説明

バックアップロール軸受装置

【課題】 バックアップロール軸受装置における断面高さを、容易に調整することができ、一列に配列されるバックアップロール軸受装置の各断面高さの相互差を容易に管理することができるバックアップロール軸受装置を提供する。
【解決手段】 このバックアップロール軸受装置7は、ロール8と軸9との間に、軸受10,11を介在させ、前記軸9の両端部9a,9aをハウジングHsで支持するものである。軸9の端部9aにおける外周面の任意の周方向位置と、ロール8の外周面のうち、前記軸9の前記任意の周方向位置に対する直径方向の反対側の周方向位置との間の直径方向高さである断面高さH1を調整可能な断面高さ調整部材17を、前記軸9の両端部9a,9aにおける外周部分に、それぞれ設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼板の圧延等の製造設備に使用されるレベラに用いられるバックアップロール軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板や金属帯の形状不良、すなわち波打ちや反りを矯正するために、ローラーレベラやテンションレベラが用いられている。これらのレベラは、金属板の繰り返しの曲げ、曲げ戻し変形を与え、この変形で板面内に生じる応力を不均一なひずみを除去するものである。テンションレベラは金属板の長手方向に張力を付与し、このひずみの除去効果をさらに高めたものである。
【0003】
テンションレベラ等に使用されるバックアップロール軸受装置においては、ロールと軸との間に転がり軸受を介在させ、この転がり軸受によって、固定軸に対し、回転筒であるバックアップロールを回転自在に支持できるようになっている(特許文献1)。
図18は、テンションレベラのロールの配列例を概略示す図である。同図18に示すように、バックアップロール軸受装置50は、鋼板51の搬送方向に沿って横一列に複数個が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−290146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図19は、従来のバックアップロール軸受装置50の断面図である。一列に配列されている複数個のバックアップロール軸受装置50における個々の断面高さ(H寸法)の相互差が大きいと次のような問題がある。図18に示すワークロール52あるいは中間ロール53と接触しているものと、接触していないものが出てくる。これにより、負荷分布のアンバランスや、過大な起動トルクによるスリップの発生により、ロールの外径面に傷が生じ、接するロールを介して鋼板等の製品に転写され、製品の品質に影響を及ぼすこととなる。
これらを防止するため、バックアップロール軸受装置は、一列に配列される1セット分の断面高さ(H寸法)の相互差を管理して出荷する必要がある。前記「1セット」とは、数本〜数十本の単位であり、数セットのバックアップロール軸受装置をまとめて出荷する。
【0006】
従来の軸受構造では、(1)ロール外径、(2)ニードル部の内部すきま、(3)軸端径の3つの寸法によってH寸法が決まる。一列に配列される1セット分のバックアップロール軸受装置の各H寸法の相互差を管理する必要があるため、前記(1)〜(3)の寸法を測定し、それらを選択して組み合せ、規定のH寸法を満足するものを組立てる必要がある。
従来の技術では、H寸法の許容差や相互差を小さくするためには、前記(1)〜(3)の許容差を詰める必要があるが、各部品の工程能力以上の要求には対応できなかった。また、バックアップロール軸受装置の組立完了後にロールの外周面を研削加工する方法もあるが、研削時のクーラント、研削カス等が軸受内部に侵入する可能性があり実施していない。
【0007】
この発明の目的は、バックアップロール軸受装置における断面高さを、容易に調整することができ、一列に配列されるバックアップロール軸受装置の各断面高さの相互差を容易に管理することができるバックアップロール軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のバックアップロール軸受装置は、ロールと軸との間に、軸受を介在させ、前記軸の両端部をハウジングで支持するバックアップロール軸受装置において、前記軸の端部における外周面の任意の周方向位置と、ロールの外周面のうち、前記軸の前記任意の周方向位置に対する直径方向の反対側の周方向位置との間の直径方向高さである断面高さを調整可能な断面高さ調整部材を、前記軸の両端部における外周部分に、それぞれ設けたことを特徴とする。
【0009】
この構成によると、バックアップロール軸受装置のうち、断面高さ調整部材以外の部品を全て組立てる。その後、必要な断面高さ(H寸法)となるように設けた断面高さ調整部材を、組付けることにより、H寸法の調整を簡単に行うことができる。この場合、断面高さ調整部材の調整のみで済み、従来技術のように、複数の寸法許容差を詰める必要がなくなる。そのため、工数低減を図ることができるうえ、各部品の工程能力以上の要求に対応することができる。また、組立完了後にロールの外周面を研削加工する必要もないため、軸受内部に、研削時のクーラント、研削カス等が侵入することもない。
【0010】
前記断面高さ調整部材がリング部材であり、このリング部材の内周面を、軸の両端部における外周部分にそれぞれ嵌合させたものとしても良い。この場合、リング部材の外周面を例えば研削加工しておき、軸の両端部における外周部分に、リング部材の内周面を圧入嵌合等することで、容易に所望のH寸法にすることができる。
前記リング部材の外周面を、内周面の軸心に対して偏心させたものとしても良い。この場合、バックアップロール軸受装置を使用する客先において、所望のH寸法となるように、軸をその軸心回りに角変位させて調整することができる。この場合、バックアップロール軸受装置の汎用性を高めることができる。
【0011】
前記リング部材と軸との円周方向の相互のずれを防止する回転止め手段を設けても良い。リング部材を、回転止め手段を介して軸に固定する。これにより、リング部材と軸とが円周方向に相互にずれることを防止し、H寸法が不所望にずれることを防止し得る。
前記回転止め手段は、リング部材および軸に連通して設けた孔に渡って、拘束具を設けたものであっても良い。拘束具として、例えば、ボルトやピン等を用いることができる。
前記前記軸の端部のうち円周方向の一部が切欠き形成された切欠部とされ、前記断面高さ調整部材は、前記切欠部に固定するカラーであっても良い。
前記軸の切欠部に、ボルトまたはピンを介してカラーを固定したものであっても良い。
【0012】
前記軸の端部における外周面は、軸方向先端に向かうに従って小径となるテーパー状に形成され、前記断面高さ調整部材は、前記テーパー状の外周面に嵌合する内周テーパー状のテーパー部材であっても良い。この場合、テーパー部材の軸方向位置を調整することで、このテーパー部材の外径寸法を微調整することができる。これによりH寸法の調整を簡単に行うことができる。
前記軸の端部における内周面は、軸方向先端に向かうに従って大径となるテーパー状に形成され、前記断面高さ調整部材は、前記テーパー状の内周面に嵌合する外周テーパー状のテーパー部材であっても良い。この場合、テーパー部材の軸方向位置を調整することで、軸の端部における外周面の直径寸法を微調整することができる。これによりH寸法の調整を簡単に行うことができる。
【0013】
前記軸の外周面または内周面における先端部にねじ部を設け、このねじ部に螺合し且つテーパー部材に当接してテーパー部材の軸方向位置を調整するねじ部材を設けても良い。この場合、ねじ部材を回転させることで、テーパー部材の軸方向位置を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明のバックアップロール軸受装置は、ロールと軸との間に、軸受を介在させ、前記軸の両端部をハウジングで支持するバックアップロール軸受装置において、前記軸の端部における外周面の任意の周方向位置と、ロールの外周面のうち、前記軸の前記任意の周方向位置に対する直径方向の反対側の周方向位置との間の直径方向高さである断面高さを調整可能な断面高さ調整部材を、前記軸の両端部における外周部分に、それぞれ設けたため、バックアップロール軸受装置における断面高さを、容易に調整することができ、一列に配列されるバックアップロール軸受装置の各断面高さの相互差を容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】鋼板等の圧延作業の最終工程の設備を概略示す図である。
【図2】テンションレベラユニットの側面図である。
【図3】同テンションレベラユニットの正面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の断面図である。
【図5】(A)は図4のV−V線断面図、(B)は同バックアップロール軸受装置の要部の拡大断面図である。
【図6】(A)は、この発明の他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の要部の断面図、(B)は、図6(A)の VI-VI 線断面図である。
【図7】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の要部の断面図、(B)は、図7(A)の VII-VII 線断面図である。
【図8】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の要部の断面図、(B)は、図8(A)の VIII-VIII 線断面図である。
【図9】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の要部の断面図、(B)は、図9(A)の IX-IX 線断面図である。
【図10】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の要部の断面図、(B)は、図10(A)の X-X 線断面図である。
【図11】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の要部の断面図、(B)は、図11(A)の XI-XI 線断面図である。
【図12】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の要部の断面図、(B)は、図12(A)の XII-XII 線断面図である。
【図13】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の要部の断面図、(B)は、図13(A)の XIII-XIII 線断面図である。
【図14】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の要部の断面図、(B)は、図14(A)の XIV-XIV 線断面図である。
【図15】この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の要部の断面図である。
【図16】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の一端面図、(B)は、同バックアップロール軸受装置の要部の断面図である。
【図17】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係るバックアップロール軸受装置の一端面図、(B)は、同バックアップロール軸受装置の要部の断面図である。
【図18】テンションレベラのロールの配列例を概略示す図である。
【図19】従来のバックアップロール軸受装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1は、鋼板等の圧延作業の最終工程における圧延設備の概略図を示す。この工程では、上下に配置されたデフロール1に挟まれて移送される鋼板等のレベリング材2の応力が、矯正機であるテンションレベラ3により除去され、これによりレベリング材2の寸法精度が確保される。テンションレベラ3は、レベリング材2の移送路を挟んで上下に配置される複数のテンションレベラユニット4からなる。
【0017】
図2および図3に、前記テンションレベラユニット4の側面図および正面図を示す。このテンションレベラユニット4は、ワークロール5、中間ロール6、およびこの発明の実施形態に係るバックアップロール軸受装置7を備える。ワークロール5はレベリング材2に直接的に接触して、レベリング材2の矯正を行う。このワークロール5は、前記中間ロール6およびバックアップロール軸受装置7で支持し、最終的には、バックアップロール軸受装置7で全ての荷重を支える。
【0018】
バックアップロール軸受装置7について説明する。
図4に示すように、バックアップロール軸受装置7は、ロール8と軸9との間に、軸方向に並べた複数列(この例では2列)のラジアル荷重負荷用のころ軸受10と、玉軸受11とを介在させている。軸9の両端部9a,9aをハウジングHsで支持し、ロール8を、2個のころ軸受10,10と、2個の玉軸受11,11とで、軸9に対して回転自在に支持している。
【0019】
ころ軸受10は、保持器付針状ころからなり、軸9の軸方向両端側に1個ずつ配置される。玉軸受11は深溝玉軸受からなり、各ころ軸受10の設置位置の軸方向外側にそれぞれ配置される。玉軸受11としては、例えば、組み合わせアンギュラ玉軸受や4点接触型玉軸受を用いても良い。ころ軸受10は、軌道軸付きの軸受や、円筒ころ軸受であっても良い。ころ軸受10の配置個数も、1個ずつに限らず、両側または片側につき、複数個配置しても良い。
【0020】
各ころ軸受10の保持器10aは、ロール8の内径面に嵌合した環状のワッシャー12および止め具13等により軸方向両側で固定されている。
玉軸受11は、ラジアル荷重を負荷しないので、外輪11aがロール8の内径面に圧入され、内輪11bの内径面と軸9の外径面との間には、隙間が設けられている。前記軸9は、いわゆる段付き軸であって、軸9の両端部9a,9aを除く部分に、大径部14と、中径部15と、小径部16とを備えている。軸9の両端部9a,9aにおける外周部分には、後述する断面高さ調整部材17,17をそれぞれ設けている。軸9の軸方向中間部分に大径部14が設けられ、この大径部14に断面18,18を介して中径部15,15が軸方向両側に所定距離延びる。中径部15,15に断面19,19を介して小径部16,16が軸方向両側に所定距離延びる。
【0021】
玉軸受11は、軸方向の両方向のスラスト荷重を支持可能なものである。本例の玉軸受11は、外輪11aと、内輪11bと、複数の玉11cと、これら玉11cを保持する図示外の保持器と、内外輪11b,11a間の環状空間を密封する一対のシール部材11d,11dとを備えている。各シール部材11dは外輪内径面に嵌合されている。この玉軸受11は、ロール8および軸9に対して軸方向の両方向に固定されている。前記ワッシャー12と玉軸受11との間に、環状の止め具13を介在させ、環状の止め具13は、ロール8の内径面に嵌合されている。外輪11aの軸方向外側には、ロール8の内径面に嵌合されたシール部材20を配置している。これら環状の止め具13とシール部材20とで玉軸受11の外輪11aが挟まれて、外輪11aは軸方向の両方向に固定される。
【0022】
軸9のうち、内輪端面に臨む段面18と、リング状のカバー部材21とで、内輪11bが挟まれて軸方向の両方向に固定される。カバー部材21は、軸9の外径面に嵌合した環状の止め輪22により、軸9に対して軸方向変位不能に固定される。
前記カバー部材21は、内輪端面および断面19と、止め輪22との間に挟まれるカバー部材本体21aと、このカバー部材本体21aの外周面のうち軸方向先端部から径方向外方に突出するフランジ部21bとを有する。カバー部材本体21aの外周面に、シール部材20のシールリップがラジアル方向に接触するようになっている。なおフランジ部21bの外周面は、ロール内径面に対しラビリンス隙間を介して対向する。
【0023】
断面高さ調整部材17について図4および図5と共に説明する。なお図4に示す断面高さ調整部材17は、左右同一構造であるためA部と表記する左側についてのみ説明し、A´部と表記する右側についての説明を省略する。図5(A)は図4のV−V線断面図であり、図5(B)はこのバックアップロール軸受装置7の要部の拡大断面図である。断面高さ調整部材17は、図4のA部に示すように、バックアップロール軸受装置7の断面高さすなわちH寸法を調整可能な部材である。前記H寸法とは、軸9の端部9aにおける外周面の任意の周方向位置と、ロール8の外周面のうち、軸9の任意の周方向位置に対する直径方向の反対側の周方向位置との間の直径方向高さである。この直径方向高さは、例えば、ノギス等の測定工具を用いて測定可能である。
【0024】
図5(B)に示すように、断面高さ調整部材17はリング部材であり、このリング部材の内周面17aを、軸9の両端部9aにおける外周部分にそれぞれ圧入嵌合させている。前記リング部材は、図5(A)に示すように、円周方向に均一な肉厚t1を有する円筒状のリング部材である。図5(B)に示すように、リング部材を圧入嵌合させるバックアップロール軸受装置7につき必要なH寸法となるように、リング部材を嵌合させる前に、リング部材の外周面17bが予め研削加工されている。但し、研削加工に限定されるものではない。リング部材の一端面を軸9の段面23に当接させた状態で、このリング部材の他端面が軸端面と同一平面で連なるようにリング部材が設けられる。リング部材における他端面と外周面17bとの角部には、面取り17cが形成されている。なお軸9の両端部9aの端面における軸心位置には、バックアップロール軸受装置組立前に、軸9の両端を支持して加工するためのテーパ孔9aaが形成されている。
【0025】
以上説明したバックアップロール軸受装置7によると、バックアップロール軸受装置7のうち、リング部材以外の部品を全て組立てる。その後、必要なH寸法となるように加工したリング部材を、組付けることにより、H寸法の調整を簡単に行うことができる。この場合、断面高さ調整部材17の調整のみで済み、従来技術のように、複数の寸法許容差を詰める必要がなくなる。そのため、工数低減を図ることができるうえ、各部品の工程能力以上の要求に対応することができる。また、組立完了後にロール8の外周面を研削加工する必要もないため、軸受内部に、研削時のクーラント、研削カス等が侵入することもない。
【0026】
他の実施形態について説明する。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。
図6(A),(B)に示すように、断面高さ調整部材17であるリング部材と、軸9との円周方向の相互のずれを防止する回転止め手段24を設けても良い。すなわち軸9の各端部9aにおける外周面には、径方向に所定長さ延びる孔である雌ねじ部25が形成されている。この雌ねじ部25は、軸9のうち前記テーパ孔9aaに干渉しない軸方向位置L1に形成される。リング部材には、雌ねじ部25に連通する座繰り孔17zが形成され、この座繰り孔17zから拘束具であるボルトを挿入して雌ねじ部25に螺合させている。これにより、リング部材と軸9とが円周方向に相互にずれることを防止し、H寸法が不所望にずれることを防止し得る。
【0027】
図7(A),(B)に示すように、回転止め手段24の拘束具としてピン24aを設けても良い。軸9の各端部9aにおける外周面に径方向に延びる孔25aが形成され、リング部材に、前記孔25aに連通する孔17dが形成されている。これら孔17d,25aにピン24aを打込むことで、リング部材と軸9とが円周方向に相互にずれることを防止し、H寸法が不所望にずれることを防止し得る。この例では、ピン24aとして平行ピンを採用しているが、テーパーピンを適用することも可能である。この構成によると、軸9に雌ねじ部を形成しボルトを螺合させる構成よりも、コスト低減を図ることができる。
【0028】
図8(A),(B)に示すように、リング部材の外周面17bを、このリング部材の内周面17aの軸心Lcに対して定められた偏心量t偏心させたものとしても良い。リング部材の外周面17bの直径寸法D1は、例えば、図5乃至図7に示すリング部材と同一のものが適用される。この図8(A)の例では、リング部材を軸9に圧入嵌合した状態で、リング部材のうち肉厚t1の最も厚い周方向位置、つまり図8(A)の下部が、H寸法の計測対象位置として定められている。但し、H寸法の計測対象位置は、リング部材のうち肉厚t1の最も厚い周方向位置のみに限定されるものではなく、必要に応じて、バックアップロール軸受装置7を使用する客先において、所望のH寸法となるように、軸9をその軸心回りに回転させて、H寸法を微調整することができる。この場合、バックアップロール軸受装置7の汎用性を高めることができる。
【0029】
図9(A),(B)に示すように、図8の構成に加えて、リング部材と軸9との円周方向の相互のずれを防止する回転止め手段24の拘束具としてボルトを設けても良い。
図10(A),(B)に示すように、回転止め手段24の拘束具としてピン24aを設けても良い。
【0030】
図11(A),(B)では、軸9の端部9aのうち円周方向の一部が切欠き形成された切欠部26とされ、断面高さ調整部材17Aは、前記切欠部26に固定されるカラー27としている。切欠部26は、平坦面に形成され、この平担面に直交し且つ径方向に所定長さ延びる雌ねじ部25が形成されている。図11(A)に示すように、カラー27は断面円弧状に形成されている。このカラー27には、雌ねじ部25に連通する座繰り孔17zが形成され、この座繰り孔17zからボルトを挿入して雌ねじ部25に螺合させている。この図11(A)の例では、カラー27の周方向位置のうち頂部P1がH寸法の計測対象位置として定められている。例えば、切欠部26に臨むカラー上部27aから頂部P1までの寸法が種々異なるカラー27を種々準備しておくことで、H寸法を容易に調整することができる。
図12(A),(B)に示すように、前記ボルトに代えて、ピン24aによりカラー27を切欠部26に固定しても良い。
【0031】
図13(A),(B)では、カラー27Aを直方体状に形成している。切欠部26の平坦面に沿って、カラー27Aの上面が配置されている。カラー27Aの座繰り孔17zからボルトを挿入して、切欠部26の雌ねじ部25に螺合させている。
図14(A),(B)に示すように、前記ボルトに代えて、ピン24aによりカラー27Aを切欠部26に固定しても良い。
【0032】
図15に示すように、軸9の端部9aにおける外周面9aaは、軸方向先端に向かうに従って小径となるテーパー状に形成され、断面高さ調整部材17Bは、前記テーパー状の外周面9aaに嵌合する内周テーパー状で且つリング状のテーパー部材であっても良い。軸9の外周面9aaにおける先端部に雄ねじから成るねじ部28を設け、このねじ部28に螺合し且つテーパー部材の軸方向先端部17Baに当接してテーパー部材の軸方向位置を調整するねじ部材29を設けている。なお軸9の外周面9aaのテーパー度と、テーパー部材の内周面17Bbのテーパー度とが同一となるように規定されている。
この構成によると、ねじ部材29を回転させて締付けていくと、ねじ部材29に当接するテーパー部材が、軸9のテーパー状の外周面9aaに沿って移動する。これによりテーパー部材の外径D2が拡径する。このようにテーパー部材の外径D2を変化させてH寸法を容易に調整することができる。
【0033】
図16(B)に示すように、軸9の端部9aにおける内周面9abは、軸方向先端に向かうに従って大径となるテーパー状に形成され、断面高さ調整部材17Cは、前記テーパー状の内周面9abに嵌合する外周テーパー状のテーパー部材であっても良い。軸9の内周面9abにおける先端部に雌ねじから成るねじ部30を設け、このねじ部30に螺合し且つテーパー部材の軸方向先端部17caに当接してテーパー部材の軸方向位置を調整するねじ部材31を設けている。図16(A)に示すように、ねじ部材31の中央部には、このねじ部材31を工具により回転させる孔31a(この例では六角孔)が形成されている。
この構成によると、ねじ部材31を回転させて締付けていくと、ねじ部材31に当接するテーパ部材が、軸9のテーパー状の内周面9abに沿って移動する。これにより軸9の内周面9abが押圧され、軸9の端部9aにおける外径D3が拡径する。このように軸外径D3を変化させてH寸法を容易に調整することができる。
【0034】
図16(B)のねじ部材およびねじ部に代えて、図17(A),(B)に示すように、軸9の外周面における先端部に雄ねじから成るねじ部30aを設け、このねじ部30aに螺合し且つテーパー部材の軸方向先端部17Caに当接してテーパー部材の軸方向位置を調整するねじ部材31Aを設けても良い。この構成によると、ねじ部材31Aを回転させて締付けていくと、ねじ部材31Aに当接するテーパ部材が、軸9のテーパー状の内周面9abに沿って移動する。これにより軸9の内周面9abが押圧され、軸9の端部9aにおける外径D3が拡径する。このように軸外径D3を変化させてH寸法を容易に調整することができる。
【符号の説明】
【0035】
7…バックアップロール軸受装置
8…ロール
9…軸
9a…端部
10…ころ軸受
11…玉軸受
17,17A,17B,17C…断面高さ調整部材
24…回転止め手段
26…切欠部
27,27A…カラー
Hs…ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールと軸との間に、軸受を介在させ、前記軸の両端部をハウジングで支持するバックアップロール軸受装置において、
前記軸の端部における外周面の任意の周方向位置と、ロールの外周面のうち、前記軸の前記任意の周方向位置に対する直径方向の反対側の周方向位置との間の直径方向高さである断面高さを調整可能な断面高さ調整部材を、前記軸の両端部における外周部分に、それぞれ設けたことを特徴とするバックアップロール軸受装置。
【請求項2】
請求項1において、前記断面高さ調整部材はリング部材であり、このリング部材の内周面を、軸の両端部における外周部分にそれぞれ嵌合させたバックアップロール軸受装置。
【請求項3】
請求項2において、前記リング部材の外周面を、内周面の軸心に対して偏心させたバックアップロール軸受装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、前記リング部材と軸との円周方向の相互のずれを防止する回転止め手段を設けたバックアップロール軸受装置。
【請求項5】
請求項4において、前記回転止め手段は、リング部材および軸に連通して設けた孔に渡って、拘束具を設けたものであるバックアップロール軸受装置。
【請求項6】
請求項1において、前記軸の端部のうち円周方向の一部が切欠き形成された切欠部とされ、前記断面高さ調整部材は、前記切欠部に固定するカラーであるバックアップロール軸受装置。
【請求項7】
請求項6において、前記軸の切欠部に、ボルトまたはピンを介してカラーを固定したバックアップロール軸受装置。
【請求項8】
請求項1において、前記軸の端部における外周面は、軸方向先端に向かうに従って小径となるテーパー状に形成され、前記断面高さ調整部材は、前記テーパー状の外周面に嵌合する内周テーパー状のテーパー部材であるバックアップロール軸受装置。
【請求項9】
請求項1において、前記軸の端部における内周面は、軸方向先端に向かうに従って大径となるテーパー状に形成され、前記断面高さ調整部材は、前記テーパー状の内周面に嵌合する外周テーパー状のテーパー部材であるバックアップロール軸受装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9において、前記軸の外周面または内周面における先端部にねじ部を設け、このねじ部に螺合し且つテーパー部材に当接してテーパー部材の軸方向位置を調整するねじ部材を設けたバックアップロール軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−6199(P2013−6199A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141423(P2011−141423)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】