バスバーモジュール及び電力変換装置
【課題】より軽量化できるバスバーモジュールと、該バスバーモジュールを用いた電力変換装置を提供する。
【解決手段】バスバーモジュール1は、導体からなる複数のバスバー2と、複数のバスバー2の一部を封止してこれらを一体化する封止部材3とからなる。バスバー2は、封止部材3に封止された被封止部22と、被封止部22から延出し封止部材3から露出した露出部20と、パワー端子に接続される端子接続部21とを備える。露出部20の延出方向(Y方向)と封止部材3の長手方向(X方向)とは直交している。被封止部3は屈曲形成され、被封止部22の一部222は、X方向に延びている。封止部材3は、複数の被封止部22がY方向に重ならないように、複数のバスバー2を封止している。
【解決手段】バスバーモジュール1は、導体からなる複数のバスバー2と、複数のバスバー2の一部を封止してこれらを一体化する封止部材3とからなる。バスバー2は、封止部材3に封止された被封止部22と、被封止部22から延出し封止部材3から露出した露出部20と、パワー端子に接続される端子接続部21とを備える。露出部20の延出方向(Y方向)と封止部材3の長手方向(X方向)とは直交している。被封止部3は屈曲形成され、被封止部22の一部222は、X方向に延びている。封止部材3は、複数の被封止部22がY方向に重ならないように、複数のバスバー2を封止している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールのパワー端子に接続するためのバスバーモジュールと、該バスバーモジュールを用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば電力変換装置に用いられる複数の半導体モジュールを電気的に接続するための部品として、複数のバスバーと、該バスバーの一部を封止する封止部材とを備えたバスバーモジュールが知られている(下記特許文献1、2参照)。
【0003】
図12に、従来のバスバーモジュール9の例を示す。このバスバーモジュール9は、複数の半導体モジュール95を有するインバータ90(電力変換装置)に用いられる。バスバーモジュール9は、複数のバスバー92と、該複数のバスバー92を封止する樹脂製の封止部材93を備える。
【0004】
バスバー92は、封止部材93に封止された被封止部922と、被封止部922から延出し封止部材93から露出した露出部920と、該露出部920に形成された端子接続部921と、外部機器に接続するための外部接続部923とを備える。端子接続部921は、半導体モジュール95のパワー端子951に接続している。外部接続部923は、インバータ90の出力端子(U相、V相、W相)として利用され、交流負荷(図示しない)に接続される。
【0005】
複数の露出部920は互いに平行に配置されている。露出部920の延出方向(Y方向)と、封止部材93の長手方向(X方向)とは直交している。
【0006】
被封止部922は折り曲げ形成されている。そして、この折り曲げられた複数の被封止部922がY方向に重なっている。このように複数の被封止部922をY方向に重ねることにより、被封止部922間の間隔を狭くし、被封止部922に付く寄生インダクタンスを小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−115061号公報
【特許文献2】特開2008−259398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のバスバーモジュール92は、複数のバスバー92がY方向に重なっているため、封止部材93のY方向における厚さWが厚くなり、バスバーモジュール92の重量が大きくなりやすいという問題があった。そのため、より軽量化できるバスバーモジュールが望まれていた。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、より軽量化できるバスバーモジュールと、該バスバーモジュールを用いた電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、半導体素子を内蔵した半導体モジュールのパワー端子に電気的に接続するためのバスバーモジュールであって、
該バスバーモジュールは、導体からなる複数のバスバーと、該バスバーの一部を封止してこれらを一体化する封止部材とからなり、
上記バスバーは、上記封止部材に封止された被封止部と、該被封止部から延出し上記封止部材から露出した露出部と、該露出部に形成され、上記パワー端子に接続される端子接続部と、外部機器に接続するための外部接続部とを備え、
上記複数の露出部はそれぞれ同一方向に延出しており、該露出部の延出方向と上記封止部材の長手方向とは直交し、
上記被封止部は屈曲形成され、該被封止部の一部は、上記長手方向に延びており、
上記封止部材は、上記複数の被封止部が上記延出方向に重ならないように、上記複数のバスバーを封止するよう構成されていることを特徴とするバスバーモジュールにある(請求項1)。
【0011】
また、本発明の他の態様は、上記バスバーモジュールを用いた電力変換装置であって、
複数の上記半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷媒が流れる複数の冷媒流路とを積層した積層体と、
該積層体をその内側に固定するフレームとを備え、
上記封止部材は、上記フレームに固定されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
上記バスバーモジュールの上記封止部材は、上記複数の被封止部が上記延出方向(上記露出部の延出方向)に重ならないように、上記複数のバスバーを封止している。
このようにすると、封止部材の上記延出方向における長さを短くすることができる。そのため、封止部材を構成する材料(樹脂等)の使用量を低減でき、封止部材を軽くすることが可能になる。これにより、バスバーモジュールを軽量化することが可能になる。
【0013】
また、上記電力変換装置は、上記バスバーモジュールを用いているため、電力変換装置全体の重量を軽くすることができる。さらに、上記電力変換装置は、封止部材を上記フレームに固定しているため、バスバーモジュールをしっかりと固定できる。そのため、外部から振動等が伝わっても、バスバーモジュールがぐらつきにくくなる。
【0014】
以上のごとく、本発明によれば、より軽量化できるバスバーモジュールと、該バスバーモジュールを用いた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、バスバーモジュールの平面図。
【図2】実施例1における、積層体およびフレームの平面図。
【図3】図2に示す積層体に、バスバーモジュールを取り付けた図。
【図4】図3に示す積層体に、高電圧バスバーを取り付けた図。
【図5】図4に示す積層体に、接地バスバーを取り付けた図。
【図6】図5のC−C断面図。
【図7】図1のA−A断面図。
【図8】図1のB拡大矢視図。
【図9】実施例1における、被封止部の透視斜視図。
【図10】実施例1における、電力変換装置の回路図。
【図11】実施例1における、冷媒流路と半導体モジュールとを一体化した例。
【図12】従来例における、バスバーモジュールの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記バスバーモジュールにおいて、上記封止部材には、互いに反対側から凹んだ一対の凹部が形成され、該一対の凹部の間に介在する薄肉部と、該薄肉部の両端に設けられた側壁部とによって、上記長手方向に直交する平面における断面形状がH字状を呈するH状部が形成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、封止部材に上記凹部が形成されているため、封止部材を構成する材料の使用量をさらに低減することができ、封止部材を軽量化することができる。また、上記H状部を形成すると、材料の使用量を減らしつつ、封止部材の剛性を一定以上に維持することができる。すなわち、H状部における上記薄肉部と上記側壁部とは直交しているため、薄肉部が撓みやすい方向(薄肉部の法線方向)には側壁部が撓みにくく、側壁部が撓みやすい方向(側壁部の法線方向)には薄肉部が撓みにくくなる。このように、薄肉部と側壁部とで、撓みやすい方向を補強しあっているため、全体の剛性を高めることが可能になる。
【0017】
また、上記外部接続部にリアクトルが接続されることが好ましい(請求項3)。
複数の上記被封止部を上記延出方向に重ねないと、被封止部に付く寄生インダクタンスが大きくなりやすいが、外部接続部にリアクトルを接続する場合には、リアクトルのインダクタンスの方が寄生インダクタンスよりも遥かに大きいため、寄生インダクタンスの、電気回路に与える影響を小さくすることができる。
【0018】
また、上記封止部材に平行配置された補助封止部材を備え、該補助封止部材は、上記バスバーの、上記延出方向における上記被封止部を形成した側とは反対側の端部を封止しており、上記封止部材と上記補助封止部材とが別体に形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、封止部材と上記補助封止部材とによってバスバーを封止できるため、バスバーをしっかりと保持することが可能になる。また、封止部材と補助封止部材とが別体に形成されており、これらの間を繋ぐ部分が存在しないため、バスバーモジュールを軽量化することができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
上記バスバーモジュール及び電力変換装置に係る実施例について、図1〜図11を用いて説明する。
図3に示すごとく、本例のバスバーモジュール1は、半導体素子を内蔵した半導体モジュール5のパワー端子51に電気的に接続するために用いられる。図1に示すごとく、バスバーモジュール1は、導体からなる複数のバスバー2と、複数のバスバー2の一部を封止してこれらを一体化する封止部材3とからなる。
バスバー2は、封止部材3に封止された被封止部22と、被封止部22から延出し封止部材3から露出した露出部20と、露出部20に形成され、パワー端子51(図3参照)に接続される端子接続部21と、外部機器に接続するための外部接続部23とを備える。
【0020】
複数の露出部20はそれぞれ同一方向に延出している。露出部20の延出方向(Y方向)と封止部材3の長手方向(X方向)とは直交している。
被封止部3は屈曲形成され、被封止部22の一部(後述する第2部分222)は、上記長手方向(X方向)に延びている。
封止部材3は、複数の被封止部22が上記延出方向(Y方向)に重ならないように、複数のバスバー2を封止している。
【0021】
バスバーモジュール1は、封止部材3に平行配置された補助封止部材4を備える。補助封止部材4は、バスバー2の、Y方向における被封止部22を形成した側とは反対側の端部を封止している。封止部材3および補助封止部材4は、それぞれ絶縁樹脂によって構成されている。
【0022】
露出部20は、半導体モジュール5のパワー端子51に接続するための6個の端子接続部21(第1端子接続部21a〜第6端子接続部21f)を有する。露出部20は板状であり、端子接続部21は、露出部20から、該露出部20の板厚方向(Z方向)に立設している。
【0023】
また、露出部20には、パワー端子51が通る6個の貫通穴24(第1貫通穴24a〜第6貫通穴24f)が、Z方向に貫通形成されている。第1貫通穴24aと第2貫通穴24bは、X方向に隣接している。また、第5貫通穴24eと第6貫通穴24fも、X方向に隣接している。第2貫通穴24bと、第3貫通穴24cと、第4貫通穴24dと、第6貫通穴24fは、Y方向に隣接している。
【0024】
本例のバスバーモジュール1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載するための電力変換装置10(DC−DCコンバータ)に用いられる。図2、図3に示すごとく、電力変換装置10は、複数の半導体モジュール5と複数の冷却管60とを積層した積層体11と、該積層体11をその内側に固定するフレーム7とを備える。冷却管60には、半導体モジュール5を冷却する冷媒16が流れる冷媒流路6が形成されている。
【0025】
バスバーモジュール1の封止部材3には、Z方向に貫通したボルト挿通孔39が形成されている。また、フレーム7には、複数の螺子孔75(図2参照)が形成されている。ボルト挿通孔39にボルト38を挿入し、螺子孔75に螺合することにより、バスバーモジュール1をフレーム7に固定するようになっている。補助封止部材4も同様に、ボルト38によってフレーム7に固定される。
【0026】
図1、図7に示すごとく、封止部材3および補助封止部材4には、Z方向に向って互いに反対側から凹む一対の凹部30(30a,30b)が形成されている。一対の凹部30a,30bの間に介在する薄肉部31と、薄肉部31の両端に設けられた側壁部32,33とによって、X方向に直交する平面における断面形状がH字状を呈するH状部34が形成されている。封止部材3および補助封止部材4には、このH状部34が複数箇所、形成されている。
【0027】
なお、本例では、一対の凹部30a,30bを、それぞれZ方向に凹むように形成したが、Y方向に凹むように形成してもよい。
【0028】
また、図8、図9に示すごとく、被封止部22は、露出部20に連なりY方向に延びる第1部分221と、該第1部分221からZ方向に立設し、X方向に延びる第2部分222と、該第2部分222からY方向に延びる第3部分223とを備える。第3部分223は外部接続部23と繋がっている。第2部分222の板厚方向は、Y方向と平行である。また、第3部分223の板厚方向はX方向と平行である。
【0029】
外部接続部23は、上記第3部分223に連なりY方向に延びる第1延出部231と、該第1延出部231からX方向に延出する第2延出部232と、該第2延出部232に取り付けられた円板状部233と、該円板状部233に設けられ封止部材3に向ってY方向に突出する円筒状部234とを備える。円筒状部234と円板状部233には、Y方向に貫通した接続用貫通穴235が形成されている。この接続用貫通穴235に、外部機器(リアクトルL;図10参照)の端子が挿入され、接続される。
【0030】
次に、電力変換装置10についての説明をする。上述したように電力変換装置10は、複数の半導体モジュール5(図2参照)と、複数の冷却管60とを積層した積層体11を備える。半導体モジュール5のパワー端子51には、バスバー2を介して外部機器(リアクトルL)に接続される外部接続端子51cと、接地される接地端子51bと、昇圧後の電圧が加わる高電圧端子51aとがある。
【0031】
また、図6に示すごとく、半導体モジュール5は、複数の制御端子53を備える。この制御端子53に制御回路基板19が接続している。制御回路基板19によって、半導体モジュール5のスイッチング動作を制御している。
【0032】
図2に示すごとく、X方向に隣り合う2個の冷却管60は、Y方向における両端において、連結管12によって連結されている。また、複数の冷却管60のうち、X方向における一端に位置する冷却管60aには、積層体11に冷媒16を導入するための導入パイプ13と、積層体11から冷媒16を導出するための導出パイプ14とが取り付けられている。導入パイプ13から冷媒16を導入すると、冷媒16は連結管12を通って全ての冷却管60内を流れ、導出パイプ14から導出される。これにより、半導体モジュール5を冷却するようになっている。
【0033】
フレーム7の、X方向に直交する一対の壁部71,72のうち、一方の壁部71と積層体11との間には、弾性部材15(板ばね)が介在している。この弾性部材15によって、積層体15を他方の壁部72(導入パイプ13と導出パイプ14を設けた側の壁部)に向けて押圧し、固定している。
【0034】
なお、本例では、一方の壁部71と積層体11との間に弾性部材15を設けたが、他方の壁部72と積層体11との間に弾性部材15を設けてもよい。この場合には、積層体11は、一方の壁部71に向けて押圧されることになる。
【0035】
半導体モジュール5には、上述した高電圧端子51aを有する上アーム半導体モジュール5aと、接地端子51bを有する下アーム半導体モジュール5bとがある。図3に示すごとく、3個の上アーム半導体モジュール5aの外部接続端子51cに、バスバー2の3個の端子接続部21(第1端子接続部21a、第2端子接続部21b、第3端子接続部21c)が接続している。また、3個の下アーム半導体モジュール5bの外部接続端子51cに、バスバー2の3個の端子接続部21(第4端子接続部21d、第5端子接続部21e、第6端子接続部21f)が接続している。
【0036】
本例では、端子接続部21の主表面と、外部接続端子51cの主表面とを互いに重ね合わせ、端子接続部21の端面210(図6参照)と外部接続端子51cの端面510とに溶接工程を施すことにより、これら端子接続部21と外部接続端子51cとを電気的に接続している。
【0037】
上述したように、バスバー2には、第1貫通穴24a〜第6貫通穴24fの6個の貫通穴24が形成されている。図3に示すごとく、上アーム半導体モジュール5aの2個の外部接続端子51cが、第1貫通穴24aおよび第2貫通穴24bを通っている。また、上アーム半導体モジュール5aの1個の高電圧端子51aが、第3貫通穴24cを通っており、下アーム半導体モジュール5bの1個の接地端子51bが、第4貫通穴24dを通っている。さらに、下アーム半導体モジュール5bの2個の外部接続端子51cが、第5貫通穴24eおよび第6貫通穴24fを通っている。
【0038】
図4に示すごとく、上アーム半導体モジュール5aの全ての高電圧端子51aに、高電圧バスバー17が接続している。高電圧バスバー17は、板状本体部170と、該板状本体部170に設けられた櫛歯状部171とを備える。この櫛歯状部171が、高電圧端子51aに溶接されている。また、板状本体部170には、複数の貫通穴172が形成されている。下アーム半導体モジュール5bの接地端子51bが、この貫通穴172を通っている。
高電圧バスバー17は、絶縁体(図示しない)を介してフレーム7に固定されている。また、高電圧バスバー17は、昇圧した電圧を出力するための出力端子173を有する。
【0039】
図5に示すごとく、下アーム半導体モジュール5bの全ての接地端子51bに、接地バスバー18が接続している。接地バスバー18は、板状本体部180と、該板状本体部180に設けられた櫛歯状部181とを備える。この櫛歯状部181が、接地端子51bに溶接されている。
接地バスバー18は、絶縁体(図示しない)を介してフレーム7に固定されている。また、接地バスバー18は、昇圧した電圧を出力するための出力端子183を有する。
【0040】
図6に示すごとく、上アーム半導体モジュール5aの外部接続端子51cと、下アーム半導体モジュール5bの外部接続端子51cとは、Z方向における長さが略等しい。高電圧端子51aのZ方向における長さは、外部接続端子51cのZ方向における長さよりも長い。また、接地端子51bのZ方向における長さは、高電圧端子51aのZ方向における長さよりも長い。
【0041】
高電圧端子51aは、バスバー2に形成した第3貫通穴24cを通り、高電圧バスバー17の櫛歯状部171に接続している。また、接地端子51bは、バスバー2に形成した第4貫通穴24dと、高電圧バスバー17に形成した貫通穴172とを通り、接地バスバー18の櫛歯状部181に接続している。
【0042】
次に、電力変換装置10の電気回路の説明をする。図10に示すごとく、本例の電力変換装置10は、直流電源80の電圧を昇圧するためのDC−DCコンバータの一部を構成している。電力変換装置10には、上述した上アーム半導体モジュール5aに封止された上アーム半導体素子52aと、下アーム半導体モジュール5bに封止された下アーム半導体素子52bとがある。個々の半導体素子52には、フリーホイールダイオード59が逆並列接続されている。本例では、上アーム半導体素子52aと下アーム半導体素子52bとに外部機器(平滑コンデンサC1、フィルタコンデンサC2、リアクトルL1〜L3)を接続することにより、DC−DCコンバータを構成している。
【0043】
電力変換装置10は、9個の上アーム半導体素子52aと、9個の下アーム半導体素子52bとを有する。そして、3個の上アーム半導体素子52aと3個の下アーム半導体素子52bとが組み合わさって1個の半導体素子群55を構成している。半導体素子群55には、第1リアクトルL1に接続される第1半導体素子群55aと、第2リアクトルL2に接続される第2半導体素子群55bと、第3リアクトルL3に接続される第3半導体素子群55cとがある。
【0044】
上アーム半導体素子52aのコレクタ端子は、上記高電圧端子51aとなっている。この高電圧端子51aに、高電圧バスバー17が接続している。また、上アーム半導体素子52aのエミッタ端子および、下アーム半導体素子52bのコレクタ端子は、上記外部接続端子51cとなっている。この外部接続端子51cはバスバー2に接続している。バスバー2は、リアクトルLの一方の端子81に接続している。また、下アーム半導体素子52bのエミッタ端子は、上記接地端子51bとなっている。この接地端子51bに、接地バスバー18が接続している。
【0045】
高電圧バスバー17と接地バスバー18との間には、平滑リアクトルC1が接続されている。また、リアクトルLの他方の端子82は、直流電源80の正極端子85と、フィルタコンデンサC2の一方の端子88に接続している。直流電源80の負極端子86と、フィルタコンデンサC2の他方の端子89は、接地バスバー18に接続している。
【0046】
半導体素子52のゲート端子には、上述した制御回路基板19(図6参照)が接続される。制御回路基板19は、下アーム側半導体素子52bをオンオフ動作させている。これにより、直流電源80の電圧を昇圧している。そして、昇圧した電圧を平滑コンデンサC1によって平滑し、出力端子173,183から出力するようになっている。
【0047】
また、制御回路基板19は、3個の半導体素子群55a〜55bにそれぞれ含まれる、下アーム側半導体素子52bを、それぞれ位相をずらしつつオンオフさせている。これにより、個々のリアクトルL1〜L3に流れる電流を少なくし、リアクトルのサイズを小さくできるようにしている。
【0048】
本例では、高電圧バスバー17の出力端子173と、接地バスバー18の出力バスバー183とは、それぞれインバータ(図示しない)に接続される。そして、昇圧した直流電圧を、インバータによって交流電圧に変換し、三相交流モータ等の交流負荷を駆動するようになっている。
【0049】
本例の作用効果について説明する。図1に示すごとく、本例におけるバスバーモジュール1の封止部材3は、複数の被封止部22がY方向に重ならないように、複数のバスバー2を封止している。
このようにすると、封止部材3のY方向における長さを短くすることができる。そのため、封止部材3を構成する樹脂の量を低減でき、封止部材3を軽くすることが可能になる。これにより、バスバーモジュール1を軽量化することが可能になる。
【0050】
また、本例では、被封止部22が屈曲形成されている。このようにすると、被封止部22を含めた封止部材3全体の剛性を高めることができる。
【0051】
また、図7に示すごとく、本例の封止部材3には、H状部34が形成されている。このようにすると、凹部30a,30bによって、封止部材3を構成する樹脂の量をさらに低減することができ、封止部材3を軽量化することができる。また、H状部34を形成すると、樹脂の量を減らしつつ、封止部材3の剛性を一定以上に維持することができる。すなわち、H状部34は薄肉部31と側壁部32,33とが直交しているため、薄肉部31が撓みやすい方向(薄肉部31の法線方向、すなわちZ方向)には側壁部32,33が撓みにくく、側壁部32,33が撓みやすい方向(側壁部の法線方向、すなわちY方向)には薄肉部31が撓みにくくなる。このように、薄肉部31と側壁部32,33とで、撓みやすい方向を補強しあっているため、全体の剛性を高めることが可能になる。
【0052】
また、図1、図9に示すごとく、バスバー2は外部接続部23を備える。この外部接続部23にリアクトルL1〜L3(図10参照)が接続される。
上述したように、複数の被封止部22をY方向に重ねないと、被封止部22に付く寄生インダクタンスが大きくなりやすいが、外部接続部23にリアクトルを接続する場合には、リアクトルのインダクタンスの方が寄生インダクタンスよりも遥かに大きいため、寄生インダクタンスの、電気回路に与える影響を小さくすることができる。
【0053】
また、図1に示すごとく、本例のバスバーモジュール1は補助封止部材4を備える。封止部材3と補助封止部材4とは別体に形成されている。
このようにすると、封止部材3と補助封止部材4とによってバスバー2を封止できるため、バスバー2をしっかりと保持することが可能になる。また、封止部材3と補助封止部材4とが別体に形成されており、これらの間を繋ぐ樹脂部分が存在しないため、バスバーモジュール1を軽量化することができる。
【0054】
また、図5に示すごとく、本例の電力変換装置10は、上記バスバーモジュール1を用いている。そのため、電力変換装置10全体の重量を軽くすることができる。さらに、本例の電力変換装置10は、封止部材3をフレーム7に固定しているため、バスバーモジュール1をしっかりと固定できる。そのため、外部から振動等が伝わっても、バスバーモジュール1がぐらつきにくくなる。
【0055】
以上のごとく、本例によれば、より軽量化できるバスバーモジュールと、該バスバーモジュールを用いた電力変換装置を提供することができる。
【0056】
なお、本例の電力変換装置1は、DC−DCコンバータを構成しているが、例えば直流電圧と交流電圧との間で電力変換を行うためのインバータを構成するようにしてもよい。この場合には、外部接続部23(図1参照)にはリアクトルL1〜L3は接続されず、三相交流モータ等の交流負荷が接続されることになる。
【0057】
また、本例では、冷媒流路6を内部に有する複数の冷却管60と、複数の半導体モジュール5とを積層して積層体11を構成したが、図11に示すごとく、半導体素子を内蔵した半導体モジュール5の本体部58と枠部550とを一体に備えた冷却器一体型半導体モジュール500を積層することにより、半導体モジュール5と冷媒流路6とが積層される構造にしてもよい。冷却器一体型半導体モジュール500の枠部550は、本体部58よりもX方向における幅が大きい。また、枠部550と本体部58との間には空間が設けられている。この空間が、冷媒流路6となる。
【符号の説明】
【0058】
1 バスバーモジュール
10 電力変換装置
2 バスバー
20 露出部
21 端子接続部
22 被封止部
23 外部接続部
3 封止部材
5 半導体モジュール
51 パワー端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールのパワー端子に接続するためのバスバーモジュールと、該バスバーモジュールを用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば電力変換装置に用いられる複数の半導体モジュールを電気的に接続するための部品として、複数のバスバーと、該バスバーの一部を封止する封止部材とを備えたバスバーモジュールが知られている(下記特許文献1、2参照)。
【0003】
図12に、従来のバスバーモジュール9の例を示す。このバスバーモジュール9は、複数の半導体モジュール95を有するインバータ90(電力変換装置)に用いられる。バスバーモジュール9は、複数のバスバー92と、該複数のバスバー92を封止する樹脂製の封止部材93を備える。
【0004】
バスバー92は、封止部材93に封止された被封止部922と、被封止部922から延出し封止部材93から露出した露出部920と、該露出部920に形成された端子接続部921と、外部機器に接続するための外部接続部923とを備える。端子接続部921は、半導体モジュール95のパワー端子951に接続している。外部接続部923は、インバータ90の出力端子(U相、V相、W相)として利用され、交流負荷(図示しない)に接続される。
【0005】
複数の露出部920は互いに平行に配置されている。露出部920の延出方向(Y方向)と、封止部材93の長手方向(X方向)とは直交している。
【0006】
被封止部922は折り曲げ形成されている。そして、この折り曲げられた複数の被封止部922がY方向に重なっている。このように複数の被封止部922をY方向に重ねることにより、被封止部922間の間隔を狭くし、被封止部922に付く寄生インダクタンスを小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−115061号公報
【特許文献2】特開2008−259398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のバスバーモジュール92は、複数のバスバー92がY方向に重なっているため、封止部材93のY方向における厚さWが厚くなり、バスバーモジュール92の重量が大きくなりやすいという問題があった。そのため、より軽量化できるバスバーモジュールが望まれていた。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、より軽量化できるバスバーモジュールと、該バスバーモジュールを用いた電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、半導体素子を内蔵した半導体モジュールのパワー端子に電気的に接続するためのバスバーモジュールであって、
該バスバーモジュールは、導体からなる複数のバスバーと、該バスバーの一部を封止してこれらを一体化する封止部材とからなり、
上記バスバーは、上記封止部材に封止された被封止部と、該被封止部から延出し上記封止部材から露出した露出部と、該露出部に形成され、上記パワー端子に接続される端子接続部と、外部機器に接続するための外部接続部とを備え、
上記複数の露出部はそれぞれ同一方向に延出しており、該露出部の延出方向と上記封止部材の長手方向とは直交し、
上記被封止部は屈曲形成され、該被封止部の一部は、上記長手方向に延びており、
上記封止部材は、上記複数の被封止部が上記延出方向に重ならないように、上記複数のバスバーを封止するよう構成されていることを特徴とするバスバーモジュールにある(請求項1)。
【0011】
また、本発明の他の態様は、上記バスバーモジュールを用いた電力変換装置であって、
複数の上記半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷媒が流れる複数の冷媒流路とを積層した積層体と、
該積層体をその内側に固定するフレームとを備え、
上記封止部材は、上記フレームに固定されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
上記バスバーモジュールの上記封止部材は、上記複数の被封止部が上記延出方向(上記露出部の延出方向)に重ならないように、上記複数のバスバーを封止している。
このようにすると、封止部材の上記延出方向における長さを短くすることができる。そのため、封止部材を構成する材料(樹脂等)の使用量を低減でき、封止部材を軽くすることが可能になる。これにより、バスバーモジュールを軽量化することが可能になる。
【0013】
また、上記電力変換装置は、上記バスバーモジュールを用いているため、電力変換装置全体の重量を軽くすることができる。さらに、上記電力変換装置は、封止部材を上記フレームに固定しているため、バスバーモジュールをしっかりと固定できる。そのため、外部から振動等が伝わっても、バスバーモジュールがぐらつきにくくなる。
【0014】
以上のごとく、本発明によれば、より軽量化できるバスバーモジュールと、該バスバーモジュールを用いた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、バスバーモジュールの平面図。
【図2】実施例1における、積層体およびフレームの平面図。
【図3】図2に示す積層体に、バスバーモジュールを取り付けた図。
【図4】図3に示す積層体に、高電圧バスバーを取り付けた図。
【図5】図4に示す積層体に、接地バスバーを取り付けた図。
【図6】図5のC−C断面図。
【図7】図1のA−A断面図。
【図8】図1のB拡大矢視図。
【図9】実施例1における、被封止部の透視斜視図。
【図10】実施例1における、電力変換装置の回路図。
【図11】実施例1における、冷媒流路と半導体モジュールとを一体化した例。
【図12】従来例における、バスバーモジュールの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記バスバーモジュールにおいて、上記封止部材には、互いに反対側から凹んだ一対の凹部が形成され、該一対の凹部の間に介在する薄肉部と、該薄肉部の両端に設けられた側壁部とによって、上記長手方向に直交する平面における断面形状がH字状を呈するH状部が形成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、封止部材に上記凹部が形成されているため、封止部材を構成する材料の使用量をさらに低減することができ、封止部材を軽量化することができる。また、上記H状部を形成すると、材料の使用量を減らしつつ、封止部材の剛性を一定以上に維持することができる。すなわち、H状部における上記薄肉部と上記側壁部とは直交しているため、薄肉部が撓みやすい方向(薄肉部の法線方向)には側壁部が撓みにくく、側壁部が撓みやすい方向(側壁部の法線方向)には薄肉部が撓みにくくなる。このように、薄肉部と側壁部とで、撓みやすい方向を補強しあっているため、全体の剛性を高めることが可能になる。
【0017】
また、上記外部接続部にリアクトルが接続されることが好ましい(請求項3)。
複数の上記被封止部を上記延出方向に重ねないと、被封止部に付く寄生インダクタンスが大きくなりやすいが、外部接続部にリアクトルを接続する場合には、リアクトルのインダクタンスの方が寄生インダクタンスよりも遥かに大きいため、寄生インダクタンスの、電気回路に与える影響を小さくすることができる。
【0018】
また、上記封止部材に平行配置された補助封止部材を備え、該補助封止部材は、上記バスバーの、上記延出方向における上記被封止部を形成した側とは反対側の端部を封止しており、上記封止部材と上記補助封止部材とが別体に形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、封止部材と上記補助封止部材とによってバスバーを封止できるため、バスバーをしっかりと保持することが可能になる。また、封止部材と補助封止部材とが別体に形成されており、これらの間を繋ぐ部分が存在しないため、バスバーモジュールを軽量化することができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
上記バスバーモジュール及び電力変換装置に係る実施例について、図1〜図11を用いて説明する。
図3に示すごとく、本例のバスバーモジュール1は、半導体素子を内蔵した半導体モジュール5のパワー端子51に電気的に接続するために用いられる。図1に示すごとく、バスバーモジュール1は、導体からなる複数のバスバー2と、複数のバスバー2の一部を封止してこれらを一体化する封止部材3とからなる。
バスバー2は、封止部材3に封止された被封止部22と、被封止部22から延出し封止部材3から露出した露出部20と、露出部20に形成され、パワー端子51(図3参照)に接続される端子接続部21と、外部機器に接続するための外部接続部23とを備える。
【0020】
複数の露出部20はそれぞれ同一方向に延出している。露出部20の延出方向(Y方向)と封止部材3の長手方向(X方向)とは直交している。
被封止部3は屈曲形成され、被封止部22の一部(後述する第2部分222)は、上記長手方向(X方向)に延びている。
封止部材3は、複数の被封止部22が上記延出方向(Y方向)に重ならないように、複数のバスバー2を封止している。
【0021】
バスバーモジュール1は、封止部材3に平行配置された補助封止部材4を備える。補助封止部材4は、バスバー2の、Y方向における被封止部22を形成した側とは反対側の端部を封止している。封止部材3および補助封止部材4は、それぞれ絶縁樹脂によって構成されている。
【0022】
露出部20は、半導体モジュール5のパワー端子51に接続するための6個の端子接続部21(第1端子接続部21a〜第6端子接続部21f)を有する。露出部20は板状であり、端子接続部21は、露出部20から、該露出部20の板厚方向(Z方向)に立設している。
【0023】
また、露出部20には、パワー端子51が通る6個の貫通穴24(第1貫通穴24a〜第6貫通穴24f)が、Z方向に貫通形成されている。第1貫通穴24aと第2貫通穴24bは、X方向に隣接している。また、第5貫通穴24eと第6貫通穴24fも、X方向に隣接している。第2貫通穴24bと、第3貫通穴24cと、第4貫通穴24dと、第6貫通穴24fは、Y方向に隣接している。
【0024】
本例のバスバーモジュール1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載するための電力変換装置10(DC−DCコンバータ)に用いられる。図2、図3に示すごとく、電力変換装置10は、複数の半導体モジュール5と複数の冷却管60とを積層した積層体11と、該積層体11をその内側に固定するフレーム7とを備える。冷却管60には、半導体モジュール5を冷却する冷媒16が流れる冷媒流路6が形成されている。
【0025】
バスバーモジュール1の封止部材3には、Z方向に貫通したボルト挿通孔39が形成されている。また、フレーム7には、複数の螺子孔75(図2参照)が形成されている。ボルト挿通孔39にボルト38を挿入し、螺子孔75に螺合することにより、バスバーモジュール1をフレーム7に固定するようになっている。補助封止部材4も同様に、ボルト38によってフレーム7に固定される。
【0026】
図1、図7に示すごとく、封止部材3および補助封止部材4には、Z方向に向って互いに反対側から凹む一対の凹部30(30a,30b)が形成されている。一対の凹部30a,30bの間に介在する薄肉部31と、薄肉部31の両端に設けられた側壁部32,33とによって、X方向に直交する平面における断面形状がH字状を呈するH状部34が形成されている。封止部材3および補助封止部材4には、このH状部34が複数箇所、形成されている。
【0027】
なお、本例では、一対の凹部30a,30bを、それぞれZ方向に凹むように形成したが、Y方向に凹むように形成してもよい。
【0028】
また、図8、図9に示すごとく、被封止部22は、露出部20に連なりY方向に延びる第1部分221と、該第1部分221からZ方向に立設し、X方向に延びる第2部分222と、該第2部分222からY方向に延びる第3部分223とを備える。第3部分223は外部接続部23と繋がっている。第2部分222の板厚方向は、Y方向と平行である。また、第3部分223の板厚方向はX方向と平行である。
【0029】
外部接続部23は、上記第3部分223に連なりY方向に延びる第1延出部231と、該第1延出部231からX方向に延出する第2延出部232と、該第2延出部232に取り付けられた円板状部233と、該円板状部233に設けられ封止部材3に向ってY方向に突出する円筒状部234とを備える。円筒状部234と円板状部233には、Y方向に貫通した接続用貫通穴235が形成されている。この接続用貫通穴235に、外部機器(リアクトルL;図10参照)の端子が挿入され、接続される。
【0030】
次に、電力変換装置10についての説明をする。上述したように電力変換装置10は、複数の半導体モジュール5(図2参照)と、複数の冷却管60とを積層した積層体11を備える。半導体モジュール5のパワー端子51には、バスバー2を介して外部機器(リアクトルL)に接続される外部接続端子51cと、接地される接地端子51bと、昇圧後の電圧が加わる高電圧端子51aとがある。
【0031】
また、図6に示すごとく、半導体モジュール5は、複数の制御端子53を備える。この制御端子53に制御回路基板19が接続している。制御回路基板19によって、半導体モジュール5のスイッチング動作を制御している。
【0032】
図2に示すごとく、X方向に隣り合う2個の冷却管60は、Y方向における両端において、連結管12によって連結されている。また、複数の冷却管60のうち、X方向における一端に位置する冷却管60aには、積層体11に冷媒16を導入するための導入パイプ13と、積層体11から冷媒16を導出するための導出パイプ14とが取り付けられている。導入パイプ13から冷媒16を導入すると、冷媒16は連結管12を通って全ての冷却管60内を流れ、導出パイプ14から導出される。これにより、半導体モジュール5を冷却するようになっている。
【0033】
フレーム7の、X方向に直交する一対の壁部71,72のうち、一方の壁部71と積層体11との間には、弾性部材15(板ばね)が介在している。この弾性部材15によって、積層体15を他方の壁部72(導入パイプ13と導出パイプ14を設けた側の壁部)に向けて押圧し、固定している。
【0034】
なお、本例では、一方の壁部71と積層体11との間に弾性部材15を設けたが、他方の壁部72と積層体11との間に弾性部材15を設けてもよい。この場合には、積層体11は、一方の壁部71に向けて押圧されることになる。
【0035】
半導体モジュール5には、上述した高電圧端子51aを有する上アーム半導体モジュール5aと、接地端子51bを有する下アーム半導体モジュール5bとがある。図3に示すごとく、3個の上アーム半導体モジュール5aの外部接続端子51cに、バスバー2の3個の端子接続部21(第1端子接続部21a、第2端子接続部21b、第3端子接続部21c)が接続している。また、3個の下アーム半導体モジュール5bの外部接続端子51cに、バスバー2の3個の端子接続部21(第4端子接続部21d、第5端子接続部21e、第6端子接続部21f)が接続している。
【0036】
本例では、端子接続部21の主表面と、外部接続端子51cの主表面とを互いに重ね合わせ、端子接続部21の端面210(図6参照)と外部接続端子51cの端面510とに溶接工程を施すことにより、これら端子接続部21と外部接続端子51cとを電気的に接続している。
【0037】
上述したように、バスバー2には、第1貫通穴24a〜第6貫通穴24fの6個の貫通穴24が形成されている。図3に示すごとく、上アーム半導体モジュール5aの2個の外部接続端子51cが、第1貫通穴24aおよび第2貫通穴24bを通っている。また、上アーム半導体モジュール5aの1個の高電圧端子51aが、第3貫通穴24cを通っており、下アーム半導体モジュール5bの1個の接地端子51bが、第4貫通穴24dを通っている。さらに、下アーム半導体モジュール5bの2個の外部接続端子51cが、第5貫通穴24eおよび第6貫通穴24fを通っている。
【0038】
図4に示すごとく、上アーム半導体モジュール5aの全ての高電圧端子51aに、高電圧バスバー17が接続している。高電圧バスバー17は、板状本体部170と、該板状本体部170に設けられた櫛歯状部171とを備える。この櫛歯状部171が、高電圧端子51aに溶接されている。また、板状本体部170には、複数の貫通穴172が形成されている。下アーム半導体モジュール5bの接地端子51bが、この貫通穴172を通っている。
高電圧バスバー17は、絶縁体(図示しない)を介してフレーム7に固定されている。また、高電圧バスバー17は、昇圧した電圧を出力するための出力端子173を有する。
【0039】
図5に示すごとく、下アーム半導体モジュール5bの全ての接地端子51bに、接地バスバー18が接続している。接地バスバー18は、板状本体部180と、該板状本体部180に設けられた櫛歯状部181とを備える。この櫛歯状部181が、接地端子51bに溶接されている。
接地バスバー18は、絶縁体(図示しない)を介してフレーム7に固定されている。また、接地バスバー18は、昇圧した電圧を出力するための出力端子183を有する。
【0040】
図6に示すごとく、上アーム半導体モジュール5aの外部接続端子51cと、下アーム半導体モジュール5bの外部接続端子51cとは、Z方向における長さが略等しい。高電圧端子51aのZ方向における長さは、外部接続端子51cのZ方向における長さよりも長い。また、接地端子51bのZ方向における長さは、高電圧端子51aのZ方向における長さよりも長い。
【0041】
高電圧端子51aは、バスバー2に形成した第3貫通穴24cを通り、高電圧バスバー17の櫛歯状部171に接続している。また、接地端子51bは、バスバー2に形成した第4貫通穴24dと、高電圧バスバー17に形成した貫通穴172とを通り、接地バスバー18の櫛歯状部181に接続している。
【0042】
次に、電力変換装置10の電気回路の説明をする。図10に示すごとく、本例の電力変換装置10は、直流電源80の電圧を昇圧するためのDC−DCコンバータの一部を構成している。電力変換装置10には、上述した上アーム半導体モジュール5aに封止された上アーム半導体素子52aと、下アーム半導体モジュール5bに封止された下アーム半導体素子52bとがある。個々の半導体素子52には、フリーホイールダイオード59が逆並列接続されている。本例では、上アーム半導体素子52aと下アーム半導体素子52bとに外部機器(平滑コンデンサC1、フィルタコンデンサC2、リアクトルL1〜L3)を接続することにより、DC−DCコンバータを構成している。
【0043】
電力変換装置10は、9個の上アーム半導体素子52aと、9個の下アーム半導体素子52bとを有する。そして、3個の上アーム半導体素子52aと3個の下アーム半導体素子52bとが組み合わさって1個の半導体素子群55を構成している。半導体素子群55には、第1リアクトルL1に接続される第1半導体素子群55aと、第2リアクトルL2に接続される第2半導体素子群55bと、第3リアクトルL3に接続される第3半導体素子群55cとがある。
【0044】
上アーム半導体素子52aのコレクタ端子は、上記高電圧端子51aとなっている。この高電圧端子51aに、高電圧バスバー17が接続している。また、上アーム半導体素子52aのエミッタ端子および、下アーム半導体素子52bのコレクタ端子は、上記外部接続端子51cとなっている。この外部接続端子51cはバスバー2に接続している。バスバー2は、リアクトルLの一方の端子81に接続している。また、下アーム半導体素子52bのエミッタ端子は、上記接地端子51bとなっている。この接地端子51bに、接地バスバー18が接続している。
【0045】
高電圧バスバー17と接地バスバー18との間には、平滑リアクトルC1が接続されている。また、リアクトルLの他方の端子82は、直流電源80の正極端子85と、フィルタコンデンサC2の一方の端子88に接続している。直流電源80の負極端子86と、フィルタコンデンサC2の他方の端子89は、接地バスバー18に接続している。
【0046】
半導体素子52のゲート端子には、上述した制御回路基板19(図6参照)が接続される。制御回路基板19は、下アーム側半導体素子52bをオンオフ動作させている。これにより、直流電源80の電圧を昇圧している。そして、昇圧した電圧を平滑コンデンサC1によって平滑し、出力端子173,183から出力するようになっている。
【0047】
また、制御回路基板19は、3個の半導体素子群55a〜55bにそれぞれ含まれる、下アーム側半導体素子52bを、それぞれ位相をずらしつつオンオフさせている。これにより、個々のリアクトルL1〜L3に流れる電流を少なくし、リアクトルのサイズを小さくできるようにしている。
【0048】
本例では、高電圧バスバー17の出力端子173と、接地バスバー18の出力バスバー183とは、それぞれインバータ(図示しない)に接続される。そして、昇圧した直流電圧を、インバータによって交流電圧に変換し、三相交流モータ等の交流負荷を駆動するようになっている。
【0049】
本例の作用効果について説明する。図1に示すごとく、本例におけるバスバーモジュール1の封止部材3は、複数の被封止部22がY方向に重ならないように、複数のバスバー2を封止している。
このようにすると、封止部材3のY方向における長さを短くすることができる。そのため、封止部材3を構成する樹脂の量を低減でき、封止部材3を軽くすることが可能になる。これにより、バスバーモジュール1を軽量化することが可能になる。
【0050】
また、本例では、被封止部22が屈曲形成されている。このようにすると、被封止部22を含めた封止部材3全体の剛性を高めることができる。
【0051】
また、図7に示すごとく、本例の封止部材3には、H状部34が形成されている。このようにすると、凹部30a,30bによって、封止部材3を構成する樹脂の量をさらに低減することができ、封止部材3を軽量化することができる。また、H状部34を形成すると、樹脂の量を減らしつつ、封止部材3の剛性を一定以上に維持することができる。すなわち、H状部34は薄肉部31と側壁部32,33とが直交しているため、薄肉部31が撓みやすい方向(薄肉部31の法線方向、すなわちZ方向)には側壁部32,33が撓みにくく、側壁部32,33が撓みやすい方向(側壁部の法線方向、すなわちY方向)には薄肉部31が撓みにくくなる。このように、薄肉部31と側壁部32,33とで、撓みやすい方向を補強しあっているため、全体の剛性を高めることが可能になる。
【0052】
また、図1、図9に示すごとく、バスバー2は外部接続部23を備える。この外部接続部23にリアクトルL1〜L3(図10参照)が接続される。
上述したように、複数の被封止部22をY方向に重ねないと、被封止部22に付く寄生インダクタンスが大きくなりやすいが、外部接続部23にリアクトルを接続する場合には、リアクトルのインダクタンスの方が寄生インダクタンスよりも遥かに大きいため、寄生インダクタンスの、電気回路に与える影響を小さくすることができる。
【0053】
また、図1に示すごとく、本例のバスバーモジュール1は補助封止部材4を備える。封止部材3と補助封止部材4とは別体に形成されている。
このようにすると、封止部材3と補助封止部材4とによってバスバー2を封止できるため、バスバー2をしっかりと保持することが可能になる。また、封止部材3と補助封止部材4とが別体に形成されており、これらの間を繋ぐ樹脂部分が存在しないため、バスバーモジュール1を軽量化することができる。
【0054】
また、図5に示すごとく、本例の電力変換装置10は、上記バスバーモジュール1を用いている。そのため、電力変換装置10全体の重量を軽くすることができる。さらに、本例の電力変換装置10は、封止部材3をフレーム7に固定しているため、バスバーモジュール1をしっかりと固定できる。そのため、外部から振動等が伝わっても、バスバーモジュール1がぐらつきにくくなる。
【0055】
以上のごとく、本例によれば、より軽量化できるバスバーモジュールと、該バスバーモジュールを用いた電力変換装置を提供することができる。
【0056】
なお、本例の電力変換装置1は、DC−DCコンバータを構成しているが、例えば直流電圧と交流電圧との間で電力変換を行うためのインバータを構成するようにしてもよい。この場合には、外部接続部23(図1参照)にはリアクトルL1〜L3は接続されず、三相交流モータ等の交流負荷が接続されることになる。
【0057】
また、本例では、冷媒流路6を内部に有する複数の冷却管60と、複数の半導体モジュール5とを積層して積層体11を構成したが、図11に示すごとく、半導体素子を内蔵した半導体モジュール5の本体部58と枠部550とを一体に備えた冷却器一体型半導体モジュール500を積層することにより、半導体モジュール5と冷媒流路6とが積層される構造にしてもよい。冷却器一体型半導体モジュール500の枠部550は、本体部58よりもX方向における幅が大きい。また、枠部550と本体部58との間には空間が設けられている。この空間が、冷媒流路6となる。
【符号の説明】
【0058】
1 バスバーモジュール
10 電力変換装置
2 バスバー
20 露出部
21 端子接続部
22 被封止部
23 外部接続部
3 封止部材
5 半導体モジュール
51 パワー端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を内蔵した半導体モジュールのパワー端子に電気的に接続するためのバスバーモジュールであって、
該バスバーモジュールは、導体からなる複数のバスバーと、該バスバーの一部を封止してこれらを一体化する封止部材とからなり、
上記バスバーは、上記封止部材に封止された被封止部と、該被封止部から延出し上記封止部材から露出した露出部と、該露出部に形成され、上記パワー端子に接続される端子接続部と、外部機器に接続するための外部接続部とを備え、
上記複数の露出部はそれぞれ同一方向に延出しており、該露出部の延出方向と上記封止部材の長手方向とは直交し、
上記被封止部は屈曲形成され、該被封止部の一部は、上記長手方向に延びており、
上記封止部材は、上記複数の被封止部が上記延出方向に重ならないように、上記複数のバスバーを封止するよう構成されていることを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のバスバーモジュールにおいて、上記封止部材には、互いに反対側から凹んだ一対の凹部が形成され、該一対の凹部の間に介在する薄肉部と、該薄肉部の両端に設けられた側壁部とによって、上記長手方向に直交する平面における断面形状がH字状を呈するH状部が形成されていることを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバスバーモジュールにおいて、上記外部接続部にリアクトルが接続されることを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のバスバーモジュールにおいて、上記封止部材に平行配置された補助封止部材を備え、該補助封止部材は、上記バスバーの、上記延出方向における上記被封止部を形成した側とは反対側の端部を封止しており、上記封止部材と上記補助封止部材とが別体に形成されていることを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のバスバーモジュールを用いた電力変換装置であって、
複数の上記半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷媒が流れる複数の冷媒流路とを積層した積層体と、
該積層体をその内側に固定するフレームとを備え、
上記封止部材は、上記フレームに固定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項1】
半導体素子を内蔵した半導体モジュールのパワー端子に電気的に接続するためのバスバーモジュールであって、
該バスバーモジュールは、導体からなる複数のバスバーと、該バスバーの一部を封止してこれらを一体化する封止部材とからなり、
上記バスバーは、上記封止部材に封止された被封止部と、該被封止部から延出し上記封止部材から露出した露出部と、該露出部に形成され、上記パワー端子に接続される端子接続部と、外部機器に接続するための外部接続部とを備え、
上記複数の露出部はそれぞれ同一方向に延出しており、該露出部の延出方向と上記封止部材の長手方向とは直交し、
上記被封止部は屈曲形成され、該被封止部の一部は、上記長手方向に延びており、
上記封止部材は、上記複数の被封止部が上記延出方向に重ならないように、上記複数のバスバーを封止するよう構成されていることを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のバスバーモジュールにおいて、上記封止部材には、互いに反対側から凹んだ一対の凹部が形成され、該一対の凹部の間に介在する薄肉部と、該薄肉部の両端に設けられた側壁部とによって、上記長手方向に直交する平面における断面形状がH字状を呈するH状部が形成されていることを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバスバーモジュールにおいて、上記外部接続部にリアクトルが接続されることを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のバスバーモジュールにおいて、上記封止部材に平行配置された補助封止部材を備え、該補助封止部材は、上記バスバーの、上記延出方向における上記被封止部を形成した側とは反対側の端部を封止しており、上記封止部材と上記補助封止部材とが別体に形成されていることを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のバスバーモジュールを用いた電力変換装置であって、
複数の上記半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷媒が流れる複数の冷媒流路とを積層した積層体と、
該積層体をその内側に固定するフレームとを備え、
上記封止部材は、上記フレームに固定されていることを特徴とする電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−46468(P2013−46468A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181806(P2011−181806)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]