説明

バスバー

【課題】取り回しの際の配置自由度を向上することが可能なバスバーを提供する。
【解決手段】バスバー10は、電源から電力を供給するPバスバー11及びNバスバー12を備える。Nバスバー12は、Pバスバー11の軸線方向に対して平行に延びるとともに、Pバスバー11を囲むように配置される。Pバスバー11とNバスバー12との間には、絶縁体13が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給ラインに用いられるバスバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器の電力供給ラインには、配線用材料として、絶縁被覆が施されていない銅やアルミニウム等の板状または棒状等の導体、所謂バスバーが使用されている。このようなバスバーとして、対を成して平行に延伸する帯板状のバスバーの間に絶縁紙等からなる絶縁体を挟んだものが特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2005−12908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の記載によれば、該バスバーは、インバータケース内に収容されたスイッチング素子パワーモジュールの上部に載置された平滑コンデンサとインバータケース周壁との間で、平滑コンデンサに沿って引き回されている。しかしながら、該バスバーでは、絶縁を確保するためのスペースが必要であり、バスバーを取り回す際の配置自由度が制限されるおそれがある。
【0004】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、取り回しの際の配置自由度を向上することが可能なバスバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るバスバーは、電源から電力を供給する第1の導体と、第2の導体とを備えるバスバーであって、第2の導体が、第1の導体の軸線方向に対して平行に延びるとともに、第1の導体を囲むように配置されていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係るバスバーによれば、第1の導体を囲むように第2の導体を配置することにより、バスバーを、例えば一本の棒状に形成することができる。そのため、バスバーを小型化することができるとともに、その取り回しを簡素化することができる。その結果、バスバーを取り回す際の配置自由度を向上することが可能となる。
【0007】
上記第1の導体の外周面及び第2の導体の内周面には、互いに噛み合うように凹凸が形成されていることが好ましい。
【0008】
このようにすれば、互いに対向する第1の導体の外周面と第2の導体の内周面の表面積が増大するため、第1の導体と第2の導体との相互インダクタンスが増大し、バスバーの実効インダクタンスを低減することが可能となる。
【0009】
また、上記第1の導体と第2の導体との間には、絶縁体が配置されていることが好ましい。
【0010】
このようにすれば、第1の導体と第2の導体との短絡をより確実に防止することができるとともに、バスバーをより小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の導体の軸線方向に対して平行に延びるとともに、第1の導体を囲むように第2の導体を配置する構成とすることにより、バスバーを取り回す際の配置自由度を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。
【0013】
まず、図1を用いて、実施形態に係るバスバー10の構成について説明する。図1は、バスバー10の構成を示す図である。
【0014】
バスバー10は、例えば、インバータ等の電子機器において、電力用半導体デバイスであるIGBT( Insulated Gate Bipolar Transistor )などのパワーモジュール20に電力を供給するために用いられる配線用材料である。バスバー10は、電源の正極とパワーモジュール20とを接続するためのバスバー(以下「Pバスバー」という)11と、電源の負極とパワーモジュール20とを接続するためのバスバー(以下「Nバスバー」という)12とを備えている。
【0015】
Pバスバー11は、例えば断面が矩形の棒状部材である。このPバスバー11には、例えば銅やアルミニウムなどの導体が用いられる。すなわち、Pバスバー11は特許請求の範囲に記載の第1の導体に相当する。
【0016】
Nバスバー12は、例えば、その断面が口の字状をした中空の棒状部材である。Nバスバー12は、Pバスバー11の軸線方向に対して平行に延びるとともに、Pバスバー11を囲むように配置されている。このNバスバー12にも、例えば銅やアルミニウムなどの導体が用いられる。すなわち、Nバスバー12は特許請求の範囲に記載の第2の導体に相当する。
【0017】
Nバスバー11とPバスバー12とは、短絡しないように所定の間隔を空けて配置されている。また、Nバスバー11の外周面とPバスバー12の内周面との間には絶縁体13が設けられている。絶縁体13としては、放熱性(熱伝導率)や耐熱性に優れ且つ電流を流しにくい素材、例えば、絶縁紙、セラミックやポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)などが用いられる。なお、空気を絶縁体として用いてもよい。絶縁体13の厚さは、Pバスバー11とNバスバー12との電位差(例えば、数百〜2000V)を考慮して、絶縁破壊が起きない充分な厚さとなるように設定される。
【0018】
絶縁体13及びNバスバー12それぞれの側面には、Pバスバー11とパワーモジュール20とを接続する配線(ワイヤ)21を取り出すための孔13a及び孔12aが形成されている。Pバスバー11とパワーモジュール20の電極とは、孔13a,孔12aを通してワイヤボンディングにより接続されている。一方、Nバスバー12とパワーモジュール20の電極も配線(ワイヤ)22によって接続されている。
【0019】
続いて、図2及び図3を参照しつつ、従来のバスバー及び本実施形態に係るバスバー10それぞれの実効インダクタンスについて説明する。図2は、従来のバスバーの実効インダクタンスを説明するための図である。また、図3は、バスバー10の実効インダクタンスを説明するための図である。
【0020】
まず、図2に示されるように、一対の導体30,31が互いに平行に設けられた従来のバスバーの実効インダクタンスについて説明する。このバスバーの自己インダクタンスLs(H)は次式(1)により求められる。
Ls=μ×N×l×S ・・・(1)
ただし、μは透磁率(H/m)、Nは巻数、lは導体30,31の長さ(m)、Sは導体30,31の断面積(m)である。
【0021】
また、導体間の相互インダクタンスM(H)は次式(2)により算出される。
M=μ×l×{(ln(2l/d)−1)/2π ・・・(2)
ただし、dは導体間の距離(m)である。
【0022】
従来のバスバーの実効インダクタンスLopは、上記式(1)から得られた自己インダクタンスLsと上記式(2)から得られた相互インダクタンスMを次式(3)に代入することにより求められる。
Lop=Ls+Ls−2M ・・・(3)
ただし、Lsはバスバーを構成する一方の導体30の自己インダクタンス、Lsは他方の導体31の自己インダクタンスである。
【0023】
一方、本実施形態に係るバスバー10の実効インダクタンスLoiは、上記式(1)から得られた自己インダクタンスLsと上記式(2)から得られた相互インダクタンスMを次式(4)に代入することにより求められる。
Loi=Ls+Ls−2M−2M−2M−2M ・・・(4)
ただし、M,M,M,Mそれぞれは、Pバスバー11とNバスバー12の対向する4つの面についての相互インダクタンスである(図3参照)。
【0024】
上記式(3)及び式(4)から明らかなように、本実施形態に係るバスバー10によれば、Pバスバー11とNバスバー12の対向する4つの面で相互インダクタンスが形成されることにより、従来のバスバーと比較して、Pバスバー11とNバスバー12との間の相互インダクタンスが大きくなるため、バスバー10の実効インダクタンスが低減される。その結果、スイッチング時にパワーモジュール20に加わる電圧(サージ電圧)を低く抑えることができるため、パワーモジュール20の耐久性や信頼性などを向上することができる。
【0025】
ここで、互いに対向するPバスバー11の外周面とNバスバー12の内周面の表面積を増大させるため、Pバスバー11の外周面及びNバスバー12の内周面に、互いに噛み合うように凹凸を形成してもよい。このようにすれば、対向するPバスバー11の外周面とNバスバー12の内周面の表面積がより増大されることによって、Pバスバー11とNバスバー12との相互インダクタンスが増大するため、バスバー10の実効インダクタンスをさらに低減することができる。なお、Pバスバー11の外周面及びNバスバー12の内周面の表面形状は、例えば、正弦波形状や稲妻形状などであってもよい。
【0026】
本実施形態によれば、Pバスバー11を囲むようにNバスバー12を配置することにより、バスバー10を一本の棒状に形成することができる。そのため、バスバー10を小型化することができるとともに、その取り回しを簡素化することができる。その結果、バスバー10を取り回す際の配置自由度を向上することが可能となる。
【0027】
また、このような構造とすることによって、バスバー10の強度を増大することができるため、振動耐久性や耐衝撃力を向上することが可能となる。
【0028】
さらに、本実施形態によれば、Pバスバー11の外周面を囲むように配置されているNバスバー12に形成された配線取り出し用の孔12aから配線を取り出す構造としているため、孔12aの形成場所を変更することによって、全方位的に配線を取り出すことができる。そのため、配線方法の自由度を向上することが可能となるとともに、パワーモジュール20の実装位置や実装角度などの自由度を向上することが可能となる。
【0029】
本実施形態によれば、Pバスバー11とNバスバー12との間に絶縁体13が配置されているため、Pバスバー11とNバスバー12との短絡をより確実に防止することができるとともに、バスバー10をより小型化することが可能となる。
【0030】
また、絶縁体13として熱伝導率が高い素材を使用することにより、Pバスバー11の放熱を促進することができるため、バスバー10の小型化、延いてはバスバー10が用いられる電子機器の小型化を実現することができる。また、該電子機器の損失を低減することが可能となる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、Pバスバー11の断面は矩形に限られず、Pバスバー11の形状は棒状に限られない。また、Nバスバー12は、Pバスバー11を囲むように配置されていればよく、その断面は口の字状に限られない。
【0032】
上記実施形態では、Pバスバー11を囲むようにNバスバー12を配置したが、Pバスバー11とNバスバー12を入れ替え、Nバスバー12を囲むようにPバスバー11を配置する構成としてもよい。
【0033】
さらに、Nバスバー12の外周面に放熱フィンや冷却部材を設けることによって、バスバー10の放熱性をさらに向上することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態に係るバスバーの構成を示す図である。
【図2】従来のバスバーの実効インダクタンスを説明するための図である。
【図3】実施形態に係るバスバーの実効インダクタンスを説明するための図である。
【符号の説明】
【0035】
10…バスバー、11…Pバスバー、12…Nバスバー、13…絶縁体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から電力を供給する第1の導体と、第2の導体と、を備えるバスバーであって、
前記第2の導体は、前記第1の導体の軸線方向に対して平行に延びるとともに、前記第1の導体を囲むように配置されていることを特徴とするバスバー。
【請求項2】
前記第1の導体の外周面及び前記第2の導体の内周面には、互いに噛み合うように凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記第1の導体と前記第2の導体との間には、絶縁体が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のバスバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−27778(P2009−27778A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185957(P2007−185957)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】