説明

バッテリーケース

【課題】十分な電磁波シールド性を確保しつつその軽量化を図ることができると共に、耐衝撃性や耐腐食性等に優れたバッテリーケースを提供する。
【解決手段】ヒンジにより開閉可能に連結された一対のケース本体を有し、該ケース本体の内部にバッテリーが収容されるバッテリーケースであって、前記一対のケース本体は、多層ブロー成形によりその側壁が、樹脂材でケース本体の外面側に形成された表皮樹脂層と、導電性材料が樹脂中に混練された材料で表皮樹脂層の内側に形成された導電材料層を有して、少なくとも3層構造で構成されていることを特徴とする。また、前記側壁は、表皮樹脂層、導電材材料層及び内面樹脂層の3層構造でそれぞれ形成された外壁及び内壁と、該外壁と内壁の内面樹脂層間に形成された断熱効果を有しケース本体内の温度調整が可能な中空層と、を有する二重壁構造で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド電気自動車等に搭載されるバッテリーを収容するためのバッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車等の車両においては、例えば車体の床面にバッテリーモジュールやバッテリーパック等からなる多数のバッテリーが搭載されており、各バッテリーは、ケーブルで電気的に接続されると共に、鉄やアルミニウム等の金属で形成されたバッテリーケース内に収容された状態で車体に取り付けられている。なお、この種のバッテリーケースに関する公報としては、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−302036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなバッテリーケースにおいては、内部にバッテリーが収容されるケース本体が、バッテリーから発生する電磁波をシールド(遮蔽)する目的で金属により形成されているため、所定の電磁波シールド性を確保できるものの、バッテリーケース自体の重量が重くなり、車両の軽量化を図ることが困難で、環境対策で要求される車両の燃費効率を高めることが難しい。また、バッテリーケースが金属製のため、バッテリーケース自体の剛性(強度)は有る程度確保できるものの、バッテリーケースが衝撃により変形する虞があったり腐食する虞がある等、十分な耐衝撃性や耐腐食性等を得ることが難しい。
【0005】
また、バッテリーとしてリチウム電池を使用する場合、その特性上、外気温が低温や高温(−30℃〜+40℃)になると性能が落ちるため、低温時及び高温時には所定の電流が流れ難くエンジンの始動に支障が生じる場合がある。この対策としてバッテリーの保温・断熱・温度調節を行う必要があり、その構造が複雑化してコスト高になったり各種作業等が面倒になり易い。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、十分な電磁波シールド性を確保しつつその軽量化を図ることができると共に、耐衝撃性や耐腐食性等に優れたバッテリーケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ヒンジにより開閉可能に連結された一対のケース本体を有し、該ケース本体の内部にバッテリーが収容されるバッテリーケースであって、前記一対のケース本体は、多層ブロー成形によりその側壁が、樹脂材で前記ケース本体の外面側に形成された表皮樹脂層と、導電性材料が樹脂中に混練された材料で前記表皮樹脂層の内側に形成された導電材料層を有して、少なくとも3層構造で構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記ケース本体の側壁が、前記表皮樹脂層、導電材材料層及び前記導電材料層の内側に形成された内面樹脂層を有して少なくとも3層構造でそれぞれ構成された外壁及び内壁と、該外壁と内壁の前記内面樹脂層間に形成され断熱効果を有しケース本体内の温度調整が可能な中空層と、を有する二重壁構造で構成されていることを特徴とする。また、請求項3に記載の発明は、前記ケース本体の側壁が、側壁の外面及び内面側に形成された一対の表皮樹脂層と、該各表皮樹脂層の内側に形成された導電材料層とを有して、少なくとも3層構造で構成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項4に記載の発明は、導電材料層の両面に接着材からなるバインダー層が設けられていることを特徴とし、また、請求項5に記載の発明は、前記導電材料層の厚さが、前記表皮樹脂層と同等もしくは薄く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、内部にバッテリーが収容される一対のケース本体の側壁が、多層ブロー成形により、ケース本体の外面側に形成された表皮樹脂層と該表皮樹脂層の内側に形成された樹脂製の導電材料層を有して、少なくとも3層構造で構成されているため、導電材料層で十分な電磁波シールド性を確保しつつ、ケース本体を樹脂製とすることでその軽量化を図ることができると共に、耐衝撃性や耐腐食性等を向上させることができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、ケース本体の側壁が、表皮樹脂層、導電材材料層及び内面樹脂層を有して少なくとも3層構造でそれぞれ構成された内壁と外壁を有し、この外壁と内壁の内面樹脂層間に断熱効果を有しケース本体内の温度調整が可能な中空層を有するため、中空層を利用してバッテリーケース内の温度調整を行うことができて、該ケース内に収容されるバッテリーの低温時や高温時の性能を高めたりその寿命を延ばすこと等ができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、ケース本体の側壁が、外面及び内面側に形成された一対の表皮樹脂層と、該各表皮樹脂層の内側に形成された導電材料層とを有して少なくとも3層構造で構成されているため、側壁自体の構成を簡略化できて、成形が容易に行える等、バッテリーケースのコストダウンを図ることができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、外壁と内壁の導電材料層の両面に接着材からなるバインダー層が設けられているため、導電材料の種類に応じて所定の接着材のバインダー層を使用して、導電材料層を表皮樹脂層等に確実に密着できて、長期に亘り安定した電磁波シールド性を確保することができる。
【0014】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4に記載の発明の効果に加え、導電材料層の厚さが、表皮樹脂層と同等もしくは薄く形成されているため、導電性材料の使用量を抑えつつ所定の電磁波シールド性を確保できる最適量に設定できて、バッテリーケースの一層のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係わるバッテリーケースの一実施形態を示す斜視図
【図2】同その縦断面図
【図3】同図2のA部を拡大した断面図
【図4】同図2のB部を拡大した断面図
【図5】同ケース本体の変形例を示す図4と同様の断面図
【図6】同ケース本体の他の変形例を示す図4と同様の断面図
【図7】本発明に係わるバッテリーケースの他の実施形態を示す図2と同様の縦断面図
【図8】同図7のC部を拡大した断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明に係わるバッテリーケースの一実施形態を示している。このバッテリーケース1は、図1及び図2に示すように、側壁1a〜1d、天井壁1e及び底壁1f(以下、これらの壁を側壁1a〜1fという)を有し、例えば長さL、幅W、高さHの中空直方体形状に形成されると共に、略同一高さを有する上下に分割状態とされた一対のケース本体2、3を有している。このケース本体2、3は、その長辺側の一方の側壁1aがヒンジ4によって連結され、また、長辺側の他方の側壁1bがスライド式のフック5によって係止(開閉)可能に連結されている。
【0017】
また、ケース本体2、3は、その内部に後述するバッテリー20が収容される収容凹部2a、3aを有すると共に、例えば下方のケース本体3の短辺側の一方の側壁1cにはバッテリー接続用のケーブル(図示せず)が引き出されるケーブル引出孔6が複数個形成されている。さらに、前記ケース本体2、3のフック5が取り付けられる側壁1bの中間位置には、内側に窪んだ凹部7、8が上下方向に隣接(連続)する状態で設けられている。
【0018】
そして、下方のケース本体3の凹部8の上端部には、長手方向の全域に亘って係止突条10が設けられ、上方のケース本体2の凹部7の下端部には、長手方向の一方側に所定長さの係止突条9が設けられている。この係止突条9、10に、前記フック5の裏面側に設けた上下一対の係止凹部5a、5bが係止されるようになっている。
【0019】
また、フック5は、その下方の係止凹部5bが常時下方のケース本体3の係止突条10にスライド可能に係止され、図1に示す位置において、上方の係止凹部5aと上方のケース本体2の係止突条9との係止状態が解除されて、上下のケース本体2、3が前記ヒンジ4を中心に開閉可能とされている。また、図1に示す位置から矢印イの如くフック5をスライドさせることにより、フック5の上方の係止凹部5aが上方のケース本体2のケース突条9に係止されて、一対のケース本体2、3の開放が禁止されるようになっている。なお、このヒンジ4及びフック5は、一体ヒンジ及び一体フック以外の別部品で形成しても同様である。
【0020】
このように構成されたバッテリーケース1の各側壁1a〜1fは、図2〜図4に示すように構成されている。すなわち、前記ケース本体2、3は、多層ブロー成形により、各側壁1a〜1fが、外壁11及び内壁12と、この外壁11と内壁12間に設けられた中空層13からなる二重壁構造で構成されている。このとき、外壁11及び内壁12は、図4に示すように、各側壁1a〜1fの外面側に形成された表皮樹脂層14と、この各表皮樹脂層14の内側に形成された導電材料層15と、この各導電材料層15の内側に形成された内面樹脂層16の3層構造で構成されている。
【0021】
前記表皮樹脂層14及び内面樹脂層16としては、例えばポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ナイロン(PA)等の樹脂材が使用され、内面樹脂層16には、これらの樹脂からなるリターン材が使用される。このリターン材とは、前記バッテリーケース1を成形した際に、成形品の外周側に発生する端材及び再生材のことである。また、前記導電材料層15としては、例えばカーボンブラック、CFRP、黒鉛(グラファイト)、金属フィラー等の導電性材料を所定の樹脂材に所定割合で混練した材料が使用される。
【0022】
なお、バッテリーケース1のブロー成形時に使用されるこれらの各種材料としては、表皮樹脂層14や内面樹脂層16がポリプロピレンの場合、導電材料層15の導電性材料としてオレフィン系を使用し、表皮樹脂層14や内面樹脂層16がナイロンの場合、導電性材料としてナイロン系を使用することが好ましく、このことは、後述する各変形例等においても同様である。
【0023】
そして、図4に示す前記表皮樹脂層14の厚さt1、導電材料層15の厚さt2及び内面樹脂層16の厚さt3は、例えば層比構成が、表皮樹脂層14が20〜40%、導電材料層15が5〜50%、内面樹脂層16が20〜55%程度に設定されて、導電材料層15の薄肉化が図られている。
【0024】
前記ケース本体2、3を開閉可能に連結する前記ヒンジ4は、上下のケース本体2、3の多層ブロー成形時に一体成形された一体フランジで形成されている。また、前記ケース本体2、3の側壁1bの端部には、図3に示すように、互いに係合可能な凹部17と凸部18が必要に応じて一体形成されて嵌合連結可能に構成されると共に、ケース本体2、3の外壁11と内壁12の外周端部は、外壁11や内壁12と同様の壁からなる連結壁19(図3参照)でそれぞれ連結されることにより、前記中空層13が密閉された空間で形成されている。なお、前記凹部17と凸部18は、必ずしも必要ではなく省略することも可能である。
【0025】
そして、前記バッテリーケース1を製造する場合、前記表皮樹脂層14を形成し得る樹脂材と内面樹脂層16を形成し得るリターン材(もしくは成形当初は表皮樹脂層14と同様の樹脂材)と、予め所定の導電性材料が混練された樹脂材の3種類を準備する。そして、これらの材料を使用して多層ブロー成形機でブロー成形することにより、ケース本体2、3とヒンジ4、凹部7、8や係止突条9、10が同時に成形される。この成形された両ケース本体2、3に、別途成形したフック5の係止凹部5a、5bを係止させて組み付けることにより、バッテリーケース1が製造される。
【0026】
ところで、前記バッテリーケース1の成形に多層ブロー成形を使用した理由は、次の理由による。すなわち、樹脂成形品で金属に勝る耐衝撃性を得るには、中空層を設けることでモノコック構造を形成して物理的強度を上げることで解決が図れるが、中空層のある二重壁構造のケースを樹脂成形するには、射出成形では外壁と内壁を別体で成形して合体する必要がある。その点、多層ブロー成形を使用すれば、外壁や内壁、ヒンジ等が同時に一体に成形できるため、表皮樹脂層14、導電材料層15及び内面樹脂層16の樹脂の種類、導電性材料の種類や樹脂への混練率、パリソンの温度条件や粘度等を所定に設定することで、導電材料層15による電磁波シールド性が、例えば30dB〜60dB程度で体積固有抵抗が10−2〜10Ω・cm程度の性能を有する前記バッテリーケース1が得られるからである。
【0027】
このように製造されたバッテリーケース1は、下方のケース本体3の収容凹部3aに、図2に示すように3個のバッテリーモジュールやバッテリーパック等からなる例えば電気自動車用のバッテリー20を収容し、3個のバッテリー20の各端子を図示しないケーブルで所定に接続する。そして、3個のバッテリー20を接続したケーブルの端部をケース本体3のケーブル引出孔6から引き出して、隣接設置されている他のバッテリーケース1のバッテリー20やそのケーブルに接続する。これを所定数のバッテリーケース1に適用し、各バッテリーケース1を電気自動車の車体に搭載することで、各バッテリーケース1内のバッテリー20が電気自動車のバッテリーとして使用できることになる。
【0028】
このとき、電気自動車の場合、システムの関係上DC−AC変換またはブラシ制御によって電気制御系に流れる電流がリップルの多い電流となり、これがバッテリー20にも流れることから、バッテリー20から電磁波が輻射され易いが、この電磁波がバッテリーケース1の前記外壁11及び内壁12の導電材料層15により遮蔽されて、バッテリーケース1外への輻射(漏洩)が防止される。また、各バッテリー20を接続するケーブルから輻射される電磁波は、ケーブル自体に設けたシールド構造により、電磁波のケーブル外への輻射が防止されることになる。
【0029】
つまり、バッテリーケース1の各側壁1a〜fdを樹脂製としてその軽量化を図りつつ、側壁1a〜1fの外壁11及び内壁12の表皮樹脂層14と内面樹脂層16間に導電性材料が混練された導電材料層15をそれぞれ設けることで、バッテリー20から輻射される電磁波を遮蔽して、バッテリーケース1に所定の電磁波シールド性を確保することが可能になる。
【0030】
このように、前記バッテリーケース1によれば、内部にバッテリー20が収容される収容凹部2a、3aを有する上下一対のケース本体2、3の、側壁1a〜1fの外壁11と内壁12が、多層ブロー成形により、外面側に形成された表皮樹脂層14と該表皮樹脂層14の内側に形成された樹脂製の導電材料層15と、この導電材料層15の内側に形成された内面樹脂層16を有して3層構造でそれぞれ構成されているため、外壁11及び内壁12の各導電材料層15により、バッテリー20から輻射される電磁波を遮蔽して外部への輻射や漏洩を確実に防止でき、バッテリーケース1に十分な電磁波シールド性を確保することができて、例えば電磁波による車両の制御系や人体への悪影響を抑制することが可能になる。
【0031】
また、バッテリーケース1の一対のケース本体2、3が樹脂製で形成されるため、従来の金属製のケースに比較してその重量を軽くして、バッテリーケース1の軽量化を図ることができると共に、樹脂の弾性力によりバッテリーケース1の変形等を防止できてその耐衝撃性を向上させたり、樹脂の使用によりケース本体2、3の腐食を防止できて、バッテリーケース1の耐腐食性等を向上させる等、信頼性が高く長寿命のバッテリーケース1を得ることが可能になる。
【0032】
また、一対のケース本体2、3が、外壁11及び内壁12と該外壁11及び内壁12間に密閉状態で形成され断熱効果を有する中空層13との二重壁構造で構成されているため、中空層13によりケース本体2、3の耐衝撃性等を一層向上させることができて、例えば車両事故発生時のバッテリーケース1の変形による電磁波の漏電等を確実に防止することができる。さらに、導電材料層15の厚さt2が表皮樹脂層14や内面樹脂層16と同等か薄く形成されているため、導電性材料の使用量を抑えつつその量を最適量(最小量)に設定できて、バッテリーケース1のコストダウンを図ることができる。
【0033】
さらに、外壁11と内壁12が3層のサンドイッチ構造であるため、導電材料層15を側壁1a〜1fの厚さ方向の所定位置に位置させることができて、安定した電磁波シールド性を確保しつつ、ケース本体2、3の耐衝撃性等をより一層向上させることができる。また、外部に露出しない導電材料層15内側の内面樹脂層16がリターン材で形成されているため、ケース本体2、3のブロー成形時に発生した端材としてのリターン材を有効利用して、樹脂の歩留まりを向上させることができ、より安価なバッテリーケース1を得ることが可能になる。
【0034】
また、バッテリーケース1を電気自動車やハイブリッド電気自動車等に搭載することにより、電気自動車等の車両に搭載される多数のバッテリー20を車体に安定した状態で取り付けることができると共に、電気自動車特有のシステム上の電磁波を導電材料層15で確実にシールドしつつ、車両の軽量化を図って燃費効率を向上させることができる等、自動車に係わる環境対策に貢献することが可能になる。
【0035】
さらにまた、バッテリーケース1が上下に開放可能に連結された一対のケース本体2、3を有するため、バッテリー20のケース本体2、3内への収納作業を簡単に行うことができると共に、上方のケース本体2をフック5のスライド移動で開放することで、内部のバッテリー20の交換等を簡単に行うことができて、そのメンテナンス性を向上させることができる。また、上下のケース本体2、3を開閉可能に連結するヒンジ4やフック5用の係止突条9、10等を、ブロー成形で同時に一体成形できるため、ケース本体2、3自体の製造コストを低減させて、より一層安価なバッテリーケース1を得ることができる。
【0036】
ところで、前記実施形態においては、バッテリーケース1の各側壁1a〜1fの外壁11及び内壁12が、表皮樹脂層14と導電材料層15及び内面樹脂層16の3種3層成形で構成される例について説明したが、例えば図5及び図6に示すような3層以上で構成しても良い。以下、前記実施形態と同一部位には同一符号を付して説明する。先ず、図5に示すバッテリーケース1は、4種4層成形の場合で、側壁1a〜1fの外壁11と内壁12を4層構造とし、前記表皮樹脂層14と導電材料層15の次にリサイクル層(再生材層)22を形成し、このリサイクル層22の内側に内面樹脂層16を形成したものである。
【0037】
この側壁1a〜1fの場合の、表皮樹脂層14、内面樹脂層16及び導電材料層15としては、前記実施形態と同様の樹脂及び導電性材料が使用され、リサイクル層22としては、各種の再生材が使用される。そして、各層の厚さt1〜t4は、その層比構成が、表皮樹脂層14が10〜20%、導電材料層15が10〜50%、リサイクル層22が10〜15%、内面樹脂層16が10〜30%程度に設定されている。
【0038】
さらに、図6に示すバッテリーケース1は、4種6層成形の場合で、側壁1a〜1fの表皮樹脂層14の内側にリサイクル層22を形成し、このリサイクル層22の内側にバインダー層23を形成し、このバインダー層23の内側に導電材料層15を形成し、さらにこの導電材料層15の内側にバインダー層23を形成して、その内側に内面樹脂層16を形成することにより、外壁11と内壁12をそれぞれ6層構造としたものである。
【0039】
この実施形態の表皮樹脂層14、リサイクル層22、導電材料層15及び内面樹脂層16としては、前記実施形態と同様の樹脂及び導電性材料等が使用され、バインダー層23としては適宜の接着材が使用される。また、樹脂として同樹脂を使用し補強するが異樹脂で補強してもよい。そして、各層の厚さt1〜t5は、その層比構成が、表皮樹脂層14が10〜30%、導電材料層15が10〜50%、リサイクル層22が略0%、内面樹脂層16が18〜80%、バインダー層23が0〜1%程度に設定されている。なお、この例において、リサイクル層22は完全に省略することもできる。
【0040】
これらの各変形例においても、導電材料層15により所定の電磁波シールド性が確保される等、前記実施形態と同様の作用効果が得られる他に、外壁11や内壁12が4層以上の多層構造で構成されるため、外壁11や内壁12の耐衝撃性や耐腐食性等を一層向上させて、バッテリーケース1の信頼性が高められる等の効果を得ることができる。このように、本発明の前記実施形態に係わるバッテリーケース1は、側壁1a〜1fの外壁11と内壁12が、多層構造で構成されれば良く、バッテリーケース1の使用形態等に応じて、適宜の構造を採用することができる。
【0041】
図7及び図8は、本発明に係わるバッテリーケースの他の実施形態を示している。以下、前記実施形態と同一部位には、同一符号を付して説明する。この実施形態のバッテリーケース1の特徴は、図7に示すように、ケース本体2、3の側壁1a〜1fを単壁構造とし、前記実施形態の外壁11及び内壁12が重なり中空層13が無い成形としたものである。そして、図8(a)に示す側壁1a〜1fは、外面側及び内面側に形成された一対の表皮樹脂層14と、この各表皮樹脂層14の内側に形成された一対の導電材料層15の4層(導電材料層15を1層と見た場合は3層)で構成したものである。
【0042】
また、図8(b)に示す側壁1a〜1fは、外面側と内面側に形成された一対の表皮樹脂層14と、この各表皮樹脂層14の内側にそれぞれ形成された導電材料層15と、この導電材料層15の内側にそれぞれ形成された内面樹脂層16の6層(内面樹脂層16を1層と見た場合は5層)で構成したものである。すなわち、この例の場合、図4に示す実施形態の中空層13を無くして、外壁11と内壁12を押し潰した状態として側壁1a〜1fを形成したものである。これらの図8に示す各層の厚さ(層比構成)は、前記実施形態と略同様に設定される。
【0043】
この実施形態のバッテリーケース1においては、前記中空層13は有さないものの、本発明の断熱層として機能する導電材料層15が前記中空層13と略同様に作用して、断熱性や電磁波シールド性を確保でき、軽量化と併せ前記実施形態と略同様の作用効果を得ることができる他に、ケース本体2、3自体の構成を簡略化できるという作用効果を得ることができる。この実施形態のバッテリーケース1においても、例えばバインダー層23を設ける等、前記実施形態の各変形例の外壁11や内壁12と同様の、3層以上の各種多層構造を採用することもできる。
【0044】
なお、前記各実施形態においては、バッテリーケース1内にバッテリー20が3個縦方向に積層状態で収容される例について説明したが、例えば複数個のバッテリー20を横方向に併設状態で収容する等、収容されるバッテリー20の個数やその収容形態は、適宜に変更することができるし、バッテリーケース1自体の形状も、収容されるバッテリー20の形態等に応じて適宜に変更することができる。また、前記各実施形態においては、バッテリーケース1を同一高さを有する略同一形状の一対のケース本体2、3で形成したが、例えば下方のケース本体3の高さを高くする等、異なる形態のケース本体2、3で構成することもできるし、上下のケース本体2、3の開閉構造も前記フック5に限定されず適宜の構造を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、電気自動車やハイブリッド電気自動車等の車両用バッテリーへの適用に限らず、電気機器等のバッテリーが使用される全ての機器にも利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・・・・・・バッテリーケース
1a〜1d・・・・側壁
1e・・・・・・・天井壁
1f・・・・・・・底壁
2・・・・・・・・ケース本体
2a・・・・・・・収容凹部
3・・・・・・・・ケース本体
3a・・・・・・・収容凹部
4・・・・・・・・ヒンジ
5・・・・・・・・フック
5a、5b・・・・係止凹部
6・・・・・・・・ケーブル引出孔
9、10・・・・・係止突条
11・・・・・・・外壁
12・・・・・・・内壁
13・・・・・・・中空層
14・・・・・・・表皮樹脂層
15・・・・・・・導電材料層
16・・・・・・・内面樹脂層
17・・・・・・・凹部
18・・・・・・・凸部
19・・・・・・・連結壁
20・・・・・・・バッテリー
22・・・・・・・リサイクル層
23・・・・・・・バインダー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジにより開閉可能に連結された一対のケース本体を有し、該ケース本体の内部にバッテリーが収容されるバッテリーケースであって、
前記一対のケース本体は、多層ブロー成形によりその側壁が、樹脂材で前記ケース本体の外面側に形成された表皮樹脂層と、導電性材料が樹脂中に混練された材料で前記表皮樹脂層の内側に形成された導電材料層を有して、少なくとも3層構造で構成されていることを特徴とするバッテリーケース。
【請求項2】
前記ケース本体の側壁は、前記表皮樹脂層、導電材材料層及び前記導電材料層の内側に形成された内面樹脂層を有して、少なくとも3層構造でそれぞれ構成された外壁及び内壁と、該外壁と内壁の前記内面樹脂層間に形成され断熱効果を有しケース本体内の温度調整が可能な中空層を有する二重壁構造で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーケース。
【請求項3】
前記ケース本体の側壁は、側壁の外面及び内面側に形成された一対の表皮樹脂層と、該各表皮樹脂層の内側に形成された導電材料層を有して、少なくとも3層構造で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーケース。
【請求項4】
前記導電材料層の両面に接着材からなるバインダー層が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のバッテリーケース。
【請求項5】
前記導電材料層は、その厚さが前記表皮樹脂層と同等もしくは薄く形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のバッテリーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93151(P2013−93151A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233591(P2011−233591)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、経済産業省戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(592218816)羽立化工株式会社 (3)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】