説明

バッキング用遅燃性樹脂水性組成物

【課題】従来バッキング用遅燃性樹脂水性組成物としてのハロゲン含有難燃性共重合体エマルジョンやハロゲン系難燃剤は、火災時あるいは熱リサイクル等の燃焼時にハロゲンガス等の有毒ガスを発生させて人体に重篤な害をもたらせ、また大気汚染や焼却炉の劣化を招く等の欠点を有している。また、メチロール基含有モノマーの共重合物やメラミンーホルムアルデヒド樹脂の使用は、人体への有害性から室内環境基準が設けられたホルムアルデヒドの発生の原因となり使用が制限される方向にある。
【解決手段】(メタ)アクリロニトリルを3〜50重量%含有するエチレン性単量体を乳化重合して得られた水性エマルジョンに、その固形分100重量部に対してエポキシ系樹脂を固形分として1〜50重量部含有させてなるバッキング用遅燃性樹脂水性組成物が前記の課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内の床及びデッキ部のカーペットや、家具、事務所等の床部のカーペット等に裏打ち加工して、それらに遮水性と強度を付与すると同時に遅燃性を付与するカーペット裏打ち用遅燃性水性樹脂組成物に係り、平時ホルムアルデヒドを発生せず、火災時にハロゲン含有ガス等の有毒ガスが発生しないカーペット裏打ち用遅燃性樹脂水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車数の増大や住宅の密集化に伴い、それらの火災に対する対策はきわめて重要である。特に各種の車両や家具の内装材についての難燃化の要望は大きく、難燃化技術が種々提案されている。自動車内装に使用されている繊維製品の難燃化については繊維製品の補強材として使用されるバッキング材に塩化ビニル系、塩化ビニリデン系等のハロゲン含有難燃性共重合体エマルジョンを用いたり、あるいは通常の合成ゴム系、アクリル系、アクリル・スチレン系、エチレン酢酸ビニル系などの共重合体エマルジョン及びこれらのブレンド物に難燃剤を配合し、それを繊維製品に塗布することにより難燃化する方法が提案されている。このような難燃剤としては、液状又は粉末状のリン酸エステル系、ハロゲン化リン酸エステル系、ハロゲン化合物系などの有機難燃剤、アンチモン系、アルミニウム系、ホウ素系などの無機難燃剤等がそれぞれ単独で、又は適宜併用されている。またそれら難燃性共重合体やその他の共重合体エマルジョンには遅燃性を低下させない架橋性モノマーとしてN―メチロールアクリルアミド等のメチロール基含有モノマーが共重合されていたり(特許文献1)、難燃剤配合物にはメラミンーホルムアルデヒド樹脂の水溶液が架橋剤として配合されることが多かった。
【特許文献1】特開平10-237764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のハロゲン含有難燃性共重合体エマルジョンやハロゲン系難燃剤は、火災時あるいは熱リサイクル等の燃焼時にハロゲンガス等の有毒ガスを発生させて人体に重篤な害をもたらし、また大気汚染や焼却炉の劣化を招く等の欠点を有している。
また、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メチロール化ジアセトンアクリルアミド等のメチロール基含有モノマーやメラミン−ホルムアルデヒド樹脂等の使用は、人体への有害性から室内環境基準が設けられたホルムアルデヒドの発生の原因となるので使用が規制される方向にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、自動車の火災時における人身事故は、火の廻りが早く脱出の機会が失われたり、発生する有害ガスや一酸化炭素によって人が中毒に陥いる場合が多いことに鑑み、十分な遅燃性を有し且つホルムアルデヒドを発生せず、火災時有害ガスが発生しない裏打ち材を得る事を第一の目的として鋭意研究を行なった結果、一定量の(メタ)アクリロニトリルを含むエチレン系単量体の共重合体水性エマルジョンに一定量のエポキシ系樹脂を配合することにより得られる樹脂水性組成物が、この課題を解決することを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1)(メタ)アクリロニトリルを1〜50重量%含有するエチレン性単量体を乳化重合して得られた水性エマルジョンに、その固形分100重量部に対してエポキシ系樹脂を1〜50重量部含有させてなるバッキング用遅燃性樹脂水性組成物、
(2)(メタ)アクリロニトリルを3〜40重量%含有するエチレン性単量体を乳化重合して得られた水性エマルジョンに、その固形分100重量部に対してエポキシ系樹脂を3〜30重量部含有させてなる(1)記載のバッキング用遅燃性樹脂水性組成物、
(3)カーペット生地に(1)又は(2)記載のバッキング用遅燃性樹脂水性組成物を固形分として50〜500g/m裏打ちした遅燃性カーペット、および
(4)遅燃性カーペットが自動車内装用カーペットである(3)記載のカーペット、
である。
【0005】
ここにいう「遅燃性」という意味はJIS D 1201の「自動車内装用有機資材の燃焼性試験方法」において燃焼性区分として用いられている「遅燃性」を意味する。すなわち、無風の大気中でいったん着火した資材が着火源を取り去った後も100mm/分以下の燃焼速度でゆっくりと燃え続ける性質をいう。このJIS D 1201の燃焼性試験方法は、米国自動車安全基準(Federal Motor Vehicle Safety Standard)FMVSS−302に規定されている燃焼試験に準拠したものである。
【0006】
本発明でいうエチレン系重合体水性エマルジョンとは、エチレン系単量体の1種または2種以上を界面活性剤および/または保護コロイドの存在下または不存在下、水性媒体中で乳化重合したり、乳化重合以外の方法により重合した重合体を後乳化したりして得られる重合体水性エマルジョンの単独物、または複数の重合体エマルジョンのブレンド物をいい、製造の容易性、経済性等の理由から通常エチレン系単量体の乳化重合によって得られる重合体エマルジョンの単独物または複数の重合体エマルジョンのブレンド物であるのが好ましい。
【0007】
エチレン系単量体としては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル系単量体、たとえばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル単量体、たとえば、スチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の飽和脂肪酸ビニル系単量体、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン系単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン系カルボン酸、例えば、無水マレイン酸等のエチレン系カルボン酸無水物、例えば、モノブチルマレイン酸などのエチレン系ジカルボン酸のモノアルキルエステル、及びこれらのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩等のエチレン系カルボン酸塩類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のエチレン系カルボン酸の酸アミド類、例えば、グリシジルアクリレートグリシジルメタクリレート等のエチレン系カルボン酸とエポキシ基を有するアルコールとのエステル類、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート等のエチレン系カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート,ジエチルアミノエチルメタクリレート等のエチレン系カルボン酸とアミノ基を有するアルコールとのエステル類、例えばジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の非共役性不飽和基を有する単量体を挙げることができる。また、ビニルトリエトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の分子内に重合性二重結合を有するシラン単量体等を挙げることができる。
しかしながら、前述した通り、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メチロール化ジアセトンアクリルアミド及びこれらの単量体とアルコール類とのエーテル化物(たとえば、N−イソブトキシメチルアクリルアミド)等のエチレン系カルボン酸アミド類のメチロール化物およびその誘導体は、人体への有害性から室内環境基準が設けられたホルムアルデヒドの発生の原因となるので、その使用は好ましくない。また、火災時や燃焼時のハロゲンガスの発生を防止するために、ハロゲン含有モノマーも使用しないことが望ましい。
【0008】
このエチレン系単量体中には、従来使用されてきたN−メチロールアクリルアミド等のメチロール基含有モノマーに代わって、(メタ)アクリロニトリルを必須成分として含有させるが、その混合割合は単量体全量(固形分)に対して1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは、5〜30重量部である。(メタ)アクリロニトリルの使用量がその範囲より少ない場合は、遅燃性に及ぼす影響が少なく、その範囲より多い場合は、エチレン系モノマーの共重合性が低下してくる。
【0009】
上記エチレン系単量体の種類および使用量は(メタ)アクリロニトリルの外は特に限定されるものではなく、難燃加工の対象となるカーペット生地とうの各種の要求物性によって適宜選択することができる。例えば、自動車のフロアーやデッキ部等比較的硬い風合いを要求される分野では、ガラス店移転(Tg)が10℃以上であるエチレン性単量体が好ましい。
【0010】
本発明のエチレン系共重合体水性エマルジョンは、通常、前記単量体群の中から適宜選択されたエチレン系単量体を界面活性剤及び/または保護コロイドの存在下水性媒体中で乳化重合して得られる共重合体エマルジョンの単独物、またはこれらの共重合体エマルジョンのブレンド物である。
【0011】
上記の界面活性剤としては、通常の乳化重合に用いられるものであれば、特に、限定されるものではなく、従来知られている通常の界面活性剤が用いられる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー等の非イオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸エステル塩類及びその誘導体類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル類等の陰イオン性界面活性剤、例えば、アルキルアミン塩、4級アンモニウム塩、ポリオキシエチルアルキルアミン等の陽イオン性界面活性剤及び、例えばアルキルベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。また反応性乳化剤も使用することができる。
【0012】
界面活性剤は、エチレン系単量体の全量に対して、通常0.1〜10重量%用いられ、乳化重合の反応適正、得られる樹脂水性エマルジョンの各種安定性及び耐水性等の観点から約0.5〜7重量%用いるのが好ましい。
【0013】
本発明で利用しうる保護コロイドとしては、たとえば、ポリビニルアルコール類、セルロース誘導体等が挙げられ、これらは単独又は複数で使用できる。その使用量は適宜に選択でき、例えば、使用するエチレン系単量体の全量に対して約0.5〜10重量%の使用量を例示することができる。本発明に用いるエチレン系共重合体水性エマルジョンの固形分は特に限定されないが、その生産性と製造の容易さより約30〜65重量%であるのが好ましい。
【0014】
重合開始剤としては過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、2,2―アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を挙げることができる。必要に応じて、これらを還元剤と組み合わせて、レドックス系開始剤として用いてもよい。
本発明においては(メタ)アクリロニトリルを含有するエチレン性単量体を乳化重合して得られた水性エマルジョンにエポキシ系樹脂を配合する。
【0015】
本発明において用いられるエポキシ樹脂としては、特に限定はなく、一般に末端基にグリシジル基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。末端基にグリシジル基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、レゾルシンノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、通常、耐熱性に優れる点でビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
本発明に用いられるエポキシ系樹脂は、エチレン系共重合体水性エマルジョンに直接配合するか、エポキシ樹脂水溶液として配合するか、界面活性剤の存在下水性媒体中で乳化して得られるエマルジョンの単独物、又は複数のエマルジョンのブレンド物として配合することができる。
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー等の非イオン性界面活性剤、例えば脂肪酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸エステル塩類及びその誘導体、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル類等の陰イオン性界面活性剤が挙げられ、これらは単独または複数の混合物として使用できる。
【0017】
上記エポキシ系樹脂の使用量は、前記エチレン系共重合体水性エマルジョンの固形分100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは3〜30重量部、特に好ましくは5〜25重量部である。該使用量が1重量部未満では、JIS D 1201 の自動車内装用有機資材の燃焼性試験において、燃焼速度が、100mm/分を超え易燃性となってしまう。また、50重量部を超えた場合には、本発明物質の貯蔵安定性が低下し、また、高価格になるため、経済性の上にも問題が生じるため好ましくない。
【0018】
本発明のカーペット裏打ち用遅燃性樹脂水性組成物は、前記エチレン系共重合体水性エマルジョン及びエポキシ樹脂の他に物性の向上のための架橋剤を配合することもできる。該架橋剤としては、たとえば酸化亜鉛の水溶液または水分散液、ブロックイソシアネートの水溶液又は水分散液等が挙げられる。これらの架橋剤の配合量は、エチレン系共重合体水性エマルジョンの固形分100重量部に対して固形分で通常1〜20重量部好ましくは2〜15重量部である。
【0019】
さらに本発明の遅燃性樹脂水性組成物には、本発明の優れた効果を妨げない使用範囲において、難燃剤を使用することができる。該難燃剤としては例えばアンチモン系化合物、ホウ素系化合物、アルミニウム系化合物、マグネシウム系化合物、ジルコニウム系化合物等、平常はガラス等を曇化させず、火災時有害ガスを発生させない難燃剤が挙げられる。これらの中ではアルミニウム系化合物、特に水酸化アルミニウムが好ましい。これらの難燃剤の使用量はエチレン系単量体の共重合体エマルジョンの固形分100重量部に対して、例えば、1〜300重量部程度を例示することができる。
また、本発明の優れた効果を妨げない使用範囲において、無機充填剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、発泡剤、整泡剤、消泡剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤等が使用できる。
【0020】
以上のようにして得られた本発明の遅燃性樹脂水性組成物の固形分、pH及び粘度は、いずれも特に限定されるものではないが、該組成物の沈降安定性等の観点より、一般に固形分は30〜70重量%、好ましくは35〜60重量%程度、pHは4〜10、好ましくは6〜10、粘度(20℃、12rpm)は1000〜15000mPa・s好ましくは1000〜10000mPa・sである
【0021】
本発明はカーペット生地のバッキング層として用いることにより、遅燃性に優れたカーペットを得ることができる。本発明に用いられるカーペット生地としては、火災時有害ガスの発生のないもの、防縮加工剤等繊維の処理剤としてホルムアルデヒドを生じることのない処理剤を使用したものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル等の合成繊維、羊毛等の天然繊維又はそれらの混紡が挙げられる。また、自動車室内の床部のニードルパンチカーペットの成形性、遮水性を向上させるために、該組成物をバッキング層としたニードルパンチカーペットに、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂による溶融押し出しラミネートバッキングが施されている場合でも、遅燃性を有するものである。
【0022】
該組成物のバッキング層としての塗布量は、50〜500g/m(固形分)、好ましくは50〜250g/mで、該組成物を塗布したカーペットは前述のJIS D 1201 の自動車室内用有機資材の燃焼試験方法において燃焼区分として用いられている遅燃性を示す。
塗布量が50g/m未満では、硬い風合い及び遅燃性が不十分で250g/mを超えた場合は粉落ちが生じたり、また経済的にも問題が生じる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のカーペット裏打ち用遅燃性樹脂水性組成物は、例えば自動車内の床及びデッキ部のカーペットや、家具、事務所等の床部のカーペット等に裏打ち加工すると、それらに遮水性と強度を付与すると同時に遅燃性を付与し、平時ホルムアルデヒドを発生させることがなく、火災時にハロゲン含有ガス等の有毒ガスが発生することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
(1)エチレン系共重合体エマルジョンの調製
攪拌機、滴下ロート、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた反応器に、イオン交換水330重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.2重量部を入れ、50℃で加熱溶解した。容器内を窒素置換した後、80℃に昇温し、その温度を維持しながら、エチルアクリレート(EA)157.5重量部、メチルメタクリレート(MMA)270重量部、アクリロニトリル(AN)13.5重量部、メタクリル酸(MAA)9重量部の単量体混合物、イオン交換水140重量部にポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム9重量部を溶解した水溶液を撹拌混合して得た単量体乳化液599重量部、2.5%過硫酸カリウム水溶液50重量部を4時間かけて連続的に滴下し、乳化重合を行なった。さらに同温度で2時間保持し重合を完結させた。12.5%アンモニア水で中和して得られたエチレン系共重合体エマルジョンは、固形分45%、pH7.5、粘度40mPa・s(25℃、30rpm)の乳白色エマルジョンであり、エチレン系共重合体のTgは47℃であった。
【0026】
(2)エポキシエマルジョンの調製
エピコート828(油化シェルエポキシ(株)製)100重量部にポリオキシエチレンラウリルエーテル5重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5重量部、水70重量部を加えよく攪拌混合し、安定なエポキシエマルジョンを得た。
【0027】
(3)燃焼試験のための試料の調製
(1)で得られたエチレン系重合体水性エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンを表1に記載の割合で混合し、遅燃性樹脂水性組成物とした。
素材がポリエステルのニードルパンチカーペット(目付380g/m)に得られた遅燃性樹脂水性組成物を100g/m(固形分)塗布し、150℃×10分間乾燥した。これを350mm×200mmに裁断し20℃、65%RHの雰囲気中で24時間放置したものを試料とした。
【0028】
(4)燃焼試験
FMVSS−302に従い、作成した試料について水平法により燃焼試験を行なった。試験は10点行い、平均燃焼速度で表示した。結果を表1に示した。
【実施例2】
【0029】
メチルメタアクリレート及びアクリロニトリルを表1に記載の処方通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂水性組成物を調製し、燃焼試験用試料を作成して、同様の燃焼試験を行なった。得られた結果も表1に示した。
【実施例3】
【0030】
メチルメタアクリレート及びアクリロニトリルを表1に記載の処方通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂水性組成物を調製し、燃焼試験用試料を作成して、同様の燃焼試験を行なった。得られた結果も表1に示した。
【実施例4】
【0031】
メチルメタアクリレート及びアクリロニトリルを表1に記載の処方通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂水性組成物を調製し、燃焼試験用試料を作成して、同様の燃焼試験を行なった。得られた結果も表1に示した。
なお、この実施例4で得られた試料に、さらにポリエチレンを250g/mラミネートバッキングして実施例1と同様の燃焼試験を行ったところ、燃焼速度は53mm/分であった。
【実施例5】
【0032】
メチルメタアクリレート及びアクリロニトリルを表1に記載の処方通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂水性組成物を調製し、燃焼試験用試料を作成して、同様の燃焼試験を行なった。得られた結果も表1に示した。
【実施例6】
【0033】
メチルメタアクリレート及びアクリロニトリルを表1に記載の処方通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂水性組成物を調製し、燃焼試験用試料を作成して、同様の燃焼試験を行なった。得られた結果も表1に示した。
【実施例7】
【0034】
メチルメタアクリレート及びアクリロニトリルを表1に記載の処方通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂水性組成物を調製し、燃焼試験用試料を作成して、同様の燃焼試験を行なった。得られた結果も表1に示した。
【実施例8】
【0035】
アクリロニトリルをメタクリロニトリルに変更した以外は実施例4と同様にして樹脂水性組成物を調製し、燃焼試験用試料を作成して、同様の燃焼試験を行なった。得られた結果も表1に示した。
〔比較例1〕
【0036】
メチルメタアクリレート及びアクリロニトリルを表1に記載の処方通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂水性組成物を調製し、燃焼試験用試料を作成して、同様の燃焼試験を行なった。得られた結果も表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から明らかなように、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルをモノマー成分として含有するエチレン系共重合体エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンを配合した遅燃性樹脂水性組成物(実施例1〜8)を裏打ちした試料は、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルのいずれおもモノマー成分としなかったエチレン系共重合体エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンからなる遅燃性樹脂水性組成物(比較例1)を裏打ちしたものに比べて燃焼速度が著しく低下した。
【実施例9】
【0039】
(1)エチレン系共重合体エマルジョンの調製
エチレン系モノマーの使用量を表2に記載した処方通りとした以外は実施例1と同様にして、エチレン系共重合体エマルジョンを調製した。
(2)エポキシエマルジョンの調製
実施例1と同様にして、エポキシエマルジョンを調製した。
(3)燃焼試験のための試料の調製
エチレン系共重合体エマルジョンとエポキシエマルジョンの混合割合を表2に記載の処方通りとした以外は、実施例1と同様の方法で燃焼試験のための試料を調製し、同様の燃焼試験を行った。その結果を表2に示した。
【実施例10】
【0040】
エチレン系共重合体エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンの使用割合を表2記載の処方通りとした以外は実施例8と同様にして試料の調製と燃焼試験を行なった。得られた結果を表2に示した。
【実施例11】
【0041】
エチレン系共重合体エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンの使用割合を表2記載の処方通りとした以外は実施例8と同様にして試料の調製と燃焼試験を行なった。得られた結果を表2に示した。
【実施例12】
【0042】
エチレン系共重合体エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンの使用割合を表2記載の処方通りとした以外は実施例8と同様にして試料の調製と燃焼試験を行なった。得られた結果を表2に示した。
【実施例13】
【0043】
エチレン系共重合体エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンの使用割合を表2記載の処方通りとした以外は実施例8と同様にして試料の調製と燃焼試験を行なった。得られた結果を表2に示した。
【実施例14】
【0044】
エチレン系共重合体エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンの使用割合を表2記載の処方通りとした以外は実施例8と同様にして試料の調製と燃焼試験を行なった。得られた結果を表2に示した。
【実施例15】
【0045】
エチレン系共重合体エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンの使用割合を表2記載の処方通りとした以外は実施例8と同様にして試料の調製と燃焼試験を行なった。得られた結果を表2に示した。
〔比較例2〕
【0046】
エチレン系共重合体エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンの使用割合を表2記載の処方通りとした以外は実施例8と同様にして試料の調製と燃焼試験を行なった。得られた結果を表2に示した。
【0047】
【表2】

【0048】
表2から明らかなように、エチレン系共重合体エマルジョンとエポキシ樹脂エマルジョンを配合した遅燃性樹脂水性組成物(実施例9〜15)を裏打ちした試料は、エポキシ樹脂エマルジョンを配合しなかったもの(比較例2)を裏打ちしたものに比べて燃焼速度が著しく低下した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の組成物は、例えばカーペット生地のバッキング層として用いることにより、遅燃性に優れたカーペットを得ることができる。カーペット生地としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル等の合成繊維、羊毛等の天然繊維又はそれらの混紡が挙げられる。また、自動車室内の床部のニードルパンチカーペットの成形性、遮水性を向上させるために、該組成物をバッキング層としたニードルパンチカーペットに、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂による溶融押し出しラミネートバッキングが施されている場合でも、遅燃性を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロニトリルを1〜50重量%含有するエチレン系単量体を乳化重合して得られた水性エマルジョンに、その固形分100重量部に対してエポキシ系樹脂を1〜50重量部含有させてなるバッキング用遅燃性樹脂水性組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリロニトリルを3〜40重量%含有するエチレン性単量体を乳化重合して得られた水性エマルジョンに、その固形分100重量部に対してエポキシ系樹脂を3〜30重量部含有させてなる請求項1記載のバッキング用遅燃性樹脂水性組成物。
【請求項3】
カーペット生地に請求項1又は2記載のバッキング用遅燃性樹脂水性組成物を固形分として50〜500g/m裏打ちした遅燃性カーペット。
【請求項4】
遅燃性カーペットが自動車内装用カーペットである請求項3記載のカーペット。

【公開番号】特開2006−143885(P2006−143885A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335834(P2004−335834)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(592230542)ガンツ化成株式会社 (38)
【Fターム(参考)】