説明

バッキングフィルムのための二成分ポリウレタン塗料

本発明は、バッキングフィルムのための二成分ポリウレタン塗料、その製造方法、および成形プラスチック部品に適用するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッキング(裏打ち)フィルムのための二成分ポリウレタン塗料、その製造方法、およびプラスチック成形品を仕上げるためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの熱可塑性合成材料の表面は、物理的耐性および化学的耐性に関する感受性が比較的高い。基材を染色することによる直接着色もまた、得られる色調および色彩効果について制限される。更に、目に見える表面欠陥、例えば流れすじが射出成形において生じることがあり、この欠陥は、目に見える領域における用途では許容できない。
【0003】
加えて、発泡部品は、表面欠陥および/または表面細孔をしばしば示し、このことは、傷のない塗装を極めて困難にする。特に、可能な研削操作の後、研削部品を、塗装前に手動で平滑化しなければならない。
【0004】
必要な耐性および所望の外観を得るためにプラスチック成形品を塗装することは、一般に知られている。機械的性質、耐性および寿命に関して相応の要求を有する高品質プラスチック部品の分野において、軟質基材に適合させた機械的性質と必要な耐性との妥協点を示す、ポリウレタンに基づく塗料が主流である。
【0005】
塗料層およびプラスチック部品からなる複合要素は一般に、先に射出成形によって発泡または製造したプラスチック部品を、その後の噴霧工程または浸漬工程において塗装することによって製造する。これは、特に自動車製造において、面積の大きい部品または複雑な形態を有する部品を製造するのに好ましい手順である。上記したその後の塗料層の適用は、多くの独立した作業工程を必要とし、その一部は、手動で実施しなければならず、自動化することができない。更に、かなりの作業によっても、一定の部品構成面積しか被覆することができない。そのうえ、三次元物体の塗装の過程では、塗料の著しい無駄、いわゆる塗り過ぎを考慮しなければならない。加えて、三次元部品の塗装過程におけるエラー頻度は、技術的により簡単な二次元フィルムの被覆過程におけるエラー頻度より明らかに高い。
【0006】
原料を節約する効率のよい安価な手順に到達するために、まずプラスチックフィルムを通常の塗装法(例えば、ナイフ塗布、ロール塗または吹付塗)によって広範囲に被覆し、この塗膜を、実質的に不粘着性になるよう物理的乾燥によって乾かすかまたは部分硬化させる方法が知られている。次いで、このフィルムを高温で変形し、その後、接着結合、背面射出またはフォーム裏打ちすることができる。この概念は、例えばプラスチック加工業者による部品の製造に大きな可能性をもたらし、それによって、三次元部品塗装のより複雑な工程を、平面基材のより簡単な被覆に置き換えることができる。
【0007】
EP−A 1 647 399は、バッキングフィルムおよびこのフィルムに適用された軟らかな感触の塗膜からなる複合成形品を記載している。このバッキングフィルムは、熱可塑性樹脂を用いた背面射出成形または背面圧縮成形に適しており、それによって、軟らかな感触の塗膜が損傷を受けることはない。例えば、この塗膜には、ばりもクラックも見られない。この塗料組成物に含まれるポリオール成分は、ポリイソシアネート架橋剤と化学的に反応する構成単位に加えて、弾性をもたらすヒドロキシル基不含有および/またはアミン基不含有ポリウレタンも含有する。この塗料組成物は、もっぱら物理的に乾き、化学反応によって基材上で架橋結合することはない。従って、そのような塗膜は、化学的に完全に反応した塗膜より高いレベルの耐引掻性および耐薬品性を有することはない。
【0008】
一般に、良好な表面特性は、塗膜の高い架橋密度を前提としている。しかしながら、高い架橋密度の欠点は、最大でも数パーセントにしか達しない延伸率を伴った熱硬化挙動をもたらし、塗膜が変形工程中に割れやすくなることである。
【0009】
更に、この方法を経済的に適用するためには、変形可能な被覆フィルムをロールに一時的に間巻き付けておく必要がある。それによりロールにおいて生じる圧縮応力および熱応力の故に、塗膜には耐ブロッキング性が特に要求される。本発明において、「耐ブロッキング性」は、熱または圧縮のような応力の下で2つの被覆表面を結合する過程で生じる粘着効果を意味する。解決に向けた努力がなされている、必要な高い架橋密度と高い延伸率のこの明らかな相反は、例えば、変形前および変形後に、二段階で塗膜の乾燥/硬化を実施することによって解決することができる。塗膜における放射線架橋反応が、後硬化に特に適している。
【0010】
WO−A 2005/099943は、バッキング層およびバッキング層上に適用された少なくとも1つの硬化性塗料層を有する軟質積層複合材料であって、塗料が−15℃〜20℃のガラス転移温度Tgを有する二重結合含有結合剤を含有し、熱乾燥後に粘着性を示さなくなる、軟質積層複合材料を記載している。WO−A 2005/099943はまた、この低いTgの故に、塗膜がダストの影響を受けやすい場合があることも記載している。実施例では、10℃で60秒間、500g/cmの負荷を加えた後、ろ紙の跡がまだ見える時点で、放射線硬化前に塗膜の乾燥度または耐ブロッキング性を得ている。圧力および温度に関して、一巻きのフィルムにおける塗膜への負荷は通常、より大きい。従って、同特許文献は、塗膜の放射線硬化前にロールにフィルムを巻き付ける可能性を記載していない。更に、同方法の欠点は、所望の耐性を得るために、三次元完成部品の放射線処理が必要なことである。従って、部品のいわゆる陰の領域における塗料の硬化が、常に確実に保証されるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP−A 1 647 399
【特許文献2】WO−A 2005/099943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、バッキングフィルムを被覆するための新規なポリウレタン水性塗料を提供することである。この塗料は、高い延伸率を有すると同時に、高い耐引掻性および耐薬品性を示す。更に、被膜のクラック形成を伴わず、被覆バッキングフィルムをロール上に巻き付けることができなければならない。これに関して、高い耐ブロッキング性も同様に得られなければならない。すなわち、バッキングフィルムは、くっつかずに問題なくロールから巻き出すことができなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
熱可塑性バッキングフィルムに被覆することができる特定のポリウレタン水性塗料が、この目的を達成することが見出された。
【0014】
従って、本発明は、
A)構成成分として、
a1)直鎖または分枝ヒドロキシ官能性ポリエステル、
a2)直鎖ヒドロキシ官能性ポリカーボネート、
a3)少なくとも1個の酸基および少なくとも1個のイソシアネート反応性基を含有する少なくとも1種のイオン性または潜在イオン性化合物、
a4)少なくとも1種の(環状)脂肪族ジイソシアネート、および
a5)低分子量のヒドロキシ官能性および/またはアミノ官能性化合物
を含有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散体、並びに
B)少なくとも1種のポリイソシアネート架橋剤
を含有する二成分ポリウレタン水性塗料であって、成分B)のイソシアネート基対成分A)のヒドロキシ基の架橋比が1.0:1〜1.6:1であることを特徴とする二成分ポリウレタン水性塗料を提供する。架橋比は、好ましくは1.2:1〜1.4:1である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
二成分ポリウレタン塗料は、任意に、更なる助剤および添加剤C)を含有してよい。
【0016】
ポリイソシアネートB)の平均官能価は、2.5〜3.3、好ましくは2.8〜3.0である。
【0017】
ポリエステル−ポリウレタン分散体A)の調製は、成分a1)〜a5)の重付加、並びにその後のカルボン酸の中和および水への分散によって実施する。
【0018】
成分a5)には、合計で2個以上、好ましくは3個のヒドロキシル基および/またはアミノ基を含有し、62g/mol〜400g/molの分子量Mを有する低分子量化合物が好ましい。
【0019】
好適なポリエステル−ポリウレタン分散体A)は、20重量%〜50重量%、好ましくは30重量%〜40重量%の成分a1)、20重量%〜50重量%、好ましくは30重量%〜40重量%の成分a2)、2重量%〜6重量%、好ましくは3重量%〜5重量%の成分a3)、10重量%〜30重量%、好ましくは15重量%〜25重量%の成分a4)、および0.5重量%〜10重量%、好ましくは2重量%〜5重量%の成分a5)を含有し、成分a1)〜a5)の総重量パーセントは100重量%になる。
【0020】
分散体を安定化する目的で成分a3)により組み込まれる酸基は、40%〜120%、好ましくは50%〜80%の割合で塩の基として存在する。
【0021】
本発明のヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散体の、成分a3)によりもたらされる酸価は、各々の場合にポリエステルポリウレタン水性分散体に関して5.0〜14.5mgKOH/g、好ましくは8.0〜11mgKOH/gである。
【0022】
例えば標準としてポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって測定することのできる、ポリエステル−ポリウレタン分散体A)の平均分子量Mは、3000g/mol〜30,000g/mol、好ましくは5000g/mol〜15,000g/mol、特に好ましくは6000g/mol〜10,000g/molであり、従って、例えば従来技術のポリウレタン分散体の場合より有意に小さい。
【0023】
ポリエステル−ポリウレタン分散体A)に含有されるポリエステルa1)は、溶融縮合または共沸縮合の原理に優先的に従って、常套のエステル化触媒を任意に併用して、100℃〜260℃の温度で水を除去しながら、それ自体既知の方法で調製することができる。ポリエステルa1)の好ましい調製方法は、真空中でのまたは不活性ガスを用いた溶融縮合である。
【0024】
本発明では、種々のポリエステルの混合物および種々の官能価を有するポリエステルの混合物を使用することもでき、ポリエステルa1)の平均官能価は、1.8〜2.5、好ましくは1.9〜2.1、特に好ましくは2.0である。
【0025】
ポリエステルa1)は、500g/mol〜3000g/mol、好ましくは500g/mol〜1000g/molの、計算によって確かめられた理論上の分子量を有する。
【0026】
ポリエステルの理論上の分子量は、以下の式によって決定する。
【数1】

【0027】
好ましく使用されるポリエステルa1)は、
a1)30重量%〜77重量%、好ましくは40重量%〜60重量%の少なくとも1種の少なくとも二官能性のカルボン酸またはその無水物、
a1ii)23重量%〜70重量%、好ましくは40重量%〜60重量%の少なくとも1種のジオール、
a1iii)0重量%〜10重量%の少なくとも1種の、3個以上のヒドロキシル基を含有するアルコール、
a1iv)0重量%〜10重量%の他のヒドロキシ官能性および/またはカルボキシ官能性成分および/またはカプロラクトン
の反応生成物である。
【0028】
適当なポリエステル原料a1)は、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、無水マレイン酸、フマル酸、二量体脂肪酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸および/または無水トリメリット酸またはそれらの混合物である。
【0029】
好ましい成分a1)は、アジピン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、イソフタル酸またはグルタル酸であり、特に好ましいものは、アジピン酸並びにヘキサヒドロフタル酸またはフタル酸およびそれらの無水物である。
【0030】
適当なポリエステル原料a1ii)は、例えば、1,2−エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、水和ビスフェノール、トリメチルペンタンジオール、1,8−オクタンジオールおよび/またはトリシクロデカンジメタノール並びにそれらの混合物である。
【0031】
好ましい成分a1ii)は、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールまたは1,6−ヘキサンジオールである。
【0032】
好適な成分a1ii)は、ネオペンチルグリコール、ブタンジオールおよびヘキサンジオールである。
【0033】
適当なポリエステル原料a1iii)は、例えば、トリメチロールプロパン、エトキシル化トリメチロールプロパン、プロポキシル化トリメチロールプロパン、プロポキシル化グリセリン、エトキシル化グリセリン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ひまし油およびそれらの混合物である。
好ましい成分a1iii)は、トリメチロールプロパンである。
【0034】
任意に使用する適当なポリエステル原料a1iv)は、例えば、C〜C22脂肪酸、例として、2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、水和脂肪酸、安息香酸、単官能性アルコール、例えば、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、シクロヘキサノール、他の単官能性アルコール、例として、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレン/ポリプロピレンオキシド混合コポリマーまたはブロックコポリマー、並びにそれらの混合物である。
【0035】
構成成分a2)は、直鎖ヒドロキシ官能性ポリカーボネートである。適当なポリカーボネートa2)は、例えば炭酸誘導体(例として、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチルまたはホスゲン)とポリオール(好ましくはジオール)との反応によって得ることができる、ポリカーボネートである。そのようなタイプのジオールとして、例えば以下を考慮に入れることができる:エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAおよびラクトン変性ジオール。ジオール成分は、好ましくは、ヘキサンジオール、好適には1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体、好ましくは末端OH基に加えてエーテル基またはエステル基を含有するもの、例えば少なくとも1mol、好ましくは1mol〜2molのカプロラクトンによる1molのヘキサンジオールの転化によって、或いはジヘキシレングリコールまたはトリヘキシレングリコールを生成するためのヘキサンジオール同士のエーテル化によって得ることができる生成物を、40重量%〜100重量%の割合で含有する。ポリエーテルポリカーボネートジオールを使用することもできる。ヒドロキシルポリカーボネートは、実質上直鎖でなければならない。しかしながら、ヒドロキシルポリカーボネートは場合により、多官能性成分、特に低分子量ポリオールの配合によって僅かに分岐していることもある。この目的に適しているものは、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール−1,2,6、ブタントリオール−1,2,4、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシドまたは1,3,4,6−ジアンヒドロヘキサイトである。ポリカーボネートポリオールの調製は、好ましくは、EP−A 1 404 740(第6〜8頁、実施例1〜6)およびEP−A 1 477 508(第5頁、実施例3)に記載されている調製方法によって実施する。
【0036】
特に好ましいポリカーボネートポリオールa2)は、構成成分として少なくとも25重量%の1,4−ブタンジオールを含有し、1.6〜4、好ましくは1.8〜3、特に好ましくは1.9〜2.3の平均ヒドロキシル官能価および240g/mol〜8000g/mol、好ましくは500g/mol〜3000g/mol、特に好ましくは750g/mol〜2500g/molの数平均分子量を有するポリカーボネートポリオールである。ジオール成分は、好ましくは45重量%〜100重量%の1,4−ブタンジオールおよび1重量%〜55重量%の1,6−ヘキサンジオール、特に好ましくは60重量%〜100重量%の1,4−ブタンジオールおよび1重量%〜40重量%の1,6−ヘキサンジオールを含有する。
【0037】
ヒドロキシルポリカーボネートは、好ましくは直鎖であるが、場合により、多官能性成分、特に低分子量ポリオールの配合によって分岐していることもある。特に好ましい成分a2)は、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物に基づき、1.9〜2.05の平均ヒドロキシル官能価を有する。
【0038】
成分a3)は、少なくとも1個の酸基および少なくとも1個のイソシアネート反応性基を含有する少なくとも1種のイオン性または潜在イオン性化合物を含む。適当な酸基は、例えばカルボキシル基およびスルホン酸基である。適当なイソシアネート反応性基は、例えばヒドロキシル基および/またはアミノ基である。
【0039】
成分a3)は、好ましくは、少なくとも1個のヒドロキシル基、好ましくは1個または2個のヒドロキシル基を含有するカルボン酸である。成分a3)として特に好ましく使用するものは、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸および/またはヒドロキシピバリン酸であり、ジメチロールプロピオン酸を使用することがとりわけ好ましい。
【0040】
同様に適当な酸は、例えば、他の2,2−ビス(ヒドロキシメチル)アルカンカルボン酸、例として、ジメチロール酢酸または2,2−ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、アミン(例えばイソホロンジアミンまたはヘキサメチレンジアミン)へのアクリル酸のマイケル付加生成物、またはそのようなタイプの酸の混合物、および/またはジメチロールプロピオン酸および/またはヒドロキシピバリン酸である。同様に、US−A 4,108,814に記載されているタイプの、場合によりエーテル基を含有してよいスルホン酸ジオールの使用、または2−アミノエチルアミノエタンスルホン酸の使用も可能である。
【0041】
遊離酸基は「潜在イオン性」基に相当するが、中和剤での中和によって得られた塩様基、カルボキシレート基またはスルホネート基は「イオン性」基である。
【0042】
成分a4)の適当なポリイソシアネートは、好ましくは2より大きいイソシアネート官能価を有する、当業者にそれ自体知られている芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートであって、それらは、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレトジオン構造、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、ウレア構造、オキサジアジントリオン構造、オキサゾリジノン構造、アシルウレア構造および/またはカルボジイミド構造を含有していてもよい。ポリイソシアネートは、単独でまたは互いの混合物として使用することができる。
【0043】
適当なポリイソシアネートa4)の例は、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたは任意の異性体含量を有するそれらの混合物、イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートおよび/または2,6−トルイレンジイソシアネート、1,3−ビス(2−イソシアナトプロプ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)および1,4−ビス(2−イソシアナトプロプ−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、または3個以上のイソシアネート基を含有し、ウレトジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、イミノオキサジアジンジオン構造および/またはオキサジアジントリオン構造を有し、前記ジイソシアネートに基づく誘導体である。
【0044】
一分子あたり3個以上のイソシアネート基を含有する未変性ポリイソシアネートの例として、例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)を挙げることができる。
【0045】
もっぱら脂肪族的および/または脂環式的に結合しているイソシアネート基を含有する上記タイプのポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物が好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよびそれらの混合物が特に好ましい。
【0046】
ポリエステル−ポリウレタン水性分散体の調製方法は、均一相において一段階以上で、または多段階転化の場合は部分的に分散相において実施することができる。成分a1)〜a4)から完全にまたは部分的に実施した重付加の後、分散工程、乳化工程または溶解工程を実施する。その直後に、分散相において更なる重付加または変性を、場合により実施してもよい。
【0047】
ポリエステル−ポリウレタン水性分散体を調製するために、従来技術から知られている方法の全て、例えば、プレポリマー混合法、アセトン法または溶融分散法を使用することができる。
【0048】
成分a1)〜a4)の転化の過程で既に存在してよい適当な中和剤は、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジメチルイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、アンモニア、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムである。
【0049】
ヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散体A)は、一般に0重量%〜10重量%、好ましくは0重量%〜3重量%の有機溶媒を含有する。
【0050】
場合により実施される過剰量の溶媒の蒸留分離は、例えば、分散用水への分散中または分散後に、例として20℃〜80℃で、減圧下実施してよい。
【0051】
ポリエステル−ポリウレタン分散体A)の固形分は、40重量%〜60重量%、好ましくは50重量%〜57重量%である。
【0052】
分散体A)は、80nm〜500nm、好ましくは100nm〜200nmの、例えばLCS測定によって測定される、粒径を有する。
【0053】
ウレタン基を含有するヒドロキシ官能性ポリエステル分散体A)を、任意に親水化されていてよい遊離イソシアネート基含有ポリイソシアネートB)と組み合わせて配合し、本発明の二成分水性塗料を生成する。この使用において、塗料は24時間までの限定されたポットライフを有する。それから形成した塗膜は、室温〜120℃で硬化することができる。
【0054】
成分B)として、遊離イソシアネート基含有ポリイソシアネートを使用する。適当なポリイソシアネートは、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)メタンまたは1,3−ジイソシアナトベンゼンに基づくポリイソシアネート、或いは1,6−ジイソシアナトヘキサン、イソホロンジイソシアネートまたはビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)メタンのアロファネート基、ウレトジオン基、ビウレット基またはイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートのようなラッカーポリイソシアネート或いはウレタン基含有ラッカーポリイソシアネートに基づくポリイソシアネート、一方で2,4−ジイソシアナトトルエンおよび/または2,6−ジイソシアナトトルエンまたはイソホロンジイソシアネートに、他方で低分子量ポリヒドロキシル化合物(例えば、トリメチロールプロパン、異性体プロパンジオールまたは異性体ブタンジオール)またはそのようなタイプのポリヒドロキシル化合物の混合物に基づくポリイソシアネートである。
【0055】
成分B)として好ましいものは、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族イソシアネートに基づく疎水性のまたは親水化された低粘性遊離イソシアネート基含有ポリイソシアネートであり、脂肪族または脂環式イソシアネートに基づくものが特に好ましい。これらのポリイソシアネートは一般に、23℃で10mPas〜3500mPasの粘度を有する。上記範囲内に粘度を低下させるために、所望により、ポリイソシアネートを少量の不活性溶媒と混合してもよい。架橋剤成分として、トリイソシアナトノナンをそれ自体でまたは混合物として使用することもできる。水溶性または水分散性ポリイソシアネートは、例えば、カルボキシレート基、スルホネート基および/またはポリエチレンオキシド基および/またはポリエチレンオキシド基/ポリプロピレンオキシド基での変性によって得ることができる。
【0056】
ポリイソシアネートB)を親水化するために、不足量の一価親水性ポリエーテルアルコールでポリイソシアネートを転化することが好ましい。そのようなタイプの親水化ポリイソシアネートの調製は、例えばEP−A 0 540 985に記載されている。アロファネート化条件下、ポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールで低モノマー含量を有するポリイソシアネートを転化することによって調製される、EP−A 0 959 087に記載のアロファネート基含有ポリイソシアネートも同様に好ましい。DE−A 100 07 821に記載の、トリイソシアナトノナンに基づく水分散性ポリイソシアネート混合物、並びに例えばDE−A 100 24 624に記載されているような、イオン性基(スルホネート基、ホスホネート基)で親水化されたポリイソシアネートも適している。市販乳化剤の添加による親水化も可能である。
【0057】
好ましくは二官能性または三官能性のポリオール成分、特に好ましくは構成成分a1)で既に挙げたようなポリオール成分で上記ポリイソシアネート成分を予備重合することによって容易に得られる軟化ポリイソシアネート成分B)を含有する混合物を、成分B)として使用することが特に好ましい。
【0058】
これに関して、更に好ましい硬化剤成分の例は、例えばDE−A 100 24 624に記載されているような、スルホネート基変性ポリイソシアネートである。
【0059】
もちろん、いわゆるブロックトポリイソシアネートとして成分B)を使用することも可能である。上記した遊離イソシアネート基含有ポリイソシアネートのブロックは、適当なブロック剤で遊離イソシアネート基含有ポリイソシアネートを転化することによる既知の従来技術に従って実施する。上記ポリイソシアネートに適したブロック剤は、例えば、一価アルコール、例として、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、オキシム、例として、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、ラクタム、例として、ε−カプロラクタム、フェノール、アミン、例として、ジイソプロピルアミンまたはジブチルアミン、ジメチルピラゾールまたはトリアゾールおよびマロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステルまたはマロン酸ジブチルエステルである。
【0060】
分散体A)を基材(好ましくはフィルム)上にそのまま適用するならば、欠陥またはクレーターのない透明で非常に流動性の良い層を得ることができ、100μmを超える非常に厚い層を得ることも可能である。分散体A)は著しい物理的乾燥を示さない。すなわち、程度の差はあるが、層は粘着性を有したままであるか、またはざらざらした状態のままである。硬化不粘着性硬質層は、少なくとも1種の架橋剤ポリイソシアネートB)を配合し、硬化して初めて得ることができる。
【0061】
バッキングフィルム上に塗膜として適用される本発明の二成分ポリウレタン水性塗料は、成分A)およびB)に加えて、通常の助剤および添加剤C)を任意に含有してよく、それらの例は、有機顔料および/または無機顔料、或いはアルミニウムフレークに基づく金属顔料、充填材、例えば、カーボンブラック、シリカ、タルク、カオリン、粉末または繊維状ガラスおよびそれらの混合物、および/または塗料、被覆剤および接着剤の製造に一般的な他の材料である。
【0062】
特定の効果を得るために、ポリエステル分散体A)の調製の過程で、塗料産業および接着剤産業において常套である助剤を少量添加することもでき、その例は、界面活性物質、乳化剤、安定剤、沈降防止剤、紫外線安定剤、架橋反応のための触媒、消泡剤、酸化防止剤、皮張り防止剤、流れ制御剤、増粘剤および/または殺菌剤である。
【0063】
好ましい態様では、本発明の二成分ポリウレタン水性塗料は、ヒドロキシル基含有シリコーン添加剤を含有する。ヒドロキシル基含有シリコーン添加剤を使用すると、特に滑らかな表面を得ることができる。
【0064】
本発明の二成分ポリウレタン塗料は基本的に、様々な基材、特に様々なタイプの、金属、木材、セラミック、石材、コンクリート、ビチューメン、硬質繊維、ガラス、磁器、プラスチック、皮革および/または布地を、被覆、塗装、接着結合、処理およびシールするのに適している。好ましい用途は、プラスチックの被覆である。ポリカーボネートを被覆することが特に好ましい。
【0065】
本発明の二成分ポリウレタン水性塗料は、噴霧、流し塗、流延、浸漬、ロール塗、はけ塗のような既知の方法で、被覆すべき基材上に適用することができる。
【0066】
二成分ポリウレタン水性塗料は、例えばプライマーおよび/またはフィラー塗りおよび/または下塗りおよび/または仕上塗りからなる、多層塗膜構造の一部として使用することもできる。これに関して、少なくとも2つの層を順次適用し、場合により予備乾燥し、次いで一緒に加熱処理する、ウェット・オン・ウェット塗布法を適用することも可能である。塗料は、1種以上の他の水性分散体をある割合で含有してもよく、その例は、ポリエステル系水性分散体、ポリウレタン系水性分散体、ポリウレタンポリアクリレート系水性分散体、ポリアクリレート系水性分散体、ポリエーテル系水性分散体、ポリエステルポリアクリレート系水性分散体、アルキド樹脂系水性分散体、重合体系水性分散体、ポリアミド/イミド系水性分散体、またはポリエポキシド系水性分散体である。
【0067】
バッキングフィルムを製造するための塗料として使用される本発明の二成分ポリウレタン水性塗料は、非常に良好な加工性を特徴とする。得られる被膜は、優れたフィルム光学的性質および流れ特性、非常に小さいクレーター発生率、良好な耐性、バランスのとれた硬度/弾性率、並びに非常に良好な貯蔵安定性を示す。更に、バッキングフィルムは、優れた耐ブロッキング性を示す。すなわち、巻き取り後、バッキングフィルムはロールから容易に巻き出すことができる。
【0068】
フィルム上の構成要素領域を被覆するため、例えばスクリーン印刷を使用することが好ましい。層厚は2μm〜100μm、好ましくは5μm〜75μm、特に好ましくは5μm〜50μmであってよい。
【0069】
バッキングフィルムを製造するため、例えばPET、ポリカーボネート、PMMA、ポリスルホンなどからなる、常套のプラスチックフィルムをバッキングフィルムとして使用することができる。フィルムは任意に、コロナ処理などのような方法で前処理することもできる。バッキングフィルムは好ましくは2μm〜2000μmの厚さを有する。ポリカーボネートおよびポリカーボネート混合物からなるバッキングフィルムを使用することが好ましい。バッキングフィルムは、複数のプラスチック層からなるいわゆる複合フィルムであってもよい。
【0070】
適当なバッキングフィルムとして、基本的に、それ自体知られているかまたは市販されているポリカーボネートの全てが適している。バッキングフィルムとして適しているポリカーボネートは、好ましくは、10,000g/mol〜60,000g/molの範囲に分子量を有する。ポリカーボネートは、例えば、DE−B−1 300 266の方法に従って界面重縮合によって、またはDE−A−1 495 730の方法に従ってビスフェノールでの炭酸ジフェニルの転化によって得ることができる。好ましいビスフェノールは2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパンであり、これは、一般にビスフェノールAと称されており、以下、ビスフェノールAと称することもある。
【0071】
ビスフェノールAに代えて、他の芳香族ジヒドロキシ化合物、特に、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルファン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロアルカンまたはジヒドロキシジフェニルシクロアルカン、好ましくはジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンまたはジヒドロキシシクロペンタン、および上記ジヒドロキシ化合物の混合物を使用することもできる。
【0072】
バッキングフィルムとして特に適しているポリカーボネートは、例えばWO 00/15718またはWO 00/26274に記載されているような、レゾルシノールエステルまたはアルキルレゾルシノールエステルから誘導された単位を含有するポリカーボネートであり、そのようなポリカーボネートは、例えばSollx(登録商標)の商標でGeneral Electric Companyから販売されている。
【0073】
これらのバッキングフィルムに加えて、プラスチックのブレンドまたは混合物を使用することもできる。ポリカーボネートおよびポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレート、並びにシクロヘキサンジカルボン酸とシクロヘキサンジメタノールとから生成されたポリエステル)からなるブレンドが特に有利であることが分かった。そのような製品は、Bayer MaterialScience AGからBayfol(登録商標)の商品名で、またはGeneral Electric CompanyからXylex(登録商標)の商品名で販売されている。
【0074】
US−A 3,737,409に従ったコポリカーボネートを使用することもできる。これに関して、高い熱安定性を特徴とし、ビスフェノールAとジ(3,5−ジメチルジヒドロキシフェニル)スルホンとに基づくコポリカーボネートが特に興味深い。更に、別のポリカーボネートの混合物を使用することもできる。
【0075】
耐衝撃性PMMAは、適当な添加剤によって耐衝撃性を有するよう処理されたポリメチルメタクリレートであり、好ましく使用する。適当な強化PMMAは、例えば、M. Stickler, T. RheinによってUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第A21巻、第473〜486頁、VCH Publishers, ヴァインハイム、1992に、そしてH. Domininghaus, Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften, VDI-Verlag, デュッセルドルフ、1992に記載されている。
【0076】
バッキングフィルムの製造には、例えば層のアダプター押出または共押出或いは積層による、既知の方法の全てを考慮に入れることができる。更に、バッキングフィルムは、溶液から流延してもよい。
【0077】
バッキングフィルムの表面は、光沢を有した状態であってもよいし、構造化または艶消ししてもよい。
【0078】
背面射出プラスチック、バッキングプラスチックまたは背面圧縮成形プラスチックとして、既知の熱可塑性ポリマー材料の全てを考慮に入れることができる。例えば、ポリオレフィン、例としてポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリエステル、例としてポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、例としてポリオキシメチレン(POM)、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、スチレン(コ)ポリマーのような熱可塑性ポリマー、または上記ポリマーの混合物が適当である。
【0079】
特に適当なポリカーボネートは、ビスフェノールAポリカーボネートおよびTMCビスフェノールポリカーボネートである。好ましいポリマー混合物は、ポリカーボネートおよびポリブチレンテレフタレートまたはポリカーボネートおよびABS重合体を含有する。
【0080】
バッキングフィルムにおける塗膜の非常に良好な変形性および良好な付着性並びに良好な延伸挙動の故に、均一に形成された、すなわち実質的に平坦な、または中低そりの成形品だけでなく、押込みおよび造形、垂直造形またはくぼみを有する成形品、例えば携帯電話のキーボードを製造することもできる。従って、要求の厳しい構造を有する複合成形品において、バッキングフィルムに関する良好な表面特性を得ることもできる。
【0081】
本発明のバッキングフィルムは、通信機器、車両構造物、造船構造物および航空機構造物に使用する。
【0082】
本発明はまた、プラスチック成形品、好ましくはディスプレー画面ハウジングを仕上げるための、本発明のバッキングフィルムの使用も提供する。
【0083】
以下の実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0084】
特に記載のない限り、全てのパーセントは重量パーセントを意味する。
使用した物質および略語:
BYK(登録商標) 348:湿潤剤(BYK-Chemie(ドイツ国ヴェーゼル在))
BYK(登録商標) 337:表面添加剤(BYK-Chemie(ドイツ国ヴェーゼル在))
MPA:1−メトキシ−2−プロピルアセテート
Tinuvin(登録商標) 292:HALSアミン(Ciba GmbH(ドイツ国ランペルトハイム在))
Tinuvin(登録商標) 384-2:紫外線吸収剤(Ciba GmbH(ドイツ国ランペルトハイム在))
Bayhydur(登録商標) VPLS 2306:弾性のある親水性ポリイソシアネート(Bayer MaterialScience AG(ドイツ国在));平均官能価2.5
Bayhydur(登録商標) XP 2655:親水性ポリイソシアネート(Bayer MaterialScience AG(ドイツ国在));平均官能価3.1
固形分の測定はDIN−EN ISO 3251に従って実施した。
イソシアネート含量は、特に記載のない限り、DIN−EN ISO 11909に従って容量分析で測定した。
【0085】
実施例1
ポリエステルポリオール
撹拌機、加熱装置、および冷却装置付き水分離器を備えた15リットル容の反応容器に、1281gの無水フタル酸、5058gのアジピン酸、6387gのヘキサンジオール−1,6および675gのネオペンチルグリコールを計量供給し、窒素下、140℃に1時間で加熱した。次の9時間で220℃に加熱し、3未満の酸価に達するまでこの温度で縮合を実施した。このようにして得たポリエステルポリオールは、54秒の(23℃でDIN 4ビーカーで、ポリエステルのメトキシプロピルアセテート中80%溶液の流出時間として測定した)粘度および160mgKOH/gのヒドロキシル価を有していた。
【0086】
実施例2
1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオールの調製
フラスコに、1223gの1,4−ブタンジオールおよび535gの1,6−ヘキサンジオールを供給し、100℃に加熱した。約2L/時の窒素をジオール混合物に導入し、20mbarに減圧し、含水量が0.1%未満になるまで混合物を脱水した(約2時間)。
【0087】
次いで、0.44gのアセチルアセトン酸イッテルビウム(III)を添加し、ジオール混合物を110℃に加熱した。続いて、2297gの炭酸ジメチルを約20分間で流し込み、反応混合物を還流しながら24時間維持した。最後に、温度を150℃に上昇させ、得られた留出物を除去した。その後、更に180℃に昇温し、更に蒸留した。
【0088】
反応混合物を130℃に冷却し、圧力を10mbarに低下させた。次いで、油浴温度を130℃から180℃まで2時間以内に上昇させたが、それによって、蒸留塔の塔頂温度は60℃を超えなかった。180℃に達した後、この温度を6時間維持した。
【0089】
続いて、反応混合物を130℃に冷却し、圧力を10mbarに低下させた。次いで、油浴温度を130℃から180℃まで2時間以内に上昇させたが、それによって、蒸留塔の塔頂温度は60℃を超えなかった。180℃に達した後、この温度を6時間維持した。反応混合物を室温まで冷却し、生成物の特性データを測定した。
【0090】
57.3mgKOH/gのヒドロキシル価および115Pasの23℃での粘度を有するポリカーボネートジオールを得た。
【0091】
実施例3
1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオールの調製
フラスコに、1239gの1,4−ブタンジオールおよび542gの1,6−ヘキサンジオールを供給し、油浴の中で100℃に加熱した。約2L/時の窒素をジオール混合物に導入し、20mbarに減圧し、含水量が0.1%未満になるまで混合物を脱水した(約2時間)。
【0092】
次いで、0.44gのアセチルアセトン酸イッテルビウム(III)を添加し、ジオール混合物を110℃に加熱した。続いて、2180gの炭酸ジメチルを約20分間で流し込み、反応混合物を還流しながら24時間維持した。最後に、温度を150℃に上昇させ、得られた留出物を除去した。その後、更に180℃に昇温し、次いで更に蒸留した。
【0093】
反応混合物を130℃に冷却し、圧力を10mbarに低下させた。次いで、油浴温度を130℃から180℃まで2時間以内に上昇させたが、それによって、蒸留塔の塔頂温度は60℃を超えなかった。180℃に達した後、この温度を6時間維持した。
【0094】
続いて、反応混合物を130℃に冷却し、圧力を10mbarに低下させた。次いで、油浴温度を130℃から180℃まで2時間以内に上昇させたが、それによって、蒸留塔の塔頂温度は60℃を超えなかった。180℃に達した後、この温度を6時間維持した。そして、反応混合物を室温まで冷却し、生成物の特性データを測定した。
【0095】
113.4mgKOH/gのヒドロキシル価および13,600mPasの23℃での粘度を有するポリカーボネートジオールを得た。
【0096】
実施例4
ヒドロキシ官能性PUR分散体
冷却装置、加熱装置および撹拌装置を備えた6リットル容の反応容器に、1170gの実施例1のポリエステルポリオールを窒素雰囲気中に導入し、1140gの実施例2のポリカーボネートジオール、90gのトリメチロールプロパン、120gのジメチロールプロピオン酸および3.8gのオクタン酸錫(II)と一緒に130℃に加熱し、30分間均質化した。次いで、80℃に冷却し、480gのヘキサメチレンジイソシアネートを激しく撹拌しながら添加し、発熱反応を利用して140℃に加熱し、NCO基が検出できなくなるまで、混合物をこの温度で維持した。
【0097】
続いて、このようにして得たポリウレタンを90℃〜100℃に冷却し、47gのジメチルエタノールアミン(中和度60%)を添加し、15分間均質化し、混合物を2270gの脱イオン水に分散させた。このようにして得たポリウレタン樹脂水性分散体は、1.4%のヒドロキシ含量(100%)、16.8の酸価(100%)、110nmの平均粒径、約2020mPasの粘度(23℃;D=40s−1)および51.2重量%の固形分を有していた。
【0098】
実施例5
ヒドロキシ官能性PUR分散体
冷却装置、加熱装置および撹拌装置を備えた6リットル容の反応容器に、1170gの実施例1のポリエステルポリオールを窒素雰囲気中に導入し、1140gの実施例3のポリカーボネートジオール、90gのトリメチロールプロパン、120gのジメチロールプロピオン酸、125gのN−メチルピロリドンおよび3.8gのオクタン酸錫(II)と一緒に130℃に加熱し、30分間均質化した。次いで、80℃に冷却し、480gのヘキサメチレンジイソシアネートを激しく撹拌しながら添加し、発熱反応を利用して140℃に加熱し、NCO基が検出できなくなるまで、混合物をこの温度で維持した。
【0099】
続いて、このようにして得たポリウレタンを90℃〜100℃に冷却し、39gのジメチルエタノールアミン(中和度50%)を添加し、15分間均質化し、混合物を2270gの脱イオン水に分散させた。このようにして得たポリウレタン樹脂水性分散体は、1.4%のヒドロキシ含量(100%)、16.3の酸価(100%)、150nmの平均粒径、約1680mPasの粘度(23℃;D=40s−1)および55.9重量%の固形分を有していた。
【0100】
実施例6
耐引掻性透明塗膜(参考例)
基剤(成分A)の調製
56.80gの実施例5のポリウレタン分散体に、0.45gのByk(登録商標) 347、0.77gのByk(登録商標) 337および22.17gの蒸留水を添加し、よく撹拌した。
【0101】
硬化剤溶液(成分B)の調製
8.60gのBayhydur(登録商標) XP 2655に、0.77gのTinuvin(登録商標) 292(MPA中50%溶液)、1.16gのTinuvin(登録商標) 384-2(MPA中50%溶液)および9.28gのMPAを添加し、よく撹拌した。
【0102】
実施例7
耐引掻性透明塗膜
基剤(成分A)の調製
51.59gの実施例5のポリウレタン分散体に、0.45gのByk(登録商標) 347、0.77gのByk(登録商標) 337および24.59gの蒸留水を添加し、よく撹拌した。
【0103】
硬化剤溶液(成分B)の調製
11.34gのBayhydur(登録商標) XP 2655/Bayhydur(登録商標) VP LS 2306混合物(各々の場合に50重量%)に、0.77gのTinuvin(登録商標) 292(MPA中50%溶液)、1.16gのTinuvin(登録商標) 384-2(MPA中50%溶液)および9.33gの1−メトキシプロピルアセテート(MPA)を添加し、よく撹拌した。
【0104】
実施例8(参考)
未塗装ポリカーボネートフィルム(フィルム厚さ:175μm)
基剤と硬化剤の混合および適用
上記した成分A(基剤)および成分B(硬化剤)をそれぞれ混合し、よく撹拌した(Dispermat、1000rpmで2分間)。次いで、混合物をポリカーボネートフィルム(175μm)上にドクターブレードで適用し、室温で5分間空気に暴露し、その後、循環空気炉において80℃で45分間乾燥した。約15μmの乾燥フィルム層厚を有する高光沢フィルムを得た。確かめたフィルムの塗膜特性を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
試験方法:
付着性:
DIN EN ISO 2409に従う。
耐引掻性:
Crockmeter Atlas CM6を用いて耐引掻性を測定した。フィルム表面を研磨紙で引掻いた(9μm、10ダブルストロークまたは40ダブルストローク)。引掻いたフィルム表面の評価は、DIN 53230に従って実施した。
0:認識できる掻き傷はない
1:認識できるまれな掻き傷がある
2:認識できる掻き傷がある
3:認識できるはっきりした掻き傷がある
4:認識できる多くの掻き傷がある
5:認識できる非常に多くの掻き傷がある
耐薬品性:
イソプロパノール、菜種油、ニベアハンドクリームを用いた試験。
室温で負荷時間24時間。負荷をかけたフィルムの表面の評価は、DIN 53230に従って実施した。
DIN 53230は、目視比較のための相対評価尺度を記載している。
【0107】
【表2】

【0108】
高圧変形による熱成形性
実施例6および7に従って被覆したMakrofol(登録商標) DE 1-1フィルム(Bayer MaterialScience AG(ドイツ国在))を、DE−A 38 40 542に従って変形した。HDVF Kunststoffmaschinen GmbH製高圧変形装置タイプSAMK 360で実験を実施した。変形成形型として携帯電話の外殻の成形型を使用した。変形パラメーターは、以下のように選択した:加熱速度14秒、加熱領域の設定240℃〜280℃、成形型温度80℃、変形圧80bar。変形したフィルムにおいて、変形後の付着性、クラック形成および被覆性を評価した。
【0109】
【表3】

【0110】
上記した結果は、本発明に従って調製した塗料を用いた場合のみ、被覆フィルムの極めて良好な熱成形性が得られることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)構成成分として、
a1)直鎖または分枝ヒドロキシ官能性ポリエステル、
a2)直鎖ヒドロキシ官能性ポリカーボネート、
a3)少なくとも1個の酸基および少なくとも1個のイソシアネート反応性基を含有する少なくとも1種のイオン性または潜在イオン性化合物、
a4)少なくとも1種の(環状)脂肪族ジイソシアネート、および
a5)低分子量のヒドロキシ官能性および/またはアミノ官能性化合物
を含有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散体、並びに
B)少なくとも1種のポリイソシアネート架橋剤
を含有する二成分ポリウレタン水性塗料であって、成分B)のイソシアネート基対成分A)のヒドロキシ基の架橋比が1.0:1〜1.6:1であることを特徴とする二成分ポリウレタン水性塗料。
【請求項2】
成分B)のイソシアネート基対成分A)のヒドロキシ基の架橋比が1.2:1〜1.4:1であることを特徴とする、請求項1に記載の二成分ポリウレタン水性塗料。
【請求項3】
ポリイソシアネートB)の平均官能価が2.5〜3.3であることを特徴とする、請求項1に記載の二成分ポリウレタン水性塗料。
【請求項4】
ポリエステル−ポリウレタン分散体A)が、20重量%〜50重量%の成分a1)、20重量%〜50重量%の成分a2)、2重量%〜6重量%の成分a3)、10重量%〜30重量%の成分a4)および0.5重量%〜10重量%の成分a5)を含有し、成分a1)〜a5)の総重量パーセントが100重量%になることを特徴とする、請求項1に記載の二成分ポリウレタン水性塗料。
【請求項5】
成分a3)によりもたらされる、ヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散体A)の酸価が、各々の場合にポリエステル−ポリウレタン水性分散体に関して5.0〜14.5mgKOH/gであることを特徴とする、請求項1に記載の二成分ポリウレタン水性塗料。
【請求項6】
標準としてポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されたポリエステル−ポリウレタン分散体A)の平均分子量Mが、5000g/mol〜15,000g/molであることを特徴とする、請求項1に記載の二成分ポリウレタン水性塗料。
【請求項7】
ポリエステルa1)が、
a1)30重量%〜77重量%の少なくとも1種の少なくとも二官能性のカルボン酸またはその無水物、
a1ii)23重量%〜70重量%の少なくとも1種のジオール、
a1iii)0重量%〜10重量%の少なくとも1種の、3個以上のヒドロキシル基を含有するアルコール、
a1iv)0重量%〜10重量%の他のヒドロキシ官能性および/またはカルボキシ官能性成分および/またはカプロラクトン
の反応生成物であることを特徴とする、請求項1に記載の二成分ポリウレタン水性塗料。
【請求項8】
ポリカーボネートポリオールa2)が、構成成分として少なくとも25重量%の1,4−ブタンジオールを含有し、1.6〜4の平均ヒドロキシル官能価および240g/mol〜8000g/molの数平均分子量を有するポリカーボネートポリオールであることを特徴とする、請求項1に記載の二成分ポリウレタン水性塗料。
【請求項9】
被覆バッキングフィルムを製造するための請求項1に記載の二成分ポリウレタン水性塗料の使用。

【公表番号】特表2012−517489(P2012−517489A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548623(P2011−548623)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000957
【国際公開番号】WO2010/091898
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】