隙間のない状態で強固に半田付けされる。
【0026】
この場合、従来の接合方法のように、脚部31に対する接合部32の曲がり角度を変えるような力は加えられていないから、半田付け個所ではほとんど内部応力は生じない。また、半田付け個所では、接合部32と導体パターンとの接触面Bは、図1に明示するように、その形状が90度もしくは鋭角の角部を有しない形状になっている。すなわち、折り曲げ個所Aの側では、補強部33のために、直角の角部が取れた形となっており、接合部32の先端側では、円弧状部分32aにより角の無い形状となっている。このように、接合部32と導体パターン2との接触面Bが、鋭い角部を有しない形状になっているので、内部応力が集中する個所がなく、これにより、ウィスカの発生が抑制もしくは防止される。
【0027】
なお、図1および図2では、補強部33として、折り曲げ個所Aの幅方向左右の側縁部分を三角形の斜板状に成形したものを示したが、補強部は、接合部32とそれよりも基端側の部分(脚部31)との間の曲がり角度を一定の角度に保持しうるものであれば、上記の形状に限定されず、例えば、図3に示すような形状としてもよい。
【0028】
図3は本発明の他の実施の形態のバスバーの斜視図であって、この実施の形態では、バスバー3の脚部31と接合部32との折り曲げ個所Aにおいて、その幅方向中間部分を、折り曲げ個所Aの外側から押し込んで内側に隆起させることで、斜めのリブ状の補強部34が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係るバスバーの接合構造の斜視図で、半田付け前の状態を示している。
【図2】上記バスバーの接合構造の側面図で、半田付け前の状態を示している。
【図3】本発明の他の実施の形態のバスバーの斜視図。
【図4】従来のバスバーの接合構造の側面図で、半田付け前の状態を示している。
【符号の説明】
【0030】
1 回路基板
2 導体パターン(被接合部位)
3 バスバー
31 脚部
32 接合部
33 補強部
4 支持フレーム
A 折り曲げ個所
B 接触面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に間隔をおいて配設されるバスバーを上記回路基板の被接合部位に半田付けにより接合する構造であって、
バスバーの端部に、上記被接合部位に対して面接触しうる接合部が折り曲げにより形成されるとともに、その折り曲げ個所に、上記接合部とそれよりも基端側の部分との間の曲がり角度を一定の角度に保持する補強部が一体に形成され、上記接合部が上記被接合部位に面接触した状態で半田付けされることを特徴とするバスバーの接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載のバスバーの接合構造において、
上記補強部は、上記折り曲げ個所の幅方向左右の側縁部分を上記折り曲げ個所の内側に折曲して三角形の斜板状に成形したものであり、上記折り曲げ個所の幅方向両側にそれぞれ設けられていることを特徴とするバスバーの接合構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバスバーの接合構造において、
上記接合部の先端縁は、角の無い形状とされていることを特徴とするバスバーの接合構造。
【請求項4】
回路基板上に間隔をおいて配設されるバスバーを上記回路基板の被接合部位に半田付けにより接合する方法であって、
バスバーの端部には、予め上記被接合部位に面接触しうる接合部を折り曲げにより形成するとともに、その折り曲げ個所に、上記接合部とそれよりも基端側の部分との間の曲がり角度を一定の角度に保持する補強部を形成しておき、
上記接合部を、上記被接合部位と平行となる姿勢で上記被接合部位に接触させ、上記接合部が上記被接合部位に面接触した状態で半田付けを行うことを特徴とするバスバーの接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−80574(P2010−80574A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245374(P2008−245374)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】