説明

バッテリシステム

【課題】大きな加速度が印加された場合であっても、電池モジュール内の直列接続を短絡させ、薄型電池同士を分離させることが可能なバッテリシステムを提供する。
【解決手段】バッテリシステムは、複数並設された薄型電池それぞれの電極端子104又は105の一方の同極端子同士が一対のバスバ21により電気的に接続され、これら薄型電池及びバスバ対からなるサブアッセンブリ20a〜20jが複数積層されて電気的に接続され、当該複数のサブアッセンブリ20a〜20jが筐体31の内部に気密状態で収容された電池モジュール30と、電池モジュール30に印可された加速度を検出する加速度センサと、エアにより筐体31を膨張させるベローズ32と、エアにより膨張して空間Sを拡張する膨張ゴム38と、筐体31内部や膨張ゴム38にエアを供給する冷却装置と、検出された加速度に基づいて冷却装置を制御するコントローラと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型電池を複数積層して構成された電池モジュールを備えたバッテリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
正極端子と負極端子とが電池外装の外周縁から導出する薄型電池が複数並設され、これら薄型電池それぞれの正極端子又は負極端子の一方の同極端子同士が一対のバスバにより電気的に並列接続され、これら薄型電池及びバスバ対からなるサブアッセンブリが複数積層され、電気的に直列接続された電池モジュールが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電池モジュールは、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)等の車輌に用いることが出来る。車輌に搭載された電池モジュールには、例えば車輌の急停止等に伴って大きな加速度が加わる場合がある。
【特許文献1】特開2004−55492号公報
【発明の開示】
【0004】
本発明は、大きな加速度が印加された場合であっても、電池モジュールが車輌の室内への侵入をより効果的に防止すると共に、当該電池モジュール内で薄型電池とバスバとの接続部を引き剥がして直列接続を短絡させ、薄型電池同士を分離させることが可能なバッテリシステムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、正極端子と負極端子とが電池外装の外周縁から導出する薄型電池が複数並設され、これら薄型電池それぞれの正極端子又は負極端子の一方の同極端子同士が一対のバスバにより電気的に並列接続され、これら薄型電池及びバスバ対からなるサブアッセンブリが複数積層されて電気的に直列接続され、当該複数のサブアッセンブリが筐体の内部に気密状態で収容された電池モジュールと、前記電池モジュールが搭載された被搭載物に印加された加速度を検出する加速度検出手段と、流体により膨張可能であり、前記電池モジュールの所定部位を膨張させる膨張手段と、前記膨張手段に流体を供給する流体供給手段と、前記加速度検出手段の検出結果に基づいて前記流体供給手段の制御を行う制御手段と、を備えたバッテリシステムが提供される。
【0005】
本発明では、電池モジュールを搭載した被搭載物に対して印加された加速度を加速度検出手段により検出し、当該検出結果に基づいて制御手段が流体供給手段を制御し、当該制御指令に従って流体供給手段が膨張手段に流体を供給し、当該流体により膨張手段を膨張させ電池モジュールの所定部位を膨張させる。
【0006】
被搭載物に加速度が印加された際に、電池モジュールの所定部位を膨張させることにより、当該膨張した部位により電池モジュールに印加された加速度を吸収したり、電池モジュール内部における薄型電池の電極端子とバスバとの接合部を引き剥がすことが出来る。
【0007】
膨張部位によって加速度を吸収することにより、電池モジュールの車室内への侵入をより効果的に防止することが可能となる。また、膨張手段の膨張によって薄型電池とバスバとの接合部を引き剥がして電池モジュール内の直列接続を短絡させ、薄型電池同士を分離させることが可能となる。
【発明の実施の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
先ず、本発明の実施形態において電池モジュールを構成する薄型電池について説明する。図1は本発明の実施形態における薄型電池の全体の平面図、図2は図1のII-II線に沿った断面図である。図1及び図2は一つの薄型電池10(単位電池)を示し、この薄型電池10を複数接続することにより所望の電圧、容量のバッテリが構成される。
【0010】
本発明の実施形態に係る薄型電池10は、積層可能な平板状のリチウムイオン二次電池であり、図1及び図2に示すように、3枚の正極板101と、5枚のセパレータ102と、3枚の負極板103と、正極端子104と、負極端子105と、上部外装部材106と、下部外装部材107と、特に図示しない電解質と、から構成されており、例えば10mm以下の総厚を有する。このうちの正極板101、セパレータ102、負極板103及び電解質を特に発電要素108と称する。
【0011】
発電要素108を構成する正極板101は、正極端子104まで延びている正極側集電体101aと、この正極側集電体101aの一部の両主面にそれぞれ形成された正極層101b、101cと、を有している。
【0012】
正極板101の正極側集電体101aは、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、又は、ニッケル箔等の電気化学的に安定した金属箔である。
【0013】
正極板101の正極層101b、101cは、例えばLiNiO等のリチウム・ニッケル系複合酸化物、LiMn等のリチウム・マンガン系複合酸化物、又は、LiCoO等のリチウム・コバルト系複合酸化物等やカルコゲン(S、Se、Te)化物等の正極活物質と、カーボンブラック等の導電剤と、ポリフッ化エチレンの水性ディスパージョン等の結着剤と、を混合させたものを、正極側集電体101aの一部の両主面に塗布し、乾燥及び圧縮することにより形成されている。
【0014】
発電要素108を構成する負極板103は、負極端子105まで延びている負極側集電体103aと、この負極側集電体103aの一部の両主面にそれぞれ形成された負極層103b、103cと、を有している。
【0015】
負極板103の負極側集電体103aは、例えば、ニッケル箔、銅箔、ステンレス箔、又は、鉄箔等の電気化学的に安定した金属箔である。
【0016】
負極板103の負極層103b、103cは、例えば、非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、又は、黒鉛等のような上記の正極活物質のリチウムイオンを吸蔵及び放出する負極活物質に、有機物焼成体の前駆体材料としてのスチレンブタジエンゴム樹脂粉末の水性ディスパージョンを混合し、乾燥させた後に粉砕することで、炭素粒子表面に炭化したスチレンブタジエンゴムを担持させたものを主材料とし、これにアクリル樹脂エマルジョン等の結着剤をさらに混合し、この混合物を負極側集電体103aの一部の両主面に塗布し、乾燥及び圧縮することにより形成されている。
【0017】
特に、負極活物質として非晶質炭素や難黒鉛化炭素を用いると、充放電時における電位の平坦特性に乏しく放電量に伴って出力電圧も低下するので、通信機器や事務機器の電源には不向きであるが、電気自動車の電源として用いると急激な出力低下がないので有利である。
【0018】
発電要素108のセパレータ102は、上述した正極板101と負極板103との短絡を防止するもので、電解質を保持する機能を備えても良い。このセパレータ102は、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン等から構成される微多孔性膜であり、過電流が流れると、その発熱によって層の空孔が閉塞され電流を遮断する機能をも有する。
【0019】
なお、本発明のセパレータ102は、ポリオレフィン等の単層膜のみに限られず、ポリプロピレン膜をポリエチレン膜でサンドイッチした三層構造や、ポリオレフィン微多孔性膜と有機不織布等を積層したものを用いることも出来る。このようにセパレータ102を複層化することで、過電流防止機能、電解質保持機能及びセパレータの形状維持(剛性向上)機能等の諸機能を付与することが出来る。
【0020】
以上の発電要素108は、セパレータ102を介して正極板101と負極板103とが交互に積層されている。そして、3枚の正極板101は、正極側集電体101aを介して、金属箔製の正極端子104にそれぞれ接続される一方で、3枚の負極板103は、負極側集電体103aを介して、同様に金属箔製の負極端子105にそれぞれ接続されている。
【0021】
なお、発電要素108の正極板101、セパレータ102、及び、負極板103は、本発明では上記の枚数に何ら限定されず、例えば、1枚の正極板101、3枚のセパレータ102、及び、1枚の負極板103でも発電要素108を構成することが出来、必要に応じて正極板、セパレータ及び負極板の枚数を選択して構成することが出来る。
【0022】
正極端子104も負極端子105も電気化学的に安定した金属材料であれば特に限定されないが、正極端子104としては、上述の正極側集電体101aと同様に、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、又は、ニッケル箔等を挙げることが出来る。また、負極端子105としては、上述の負極側集電体103aと同様に、例えば、ニッケル箔、銅箔、ステンレス箔、又は、鉄箔等を挙げることが出来る。
【0023】
発電要素108は、上部外装部材106及び下部外装部材107に収容されて封止されている。本実施形態における上部外装部材106及び下部外装部材107は、何れも特に図示しないが、薄型電池10の内側から外側に向かって、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の耐電解液特性及び熱融着性に優れた樹脂フィルムから構成されている内側層と、例えばアルミニウム等の金属箔から構成されている中間層と、例えばポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂等の電気絶縁性に優れた樹脂フィルムから構成されている外側層と、の三層構造から成る樹脂−金属薄膜ラミネート材で構成されている。
【0024】
これら外装部材106、107によって、上述の発電要素108、正極端子104の一部及び負極端子105の一部を包み込み、当該外装部材106、107により形成される空間に、有機液体溶媒に過塩素酸リチウム(LiClO)やホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等のリチウム塩を溶質とした液体電解質を注入しながら、外装部材106、107により形成される空間を吸引して真空状態として、外装部材106、107をその外周縁に沿って熱プレスにより熱融着して封止する。
【0025】
有機液体溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のエステル系溶媒を挙げることが出来るが、本発明の有機液体溶媒はこれに限定されることなく、エステル系溶媒に、γ−ブチラクトン(γ−BL)、ジエトシキエタン(DEE)等のエーテル系溶媒その他の混合、調合した有機液体溶媒を用いることも出来る。
【0026】
本実施形態では、以上に説明した薄型電池10を複数接続して電池モジュール30とするが、その具体的構造を図3〜図5を参照しながら説明する。
【0027】
図3は本発明の実施形態における電池モジュールを示す一部分解斜視図、図4は本発明の第1実施形態における電池モジュールの概略断面図、図5は本発明の実施形態における電池モジュールの外観を示す斜視図である。
【0028】
本発明の実施形態における電池モジュール30は、図3に示すように、4つの薄型電池10を電気的に並列接続してこれをサブアッセンブリ20a〜20jとする。即ち、4つの薄型電池10の同極端子104、105同士が同一方向を向くような姿勢で、4つの薄型電池10の正極端子104同士を一つのバスバ21に接続すると共に、負極端子105同士を他の一つのバスバ21に接続する。電極端子104又は105とバスバ21との接続は電気的に接続されればその具体的手段は限定されないが、例えば溶接等により行うことが出来る。バスバ21は、例えば銅やニッケル、ステンレス等の導電性に優れた材料で構成された平板状部材であり、4つの薄型電池10を並設した際に、当該4つの同極端子104又は105を接続可能な長さを持っている。
【0029】
4つの薄型電池10の同極端子104、105にバスバ21を並列接続して構成された10個のサブアッセンブリ20a〜20jを図3及び図4に示すように積層されるが、このとき、サブアッセンブリ20a〜20jが順次直列接続されるように積層されている。即ち、サブアッセンブリ20aと次段のサブアッセンブリ20bとは、サブアッセンブリ20aにおける負極端子105の導出方向と、次段のサブアッセンブリ20bにおける正極端子104の導出方向とが実質的に同一となるように積層されている。
【0030】
同様に、サブアッセンブリ20bと次段のサブアッセンブリ20cについても、サブアッセンブリ20bにおける負極端子105の導出方向と、次段のサブアッセンブリ20cにおける正極端子104の導出方向とが実質的に同一となるように積層されている。即ち、上からn段目のサブアッセンブリにおける電極端子104、105の導出方向と、n+1段目のサブアッセンブリにおける異極端子105、104の導出方向とが実質的に同一となるように、n段目のサブアッセンブリとn+1段目のサブアッセンブリとが積層されている(但し、nは自然数)。
【0031】
本実施形態では、図4に示すように、上段に積層されたサブアッセンブリ20aの負極端子105同士を接続しているバスバ21と、その下段に積層されたサブアッセンブリ20bの正極端子104同士を接続しているバスバ21とが兼用して用いられている。そのため、上段のサブアッセンブリ20aの負極端子105、バスバ21、及び、下段のサブアッセンブリ20bの正極端子104の間には、これらに取り囲まれた空間Sが形成されている。
【0032】
同様に、サブアッセンブリ20bの負極端子105同士を接合しているバスバ21と、その下段に積層されたサブアッセンブリ20cの正極端子104同士を接続しているバスバ21とが兼用して用いられており、これらの間に空間Sが形成されている。即ち、n段目のサブアッセンブリの負極端子105同士を接合しているバスバ21と、その下段に積層されたサブアッセンブリの正極端子104同士を接合しているバスバ21とが兼用して用いられており、これらの間に空間Sがそれぞれ形成されている。
【0033】
さらに、本実施形態では、図4に示すように、各空間S内に膨張ゴム38(膨張部材)がそれぞれ配置されている。この膨張ゴム38は、例えば合成ゴム等の柔軟性に優れた材料から構成され、風船状に膨張可能な形状を有している。各膨張ゴム38は、気体注入チューブ37を介して膨張用バルブ36にそれぞれ連結されており、冷却装置50から供給されるエアにより膨張して、空間Sを拡張させることが可能となっている。
【0034】
なお、最上段のサブアッセンブリ20aにおける正極端子104同士を接続しているバスバ21は、他のサブアッセンブリの電極端子同士を接続しているバスバと兼用されていない。その代わりに、このバスバ21は、電池モジュール30を外部と電気的に接続するための正極側外部端子33に接続されている。同様に、最下段のサブアッセンブリ20jにおける負極端子105同士を接続しているバスバ21も、他のサブアッセンブリの電極端子同士を接続しているバスバと兼用されていない。その代わりに、このバスバ21は、電池モジュール30を外部と電気的に接続するための負極側外部端子34に接続されている。
【0035】
以上のように電気的に直列接続された10個のサブアッセンブリ20a〜20jは筐体31の内部に収容されている。この筐体31は、例えば合成樹脂等の電気絶縁性に優れた材料から構成されていると共に、10個のサブアッセンブリ20a〜20jを気密状態で収容することが可能となっている。
【0036】
本実施形態における筐体31では、図4及び図5に示すように、筐体31の一部にベローズ32(蛇腹部)が設けられており、所定の方向(図4及び図5の白抜き矢印の方向)に筐体31を伸縮させることが可能となっている。なお、図3には、筐体31のうちベローズ32が形成されている側面が図示されていない。
【0037】
図3〜図5に示すように、この筐体31の正面には、冷却ダクト35と膨張用バルブ36とが取り付けられている。これに対し、筐体31の背面には、上述の外部端子33、34が設けられている。なお、冷却用エアの通気を良好にするために、冷却用エアを排出するための排出口を筐体31の背面に形成しても良い。
【0038】
冷却ダクト35は、筐体31の内部と連通可能となっており、通常使用時において、後述する冷却装置50から供給されるエアを冷却用エアとして筐体31の内部に送り込むことにより、筐体31の内部に収容された10個のサブアッセンブリ20a〜20jが有する各薄型電池10を冷却することが可能となっている。
【0039】
膨張用バルブ36は、エアの供給先を膨張ゴム38又は筐体31内部の何れかに切り替えることが可能な切替バルブであり、一方の出口には各膨張ゴム38に連通した気体注入チューブ37が連結されているのに対し、他方の出口は筐体31の内部に向かって直接開放されている。そして、この膨張用バルブ36は、後述するバッテリシステム1のコントローラ60の制御に従って、エアの供給先を、膨張ゴム38又は筐体31内部の何れかに切り替えることが可能となっている。この膨張用バルブ36で冷却装置50と膨張ゴム38とを連通させることにより、膨張ゴム38にエアが供給され空間Sを拡張させることが出来る。これに対し、膨張用バルブ36で冷却装置50と筐体31内部を連通させることにより、筐体31内部にエアが供給されベローズ32を伸長させて筐体31自体を膨張させることが出来る。
【0040】
次に、以上に説明した電池モジュール30を用いた本実施形態に係るバッテリシステムについて説明する。図6は本発明の第1実施形態に係るバッテリシステムの全体構成を示すブロック図、図7は本発明の第1実施形態に係るバッテリシステムを搭載した電気自動車を示す模式図である。
【0041】
本発明の第1実施形態に係るバッテリシステム1は、図6に示すように、上述のように10個のサブアッセンブリ20a〜20jを有する電池モジュール30と、電気自動車C(被搭載物)に印加される加速度を検出する加速度センサ40と、通常走行時において電池モジュール30を冷却するための冷却装置50と、この冷却装置50に電力を供給する冷却装置用電源51と、冷却装置50のエアの供給先を切り替えるメインバルブ52と、加速度センサ40の検出結果に基づいて冷却装置50のファン回転数や各バルブ36、52の切替を制御するコントローラ60と、を備えている。なお、図6において、エアの流れを実線で示し、加速度検出信号及び制御用指令信号の流れは一点鎖線で示し、電力の流れは二点鎖線にて示している。
【0042】
バッテリシステム1の加速度センサ40は、図7に示すように、電気自動車Cの前方部に設置されており、この電気自動車Cの急停止等に伴って印加された加速度を検出することが可能となっている。この加速度センサ40は、コントローラ60に接続されており、当該検出結果をコントローラ60に送出可能となっている。
【0043】
バッテリシステム1の冷却装置50は、同図に示すように、電池モジュール30と共に電気自動車Cの後方部に設置されており、例えば冷却ファン等により冷却ダクト35を介して電池モジュール30に冷却用エアを供給することが可能となっている。この冷却ダクト35を介して供給された冷却用エアは、電池モジュール30の筐体31の内部に進入して各薄型電池10の間をそれぞれ通過することにより冷却を行う。この冷却装置50には、冷却ファンを回転させるためのモータ(不図示)が設けられており、冷却装置用電源51より当該モータに電力が供給される。
【0044】
バッテリシステム1のメインバルブ52は、冷却装置50と電池モジュール30の冷却ダクト35とを連通する連通路に設けられている。このメインバルブ52は、冷却装置50のエアの供給先を切り替えることが可能な切替バルブであり、一方の出口は連通路を介して冷却ダクト35に連通しているのに対し、他方の出口は連通路を介して電池モジュール30の膨張用バルブ36に連通している。そして、このメインバルブ52は、コントローラ60の制御に従って、冷却装置50のエア供給先を、冷却ダクト35又は膨張用バルブ36の何れかに切り替えることが可能となっている。
【0045】
以下に、例えば電気自動車Cが急停止する等して大きな加速度が印加された場合における本実施形態に係るバッテリシステム1の膨張動作処理について説明する。図8は本発明の第1実施形態に係るバッテリシステムにおける膨張動作処理を示すフローチャートである。
【0046】
前提条件として、電気自動車Cが通常走行している状態では、冷却装置50のエアを冷却ダクト35に供給するようにメインバルブ52が切り替えられており、冷却装置50から供給されるエアが電池モジュール30を冷却するための冷却用エアとして利用されている。また、初期状態の膨張用バルブ36は、気体注入チューブ37を介して各膨張ゴム38に連通するように切り替えられており、筐体31の内部には連通していない。
【0047】
例えば電気自動車Cの急停止等に伴って大きな加速度が印加されると、先ず、図8のステップS10において加速度センサ40が当該加速度を検出する。
【0048】
加速度センサ40による検出結果はコントローラ60に送出される。コントローラ60は、当該検出結果に基づいて、冷却装置50のエア供給先を冷却ダクト35から膨張用バルブ36に切り替えるように、メインバルブ52を制御する(ステップS20)。このコントローラ60におけるメインバルブ52の切替の判断手法としては、例えば、検出結果を所定閾値と比較し、当該検出結果が前記閾値より大きいか否かを判定する等の手法を挙げることが出来る。
【0049】
次いで、コントローラ60は、冷却ファンの回転数を上昇させるように冷却装置50を制御する(ステップS30)。冷却装置50からメインバルブ52を介して膨張用バルブ36に供給されたエアは、さらに、気体注入チューブ37を介して各膨張ゴム38にそれぞれ供給され、これにより各膨張ゴム38の内圧が上昇して膨張を開始する(ステップS40)。
【0050】
冷却装置50より供給されたエアにより各膨張ゴム38が膨張すると、電池モジュール30において各バスバ21及び異極端子同士104、105で囲まれた各空間Sが拡張される。ここで、電極端子104、105とバスバ21との接合部は外力に弱い構造となっていることから、膨張ゴム38の膨張による空間Sの拡張により当該接合部が容易に引き剥がされ、電極端子104、105とバスバ21とが電気的に遮断される(ステップS50)。
【0051】
このように、本実施形態に係るバッテリシステム1では、冷却装置50から供給されたエアを膨張用エアとして利用して膨張ゴム38を膨張させる。そして、膨張ゴム38を膨張させ空間Sを拡張させることにより、薄型電池10の電極端子104、105とバスバ21との接合部を引き剥がす。これにより、電池モジュール内の直列接続を短絡させ、薄型電池同士を分離させることが可能となっている。
【0052】
なお、電池モジュールの薄型電池同士を電気的に分離させる他の方法として、リレー等を用いる方法が考えられるが、この場合には当該リレーの切断の確実性がそれ程高くない。これに対し、本実施形態に係るバッテリシステムでは、接合部自体が物理的に引き剥がされるので信頼性が向上する。
【0053】
電極端子104、105とバスバ21との接合部が剥がれたら(当該接合部を引き剥がすのに十分な量の膨張用エアが供給されたら)、コントローラ60は、膨張用エアの供給先を気体注入チューブ37から筐体31内部に切り替えるように膨張用バルブ36に制御指令を送出する。膨張用バルブ36は、この制御指令に従って、膨張用エアを筐体31の内部に供給する。この際、上述のステップS30にて冷却ファンの回転数が上昇されていることにより、筐体31の内圧が上昇し、ベローズ32が所定方向(図4及び図5の白抜き矢印方向)に伸長して筐体31が膨張する(ステップS60)。
【0054】
なお、筐体31の背面に排出口が形成されているような場合には、当該排出口に開閉バルブを設け、上記のステップS20における膨張用バルブ36の切替制御と同時に当該開閉バルブを閉じる制御を行っても良い。これにより、筐体31の内圧を迅速に上昇させることが出来る。
【0055】
このように、本実施形態に係るバッテリシステム1では、冷却装置50から供給されたエアを膨張用エアとして利用して筐体31の内圧を上昇させベローズ32を伸長させることにより、筐体31を膨張させる。このように膨張した筐体31により、印可された加速度を吸収することが出来るので、電池モジュール30の車室内への侵入をより効果的に防止することが可能となる。
【0056】
[第2実施形態]
図9は本発明の第2実施形態に係るバッテリシステムの全体構成を示すブロック図、図10は本発明の第2実施形態に係るバッテリシステムにおける膨張動作処理を示すフローチャートである。なお、図9において、エアの流れを実線で示し、水素の流れを点線で示し、加速度検出信号や制御用指令信号の流れは一点鎖線で示し、電力の流れは二点鎖線で示している。
【0057】
本発明の第2実施形態では、水素と酸素により発電を行う燃料電池70で発電して駆動用モータMを駆動させることにより走行する燃料電池自動車(被搭載物)に適用した場合のバッテリシステムについて説明する。
【0058】
本実施形態に係るバッテリシステム1’は、図9に示すように、電池モジュール30、加速度センサ40、冷却装置50、冷却装置用電源51、メインバルブ52、及び、コントローラ60を備えている点で第1実施形態に係るバッテリシステム1と共通するが、燃料電池70、水素タンク71、コンプレッサモータ72、水素用バルブ73及び74、並びに、エア用バルブ75及び76をさらに備えている点で第1実施形態と相違する。また、本実施形態に係るバッテリシステム1’では、コントローラ60が、膨張用バルブ36、メインバルブ52及び冷却装置50を制御可能である点で第1実施形態と共通するが、これに加えて、各バルブ73〜76の制御も可能である点で相違する。第2実施形態に係るバッテリシステム1’に関して、第1実施形態に係るバッテリシステム1と共通する点については説明を省略し、第1実施形態に係るバッテリシステム1と相違する点について以下に説明する。
【0059】
燃料電池70は、触媒存在下で水素と酸素を電気化学的に反応させることにより発電を行う燃料電池であり、この燃料電池70で発電された電力により駆動用モータMを駆動させることにより車輌が走行する。水素タンク71は、当該燃料電池70に供給する水素リッチな水素含有ガスを貯蔵している。コンプレッサモータ72は、燃料電池70に酸素含有ガス(エア)を供給することが可能となっている。
【0060】
図9に示すように、水素タンク71と燃料電池70との間の連通路には第1の水素用バルブ73が設けられている。この第1の水素用バルブ73は、水素タンク71の水素含有ガスの供給先を切り替える切替バルブであり、一方の出口は燃料電池70の水素導入口に直接連結されているのに対し、他方の出口は連通路を介して電池モジュール30の膨張用バルブ36に連通している。そして、この第1の水素用バルブ73は、コントローラ60の制御に従って、水素タンク71の水素含有ガスの供給先を、燃料電池70又は電池モジュール30の何れかに切り替えることが可能となっている。
【0061】
さらに、この第1の水素用バルブ72と電池モジュール30の膨張用バルブ36との間の連通路には第2の水素用バルブ74が設けられている。この第2の水素用バルブ74は、当該連通路を開閉する開閉バルブであり、コントローラ60の制御に従って、第1の水素用バルブ73と電池モジュール30とを連通させることが可能となっている。
【0062】
同図に示すように、コンプレッサモータ72と燃料電池70との間の連通路には第1のエア用バルブ75が設けられている。この第1のエア用バルブ75は、コンプレッサモータ72のエアの供給先を切り替える切替バルブであり、一方の出口が燃料電池70の酸素導入口に直接連結されているのに対し、他方の出口が連通路を介して電池モジュール30の膨張用バルブ36に連通している。そして、この第1のエア用バルブ75は、コントローラ60の制御に従って、コンプレッサモータ72のエアの供給先を、燃料電池70又は電池モジュール30の何れかに切り替えることが可能となっている。
【0063】
さらに、この第1のエア用バルブ75と電池モジュール30の膨張用バルブ36との間の連通路には第2のエア用バルブ76が設けられている。この第2のエア用バルブ76は、電池モジュール30へのエアの供給元を切り替える切替バルブであり、一方の入口が連通路を介して冷却装置50に連通しているのに対し、他方の入口が連通路を介して第1のエア用バルブ75に連通している。そして、この第2のエア用バルブ76は、コントローラ60の制御に従って、電池モジュール30へのエアの供給元を、冷却装置50又はコンプレッサモータ72の何れかに切り替えることが可能となっている。
【0064】
第1実施形態において詳述したメインバルブ52は、第2のエア用バルブ76と電池モジュール30の膨張用バルブ36との間の連通路に設けられており、第1実施形態と同様に、一方の出口が連通路を介して電池モジュール30の膨張用バルブ36に連通しているのに対し、他方の出口が連通路を介して当該電池モジュール30の冷却ダクト35に連通している。
【0065】
以下に、例えば燃料電池自動車が急停止する等して大きな加速度が印加された場合における本実施形態に係るバッテリシステム1’の膨張動作処理について、図10に従って説明する。
【0066】
前提条件として、燃料電池自動車が通常走行している状態では、水素タンク71から水素含有ガスが燃料電池70に供給されるように第1の水素用バルブ73が切り替えられていると共に第2の水素用バルブ74が閉じられている。また、コンプレッサモータ72からエアが燃料電池70に供給されるように第1のエア用バルブ75が切り替えられており、冷却装置50から冷却用エアが電池モジュール30に供給されるように、第2のエア用バルブ76及びメインバルブ52が切り替えられている。また、第1実施形態と同様に、初期状態の膨張用バルブ36は、気体注入チューブ37を介して各膨張ゴム38に連通するように設定されており、筐体31の内部には連通していない。
【0067】
例えば燃料電池自動車の急停止等に伴って大きな加速度が印加されると、先ず、図10のステップS110において加速度センサ40が当該加速度を検出する。
【0068】
加速度センサ40による検出結果はコントローラ60に送出される。コントローラ60は、当該検出結果に基づいて、メインバルブ52、水素用バルブ73及び74、並びに、エア用バルブ75及び76を切り替える制御を行う(ステップS120)。
【0069】
このステップS120における各バルブ52及び73〜76の具体的なバルブ切替動作としては次の通りである。即ち、メインバルブ52は、エアの供給先を電池モジュール30の冷却ダクト35から当該電池モジュール30の膨張用バルブ36に切り替える。第1の水素用バルブ73は、水素含有ガスの供給先を燃料電池70から電池モジュール30に切り替え、第2の水素用バルブ74は連通路を開放する。第1のエア用バルブ75は、エアの供給先を燃料電池70から電池モジュール30に切り替え、第2のエア用バルブ76は、エアの供給元を冷却装置50からコンプレッサモータ72に切り替える。
【0070】
このコントローラ60における各バルブ52及び73〜76の切替の判断手法としては、第1実施形態と同様に、例えば検出結果を所定閾値と比較する等の手法を挙げることが出来る。
【0071】
次いで、コントローラ60は、冷却ファンの回転を停止させるように冷却装置50を制御する(ステップS130)。
【0072】
一方、水素タンク71から各水素用バルブ73及び74を介して電池モジュール30の膨張用バルブ36に供給された水素含有ガス、及び、コンプレッサモータ72から各酸素用バルブ75及び76を介して電池モジュール30の膨張用バルブ36に供給されたエアは、さらに、電池モジュール30内において、気体注入チューブ37を介して各膨張ゴム38にそれぞれ供給され(ステップS140)、これにより各膨張ゴム38の内圧が上昇して膨張を開始する(ステップS150)。
【0073】
上記のように供給された水素含有ガス及びエアにより各膨張ゴム38が膨張すると、電池モジュール30において各バスバ21及び異極端子104、105で囲まれた各空間Sが拡張される。ここで、電極端子104、105とバスバ21との接合部は外力に弱い構造となっていることから、膨張ゴム38の膨張による空間Sの拡張により当該接合部が容易に引き剥がされ、電極端子104、105とバスバ21とが電気的に遮断される(ステップS160)。
【0074】
このように、本実施形態に係るバッテリシステム1’では、燃料電池70に供給する水素含有ガス及びエアを膨張用流体として利用して膨張ゴム38を膨張させる。そして、膨張ゴム38を膨張させ空間Sを拡張させることにより、薄型電池10の電極端子104、105とバスバ21との接合部を引き剥がす。これにより、電池モジュール内の直列接続を短絡させ、薄型電池同士を分離させることが可能となっている。
【0075】
電極端子104、105とバスバ21との接合部が剥がれたら(当該接合部を引き剥がすのに十分な量の水素含有ガス及びエアが供給されたら)、コントローラ60は、水素含有ガス及びエアの供給先を気体注入チューブ37から筐体31の内部に切り替えるように膨張用バルブ36に制御指令を送出する。膨張用バルブ36は、この制御指令に従って、バルブを切り替えて膨張用エアを筐体31の内部に供給する。この際、ステップS120にて、電池モジュール30に水素タンク71及びコンプレッサモータ72から水素含有ガス及びエアが供給されるように、各バルブ52及び73〜76が切り替えられているので、筐体31の内圧が上昇し、ベローズ32が所定方向に伸長して筐体31が膨張する(ステップS170)。
【0076】
このように、本実施形態に係るバッテリシステム1’では、燃料電池70のために設けられた水素タンク71やコンプレッサモータ72から供給される水素含有ガスやエアを膨張用流体として利用して筐体31の内圧を上昇させベローズ32を伸長させることにより、筐体31を膨張させる。このように膨張した筐体31により、印可された加速度を吸収することが出来るので、電池モジュール30の車室内への侵入をより効果的に防止することが可能となる。
【0077】
[第3実施形態]
図11は本発明の第3実施形態に係るバッテリシステムの全体構成を示す図、図12は本発明の第3実施形態に係るバッテリシステムにおける膨張動作処理を示すフローチャートである。なお、図11において、排気ガスの流れを実線で示し、加速度検出信号や制御用指令信号の流れは一点鎖線で示している。
【0078】
本発明の第3実施形態では、動力源としてエンジン80と、特に図示しない駆動用モータとを備え、状況に応じてこれらを同時に又は個々に作動させて走行するハイブリッド電気自動車(被搭載物)に適用した場合のバッテリシステム1”について説明する。
【0079】
本実施形態に係るバッテリシステム1”は、図11に示すように、10個のサブアッセンブリ20a〜20jを有する電池モジュール30と、この電池モジュール30に印可される加速度を検出する加速度センサ40と、動力源であるエンジン80と、特に図示しないエキゾースト・マニホールドやエキゾースト・パイプを介してこのエンジン80に連結されたマフラー81と、このマフラー81と電池モジュール30との間の連通路を開閉する開閉バルブ82と、エンジン80の回転数や開閉バルブ82の開閉を制御するコントローラ60と、を備えている。なお、本実施形態に係るバッテリシステム1”の電池モジュール30及び加速度センサ40は、第1実施形態において説明したものと同一の構成である。また、図11において、排気ガスの流れを実線で示し、加速度検出信号及び制御用指令信号の流れは一点鎖線で示している。
【0080】
エンジン80は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。このエンジン80で発生した排気ガスは、特に図示しないエキゾースト・マニホールドやエキゾースト・パイプを介してマフラー81に導かれる。そして、このマフラー81で排気ガスの温度及び圧力が低減されて消音され、車外に排気されるようになっている。
【0081】
さらに、本実施形態では、このマフラー81の内部と電池モジュール30の膨張用バルブ36とが連通するように連通路が設けられており、開閉バルブ82がこの連通路を開閉可能に設けられている。
【0082】
以下に、例えばハイブリッド電気自動車が急停止する等して大きな加速度が印加された場合における本実施形態に係るバッテリシステム1”の膨張動作処理について、図12に従って説明する。
【0083】
前提条件として、ハイブリッド電気自動車が通常走行している状態では、開閉バルブ82は閉じられており、マフラー81と電池モジュール30の膨張用バルブ36とは連通していない。また、第1実施形態と同様に、初期状態の膨張用バルブ36は、気体注入チューブ37を介して各膨張ゴム38に連通するように設定されており、筐体31の内部には連通してない。
【0084】
例えばハイブリッド電気自動車の急停止等に伴って大きな加速度が印加されると、先ず、図12のステップS210において加速度センサ40が当該加速度を検出する。
【0085】
加速度センサ40により検出結果はコントローラ60に送出される。コントローラ60は、当該検出結果に基づいて、開閉バルブ82を開放させる制御を行う(ステップS220)。このコントローラ60における開閉バルブ82の開閉の判断手法としては、第1実施形態と同様に、例えば検出結果を所定閾値と比較する等の手法を挙げることが出来る。
【0086】
開閉バルブ82のバルブ開放動作によりマフラー81と電池モジュール30とが連通し、エンジン80からマフラー81を介して電池モジュール30の膨張用バルブ36に排気ガスが供給される(ステップS230)。なお、この際、コントローラ60がエンジン80に対して回転数を上昇させるような制御を行っても良く、これにより電池モジュール30に供給される排気ガスの圧力を増加させることが出来る。
【0087】
電池モジュール30の膨張用バルブ36に供給された排気ガスは、さらに、電池モジュール30内において、気体注入チューブ37を介して各膨張ゴム38にそれぞれ供給され、これにより各膨張ゴム38の内圧が上昇して膨張を開始する(ステップS240)。
【0088】
上記のように供給された排気ガスにより各膨張ゴム38が膨張すると、電池モジュール30において各バスバ21及び異極端子104、105で囲まれた各空間Sが拡張される。ここで、電極端子104、105とバスバ21との接合部は外力に弱い構造となっていることから、膨張ゴム38の膨張による空間Sの拡張により当該接合部が容易に引き剥がされ、電極端子104、105とバスバ21とが電気的に遮断される(ステップS250)。
【0089】
このように、本実施形態に係るバッテリシステム1”では、マフラー81を介してエンジン80から排気される排気ガスを膨張用流体として利用して膨張ゴム38を膨張させる。そして、膨張ゴム38を膨張させ空間Sを拡張させることにより、薄型電池10の電極端子104、105とバスバ21との接合部を引き剥がす。これにより、電池モジュール内の直列接続を短絡させ、薄型電池同士を分離させることが可能となっている。
【0090】
電極端子104、105とバスバ21との接合部が剥がれたら(当該接合部を引き剥がすのに十分な量の排気ガスが供給されたら)、コントローラ60は、排気ガスの供給先を気体注入チューブ37から筐体31内部に切り替えるように膨張用バルブ36に制御指令を送出する。膨張用バルブ36は、この制御指令に従って、バルブを切り替えて排気ガスを筐体31の内部に供給する。この際、ステップS220にて、マフラー81を介してエンジン80から排気ガスが供給されるように開閉バルブ82が開放されているので、筐体31の内圧が上昇し、ベローズ32が所定方向に伸長して筐体31が膨張する(S260)。特に、ステップS230にて、コントローラ60によりエンジン80に対して回転数を上昇させる制御が行われているような場合には、より迅速に筐体31の内圧を上昇させることが出来る。
【0091】
このように、本実施形態に係るバッテリシステム1”では、マフラー81を介してエンジン80から排気される排気ガスを膨張用流体として利用して筐体31の内圧を上昇させベローズ32を伸長させることにより、筐体31を膨張させる。このように膨張した筐体31により、印可された加速度を吸収することが出来るので、電池モジュール30の車室内への侵入をより効果的に防止することが可能となる。
【0092】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、本発明の実施形態における薄型電池の全体の平面図である。
【図2】図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態における電池モジュールを示す一部分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態における電池モジュールの概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態における電池モジュールの外観を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態に係るバッテリシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態に係るバッテリシステムを搭載した電気自動車を示す模式図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態に係るバッテリシステムにおける膨張動作処理を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態に係るバッテリシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態に係るバッテリシステムにおける膨張動作処理を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の第3実施形態に係るバッテリシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、本発明の第3実施形態に係るバッテリシステムにおける膨張動作処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0094】
1…バッテリシステム
10…薄型電池
101…正極板
101a…正極側集電体
101b、101c…正極層
102…セパレータ
103…負極板
103a…負極側集電体
103b、103c…負極層
104…正極端子
105…負極端子
106…上部電池外装
107…下部電池外装
20…サブアッセンブリ
21…バスバ
30…電池モジュール
31…筐体
32…ベローズ
33、34…外部端子
35…冷却ダクト
36…膨張用バルブ
37…気体注入チューブ
38…膨張ゴム
40…加速度センサ
50…冷却装置
51…冷却装置用電源
52…メインバルブ
60…コントローラ
70…燃料電池
71…水素タンク
72…コンプレッサモータ
73、74…水素用バルブ
75、76…エア用バルブ
80…エンジン
81…マフラー
82…開閉バルブ
C…電気自動車
M…駆動用モータ
S…空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極端子と負極端子とが電池外装の外周縁から導出する薄型電池が複数並設され、これら薄型電池それぞれの正極端子又は負極端子の一方の同極端子同士が一対のバスバにより電気的に並列接続され、これら薄型電池及びバスバ対からなるサブアッセンブリが複数積層されて電気的に直列接続され、当該複数のサブアッセンブリが筐体の内部に気密状態で収容された電池モジュールと、
前記電池モジュールが搭載された被搭載物に印加された加速度を検出する加速度検出手段と、
流体により膨張可能であり、前記電池モジュールの所定部位を膨張させる膨張手段と、
前記膨張手段に流体を供給する流体供給手段と、
前記加速度検出手段の検出結果に基づいて前記流体供給手段の制御を行う制御手段と、を備えたバッテリシステム。
【請求項2】
前記膨張手段は、相互に積層された前記薄型電池の電極端子と、当該電極端子に接合されたバスバとにより囲まれた空間を膨張させる膨張部材を含み、
前記制御手段は、前記加速度検出手段の検出結果に基づいて、前記膨張部材の内部に流体を供給するように前記流体供給手段を制御する請求項1記載のバッテリシステム。
【請求項3】
前記膨張手段は、前記筐体を所定方向に伸長させるように前記筐体に設けられた蛇腹部を含み、
前記制御手段は、前記加速度検出手段の検出結果に基づいて、前記筐体の内部に流体を供給するように前記流体供給手段を制御する請求項1又は2記載のバッテリシステム。
【請求項4】
前記流体供給手段は、
前記電池モジュールを冷却するための冷却手段と、
前記冷却手段の流体の供給先を、前記電池モジュールを冷却するための冷却用流路、又は、前記膨張手段の何れかに切替可能なバルブと、を含む請求項1〜3の何れかに記載のバッテリシステム。
【請求項5】
前記流体供給手段は、
燃料電池に水素を供給する水素供給手段と、
前記水素供給手段の水素の供給先を、前記燃料電池又は前記膨張手段の何れかに切替可能な水素用バルブと、
前記燃料電池に酸素を供給する酸素供給手段と、
前記酸素供給手段の酸素の供給先を、前記燃料電池又は前記膨張手段の何れかに切替可能な空気用バルブと、を含む請求項1〜3の何れかに記載のバッテリシステム。
【請求項6】
前記流体供給手段は、
内燃機関と、
前記内燃機関から排気された排気ガスを前記膨張手段に供給可能なバルブと、を含む請求項1〜3の何れかに記載のバッテリシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−139928(P2006−139928A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326126(P2004−326126)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】